万能無敵
ミルク・エンジェル



第6話
『調教! 性奴隷娘』





 オーグルトがこの地球に来て、1週間ほどが経った。
 ヤツは、見事なほど、何もしていない。この秘密基地で、日がな一日ごろごろとしているだけだ。ほっとする反面、ちょっと羨ましいような気もする。
 そんな、ある休日の朝。
 僕は、本当に久しぶりに、竜機兵の発進準備を進めていた。
 伊豆半島沖の海底に沈めたままのムアコック社製竜機兵キシオムバーグ02型に、重力波通信で起動コマンドを送信する。あとは、自動操縦で、適当にあのあたりのインフラを破壊するはずだ。
「マスター、珍しいですね」
 と、いつのまにか背後に立っていたココナが、コンソールを覗きこみながら言った。
「まあね。そろそろ、本物の戦闘シーンを見せないとスポンサーがうるさいだろ」
「え、えええ?」
 なぜか、ココナが妙にうろたえた声をあげる。
「す、すぽんさーって何ですか?」
「そりゃ、銀河帝国のことだよ。オーグルトも来ちゃったことだし、ありもののフィルムじゃごまかせないでしょ」
「あ、なんだ」
 ココナは、ほっと息をつく。ヘンな奴。
「帝国は、この地球に――そして、僕たちのやってることに、関心を持ち始めている」
「そう、ですね……」
 ココナは、打って変わってシリアス顔になった。
「マスター」
「ん?」
「あたし、何があっても、マスターの味方ですから」
 その瞳に、アンドロイドとは思えないような強い光を宿らせながら、ココナは言った。



《オープニング・テーマ》
『飛びこえてミルキー・ウェイ』



「何や、竜機兵、発進させたんかい?」
 と、いい雰囲気で見詰め合ってる僕とココナに、いかにも起きぬけといった風情のオーグルトが声をかけてきた。
「まあね。20分後に、沿岸部に上陸予定だよ」
「とろくしゃあことしとんなあ、きさんはァ」
 寝巻きのすそから手を突っ込んで、ぼりぼりと腹なんぞかきながら、オーグルトは言った。どうやら翻訳チップの調整をするつもりはないようだ。
「こげな星でも宇宙港や核施設くらいあろうもん。なしてもっと効果的な運用をせんのじゃ?」
「できることなら最初からやってるよ」
「なんち?」
「じきに分かるさ」
 言いながら、僕は、壁のディスプレイに、人工衛星からの映像を映し出した。
 まるで海を割るような勢いで、竜機兵が海中をまっすぐ北東に向かう姿が、ディスプレイに表示される。
 そして、他に比べて優美なフォルムが特徴の“竜機兵の女王”キシオムバーグが、激しい水飛沫をあげながら、その姿を現した。
 そのまま、現地で鎌倉と呼ばれている街の上空で翼を広げた竜機兵の姿を、衛星のカメラがズームする。
「しけた街並みやなあ」
 オーグルトが、無遠慮な口調で言う。
「800年ほど前は、これでもこの行政区分の首都だったんだぞ」
 僕は、舞川美玖の家庭教師を務めてる間に身につけた知識を披露した。
「そんなこつ、侵略活動とどないな関係があっとよ?」
「ま、直接は関係ないけど……」
 そんな僕の言葉を、すでに耳に馴染んだメロディーが遮った。
「エーテル波動、確認しました。――来ます」
 ココナが、冷静な口調で報告する。
「な、なんじゃあ、こりゃあ?」
 オーグルトが、その片目を剥いた。
 鎌倉上空で浮遊する竜機兵の前に、変身を終えた舞川美玖――ミルク・エンジェルが現れ、びしい! と見得を切ったのだ。
「ばんのーむてき! みるく・えんじぇるっ!」
 いかなる超法則が働いているのか、彼女の姿を見るもの全ての耳に、この声は響く。
「見てろよ、オーグルト。あっという間だぞ」
 僕は、なぜか奇妙な優越感のようなものすら感じながら、背後のオーグルトにそう言ったのだった。

「ほら、ね」
 そう言いながら振り返ると、オーグルトはその逞しい顔に茫然とした表情を浮かべていた。
「何やあれは……戦闘用アンドロイドかなんかか?」
「いや、ただの女の子だよ」
 僕は、ゆっくりと立ちあがった。
「な、何がただのじゃ! 竜機兵を、あないに軽々とぶっちらばって……それどころか、最後は素手で海に投げこんだじゃなあきゃ!」
「そういう存在なんだよ、彼女は」
 僕は、立ちあがり、言葉を選びながら言った。
「彼女がなぜあのような非常識なパワーを有しているのか、僕には分からない。先任のミヒロー大佐も、それに関してはお手上げだったようだ」
 僕は、かねてから用意していた嘘をついた。まだ、ミルク・エンジンの存在について、銀河帝国に知らせるつもりはない。そして、このことは、ココナにも厳重に言い含めてある。
「……」
 オーグルトは、その大きな口を引き結んで、押し黙っている。
「だけど、あの少女が、この地球を侵略する上で最大にして唯一の障害であることは確かなんだ。僕は、彼女を攻略する方法を求めて、これまで諜報活動を続けてきた。そして、これからもそうするつもりだ」
「はーん……」
 オーグルトは、笑みの形にその口元を歪めた。
「何やら学生だか家庭教師だかになりすましておるんは、その諜報活動の一環ちゅうわけやな?」
「ああ。多少の役得込みでね」
「で、あのミルクなんちゃらの正体はつかめとるんかや?」
「いいや」
 僕は、ため息をついて見せながら、言った。
「これまでかなりの数の少女を調査しているけど、なかなか尻尾を現さない」
「なるほどのう」
 オーグルトは、こきこきと首を鳴らした。サイボーグのくせに、ずいぶんと器用なことを。
「上への報告に苦労しそうだべ。ったく、査察官なんてはんかくせえこと辞めて、とっとと前線に戻りてえぜよ」
「報告書の作成については、あたしがお手伝いします」
 ぼやくオーグルトに、ココナが言う。
「おー、よろしく頼んまっさ、別嬪さん」
 そう言ってオーグルトは、すれ違い様にココナのお尻をぺろんと撫でた。
「きゃン!」
 ココナの悲鳴を聞きながら、オーグルトは、自室のドアを開けた。
「じゃあ、オイはこれから寝直すけん」
 呆れ顔のココナにそう言って、オーグルトは扉を閉める。
「……警戒すること、なかったみたいですね」
 頬をかすかに赤く染めながら、ココナが、僕に囁いた。
「ん、まあ、どうかな」
 僕は、煮えきらない口調で言った。
「どうか、したんですか?」
「いや、確かに、あいつは元々ガサツでいい加減な奴だったけどさ……何か、ヘンだ」
「そりゃ確かにヘンな人ですけど」
「いや、そういうことじゃなくてね――」
 僕は、そこで言葉を切った。
 オーグルトの査察期間は、あと10日間。短いようでいて、隠し事をするには長い。
 僕は、奇妙な胸騒ぎを覚えながら、オーグルトの部屋のドアをにらみ続けていた。



「先生、何か考え事?」
 舞川美玖が、運転席の僕の顔をのぞきこみながら、言った。
 秘密基地のある街からずっと東にある海水浴場に、僕と彼女はドライブに来ている。
 もちろん、海水浴のシーズンではないので、砂浜は無人だ。駐車場にも、僕がここまで運転してきたワゴンタイプの地上車以外には、一台の車も停まっていない。
「ごめん。景色に見とれてた」
 僕は、舞川美玖に、そう言い訳した。
 確かに、晴れ渡った晩秋の空の色を映した海がどこまでも青く広がっている様は、とても綺麗だった。
「ほんと、キレイ」
「うん」
 舞川美玖お手製の弁当をついさっき食べたこともあって、僕は、ちょっと満ち足りた気分になっていた。
 本来なら、査察期間中に、こうやって舞川美玖と会うのは危険ではあるのだが、たぶん、ココナがうまくごまかしてくれるだろう。
 それに、銀河帝国がこの地球に特別な関心を抱き始めている以上、舞川美玖の攻略を急がないわけにはいかないのだ。
 僕自身の、本当の目的のためにも……。
「ね、先生」
 と、再び舞川美玖の声が、僕の物思いを遮った。
「前に、あたし、先生に話してない秘密があるって、言ったでしょ?」
「うん」
「聞きたい?」
「話してくれるの?」
 逆に、僕は聞き返す。
 たぶん、彼女の言う秘密とは、自分がミルク・エンジェルだという、僕にとっては秘密でもなんでもない事だろう。でも、それを彼女が話してくれるくらいに信頼を勝ち得たということには、それなりの意味がある。
「えへへ、どうしよっかなー」
 舞川美玖は、歌うような口調で言った。
「でも、言った方がいいよね。美玖、先生のドレイだもん」
 言いながら、その幼い顔に小悪魔のような笑みを浮かべ、ひょい、と運転席に座る僕の腰にまたがってくる。
 ハンドルと、僕の体の間の、狭い空間。そこに身を置いた舞川美玖は、すりすりと体を摺り寄せてきた。
 デニム地のスカートの中のショーツと、僕のスラックスの膨らみが、触れる。
「ね、先生……今日も、美玖のこと、ドレイにして……うんと、すごいことしてほしいの……」
 舞川美玖の瞳は明らかな欲情に潤み、濡れたような唇は半開きになっている。
 僕は、ほとんど衝動のままにその体を抱き締め、貪るようなキスをした。
「ン、んんン……んム……ふぅン……」
 媚びるような鼻声を聞いているうちに、すでに勃ち始めていた僕のペニスが、さらに硬度と容積を増していく。
 その、僕の勃起を刺激するように、舞川美玖は、くにくにと悪戯っぽくお尻をうごめかした。
「ん、んン……ぷはァ……」
 たっぷりとディープキスを愉しんでから唇を離すと、舞川美玖は、とろんとした目を僕に向けた。自らの“秘密”についての話は、早々と忘れてしまったような様子だ。
 そんな彼女を、僕は、後部座席に導いた。背もたれを後に倒すことによって、そこは、即席のベッドのようになる。
 そこに、靴を脱いだ彼女の体を横たえ、ゆっくりと体を愛撫しながら、一枚一枚、服を剥ぎ取っていく。
 舞川美玖は、されるがままだ。いや、それどころか、積極的に僕に協力し、その白い肌をさらしていく。
 可愛らしいデザインの下着を脱がし、靴下だけの、ほとんど全裸の状態にした後、僕は、用意していたロープを取り出した。
「あ……今日はそれで、美玖のこと、縛るんだね……」
 そのあどけない顔に似合わない、どこか妖しい笑みを浮かべながら、舞川美玖が言った。
「縛られるの、好きでしょ?」
「知らないもん……」
 さすがに羞恥に頬を染めて、舞川美玖が視線を逸らす。
 そんな彼女を膝立ちの姿勢にさせ、首に、前からロープをかけた。
 そして、要所要所に結び目を作ってから、2本揃えた状態で、股のところをくぐらせる。
「そ、そんなとこまで?」
「だいじょうぶ。痛くないはずだよ」
 不安そうな表情を浮かべる彼女にそう言いながら、背中に回したロープの両端を前に回し、結び目と結び目の間にできた輪の部分を、左右に引っ張るようにする。
 結果、下から順々に、舞川美玖の体の前面で、赤いロープが歪んだ菱形を形作ることになった。
 この文化圏においては、縄を使った拘束が特化しているようなのだが、その中でも“菱縄結び”と呼ばれる手法である。
 実は先日、ココナを実験台にして、その手のウェブサイトを見ながら練習したのだ。オーグルトに見つからないよう緊張したためか、余計に興奮してしまったものだ。
 それはともかく、練習の甲斐あって、意外と手早く緊縛を進められている。
「あ、あぅ……ンく……は……アッ……」
 ぎゅっ、ぎゅっ、というロープがきしむ音に、舞川美玖の小さな喘ぎが重なる。
 ようやく、緊縛が完成した。
 お臍の周囲と胸元には、小さな菱形が形作られ、そして大きな菱形が、舞川美玖のたわわな乳房を囲んでいる。
 縄で周囲から締め上げられ、歪に飛び出た乳房は、普段以上に淫猥だった。
「あ、やぁン……」
 初めての本格的な緊縛の洗礼を受け、淫らに縄を食い込ませた自らの体を見つめながら、舞川美玖は声をあげた。
「おっぱいが、すごくエッチな形になってるよ」
「やあん、そ、そんなこと言っちゃイヤあ」
 舞川美玖は、両手で胸を隠し、身をくねらせた。
「ひゃうッ!」
 と、いきなり高い声をあげて、シートにぺたんとお尻をつく。
「どうしたの?」
「えっと、あそこのロープが……く、くいこんだの……」
 顔を真っ赤にしながら、舞川美玖が言う。どうやら、身をよじった拍子に縄が緊張し、結果として股縄を上に引っ張ったらしい。
「どうだった?」
「ど、どうって、びっくりしただけだもん……」
「ふーん」
 僕は、そう言いながら、股をくぐる縄に手をかけ、まるで荷物を持ち上げるような感じで上に引っ張った。
「ひあア!」
 舞川美玖は、胸を隠していた両手を後に突っ張り、腰を突き出すような格好になった。
「あ、ああっ、イヤあ……ひっぱっちゃダメだよぉ……!」
 そんな抗議の声を無視して、くい、くい、と縄を動かす。
「ああン……こすれるぅ……ダメぇ……」
 見ると、無残に縄を食い込ませたクレヴァスが、とろとろと透明な液を溢れさせている。
 その様子を見ているだけで、僕のペニスにはさらなる血液がみなぎり、スラックスのファスナーを破らんばかりになった。
 ロープを握っていた手を離し、ベルトを緩める。
「あ……」
 正座を崩したような格好で、しどけなく座る舞川美玖の前に、僕は、すっかり勃起したペニスをさらけだした。
「すごぉい……」
 見慣れているはずなのに、舞川美玖は感心したような声をあげる。
 僕は、フラットになった後部座席に上がり、中途半端な膝立ちの姿勢になった。頭が天井につっかえる。
 と、何も言われてないにもかかわらず、舞川美玖が、四つん這いになって、僕の股間に顔を寄せた。
「先生……おしゃぶり、していい?」
 そして、上目遣いで、そう訊いてくる。
「自分からおねだりするなんて、美玖ちゃんはエッチだね」
 本当は、こちらから頼み込みたいような状態ではあったのだが、僕は、そう意地悪を言った。
「だって……こんなに、すごくなってるの見たら……」
 僕の怒張を見つめながら、舞川美玖が言う。まるで、ペニスそのものに話しかけているような感じだ。
「じゃあ、もっともっとエッチな言葉で、頼んでみて」
「ん……」
 舞川美玖は、こく、と小さく唾を飲みこんでから、口を開いた。
「美玖に……先生のオチンポ……フェ、フェラチオ、させてください……先生の熱くておっきいので、お口の中、おかしてほしいの……」
 この分野でも優秀な生徒である舞川美玖が、僕の予想以上のセリフを口にする。
 僕は、我慢ができなくなって、返事もそこそこに、彼女の可愛らしい顔を、自らの醜悪なペニスに押しつけた。
「あン♪」
 舞川美玖は、嬉しそうな悲鳴をあげて、ぱくん、と僕のペニスを咥える。
 そうしてから、すぐに、ちろちろとその小さな舌を動かし始めた。
「うっ……」
 敏感な鈴口の辺りを刺激されて、思わず声が漏れてしまう。
 舞川美玖は、その顔にうっとりとした表情を浮かべながら、ピンク色の舌をてろりと出し、僕のペニスの裏側を舐めしゃぶった。
 ペニスが、とたんに、彼女の唾液でべとべとになる。
「ちゅ……じゅるっ……んちゅ……ンむ……ああン、せんせえ……」
 明らかに欲情した声で、舞川美玖が言った。息が、シャフトをくすぐる。
「あのね……しばられたまますると、無理やりされてるみたいで、余計に感じちゃうの……美玖、ヘンかなあ……」
 どうやら彼女の口からは、まるで甘いものを食べているときのように、唾液が自然と溢れ出ているらしい。それを、尿道から漏れ出る僕の腺液とともにちゅうちゅうと淫らな音を立ててすすりながら、舞川美玖は訊いた。
「それは、美玖ちゃんがMだからだよ」
「えむ……?」
「マゾヒストってことさ。苛められて、気持ちよくなっちゃう人のこと」
「そ、そんなぁ……」
「ほら、お口がお留守だよ」
 僕は、どろどろのペニスを、彼女の小さな口の中にねじ込んだ。
「ンうぅ……!」
「こうされて、感じてるんだろ?」
「う、うん……かんひる……おくひが、あそこみたひにかんひるの……」
 口元から、とろとろとだらしなく涎を溢れさせながら、不明瞭な発音で、舞川美玖は言った。
「美玖ちゃんは、エッチなM奴隷なんだ……こんなにひどいことをされて、それで気持ちよくなっちゃう、淫乱な変態さんなんだよ……」
 そう言いながら、僕は、二つにまとめられた彼女の髪をそれぞれの手に掴み、ゆるゆると腰を動かした。
 その、僕の腰の動きに合わせ、丸い果実を思わせる舞川美玖の双乳が、ふるん、ふるんと揺れている。
 精一杯に開かれた彼女の唇を、血管を浮かせた僕のペニスが出入りする様は、凄まじいほどに淫猥だ。
「んっ、んぶぅ! んぐ……ふぅう……んむ……んぢゅ、ちゅ、ンうううう……っ」
 僕に、口を犯されながら、舞川美玖は、一生懸命に舌を動かし、唇を締め上げている。
 こんな状態でも、僕のペニスの快楽を少しでも高めようとしているのだ。
 そして、そのことで、彼女自身も、間違いなく快感を感じているのだろう。
 エラを張った雁首で口蓋をこすると、舞川美玖は、ぞくぞくと体を震わせた。
 軽い絶頂を迎えつつある彼女の口内が、びくびくとおののくのを、亀頭の表面で感じる。
 もはや、限界だった。
「くっ!」
 僕は、たまらず声をあげながら、大量の精液を、舞川美玖の小さな口の中に放出してしまった。
「んんン〜……っ♪」
 びゅうううーっ、びゅうううーっ、と激しい勢いで迸る飛沫が喉奥を叩く感触に、舞川美玖が、くぐもった歓喜の声をあげる。
 僕は、自分でも呆れるほど、何度も何度も射精を繰り返した。
 年端のいかない少女を、ここまで淫らに調教したという満足感が、この凄まじい淫楽に暗い彩りを添える。
「ん、んぐ……んふ……んくっ、んくっ、んくっ……」
 ようやく、射精の勢いが弱まると、舞川美玖は、口の中にたっぷりと溜まった僕の精液を、うっとりとした顔で飲み込んでいった。



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《CM》



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 淫臭でむせかえるようになったワゴンの中で、僕は、舞川美玖を背面座位の格好で犯していた。
 僕の精液と、彼女の愛液の匂いに、頭がクラクラするほどに興奮してしまう。
 それは、舞川美玖も同じことのようだ。
 両手をシートに突き、たたんだ脚で僕の腰をまたぐような姿勢で、彼女は僕の抽送を受けとめている。
 2本の股縄は、それぞれ左右に寄せている。その縄に囲まれ、存在を強調されたクレヴァスに、僕の剛直が出入りする様子は、視覚的にも僕を昂ぶらせた。
 快楽に蕩けた舞川美玖の可愛らしい顔を拝むことができないのが、ちょっと残念だ。けど、この体位だと、背後から彼女の巨乳を思う様に嬲ることができる。
 縄で絞られ、突き出てしまった乳房を揉みしだくと、極上の感触が僕の手の平に広がった。
 つい力を込めすぎて、乱暴に愛撫してしまうのだが、舞川美玖は甘い喘ぎを漏らすばかりだ。
「スゴい……スゴいよお、せんせえ……」
 舌足らずな声でそう言いながら、舞川美玖は、首をひねって、こちらに視線を寄越した。
 その顔には、幼い少女とは思えないほど淫らな表情が浮かんでいる。
「せんせえの……せんせえのオチンポが……美玖の中、ぐりぐりこすってるよォ……」
「気持ちイイんだね? 美玖ちゃん」
「イイ、イイよォ……っ! オチンポ、オチンポが、アソコ、かきまわして……ンあああっ! アソコが、とけちゃいそうなのぉ……!」
「アソコじゃないでしょ、美玖ちゃん」
 ぐん、と腰を突き上げながら、僕はさらなる淫語を促す。
「ひあッ! オ、オマンコ! オマンコなのぉ!」
 舞川美玖は、憶えたばかりの卑猥な言葉を絶叫した。
「オマンコいい! オマンコいいのっ! オマンコ感じるのォ! オマンコ、オマンコすごいよォーっ!」
 まるで気が狂ったように、舞川美玖はその言葉を繰り返す。
 僕は、きちんと言えたご褒美とばかりに、舞川美玖の乳首を、きゅっとひねりあげた。
「ひやああああああああン!」
 きゅううっ、と膣肉を締め上げながら、舞川美玖がさらに高い声をあげる。
 危うくそのまま射精してしまいそうになるのをぐっとこらえ、僕は、丸い乳房の頂点で堅くしこっている乳首を、指先でしごくように刺激した。
「いあああッ! ンあうぅッ! んくっ! あ! ああああアアアっ!」
 舞川美玖は、敏感な乳首を責められて、その小さなミルク色のからだをうねらせた。
 その動きに合わせて赤いロープがきしみ、きりきりと彼女の体を締め上げる。
 僕は、高まる動物的な本能に任せて、ぐいぐいと舞川美玖の軽い体を上下に揺すった。
 白濁した愛液が溢れ出し、小さく泡立っている。
「ひっ! ひあああああッ! もうダメえ! ダメええぇーッ!」
 舞川美玖の膣内が収縮し、僕のモノを搾りあげる様にうごめいた。
 僕は、必死に歯を食いしばって精を漏らしてしまいそうになるのをこらえながら、彼女の双乳から手を離し、股縄をさらに割り開いた。
 そして、あとからあとから溢れてくる彼女の愛液を潤滑液にして、可憐なセピア色のすぼまりに、指を這わせる。
「はわぁああああっ?」
 すでに、ここも開発はしているのだが、やはりびっくりしたのだろう。舞川美玖が、不安そうな顔で、こちらを見る。
「大丈夫……力、抜いて……」
 そう言いながら、最初に比べてかなり柔らかくなった彼女の菊門に、ゆっくりと右手の親指を挿入していく。
「は、はわぁ! ンう! そこ、そこはダメえ!」
 排泄器官に何かが侵入してくる感覚に、舞川美玖が、うろたえた声をあげる。
「何がダメなの? ほら、美玖ちゃんのお尻、僕の指を咥えこんでるよ……」
 そう言いながら、僕は、くにくにと彼女の直腸の中で指を動かした。
「ンわぁっ! ヤああ! う、うごかしちゃ、うごかしちゃイヤあっ!」
 きゅっ、きゅっ、と膣肉で僕のペニスを締め付けながら、舞川美玖が訴える。
 が、これまでじっくりと慣らしてきたのが功を奏したのか、僕の指は、意外なほどスムーズに彼女のアヌスを出入りした。
 愛液をすくっては肛門の周囲に塗りつけ、直腸の中に塗りこむように、指を挿入する。
 そんなことを繰り返しているうちに、舞川美玖の喘ぎが、より淫らなものになっていった。
「ひ、やあぁああ……ヤなのに……お尻、ヤなのにぃ……ン」
 かすかに抵抗しているようなそぶりを見せるが、それも口だけといった感じだ。
「感じてるんでしょ? 美玖ちゃん」
 親指で肛内をほじくるようにしながら、僕は彼女を言葉でいたぶった。
「イヤだなんて、ウソばっかり言って……お尻をずぼずぼされて気持ちイイんでしょ?」
「ひ、ひやぁ……ン」
「美玖ちゃんのオマンコも、嬉しそうにヨダレを溢れさせてるよ」
「あああ、イ、イヤぁ! せんせえ、そんなこと言わないでよォ」
 快楽と羞恥と屈辱がごちゃまぜになったような情けない声で、舞川美玖は言う。
 しかし、僕の言ったことは丸きり事実だ。もはや彼女は、アヌスから湧き起こる変態性欲に愛液を溢れさせるような少女になってしまったのである。
「美玖ちゃんは、本当にイヤらしい奴隷ちゃんだね」
 僕は、そう言いながら、腰を起こした。背面座位から、後背位の姿勢になる。
「ひゃあう!」
 膣内の奥の方を僕のペニスで小突かれ、舞川美玖は、シートの上に突っ伏すような格好になった。
 クレヴァスとアヌスからもたらさせる淫楽に屈服した少女を、僕は、背後から陵辱する。
「ひ、ひあ! あっ! ああッ! ンあああ!」
 アヌスを親指で犯しながら、ぐいぐいと腰を使うと、舞川美玖は、短い悲鳴をあげながら、その体をうねらせた。
「ダメえ! ダメになるう! 美玖、美玖、オマンコとお尻で感じすぎるよォーっ!」
「いいんだよ、感じて……ほら、もっともっとえぐってあげるよ……」
「いッ! ひやあああア! オチンポ、ぐりぐりって! お、おしりの、ゆびと、こすれてるゥ……っ! きゃあああアアアン!」
 きゅううううン、と括約筋が、僕の指とペニスを、食いちぎらんばかりに締め付けた。
 こらえにこらえていた射精感が、ペニスの根元から先端に向かって、ぐうっとせりあがってくる。
「はわああああア!」
 ペニスがひときわ膨張したのを、膣内で感じたのだろう。舞川美玖が、背中を反らして絶叫した。
 その彼女を絶頂に導くためよりも、自分自身の快感を高めるために、ムチャクチャに腰を使い、愛液でぐちょぐちょの蜜壷をペニスでかきまわす。
「はああああアッ! イク! イっちゃうう! お尻とオマンコでイっくううううううううううウウウーッ!」
 彼女のそんな声を聞きながら、僕は、ペニスの先端から熱い精液を迸らせた。
「きゃああっ! ひああア! きゃああああアアアーっ!」
 びゅるるるっ! びゅるるるっ! とペニスが律動し、精液を幼い子宮めがけて撃ちこむ。
 その度に、舞川美玖は歓喜の声をあげ、赤いロープで緊縛されたミルク色の体を悶えさせた。
 魂までもっていかれそうな強烈な快楽に、全身から力が抜ける。
 そして僕は、彼女の背中に覆い被さるように、突っ伏してしまった。
 そのまま、もつれあうように、シートの上に、二人して横臥する。
 舞川美玖の体は、凄まじい絶頂の余韻に、ひくン、ひくン、と可愛らしく痙攣していた。
 その幼い体を、背後から、まるで、僕自身が拘束具の一つになったかのように、きつく、きつく抱き締める。
「ふわぁ……あ、あぁぁぁ……あぁン……」
 僕の腕の中で、舞川美玖が、うっとりと声をあげた。

 と、その時だった。
 キイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ……ン――という可聴領域ギリギリの高い音が、彼女の胸元から響いたのだ。
「!?」
 僕と舞川美玖は、ほとんど同時に、上体を起こした。
 緊縛された乳房の間に挟まれたあのペンダントが、柔らかな光を放ちながら、高い唸り声をあげている。
「え、うそ! こんな時に?」
 舞川美玖が、うろたえた声をあげる。
「かいじゅうは、今朝やっつけたばっかりなのに……!」
 そう、舞川美玖が言う間にも、ペンダントから放たれる白い光は、ますます強くなっていく。
 ミルク・エンジンの端末である、ペンダント。
 それが、奇妙な、しかしなぜか心地よいエネルギーを放射しながら、細いチェーンにつながれたまま、半ば宙に浮いている。
「これは、どういう……」
 そう、僕が言いかけたとき、外から、まるで爆発音のような激しい音が聞こえた。
 見ると、海面に、凄まじい高さの水柱が立っている
(竜機兵!)
 僕は、あやうく叫びを飲みこんでいた。
 今朝、舞川美玖によって頭部を破壊され、そのまま海に投げ込まれたあの竜機兵、キシオムバーグ02型が、巨大な翼を広げて上昇している。
(暴走したのか? いや、あれは……!)
 半ばスクラップと化した頭部コクピットに、人がいる。
 あれは――オーグルトだ。
 と、その時、すでに聞きなれたあのBGMが、鳴り響いた。
「!」
 視線を戻すと、舞川美玖の体の周囲に、白と、金と、桃色を基調としたコスチュームが、空中で発生し始めていた。
 それが、まだ緊縛されたままの彼女の体を、やさしく包み込む。
 ミルク・エンジェル――。
 間近で見るその変身の様子に、僕は、なぜか奇妙な感動を覚えていた。
「先生……」
 バイザーの奥の目に、困ったような笑みを浮かべ、舞川美玖は言った。
「ホントは、先に言えばよかったんだけど……バレちゃったね」
「美玖ちゃん……」
 何を言っていいか分からず、僕は、ただただ彼女の姿に見とれるばかりだ。
 と、海上の竜機兵が、プラズマジェットを点火した。
 ヒイイイイィィィィィ――ン! と音を立てて、竜機兵が僕たちの頭上を飛び越え、空中を滑るように加速する。
 向かう先は、北東。あっちには、この近辺でも有数の人口を擁した街があるはずだ。
「いっけない!」
 舞川美玖は、大きな声をあげる。
「お話は、後でするから! てれぽーとっ!」
 すでに小さくしか見えなくなっている竜機兵を追うべく、舞川美玖――いや、ミルク・エンジェルが、その空想具現化能力を発揮させる。
 しゅばッ! という激しい音ともに、光の粒子が舞い、そして、ミルク・エンジェルの姿が、この狭いワゴン車の中から消えた。
「瞬間移動……」
 銀河帝国でさえ実現していない、何の制限もない超光速瞬間移動能力を目の前にして、僕は、茫然と呟いた。
 が、すぐに気を取りなおし、乱暴に服を着て、運転席に付く。
「いよォー、レニウスう。そこにおんなあ。追いかけてきた甲斐があったぜよ」
 と、腕時計に内蔵された通信機から、何ともご機嫌な様子の野太い声が響いた。
「オーグルトっ!」
 僕は、地上車を急発進させ、片手でハンドルを操りながら、叫ぶように言った。
「お前、どういうつもりなんだよ?」
「前線を離れて久しいけん、腕が鳴っちょってのう。きさんにレクチャーかたがた、ひと暴れしようと思うたんや」
「それは、僕の隊の竜機兵だぞ!」
「きさんがほかしたもんを使うとるだけやないけ。しわいこと言うなや」
 通信機の向こうのオーグルトは、笑っているようだった。
「オイの体を直接操縦システムに接続しとるけん、自動操縦なんぞよりよっぽどレスポンスよーなっとっとよ」
「バカなことするな!」
 オーグルトと、そして舞川美玖がいるはずの街に向かって猛スピードで地上車を走らせながら、僕は怒鳴った。
「お前のやってることは、ぜんぜん査察行為じゃないじゃないか! 上にどうやって報告するつもりなんだ?」
「ならば、お前のしてることは、何なんだ?」
 オーグルトが、一転、静かな声で、言う。
 銀河標準語――。
「まあ、こまいこと気にすんなや。オイが本当の竜機兵の使い方を見せちゃるさかい」
 絶句する僕に、元の調子に戻ったオーグルトが言う。
「……っと、ミルク・エンジェルと接触! 予想より遅かったにゃあ。んじゃ、通信終わりい」
 ぶつっ、と一方的に、通信が切られる。無線封鎖したらしく、こっちが呼び出しても応答しない。
「くそっ!」
 僕は口汚くののしりながら、アクセルを踏みこんだ。
 対向車が、次第に増加している。避難している地上車だろう。
 と、向こうに、幾筋かの黒煙がたなびいているのが見え始めた。どうやら、かなり派手に破壊活動を行っているらしい。
 かすかに、街の上空を飛びまわる竜機兵のシルエットが見える。
 僕は、ますます増加し、時にこちらの車線にまではみ出してくる対向車を避けながら、さらに街に近付いた。
 ドライバー達が、何か喚きながら、狂ったようにクラクションを鳴らしている。
 見ると、歩道にも、走って避難している人達が多くなってきた。
 こういうのは、侵略活動としては下の下だ。犠牲者が多ければ多いほど、占領後の統治がしにくくなる。本来なら、“画面の中の激しい戦闘で恐怖を与える”のが、銀河帝国的には正しい侵略行為なのだ。
 が、オーグルトは、住民が避難したのかどうか確かめる様子もなく、街を破壊しまくった様子である。僕は、音が出るほどに奥歯を噛み締めた。

 街に入ったところで、地上車では先に動けなくなった。
 道のあちこちが、瓦礫で塞がれてしまっていたのだ。
 頭上では、オーグルトの操るキシオムバーグと、ミルク・エンジェルが、戦っている。
「……何か、ヘンだ」
 ワゴンを降りた僕は、胸を焼くような焦燥感を覚えながら、呟いた。
 ミルク・エンジェルが、苦戦しているのだ。
 確かに、キシオムバーグは、朝とは段違いに動きがよくなっている。ことによるとオーグルトの操縦技術は、ミヒロー大佐よりも上かもしれない。
 が、それにしたって、これまで易々と竜機兵を葬ってきたミルク・エンジェルだ。それが、かつてないほどに、押されている。
「まさか……」
 僕は、今やキシオムバーグが繰り出すプラズマ炎を避けるだけで精一杯になっているミルク・エンジェルを見つめながら、じっとりと汗の浮いた手を握り締めた。
 まさか、あの緊縛が、彼女の動きを妨げているのではないだろうか?
 いや、確かに、あんなにギチギチに縛られたのでは、戦うどころじゃない。それは分かってる。
 でも、“万能無敵”である彼女にとっては、緊縛の効果を中和するなんて、造作も無いはずだ。
「もしかして……縛られてる自分を、受け入れてるのか……?」
 もし、舞川美玖が、“縄で拘束されたがゆえに負けてしまった自分”というものを、受け入れてしまったなら……それは、その通りになる。
 それが、舞川美玖の意思や願望と直結したミルク・エンジンの機能なのだから。
「あっ!」
 僕は、思わず叫んでいた。
 プラズマ炎を避けながら、大きく空中で体勢を崩したミルク・エンジェルを、キシオムバーグの鋭い角がしたたかに打ち据えたのだ。
 力ない放物線を描きながら、ミルク・エンジェルが落下する。
 これは、僥倖なはずだ。
 誰が倒したのであれ、ミルク・エンジェルさえ排除できれば、この地球を占領するのはたやすい。僕の任務は達成される。
 それに、僕の真の目的のためにだって、それは歓迎すべきことのはずなのだ。
 なのに――
「美玖ちゃん! しっかり!」
 なのに僕は、喉も張り裂けよとばかりに、そう叫んでいた。
 その声が、届いたのかどうか……。
 ミルク・エンジェルは、地上すれすれで、ぐうん、と再び上昇を始めた。
 彼女の復活にあわせ、勇ましいBGMが辺りの空気を震わせる。
「よくもやってくれたわねえーっ!」
 ミルク・エンジェルが、舌足らずな声で叫ぶのが、ここまで聞こえる。
 半ば勝利を確信していたであろうオーグルトの操るキシオムバーグが、うろたえたような動きを見せた。
「エンジェリック・レインボウ!」
 キシオムバーグと同じ高さにまで再び上昇したミルク・エンジェルが、高らかに叫ぶ。
 彼女の手の中に、虹色に輝く巨大な弓が、現れた。
 ミルク・エンジェルが、その弓に、光そのものでできているような矢をつがえ、きりきりと引き絞る。
 この間、竜機兵は、全ての戦闘機能を強制的に停止させられ、反撃の機会を奪われる。今回も、それは例外でないようだった。
 オーグルトは、半ば剥き出しになったあのコクピットで、未知の恐怖に晒されているだろう。“万能無敵”ミルク・エンジェルと戦うということは、そういうことだ。
「あたああアーっく!」
 七色に輝く光の弓から、まばゆいばかりに白熱する光弾が放たれた。
 それが、宇宙戦艦並みの竜機兵の胸部装甲を、易々と貫通する。
 一瞬遅れて、竜機兵キシオムバーグ02型は、まるで花火のように華々しく爆発した。
 ミルク・エンジンの力によって、破片は全て空中で燃え付き、下の街への被害は全く無いはずだ。
「つ、次はこうはいかにゃあぞ――って、あちゃちゃちゃちゃちゃちゃ!」
 脱出カプセルになってるキシオムバーグの頭部で逃げ去りながら、オーグルトが、侵略行為継続宣言を行う。あちこちから火を吹いていたみたいだけど、サイボーグだから大丈夫だろう。
 全てが終わり、僕は、安堵のため息をついていた。
 そんな僕に向かって、ミルク・エンジェルが、しずしずと降りてくる。
 この地球における宗教的モチーフである、天使の降臨を思わせるその姿――
 僕は、いつのまにか、まるで子供のように、彼女に激しく手を振っていたのだった。



 帰りの、地上車の中。
 僕たちは、ようやく渋滞から抜けだし、東京湾沿岸の道路を走っている。
 外は、もう真っ暗だ。星が、はかなげな光を、下界に投げかけている。
「びっくりしたよ、美玖ちゃん」
 僕は、助手席の彼女に向かい、言った。
 もちろん、彼女の正体については、すでに知っていたことなので、本当は驚いてなどいない。けど、僕が、“ミルク・エンジェルである舞川美玖”という存在を受け入れて見せたことで、彼女はかなり安心しているようだった。
「それに、すごくハラハラしたよ。いつもより苦戦してるみたいだったから」
「えへへー」
 舞川美玖は、照れたような笑顔を、そのあどけない顔に浮かべた。
「ちょっと、ね……」
「ロープが、アソコに食い込んじゃった?」
「もう、先生のえっちい!」
 ぽす、と舞川美玖が、僕の腕を殴りつける。
 数多の竜機兵を倒してきたとは思えないような、可愛らしい力だ。
「でもでも、ホントに、今日はピンチだったの」
「うん……」
「だけど、もうダメって思った時、先生の声が聞こえて……どうにか、勝てたんだよ」
 そう言って、舞川美玖は、窓の外の暗い海に視線をやった。
 沈黙の中、地上車の駆動音だけが、低く響く。
「あのね……あたし、ミルク・エンジェルをやってて、ちょっと辛いときも、あるんだ」
 しばらくして、舞川美玖が、ぽつん、とそんなことを言った。
「最初のころなんか、取材のヘリコプターとかにおっかけられたりして、ホント、大変だったの。それに、かいじゅーが街を壊すたびに、何だかあたしまで、いっしょに壊したみたいに言う人がいるし……」
 僕は、新聞やTVの、ミルク・エンジェルに関する報道の無責任さを思い出した。
 そう、ミルク・エンジェルは、実は社会に完全に受け入れられているわけではない。彼女のような非常識な存在に対し、ヒステリックな拒否感を露わにする者も多いのだ。
 人は、常識にくるまれ、思考を停止することによって、どうにか現実と向き合っていられる。そして、“常識”という幻想を共有できない境界線上の相手に対し牙を剥くのも、社会を構成する人々の自己防衛本能のようなものなのだろう。
「でも――これからは、僕が味方だよ」
 暗い空を見つめながら、僕は、言った。
「うん……♪」
 舞川美玖が、嬉しそうに返事をする。
 今までとは異なる、冷たいナイフのような罪悪感を自覚しながら、僕は、これから自らがとらなくてはならない行為に思いを馳せたのだった。



《エンディング・テーマ》
『白い天使のうた』



《次回予告》

え? ココナがいなくなった? やっぱほっときすぎだったか〜。
でも、これってロボットの反乱だよね。つまりSF。
僕ってSF小説の主人公だったんだなー。
ここんとこSMばっかですっかり忘れてたよ……
って、こんなコトばっか言ってるから逃げられるのかな?
 次回、『失踪! 人造人間』。ところで今日の晩飯用意するの誰?



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