chaining


2−2



 黒眼鏡の男と、白衣の女が、向かい合って座っている。
「あなたの探していた薬よ、乾くん」
 “乾くん“とその男の名を呼んだ、年齢不詳の白衣の女は、霧子である。
 ごつごつした、どこか爬虫類じみた顔に禿頭という物騒な外見の乾に、霧子は、いっこうにひるんだ様子を見せていない。
 二人とも、裏の世界に属する人間である。乾はある大掛かりな組織に身を置く一種のエージェントであり、霧子は非合法な医療行為専門の無免許医だ。
 二人がいるのは、霧子の“医院”の応接室である。応接室と言っても、無機質な白一色の部屋に、テーブルと何脚かのイスが置かれているだけの場所ではあるが。
 テーブルの上には、合成樹脂の小さなチューブがある。針のついた、携帯用の使い捨て注射器だ。
「誰があんたに持ちこんだんだ?」
 乾が、無愛想な低い声で訊く。
「円くん」
「――何?」
 霧子の答えが予想外だったのか、乾は思わず聞き返していた。
「結城円くんよ。たまたま学校に行ったら、拾ったんですって」
 乾の反応がおかしかったのか、いままで能面のように無表情だった霧子の顔に、淡い笑みが浮かぶ。
「それは、意外だな……学校はどこなんだ?」
「市内の、第六中学校」
「……そうか」
「さぞかし、気がかりだったんでしょうね」
 笑みを浮かべたまま、霧子が言う。
「こんなものが出回ってたんじゃ、あなたの組織も大打撃ですものね」
「強い薬なのか?」
「強い、と言うより、巧妙ね。なかなかセンスのあるカクテルだわ。いくらでも需要はあると思う」
「……」
 乾が、苦々しげにその薄い唇を歪める。
「これじゃ、乾くんも、なりふりかまってられないわよね」
 意味ありげにそう言う霧子に、しかし、乾は答えなかった。



 音楽室。
 外は夕暮れ、西の空が茜色に染まっている。蛍光灯のついていない室内は、予想外に薄暗かった。
「何をしてる、藍原」
 入口のところで逡巡しているセーラー服姿の愛美に、男は声をかけた。
「でも、橘先生……」
「来るんだ」
 何か言いかける小さな少女に、橘と呼ばれたその男は冷たく言う。
 愛美は、おどおどと周囲を見回しながら、音楽室に入っていった。
「やっぱり、学校の中は……」
「藍原」
 橘は、そのクルーカットの精悍な顔に似合わない、神経質そうな表情を浮かべた。
「お前は俺を焦らしているのか?」
「そんなこと、ありません……」
 小さな声で、愛美が言う。
「ちゃんと、渡してきたか?」
「はい……。でも、あたし、恐くて……」
「大丈夫だ。お前みたいな、いかにも大人しそうな生徒なら、絶対に目をつけられることはない。だからこそ適任なんだ」
「……」
 愛美は、沈黙してしまった。
 確かに自分は、橘の言うとおり、見るからに大人しい女子中学生かもしれない。だとしても、あのいかにも不良然とした高校生達が渡す相手では、結局のところ余計に目立ってしまうのではないだろうか。
 そうも思うが、愛美は、何も言わない。
「それより……ご褒美の分は、きちんととっておいたか?」
 口元に歪んだ笑みを浮かべながら言う橘に、愛美はおずおずとポケットの中のものを差し出した。あの、小さな使い捨ての注射器だ。
「じゃあ、スカートを脱いで、机の上に乗るんだ」
 注射器を受け取りながら、橘は愛美に命じた。
「やっぱり、ここでするんですか……」
 愛美の可憐な顔が、哀しげな表情を浮かべる。
「ここなら、きちんと防音されてるからな」
 橘が、愛美を嬲るような口調で言う。
「……」
 愛美は、じっとうつむいた後、フレアスカートのホックを外し、スカートを脱いだ。
 そして、丁寧にそれを畳んで、傍らの椅子の上に置いた後、おずおずと長机の上に座る。三人が並んで座るタイプの、頑丈そうな机である。
 まだ幼さを多分に残す十五歳の少女が、上はセーラー服をまといながら、下はショーツしかはいていない、という姿は、どこか痛々しいようなエロチシズムを感じさせた。
「脚を開け」
 橘に言われて、愛美はゆっくりとその細い脚を開いた。
 ぬけるような白い肌の中で、太腿の内側の部分にだけ、紫色の内出血の痕がある。小さな、しかしひどく痛々しい傷跡だ。
 間を置かずに、何度も同じ場所に注射をされた痕である。
 橘が、慣れた手つきで、その愛美の太腿の内側に、注射針を突き刺した。
「んッ……」
 愛美は、痛みにその細い眉をたわめた。そんな表情さえも、男の歪んだ性感を煽ってしまうということを、愛美は知らない。
「あ……」
 いつもの奇妙な感覚が、愛美の華奢な体を包み込んでいく。
 愛美は、抑えきれないように、小さく喘いでいた。
 その黒い大きな瞳は涙で潤み、人形のように白く端正な顔が、次第に紅潮していく。
 そして、全身を巡る血液が、ある一点に集中していくような感覚……。
 可愛らしいキャラクターがプリントされたショーツの中で、幼いスリットがじんわりと熱を帯び、その存在を主張し始めている。
「あ、あつい……」
 愛美は、うわごとのような口調でつぶやいていた。まるで、体の内側から、とろとろと炎で炙られているような気持ちになっている。
「せんせい……」
 愛美は、机の上にだらしなく座りこんだまま、橘の股間のあたりに視線を向けた。
 普段のおとなしそうな彼女からは考えられない、ねっとりと濡れたような視線である。
「お、おねがいです、せんせい……はやく……」
 そう訴える愛美の方を、しかし、橘は見ていなかった。
「もういいですよ、牟田口さん」
 そう、音楽準備室の方に呼びかける。
「え……?」
 愛美は、すでに半ば理性を失い、とろんと濁った瞳を、音楽実と準備室を隔てるドアに向けた。
「待ちかねたよ、橘君」
 口元に下卑た笑みを浮かべた初老の男が、突き出た腹をゆすりながら入ってくる。この男が牟田口らしい。
「せんせい……どういうこと、ですか……?」
 そろそろろれつの怪しくなってきた声で、愛美は橘に言った。
「お前は今日から客を取るんだよ」
 愛美の可愛らしい耳たぶに口を寄せながら、橘は言った。
「う、うそ……」
「嘘なものか」
 橘が、にやりと口元を歪める。
「だって、せんせい、あたしのこと、すきだって……」
「好きだよ。お前みたいな騙されやすい娘はな」
 そう言った後、橘は、愛美の左の耳にふっと息を吹きかけた。
「ひゃうウっ!」
 たったそれだけで、体を縮こまらせ、敏感に反応してしまう愛美を、牟田口は血走った目で見ている。
「おいおい、橘君、私の分も残しておいてくれよ」
「これは失礼しました」
 浅黒い顔に卑屈な表情をへばりつかせ、橘は言った。
「ではごゆっくり」
 そして、橘は音楽準備室の中へと消えていく。
 牟田口は、そんな橘にほとんど注意を払うことなく、片手でネクタイを緩めながら、愛美に近付いていった。
「あ……や、やです……」
 茫然とした愛美の顔に、牟田口が顔を寄せる。
「ンぶ……」
 牟田口は、愛美の細い肩をがっしりと捕らえ、その可憐な唇に唇を重ねた。
「ん、ンんん、ンー……」
 分厚い唇の間から、不気味な軟体動物のような舌が現れ、愛美の小さな口をこじあけた。
 愛美は、必死になって身をよじり、男の手から逃れようとする。少なくとも、自分ではそうしているつもりだった。
 しかし、突然現れたこのおぞましい壮年の狼藉に、体の方は勝手にはしたない反応を返してしまう。
 牟田口の分厚い手が、乱暴に愛美のまだ薄い胸をまさぐった。
「ンくう……」
 ブラのカップに乳首がこすれる感覚に、思わず甘えるような鼻声を漏らしてしまう。
 いつしか愛美は、かつて橘に教え込まれた通り、口腔を蹂躙する舌に、自らの舌を絡めていた。ぺちょぺちょというイヤらしい水音までが、愛美の官能を高めていく。
「まだ子どものくせに、イヤらしいな、お前は」
 ようやく口を離した牟田口は、嘲るように言った。
「ご、ごめんなさい……」
 普段から謝りぐせのついている愛美は、思わずそう言ってしまう。
「お仕置きだ」
 そんなことを言いながら、牟田口は愛美の体を机の上に押し倒した。
「きゃああン!」
 牟田口は、愛美が高い悲鳴を上げるのもかまわず、その両足を両手で高く支えた。
 そして、まるでオシメをされる乳児のようなポーズをとらせながら、子どもっぽいデザインのショーツを脱がせていく。
「あ、いや、いやあ……」
 愛美が、ばたばたと宙で脚を振る。しかし、薬のせいか、その動きには鋭さがなく、まるでじゃれてふざけているような感じだ。
「ほほお」
 愛美の足首をつかみ、脚をVの字に開いてその部分を凝視しながら、牟田口は声をもらした。
 ぷっくりとした無毛の恥丘に刻まれたスリットが、その幼げな外見からは考えられないほどの蜜を溢れさせている。ピンク色のクレヴァスがほころびかけているその様子は、まるで異国の可憐な花のようだ。
 牟田口は、意地汚く舌なめずりをしながら、愛美の最も秘めやかな部分に口を寄せた。
「こんなにイヤらしく濡れおって……」
 そう口に出して確認しながら、ぱっくりと恥丘に食いつく。
「ひあアーッ!」
 おぞましさと、そして間違いようのない快感に、愛美は悲鳴をあげた。
 牟田口は、その悲鳴に目を細めながら、肉の花弁に舌を這わせ、ぢゅるぢゅると音をたてて愛液をすする。
「あ、あわァ! ひあッ! やああーッ!」
 十五歳の幼い体では受け止めきれない快感に、愛美は陸に上げられた若鮎のように、びくびくと体をくねらせた。
 そんな愛美の、まだくびれきってない幼い腰を抱えるようにして、牟田口がさらに激しく舌を使う。
 自分の娘よりもなお年の離れている少女の秘部をじっくりと味わった後、牟田口はようやく口を離した。
「あ、あああ……ひァ……」
 愛美の体は、未だ、ぴくン、ぴくンと痙攣している。その靡肉からはとろとろと牝の粘液が滴り、会陰を伝って秘めやかなアヌスを濡らしていた。
 牟田口は、愛美の両足を片手で支え、その可憐なすぼまりをくりくりと右手の指で嬲った。
「や、やあァ……やめて、ください……」
 そう言いながら、愛美は力なく首を振った。それが、おぞましい快楽に全身を侵されつつある彼女にできる、精一杯の抵抗だった。
 ともすれば、わずかに残っている嫌悪や羞恥の感情さえ、圧倒的な官能のうねりに押し流されそうになってしまう。
 牟田口は、愛美の中のそんな葛藤など知らぬげに、彼女のアヌスから指を抜き、ポケットから何かを取り出した。
 角の取れた円錐形の、プラスチック製らしい器具である。その根元の部分からは、動物の尻尾を思わせる房が生えている。
 牟田口は、途中で何段かのくびれのある円錐部分を、愛美のアヌスにぐりぐりと押しつけた。
「な、なに? やめてぇ……っ」
 最も他人にさらしたくない箇所を、見たこともないような道具で弄ばれ、愛美は悲痛な声をあげた。
 しかし、牟田口は、歪んだ笑みを浮かべながら、徐々にその器具を愛美のアヌスに埋め込んでいく。
「イ、イヤ……そんなの、入れないで、ください……」
 愛美の訴えも空しく、牟田口は、その器具のほとんどを愛美の中に侵入させてしまった。
 はァっ、はァっ、はァっ、はァっ……と、愛美が口を半ば開けて喘ぐ。その表情は、肛門を押し広げる奇妙な異物感に、どこかとまどっているようだ。
 牟田口は、左手で愛美の脚を支えたまま、右手で器具のスイッチを入れた。
「きゃあああああああああああッ!」
 ヴィイイイイイ……ンという低くくぐもった唸り声に、愛美の悲鳴が重なった。
 肛門用のローターが細かく振動しながら、愛美のアヌスを残酷に責めあげる。
 その振動にあおられるように、尻尾状の房がふるふると震えているのが、どこか滑稽だ。
「あ、あああああッ? ンああ! ああアーッ!」
 普通であれば苦痛しか感じないはずのこの刺激に、愛美は喩えようもない暗い快美感を感じてしまっていた。
「ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメえ……」
 そう言いながら、愛美は、両手で顔を覆った。
 牟田口は、愛美の脚から手を放した。愛美は、長机の上で、膝を立てるような仰向けの姿勢になる。
「ダ、メえ……んくっ……ふあ、あ、あ、ああァ……んはぁ……っ」
 苦しげな、それでいながら快楽に濡れた喘ぎを漏らしながら、愛美は半ば腰を浮かし、排泄器官で紡ぎ出される快楽に酔いしれているようだった。
 牟田口は、そんな愛美の頭の方に回りこんだ。
「あっ……」
 顔を覆う小さな手を強引に外されて、愛美は思わず声をあげていた。
 開かれたズボンの前から、半ば血液を充填した牡器官が、グロテスクな外観をさらしている。
 目の前に突き出されたその赤紫色の亀頭部に、愛美は圧倒されているようだった。
「これが欲しいんだろう、ああ?」
 ぴたぴたと愛美の頬を叩きながら、牟田口が声を上ずらせて言う。
「んぁ……」
 愛美は、その小さな桜色の唇を震わせていた。潤んだ大きな瞳は膜がかかったようになっていて、そこにはいかなる理性の光も感じられない。
「ほ……しい……です……」
 次々と身の内に湧き起こるおぞましい快感に突き動かされるように、愛美は言った。
「もっとはっきり言え!」
「ごめんなさいっ……ほしいです……ほしいです……っ」
 強い声で叱責されて、愛美は淫猥なおねだりを何度も繰り返してしまう。
「だったら、床に四つん這いになってお願いするんだ!」
「は、はい……」
 愛美は、かくかくと脚を震わせながら、言われるままに床に下り、両手をついた。
 直腸内で振動を続けるローターにつながった房が、まるで本物の尻尾のようだ。
「このイヤらしい牝イヌめ……!」
「あぁ……ごめんなさい……」
「イヌが人間の言葉を使うな! イヌはイヌらしくワンと鳴くんだ!」
「わ、わん……わん……っ」
 惨めさに声を震わせ、ぽろぽろと涙をこぼしながらも、ペニスを前にした愛美は犬の鳴き声を繰り返した。
「しゃ、しゃぶれっ!」
 余裕のない声で言いながら、牟田口は、愛美の前に膝をつき、その目の前に半勃ちのペニスを突き出した。
「わん……」
 そう返事をして、愛美は、牟田口の汚穢な器官をぱっくりと咥えこんだ。
「うぉぉっ……」
 生温かい口内でシャフトに舌が絡みつく感触に、牟田口は思わず声をあげていた。
 次第に硬度と容積を増していくペニスに、愛美の小さな口はすぐに一杯になってしまう。
「くっ……うまいぞ……橘め、さんざお前の口を使ったんだな?」
 愛撫の代わりに、ぐらぐらと愛美の頭をゆすりながら、牟田口が言う。
「んん……ン……ン……ン……」
 愛美はそれに答えず、切なげに眉をたわめながら、醜く静脈を浮かした陰茎に、その可憐な唇をけなげにスライドさせた。
 ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぷっ……という湿った音に、愛美のアヌスを責め続けるローターの振動音が重なる。
「ン……んふっ……んんン……んふ〜ン……」
 愛美の鼻声に、媚びるような甘い響きが加わっていく。
「く、咥えるだけじゃなくて、もっとイヤらしい顔で舐め舐めするんだ!」
 そう言いながら、牟田口は腰を引いた。
「んぱっ……はぁ、はぁ……わ、わん……」
 言われるままに、そのピンク色の舌を精一杯伸ばし、愛美は牟田口のペニスを舐めしゃぶった。
 ぬらぬらと唾液に濡れたシャフトが愛美の可愛らしい顔をなぶり、無残に汚していく。
 ペニスへの刺激もさることながら、幼い顔に浮かぶ淫猥なその表情に、牟田口は限界を迎えていた。
「うおおおおおッ!」
 獣のような声をあげながら、左手で愛美の前髪をつかみ、右手で自らをしごきあげる。
「ぐおっ!」
 びゅううッ! と、その年齢からは考えられないような量と勢いのスペルマが、愛美の顔めがけて宙を飛んだ。
「あうン!」
 顔を叩く熱い粘液の感触に、愛美は思わず顔を背けてしまう。
 べっとりと白濁液に濡れた愛美の頬に、牟田口は自らのペニスをこすりつけた。
 放ったばかりだというのに、そのペニスは、一向に衰える様子がない。そのことに牟田口は驚嘆し、狂喜した。
「こ、今度は、おま×こに突っ込んでやるからな!」
「わん……」
 従順にそう返事を返す愛美の背後に、牟田口は回りこむ。
 愛美のそこは止めどもなく愛液を溢れさせており、太腿の内側まで濡れ光っていた。
 その、熱く息づくピンク色の花弁に、牟田口がグロテスクなペニスを押しつける。
「あああぁぁ……」
 愛美が、期待と絶望に満ちた声をあげる。
 その声に誘われるように、牟田口は、一気に腰を進ませた。
「ンあああああッ!」
 まだ狭い肉の通路を強引に押し広げられ、愛美は、お尻を突き出す格好で床の上に突っ伏してしまった。
 まるで、牟田口の突き出た腹に押し倒されたような格好だ。
 そんなことに構わず、牟田口がぐいぐいと腰を使う。
「あッ、あッ、あッ、あッ、あッ、あッ……!」
 抽送のたびに、エラの張った雁首に、幼い膣内粘膜をこすられ、愛美が断続的な悲鳴をあげる。
 薄い肉ごしに、アヌスに埋め込まれたローターの振動を感じながら、牟田口は愛美を犯し続けた。愛美の“尻尾”が、ふるふると震えながら、牟田口の腹を撫で回す。
「あ、あいッ! いい! いい! いいッ! き、きもちイイッ!」
 前と後の肉の門を蹂躙され、快楽に屈服した愛美が、あられもない声をあげる。
 ぱあン、その愛美の白いお尻を、牟田口が平手で叩いた。
「きゃあああああッ!」
 その衝撃さえ、愛美の腰の中で快楽の電流に変換され、背中を貫いて脳を痺れさせる。
「イヌはイヌらしく鳴くんだッ!」
 二度、三度、愛美のお尻をスパンキングしながら、牟田口が叫ぶように言う。
「わ、わんッ! わん、わん、わううン……ッ!」
 リノリウムの床に爪を立て、涎すらこぼしながら、愛美は鳴き続けた。
 二人の接合部から愛液が溢れ、下に小さな水溜りを作っていく。
 牟田口は、突っ伏したままの愛美の腋に両手を差し入れ、羽交い締めにするようにして引き起こした。
「ンああああああああああッ!」
 体位が変わり、膣内の別の場所を責められて、愛美が高い声をあげる。
 牟田口は、セーラー服をまとったままの上半身を抱き締め、突き上げるようにして腰を使った。
「あひッ! あ! ンああ! んわああああああッ!」
 愛美の小さな軽い体が、宙で踊る。
 牟田口は、愛美の首をねじって横を向かせ、その頬に舌を這わせた。
 愛美が、凄まじい快楽と、かすかに残る嫌悪感に透明な涙をこぼしながら、牟田口の舌に舌を絡める。
 ひとしきり、十五歳の少女の舌と唾液を味わった後、牟田口はいきなり立ちあがった。
「きゃううううッ」
 深々と貫かれた結合部に自らの体重がかかり、愛美は四肢をばたつかせる。
 そして、机に両手をついて、どうにか体の平衡を取り戻した愛美の腰を抱え、牟田口は最後のスパートをかけた。
「きゃああッ! ひあ! あ! あアア! あく! あぁああああああアッ!」
 立ったまま背後から犯されながら、愛美が、まるで気が狂ったような声をあげる。
 いや、すっかり薬物に侵された愛美の心は、その時、確かに狂気の淵を見たのかもしれない。
「! ! ! ! !」
 愛美は、大きく口を開け、声にならない叫びをあげていた。
 絶頂を迎えた愛美の膣内がきつく収縮し、肉の襞が激しくざわめく。
「ぐああああああああああああッ!」
 断末魔のような声をあげながら、牟田口も、少女の体内にしたたかに精を放っていた。



(あ……)
 絶頂の波が通りすぎた後、愛美は、いつもの悪寒を感じていた。
 まるで、熱病患者が感じるような、体の奥から湧き起こるような寒気。
 凄まじいばかりの疲労感と倦怠感、そして喪失感が、愛美の小さな体を蝕んでいく。
(たす、け、て……)
 闇の中で、愛美は、誰に届くとも知れぬ声で、悲鳴をあげ続けた。
 上も下も、それどころか自他の区別さえ分からなくなる。
 まだわずか十五歳の少女は、はっきりと死を意識しながら、意識を失った。



「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……」
 肥満した肉食獣を思わせるような荒い息をつきながら、牟田口は椅子に座りこんでいた。
 その足元で、愛美が、膣口から大量の精液をあふれさせながら、失神している。
 橘の話によれば、これから数日、愛美はクラブの合宿という名目で、家を空けることになっているという。この幼い少女を自分の家に監禁し、薬漬けにした挙句さんざんに嬲りものにすることを想像し、牟田口はにやにやと口を歪めた。
 と、音楽準備室の扉が、ゆっくりと開いた。
「だ、誰だ?」
 この街でそれなりの地位にある牟田口は、さすがに顔を緊張させる。しかし、入ってきたのは、愛美と同年代と思われる、Tシャツにスカート姿の少女だった。
 少女は、床に倒れている愛美を見ても、ほとんど表情を変えず、牟田口に近付いていく。
 その小さな手に、例の使い捨ての注射器があるのを見て、牟田口は一気に緊張を解いた。
「橘君も、サービスしすぎだな。さすがに儂も……」
 立ちあがりながら、何か言いかける牟田口に、その栗色の髪の少女が寄り添う。
「おっ……」
 とまどいながらも、にやけた笑みを浮かべる牟田口の太い腹に、少女は腕を回した。
 そして――シャツ越しに、牟田口の腰に注射針を突き刺す。
「なッ?」
 驚く牟田口から、少女はするりと体を離した。
「な、な、な……っ!」
 見開いた牟田口の目が、いかなる作用によるものか、みるみる充血していく。
「お前、は……っ?」
 そう言いかけ、少女に手を伸ばそうとしながら、がっくりと牟田口は膝をついていた。
 まだ剥き出しになっていた牟田口のペニスが、信じられないほどに膨張している。
 その、先ほどの倍以上にまで膨らんだ自らのモノに気付く様子もなく、牟田口は左の胸を右手で押さえた。
「ぐが……げええ……」
 血行に異常が生じているのか、顔を赤黒く染めながら、牟田口はうずくまった。眼球の毛細血管が切れ、まるで血の涙を流しているようだ。
 ぶつン、とどこかで何かが千切れるような音が響く。
「ぐべ……」
 牟田口はくるりと眼球を裏返しにし、だらしなく床に倒れ伏した。
 その股間で、海綿体を断裂させたペニスが、まるで冗談のように膨らみ続けている。
「やっぱり原液は強力なんだね……」
 混じり気なしの同情をその顔に浮かべながら、少女はつぶやいた。
「終わったか?」
 準備室から、低い男の声が響く。乾だ。
 その乾の足元には、もとの人相が分からなくなるくらいに顔を腫れさせた橘が座り込んでいる。
「うん」
 そう、乾に返事をしながら、少女――いや、少女の姿をした円は、未だ失神したままの愛美の体を抱えあげた。
 いくら愛美が小さいとはいえ、円の体も少女そのままの華奢なものである。円は、頼りなくよろめいてしまう。
「手伝おうか?」
「いいよ」
 意外なほどきっぱりと、円は言った。
「それに、乾さんは、そこの先生を連れてくんじゃないの?」
 円が、ちら、と橘に視線を向ける。
「いや、聞きたいことは全て聞いた。あとはほっとくさ」
「ふーン。……じゃ、悪いけど、霧子センセのとこに送ってって」
「分かってる」
 そう答えた後、乾は、まだびくびくと痙攣している牟田口に、黒眼鏡の奥の視線を移した。
「しかしまあ、大したタマだな。さすがは、結城の弟だ」
「それはどーも♪」
 まるで、成績を褒められた子どものように、円がにっこりと微笑んだ。



2−3へ

3−2へ

目次へ