2−1
薄暗い、無機質な診療室の中で、一人の少年が立っている。
少女と見まがうばかりの美少年だ。
いや、彼の顔を見た者は、十人が十人とも、彼のことを少女であると断ずるだろう。
柔らかそうな、やや癖のある栗色の髪、大きな二重の目、桜色の唇、首から肩にかけての滑らかなライン……
それどころか、彼のまとうTシャツの胸の部分はゆるく膨らみ、その下に発達途上のものとはいえきちんとした乳房を隠しているのが分かる。
しかし、彼は少女ではなかった。
彼は下半身に何も身につけていない。その、すらりとした白い脚の付け根の部分に、彼が男である印が、きちんと存在している。
彼は、その小柄な体にはやや大きなTシャツのすそを捲り上げ、それを目の前の女性にさらしていた。かすかに、その頬が上気しているように見える。
それに反して、彼のその部分を見つめる白衣の女は、冷徹なまでに無表情だ。その氷のような美貌に、長い艶やかな黒髪よく似合っている。
「もういいわ、円くん」
白衣の女は、事務的な口調でそう言って、傍らの事務机の上に広げられたカルテに、ドイツ語で何やら書き記した。
「うふ、よかった」
円と呼ばれたその少年は、くすくすと笑いながら、キャスター付きの脚に支えられた小さな籠から、ショーツを取りだしてその形のいい脚を通した。
「あれ以上見つめられてたら、ボクの、どうにかなっちゃうとこだったもん」
そう言いながら、ジーンズ地のスカートをはき、ファスナーを上げる。
「円くん」
女は、椅子ごと円に向き直り、言った。
「何度も同じことを訊いて悪いけど……手術を受ける気は、ないの?」
「うーん」
円は、すとんと丸いお尻を丸椅子に落としながら、腕を組んだ。
「確かに、切っちゃえば、水着とかも着れるようになるけど……やっぱ、惜しいよね」
「……」
まるで、夕食のメニューを迷ってるような軽い口調で、円は続ける。
「それに、このカラダなら、男のコとも女のコとも、仲良くなれるし」
「……円くん」
「なあに? 霧子センセ」
かすかに眉を曇らせた女医――村藤霧子に、円がにこにこと微笑みながら聞き返す。
「あなたのその体は、とても危ういバランスの上に立っているのよ。一つの体に、男と女が同居できるほど、人間は柔軟にできてないの」
「じゃあ、ボクのおちんちん切っちゃえば、この体は安定するの?」
「少なくとも、今よりは……」
「そうかなあ」
円は、妙に思慮深げな声で言った。
「パパがボクにしたことって、まだ、誰もやったことのないことばっかでしょ? だったら、それをどういじくっても、その結果をきちんと予測することはできないんじゃないの?」
「……」
霧子は、不覚にも沈黙してしまった。その態度が、円の言ったことが真実であることを告げている。
「霧子センセは、ボクの体じゃなくて、何て言うか……もっと別のものを治そうとしてるんでしょ」
「それは……そうね。認めるわ」
そう言いながら、霧子はかすかながら戦慄に似たものを感じていた。この目の前の少年の洞察力には、しばしば驚かされる。未だ十五歳というその年齢では考えられないほどだ。
「でも、それは、必要ないよ」
円は、あっけらかんとした口調で言った。
「ボクの今の立場には、この体が色々と都合がイイんだ♪」
「……」
霧子はしばし沈黙した後、ため息をついた。
「結城先生はとても優秀な医師だったし、尊敬もしていたけど……私は、正直、罪作りな方だと思うわ」
「パパはね、人よりちょっと寂しがり屋だっただけだよ。ママがいなくなったことに、どうしてもガマンできなかったんだ」
「でも……」
「霧子センセ……パパのこと、好きだったんでしょ?」
霧子は、鋭い目つきで円の顔をにらみつけた。しかし、円は平気な顔だ。
「ガマンしないで仲良くしてたらよかったのに」
「何でもそうやって性的なことに結びつける点では、あなたはやっぱり異常なのよ」
霧子が、冷たい口調で言う。
「まずはセックスがあって、その後に人が生まれるんでしょ」
円は、その少女そのままの顔に不思議な微笑を浮かべながら、言った。
「だったら、人の世の中はセックスとその結果だけでできてるんだよね」
そう言いながら、円は流れるような動作で立ち上がった。
「じゃ、お世話サマ」
「……お大事に」
事務的な口調でそう言う霧子に、円はぺこりとおじぎをして、診療室を出ようとした。
「あ、待って」
霧子が、不意に円を呼びとめる。
「はい?」
「そろそろ一学期も終わりだし、お役所で手続きをしておく必要があるわ。診断書とかはこっちで書くから、また学校に書類をもらってきてほしいの」
「公文書偽造だね♪」
「小夜歌さんに行ってもらった方が、いいと思うけど」
「お姉ちゃんは自分の学校があるから……ボクが、行きますよ」
すました顔で、円は言った。
「たまには学校に行ってみたいしね」
初夏の太陽に熱せられる白茶けた校舎の中で、円は、霧子の指定した書類を受け取った。
「義務教育期間が終わるまでは、いろいろメンドウだね」
書類に書かれた無内容な文章をぼんやりと読みながら、円は一人つぶやく。
結城円は十五歳である。本来であれば、まだ中学校に通っていなくてはならない年齢だ。
が、死んだ父親によって半ば少女に改造された円は、病気療養という名目で、学校には来ていない。円の肢体では、男で通すのはあまりにも無理があったのだ。
当初その工作をしていたのは円の父親であり、今はその知人である霧子が、手続きを引き継いでいる。
夕刻だが、太陽は、まだ高い位置にあった。
生徒がほとんど帰ってしまった校舎の廊下を、円はのんびりと歩き出す。
どん!
「きゃ!」「わっ!」
衝撃で、円はたまらず尻もちをついてしまった。
廊下の角を曲がりかけた円に、そちらから走ってきた少女が正面から衝突してしまったのだ。
びっくりして目を見開く円の目の前で、セーラー服姿の少女が、やはりぺたんと座り込んでしまってる。その色白な顔は年相応に幼く、長い黒髪とあいまって、ある種の人形を思わせる。
「ゆ、結城くん……?」
少女は、そう呟いていた。
円は、ちょっと考え込んで、そして、ゆっくりと立ちあがった。
そして、まだ床に座ったままの少女に手を貸しながら、言う。
「円の友達?」
「え……? あ……」
少女は、言葉が見つからないようだ。のろのろと立ちあがりながら、円の顔とTシャツの胸の膨らみ、そしてスカートにと、順々に目を移す。
「あたしは、円の双子の姉で、静っていうの……」
「しずか、さん……? あ、そうですよね……びっくりしたあ。女の子なんだもん」
ほーっ、と少女は息をついた。
「双子なんですね。顔、そっくり。……あ、あたし、藍原愛美です。結城くんと、同じクラスでした。ちょっとの間だけだったけど」
「ふーん。あたしは、ずっと円とは離れて暮らしてたから、こっちのことは知らないの。ちょっと家の事情が複雑でね」
「だそうですね……。あ、ごめんなさい」
「気にしないで」
にっこりと円は笑った。
「藍原!」
と、円の背後から、若い男の声が響いた。
「何してるんだ? 待ってたんだぞ」
円が振り返ると、二十代半ばくらいのクルーカットの男が、不機嫌そうにこちらを見ている。くだけた服装から察するに、この学校の教員らしいが、円の知らない顔だった。
「す、すいません、先生」
慌てたようにそう言って、少女はフレアスカートをぱたぱたと払った。
「さっきは、ごめんなさいね。あのう……結城くんに、よろしく」
そう言い残して、少女は教師に駆け寄っていった。
そして、何か言いながら、並んで廊下の奥へと歩いていく。
「愛美ちゃん……なんだか、顔色悪かったな」
いつになく真剣な口調でそう言った後で、円は、ふと視線を床に落とした。
「何だろコレ?」
言いながら、床に落ちていたものを拾い上げる。円の細い指先ほどの大きさだ。おそらく、少女――愛美が、円とぶつかったときに落としたものだろう。
形は、瞬間接着剤や携帯用の歯磨きの容器に似ていた。透明なプラスチック製で、中に何やら液体が入っている。突起の先端には、カバーが被さっていた。
カバーを外すと、鋭い針が現れる。
どうやら使い捨ての注射器のようなものらしい。
「……」
円は、その少女じみた顔に似合わない、きな臭い表情を浮かべた。
「で、何? 咄嗟に女のコになったわけ?」
食後のお茶を淹れながら、円の姉、小夜歌は、呆れたような声で言った。
姉とはいえ、あまり円とは似ていない。特に、頭の左側でまとめられた髪は艶のある黒色で、円の可愛らしい栗色のくせっ毛とはずいぶんと印象が違う。大きな切れ長の目は、むしろ、二人の腹違いの兄、遼に似ているかもしれない。
「これ以上、ヘンな兄弟増やさないでくれる?」
「変わり者はウチの家系だもん」
そう言いながら、円は茶碗を両手で持って、息を吹いて冷ました。何気ないその仕草まで、すっかり少女のものだ。
「で、なんていったっけ? そのコ」
「藍原愛美ちゃん」
小夜歌の問いに、円が答える。
「珍しいわね。円が、クラスメートの名前を憶えてるなんて」
「可愛いコだったからね」
そう言いながら、円はお茶をすすった。
「そう……」
「……妬いてるの?」
そして、小夜歌の顔をじっと見つめる。
小夜歌は、無言で立ちあがって、テーブルを回って円に近付いた。円も、それに応えるように立ちあがる。
二人で住むにはやや広すぎるマンションに、沈黙が満ちた。
小夜歌の漆黒の瞳が、いささか物騒な光をたたえている。
「今日は、女のコになろうか? それとも男のコとする方がいい?」
そんな円の不思議な言葉が、リビングに響く。
小夜歌は、無言で、円を抱き寄せ、その唇を乱暴に奪った。
小夜歌は、ベッドの上で、円の体を組み敷いていた。
小夜歌の体は華奢だが、円はそれ以上に小柄である。
円は、淡いピンク色のキャミソールのみを身に付けていた。下には、何もはいていない。
一方、小夜歌が身に付けているのは、黒い革製のベルトで構成されたような、不思議な形の下着だった。その、金属のリングが多用されたビザールなデザインの下着は、小夜歌の乳房や恥丘を強調しこそすれ、全く隠していない。
双方とも、これからすることのために、わざわざ着替えた服装である。
「ン……んんン……んむ……」
小夜歌の舌が、円の柔らかな唇をこじ開け、その口蓋を小刻みにくすぐっている。
円はそれに応えるように、小夜歌の舌に舌を絡ませた。その舌を小夜歌の唇が吸い上げる。
ぴちゃぴちゃという淫らな音を奏でながら、姉と弟は互いの唇を求めあった。
濃厚なキスを続けながら、小夜歌は、その白い指先を円の股間へと伸ばしていった。
ひらひらしたキャミソールのすそを持ち上げるようにして、やや細身ながら充分な長さのペニスが、鋭い角度で反りかえっている。
小夜歌は、弟の陰茎を、きゅっ、と握り締めた。
「んんんんんッ!」
小夜歌の唇に口をふさがれたまま、円がくぐもった声をあげる。
ゆっくりと、小夜歌は口を離した。細い唾液の糸が、一瞬、姉弟の唇をつなぎ、消える。
「お姉ちゃん……もっと優しくして……」
目尻に涙を浮かべながら、円は言う。しかし、小夜歌はその口元に歪んだ笑みを浮かべるのみだ。
「きゃっ!」
円が、少女のような悲鳴をあげた。
小夜歌がペニスから手を離し、いきなり円の両脚を持って、その丸みを帯びたお尻を大きく持ち上げたのだ。
さらに小夜歌は、その膝が肩にくっつくくらいに、円の体を折り曲げる。
「い、いたいよ、お姉ちゃん……ひゃァっ!」
円が、奇妙な声をあげた。
小夜歌が、円の太腿の裏側を押さえ込んだまま、天井を向いてしまっているアヌスに口付けしたのである。
セピア色の、慎ましやかな肉の門の周辺を舌でなぞり、音をたてて吸いたてる。
「そ、そんなにしたら……ンああン……」
姉の愛撫に応え、円の顔のすぐそばで、そのペニスが、ひくン、ひくンと震えた。
先端の鈴口から透明な液が漏れ出している。
小夜歌は、ひとしきり円のアヌスを舐めしゃぶった後、ゆっくりと顔を離した。
そして、切れ長の目に濡れたような光を浮かべながら、円の顔とペニスを交互に見る。
どう見てもミドルティーンの少女にしか見えない円の股間で、立派すぎるほど立派なペニスが勃起し、ひくついているその姿が、小夜歌の胸に妖しいざわめきを湧き起こした。
「おねえ、ちゃん……」
眉を寄せ、唇を半開きにしてそう言う円のすらりとした脚に、小夜歌はさらに体重をかけた。
「あうぅっ!」
柔らかい円の体が、限界近くまで折り曲げられる。
苦痛のために切なく歪む円の顔に、円自身のペニスの先端が押しつけられる。
「あ……」
円は、顔を背けたまま、潤んだとび色の瞳だけを姉の方に向けた。
「自分でしなさいよ、円」
小夜歌が、興奮で声が震えそうになるのを抑えながら、努めて冷たい口調で言う。
円が、観念したように目をつむり、おずおずとピンク色の舌を伸ばした。
円の舌先が、自身の亀頭に触れる。
ちろっ、ちろっ、ちろっ……と、先走りの汁を漏らし続ける自分のペニスの先端を円が舐めるのを見て、小夜歌は、その年に似合わない妖艶な笑みを浮かべた。
そして、さらに円の体を折り曲げて、そのペニスを柔らかな唇の合間に押しこむ。
「んんん……ッ」
円は、自分自身に対する口唇愛撫を強制され、ひどくみじめな声を漏らした。
ぴちゅ、ぴちゅ、という濡れた音が、エアコンの効いた部屋の中に響く。
「そうよ……もっと、もっと一生懸命やって……」
小夜歌は、すこし声を上ずらせながら、再び円のお尻に口を寄せた。
そして、弟の排泄器官に対する淫らな悪戯を再開する。
「ん! んむむッ! んんン〜ッ!」
自らの亀頭に口をふさがれながら、円はくぐもった声をあげた。小夜歌は、その声をもっと引き出そうとするかのように、舌先を尖らせ、度重なる肛虐にすっかり柔らかくなった円のアヌスに侵入させる。
円は、その白い脚をゆらゆらと揺らしながら、次第に熱心に自身の陰茎に舌を絡めていった。
ふーッ、ふーッ、という苦しそうな鼻息までが、媚びを含み始めているように聞こえる。
円は、自分自身の舌使いに、着実に追い詰められつつあった。
その形のいい眉が八の字にたわみ、小さな拳が、シーツをぎゅっと握り締める。
「まどか……かわいいわよ……」
小夜歌が、円の白いお尻に口付けを繰り返しながら、そう言う。
そして小夜歌は、円の直腸に、そのしなやかな指を残酷に突き入れた。
「ンンンンンンンンッ!」
小夜歌は、円が声にならない声をあげるのにも構わず、巧みに前立腺を刺激する。
円の口の中で、円の亀頭がさらに膨れ上がった。
「〜ンッッッ!」
円の口内で、おびただしい量の精液が迸った。
「ンあッ! あッ! ああアーッ!」
高い声をあげる円の口から解放されたペニスが、びくン、びくン、としゃくりあげ、その度に白濁液を撒き散らす。
自らの熱い体液に、いたいけな少女そのままの顔を無残に汚され、円は陶然とした表情を浮かべていた。
「あ……ンあああ……ふわァ……」
細い声をあげ続ける円の腰を、小夜歌はようやく離した。
ぐったりとシーツの上に体を伸ばした円の体が、ぴくぴくと震えている。
「ふふ……すっごい出したね、円……」
小夜歌はそう言いながら、円の顔に付着した精液をすすり上げ、舌を伸ばして舐め取った。
そして、なされるがままの円の口内に、舌を差し入れる。
円は、まるで母親の乳首を吸う乳児のような至福の表情で、姉の舌を吸うのだった。
円が我に返ったときには、小夜歌は準備を整えていた。
あの不思議なデザインのショーツに、毒々しい紫色のディルドーを固定し、その表面にたっぷりとローションを塗ったのである。
「あア……」
両脚を抱えられ、おぞましい外見のシリコン製の男性器を肛門にあてがわれ、円が声をあげる。
その声は、アヌスを蹂躙される予感に、甘くとろけきっていた。
小夜歌の目も欲情に濡れている。しきりに自らの朱唇を舐める姿が、ひどくエロチックだ。
「いくよ、まどか……」
「きて、おねえちゃん……」
姉と弟が、互いに声を掛け合う。
そして小夜歌は、一気に腰を進ませた。
「ンアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!」
びくン! と円の華奢な体が弓なりに反りかえった。
小夜歌が、大きく腰をグラインドさせ、円の直腸粘膜をディルドーでえぐる。
「あッ、あああッ! んあぅうッ! ス、スゴい、スゴいよぉッ!」
円は高い声をあげながら、身をよじった。
その股間で、力を失っていたペニスが、次第にまた勃起していく。
小夜歌は、何かにとり憑かれたように腰を動かしながら、円のペニスを右手で握った。熱い血液の流れが、手の平を通して伝わってくるようだ。
小夜歌は、その細長い指先で、円のシャフトをしごき始めた。
「ひあッ! おねえちゃん、おねえちゃんッ!」
いやいやをするかのように首を振りながら、円が激しく喘いだ。汗の浮いた額に、柔らかそうなくせっ毛がまとわりついていく。
円が身悶えるたびに、可愛らしいデザインのキャミソールの下で、発達途上の乳房が揺れるのが、かすかにうかがえた。
小夜歌は、繊細な指使いで円のペニスをしごきあげながら、アヌスを犯し続ける。
「ダメ……おねえちゃん……そんなに激しくしたら……ボク、ボク……っ!」
「まどかァ……もっと、もっと可愛い声、聞かせて……」
「でも、でももうボク……ッ!」
その幼い体で受けとめるには激しすぎる性感に、円は、早くも音を上げてしまった。
小夜歌の手の中で、円のペニスが絶頂の前触れの律動を始める。
「ボク……もう……ダメぇーッ!」
びくぅッ! と円の体が跳ねる。
その瞬間、小夜歌は、円のペニスの根元を思いきり締め上げた。
「きゃあああああああああアアアアアアアアアアアアアーッ!」
円が、高い悲鳴をあげる。
「どう……? イキたくても、イけないでしょ……?」
輸送管を圧迫し、強制的に射精を止めながら、小夜歌は悪魔のように優しい声で囁いた。
「ア、ア、アアアッ! おねえちゃん……イかせて、イかせてよォ……ッ!」
苦痛と快感に涙を溢れさせながら、悲痛な声で円が訴える。
「ダメよ……もっともっと、可愛く鳴いてくれなきゃ……」
そう言いながら、小夜歌はますます腰の動きを速くする。
「きゃアッ! あひッ! ひあアッ! ああああアアアッ!」
円は、その大きな目を見開き、大きく体を反らせた。
「お、おねがい……おねえちゃん……イか、せ、てぇ……」
そして、やっとの思いでそう言った後、まるで呼吸困難におちいったかのように、ぱくぱくと口を開閉する。
だが、なおもしばらく弟のアヌスを犯した後、小夜歌はようやく円のペニスを解放した。
「は…………ッッッッ!」
円の絶頂の声は、もはや声にならなかった。
その代わりのように、先程よりもさらに大量の白濁液が、どびゅびゅびゅうっ! と凄まじい勢いで噴出する。
円の精液は円自身の体を汚した上、呆れるほどの飛距離を見せ、栗色の髪にまでべっとりと付着した。
そんな射精が、二度、三度と繰り返される。
「あ……あ……ア……ッ!」
円は、もはや自分が感じているのが苦痛なのか快感なのか、それさえも判断できない様子である。
「ァ……ァ……ァ……」
しばらくして、円の全身からぐったりと力が抜けた。
その顔には、まるで強姦されたあとの処女のように、いかなる表情も浮かんでいない。
そんな円の弛緩しきった体に、小夜歌はゆっくりと覆い被さった。
小夜歌の体からも、すっかり力が抜けている。時折、ぴくン、ぴくンと痙攣するところを見ると、小夜歌も絶頂を迎えたらしい。
革製のショーツの隙間からは、粘り気の強い愛液がとろとろと溢れ出ている。
「まどか……」
小夜歌は、円の名を呼びながら、開かれたままの口を唇でふさいだ。
小夜歌がのろのろと舌を入れると、ようやく、円の顔にも表情が戻る。
倒錯しきった性交の後、姉と弟は、うっとりと目を閉じながら、いつまでもキスを続けるのだった。
「で、どうするの? コレは」
シャワーを浴び終わり、意外に可愛いデザインのストライプのパジャマに着替えた小夜歌が、円に言った。その手には、円が拾った、あの小さな容器がつままれている。
「ん……霧子センセイに、見てもらう……」
まだぐったりとベッドに横たわったままの円が、そう答える。
「霧子センセイって……あ、村藤さんのコトね」
小夜歌は、その切れ長の目を細めながら、続けた。
「なんか危なげだけど、深入りして大丈夫なの?」
「わかんない……でも……愛美ちゃんのことが、なんか心配で……」
「……」
小夜歌は、何か言いかけて、やめた。
何をどう言っても、妬いているのかとまた訊かれるような気がしたからである。