chaining


1−3



 千鶴は、公平に言って、鞭の痛みによく耐えた。
 暗い地下室の中で、着衣のまま鞭で打たれるなどという体験は、ほとんどの人間にとって、予想もしなかった事態である。普通の少女であれば、数度、本気で鞭打たれれば、あっけなく屈服するものだ。
 しかし、千鶴は耐えた。
 鞭で叩かれることによって、服が裂け、肌に傷が走り、血がにじむ。それでも、千鶴は、その両目に凛とした光を湛え、遼の顔をにらみ続けた。
 その背後で、由奈が、分娩台の上でくったりと横たわっている。
(この男が、センパイを……!)
 もしも視線で人が殺せるなら、瞬時に遼の心臓を停止させてしまいたい、とでも言いたげな目で、遼を凝視する。
 しかし、遼は平気な顔だ。
 あまり効果が期待できないと見て、遼は、鞭による打擲をやめた。
 さすがに、千鶴が安堵の表情を浮かべる。
 遼は、麻縄を手に千鶴に近付き、ぐったりと座りこんだままのその体を強引に立たせた。
「くっ……」
 鞭打ちで消耗した千鶴には、抗う力は残っていない。せいぜい、悲鳴をあげまいと唇を噛むくらいだ。
 そんな千鶴の左手を戒めていた手錠を外しながら、遼は、慣れた手つきで縄がけしていく。
「な、なにすんのよ……この、ヘンタイ……っ!」
 そう言う千鶴の声は、しかし、かなり弱々しい。
「レズは変態じゃないのかよ」
 可笑しそうに嗤いながら、遼は、高手小手の形に、千鶴の緊縛を完成させた。
 そして、部屋の中央よりに引っ張っていき、天井から下がる鎖の先端のフックに、千鶴を縛る縄を引っ掛ける。
「あああッ!」
 とうとう、千鶴は悲鳴をあげてしまった。
 遼が滑車を動かしたことによって、千鶴の体が宙に吊るされたのだ。
「ひ……いいい……ッ」
 きりきりと縄が食い込み、ずたずたになったシャツの下の形のいい乳房が、無残に歪んでいく。
 思いきり爪先立ちをして、足の先端が床に届くか届かないかという程度の高さである。千鶴は、その形のいい足をばたつかせ、必死に身悶えした。
 だが、もがけばもがくほど、縄による苦痛は激しくなる。
 はァ、はァ、はァ、はァ……
 額に汗を浮かべ、小刻みな呼吸を繰り返す千鶴の前に、遼が立った。
 そして、手に持った大きな裁断バサミを、千鶴の目の前にさらす。
「ひ……!」
 しゃきん、と遼が鋏を開閉させる音に、千鶴は、その顔をさあっと青ざめさせた。
「動くと、いらん怪我をするぞ」
 そう宣言して、遼は、千鶴のホットパンツの裾に、鋏の片方の刃を差し込んだ。
「や、やめてよッ!」
 千鶴が、悲鳴混じりの声で叫ぶ。しかし、さすがに脚を動かすことはできない。
「今に、脱いでおいてよかったと思うようになるさ」
 どういうつもりかそう言って、遼は、何の容赦もなく、綿の布地を切り裂いていく。
「ううう……ッ」
 無残に切り刻まれたホットパンツが床に落ちたとき、千鶴は、屈辱に小さくうめいた。
 遼は、露になったスポーティーなデザインのショーツに手をかける。
「やめて……よぉ……」
 千鶴の声は、涙に濡れていた。
 無論、遼は、手を休めなどしない。千鶴を怯えさせるように、わざと冷たい鋏の刃をその下腹部に当てながら、ショーツを刻んでいく。
「くッ……」
 下半身が剥き出しになったとき、千鶴は、とうとうかすかな嗚咽をもらしてしまった。
 涙が一筋、頬を伝う。
「毛深いオマンコだな。きちんと処理してるのか?」
 実際は、言うほどの量ではないのだが、遼はわざとそんなことを言った。
 きっ、と涙に濡れた目で、千鶴が遼の顔をにらむ。
「その調子だ」
 そう言って、遼は、千鶴の左の膝を、ぐい、と持ち上げた。
「きゃああッ!」
 苦痛と羞恥に千鶴が悲鳴をあげるのも構わず、膝に、拘束具をはめる。やはり天上から下がった鎖の先にある、革製のベルトである。
「いやッ! いやだあ! やめて! やめてえッ!」
 そんな千鶴の高い声を聞きながら、右の膝にも、同じ事をする。
 千鶴は、空中でMの字に脚を開いた状態で吊るされる形になった。
 否が応でも、その未だ成熟しきっていない性器と、秘めやかなアヌスを、目の前の遼にさらすことになってしまう。
 遼は、前髪の奥の冷たい瞳で、じっくりと千鶴の秘部全体を視姦した。
 黒い陰毛の下で息づく秘裂には、ほとんど色素が沈着しておらず、綺麗なピンク色をしている。かすかに靡肉がめくれあがっている様は、ほころびかけた南洋の花を思わせた。
 さらに下のセピア色のアヌスは、小さくすぼまり、何となく慎ましやかな印象さえ見る者に与える。
 最も隠しておきたい部分を、憎むべき男に、まるで値踏みするような目つきで見られ、千鶴は歯を食いしばりながら顔を背けた。その、羞恥に赤く染まった頬を、透明な涙が伝う。
「さて……由奈」
 遼は、まだぐったりとしている由奈に呼びかけた。
「あ、はい……」
 由奈が、半身を起こし、ひどく頼りない声で返事をする。
「準備だ」
 遼の短い言葉にこっくりと肯き、由奈はのろのろと分娩台から降りた。そして、部屋の隅にある、ユニット式のバスルームに入っていく。
「なに、する気……?」
 千鶴の声には、かすかに怯えの色がある。しかし、遼は答えない。
「お待たせしました……」
 そう言いながら、未だ全裸のままの由奈が戻ってきたとき、不安げな表情を浮かべていた千鶴の目が、はっと見開かれた。
 由奈が持ってきたのは、透明な液体で半ばまで満たされた、プラスチック製のバケツだった。そして、その中に、巨大な注射器を思わせる器具がある。
「ま、まさか……」
 千鶴が、声を震わせる。
 遼は、由奈にバケツを持たせたまま、そのシリンダー式の浣腸器に、洗面器の中の液体を吸い上げた。
 そんな遼を、由奈は、その幼い顔に似合わない複雑な表情で見つめている。
「や、やだッ! いやあ!」
 千鶴は、空中でじたばたとその身をよじらせた。無論、そのしなやかな体を、縄がさらにきつく苛むだけで、何の効果もない。
「や、やめてよ……そんなの……やめてったらあ!」
 千鶴が、震える声で叫ぶように言う。
「押さえろ、由奈」
「はい……」
 遼の命令に返事をして、由奈は、バケツを千鶴のちょうど真下に置いた。そして、千鶴の背後に回り込む。
 由奈は、千鶴の引き締まった腰を、その小さな両手で押さえた。
「……震えてるの? 千鶴ちゃん」
 千鶴の戦きを両手に感じて、由奈が小首をかしげながら訊く。千鶴は、首をひねって、そんな由奈の方を向いた。
「センパイ、どうしてェ……なんで……こんなコト……お、おかしいよ! こんなのっておかしいよおッ!」
 もはや、千鶴の言葉は支離滅裂だ。その吊り気味の目からは、大粒の涙がこぼれている。
 由奈は、そんな千鶴の様子を見ながら、初めてにっこりと微笑んだ。
「あたしはね、千鶴ちゃん……ご主人様の奴隷なの」
 無邪気とも言えるその表情に、千鶴はぞくりと背を震わせた。
「千鶴ちゃんにも、すぐに分かるわ……。ううん、ご主人様が、教えてくれる……」
「セ、センパイ、これってヘンですよお! 狂ってる……っ! 正気に、もどってくださいよおッ!」
 そう喚く千鶴を見つめる由奈の笑みに、かすかな影が差す。
 それは、優越感であり、憐憫であり、そして――ごくかすかな嫉妬だった。
 少女達のかみ合わない会話が一段落したのを見計らって、遼は、浣腸器の先端を、千鶴のアヌスに当てた。
「あああああッ!」
 ガラスの硬く冷たい感触に、びくッ! と千鶴の体が硬直する。
「やだ、やだ、やだ、やだ……」
 ぶるぶると震えながら、千鶴は童女のようにそう繰り返す。
 しかし、遼は容赦なく千鶴の肛門に浣腸器を差しこみ、そして、ゆっくりとピストンを押した。
「きゃあああああああああああああアーッ!」
 直腸を経由して、体内に強制的に薬液を注入されるおぞましさに、千鶴は悲鳴をあげる。
 しかし、そのおぞましさとても、これから始まる苦痛に比べれば、なんということはないものであった。
 遼が、直腸粘膜を傷付けないように注意しながら、浣腸器を抜き、身を離す。
 由奈も千鶴の腰から手を離し、そっと遼に寄り添った。遼は、そんな由奈の体を無言で引き寄せ、背後から腕を回す。
「あ……ン」
 その中学生のような体にはアンバランスなほどの巨乳を乱暴に掴まれ、由奈が甘い声をあげた。
 遼が、慣れた手つきで、由奈の二つの膨らみをやわやわと揉みしだく。
「んくっ……ン……ああン……」
 由奈は、遼の腕の中で小さく身をよじった。無論、遼の愛撫を拒否してのことではない。それどころか、すりすりと甘えるように遼の体に自らの背中をすりよせる。
 千鶴は、声を出すこともできずに、そんな二人の痴態を眺めていた。
 と、唐突に、重苦しい痛みが、千鶴の腹部を襲う
「んぐっ」
 千鶴は思わずうめいていた。
 苦痛が、千鶴の体内で急速に膨れ上がっていく。
「ん、んん、んううッ……」
 千鶴の秀でた額に、じっとりと脂汗がにじんだ。
 凶暴なまでの便意が、千鶴の体内で暴れ、出口を求めている。
 プライド、と言うよりも人間性そのものの危機に、千鶴は戦慄していた。
 そんな千鶴の様子を、遼によってもたらされる快楽に瞳を潤ませながら、由奈が見ている。
「や、やだあ……センパイ、見ないで……」
 そんな千鶴の言葉も、由奈の耳には届いていないようだ。
 由奈は、腹痛と便意に身悶える千鶴を、どこか膜のかかったような瞳で、じっと見つめ続けている。
 そんな由奈の股間に、遼は、そっと右手を潜りこませた。
「あはっ……あ、あン……んく……んんん……ッ」
 すでに潤んでいるクレヴァスをこすり、フードに守られたままのクリトリスを揉みつぶすような愛撫に、由奈はたやすく快楽の喘ぎをあげてしまう。
 大量に分泌された愛液は遼の右手を濡らし、ぽたぽたと雫になって床に落ちる。
 しかし、由奈は千鶴から視線を外さない。
 千鶴は一瞬、そんな由奈に、恐怖に似た感情を覚えた。
 しかし、そんな思いも、圧倒的な苦痛と、凄まじい恥辱の予感に、すぐに霞んでしまう。
「あ、あ、あ、あ……」
 自らの限界が近いことをさとり、千鶴は、口を半ば開けて、宙の一転を凝視する。
「そろそろだぞ」
 背後からその体を弄びながら、由奈の可愛らしい耳たぶに、遼が囁く。
 そして――
「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッ!」
 絶望に満ちた高い悲鳴に、驚くほど大きな、湿った破裂音が重なった。
「いや! いやあ! いや! いや! いやよ! いやああああア!」
 血を吐くような叫びをあげながら、千鶴は、大量の汚濁を排泄し続けた。
 千鶴の、しなやかで美しいとさえ言える体の中にあったとは信じられないような褐色の汚物が、床に置かれたバケツを満たしていく。
「ああ、ああぁあああ……ア……いああ……あァ……」
 あまりにも長く続く、どんな拷問よりも辛い時間に、千鶴は、もはや叫ぶ気力すら失ってしまったようだった。
 ひっく、ひっくという、千鶴のしゃくりあげる声が、妙に幼く、頼りなく響く。
「んくっ……!」
 遼の腕の中で、由奈が、その小さな体をぴくぴくと痙攣させた。どうやら、この異様な状況の中で、軽く達してしまったらしい。
「は……あ……あ……」
 恥じ入るようにうつむきながら、由奈が呼吸を整える。
「……片付けてやれ」
 やや落ちついた様子の由奈に、遼が再び命令した。
「はい……」
 従順にそう返事をして、由奈が、千鶴の粗相の後始末を始める。
 しかし、千鶴はそのことに気付いていない様子だ。
「……」
 遼は、その顔に酷薄な笑みを浮かべ、しくしくと嗚咽を漏らすだけの千鶴に近付いた。
 そして、その前髪を、乱暴につかんで顔を上げさせる。
「あ……」
 涙に濡れた千鶴の瞳が、次第に焦点を合わせる。
「い、やぁ……もう、ゆるして……」
 目の前に遼の顔を認め、千鶴は力なくそう言った。
 そのスレンダーな体は恐怖と悪寒に細かく震え、歯はかたかたと鳴っている。
「下を脱いでおいて正解だったろう?」
 怯える子供のような千鶴の目を覗きこみながら、遼が言う。
 千鶴は、この目の前の男に対する圧倒的な恐怖に、しばし、嫉妬や嫌悪の情すら、忘れてしまっていた。



 千鶴は、遼の尋問に、ひどくあっけなく答えた。
 遼の質問は、由奈を脅迫するのに用いたビデオに関することに集中した。
 ビデオの内容やパッケージの状態、そして、入手経路などについて、である。
「わかんない……あれは、おにいちゃんのだから……」
 その形のいい脚をMの字に開いた状態で吊るされたまま、千鶴が普段の彼女からは考えられないような、力ない声で答える。
「お前の兄貴の名前は?」
「橘……一郎……」
「職業は?」
「六中で、先生してる……」
「ああ、第六中学校か」
 遼は、しばし考え込んだ。
「円の通ってた学校だな……どこからどこまでが偶然なんだか」
 そして、小さくそう呟く。
 遼の尋問が終わったと見て、千鶴は、ゆっくりと顔を上げた。
「もう、いいでしょ……早く、家に帰して……」
 半ばかすれた声でそう言う千鶴に、遼はくつくつと笑い出した。
「そういうわけにはいかないだろ」
「な……なんで……?」
「このまま警察にでも駆け込まれたら、こっちはお終いだ」
「まさか……」
 千鶴の顔から、さあっと血の気が引く。
「まさか、殺すの?」
「ずいぶんと物騒なこと言うんだな」
 遼は、千鶴の頬を両手でふわりと挟んだ。
「俺は殺し屋じゃない。調教師だ。お前を、きちんと一人前の奴隷に躾てやるよ」
 そう言う遼の声音は、どことなく楽しそうだった。



「ああ……ンああ……あぅ……ンああぁああ……」
 千鶴は、四つん這いの格好で、どす黒い快楽に喘いでいた。

 この館の地下に監禁されてから、どれだけの時間が経ったのか、千鶴には判然としない。
 一日や二日ということはないだろう。三日ということもなさそうだ。一週間前後かと思われるが、それ以上、正確なことは分からない。
 最初の日、千鶴は、自宅宛ての手紙を書かされた。
 自分を見つめ直すため、しばらく家出するが、必ず戻るので心配しないでほしい、という内容の手紙だ。
 家出は、もともと奔放な性格の千鶴が、いかにもやりそうなことだった。しかも、学校は夏休みになったばかり。両親が、世間体を慮って警察に届けすらしないということも、充分考えられた。
 それに、もし警察に知らせたとしても、大した捜査はなされないだろう。
 千鶴は、遼という男が、巧妙に自分の逃げ道を閉ざしていくのを、茫然と眺めているしかなかった。
 そして、遼は千鶴に対する調教を開始した。
 鞭も浣腸も、遼は滅多に使わなかった。ただ、千鶴が反抗的な態度を取らないよう、脅しに使う程度だ。
 遼は、千鶴のアンダーヘアを綺麗に剃毛した後、そのアヌスを徹底的に開発した。
 ローションをたっぷりと塗った指で、肉の門を揉みほぐされるのを初めとして、アナル専用のローターや、真珠のネックレスのような外観のアナルビーズによって、執拗に肛門の快楽を教え込む。
 千鶴は、アヌスが単なる排泄口ではなく、ヴァギナに劣らぬ快楽器官であるということを、強制的に思い知らされた。
 無論、勝気な彼女にとって、恥毛を全て剃り落とされた上、排泄器官を嬲りものにされるのは、この上もない屈辱だった。何度、舌を噛んで死のうと思ったか分からなかったが、調教の合間に噛まされるギャグボールによって、それすらも許されなかった。
 そして昨日、千鶴は、遼によって、アヌスで初めての絶頂に追い込まれた。
「ああッ! いや! ちづる、ちづる、おしりでイク! おしりでイっちゃうよーッ!」
 遼に寄り添う由奈の目の前で、千鶴はおぞましい快楽に屈服し、失禁すらしてしまった。
 その夜、千鶴は、泣き疲れて眠ってしまうまで、幼女のように泣き続けたのだった。
 そして――

「ああ……ンああ……あぅ……ンああぁああ……」
 千鶴は、四つん這いの格好で、どす黒い快楽に喘いでいた。
 両方の手首は、長さ五十センチほどの金属棒の両端にある枷で戒められている。両方の足首も同様である。スプレッダーバーと呼ばれる拘束具だ。
 大袈裟な拘束ではないが、千鶴の動きは大きく制限されている。
 千鶴は、脚を閉ざすこともかなわず、コンクリートの床に両手と両膝をつき、アヌスに挿入されたバイブが繰り出す淫猥な刺激にさらされていた。
 アナルバイブとしてはかなり太い方のそれが、千鶴の直腸の中にすっぽりと収まっている。千鶴のアヌスは、それによって痛々しいくらいに引き伸ばされていた。
 遼は、そのバイブを巧みに操り、千鶴の快楽をコントロールしている。
 由奈は、そんな遼の様子を、少し離れた場所で、いわゆる体操座りでじっと見つめていた。千鶴も由奈も全裸である。
 ただ、遼だけが、いつものように、やや大きめの黒いシャツをまとっている。
「ひあ、あああ……あッ、あッ、あッ、あッ!」
 押し寄せる官能の波に、千鶴は声のトーンを高めていった。
 剃毛され、まるで童女のそれのような外見になったクレヴァスからは、とろとろと愛液がこぼれている。それは太腿を伝い、膝の間にちょっとした水溜りを作っていた。
「ダメ! ダメえ! ちづる、ちづる、もうッ……!」
 アヌスへの刺激による絶頂の予感に、千鶴の健康的な小麦色の体が、ぷるぷると細かく震え出す。
 それを確認し、遼は、意地悪くバイブを引き抜いてしまった。
「ひああぁぁぁ……っ」
 アブノーマルな愛撫を中断され、イキそこねた千鶴が、気の抜けた悲鳴をあげる。
「おねがい……もう……もう、イかせてぇ……」
 すでに、このような生殺しを、一時間以上味わわされてる千鶴が、ひどく情け無い声をあげる。
「そんなにイキたいのか?」
「イキたい……イキたいですぅ……」
 涙をこぼしながら言う千鶴の前に、遼は片膝をついいた。
「ならば、奴隷になるか?」
「……」
 千鶴が、唇を噛んで、遼の顔から目を反らす。
 恥辱にまみれ、快楽に悶えながらも、千鶴はけして自ら奴隷になるとは言わなかった。
 しかし、千鶴が堕ちるのもそう遠くはない。遼は、そんなことを確信しながら、立ちあがって、テーブルの上に置いていた新聞を、千鶴の目の前に投げてよこした。
「……?」
 千鶴が、不思議そうな顔で、新聞と遼の顔を交互に見る。突然現れた、あまりにも日常的な存在に、どうやらとまどっているらしい。
「読め」
 遼にそう言われて、千鶴は、新聞に目を通す。
 しばらくして、その顔が凍りついた。
「う、うそ……」
 唇を震わせながら、千鶴がつぶやく。
「橘一郎……お前の兄貴だろう」
 遼が、静かな声で言った。
 “現役教師、麻薬取引で逮捕”――そんな見出しが、千鶴の視線の先でおどっている。
「麻薬を売るだけじゃなく、ヤク中にした女を使って売春もしてたらしいな」
 遼は、そう、新聞記事を補足した。その言葉が届いているのかいないのか、千鶴はじっと動かない。
「街は、ちょっとした騒ぎだ。お前の家にも、かなりマスコミが押しかけてるらしい。……同情するぜ」
 遼が、あまり感情のこもらない声で言った。
「……ぃゃ……ぃゃ……ぃゃ……ぃゃ……」
 千鶴は、そんな言葉を繰り返している。その体が、瘧のようにがたがたと震えていた。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 千鶴は、ぺたんと座りこみ、両手を床についた姿勢で、絶叫した。
「千鶴ちゃん!」
 いつのまにか千鶴の傍に歩み寄っていた由奈が、耐えきれなくなったように言った。
「セン、パイ……?」
 狂気の兆候をうかがわせる空ろな目を、千鶴は由奈に向けた。
「千鶴ちゃん……」
 そう呼びかけながら、由奈は、千鶴の目の前で両膝をついた。
 そして、表情を失ってしまった千鶴の顔を、そっと、自分の胸に押しつける。
「ンあ……」
 柔らかな由奈の双乳に顔をうずめ、千鶴は、少し安心したような声をあげた。
「……千鶴ちゃん……まだ、あたしのこと、好き?」
 訊かれて、千鶴は、幼い子供のような素直さで、こっくりと肯いた。
「すき……ちづる、センパイが、すき……っ」
「ずっと、一緒にいたい?」
 さらに訊かれ、千鶴は再び由奈の胸の谷間で肯く。
「じゃあ……一緒に、ご主人様の奴隷になろうね」
 そう言われ、千鶴は、不思議そうな表情で、由奈の顔を見上げた。
「どれい……」
「そうよ。そうすれば、いつでも一緒にいられる……。もう、千鶴ちゃん、帰るところ無いんでしょ?」
 由奈の言葉に、千鶴は、その吊り気味の目から涙を溢れさせた。
「うああぁぁぁ……っ」
 千鶴は、声をあげて泣いた。
「なり、ます……ひっく……ち、ちづる、どれいに、なります……」
 泣き声の合間に、そう、何度も繰り返す。
 そんな千鶴と、申し訳なさそうな顔で自分を見る由奈を、遼は、苦笑しながら眺めていた。

 遼は、千鶴がようやく落ちつくと、その拘束を解き、ベッドに上げた。
 千鶴は、なんとなく不思議そうな顔で、遼にされるがままになる。
 そんな千鶴を再び犬の姿勢にして、すでにいきりたったペニスを、そのアヌスにあてがう。
「あぅ……」
 初めて感じる、拡張棒やバイブとは全く異なる、熱を帯びた亀頭の感触に、千鶴は声をあげていた。
「入れるぞ」
 遼が、そう宣言する。
「はい……いれて、ください……」
 千鶴が、背後の遼に流し目を送りながら、肛姦をねだる。
 その顔には、かつての凛とした鋭さは無く、代わって主人に服従する悦びを覚え始めた奴隷の媚びがあった。
 遼が、ゆっくりと腰を進ませる。
 すでに潤滑液に濡れた千鶴の直腸は、きつく締め付けながらも、遼のペニスを飲みこんでいった。
「ふ、ああああぁぁぁ……」
 ぬぬぬぬぬっ、と体を押し広げられるような感触に、千鶴は伸びをする猫のような姿勢になって、声を上げる。
 ペニスを根元まで肉の穴に収めた後、遼は、傍らの由奈に目で合図をした。
 こっくりと肯いて、由奈もベッドのマットレスに上がる。
「千鶴ちゃん……」
 優しい声でそう囁きながら、由奈は、四つん這いの千鶴の前に正座し、その頭を抱き締めた。
「うぅ〜ン……」
 甘え声を上げながら、千鶴が、由奈の胸に顔をうずめる。そして、その大きな乳房の頂点の、ピンク色の可愛らしい乳首を口に含んだ。
「あン……」
 ちゅうちゅうと無心な顔で乳首を吸う千鶴の髪を撫でながら、由奈も小さく喘ぎ声を漏らす。
 ゆっくりと、遼が抽送を始めた。
「ン……ンンン……んぐっ……んう〜ッ……」
 敏感な直腸粘膜を逞しい雁首にえぐられる感覚に、千鶴が由奈の胸の谷間でくぐもった声をあげる。
 遼は、千鶴の形のいいヒップを両手で押さえながら、次第に腰の動きを速めていった。
 それに合わせて、千鶴のアヌスがめくれ上がり、再び体内に押し込まれる。
「んッ! んぶぶッ! ンあ、あ、あはッ!」
 体に力が入らなくなったのか、千鶴はがっくりと両肘を折った。
「あいッ! あア! ひ! ひゃう! ンああああッ!」
 目の前の由奈に土下座をして許しを請うような格好で、千鶴は快楽の声をあげ続ける。
「千鶴ちゃん……」
 頬を上気させ、大きな瞳を潤ませながら、由奈は正座の姿勢のまま、膝を開いた。
 ほとんど無毛に近い、幼げな恥丘の下のクレヴァスが、愛液でねっとりと潤んでいるのが見て取れる。
「おしゃぶりして、千鶴ちゃん……」
 はぁはぁと息を荒くしながら、由奈が言った。
「ハ、ハイ……センパイ……」
 そう返事をして、千鶴はわずかに上体を持ち上げ、由奈の股間に顔を寄せる。
 ぢゅううっ、と湿った音を立てながら、千鶴は、由奈の靡肉を吸い上げた。
「きゃうううっ!」
 びくン、と由奈の体が震える。
 千鶴は、アヌスを犯される快感に、きりっとした眉を切なげにたわめながら、由奈のそこを舐めしゃぶった。
 由奈の腰にすがりつくように細い両腕を絡め、精いっぱい舌を伸ばして、熱い蜜を溢れさせる肉の割れ目をえぐる。
「あはア……ちづるちゃん……ソレ、きもちイイ……はううン……」
 由奈は、思わず千鶴の頭を自らの股間に押しつける。
「ンンう〜ン!」
 千鶴は、苦しげでありながら、どこか甘えるような声をあげた。
 遼が、ペニスの出し入れをさらに激しくする。
 ぐぷっ、ぐぷっ、ぐぷっ、ぐぷっ、という、無残なまでに淫猥な音をたてながら、遼の肉棒が千鶴のアヌスをえぐった。
 千鶴は、次々と体の奥底から押し寄せる快感に突き動かされるように、舌を蠢かせ、唇で由奈のその部分を吸引する。
「あ、あ、あ、あああッ!」
 由奈がびくびくと体を震わせる。
 遼は、そんな由奈の体を、千鶴のヒップから離した右手で支えてやった。そのまま、自分の方へ引き寄せる。
「うン……んムム……ンふ……んん〜ン……」
 その手に導かれるまま、由奈は遼と唇を重ね、情熱的に舌を舌に絡めた。
 ぷちゅぷちゅという、体液にまみれながら粘膜同士がこすれ合う淫らな音が、地下室に響き続ける。
「ン! んんン! んんンーッ!」
 とうとう、千鶴は、遼と由奈に挟まれた状態のまま、切羽詰った声をあげた。
「ンあァ……千鶴ちゃん、もうすぐ、イっちゃうのね……」
 千鶴の痙攣が感染ったかのように、由奈もその体をぷるぷると震わせる。
 遼は、薄い笑みをその唇に浮かべながら、残酷な動きで最後のスパートをかけた。
「んぐッ! ンああ! あう! あ、あああアアアッ!」
 何度も何度も絶頂にさらされ、千鶴の括約筋が、痛いほどに遼の剛直を締め上げる。
 その締め付けに抗うように、遼は、ひときわ激しく千鶴のアヌスを突き上げた。
「も……もうダメ! ちづる、ちづるもうダメえ〜っ!」
 千鶴が、悲鳴のような声で訴える。
「千鶴ちゃん……ご主人様に、お願いするのよ……」
 熱に浮かされたような口調で、由奈が千鶴に言う。
 千鶴は、肩越しに遼の方を振り向いた。
「く、ください……ちづるのおしりに……ごしゅじんさまのザーメン、くださいッ!」
 そして、高い声で奴隷のおねだりを叫ぶ。
「よく言えたわね、千鶴ちゃん……」
 由奈は、その豊かな胸の中に、再び千鶴の体を抱き締めた。
 そして、遼が、大量の精を、千鶴の体内に放つ。
「ああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアッ!」
 びゅるびゅると迸る熱い粘液の塊に、体の奥底を満たされ、千鶴はひときわ高い絶頂を迎えた。
 ぴくぴくと、そのしなやかな体が可愛く震えている。
「す、すごい……あつい……おしりのなか……いっぱいになっちゃうよォ……」
 千鶴は、どこか満たされたような表情で、うっとりとつぶやいた。
 由奈を陵辱したときにも見せなかったような、安らかとさえ言えるような顔である。
(あたし……ほんとは……)
 千鶴は、遼と由奈の体温を感じながら、ぼんやりと思った。
(ずっと……こんなふうに……されたかったの……かも……)
 そして千鶴は、優しい闇の中に沈んでいった。



 その夜、遼と由奈の寝室。
「あの……ご主人様、怒ってます?」
 水玉模様のパジャマ姿の由奈は、上目遣いで遼の顔を見ながら、訊いた。
「何を怒るって?」
「だから、千鶴ちゃんのことです。あたし、勝手なことばかりして……」
 そう言われて、遼は、ふっとかすかな笑みを口元に浮かべた。
「由奈は優しいからな」
「……違うんです」
「違う?」
「だって……ああでもしないと、ご主人様、ずっと千鶴ちゃんにかかりっきりになっちゃうじゃないですか……」
「……」
 両脇で結んで垂らした髪の毛をいじりながら、由奈は続けた。
「あたし、そんなにいいコじゃないです……自分のことばっか考えてて……ずるいんです……」
「……」
 遼は、無言で由奈に近付き、そっとその小さな体を抱き寄せた。
「あ……ン」
 由奈が、媚びるような声をあげながら、遼の胸にその身を預ける。
「俺の方が、もっとずるいさ」
 そう、遼が由奈の耳元にささやく。
「由奈なら、きっと千鶴を堕とすのに役に立つと思っていた。それで、ずっと一緒にいさせた……。だから、お前は気にしなくていいんだ」
「ご主人様……」
 由奈は、潤んだ瞳で、遼の顔をじっと見つめた。
 と、何かに驚いたように、その大きな目をさらに見開く。
 遼の股間のモノが、熱を帯びながら、何枚かの布越しに由奈の下腹部を圧したのだ。
「ご褒美の分は、とっておいたぜ」
「もう、ご主人様ったら……」
 頬を赤く染めながら、由奈が、ぎゅっと遼に抱きつく。
「まだ、もう少し、やることが残ってるけどな……」
 遼は、由奈の体を抱き返しながら、そう囁いた。



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