妻を、犯す。



第九章



 そして、数ヶ月が経ち――琴音が妊娠していることが判明した。
 ある意味で、これは必然だったろう。
 香織の避妊にはこっそりと気を使い、ピルを飲ませたり、危険日にわざと貞操帯による焦らし責めをしてきた私だったが、琴音に関しては、まったくそのようなことはしていなかったのだ。
 むしろ私は、琴音を、妻の膣内に射精できない際の代替物として扱ってきた。そして、琴音は、そのような、女性にとって最も屈辱的であろう仕打ちに、心から喜びを覚えている様子だった。
 いつ琴音が妊娠したのかは正確には分からなかったが、どうも、私の奴隷になってすぐのことのようである。もしかしたら、最初のセックスで妊娠してしまったのかもしれない。
 私は、特に悩むことなく、自分の――羽黒玄滋の子を産むよう、琴音に命じた。
 その時、琴音は、涙を流しながら私に礼を言った。
 子供を産ませようと決めたことには、別段、これといった理由は無かった。ただ、何となくその方が面白いように思えたのだ。
 自分がそのようなことを面白がる人間だったということに、私は、いささか面食らった。
 ともあれ、琴音は、少しずつ膨らんでいく腹を揺らしながら、嬉しげに私に奉仕し続けている。
 顔で、口で、手で、胸で、肛門で、そして、子供を宿した胎内で、私の精液を受け止め、絶頂を極める。
 さらには、私の命じるままに、香織の体を犯し、快楽を与えるのだ。
 琴音に香織を犯させるというプレイは、常に、たまらないほどの興奮を私にもたらした。
 他人の手によって快楽に悶えさせられ、絶頂にまで舞い上げられる妻の艶めかしさといったら、これは、筆舌に尽くしがたい。
 そんな妻の姿を見るだけで、私は、どれほど精液を放っていても、瞬時に勃起を回復させてしまうのだ。
 そして、妻の淫乱ぶりを嘲り、詰り、罵りながら、鉄のように堅くなった肉棒で、彼女を陵辱する。
 私は、そんな倒錯的な快楽に、魂までも侵食されつつあった……。



 その日も、私は、羽黒の体に入り込み、香織を家から連れ出した。
 車の助手席に座る妻は、私の命令で、体の線の浮き出るようなニットと、タイトなミニスカートという格好をしている。その下には、ブラもショーツも身につけていないはずだ。
 諦めたような顔をしながらも、しきりにスカートの裾を直す妻の姿が、私の劣情を刺激する。
 私は、適当なパーキングに車を停め、妻を連れて街中を歩いた。
 しきりに通行人の視線を気にする妻の肩を、これみよがしに抱いてやる。
「こ、こんなところ、知ってる人に見られたら……」
 香織は、小さく声を震わせながら、悩ましげに眉をたわめた。
 そんな妻を、かねてから目を付けていた場所に連れていく。
 そこは、大通りから一本外れた路地に面した、薄汚れた映画館だった。
 扇情的なタイトルを冠されたピンク映画のポスターが、入り口に三枚並べて貼られている。
「入るぜ、香織」
「えっ? こんな場所に……?」
「ああ。淫乱のオマエにはお似合いの場所だろ?」
 そう言うと、香織は、屈辱に唇を噛み締めた。
 構わず、普通と比べて随分と割安の料金を払い、妻を連れて館内に入る。
 そこには、タバコと、そして饐えたような独特の匂いが漂っていた。
「んっ……」
 匂いの正体に気付いたのか、香織が、嫌悪感に眉根を寄せる。
 私は、そんな妻を連れて暗い劇場内に入り、後方の席に腰掛けた。古ぼけたシートは、意外と前後の間隔を広く取っている。
 ところどころ床に落ちている白いティッシュは、もちろん、客たちの欲望の残滓を受け止めたものだ。
 客の姿はまばらで、そのほとんどが中高年だが、仕事をサボっているらしきサラリーマンの姿も見える。
 ちょうど今、スクリーンでは男女が絡み合っており、場内には女の喘ぎ声が響いていた。
「ここなら、多少ヨガっても他の連中の邪魔にはならないぜ」
 そう言って、隣に座る香織の股間に右手を伸ばす。
「あっ、やめて……!」
 そう声を上げる妻の脚を強引に割り、秘唇に触れると、そこは、すでにしっとりと潤っていた。
「おいおい、こんな映画で欲情しちまったのか?」
 そう揶揄しながら、妻の秘苑を指先でまさぐる。
「ち、違います……これは……あ、あんっ……」
「なら、俺と会った時から濡れちまっていたってことか。男冥利に尽きるねえ」
 そんなふうに言いながら、すでに知り過ぎるほどに知り尽くしている妻の急所を刺激する。
「う、うっ、うく……違うわ……これは、これは違うの……あ、あぅ……んっ、あはぁっ……ち、違います……んくぅ……」
 映画に登場している女優よりも数段色っぽい顔で、香織が、喘ぎ声を噛み殺そうとする。
 私は、クリトリスを包む肉の莢を剥き、そこに愛液を塗り込めるようにして、直接愛撫した。
「んふっ、うっ、うああぁっ……だめ、だめぇ……あっ、ああぁっ、あぁん……あぁ、イヤぁ……」
 妻の声に、呆気なく、甘い響きが混じり始める。
 秘唇から溢れる淫らな蜜が指をぬめらせ、私の愛撫をさらに滑らかなものにしていく。
「うっ、んふぅっ、うぅん……ふぅふぅ……んん……ふんっ、ふうぅ……あ、ああぁ、あふ……イヤです……ああぁ……もう許してぇ……」
 そう言いながらも、香織の腰は、さらなる快楽をねだるように、もじもじと動いている。
「こっちを向け」
 私の言葉に、香織が、素直に従う。
 中途半端な闇の中、スクリーンに反射した光で照らされた妻の顔は、すでに、甘く蕩けかけていた。
 妻の頭を引き寄せ、その半開きの艶やかな唇に、キスをする。
「んっ……んん……んちゅ……ちゅぶ……ちゅむむ……んふぅ……ちゅっ……」
 映画館でのキス、というロマンチックな言葉からは程遠い、淫靡な口付け。
 舌を伸ばし、唇や口内を舌先でくすぐると、妻は、フンフンと鼻を鳴らして、自ら舌に舌を絡み付けてきた。
「……こっちに来い」
「あぁ……はい……」
 妻が、私に手を引かれるまま、一度席を立ち、私の膝の上に座った。
 背後から手を回し、ニットをずり上げて、そのたっぷりとした双乳に指を食い込ませる。
「あ、あっ、ダメです……こんなところで、ダメぇ……」
 その形のいい巨乳を剥き出しにされ、香織が、かすかに身をよじる。
 私は、そんな妻の乳房を、両手でグニグニと荒々しく揉みしだいた。
「んああっ、あっ、あうっ、うく……んああン、あっ、あぁン……ハァハァ……ダメ、ダメぇ……あぁ〜ん」
 完全に性感を開発された二つの乳房が、私の乱暴な愛撫に反応し、その頂点で、乳首が、乳輪ごとぷっくりと膨れ上がる。
 私は、痛々しいほどに勃起した乳首を摘まみ、シコシコと扱いてやった。
「ヒッ! ひあっ、あっあっあっ……ダメ、それダメぇ……あんあんっ……ダメですぅ……ああぁ、ダメぇ〜!」
「どうして駄目なんだ?」
「あううっ、だって、だってぇ……それされると、私……あぁん、私ぃ……あううっ、うっ、ううン……ああああああっ……!」
 香織が、その成熟した体をウネウネと悩ましげに悶えさせる。
「オラ、もっと脚を開いて腰を突き出すんだよ」
「ああぁ……ハ、ハイっ……あん、あはぁぁん……」
 すっかり快感の虜となった風情で、香織が、私の言うままに卑猥なポーズをとる。
 再び股間に手を伸ばすと、そこは、愛液でグッショリと濡れそぼっていた。
「フン、亭主が汗水流して働いてるってのに、オマエは別の汁を垂れ流しなんだな」
 そう言いながら、秘裂に指を食い込ませ、上下に激しくこする。
「ああぁん、イヤ、イヤ、あの人のことはぁ……ああっ、あっ、あん……皓一さんのことは、言わないでぇ……あん、あううっ、あひ……ひあああああっ……」
 妻の悲痛な言葉が、甘い喘ぎの中に埋没していく。
 今や、タイトスカートから半ばまろびでた彼女の大きなヒップは、牡を求めてあからさまに蠢いていた。
「調子のいいこと言ってんじゃねえよ」
 私は、愛蜜にまみれた指をさらに下に滑らせ、ヒクヒクと震えるアヌスに触れた。
「きゃうっ……!」
 可愛らしい悲鳴を上げる香織の菊門に、右手の中指の先を潜り込ませ、浅く抽送させる。
「きゃふっ、う、うくく……あ、あっ……そこは、そこはぁ……あぁん……はぁはぁ……あううっ、うぐっ、うくぅ……あっ、ああん、あん、あああぁんっ……!」
 排泄器官を愛撫されて、香織は、変態的な快楽におののいた。
 秘唇から溢れる愛液の量が、さらに増しているのが分かる。
 私は、中指でアヌスを刺激しつつ、親指をヴァギナに潜り込ませ、掻き回した。
「うっ、うあっ、あああっ、それ、それっ……! ああぁん……私、ダメに……あはぁ、ダ、ダメになっちゃうぅ……あひ、あひいぃ〜」
 二箇所責めに身悶える妻の双乳を左手で交互に揉み、その熟れた体を快楽によってさらに追い詰めていく。
「ああぁっ、あん、あはぁ……ああ、もう……もう私……あっ、あはぁ……あん、あぁん、あふ……あぁ〜ん!」
 今や香織は、映画の音でもごまかしきれないほどに、あからさまに喘ぎ声を上げていた。
「どうだ? マンコとケツ穴、どっちに入れてほしい?」
 香織の耳元に口を寄せ、耳朶を甘く噛んでやりながら、尋ねる。
「ああぁっ……はぁはぁ……お……お、お尻……お尻にぃ……」
「へへへっ、奥さんはケツでセックスする方が好きなのか。ホンモノの変態だな!」
「あううっ、違います、違いますっ……! ハァハァ……今日は……あぁん、今日は、危ない日だから……あぁン、だからぁ……あうううっ……」
 言い訳がましく、妻が声を上げる。
「嘘つけ! オマエ、アナルセックスが病み付きになってんだろ? 正直に言えっ!」
 私は、すっかり柔らかくほぐれた香織の肛門に、ズブリと指を突き入れた。
「ひううっ、あっ、ああっ……あぁ、そんな……私……私ぃ……あっ、あぁん、あんあん……あひいぃ〜」
「ほら、言えって! 私はケツにチンポ入れられるのが大好きな変態ですって言ってみろ」
「はぁはぁ……ああぁ……私は……私はぁ……お、お、お尻に……あぁんっ! ケ、ケツにっ……チ、チ、チンポっ……ああぁっ、チンポを入れられるのが好きなぁ……あうううぅぅ……へ、変態……あふ、あふっ……変態ですぅ……あぁ〜ん」
 妻が、マゾの愉悦に震えながら、自らを貶める。
「だよなぁ……今日だって、俺に会う前に、きちんと準備してきたんだろう?」
「ううっ……そ、それは……ヒィヒィ……あぁ……も、もう許してぇ……」
「早く言え……それとも、このまま終わりにして、変態アナルを亭主に慰めてもらうのか?」
「ああぁ、ひ、ひどい……あん、あぁんっ……もう苛めないで……言います……言いますからぁ……」
 妻が、悩ましい流し目を私に寄越しながら、欲情に濡れた声で訴える。
「ククク……そうだよな。いくら夫婦でも、アナルセックスまではしてもらえねえもんなあ。さあ、言え! オマエ、ケツ穴でやるために準備したんだよな?」
「ううっ……そうです……そうですっ……ハァハァ……あ、あの人が、家を出てから……あんっ、あんっ、お、お、お浣腸をしてっ……うううっ……お尻を、きれいにして……ア、ア、アナルセックスの、じゅ、準備をしたのぉ……ああぁっ、ごめんなさい……あなた、ごめんなさいぃ……」
 妻が、目尻に涙を溜めながら、私に謝る。
「ハァハァ……ああぁ……入れて、入れてくださいぃ……! ヘ、ヘンタイ香織のケツに……ケツ穴に……チンポ、チンポ……羽黒さんのおっきなチンポ……入れて……ブチ込んでください……! あっ、あああっ、犯して! ウンチの穴犯してぇ……!」
 香織は、まるで堰を切ったように、私に肛門性交をねだった。
 妻が、またも、私を――宮倉皓一を裏切り、一線を越えている。
 そして、私も――妻と、そして、私自身を、裏切ろうとしていた。
「そんなにアナルを犯されたいのか?」
「あぁん、ハイ、ハイ……してほしいですっ……!」
「だったら……俺のために、客を取れ」
 私は、堅く勃起した肉棒を香織の尻に押し付けながら、言った。
「えっ……ああっ、お、お客……? それって、まさか、体を売れって……あぁん!」
「そうだ。お前は、俺のために娼婦になるんだよ」
「あっ、ああっ、あああぁぁぁ……」
 ぶるぶるっ、と、妻の艶めかしい体が、震えた。
「そんな、そんな……あぁ……お願いです、そんな恐ろしいこと……あうう……ほ、他のことなら何でもしますから……ああっ、そ、それだけは……」
「今さら何を貞淑ぶってんだ? 俺の奴隷のくせしやがって」
 私は、今度は香織の女陰に指を突き立てた。
「あぁン!」
「何でもするだと? だったら、こっちにザーメンぶち込んで、琴音みたいに孕ませてやろうか?」
「そんな、そんなっ……あ、ああっ、あひ……あああぁぁぁぁ……」
 甘たるい絶望に、勝気だった妻が、一筋、涙をこぼす。
「ううっ……わ、分かりました……私……私っ……い、言うとおりにします……うううぅぅ……」
「よし……じゃあ、チンポ欲しさに娼婦になった奥さんのケツマンコに、ご褒美をくれてやるぜ」
 私は、妻のヒップを持ち上げ、剥き出しにしたペニスをアヌスに当てた。
「ああぁ……あなた……あなた、私……あうううぅぅ……」
 嘆きの声を上げながらも、その菊座は、まるで期待するように私の亀頭に吸い付き、おののいている。
 私は、妻のウェストを引き寄せ、そのアヌスを肉棒で貫いた。
「うっ……ああああああああああっ!」
 香織が、前のシートの背もたれをつかみ、喉を反らして声を上げた。
 妻の開発されたアヌスは、ペニスの侵入を易々と許しながらも、与えられた快楽に応えるように、シャフトを小気味よく締め付けてくる。
 その時には、さすがに、周囲の客も我々の狼藉に気付いたようだった。
「へへっ、他の奴ら、こっちを見てるぜ」
「あぁン、い、いやいやっ……はああぁっ……あぁん、ダメぇ……あううううっ……」
 香織が、力無くかぶりを振るが、しかし、それ以上の抵抗は示さない。
 私は、スカートをまくり上げ、暗がりの中に浮かび上がる妻のムッチリとした尻に指を食い込ませ、腰をスラストさせた。
「ひううっ、うっ、うああっ、あっあっ……やめ、やめてっ……やめてください……あん、あぁん、あひぃ……ひあああぁ〜ん」
「やめてじゃねえだろ……レイプだと思われたら警察が来るじゃねえか」
「ハァハァ……ああっ、でも、でもぉ……あん、あひぃ、あひいぃぃぃ……は、恥ずかしい……こんなの、恥ずかしすぎるぅ……あん、あぁん、ああぁ……あはあぁぁっ……」
「見てる奴に分かるように、きちんと説明しろよ。どうしてこうなったのかをな……!」
 そう言いながら、香織のヒップに腰を打ち付ける。
「ひっ、ひいいぃっ! ああぁ……み、皆さん……私は……私はぁ……の、望んで……お、お尻を犯されてますぅ……ハァハァ……ああぁん、あ、あっ、ああっ、あひいいぃ……」
 香織が、だらし無く開いた口元からよだれを垂らしながら、言葉を紡ぐ。
「あうっ、ううぅっ……わ、私っ……ひ、ひっ、人の妻なのにぃ……はぁはぁ……ア、ア、アナルを犯してほしくて……か、体を売ることを承知した、変態ですっ! ど、どうしようもない変態妻ですぅっ! ううっ、うああっ、あんあんっ! お尻、お尻イイっ、お尻キモチイイぃぃぃ!」
 高まる愉悦に理性を失いながら、香織が喚く。
 今や、他の客たちは、映画そっちのけで妻の痴態を見つめていた。
「はぁはぁ……ああぁっ、見られてる、見られてるぅ……うぐっ、うあああっ……アナルセックス見られてるぅ……あぁん、あああぁん、すごいぃ……こ、こんなの、すごすぎるぅ……ああああ、あっあっあっあ〜っ!」
 男達が、私に犯される妻を見ながら手淫している気配が伝わってくる。
 妻が、誰とも知らぬ連中に視姦されているというシチュエーションが、私をますます興奮させた。
「ひうううっ、あっ、あああぁン! チンポ、お尻のチンポ大きくなったっ……ああぁ、すごいぃ……お、お、お尻こわれちゃううっ……あぐぐ、ふ、太い、太いのぉ……あん、ああぁん、あひ、あひいいいい……うっ、うああああああああ!」
 乱れ、悶える妻を中心として、男達の荒い息遣いと、精液の匂いが、劇場に満ちていく。
 妻は、自ら腰を振り立てながら、アナルセックスの快楽に没頭していた。
「あああっ、も、もうダメ、もうダメえぇ……イ、イキます、イキますうっ……ハァハァ、お、お尻ぃ……お尻イキそうですうっ! あううっ、うっ、うあああン! ヒィヒィ……ひぐっ、うっ、ううう、うああああああン!」
 括約筋がギュウギュウと締まり、私の肉棒を激しく扱きたてる。
 私は、痛みすら覚えるほどの射精欲求に急き立てられながら、さらに激しく腰を使った。
「あっ、あああっ! オ、オチンポ、お尻でビクビクしてるぅ……あぁん、ああぁん、出されちゃうぅ……ザーメン出されちゃうっ! あひ、あひいいっ、あああ……いっ、いひいいっ、ひあああっ、イっちゃうっ! イク、イクう! お尻イク! お尻イクぅーっ!」
「俺と一緒にイクんだぞ、いいな……!」
「んあああっ、わ、分かりましたぁ……あひ、あひいいぃ……うあああっ、は、早く、早くイってくださいぃ……あっ、あああぁん、お尻に出して、出して! ザーメン出してっ! 香織に……ハァハァ、ヘンタイ香織のケツ穴にっ、ザ、ザーメン浣腸してくださいぃ〜! はへっ、はっへええええええええ!」
 舌を突き出し、瞳の焦点を失わせながら、香織が腸内への射精をねだる。
 私は、ペニスを根元まで直腸に突き立て、そのまま妻の体内に精液を迸らせた。
「おああああああ! イ、イク、イクーッ! お尻イクっ! あああ、イキます、イキますう、イクううううううううう!」
 妻が、ぎゅうっと背中を反らしながら、アナルで絶頂を極める。
「ひっ、ひうううっ、うっ、うああああ……しゅ、しゅごいひぃ……おひりぃ……おひり、あちゅいのぉ……おあっ、おああああっ、イグ、イグう、まらイグっ、イ、イヒぃ、イグ、イグ、イグ、イグううううううううううううううぅー!」
 立て続けに倒錯的なアクメを迎える妻の直腸に、ビュッ! ビュッ! と精液の弾丸を叩き込む。
 妻の体が、ビクリ、ビクリと痙攣し、そして、ブルブルと震えてから、がっくりと弛緩した。
「はぁー、はぁー、はぁー、はぁー、あ、あああぁ……あっ……あひいいいいいぃン……」
 ずるり、と香織の肛門から、肉棒が抜ける。
 そのまま、ずるずると床に落ち、座り込んだ妻に、私は、強引にこちらを向かせた。
「あっ、あううっ……」
 まだ言うことをきかない体をねじった妻の鼻先に、ベットリと粘液の付着した肉棒を突き付ける。
 妻は、そこから漂う便臭にかすかに眉をしかめながらも、何も言われないうちに口を開き、ペニスを咥え込んだ。
 そして、口内で健気に舌を動かし、私のペニスを舐め清める。
「……自分が言ったこと、覚えているな?」
 私は、妻の髪を撫でてやりながら、言った。
「ちゅ、ちゅぶっ……はい……私は……んっ、んむむっ……羽黒さんの言う通りに……ちゅぷちゅぷ……か、体を、売ります……ちゅぶ……娼婦になります……ちゅぶぶ……」
 肉棒を口に含んだままそう答える妻の声には、悲壮な覚悟が込められている。
 だが、その整った顔に浮かぶ表情には、マゾヒスティックな愉悦が滲み出ていた。
「…………」
 このまま、映画館の客達に妻を抱かせるという手もあるが、それでは、あまりに呆気無さ過ぎる。
 香織には、じっくりと、自らが娼婦にまで堕ちたのだということを自覚させたい。
 私は、ペニスを妻にしゃぶらせながら、ここ数箇月のうちに出会った羽黒の得意先の連中を、頭の中でピックアップした……。



「ねえ、あなた」
 あれから数日たった夕食後に、妻が、私に話しかけてきた。
「ん、何だい?」
「あ、あのね……えっと、この前、久しぶりに友達に会ってね……」
「誰? 僕の知ってる人かな?」
「う、ううん、知らない人……だと、思うわ。中学のころの同級生だから」
 妻が、必死に狼狽を隠そうとしながら、嘘を続ける。
 そんな妻の姿は、妙に可愛らしく――私の心の暗い部分をくすぐった。
「それでね、それでね……え、えっと、温泉旅行に一緒に行こうって話になったの……何でも、旦那さんのツテで、安く泊まれるところがあるとかで……」
 ぎゅっ、と妻がテーブルの下でスカートの裾を握り締めているのを、視界の端に捉える。
 だが、もちろん、私は気付かないふりを続けた。
「ふうん、いつ?」
「あ、えっと、来月くらいだと思うけど……行っていいの?」
「うん、もちろん」
 私は、かつての私と同じように、優しく妻にほほ笑んだ。
「香織も、たまには羽根を伸ばした方がいいよ。何だか最近、ちょっと疲れてるみたいだしさ」
「えっ? そ……そう? そんなこと、ないと思うけど……」
 妻が、不自然なくらいに口籠もる。
 だが、連日の荒淫と心労が、妻を憔悴させているのは、明らかな事実だ。
 そして、時折見せる気怠げな仕草や、目の下にうっすらと浮かんだ隈が、妻をかえって妖艶に見せているのも、また事実なのである。
「ともかく、温泉でもなんでも、リフレッシュしてきた方がいいんじゃないかな?」
「ん、もう、それって、私が老けてきたってこと?」
 妻が、冗談めかした口調で言って、ぺしっ、と私を叩く。
「そうじゃないよ。香織はまだまだ充分いけてるって。ただ、もっと綺麗になって帰ってきてくれると、僕としては嬉しいなあ」
「な、何言ってるのよ、ばかぁ」
 妻が、顔を真っ赤に染めた。
 その時に、私が思わず漏らしたくすくす笑いを、妻がどう解釈したのか――それは、分からない。
「……あなたって、いい人よね」
 しばらくして、妻が、ぽつりとそんなことを言う。
 私は、聞こえなかったふりをして、無意味に映像と音声を垂れ流し続けるテレビを、見るとはなしに眺めていた。




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