「あ、お兄さんじゃないですかぁ」
大学から帰る途中、家のすぐ近くで、声をかけられた。
振り返ると、ショートカットの可愛らしい女の子が、黒い犬の引き綱をつかんでそこに立っている。
小学校高学年くらいの、ほっそりとした子である。くりっとした黒目がちの目がちょっと吊り上がっているところがキュートだ。俺にそういう趣味は無いが、ロリコンだったら思わず声をかけて連れて帰りたくなるだろう。
が、彼女の連れている、艶やかな毛並みのレトリバーは、そんな邪念を追い払うのに充分すぎるほど立派で、大きかった。
躾がなっているのか、吠えかかることも無く、賢そうな目をじっと俺に向けている。
「お姉ちゃんとは、うまくいってますかー?」
その一言で、ようやく思い出した。
この子は、亜耶ちゃん。俺が付き合ってる彼女の妹だ。
「ははは、まあ、それなりにね」
俺は、当たり障りの無い口調で、言う。
が、本当は、俺的にはあまりうまく言ってるとは言い難い。
俺の彼女の名は、櫻木真帆。女子校との合コンで知り合った。いかにも“むりやり連れてこられました”って感じの、おとなしい、地味な子だった。
せっかくの長い髪を黒いままにして、しかも三つ編み。その上メガネ。
が、顔立ちはすこぶるつきの美少女である。まるで、ダサい髪形とメガネで、自分自身の魅力をわざと隠しているような子だ。
その上、服の上から分かるほどに、いい胸をしていた。
住んでる街が偶然同じだったことをきっかけに、俺は、真帆に狙いを定めた。
いかにも慣れて無い感じの真帆を合コン会場から連れだし、キスを奪うまでは、造作も無かった。
しかし……。
「ほんとに、うまくいってますぅ?」
亜耶ちゃんが、ませた口調で訊いてくる。
「お姉ちゃん奥手だから、おにーさん、もてあましちゃってるんじゃないですかあ?」
まったく、最近の小学生ときたら。
が、事実、そうなのだ。
真帆は、潔癖症と言っていいほど、性に対して忌避感が強かった。
映画に、ドライブに、テーマパークに、カクテルバーにと、地道にデートをこなしながらも、俺は、まだ真帆の体を味わっていない。
先週、とうとう、苦労して予約したスィートルームのベッドの上で、彼女の裸体を拝むことに成功したのだが……マジ泣きされてしまった。
思った通り、たわわに実っていた彼女の巨乳を前にしながら、俺は、戦略的撤退を余儀無くされたのだ。
ここで焦っては何にもならない。あれだけの体と、あのおとなしい性格だ。セックスを覚えれば、大変身するに違いないのだ。
そう。真帆は、俺に惚れしてる。次の機会には……。
「先週のデートのこと、考えてるんですかあ?」
どき、と心臓が跳ねた。
この子は、妙に勘が鋭い。真帆を車で迎えに行った時、一、二度会ったことがあるだけなのだが、そのたびに、その大人びた言動に驚かされている。
真帆よりも、この亜耶って子の方が、よっぽど色々な経験を積んでそうだ。
「実はですね、お姉ちゃん、あの時のことで、うーんと悩んでたみたいなんですよ?」
「えっ?」
「お兄さんに、失礼なことしちゃった、って言ってましたよ」
なんだ、そういうことか。ちょっとほっとする。
「で、これです」
亜耶ちゃんは、ポケットから、カバーに入ったCD−Rを取り出した。
「なんだい、それ?」
「お姉ちゃんからのビデオレターですよ。あたし、これを届けにお兄さんの家を探してたんです」
「ああ、そうだったのか。ありがとう」
なるほど……。デジタル動画を、CD−Rに焼いたのか。
機械に弱い真帆らしくないな。それとも、亜耶ちゃんがやったのか?
「はい。確かにお渡ししました」
亜耶ちゃんが、俺にCD−Rを渡す。
小悪魔じみた、悪戯っぽい笑みが、その口元に浮かんでいた。
まったく、最近の子供ときたら……。
「じゃあ、お兄さん、さようなら♪ ……って、ああん、バロンってば、ひっぱんないでよ〜」
いかにも力の強そうなレトリバーに引きずられるように、亜耶ちゃんが、通りの向こうに姿を消す。
そうか、あの犬、バロンって名前なのか……。
本当に、デカイ犬だ。
俺は、その時、どういうわけか、奇妙な胸騒ぎのようなものを少しだけ感じていた。
真っ白なラベルのCD−R。
それを、パソコンのディスクトレイに置き、スイッチを押す。
ひゅううううん……とドライブが唸りだし、ビデオ再生ソフトが自動的に起動した。
しかし、ビデオレターとはね……なかなかにこっぱずかしい。
だが、それが、不思議と不快じゃなかった。
いかにも真帆らしい、と思う。
好かれているんだ、という実感が、初恋の時のように気分を高揚させる。
これからは、もっと真帆にじっくりと付き合ってやるか……。
そんなことを、つい、考える。
映像が、再生された。
女の子らしい暖色で統一された部屋の、ベッド。
その上に、真帆が座っている。
大きな胸が、普段着を内側から圧し、まろやかな曲線を描いていた。
窓の外は明るい。どうやら昼間のようだ。
「はい、お姉ちゃん、こっち向いて」
と、亜耶ちゃんの声が、スピーカーから聞こえた。
どうやら、撮影者は亜耶ちゃんのようだ。こりゃますます恥ずかしいな。
真帆が、カメラに向かって顔を上げる。
(あれ……?)
なんだか、表情がおかしい。
緊張しているのか、と思ったが、そういうわけではない。
目の焦点が合ってないのだ。
表情も、どこか虚ろだ。まるで、どこか寝ぼけたような顔である。
「んふふふふ……えーっと、自己紹介から行こうか」
亜耶ちゃんが、含み笑いを漏らしながら言う。
「さくらぎ……まほ……です……」
ぼんやりとした声で、真帆が言う。
「年は、いくつ?」
「十八歳……です」
「なーんて、AVみたい。きゃはははっ」
俺は、混乱した。
なんだ、これは……?
間違ったCD−Rを渡されたのか?
いや、それにしたって、これは……何だか異常だ。
真帆の口調は、明らかに、普段のものではない。
確かに、俺には敬語を使うが……亜耶ちゃんとは、普通の姉妹らしく話していたはずだ。
何が何だか分からなかった。
悪ふざけにしても、意図が読めない。
「初Hは?」
亜耶ちゃんは、実の姉に向かって、とんでもないことを訊ねた。
「えっち……?」
虚ろな表情のまま、真帆が、小首を傾げる。
「あの男とは、セックスしたの?」
亜耶ちゃんが、言う。
“あの男”ってのは……俺のことか? だよなあ……。
しかし、彼女の声には、どこか憎々しげな響きがあった。
いや、そんなことより……。
「せっくす?」
「そーよ。したの? まだなの?」
「して……ません……」
真帆が、あからさまな問いに、たどたどしい口調で、しかし素直に答える。
まるで、催眠術にかかっているかのように。
いや、これは、“まるで”とか、そういうことではなくて……。
「ホテルに行ったんでしょ?」
「はい……」
「それでも、何もされなかったの?」
「服は……ぬがされました……」
真帆が、ディスプレイの向こうで、妹の質問に答えている。
ほんのりとその頬が赤く染まっているところを見ると、羞恥を全く感じていない訳ではないらしい。
しかしあのガキ、どういうつもりだ……?
本当に催眠術を使ってるのかどうかは知らないが、こんなプライベートなことを……!
「それでも、何もしなかったわけ?」
「はい……」
「どうして?」
「こわくなって……泣いちゃったら……やめてくれました……」
「ふうん……。中途半端な男ね」
亜耶ちゃん――いや、亜耶が、嘲りを含んだ声で言った。
なんだ……なんだこいつは……?
怒りとともに、背筋の冷たくなるような感覚を覚える。
しかし……これは、ふざけてる! こんなビデオレターなんてあるものか!
「……じゃあさ、お姉ちゃん」
亜耶が、真帆に言う。
「あの男とは、セックスしたくないの?」
それは――
その問いは、俺が最も知りたがっていることだ。
「……わかりません」
真帆が、言う。
「分からないの? 自分の気持ちなのに?」
「あの人が、望むなら、私……したい、です……。だって……嫌われたく、ないから……。初めて……好きになった人だし……初めて、私を好きだって、言ってくれた人だから……」
真帆……。
真帆の純粋な気持ちに、柄にもなく胸が熱くなる。
「でも……やっぱり、こわい……。自分が、自分でなくなっちゃうみたいで……」
そうか……真帆は、そんなに、不安に思ってたのか……。
自分の無神経さを、自覚する。
俺は、真帆が俺を想ってくれるほど真剣に、真帆のことを考えていただろうか?
体だけが目当てだったんじゃないのか?
そんなことを、思った。
「ふうん……」
亜耶が、奇妙な声を上げる。
もし――
もし、このビデオが、ここで終わってくれれば、俺は、真帆とうまくやっていけただろう。
真帆の気持ちを第一に考え、もっと優しく接するよう、努められたはずだ。
だが――もちろん、これで終わりではなかった。
いや、そもそも、始まってすらいなかったのだ。
「退屈、かな?」
あいつの声が、響いた。
舌足らずで、甘い、年相応の声。
なのに、奇妙に妖しい声だ。
真帆に向かってのものではない。明らかに、このビデオを見ている人間に向かって発せられた言葉だ。
「でも、これからですよぉ」
楽しそうなその声に、胸がざわついた。
「ここでやめちゃったら、後悔しますよ。ま、見ても後悔するかもしれないけど」
くっ……!
過去に収録されたその声に、歯噛みをする。
これから、何が起こるんだ……?
どす黒くおぞましい、不安をともなった予感。
何が起こるにしても、それを見てはいけないような気がした。
畜生……っ!
再生ソフトを終了させ、CD−Rを取り出す。
そして、俺は、その虹色の円盤を思い切り屑籠の中に投げ込んだ。
夜中――
俺は、得体の知れない悪夢に、声を上げて跳び起きた。
真帆の白い裸身に、何者かがのしかかって腰を使ってる夢だ。
びっしょりと寝汗をかいていた。
喉がカラカラだ。
真っ暗な洗面所で水を飲み、ついでに顔を洗った。
鏡の中の俺の顔は、目が真っ赤だった。
部屋に戻り、じっと屑籠を見る。
そして、俺は、その中を漁った。
CD−Rに傷が付いてないか確かめ、念のため、ウェットティッシュで拭う。
俺は、何をしているんだ……?
そんなことをぼんやりと思いながら、震える指でパソコンを立ち上げ、CD−Rを突っ込む。
再生ソフトが、起動した。
ディスプレイの中で、先程と同じことが繰り返させられる。
まるで、時間が逆戻りしたようだ。
そして――あの場面に戻った。
「……ま、見ても後悔するかもしれないけど」
亜耶の声に、耳を塞ぎたくなる。
それでも俺は、そのまま、この“ビデオレター”を見続けた。
「お姉ちゃんって、セックスがこわいんだ?」
亜耶が、真帆に向かって、笑みを含んだ声で言った。
「……はい」
「どうしてかなぁ? あんなに、気持ちいいことなのに」
「でも……」
「分かった。じゃあ、亜耶がセックスのよさを教えてあげる」
亜耶の言葉に、俺は耳を疑った。
このガキは……何を言ってるんだ……?
「お姉ちゃんはね、人間としてのキモチが、体を縛ってるのよ。一度、動物になっちゃえば、セックスだってこわくなくなるわ」
「どうぶつ……」
「そうよ。だって、動物にとって、セックスすることはあたりまえのことだもん」
「あたり、まえ……」
真帆が、亜耶の言葉を、繰り返す。
亜耶の奇妙な理屈が、じわじわと真帆のことを犯しているようだ。
亜耶は――自分の姉に、何をするつもりなんだ?
あの、無邪気な笑みの奥で、何を考えていたのだろう。
どうにもできない焦燥感が、狂おしく俺の胸をかきむしる。
「お姉ちゃん。服を脱いで、ハダカになって」
亜耶が、当然のように、真帆に命令した。
「……はい」
あっさりと、真帆が応じる。
真帆が立ち上がり、まずはスカートのホックを外し、ファスナーを下ろした。
ふわり、とシンプルなデザインのスカートが、床に落ちる。
次に、真帆は、淡いピンク色の、ニットのカーディガンを脱ぎ出した。
ゆっくりと、ゆっくりと、ボタンを外し、そして、袖から腕を抜く。
その次は、ブラウスだ。
やはり、ゆっくりと、真帆の白くて細い指が、小さなボタンを外していく。
こんな……こんなことが……。
俺は、予期せぬ真帆のストリップに、思わず見とれていた。
その白く滑らかな肌が、引き締まりながらも柔らかな曲線が、次第にあらわになっていく。
真帆は、本当にいい体をしていた。
すらりと手足が伸び、バストとヒップは大きく張っていながら、ウェストはきゅっとくびれている。
腰から足にかけてのラインは、溜め息が出そうなほど綺麗だ。
ホテルではじっくりと見ることのできなかった真帆の曲線美を、俺は、食い入るように見つめていた。
真帆が、ブラとショーツだけの姿になった。
清楚で、可憐な、白の下着。
ブラのカップが、はちきれんばかりの二つの膨らみを包み込み、自然な谷間を形作っている。
ショーツの奥にある秘部を、俺は、まだきちんと目にしていない。
早くその中を見たいというどうしようもない期待感が、俺の胸の中に湧き起こる。
「下着も脱いで」
「は……はい……」
一瞬の躊躇があった。
少しは、抵抗を感じているらしい。
だが、それでも、真帆は、亜耶の命令に従った。
完全に亜耶の言葉の支配下にあるのだ。
真帆が、手を後ろに回し、ブラのホックを外した。
ふるん、と解放された二つの乳房がかすかに揺れる。
真帆は、ブラを床に落とし、そしてショーツに手をかけた。
俺は、生唾を飲み込みながら、画面を凝視する。
その、形のいい脚を、一本ずつ、真帆がショーツから抜いていく。
それを、亜耶が操作しているであろうカメラが、舐めるように映している。
真帆の足元で、ショーツが、くしゃっ、と可愛らしく丸まった。
俺は、真帆の股間を見た。
繊細な、黒い絹糸のようなヘアが、ぷっくりと盛り上がった恥丘を飾っている。
手入れをきちんとしているのか、もともと少ないのか、上品さすら感じさせるような生え方だ。
「隠しちゃだめだよぉ」
亜耶の言葉に、今まさにそうしようとしていた真帆の手が、止まる。
「ベッドに座って、脚を大きく広げて」
「は……い……」
小さな声でそう返事をして、真帆が、ベッドに腰をかけた。
そして、ゆるゆると長い脚を左右に開く。
気が付くと、俺は、浅ましく画面に顔を近付けていた。
「そうじゃないよ。足もベッドに上げて。Mの字にするの」
「……はい」
言われる通り、真帆は、折り曲げた膝を引き寄せるようなポーズを取った。
卑猥なヌードグラビアのような格好だ。
真帆のクレヴァスが、あらわになっている。
色素の沈着のない、まさに処女雪を思わせるその箇所の中心で、薄桃色のラビアが、かすかに綻んでいた。
初めて見る真帆のその部分を、画面越しに視姦する。
と、俺は、真帆の体が細かく震えているのに気付いた。
その頬に朱が差し、目尻には涙が浮かんでいるように見える。
妹の言いなりになりながらも、激しい羞恥が、その潔癖な心を苛んでいるのだろう。
「オナニー、したことある?」
が、亜耶は、真帆にさらに追い打ちをかけるように、そんなことを訊いた。
「……はい」
真帆が、聞き取れないほどかすかな声で答える。
「週に、どれくらい?」
「そんなに……してません……」
「そうなの? じゃあ、イったことは?」
「ない、です……。こわくなって……とちゅうで、やめるから……」
「ふーん」
いかにも真帆らしい答えを聞き、亜耶は、くすくすと耳障りな笑みを漏らした。
「じゃあ、やって見せて」
「……は……い」
これまでより一拍遅れて、真帆は返事をした。
そして、背後の壁に背中を預け、そっと、右手で自らの秘部を覆う。
まるで、自らの大事な部分を人目から隠そうとしているような仕草だ。
白い右手が、ゆるゆると動き出す。
真帆が、虚ろな表情のまま、きゅっ、と眉を寄せた。
「は……はぁ……はっ……はぁ……はぁ……」
切ない吐息が、真帆の唇から漏れる。
わずかではあれ、確かな性感が、その部分から湧き起こっているのだろう。
たどたどしい、いかにも慣れない感じの、指の動き。
だが、それでも、あの真帆がオナニーをしているという事実に、俺は、頭がかっと熱くなるほどに興奮していた。
「あ……あぅ……んっ……あっ……あっ……あっ……あっ……」
次第に、真帆の吐息が甘たるいものになっていった。
指が、割れ目の部分を上下に撫でている。
その動きが滑らかなところを見ると、そこは、すでに愛液で濡れているのだろう。
真帆が、催眠状態のまま、カメラの前で痴態をさらしている。
焦燥感に似た鋭い興奮に、俺は、息を荒げていた。
「子供っぽいやり方ね、お姉ちゃん」
亜耶が、言った。
その声には、濡れたような淫らな響きがある。
「もういいわ。確かに、それじゃあ、いつまでやっててもイけないでしょ?」
「あ……ぅ……」
オナニーを中断されたせいか、ひどく情けない声を上げながら、真帆が手を止めた。
その指先が、きらきらと濡れ光っている。
「でも、準備は完了みたいね。きちんと濡れてるし」
「……」
「じゃあ、いよいよ、お姉ちゃんに、セックスのよさを教えてあげるね」
ど……どうするつもりなんだ?
真帆は、まだ処女なんだぞ!
いや、しかし、この映像は過去のものだ。
これから起こることを、俺は、ただ見てるしかない。
これから……真帆が、何をされるのか……。
「バロンー」
亜耶が、声を上げた。
何……?
それは……その名前は……。
「バロン、来て」
カメラが、部屋のドアの方を向く。
半開きになったドアから、昼間、亜耶が連れていた、あの黒いレトリバーが現れた。
だらしなく開かれた口から、ピンク色の長い舌がはみ出ている。
はっはっはっはっ……という、犬特有のせわしない呼吸音が、聞こえた。
「いいコね、バロン」
亜耶は、カメラを片手に構えたまま、その黒い犬の頭を撫でた。
何が始まるんだ?
何をするつもりなんだ?
「お姉ちゃん、四つん這いになって」
カメラを再び真帆に向けながら、亜耶は言った。
「はい……」
真帆が、ベッドの上で、四つん這いの姿勢になった。
たぷん、と大きな胸が揺れ、重力に引かれて砲弾型になる。
「これから、バロンがお姉ちゃんのこと、気持ちよくするからね」
な……!
なんだと?
「バロン、お姉ちゃんのアソコ、舐めてあげて」
画面の中のバロンは、鼻を鳴らし、ぐい、と亜耶のスカートの中に鼻面を突っ込んだ。
「あぁん……あ、あたしじゃないってばァ……おねえちゃんだよぉ……」
亜耶が、小学生とは思えないような声を上げる。
「あん、だめェ……そこ、弱いんだから……。もうっ、言うこと聞いて!」
亜耶にそう言われ、バロンは、くーん、と鳴いた。
「今日は、お姉ちゃんと遊ぶのよ。いつもあたしと遊んでるみたいに、ね」
バロンが、その黒いビー玉のような目で、亜耶と、真帆を見比べている。
「ほら、行きなさい!」
わうっ! と一声吠えて、バロンは、亜耶の指さす方向に走った。
真帆が四つん這いでいるベッドの上に上がり、その白いヒップに顔を押し付ける。
べろん。
「ひぅっ!」
真帆が、悲鳴を上げた。
バロンの長い舌が、真帆のあの部分を後ろから舐め上げたのだ。
「逃げちゃだめよ、お姉ちゃんの」
「は……あぅ……は、い……」
動きかけていた体を止め、真帆が、返事をする。
バロンが、真帆の動きが止まったことに気をよくしたかのように、さらに舌を動かした。
ぴちゃぴちゃという湿った音が、連続して起こる。
「あっ、ああっ、あ、ああ、あ、ああぁ……」
真帆は、うろたえた声を上げながら、両手でシーツをかきむしった。
シーツが、すぐにしわくちゃになる。
「すごいでしょ……バロンの舌……」
亜耶が、上ずった声で言った。
「見てるだけで、あたし、あそこがきゅんってなっちゃう……。ね、お姉ちゃんも、いっぱい感じてね」
「あ……あうっ! んっ……はぁぅっ……!」
亜耶の言葉がきっかけだったかのように、真帆が、びくんっ! と体を震わせた。
ぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃ……。
バロンは、飽く事なく舌を動かし続けている。
真帆が……真帆の体が……犬の舌に舐めら、辱められている……。
「あっ、ああんっ! あうん! あん! やあぁんっ!」
真帆は、両肘を折り、シーツに突っ伏すような格好で、声を上げ続けた。
その丸い尻だけが、糸で吊るされたように、持ち上がっている。
「うふっ……気持ちいいでしょ? お姉ちゃん……」
亜耶が、興奮のためか、かすかに声を震わせながら、言った。
「いい……です……きもち、イイっ……あぁん……イイの……イイっ……」
真帆が、夢見るような口調で、言う。
「素直ね、お姉ちゃん……。いいのよ。もっともっと感じて……!」
「はぁんっ! あっ……あぁん……! あっ! ああっ! あひぃン!」
「ふふふ……あそこから、いーっぱいHなシロップがあふれちゃってるわよォ」
言いながら、亜耶が、カメラを真帆の下半身に寄せる。
真帆のヒップは、犬の舌による間断の無い刺激に、ふりふりといやらしく揺れていた。
クレヴァスや、アヌスの周囲まで、てらてらと卑猥に濡れ光っている。
そして、犬の舌によって舐めしゃぶられた淫唇からは、バロンの唾液とは明らかに違う液が溢れ、むっちりした太ももの内側にまでつたっていた。
「ひゃうううっ! はぁんっ! こ、こんなの……ああっ! あぁーっ!」
「どぉ? あいつ、こんな気持ちのいいクンニしてくれないわよ? この味を覚えたら、もう、人間なんかじゃ満足できないんだから」
「ダ、ダメぇ……あんっ! もう、もう私……!」
「イキそうなの?」
「はい……そう、です……っ! あんっ! あーっ! イクっ! イクーっ!」
「――ダメよ」
亜耶が、鞭のように鋭い声で、命じた。
「いくら感じてもいいけど、イクのはダメ。あたしがいいって言うまで、イっちゃダメなんだから」
「ひいンっ……! そ、そんな……あ、あああああああっ!」
がくんっ、がくんっ、と真帆の体が、震える。
が、亜耶の言葉が真帆を完全に支配してるのか、イきたくてもイけない様子だ。
豊かな双乳が大きく揺れ、たがいにぶつかって、どこか滑稽な音を立てている。
「ふふふふふ……舌なんかじゃ、イかせてあげないんだから……」
そう言って、亜耶は、バロンの頭を押さえた。
バロンが、クンニリングスを中止して、すっと頭を下げる。
「あっ……ああぁ……ひいぃ……ん」
真帆が、その白い体をうねらせ、ヒップをふりふりと振った。
まるで、犬の舌による愛撫の再開をねだり、誘っているような仕草だ。
中途半端に煽られた性感の炎が、真帆を、内側から残酷に責めているのだろう。
「お姉ちゃん……舌なんかより、もっといいものでイかせてあげる」
亜耶が、バロンに何か合図をする。
まさか――まさか――まさか――まさかまさかまさかまさかまさかまさか……。
バロンは、一声うなり、そして、四つん這いのままの真帆にのしかかった。
「やめ、て……」
本能的に危機を悟ったのか、真帆が、空しく身をよじる。
だが、その体は、催眠術のためか、それとも強すぎた快感の名残のためか、悲しいほどに動かない。
もう、見ていられない。
俺は、震える指でマウスを操り、画像を消そうとした。
その時――
「たす……けて……」
かすかな声で、真帆が、言った。
「たす、け……て……。……さん……」
はっきりとは、聞き取れなかった。
だが、真帆は、確かに、俺の名を呼んだのだ。
ちくしょう……っ。
見るのをやめることすら、できない。
俺は、きりきりと歯を食いしばった。
その間も、バロンは、真帆のなだらかな背中に前足を乗せ、かくかくと腰を振っている。
バロンの股間では、ぎょっとするほど赤い肉棒が、すでに臨戦態勢になっていた。
はっはっはっはっはっはっ……という、ますます荒くなった呼吸を聞くまでもなく、バロンが激しく興奮していることが分かる。
バロンが、腰を振りながら、前進した。
ヒトのそれとは異なる形の、グロテスクな肉棒が、真帆の処女肉を狙っている。
そして――
「ああっ……!」
バロンが、一際深く、腰を前進させた。
ぐっ、ぐぐっ、と、バロンが体を前に進ませる。
「あ、あ、あ、あ……」
真帆が、悲痛な声を漏らす。
その、白い太ももの内側を、確かな純潔の証しである血が、つうっ、と一筋伝った。
そ、そんな……こんなことが……。
真帆が……真帆のアソコが……汚らしい犬のペニスで……。
「ひっ! ひいっ! いっ! いやっ! いやあー!」
真帆が高い悲鳴を上げる。
バロンが、思いやりのない動きで、かくかくと腰を振っているのだ。
「痛い? お姉ちゃん」
亜耶が、くすくすと笑いながら訊いた。
「バロンの、大きいものね。……でも、すぐに気持ちよくなるわよ」
「あっ、あっ、あっ、あっ!」
真帆の悲鳴のトーンが、高くなる。
「ほーら、気持ちよくなってきたでしょぉ?」
真帆の耳たぶに唇を寄せ、甘い毒を注ぐように、亜耶が言う。
「あっ、ああっ、あっ……は、はい……あああっ!」
「ふふふふふふふ……初めての男の感触は、どう?」
様々な角度から、今まさに犬に凌辱されている姉を撮影しながら、妹が訊く。
「あっ……あっつい……あつくって……かたくって……んああああっ、く、くるしいっ……」
「でも、その苦しいのがいいんでしょう?」
「はっ……はあうっ……は、い……イイ……すごいの……あああっ……あーっ……!」
バロンのピストン運動に圧倒され、まるで土下座でもしているような屈辱的なポーズになりながら、真帆は、激しく喘いでいた。
意識してのことなのか、そのたわわな乳房の頂点にある乳首を、シーツにこすりつけるように、体を前後に動かしている。
その目許は赤く染まり、半ば開かれた口からは、だらしなく涎がこぼれていた。
「んっ! んわあああっ!」
真帆が、驚きの声を上げる。
「どうしたの?」
「な、中に……中に、出てる……あついの……あああっ! 出てるぅーっ!」
なっ……中出しされてる、だって……?
そんな……犬が……犬が人間の女の子に……?
あの、真帆の膣内に……子宮に……。
そん、な……。
でも、これで……これで、ようやく終わる……。
そう……終わるんだ……。
だが、そんな、俺の最後の希望も、打ち砕かれた。
バロンは、腰の動きこそ止めたが、一向に真帆の体から降りようとしなかったのだ。
どこか、満足げな態度で、真帆の体を征服している。
「うふふ……根っこのコブが入ってるよ」
言いながら、亜耶が、真帆の秘部をアップにした。
かすかな血と、大量の愛液にまみれたそこが、痛々しく引き伸ばされ、バロンの牡器官をぐっぷりと咥え込んでいる。
確か、バロンのその部分は、ペニスの竿の部分よりも一回り太くなっていたはずだ。
その部分が、真帆の中に入り込んでいるというのか……?
「ここはねえ、オチンチンが抜けないようにするところなんだよ。犬のセックスは、まだまだ続くんだから」
「はっ……はわぁ……あ、ああぁ……」
真帆は、まるで彼女自身が犬になってしまったかのように、舌を突きだし、喘いでいる。
「バロンが、ちょっと体を動かすだけでも、感じちゃうでしょ?」
「は……はいィ……」
やっとのことで、真帆が返事をする。
「バロン、動いてあげて」
亜耶の言葉を完全に理解しているのかのように、バロンが、ぐんっ、ぐんっ、と腰を動かした。
真帆のアソコには、バロンのペニスが根元まで突き刺さったままだ。
「あんっ……ああっ……! あっ! あああぁぁぁっ!」
真帆が、明らかな悦びの声を上げた。
そのしなやかな体が、苦痛ではなく快楽に悶え、うねっている。
「お姉ちゃん……きもちいいでしょう?」
「いい……んひぃ……ひいいっ! いい……いいのお……っ!」
涙を溢れさせ、その可愛い顔をグチャグチャにしながら、真帆は喘いだ。
真面目な真帆の象徴のようなメガネが、その顔に奇跡のようにかかっているのが、痛々しい。
「すごいっ……こんな……こんなの……んあああああ……!」
「どう、お姉ちゃん。これが、セックスだよ……」
「はぁんっ! あっ! ああぁ……あぐっ! あうううっ!」
「犬とセックスするの、気持ちいいでしょう? ふふふっ、牝犬の快感だよね?」
「あっ……ああぁ……どうしてぇ……き、きもちいい……きもちいいィ……っ!」
「クククククククッ……」
真帆の嬌声に、亜耶の笑い声が重なる。
「オマンコきもちイイでしょ? ワンちゃんのオチンチンに犯されてすっごく感じるでしょ?」
「感じるぅ……ああん……っ! オマンコ、いい……バロンの……バロンのオチンチン、いいのっ……はああああっ!」
真帆が、普段からは考えられないような言葉を叫ぶ。
「もっと、もっと感じて……メチャクチャになったお姉ちゃんを見せて……!」
言いながら、亜耶が、真帆の前に回り込み、腰を下ろした。
そして、短いスカートをまくり上げ、子供物のパンツに包まれた股間を、真帆の前に突き出す。
そのコットンらしき布地は、ぐっしょりと濡れていた。
「舐めて……舐めて、お姉ちゃんっ! あたしのオマンコ舐めてっ!」
「は、はい……」
真帆が、おぼつかない手つきで亜耶のパンツを脱がす。
そして、脚を広げ、腰を突き出すようにした亜耶の幼い股間に、その整った顔をうずめた。
「あうっ!」
亜耶が声を上げ、画像がぶれる。
「ああんっ……お姉ちゃん、じょうずう……あん、そこ……そこなの……もっと、もっと舐めてェ……」
「はい……んぶ……ちゅぶっ……はむ……んはぁっ……てろてろてろてろ……」
ふーっ、ふーっ、と鼻で息をしながら、犬には以後から犯されている真帆が、亜耶の股間を舐めている。
「あんっ、あぁん……っ! ステキぃ……お姉ちゃん、ステキよっ……!」
真帆の口元が、たちまち、亜耶の漏らした愛液でベトベトになる。
「お姉ちゃん、犬みたいだよ……お姉ちゃんは、バロンに犯されて感じちゃう、エッチな牝犬なんだよっ!」
「わぅんっ!」
真帆が、まさに犬の声で、返事をした。
「あぁん……いいコ……いいコね……」
亜耶が、真帆の頭を撫でる。
「牝犬ちゃん……あたしをイかせて……。あたしがイったら、バロンのオチンチンでイっていいから……」
「わんっ! わんわんっ! わうんっ♪」
嬉しそうに鳴いて、真帆は、亜耶の股間で忙しく舌を動かした。
無毛の恥丘から、まだ莢に包まれたクリトリス、そして、とろとろと蜜を溢れさせるクレヴァスを、情熱的に舐めしゃぶり、吸い上げる。
「あんっ! あはぁん! いいっ! きもちイイっ! オマンコいいっ! オマンコきもちイイっ! メスイヌおねえちゃんのクンニでオマンコいいのぉっ!」
亜耶が、狂ったように卑猥な言葉を喚き散らす。
「あうん、ふうん、うん、んんんんんんんっ……!」
真帆が、バロンの突きに反応しながら、絶頂を求めて、亜耶の股間を攻め立てる。
「あっ! イクうっ! もれちゃう! オシッコもれちゃううっ!」
「わぅんっ! あん! きゃうん! きゅうううううんっ!」
「かけちゃう……かけてあげるっ! お姉ちゃんの顔に、オシッコいっぱいかけてあげるんだからっ!」
「わんっ、わんっ、わんっ!」
まるで、そのことを催促するように鳴き、真帆は、妹の性器を烈しく舐め啜った。
「イクよっ! イクよォっ! あっ! あああっ! 出るっ! オシッコ出るううううゥーっ!」
ぷしゃあああああああっ!
透明に近い尿液が、亜耶の股間から迸り、真帆の顔を濡らす。
「あっ、ああぁんっ……おもらし、きもちイイ……っ。いいよっ……! お姉ちゃんも、イっていいよっ! バロンのオチンポでイっていいよっ!」
「わっ……わうっ……きゃいいいいいいいいっ!」
びくびくびくびくっ、と真帆の体が痙攣した。
今まで無理矢理に抑えられていた快楽が、一気に脳を直撃したかのようだ。
「んわあああっ! あーっ! あーっ! あーっ! あーっ! あーっ!」
真帆が、イっている。
妹に心を操られ、後ろから犬のチンポを突っ込まれて、初体験からイキ狂っている。
それは、まさに、人ではなく、無限に絶頂を求める、ただの一匹の牝犬だった。
「あ、あ、あ、あ、あ、わうううううううううううううううううううううううううううううゥーンッ!」
一声哭いて、真帆は、がっくりと突っ伏した。
が、そのヒップは持ち上がったままだ。
バロンが、真帆の背中から降りる。
しかし、バロンのペニスは、真帆の膣内に挿入されたままである。
まるで、それは、真帆がバロンに完全に征服された証拠のようだった。
その状態で、バロンが、真帆に尻を向ける格好になる。
しばらく、四つん這いの真帆とバロンは、尻を合わせたままの状態でいた。
そして、数分後……ようやく、バロンの体が離れた。
真帆のヒップが、支えを失って、とす、とシーツに落ちる。
無残に広がった膣口から、驚くほど大量の白濁液が溢れ出た。
それを、バロンが、ぴちゃぴちゃと舐めとる。
真帆は、そんなバロンに、恍惚に潤んだ流し目を投げかけた。
「うん……んふぅン……くぅん……」
バロンの舌使いに、くすぐったそうな、甘えるような、そんな声を、真帆が上げる。
ひとしきり真帆のその部分を舐め終えたバロンが、濡れた鼻面を真帆の顔に寄せた。
真帆の顔を舐めようとするバロンに、彼女が、ピンク色の舌を伸ばす。
ぴちゃぴちゃという、音。
真帆が、陶酔の表情で、犬の長い舌に自らの舌を絡める場面で、ビデオは終わった。
再生ソフトの画面は、最初に戻っていた。
ベッドに座る、虚ろな表情をした真帆が、俺を見つめている。
犬のペニスに汚される前の、無垢だった時の真帆が――
俺は、指一本触れていないのに、ズボンをはいたままたっぷりと射精していた。
のろのろと、冷たくなったズボンとトランクスを替える。
そして、俺は、その後、しばらく泣いた。
亜耶が、どういうつもりであのビデオレターを俺に見せたのか、俺には分からない。
俺に真帆のことを諦めさせるつもりだったのか、それとも俺のことを試したのか、ただ単に姉を辱めて楽しみたかったのか――
ともかく、亜耶の言った通りになった。
真帆は豹変していた。
何かあると、俺の腕に抱き着き、その豊かな乳房を圧しつけてきた。
俺の股間に、ねっとりと物欲しげな視線をやることもしばしばだった。
そして、羞恥と期待に頬を染めながら、露骨にセックスを求めてきた。
だが、俺も、変わってしまっていた。
真帆に欲情できなくなってしまったのだ。
真帆に魅力を感じてないわけじゃない。まして、真帆がもう処女じゃないということに、こだわっているわけでもない。
ただ、俺が、あの黒い犬と悪魔のような少女が与える快楽の十分の一も、真帆にもたらすことができないであろうことを考えると、ペニスが萎えてしまうのだ。
もう、真帆とはおしまいだった。
俺は、真帆と別れた。
そして、俺はその夜、あのラベルのないCD−Rを再生させながら、何度も何度も自慰を繰り返したのだった。