すてきな終末を



第六章
−理由−



 りん、りん、りん、りん……。
 部屋に、かすかな鈴の音が響いている。
 絶え間なく響く、しかし耳障りでない小さな音。
 それは、くるみの可憐な乳首を貫くピアスから漏れる音だった。
 金色の、小さなDの字型のピアスである。それに、猫の首輪につけるような、小さな鈴が付いているのだ。
 くるみは今、両手を戒められ、それぞれ天井から下がる鎖に繋がれている。
 強制的に両手を上げさせられ、さらには、その細い脚を緩やかに開いていた。
 ほとんど、全裸である。
 身に付けているものといえば、ピアスと、三つ編みを留めるヘアゴム、そして、眼鏡くらいのものだ。
 あの後エイプリルは、放心状態のくるみを同じ地下フロアの浴室に連れていき、汗と体液と破瓜の血に汚れたブラウスを破棄し、丁寧に体を洗った。
 くるみは、エイプリルに髪を洗われた後、ぬるま湯とグリセリンの混合液を、何度も浣腸された。
 泣き喚き、何度も許しを請いながら、くるみは、エイプリルの目の前で、屈辱の汚濁を排泄させられ続けたのだ。
 最後に、ほとんど透明なままの薬液を排泄するくるみに、エイプリルは、蕩けるようなキスをした。
 その瞬間、くるみは激しく昇り詰めていた。
 そして、乳首に鈴を下げたピアスを取り付けられたのである。
 エイプリルは、乾かしたくるみの髪を再び三つ編みにして、ご丁寧に眼鏡までかけさせた。
「こうしないと、くるみちゃんって感じがしないものね」
 エイプリルは、そんなことを言って、くすくす笑った。
 そしてくるみは、ほんの少しの仮眠の後に、手かせをはめられ、天井から下がる鎖に繋がれたのである。
 今、くるみの足元に、エイプリルと、そしてLが、横座りのような姿勢で座っていた。
 二人は、くるみの脚に手を添え、その陰部に、唇を寄せている。
 エイプリルは前からクレヴァスを、Lは後からアヌスを、口と舌で愛撫していた。
 二人が身に付けているのは、エナメル製らしい、ひどく扇情的なデザインの衣服だった。ほとんどおそろいの外観だが、エイプリルのは赤、Lのは黒である。スタイルのいい二人が着ているため、そのビザールなデザインがいっそう引き立っていた。
 小さなベルトや、金属性のリングが多用されたその衣装の股間の部分には、禍々しく反りかえったディルドーが装着されている。
 二人の口唇愛撫は、執拗だった。
 まだ幼い色合いのラビアを甘噛みし、クリトリスを吸引して、アヌスを舌でえぐり、会陰の部分を舐めしゃぶる。
 そして、前後から会陰に伸ばした二人の舌が時折触れると、エイプリルとLは、嬉しそうに目を細めながら笑い合うのだった。
「はぁぁ……あぅン……んぐ、んん、ん、んぅっ……ふぅン……ンあああぁぁぁ……」
 くるみは、二人の口と舌に責められて、絶え間なく甘い喘ぎを漏らし続けていた。
 湧きあがる快楽に、その拘束された体をよじり、ぴくぴくと可愛らしく体を震わせる。
 その度に、りん、りん、と、鈴が軽やかな音をたてた。
 自分の、何か大事なものが剥奪された、その証しである音。
 その響きに、くるみはますます体を火照らせ、自分でも驚くほどの愛液で、子供のような外見のスリットを熱く濡らしてしまうのだ。
 快感で脳が飽和状態になり、何も考えられない。もし、もうひと押し、何か刺激を与えられれば、その快感は溢れだし、絶頂の大波がくるみをさらっていくだろう。
 しかしエイプリルとLは、くるみがアクメを迎えようとすると、すっとその攻撃の手を緩めてしまう。
 そして、潮が引くように絶頂の予感が退くまで、その肌を触れるか触れないかという微妙なタッチで愛撫し、快感を一定の高さでアイドリングするのである。
「ふわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……う」
 もう何度目かの絶頂の兆しを逃し、くるみは、妙に気の抜けた声をあげてしまった。
 そして、もどかしげにその幼い腰を揺らす。
 りん、りん、りん……と鈴が鳴った。
 エイプリルは、口元に笑みを浮かべ、立ち上がった。
「あぅ……」
 くるみが、唇を半開きにしながら、焦点の定まらない瞳で、エイプリルの顔を見る。
 エイプリルは、妖しい微笑を浮かべたまま、くるみの小さな口に唇を重ねた。
「んんんッ?」
 くるみが、口を塞がれたまま、驚いたような声をあげる。
 エイプリルが、口内に溜めていたくるみの愛液を、口移しで流しこんだのだ。
 自身の牝のエキスとエイプリルの唾液が混じった屈辱の味を、くるみは、涙を流しながら嚥下した。
 こくっ、こくっ、とくるみの喉が鳴るのを、やはり立ち上がったLがひどく淫らな顔で、のぞきこんでいる。
「よっぽどこのコが気に入ったのね、エイプリル」
 Lは、楽しそうな口調でそう言った。
「だってこのコ、虐めると、すっごい可愛い顔するんだもん」
 くるみの唇から唇を離し、口元をぬぐいながら、エイプリルが言う。
「ほんと、無節操なんだから」
 そう言ってLは、くるみに後から頬ずりするようにして、エイプリルに顔を寄せた。
 エイプリルが、今度はLに、口付けする。
 ぴちゃぴちゃと舌が絡まり合う淫らなキスの音が、くるみの耳元で響く。
 二人は、くるみを挟むようにしながら、キスを続けた。
 そして、そのしなやかな手で、まるで中学生のようなくるみの幼児体型を弄ぶ。
「ンはあああああぁ……あいっ、いっ、ああァ〜ン」
 四本の手で性感を煽られ、くるみは、再び絶頂の一歩手前まで追い込まれた。
 しかし二人は、けしてそれ以上の刺激を与えようとしない。
 エイプリルとLの柔らかな乳房の感触を感じながら、少しでも刺激を得ようと、くるみは体をゆすり、二人の肌に自らの肌をすりつけようとする。
 くるみとエイプリルの体に挟まれた鈴が、ころころとくぐもった音を立てた。
 エイプリルが、Lとのディープキスを中断し、体を離す。
「ああぁ……っ」
 温かな肌が自分から離れていく何とも言えない喪失感に、くるみは悲鳴のような声をあげた。
「欲しいの? くるみちゃん」
 興奮に少し声を上ずらせながら、エイプリルが訊く。
 くるみは、かあっとその童顔を赤く染めた。そして、小さく、こくりと肯く。
「エイプリルは、きちんと言葉で言って欲しいみたいよ」
 後から、その肉付きの薄い肩を抱きながら、Lがくるみの耳元で囁く。
「ことば……?」
「そうよ……。あなたがどんなにイヤらしい娘で、どんなふうにされたがっているのかをね……」
 そう言いながら、Lは、くるみの脚の間に手を差し込み、くちゅっ、とクレヴァスの合間に指を差し入れた。
「ひゃっ!」
 そして、すでに痛いくらいに勃起してしまっている肉の真珠の周囲を、くるくると円を描くように指で愛撫する。
 しかし、クリトリスには、けして直接触れようとはしない。
「ああ……い、いやあ……ッ!」
 くるみは、もどかしげに体をゆすりながら、ふるふるとかぶりを振った。二本の三つ編みが、頼りなげに揺れる。
「どうなの……?」
 エイプリルが、優しく、淫らな笑みを浮かべながら、訊く。
「……して……ください……」
 小さな震える声で、くるみは言った。
「なぁに?」
 Lが、耳たぶに息を吹きかけるようにして聞き返す。
「も……もっと、えっちなことして……くるみを、イかせてください……」
 そう言うと、くるみは、真っ赤になった顔をうつむかせ、ぽたぽたと涙をこぼした。
 眼鏡のレンズが、その熱い涙を受け止める。
 エイプリルとLは、にっこりと微笑み、そして、くるみの手を戒めている手かせを外した。ぺたん、とくるみは、剥き出しのコンクリートにお尻をついて、しゃがみこんでしまう。
 そんなくるみの目の前に、二人は、その股間に装着されたディルドーを差し出した。
「ぅあ……」
 怯えたような上目遣いで、くるみが二人の顔を交互に見上げる。
「舐めるのよ、くるみ……」
 エイプリルが、欲情にそのヘイゼルの瞳をきらめかせながら、言う。
「う……」
 くるみは目を閉じ、恐る恐るといった感じで、エイプリルの股間から生えた人工ペニスに舌を這わせた。
 シリコンのディルドーが、唾液に濡れ、てらてらと蛍光灯の光を反射する。
「きちんと咥えて、あなたのヨダレでぬるぬるにしなさい……」
 そう言いながら、Lが、自らのディルドーでくるみの柔らかな頬を小突く。
「ふゎい……」
 くるみは、何とも情け無い声で返事をしながら、今度はLのディルドーを口内に収めた。
 その小さな口には収まらないくらいの、兇暴な大きさのディルドーである。
 しばらくくるみは、二つのディルドーを交互に舐めしゃぶった。
 くるみが頭を前後に動かすと、りん、りん、りん、りん、と乳首の鈴が澄んだ音を立てる。
 その間もエイプリルとLは、ハイヒールを履いた足のつま先で、くるみの陰部を交互に嬲った。
 エナメルのハイヒールがいやらしい粘液に濡れ、床に小さな水溜りができる。
「もういいわよ、くるみ……」
 エイプリルがそう言って、人工ペニスに対するフェラチオを中断させた。
「立ちなさい」
 エイプリルに言われるまま、くるみは、覚束ない足取りでよろよろと立ち上がった。
 くるみの、哀れなくらい細い脚が、かくかくと震えている。
 エイプリルが、そんなくるみの左の膝を、強引に持ち上げた。
「きゃうん!」
 悲鳴をあげて倒れそうになるくるみを、エイプリルとLが、優しく支えてやる。
「いくわよ……」
 そう宣言して、エイプリルは、ディルドーをくるみの体内へと侵入させていった。
「あ、あ、あ……」
 充分に潤っているはずの膣壁を、自らの唾液にまみれたディルドーがこすりあげる、まだ痛みを伴う感触。
 その痛みですら、くるみにとっては待ち焦がれていた刺激だ。
 とうとうディルドーが、くるみのそこに収まる。
「はぐううううううッ」
 ずうん、と体の奥底に杭を打ち込まれたような感覚に、くるみは、うめくような声をあげた。
 エイプリルが、中腰に近い姿勢だった下半身を伸ばしていく。
「ぅわあ、あ、あああああああああああああッ!」
 くるみは、自らの体重によってさらに体内深くディルドーが食い込んでいく激痛に、身も世も無い様な悲鳴をあげた。
 せいいっぱい爪先立ちした足で、どうにか自分の体を支えようとする。
 が、ハイヒールを履いたエイプリルとくるみとでは、脚の長さに違いがありすぎた。文字通り、無駄な足掻きである。
「あーッ! あッ! ンあッ! あッ! あああああーッ!」
 くるみは、必死になってエイプリルの首に腕を回し、すがりついた。
 エイプリルが、そんなくるみの小ぶりなヒップに手を添え、支える。
 ようやく一息ついて、くるみは、断続的にあげていた悲鳴を止めた。
 そして、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……と激しく喘ぐ。
 その紅潮した顔は呆けたような表情を浮かべ、眼鏡の奥の瞳は潤みきっている。
「ほんとに可愛いわね、このコ」
 Lは、そう言いながら、エイプリルの手にその手を重ねるようにして、くるみのヒップを割り開いた。
「……え? ……きゃああ!」
 アヌスにディルドーをあてがわれ、くるみは、再び悲鳴をあげた。
「そ、そんな……やめて……やめてぇ……」
 排泄口を犯されるという絶望的な予感に、くるみの小さな体がぶるぶると震える。
「大丈夫よ……ちょっとおっきいのを出すのと同じような感じにすればいいんだから」
 Lが、嬲るような口調で、くるみの耳に囁く。
「さっき、あれだけたくさん出したでしょ」
「でも、そ、そんなの……こわい、です……」
 エイプリルの言葉に、くるみは力なく反論する。
「きちんとできないと、辛いのはあなたよ」
 Lは残酷にそう言って、くっ、と腰に力を込めた。
「ひィいいい……っ」
 くるみは、必死になって括約筋を緩めようと努力する。
 強制的に排泄させられることにも似た汚辱に満ちた苦痛に、額に脂汗が浮き、やや癖のある前髪が貼りついた。
 その苦痛が、なぜか胸の奥で、どす黒い愉悦となって渦を巻く。
 前後から犯され、蹂躙されている自分をイメージしたとき、かあああッ! とくるみの脳髄に血が昇った。
 ディルドーの雁首の部分が、括約筋の環を通過する。
「ひあああああああああああああああああああああああッ!」
 敏感な直腸粘膜を人工ペニスで陵辱され、くるみの視界は真っ赤に染まった。
 その真紅の風景の中で、ちかちかと白い星がまたたく。
「これで、あなたは、私たちのものよ……」
 耳元で囁く声が、くるみには、どちらの声か分からない。
「あなたは、あたしたちのペット……」
 体内で、薄い肉の壁を隔ててディルドー同士がこすれ合う、圧倒的な感覚。
「檻の中に閉じこめて、気の向いた時に、犯してあげる……」
 くるみは、喉を反らし、涙を溢れさせながら悲鳴をあげ、快感を訴える。
「うんと、うんと、いじめてあげるわ……」
 立て続けに絶頂を迎えながら、くるみは失禁していた。
「おもらしするほど感じてるのね……可愛い……」
 生温かいしぶきがほとばしり、だらしなく床に滴り落ちる。
「あなたはペット……もう、人間じゃないの……慰みものの生きた人形……イヤらしい牝奴隷……」
 自らの人間性を否定されるたびに、脳の奥が熱く疼き、快感の小爆発が、かすかに残っていた理性を粉砕していった。
「これでもう、あなたは帰れないわ……」
 その幼げな体でアクメを貪りながら、くるみは、屈辱と隷属の悦びに身を震わせる。
「きちんと返事をなさい、奴隷ちゃん……」
 くるみは、凄まじいばかりの快感に突き上げられながら、壊れた人形のように、かくん、かくんと肯いていた。

 そして――
 りん、りん、りん、りん……と、地下室に、いつまでも鈴の音が鳴り響いた。



 次第に深まりつつある秋の気配が、研究所を包みこんでいく。
 昼が短くなり、長い夜の底に、その白い建物は身を横たえていた。
「早紀、おいで……」
「うん」
 素直に肯いて、早紀は、ベッドの上で半身を起こした俊司ににじり寄った。
 そして、毛布の下で伸ばされた俊司の脚を、またぐようなかっこうで腰を下ろす。
 二人とも、パジャマ姿だ。
「脱いで……」
「うん」
 早紀は、はにかむような表情で言って、すこしうつむいた。
 そして、綺麗な指先で、一つ一つ、パジャマのボタンを外していく。
 ぽろん、と意外なほどの大きさの乳房が、外に解放された。ブラジャーはつけていない。
「素敵だよ、早紀」
 そのスレンダーな体に似合わない豊かな膨らみを見つめながら、俊司は言った。
 形のいい双乳の頂点で、小粒な乳首が、かすかに震えている。
「あの……ぬるぬるのせい、なの?」
 早紀が、ちょっと恨みっぽい上目遣いで、俊司の顔を軽くにらむ。
 早紀が言っているのは、俊司が、彼女の胸を愛撫するときに使っていたジェルのことだ。
 俊司は、悪戯がばれた子供のような顔で、少し笑った。
「お兄ちゃんのせいで……早紀、こんなイヤらしい体になっちゃった……」
 可愛らしいデザインのパジャマをはだけた格好で、早紀が、囁くような声で言う。
 俊司は、眼鏡の奥の優しい目で、早紀の体を見つめ続けている。
「ぁ……」
 早紀は、かすかに声をあげた。
 俊司に見つめられていたピンク色の乳首が、ぷくん、とその存在を主張しだしたのだ。
 乳首に血液が集まり、勃起していくのが分かる。かああっ、と早紀の頬が赤く染まった。
「お、お兄ちゃん……」
 早紀が、すがるような目つきで、言った。
「なんだい? 早紀」
「お、おねがい……触って……」
 カの鳴くような声で、おねだりをする早紀。
「どこを?」
「む、胸を……触ってほしいの……」
「ここ?」
 俊司はそう言いながら、わざとらしく、早紀の乳房の下辺りに触れた。心臓の鼓動が、指先に伝わってくる。
「ち、ちがうよ……お兄ちゃんのイジワル……っ」
 ちょっと目に涙を溜めながら、早紀が言う。
「じゃあ、どこを?」
「お……おっぱい、さわってほしいの……っ!」
 怒ったような口調で、早紀は言った。
「うん、分かったよ」
 そう言って、俊司は、早紀の乳房を両手に収めた。
「はうン……」
 それだけで早紀は、うっとりとした声をあげてしまう。
 俊司は、柔らかいながらも張りのある早紀の乳房を、やさしい手つきで揉み始めた。
 やや手に余る感じの妹の乳房が、兄の愛撫によって淫猥に形を変える。
「あっく……ン……んうぅ……ん」
 甘えるような吐息を漏らしながら、早紀は、我知らずゆるゆると腰を動かしていた。
 兄の膝のあたりに、恥ずかしい部分を押しつけるような形だ。
 股間の部分が、驚くほど熱くなっている。
 俊司の手の動きが、次第に激しくなった。
 まるで、彼自身の興奮を示しているかのように、ぐにぐにと早紀の胸を揉みしだき、指の間に乳首を挟んで、刺激する。
「んうううううッ!」
 きゅっ、と乳首をつままれ、早紀はぴくぴくと体を震わせた。くたっ、とその華奢な体から、力が抜ける。
 早紀は、俊司の下半身を覆う毛布に両手をついて、はぁはぁと小さく喘いだ。ちょうど、俊司の腰を、両腕で挟むような姿勢だ。
 俊司の股間のものは、毛布越しにでも分かるくらいに、隆起していた。
「あ……スゴい……」
 早紀が、濡れたような瞳で、じっと兄のその部分を見つめながら、言った。そして、ちろっ、とピンク色の舌で、自分の唇を舐める。
「どうしたの? 早紀」
「……いじわるっ」
 わざとらしく訊く俊司に、すねたようにそう言って、早紀は、兄の腰に抱きついた。
 さすがにはしたないとは思っているのか、顔を真っ赤にしながらも、頬で、布越しに俊司のこわばりを感じる。
「どうしたの?」
「……ほ、ほしいの……おにいちゃんのが……」
 かすかにかすれた声で、早紀が囁く。
「おしゃぶりしたくなっちゃったのかい?」
 俊司の言葉に、早紀は、小さくこっくりと肯いた。
「じゃあ、服を脱いで、お尻をこっちに向けてごらん」
 そう言いながら、俊司は、上体を倒して仰向けになった。
「こっちって……?」
「後向きに、膝で、僕の顔をまたぐようにするんだよ」
「そ、そんなの……」
 まだ、シックスナインは未経験の早紀が、ますます顔を紅潮させる。
 そんな早紀の顔を、俊司が、優しい目つきで見つめ続けた。
 早紀は、観念したように服を脱ぎ捨て、全裸になる。
 そして、俊司に言われたとおり、おずおずと後向きになって、俊司の頭を膝でまたいだ。
「こ、これで、いいの?」
 自分の股間のさらに下にある兄の顔に、早紀が問いかける。
「もうちょっと前に行って……そう」
 俊司は、妹の腰を両手で持って誘導しながら、言った。
 俊司のすぐ目の前で、早紀の柔襞が、熱い愛液に潤んでいる。
「早紀のここ、すごく濡れてるよ」
「やだ……お兄ちゃんのエッチ」
「今更、何を言うんだか」
 からかうようにそう言って、俊司は、早紀の小ぶりなヒップを引き寄せた。
「あっ……や、やっぱり、はずかしいよ……っ」
 早紀が、悲鳴のような声をあげる。
 しかし俊司は、そんな妹の悲鳴を無視して、ひくひくと息づいている蜜をたたえた花弁に、舌を這わせる。
「ひゃうっ!」
 かすかにざらつく舌が、敏感な粘膜をねぶる感触に、早紀が、きゅっ、と体を縮めた。
 そんな早紀のすぐ目の前に、盛りあがった毛布がある。
「ひぁ! ……んう……んくッ!」
 ぴくん、ぴくん、とその華奢な体を震わせながら、早紀は、俊司の股間をまさぐった。
 そして、毛布をはぎとり、ライトグリーンのパジャマのズボンに手をかける。
 腰をかすかに浮かして協力する俊司のズボンとトランクスをずりさげると、ぶるん、と反り返った男根が現れた。
 牡の匂いを鼻孔に感じ、早紀の体が、なぜかかあっと熱くなる。
「あ……はぁっ……」
 早紀は、俊司のシャフトに細い指先を添え、まずはちろちろと亀頭部分を舐めしゃぶった。
 すでにカウパー氏腺液をにじませていた俊司のペニスから、さらなる体液が漏れ出る。
 その苦味を感じながらも、早紀は、丹念に兄のペニスの先端を舐め上げ、雁首に沿って舌を這わせた。
「ぅぁ……」
 俊司が、早紀のクレヴァスを責めていた口を離し、思わず声を漏らした。
 そんな兄のあげる声を頼りに、早紀は、俊司の感じる部分を、舌と唇で探り当てていく。
 負けじと、俊司もクンニリングスを再開した。
 尖らせた舌先で粘膜の合間をえぐり、舌の裏側の柔らかい部分を使って、すでに顔を出している肉の芽を刺激する。
「んんんんんんッ!」
 早紀は、切なげに眉を寄せながら、その小さな口に、ぱっくりと兄の怒張を咥え込んだ。
 何とも言えない熱い感触が、俊司のペニスを柔らかく締め上げる。
「くぅっ……」
 一声うめいた後、俊司が早紀の肉襞をぢゅぢゅぢゅっ、と音を立てて吸引する。
「ンうううう〜ッ!」
 ペニスを口内に収めたまま、早紀は、くぐもった喘ぎを漏らした。
 そして、何かに突き動かされるように、激しいディープスロートで、俊司のペニスを刺激する。
 俊司は、早紀のヒップに指を食いこませるようにしながら、半ば頭を浮かし、尖らせた舌を膣口に出入りさせた。
 可憐な早紀の唇を出入りする濃褐色の俊司のシャフトが、ぬらぬらと唾液で濡れている。
 二人は、まるで互いに互いを追いたてるようにしながら、淫らな口唇愛撫に耽った。
「んふー、んふー、んふー、んふー……」
 早紀は、目元をぽおっと染め、切羽詰った鼻声をあげながら、激しいピストン運動で、俊司を射精へと導こうとする。
 俊司が、早紀のお尻から手を離した。そして、ゆさゆさと揺れる双乳を、すくうように手の平で包む。
「んぶッ!」
 乳房を激しく揉まれ、指先で乳首をしごかれて、早紀は狼狽したような声をあげた。
「んうッ! ン! んぶぶッ! ンンンーッ!」
 絶頂に追い込まれたら、このフェラチオで兄をイかせることができなくなる。まるで、そのことを恐れるかのように、早紀は必死になって兄のペニスを責めたてた。
 ぢゅるぢゅるとイヤらしい音をたてながら、自らの唾液ごと、俊司のペニスを吸い上げ、口内で舌をくるくると回すようにして、亀頭全体を文字通り舐めまわす。
「ぅあああああっ!」
 とうとう、俊司は早紀のクレヴァスから口を離し、枕に頭を沈めてしまった。
 そして、妹の激しすぎる奉仕に、思わず身をよじる。
 射精の欲求が、我慢の限界を超え、重力に逆らって、大量の精液がペニスの中を駆け上る。
「ンうッ!」
 どばあっ、と俊司のスペルマが、早紀の口内で爆発した。
「んッ! んッ! んン! んーッ!」
 びくびくびくっ! と早紀の体が痙攣する。
 喉奥を兄の熱い体液で叩かれ、早紀は、まるで子宮で精液を受け止めたときのような快感を覚えながら、絶頂を迎えていた。

 早紀が、仰向けの姿勢の俊司の腰にまたがっている。
 ゆるゆると動く早紀の腰は、根元まで俊司の男根を受け止めていた。
「はぅん……んく……ン……はぁン……」
 早紀の、騎乗位の腰使いは、まだ少しぎこちない。それでも早紀は、その幼げな腰には似合わない貪欲さで、兄のペニスを呑み込んでいた。
 繊細なヘアがほんの少しあるだけのぷっくりとした恥丘の下で、めくれあがったサーモンピンクのクレヴァスを、どす黒い剛直が貫いている。
 その接合部からはとろとろと止めどもなく愛液が溢れ、すでに全てを脱ぎ去った俊司の股間の部分を妖しく濡らしていた。
「気持ちいいかい? 早紀……」
 まだ、少し体がだるいのか、陶然とされるままになりながら、俊司が訊く。
「うん……」
 早紀は、消え入りそうな小さな声で、それでも素直に肯いた。
 そして、ゆっくりと体を前に倒す。
 俊司の頭の両脇に、早紀が、手をついた。上から俊司の顔を見下ろす姿勢だ。
「んふ……」
 早紀はちょっと微笑みながら、どうしたの? と表情で尋ねる俊司の眼鏡を、両手で外した。
 そして、眼鏡を丁寧にサイドボードに置き、そして、そっとその白い指を俊司の首に絡める。
「お兄ちゃん……お母さんに、お父さんを殺させたんだよね……」
 くいっ、くいっ、とその小ぶりなヒップを可愛く動かしながら、早紀は言った。
 その目には、なんとも言えない妖しい光が宿っている。
「――そうだよ」
 早紀の指が、かすかに首を圧迫しているせいか、俊司の声は少しかすれていた。
「これで……あたしがお兄ちゃんを殺したら……あたし、一人ぼっちだね……」
 どこか壊れた笑みを浮かべながら、早紀が、そっと手に力を込める。
 これで本当に人を殺せるのかと思えるような、哀しいくらいに弱い力だ。
 それでも、少しずつ、先の細い指が、俊司の首に食い込む。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……んふ……ン……あはっ……」
 そのことに興奮しているのか、しきりに唇を舌で舐めながら、早紀は腰を動かした。
 俊司が、優しい表情のまま、手を上に伸ばす。
 腰から、脇腹、乳房、鎖骨のくぼみまでをゆっくりと愛撫し、早紀の細い腕に腕を絡めるようにする。
 そして俊司も、早紀の首にその指をからめた。
 男にしては繊細ではあるが、それでも、早紀の細い首を締め上げるには十分な力を秘めた手だ。
「早紀を、一人ぼっちになんかしないよ……絶対にね……」
 そう言って、くっ、と俊司が手に力を込める。
「はぁあ……」
 早紀は、蕩けるような恍惚の表情を浮かべた。
「ホントに……? ウソついたら、やだよ……」
 兄の首を締め、兄に首を締められ、兄のペニスを貪りながら、ひどく淫らな声で言う早紀。
「本当だよ……早紀が、僕を殺すなら……僕も、早紀を殺してあげる……」
 妹の首を締め、妹に首を締められ、妹の体を下から貫きながら、かすれ声で答える俊司。
 いつしか俊司は、早紀の腰の動きに応えるように、下から腰を動かしていた。
「あ……あぁぁ……あぅ……ぅぁぁ……ッ!」
 気道を圧迫されているせいで、奇妙に抑えられた嬌声をあげながら、早紀が身悶える。
 次第に視界が赤黒く染まり、ちかちかと白い光が火花のように瞬いた。
 淡く死と絶望に染められた、危険な愉悦……。
 一瞬二人は、そのあまりにも激しい誘惑に、思わず身を委ねそうになった。
 窓から差し込む白い月光が、絡み合う兄妹の裸体を照らす。
「――!」
 二人は、声をあげることなく、同時に絶頂を迎えた。
 激しい白濁液の奔流が、早紀の体内に流れこんでいく。
 二人は、まるで断末魔のように痙攣しながら、何かに解放されたかのような悦びの表情を浮かべていた。
 そして、二人が動かなくなる。
 静寂。
 ――するっ、と二人の腕から、力が抜けた。
 早紀の細い体が、かくっ、と俊司の体の上に横たわる。
 その幼い体に似合わない大きさの双乳が、俊司の胸の上で柔らかく形を変えた。
 俊司の胸がかすかに上下し、その上で、早紀の背中がかすかに上下している。
「……あは……」
 早紀は、閉じていた目をうっすらと開け、俊司の顔を間近に見た。
「やっぱ無理だね……してる最中に、心中なんて」
「うん」
 俊司が、そう返事をして、目を開ける。
「ね……話して……お兄ちゃんが、一人で、悩んでいたこと……」
 早紀が、俊司の髪を無意識に撫でながら、言う。
「うん」
 再びそう返事をして、俊司は、語り始めた。



 早紀は、重蔵が、水商売をしていた紀子に生ませた子供だった。
 重蔵にその気はなかったのだが、当時すでにひとかどの地位にいた彼と深い関係でい続けるために、紀子がわざと避妊を怠ったのだ。
 紀子は、生まれた早紀の存在を武器に、速水家に金をせびった。
 のみならず、重蔵の不実を、虚実織り交ぜて執拗に彼の妻に訴えたのだ。
 速水つかさ――俊司の母である。
 古風で従順で内気で、ただ耐えることしか知らなかったつかさでは、海千山千の紀子に敵うべくもなく、いつしか神経を病んでしまった。
 そしてつかさは、自殺した。
 屋敷の鴨居に縄をかけて自らの首を吊った彼女を最初に発見したのは、当時中学生だった俊司であった。
 しばらくして重蔵は、早紀を自らの子供であると認めないことを条件に、紀子を後妻に迎えた。

 重蔵は、滑稽なほどに血統というものにこだわった。
 そもそも重蔵自身、その母親の不倫の果てに生まれたのだという噂があったが、真偽の程は定かではない。ただ、少なくともその噂が、重蔵の強迫観念になっていたことは確かだったろう。
 一刻も早く、俊司が結婚し、孫を作ることを欲した。
 もしかすると、純粋な愛の対象を得たかったのかもしれない。
 そして重蔵は、強引に、俊司に精密検査を受けさせた。
 その結果は、重蔵にとって、最も忌まわしいものだった。

 俊司は、無精子症だったのである。

 そして重蔵は、俊司が自らの血統を次の世代に継承させることができないと知ったとき、早紀を自らの子供として認知することを決心した。
 自分でも意外なほど茫然とする俊司に近付いたのが、Lだった。
 一年前のことだった。



「僕は、いらないって言われたのさ」
 早紀の体にゆるく腕を回した姿勢で、天井を見つめながら、俊司は言った。
「悔しいけど、ショックだった。母さんを見殺しにした、この世でもっとも憎んでいた男に、お前は必要ない、と言われたことが辛かったんだ。――それに、僕の目論みも、ダメになったしね」
「もくろみ?」
「そう……早紀を犯して、僕の子供を産ませて、父さんと紀子さんと……そして早紀自身に復讐するという、ね」
「……」
「まあ、それでも、復讐は果たせたんだけどね」
 俊司は、重蔵の動きを、逆手に取ったのだ。
 弁護士と相談し、必要な法律上の手続きの準備をする重蔵について、誤った印象を、紀子に植えつけたのである。
 ――父さんは、あなたを、この家から追い出そうとしてるんですよ。
 そんな俊司の言葉を、紀子は信じたのだ。
「僕が早紀に優しくしたのは……もともとは、お前の気持ちを僕に向けさせて、復讐するためだったんだよ……」
 俊司は、一語一語区切るような口調で、はっきりとそう言った。
「何も知らない……何の罪もない早紀を弄んで……僕は……」
 俊司は、天井を見つめ続けている。
 その目からは、しかし、涙はこぼれない。
 その代わりに、俊司の胸を、熱い涙が濡らしていた。
「早紀?」
 早紀は、俊司の胸にしがみつくようにして、泣いていた。
 ひっく、ひっく、と子供のようにしゃくりあげながら、いつまでも涙を溢れさせる。
「……った……」
「え?」
「あたし……お兄ちゃんの赤ちゃん、欲しかった……欲しかったの……欲しかったよう……っ!」
 それだけ言うと、早紀は、うわああああああっ、と、とうとう声をあげて泣き始めた。
 あああっ、あああっ、という泣き声が、部屋に響く。
「ごめんね、早紀……」
 俊司は、歯を食いしばり、震えながら泣きじゃくる早紀の小さな体を、精いっぱい抱き締めるのだった。



 翌朝。
 目を覚ました俊司の腕の中で、早紀が、すーすーという可愛い寝息をたてていた。
 初めて出会ったときのような、あどけない寝顔である。
「んに……」
 ごにょごにょと何か寝言を言っている早紀の前髪を、俊司は、優しく整えてやる。
 と、いきなり、ふぃろろろろ……という電子音が鳴り響いた。
 俊司は、枕もとのスタンドから、コードレスのインターフォンを取り上げ、耳に当てた。
「速水? Lだけど」
「――何か?」
 Lの、いつになく切迫した口調に、俊司も緊張して答える。
「くるみから聞き出した情報をもとに解析して分かったんだけど……オルガが、ウィルスに感染していたの」
「オルガが? イェルマク博士の?」
「――ええ」
「でも、システム全体が冒されてるわけじゃないんでしょう? バックアップは完璧のはずだ。この際、残念だけどオルガは廃棄して……」
 言いながら、俊司は、自分が考えている程度のことは、Lもすでに検討済みのはずだ、と思った。
「それが、ダメなのよ」
「駄目?」
「イェルマク博士が、オルガを収めたメインフレームをスタンドアローンにして、研究室に立て篭もってるの」
「なん……ですって……?」
「オルガが管理しているデータ無しには、MWVを使うことはできないわ。それに……考えたくはないけど、オルガは、ウィルスに冒されてるとはいえ、博士が創造した最高のAIよ。自分自身を守るために、研究所の――いえ、組織のシステムそのものをのっとることだって、できるかもしれない」
「だから、手が出せない、と……?」
「逆に、接続を切って、スタンドアローンにしているのがありがたいくらいよ」
 受話器の奥で、Lは、苦笑しているようだった。
「でも、こうしているうちにも、オルガが管理しているデータは、ウィルスに破壊されてしまうのでしょう?」
 俊司は、じっとりと手の平に汗をかきながら、言った。
「ええ、タイムリミットは……」
 Lが、まるで焦らすかのように、間を置く。
「あと、十五分足らずだわ」
 Lの言葉に、俊司は、全身を緊張させる
 その腕の中で、早紀の体が、小さく、身じろぎした。


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