第三章
−陵辱−
「ウィルス進化論は、イマニシ進化論の弱点――すなわち、一種の形而上性を説明するための学説だという主張だが、私はむしろ、ダーウィニズムそのものの大いなる躍進だと思うね」
血色のいい小太りの東洋人は、にこやかな笑顔を浮かべたまま、そう語った。
相手に合わせて日本語を喋っているが、中国人である。甘逸文。専攻は統計生物学。この研究所内では、MWV解放後のマクロ・シミュレーションを担当している。
「まあ、そもそもが“進化”という言葉自体が、ダーウィニズムに対する誤解を生んでいるがね。別に、生物のこの大いなる歴史に、定まった進路や終着点があるわけではない。ただ、変化が必然的に発生し、その変化を、冷徹なる大自然が選択していく……。進化論の本質は、実は残酷なまでに単純だ。そこには、希望も願望もなく、神意も倫理も存在しない。ウィルスも、進化の本質ではなく、言わば意志を持たない裏方のようなものだ」
その、甘博士の話を、彼の研究室で熱心に聞いているのも、東洋人である。まだ幼い容貌の日本人、児玉くるみだ。
「でも、今回のMWVは、ヒトの意思によるものではないのですか? それも、一部の人間の」
「無論、そうだ。確かに今までの生物の歴史の中で、意志が進化を左右した例は無いとされている。だからと言って、MWVによってもたらされるそれを、進化でないと断ずることはできないと思うね」
「でも――人類は、滅びるのでしょう?」
「ホモ・サピエンスという、傲慢で可憐な霊長類は、おそらく絶滅する」
研究室よりも、中華料理屋の厨房にいるほうが似合いそうなその顔に、満面の笑みを浮かべながら、甘博士は続けた。
「しかし、もはや進化という大河を流れるのは、遺伝子だけではない。ドーキンスやハンフリーの“ミーム”という言葉は、何と訳されていたかな……?」
「模倣子、ですか?」
熱心にメモをとりながら、くるみが言う。
「そう、それだ。彼らが言うところの、楽曲や思想、標語、衣服の洋式、壷の作り方、アーチの建造法などの情報は、その模倣子に託され、我等が後継者に継承される。……瞳や髪や肌の色、血液型や持病の有無などよりも、もっと重要な情報がね」
「後継者――」
「それ以上は、私の専門じゃない。イェルマク博士に質問するのが妥当だと思うよ」
「あたし……あの方、苦手で」
ぺろ、とくるみは、ピンク色の舌を出して見せた。
「彼を苦手としない人間はいないよ。そして博士も、人間を大の苦手としている」
甘博士は、オーバーな仕草で、両手を広げて見せた。
「だが、博士は子煩悩な優しいおじさんだよ。シリコンでできた自分の子供たちを、彼ほど愛してやまない男はいない」
くるみは、ちょっと困ったような顔で、曖昧に肯いた。
早紀は、部屋の中で、一人、混乱していた。
俊司の言葉が、耳から離れない。
――血は、つながっているんだよ。
(どういう……ことだろう……?)
あの後いくら訊いても、それ以上、俊司は話してくれなかった。
無論、意味するところは理解できる。そして、母である紀子と、俊司の年齢差を考えるなら、二人は、腹違いの兄妹である、と考えるのが妥当なようだ。
(もし、お兄ちゃんの言うことが本当だったら……)
早紀は、義父であると思っていた重蔵が、紀子に生ませた子供であるということになる。
つまり、いない者とすでに諦めていた実の父親と、ずっと一緒に暮らしていた、ということになるわけだ。
しかし、少しも嬉しいと思えない。
重蔵の態度は、早紀にとって冷たすぎた。いや、ほとんど無視しているといってもいい。
いっそ、俊司の言葉が、嘘か、何かの間違いであってくれればと思う。
(そうすれば、お兄ちゃんとも、結婚できる……)
しかし、俊司の口調は、その言葉が真実であることを信じさせるに充分なものだった。
(ケッコン……)
胸に抱いていたその想いが、淡い雪のように消えてしまったような気がする。
「学校、どうしよう……」
早紀は、ぼんやりと呟いた。
特に親しい友人がいるわけではないし、行きたいという気持ちがあるわけではない。ただ、学校という日常から強制的に切り離されていることが、気にならないわけがない。
それでも、どうすることもできない。そのことを言い訳に、早紀は、学校のことを考えるのをやめた。
「ヒマ……だなぁ……」
午前中一杯寝てしまったせいで、もう昼下がりだ。とりあえず、TVの電源を入れる。
しかし、TVはアンテナとつながっていないらしい。早紀は、TVと一体になっているビデオのスイッチを押した。
「な……!」
早紀は、絶句していた。
「なに、コレえ……」
TV画面に映し出されたのは、絡み合う二人の男女の映像だった。
女は、まだ少女といってもいいような年齢だ。そのいたいけな体は麻縄で緊縛され、目にはアイマスクがかけられている。そのせいで人相はよく分からないが、早紀と同じくらいか、もっと下の年に見える。
その少女は、幼児体型に似合わない豊かな胸をゆすりながら、仁王立ちしている男の股間に、顔をうずめるようにしていた。
その部分に、モザイクはかかっていない。あどけない少女が、口と舌で赤黒い男根に奉仕している姿が、はっきりと映っている。
さすがにフェラチオという言葉くらいは聞いたことがあるが、実際に見るのは初めてだった。早紀は、その淫らな口唇愛撫の映像から、目を離すことが出来ない。
「ヤダ……こんな……すごいエッチ……」
知らず知らずのうちに、早紀は、自分の唇に、指を触れさせていた。
画面の中の男の性器に、昨夜、自分の処女を散らした兄のそれがダブる。
いつしか、画面の中の少女は、逞しく反り返った男のそれを、その小さな口に収めていた。
そして、ペットが主人に媚びるような鼻声をもらしながら、頭を前後させる。両脇で結んだ長い髪が、その度にゆらゆらと揺れた。
「あ、あ、あ……」
早紀は、ぺたん、とベッドに腰を落とし、茫然とその画面に見入っている。
男が、少女の髪をつかみ、自らも乱暴に腰を動かして、その可憐な口を犯した。
両手を後手に緊縛された少女は、その仕打ちに抵抗することが出来ない。いや、もしその体が自由であっても、抗うことなどしないのではないかと思われるほど、少女のくぐもった声は被虐の悦びに濡れている。
「!」
画面の中の男が、フィニッシュを迎えた。
荒い呼吸を繰り返しながら、男が、少女の口腔に、熱い精を注いでいる。
「……あ……ヤ、ヤダ……っ!」
早紀は、自分がじっとりとショーツを濡らしてしまったことに気付いた。
「お兄ちゃん!」
部屋に入るなり、いきなり強い口調でそう言われて、俊司はきょとんと目を見開いた。
夜。窓の外は、すでに闇に包まれている。ちょうど早紀は、あのくるみという名前の所員が持ってきた食事を平らげたばかりだった。
「な、何よ、あのビデオはぁ!」
見ると、早紀が真っ赤になりながら、そんなことを言っている。
俊司は、自分のペースを取り戻し、くす、と笑った。
「見たんだね、あのビデオ」
「だって……ラックの中、エッチなビデオばっかりじゃない!」
「全部、確かめたの?」
「ぜ、全部じゃ、ないけど……」
ごにょごにょと、早紀は言葉を濁した。
「あれはね、早紀の勉強用だよ」
「べ、べんきょう?」
俊司の意外な言葉を、早紀はオウム返しに繰り返す。
「そう。早紀はもう、学校に行かなくていいんだ。今日から……いや、昨日から、僕のためだけに勉強すればいいんだよ」
そう言って、俊司は、早紀の目の前に立った。
「お兄ちゃんの、ため?」
「そうだよ、早紀」
「あ……!」
何か言いかける早紀の唇を、俊司がキスで塞ぐ。
「ん! んんッ! んーッ!」
俊司の舌が早紀の舌に絡み付き、口の中を愛撫する。
しばらく、俊司の腕の中で抵抗していた早紀の体が、くた、と弛緩した。
そうなってからも、しばらく早紀の口腔の感触を楽しんだ後、俊司はようやく口を離した。
「だ……だめだよ、お兄ちゃん……血が、つながってるんでしょ……?」
はぁはぁと小さく喘ぎ、涙で瞳を潤ませながら、早紀が言う。
「そうだね、いけないことだね、これは……」
俊司は、哀しげにそう言った。その言葉に、早紀の胸がきゅうんと痛む。
(ちがう……こんなコト言いたいんじゃない……あたし……)
「早紀……服を脱いで」
「えっ?」
「脱いで」
いつにない強い口調で、俊司が繰り返す。
「お、お兄ちゃん……」
すがるような目で、早紀は俊司を見る。しかし、俊司の表情は動かない。
早紀は、指先を震わせながら、ブラウスのボタンを外していった。
そして、スカートを脱ぎ、ブラとショーツだけの姿になる。
「下着もだよ、早紀」
「……」
シンプルなデザインのブラを外し、胸の膨らみを左の腕で隠しながら、ショーツを下ろす。
そして、早紀は全裸になった。
その早紀の体を、俊司がぎゅっと抱き締める。
「あ……」
早紀は、思わず声を漏らしていた。
俊司に濃厚なキスをされて、あのビデオを見て以来体の奥底でくすぶっていた官能に、再び火が灯っている。
じゅん、と早紀の秘部が、恥ずかしい蜜をにじませていた。
俊司は、早紀のその部分に、右手を触れさせる。
「あ、イヤ……」
「濡れてるよ、早紀。……いけないコだね」
そう、早紀の可愛らしい耳たぶに囁く。
「そ、そんな……」
「お仕置きを、しなくちゃいけないね。……縛るよ」
「えっ!」
俊司の思いがけない言葉に、早紀は、うつむかせていた顔をはっと上げ、体を離した。
俊司が、その左手に、白衣の懐から出したらしい赤いロープを握っている。
「うそ! やめて! お兄ちゃん、そんなのやめてェ!」
悲痛な声をあげて逃げようとする早紀の体を引き寄せ、俊司は、その細い両手首に縄を巻きつけた。
「きゃうッ!」
腕を捻り上げられ、手首にロープを食い込まされる痛みに、早紀は思わず声をあげてしまう。
俊司は、その瞳に、普段の彼からは考えられないような強い光を宿らせながら、くるくると早紀の後手になった腕にロープを巻き付けていく。
「い、いたいよ……お兄ちゃん、乱暴にしないで……」
早紀は、泣き声でそう訴えた
「じゃあ、抵抗しちゃだめだよ」
「そ、そんなぁ……」
そう言いながらも、早紀は、抗うのをやめていた。
(なんで? なんで、こんなこと……? どうして……?)
緊縛による苦痛よりも、優しいはずの兄の理不尽な行為に、涙があふれてしまう。
俊司は、ロープでしっかりと早紀の腕を後手に拘束すると、次は、乳房の上下に縄を走らせた。発達途上の胸の膨らみが、無残に歪み、突き出される。
さらに俊司は、自由を奪われた哀れな妹の体を淫らにまさぐり、その股間に再び右手を差し入れた。
「あく……」
早紀の意志とは無関係に、その部分は、なぜかいっそう潤い、熱い蜜で兄の手を濡らしてしまう。
(うそ……ど、どうして……? あたし……あたし……)
苦痛をもたらされているはずなのに、体は熱く火照り、淫らな反応を返している。そのことに、早紀は混乱しきっていた。
(あたし……ヘンタイなの……? それとも……お兄ちゃんが、することだから……?)
無論、答えなど出るわけもない。ただ、まるで、俊司の手を迎え入れようとするかのように、勝手に腰が動いてしまう。
俊司は、そんな早紀の脚の間にまでロープを通し、昨夜純潔を失ったばかりの秘裂に、残酷にロープを食い込ませた。
「きゃうううッ!」
たまらず早紀は声をあげ、体を反らしてしまう。構わず、俊司は、早紀の股間にかけられた縄を、腕を戒める縄と、乳房の下の縄とに固定していく。
緊縛が終わると、早紀は、脱力したように床に膝をついてしまった。
「はァ、はァ、はァ、はァ、はァ……」
「縛られて感じてるのかい? 早紀……」
俊司が、着ているものを脱ぎ捨てながら、言った。
「そんな……そんなこと……ないよぉ……」
そう答えながらも、早紀の喘ぎは、どこか甘く濡れている。
そんな早紀の目の前に、俊司は、ぬっ、とその剛直を突き出した。
「きゃっ!」
早紀が、可愛らしい悲鳴をあげ、目をそむける。
「……ビデオで見た通り、してごらん」
そう言いながら、俊司は、早紀のまだあどけない顔に、すでに反り返るようにして勃起しているペニスを近付けた。
「あ……!」
柔らかな頬に触れたそれの、意外なほどの硬度と温度に、早紀は思わず声をあげていた。
そして、おずおずと視線をそれに向ける。
(すごい……男の人のって、こんななんだ……ひくひく、動いてる……)
つい、好奇心に負けて、しばしそれに見いってしまう。何しろ昨夜は、じっと観察する余裕などなかったのだ。
「早紀……」
俊司の声に、早紀は、はっと顔を上げた。
「早紀は、僕に縛られて、無理やりさせられるんだ。だから、早紀は悪くないんだよ……」
「お兄ちゃん……」
「罪は、全て僕にある。だから、ね……」
そう言って、俊司は、優しく早紀の髪を撫でた。
「う、うん……」
早紀は肯いて、震える舌をそっと俊司のそれに伸ばした。
そして、まるで味見するかのように、ちろっ、と舌の先端で、亀頭の裏側を舐め上げる。
「んっ……」
俊司は、うめくような声をあげて、びくっ、と体を震わせた。
「気持ちいいの? お兄ちゃん……」
「うん……だから、もっと続けて……」
早紀は、返事をする代わりに、上目遣いに兄の顔を見ながら、ちろっ、ちろっ、と舌をシャフトに這わせる。
「あ、あぁ……」
俊司は、声を漏らしながら、早紀の髪を撫で続けた。
そうされると、なぜか嬉しくなって、早紀はよりいっそう熱心に舌を使い出す。
(ビデオだと、あのコ、どうしてたっけ……?)
そう思いながら、早紀は、自らの唾液で俊司のペニスを濡らしていった。
(そうだ……先っぽのほう、咥えてたよね……)
そして、その小さな口で、ぱくりと亀頭部分を咥える。
「う……っ」
妹の口腔の、生温かく柔らかな感触に、俊司は小さく声をあげてしまった。
「……ごめんね、早紀……こんなことさせて……」
そして、小さく喘ぎながら、そんなことを言う。
「イヤだったら……噛み千切ってもいいんだよ……覚悟は、できてるから……」
俊司の言葉に、早紀は、ペニスを咥えたまま、小さくかぶり振った。そんなことが、できるわけがない。
そして、いっそう熱心に、俊司のペニスに、淫らな奉仕を続けた。
口内でのぎこちない舌の動きが、いっそう健気に感じられて、俊司はその牡器官をますます熱くたぎらせていった。
そんな俊司の興奮が感染したかのように、早紀も、目元をぽおっと赤く染め、もじもじと腰を揺らしている。太腿をすり合わせると、スリットに食い込んだ縄が微妙に秘裂を刺激した。
早紀のそこは、いつしか恥ずかしいほどに蜜を溢れさせ、太腿まで濡らしてしまっている。
「ん……んむ……んく……んふっ……ふぅン……」
早紀の鼻から漏れる喘ぎは、間違いなく快楽に濡れていた。
早紀の秘所を攻めるロープは、両手首を戒めるロープとつながっている。早紀は、無意識に両手を動かし、自らその幼いスリットを縄でこすり上げていた。
「んぱっ……」
とうとう早紀は、苦しくなって、俊司のペニスから口を離してしまった。
「あ……あはぁ……あむ……」
それでも口唇愛撫を続けようと、一生懸命になって竿の部分に舌を伸ばし、小首をかしげるようにして、ペニスを横咥えする。
「う……あぁッ!」
もどかしい刺激よりも、悦楽に支配されたようなその妹の仕草に、俊司は限界を迎えていた。
髪を撫でていた手でその頭を固定し、妹の顔めがけて、思いきり欲望を解放する。
「ひゃああン!」
びゅるるるるッ! と凄まじい勢いで顔を叩く熱い粘液の感触に、早紀は悲鳴をあげた。
頬に、額に、髪に、べったりと白濁液が付着していく。
ひどく惨めで、屈辱的でさえあるこの仕打ちを受けて、早紀は、身の内から熱いうねりのようなものが湧き上がってくるのを感じていた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ……」
そして早紀は、びゅるっ、びゅるっとと精液を放ち続ける俊司のペニスを、空ろな瞳でぼんやりと見つめ続けるのだった。
早紀は、ティッシュで丁寧に顔をぬぐわれた後、ベッドの上で背後から俊司に抱き締められた。
ちょうど、二人とも膝立ちの格好である。
ロープは、そのままだ。緊縛され、体の自由が利かない状態で、背後からやわやわと乳房を愛撫されている。
「熱い……お兄ちゃん、熱いよ……」
早紀はうわ言のようにそう繰り返していた。
俊司は、ぬるぬるとした妖しげなジェル状の薬品を塗りこむようにして、早紀の胸を揉みしだいている。
その薬が、じんじんと疼くような熱を、早紀の胸にもたらしているのだ。熱い疼きは快感に変換され、早紀の慎ましやかなピンク色の乳首を、痛いほどに勃起させている。
ぬらつくジェルが蛍光灯の光を妖しく反射している様が、ひどくエロチックだ。
「気持ちいいかい? 早紀」
俊司が、早紀の耳たぶに、息を吹きかけるようにして訊いた。しかし、早紀は顔を真っ赤にさせてうつむき、答えない。
「ダメだよ、素直に返事しなきゃ」
「きゃぁン!」
早紀は、思わず甘い悲鳴をあげていた。俊司が、固く尖った先の乳首を、指先で弾いたのだ。
「返事は?」
「ご、ごめんないさい、お兄ちゃん……き、きもち、いい……」
消え入りそうな声で、早紀が言う。
「感じてるんだね?」
「そうなの……きもちイイ……きもちイイよ、お兄ちゃん……」
泣きそうな声でそう言いながら、早紀は俊司の腕の中でぷるぷると体を震わせる。
俊司は、満足げに肯いて、早紀のしなやかなうなじに舌を這わせた。
「はううううン♪」
早紀が、はっきりと悦びの声をあげる。
俊司は、早紀の胸を弄びながら、体を前に倒すようにして、その背中に舌を這わせた。
「はぁっ! あ、あぅ……ン……ひああン!」
早紀は、高い声をあげながら、俊司に導かれるままに、次第に体を倒してしまう。
そして早紀は、まるで後方にその白いお尻を突き出すような格好で、ベッドの上に突っ伏してしまった。
腕を後手に縛られているため、上体を支えることも出来ない。早紀は、シーツに右の頬をこすりつけるような姿勢で、しばし、俊司の愛撫に甘く喘いだ。
ぬるっ、とした感触を残して、俊司の手が、早紀の胸から離れる。
「ふぁ……」
早紀は、どこか名残惜しそうな表情で、背後の俊司に流し目を送る。
「もう、ここはびっしょりだよ……」
可憐な肉の花びらに食い込むロープを、くいくいと動かしながら、俊司が言う。
「い、いや……っ」
これ以上はないというくらいに顔を赤く染め、早紀は目をそらした。
俊司は、くすくすと微笑みながら、すぐに外せるように結んであった股間のロープをほどいた。赤いロープは、たっぷりと早紀の愛液に濡れている。
ロープに隠されていた早紀のクレヴァスの中央部が、俊司の目の前にさらされた。そこは、無残なくらい紅く充血し、とろとろと愛液を分泌している。
「い、いやァ……お兄ちゃん、見ないで……」
恥ずかしげにそう言いながら、早紀は必死で身をよじった。しかし、緊縛されている上に、しっかりとその丸いヒップを俊司に固定されているため、かえって誘うように腰を動かしただけに終わってしまう。
「こんなに赤くなって……きれいだよ、早紀……」
そう言って、俊司は、早紀のその部分に口付けした。
「だ、だめエ!」
敏感な肉のひだを舌で嬲られ、早紀が悲鳴をあげる。
「お、お兄ちゃん、ダメ……そんな……そこ、汚いよ……」
「そんなことないよ、早紀……それに、すごく美味しい……」
どこか陶然としたような口調の俊司の言葉も、早紀の羞恥を煽るだけだ。
(恥ずかしい……お兄ちゃんに、アソコ、舐められちゃってる……き、消えちゃいたい……っ!)
それでも、兄に対する嫌悪感は、不思議と湧いてこない。ただ、その部分を口で愛撫されて感じてしまう自分自身が、たまらなく恥ずかしかった。
「だめ、おにいちゃん……はうン……そ、んな……ア……だめェ……」
そう、早紀は感じていた。俊司の舌によって靡肉を舐めしゃぶられ、舌先で膣口を浅くえぐられて、かつてないほどの快楽を感じてしまっているのだ。
早紀の羞恥心とは関係なく、その部分から止めどもなく熱い蜜が溢れ、太腿はぴくぴくと痙攣してしまう。
いつしか早紀は、さらなる口唇愛撫をねだるかのように、小ぶりなお尻を高く上げ、兄の顔に押しつけるようにしていた。
「あ……あうン……だめ……は……ふわぁ……あひ……ひゃうぅン……」
すでに、拒絶の言葉はほとんどおざなりになっており、甘たるい喘ぎの中に埋没してしまっている。
俊司は、そんな早紀の反応をひとしきり楽しんだ後、唇だけで一番敏感な部分を咥えた。
「んきゃうううううッ!」
それだけの刺激で、早紀は、高い声をあげて体を反らせた。
さらに俊司は、まだ包皮に包まれた早紀のクリトリスを、ちろちろと舌先で刺激する。
「きゃあッ! はッ! んくぅ! だ、だめ! あ、ああアーッ!」
ぴくぴくぴくっ、と早紀の華奢な下半身が小刻みに震える。
その、まだあどけなさを残す体が、絶頂を迎えかけたとき、俊司は、意地悪く愛撫を中断した。
「あああぁぁぁ……ん」
イキそこねた早紀は、恨みっぽい目で、肩越しに俊司を見つめた。その涙で潤んだ瞳が、あどけない顔に似合わない、ぞくりとするような色気をたたえている。
「お、おにい、ちゃん……」
早紀は、かすれた声で言った。
それでも、淫らなおねだりを口にするには、羞恥心が邪魔をしている。早紀は、どうしていいか分からない、といった様子だ。
そして、すがるような表情で、俊司の顔を見つめている。
俊司は、愛液に濡れた口元をちょっとぬぐった後、白桃を思わせる早紀のヒップに両手を添えた。
「あぁン……」
熱くたぎる肉棒の先端が、クレヴァスの合間に押し当てられた感触に、早紀が声を漏らす。
しかしその声には、間違いなく、媚びと期待が込められていた。
「入れるよ、早紀……」
「おにいちゃん……」
早紀は、挿入を求めることも拒むこともできず、ただ俊司のことを呼ぶのみだ。
俊司が、ゆっくりと腰を進ませる。
ちゅぶっ、という卑猥な音をあげて、ほころびかけたクレヴァスが俊司のペニスを迎え入れていく。
「あ……ひいいぃぃぃ……ッ!」
逞しい兄の剛直が、ずりずりと肉の隘路に侵入していく重苦しいような感覚に、早紀は声をあげていた。
処女を失ったばかりの粘膜は異物の侵入にまだ慣れておらず、ひりつくような痛みを覚える。
それでも、たっぷりと愛液に濡れた俊司のペニスは、意外なほどスムーズに早紀の中へと呑み込まれていった。
「あく……」
男根の先端が子宮の入口に到達した感覚に、早紀は思わず歯を食いしばる。
「うぅ……っ」
嗚咽に似た声が、漏れる。
緊縛された上、動物のように這いつくばった姿勢で犯されるのは、ひどく惨めな気持ちだった。たとえ、相手が愛する人であっても。
しかし、その屈辱さえも、なぜか胸の中で妖しいざわめきになってしまう。
「う……んはぁ……っ……」
俊司が、ゆっくりと抽送を開始した。
ずるぅっ、ずるぅっ、と雁首が膣壁をこすっているのが分かる。
痛いような、苦しいような感覚とともに、熱い何かがお腹の中で育っていくような感覚――。
その熱は、苦痛や羞恥をも呑み込んでいきながら、ますます強くなっていく。
「あ……っついぃ……おにいちゃん……あつい……あついよ……」
はぁ、はぁ、はぁ、と喘ぎながら、早紀が訴える。
俊司は、それには直接答えず、腰を固定していた右手を、早紀の股間に持っていった。
「あ……ひゃうっ!」
前に回された俊司の右手の指先が、早紀の敏感な肉の芽を捕らえる。
「ひあ……お、おにいちゃん……そこ、ダメえ……」
クリトリスにもたらさせる鋭い快感が、膣全体に広がり、下半身を焼く熱を、次第に甘いものへと変えていく。
「ン……く、ふああッ!」
とうとう、早紀の体内で、快楽が一つの臨界を突破した。
「あいッ! いう……ン……んくぅ! あ、あ、あ、あぅ〜ン……!」
苦痛を感じながらも、それを上回る快感を得ていることを示すように、早紀の声が蕩けていく。
その声を聞きながら、俊司は、少しずつ腰の動きを速くしていった。
くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ……という湿った音が、二人の結合部から漏れる。そして、早紀のその部分はさらに愛液を溢れさせ、太腿の内側を濡らしていった。
「覚えたばかりなのに、もう感じているのかい?」
媚びるような甘さをその喘ぎににじませている早紀に向かって、俊司が言う。
「早紀は、いやらしいコだね……」
「そ、そんな、そんなァ……ひあぅっ!」
抗議しかける早紀のことを、俊司は、新たな動きを送りこむことによって黙らせる。
「ひ、ひあ……あ、あう、んく、きっ、きゃううン……!」
ぶるるるるっ、と赤いロープで戒められた、スレンダーな体が震えた。
規則正しい、じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぼっという音は、早紀のそこが、ますます蜜を分泌していることをうかがわせる。
俊司の動きを追うように、鮮紅色の襞がめくれ上がり、そしてペニスに巻きこまれる様が、ひどくエロチックだ。
「早紀……」
俊司は、クリトリスを嬲っていた手で再び腰を抱え、ますます腰の動きを速くする。
「あひっ! いッ! ンいいいいいッ!」
愛しい兄に背後から犯され、早紀はすすりなくような悲鳴をあげる。
もはや、クリトリスを刺激されなくとも、その激しい抽送だけで、早紀ははっきりと快楽を感じていた。
(おにいちゃんのが……なかで……うごいてる……うごいてるゥ……)
その感覚に圧倒されるように、早紀は、まだ幼さの残る華奢なその体をゆすった。尖った乳首がシーツにこすられ、さらに硬くなっていく。
早紀のその部分は熱く熱を帯び、そしてその肉襞は、きゅんきゅんと俊司のペニスにからみついて、着実に兄を射精へと追い込んでいった。
「早紀……僕は、もう……っ!」
叫ぶように言いながら、俊司は、早紀のお尻に叩きつけるように激しく、その腰を動かした。
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、という音が、ぐちゅぐちゅといやらしく湿った音に重なる。
「ンわっ! ふわああああッ! おにいちゃん! おにいちゃぁん!」
早紀は、その激しすぎる抽送に応えるように、俊司のことを呼び続けた。
「早紀……中に……出すよ!」
「――!」
数秒遅れて、俊司の言葉の意味が、早紀の、快感に蕩けかけた意識に届いた。
「だ……だめえーッ!」
早紀が、高い悲鳴をあげる。
「おねがい! おにいちゃん! だめだよ! だめええエ!」
初体験の時は感じる余裕すらなかった妊娠の恐怖に、早紀は絶叫した。
「早紀いッ!」
しかし、俊司の動きは止まらない。それどころか、最後のときに向かって、狂ったように腰を動かしている。
「やめてエ! おにいちゃん! あ、あかちゃんが……あかちゃんができちゃうよーッ!」
俊司が、振り絞るような早紀の哀願を聞き、優しげな顔に似合わない歪んだ笑みを、その口元に浮かべる。
そして――
「早紀ッ!」
俊司は、ひときわ深く妹の靡肉を貫き、大量のスペルマを放った。
「ひあああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアーッ!」
熱い何かが体内で弾ける感覚に、早紀の頭が真っ白になった。
膣内深くで、俊司のペニスが何度も何度も律動し、その度に粘液を放ち続けている。
絶頂に薄れゆく意識の中で、早紀は、自分の子宮に大量の精液が浴びせられているのを自覚していた。
ロシア人ロボット工学者イェルマク博士の研究室を出て、くるみは一つため息をついた。
今までくるみの相手をしていたのは、“オルガ”と名付けられた、ディスプレイの中だけに存在する少女だった。イェルマク博士は、奥の部屋から出てこようともしなかったのだ。
オルガは、人工知能、いわゆるAIだ。金髪碧眼のその冷たく整った顔は、どこかLに似ている。もしかしたら、少女時代のLがモデルなのかもしれない。
彼女――いや、それは、単なるプログラムの集積でしかなかったが、くるみの質問程度には、充分に答えることができた。一瞬くるみは、自分が話しているのが単なる人工物であることを忘れてしまった。
「あなたは、人類が滅亡することを、どう思ってるの?」
専門的な質疑応答が終わったとき、最後にくるみは、思わずそう訊いていた。
「思う、という言葉の定義が曖昧ですが――」
オルガは、ディスプレイの中で、にっこりと微笑みながら続けた。
「人類は、充分に発達したAIを開発した時点で、特にもう必要の無い存在だということは、理解しています」
今一つかみ合わない、それでも、機械を相手にしているとは思えないナチュラルな会話。
それを切り上げ、部屋の外に出た時、くるみは、思わずため息をついてしまったのだ。
あれは、完璧な頭脳だった。少なくとも、ある部分で人間以上であることは確かだ。
(危険、だわ……)
くるみは、心の中でつぶやく。
(ココにいる連中は、みんな確信犯なんだわ。だから当然……人類を滅亡させることに、何のためらいも感じていない……)
くるみは、静かな狂気に包まれていることを感じて、ぞっと体を震わせた。
(やっぱり、ココが“当たり”なんだわ。奴らの中枢はここで、MWVの開発資料も、ここにあるはず……)
(それさえ手に入れれば……ワクチンを開発するコトだってできる。人類は、助かるんだ)
(でも、あたしのことだって、半分はバレてると思ってた方がいい……多分、泳がされてるだけ……)
(でも……でも、あたしは負けない!)
くるみは、その童顔に似合わない緊張した表情で、自らにあてがわれた部屋へと向かうのだった。