夏 の 歌



第五章
−夏の色−



 胸の中にわだかまりを抱えたまま、何日かを過ごした。
 小説を読んででも、目が字の上を滑って、内容がぜんぜん頭に入らない。
 ――智沙ちゃんと、セックスしてしまった。
 まだ、中学生同士なのに。
 そりゃあ、美保さんとすることが何の問題も無いかって言うと、そういうわけじゃないと思うけど……。
 そもそも、僕と智沙ちゃんは、単なる幼なじみ同士だったわけで、少なくとも僕は、智沙ちゃんをそういう対象には見ていなかった。
 僕は、美保さんが好きだし、美保さんとああいう関係になった以上、他の人とセックスするのは何かの裏切りのように思えてしまう。
 智沙ちゃんは……どうなんだろう?
 智沙ちゃんは、いったいどういうつもりで、僕をハダカにして、アソコを舐めさせたりしたんだろう?
 いや、それを言うんだったら……。
 ぴんぽーん。
 また、ドアのチャイムがなった。
 昼下がり。美保さんは、仕事に出かけてしまっている。
「…………」
 僕は、胸騒ぎを覚えながら、ドアを開けた。
「……こんにちは」
 思った通りと言うか何と言うか……そこにいたのは、智沙ちゃんだった。
「美保さんなら、もう仕事だよ」
「うん、分かってる」
 僕の言葉に、智沙ちゃんが言う。
 智沙ちゃんの顔には、表情らしい表情は浮かんでいない。
 ただ、あえて言うなら、なんだか緊張してるみたいな感じだった。
「僕に、また話があるわけ?」
「うん、そうなんだけど……」
 口ごもりながら、智沙ちゃんは、顔を赤らめた。
「……上がる?」
「うん……」
 僕の言葉に、ほっとしたように、智沙ちゃんがうなずいた。



「で、話って何?」
 僕は、智沙ちゃんに麦茶を出してあげてから、訊いた。
 なんだかつっけんどんな言い方になってしまったかもしれない、と反省しつつも、やっぱり、智沙ちゃんに対する警戒感は消えてるわけじゃない。
「ん……えっと……どうやって切り出したらいいかな……」
 智沙ちゃんは、珍しくはっきりしない口振りで、視線をさまよわせた。
 そして、その目を、僕の左手に向ける。
 僕は、腕時計をいじるのをやめ、左手をちゃぶ台の下に引っ込めた。
「その――」
「僕の手首の傷のこと?」
「う――うん。その……ちょっと、気になって……」
「そっか……智沙ちゃんは知らないんだよね」
 それはそうだ。この傷のことを知っているのは、僕の家族と、あとは美保さんだけのはずなんだから。
 要するに、智沙ちゃんは、僕とセックスをしたあの時、初めて、僕の傷を見たわけだ。
「あ、あの……もし話しづらいことだったら……」
「いいよ、話すよ」
 僕は、智沙ちゃんの言葉を遮って、それから麦茶を飲んで喉を湿らせた。
 智沙ちゃんに話してどうなるものかとも思うけど……でも、平気な顔であのことを話せるかどうか、自分でも確かめてみたかったのだ。
「僕が、小学校五年のころから不登校なのは、知ってるよね?」
 こく、と智沙ちゃんが、無言でうなずく。
「その理由については、何か伯母さんから聞いてる?」
 今度は、智沙ちゃんは首を左右に振る。
 なるほど……じゃあ、一から話す方がいいかな……。
「僕……あのころ、イジメにあってたんだ」
「えっ……?」
 驚いた顔を、智沙ちゃんがする。
「あれ……? そんなに意外かな?」
「だ、だって……君、そんなふうに全然見えなかったから……」
「そう? ――ん、まあ、確かに今は、そんなに悩んだりいじけたりはしてないけどさ」
 でも、ここまで来るのに、それなりにこっちもいろいろあったのだ。
 僕は、一呼吸おいてから、話を続けた。
「小学生のころは、けっこうキツくてさ……クラスの中で、体のでかい奴らに目を付けられて、いろいろされたんだ」
「どうして?」
「そりゃあ……僕が、体が小さくて、いじめやすかったからだと思うよ」
 僕は、少し言葉を選んで言った。
 実際は、はっきりと口で“女みたいだから”と言われたんだけど……。
「それで、不登校になったの?」
「ん、まあ、自分ではけっこう頑張ったつもりだったんだけどね。でも、先生とかもイジメやってる方の味方みたいでさ。単に、ふざけあってるのの延長みたいに思われたみたい」
「……いろいろ、されたの?」
「ん、まあね」
「どんなこと?」
 そう訊いてから、智沙ちゃんが、しまった、という顔をする。
 けど、僕は、自分がもう平気なんだってことを示すために、言葉を続けた。
「別に、殴られたり蹴られたりはなかったよ。けど、着替えを隠されたり、トイレで水かけられたり……それから、みんなの前で服を脱がされたりとか……」
 あ、これは言わない方がよかったかな?
「…………」
 智沙ちゃんが、難しい顔をして黙っている。
「ま、とにかく、限界が来ちゃって、僕は不登校になっちゃったわけ。で、中学校になったら平気かなと思ったんだけど……やっぱ駄目だった」
「その……研児君をいじめたやつらがいたの?」
「いや、そういうわけじゃなかったけど……また、誰かに同じようなことをされるんじゃないかって恐かったんだよ。で、やっぱり学校に行けなくなっちゃって……」
「…………」
「父さんや母さんも、もうイジメにあってるわけじゃないのに学校行かない僕が、単にサボってるんだって思ってるみたいでさ……で、その時は、もう、自分が周りにすごい迷惑をかけてるみたいな気がして、ずーっと引き篭もったままでね……それで……」
「それで……?」
「うん、やっちゃった。まあ、傷はぜんぜん浅くて、生きるの死ぬのって話にはならなかったんだけどね」
 貧血状態から目を覚ました僕に、母さんは、まずこう言った。
 ――どうしてあなたはそうやって迷惑ばかりかけるの!
 その時、ようやく、僕はふっ切れたのだ。
 生きてても死のうとしても迷惑をかけるだけなら、別に死ぬことはないんだ、と。
 そういうわけで、僕は、開き直ってしまった。
 そのころから、ネットを始めて、いろいろな人と話しをして、不登校児学級の方にも通うようになった。
 もし、今の僕が普通の中学生のように見えるんだったら、それは、不登校の自分というものを受け入れてしまったからだろう。
「とまあ、そういうこと。どう? 好奇心は満足した?」
「わ、私そういうつもりじゃ――!」
 僕の皮肉に智沙ちゃんは大声を出しかけ、そして――いきなり両腕で顔を隠した。
「え? ち、智沙ちゃん?」
「うっ……わ、わた……ごめ……うえっ……えええええええええええぇぇぇぇぇぇ……」
 な?
 泣いてる?
 智沙ちゃんは、ボロボロと涙をこぼしながら、顔を真っ赤にして泣いていた。
 そして、その様子を見られまいとするように、両腕を交差させるような感じで顔を覆っている。
「あ、あのさ……えっと……」
「ごめ……ごめんなさいっ……! わ、わた、わたし……ずっと……君が……そんなだったなんて……ええっ、えっ、ええええぇぇぇ……」
 智沙ちゃんが、嗚咽混じりの声で、言う。
「ずっと、君……学校サボってるんだって……ふ、不良になっちゃったんだって……そう思って……なんか、それがイヤで……悔しくて……」
「ふ、不良……?」
 いやまあ確かに、きちんと学校に行ってないわけだから、そういうことにもなるかもしれないけど……。
「しっ……知らなかった……私……でも、でも、セックスしたあと、なんか、昔の研児ちゃんみたいだったから……あとから、傷のことがすごく気になって……その……だから……」
「ん、分かったよ。だから泣かないで」
「でっ、でも、でも……私……研児ちゃんにひどいことして……」
「……あ、あれは……えーと……おあいこだったんでしょ?」
 まだ、自分自身で整理がついてるわけじゃないけど、そう言ってみる。
「で、でも……」
「おあいこでいいから……僕、もう、気にしないからさ。だから、そんなに泣かないで?」
「だ、だけど……私っ……研児ちゃんのこと……」
 そう言って、智沙ちゃんは、ムリヤリみたいに声を止めた。
 そして、腕で顔を隠したまま、えっく、えっく、と何度かしゃくり上げる。
「……智沙ちゃん、何か言った?」
「ティッシュ」
「は?」
「お願い、ティッシュ貸して。それから、ちょっとこっち見ないで」
 まだちょっと鼻声で、それでも普段どおりの口調で、智沙ちゃんが言う。
「……はい」
 僕は、ティッシュを箱ごと智沙ちゃんの前において、それから視線を向こうにそらした。
「……ありがと」
 智沙ちゃんのお礼の言葉に続いて、びーっ、と鼻をかむ音が響く。
 何回かその音が聞こえてから、智沙ちゃんが、ごみ箱にティッシュを捨てる気配があった。
「もういい?」
「……うん」
 そう返事をもらい、僕は、智沙ちゃんに向き直った。
 智沙ちゃんが、顔を真っ赤にして、こっちをにらむみたいに見ている。
 その瞳は、まだ涙でうるうるしてて……奇妙なくらいに可愛く見えた。
「研児君」
「な、なに?」
 なんだか切羽詰まった感じの声に、僕は、ちょっと慌ててしまう。
「私、君のことが好き」
「……はあ?」
「そんな声出さないで! 好きなの! ずっと好きだったの!」
 まるで、いたずらをした小さい子を叱るような口調で、智沙ちゃんが言う。
「小学生のころ、君が来てくれた時、すごく楽しかった……夏が来るたびに、早く君に会いたいと思ったわ」
「…………」
「君は……研児君は、ぜんぜん私のこと、女に見てないんだってことは分かってた。二人とも小さかったもんね。それに……君が、美保さんのこと好きなんだってことも知ってたし……」
「それは……」
「でも、もっと大きくなったら、って……ずっとそう思ってたの」
「…………」
「だけど君は、いきなりこっちに来なくなって……せっかく私……その……少しは女らしくなったのに……」
「…………」
「いろいろ相談したいこともあった……聞いてくれるだけでもいいと思ってた……けど、君は来てくれなくて……私の悩みを聞いてくれたのは、たまにこっちに帰ってくる美保さんだけだった……」
 智沙ちゃんの声が、だんだんと泣き声に近くなる。
「だから、私……美保さんも好きだった……離婚して、こっちにずっといてくれるようになってからは、もっと好きになったわ……なのに、君も、美保さんも、あんなふうになって……私だけ、なんだか仲間外れで……」
「智沙、ちゃん……」
「お願い、研児君……私と……して……」
 どきり、と心臓が跳ねる。
 じっと唇を結び、目を潤ませ、頬を真っ赤にしながら、智沙ちゃんがこっちを真正面からにらんでいる。
「君が……研児君が、私のこと、好きでなくてもいい……嫌いでもいいから……抱いて……もう一回、してほしいの」
「でも……」
「お願い……怒ってない君に、抱いてほしい……」
 智沙ちゃんが、僕と、そして自分自身を追い詰めていく。
 このままだと……また、智沙ちゃんは泣いてしまうだろう。
 もう、智沙ちゃんが泣くのは見たくない。それが、僕のせいで泣くんだったらなおさらだ。
 そういう理由で、智沙ちゃんとするのは……やっぱりいけないことだろうか……?
 僕は……やっぱり、美保さんのことが好きなんだし……。
 でも……。
「うん、分かったよ……」
 僕は、智沙ちゃんに向かって、そう言ってしまったのだった。



「研児君……やっぱり、怒ってる?」
 僕が使ってる部屋に入ってから、智沙ちゃんが、言った。
「え……? ううん。怒ってはいないけど」
 カーテンを閉めながら、僕が答える。
「よかった……」
 心底ほっとしたように、智沙ちゃんは言った。
「…………」
 僕は、智沙ちゃんと向き合った。
 学校の夏服できゃしゃな体を包んだ、ちょっとだけキツい目をした女の子。
 僕の、幼なじみ。
 そして――僕を、好きだと言ってくれたひと。
「脱ぐね」
 言って、智沙ちゃんは、セーラー服を脱ぎ始めた。
 指が、震えている。
 僕は、そんな智沙ちゃんの様子を、何を言うでもなく、ただ、見つめてしまっていた。
 次第に、智沙ちゃんの日焼けしていない肌があらわになっていく。
「私……美保さんみたいに、おっぱい、おっきくないけど……」
 そう言いながら、智沙ちゃんは、ブラを外した。
「見て……」
「んっ……」
 僕は、返事をする代わりに生唾を飲み込んでしまった。
 そして、智沙ちゃんの白い乳房に、顔を近付ける。
「さ……触って……もし、いやじゃなかったら……」
「い、いやなわけ、ないよ」
 僕はそう言って、智沙ちゃんのオッパイに、指先で触れた。
「ぅん……」
 智沙ちゃんが、可愛い声を漏らす。
「もっと……」
「うん……」
 もう、止まらない。
 僕は、智沙ちゃんの両方の胸に左右の手でそれぞれ重ね、包み込むようにして、次第に力を込めていった。
 少しずつ、少しずつ、手を大胆に動かして、智沙ちゃんのオッパイを揉む。
「う、うっ……あふ……あぅっ……んんっ……」
 智沙ちゃんが、肩をすくめるようにして、軽く身をよじる。
「くすぐったい?」
「うん、少し……でも、もっとしてほしい……」
 はぁ、はぁ、とあえぎ声を漏らしながら、智沙ちゃんが言う。
 僕は、智沙ちゃんのオッパイを揉み、乳首の周辺を指で撫でた。
 そして、左右のピンク色の乳首を、ころころと指先で転がす。
「うっ、んんんっ……あふ……くぅんっ……せ、切ないよ……」
「智沙ちゃん……」
 僕は、ふるふると震える智沙ちゃんの胸元に、唇を近付けた。
 そして、もう固くなっちゃってる乳首を、口に含む。
「あうんっ……!」
 智沙ちゃんが、甘い声を漏らす。
 僕は、智沙ちゃんの乳首をできるだけ優しく吸ってから、ねろねろと舐めしゃぶった。
 左右の乳首を交互に口に咥え、空いている方は指で摘まんで、くいっ、くいっ、と軽く引っ張る。
「うんっ、あ、あぅんっ……ダ、ダメぇ……立ってられない……」
 体をふらつかせながら、智沙ちゃんがそう訴える。
 僕は、ちゅぽん、と乳首から唇を離した。
「じゃあ、ベッドに……」
「うん……」
 ショーツと白い靴下だけを身に付けた智沙ちゃんの体を、ベッドに横たえる。
「脱がすね」
「うん……」
 智沙ちゃんの返事を待って、その小さなお尻から、ショーツを取り去る。
 いつの間にか……僕の方が、主導権を握っていた。
 智沙ちゃんの脚の間に体を置き、すでに濡れ始めている割れ目に、顔を寄せる。
「あ、ダメ……」
「どうして?」
「だ、だって……まだ、シャワーとか浴びてない……」
 この前は、いきなり舐めさせたくせに……と、一瞬だけ思う。
「気にしないで」
 僕は、そう言って、智沙ちゃんの割れ目にキスをした。
「ああっ……研児君……あ、あの時は、私っ……」
 自分が僕にした仕打ちを思い出したのか、智沙ちゃんが何かを言いかける。
「だから……そのことも、気にしないでいいよ」
 そう言って、僕は、智沙ちゃんの言葉を遮るように、クンニを始めた。
 両手で小ぶりなお尻を捧げ持つようにしながら、クレヴァスの奥へと舌を侵入させ、上下に動かす。
「あうっ、うっ、うくっ……ああっ……け、研児君っ……! あくうぅんっ!」
 可愛らしい、智沙ちゃんのあえぎ声。
 その声と、美保さんのとろけそうな声を、無意識のうちに、心の中で比べてしまう。
 声だけじゃない――お尻の大きさも、アソコの形も、愛液の味や匂いすらも、美保さんと智沙ちゃんは違っている。
(だめだ、そんなこと考えちゃ……!)
 現在進行形で“浮気”をしていながら、僕は、そんなふうに自分に言い聞かせた。
 それは、ただ単にいろいろな罪悪感を忘れたかったからかもしれないけど……。
 ともかく、僕は、自分の唇と舌に神経を集中させ、クンニリングスに没頭した。
「あん、あくうんっ、あう……あん、あぁん、ああぁっ……! す、すごい……あひぃんっ!」
 まるで、汲めども尽きぬ泉のように、智沙ちゃんのアソコから愛液が溢れ続ける。
 僕は、それを夢中になって舐め啜りながら、勃起しているクリトリスにも舌を這わせた。
「ひいいんっ! あひっ! そ、それ……強すぎっ……くううんっ!」
「あ……痛かった?」
「い、痛くないけど……なんか、すごすぎて、こわい……ああぁんっ!」
 苦痛を感じてるわけじゃないんだと知って、クリへの愛撫を再開させる。
「あっ、あああぁん、やぁんっ……研児君、イジワルだよっ……ひあああっ!」
 僕をなじりながらも、まるで甘えるような、智沙ちゃんの声。
 僕は、もう、たまらなくなった。
「ち、智沙ちゃん……」
 僕は、余裕なくベルトを外し、トランクスごとズボンを脱ぎながら、智沙ちゃんの華奢な体にのしかかった。
「研児君……」
 ぎゅっ、と下から智沙ちゃんが僕の首に腕を回す。
「お願い……だ、抱っこして……」
 顔を真っ赤にして、震える声で、智沙ちゃんがおねだりする。
「うん……」
 僕は、智沙ちゃんの体を起こしてから、その細い肢体を抱き締めた。
 僕があぐらをかいて、僕の腰を、智沙ちゃんが両方の膝で挟むような格好だ。
「このまま……抱っこしながら……して……」
「分かった……腰、こっちに……」
「うん……え、えっと、こう?」
 僕に誘導されるままに、智沙ちゃんが腰を浮かす。
 熱い肉のぬかるみが、くちゅ、と僕の肉棒の先端に触れた。
「あ……ここ?」
「うん、そう……」
 そう答えながら、智沙ちゃんの腰を落としていく。
 丸い亀頭部が濡れた割れ目を割り開き、奥へ奥へと侵入していく。
「んっ、んくっ……んあ……あ、う……くふうううぅ……」
 きつい膣道を広げるようにして挿入を続けると、智沙ちゃんが、不思議なため息を漏らす。
 ずりずりと、肉竿が膣壁をこする感触。
 そして、先端が、一番奥に到達した。
「あくうんっ……ああぁっ……す、すごいっ……はひっ……ひううううう……」
 少し苦しげな声で、智沙ちゃんが喘ぐ。
「きつい?」
「う、ううん……平気……はふ……ふっ……あふ……くふぅ……」
 智沙ちゃんが、呼吸を整えようとしている。
 鮮烈な熱と圧力が肉棒を包み込んでいるのを、僕は、感じていた。
 このままでもすごく気持ちいいけど、やっぱり、このままでいることはガマンできない。
 僕は、智沙ちゃんのお尻に手を添えて、小さく上下に動かした。
「あ、あんっ……あ……あう……うん……うぅんっ……」
 すぐ耳元で、智沙ちゃんの濡れた喘ぎ声が、響く。
「研児、くんっ……あうんっ……あふ……あん……あぁん……き、きもちいいよ……」
「僕も……きもちいい……」
 思わず、僕はそう答えていた。
「う……うれしい……うれしいよ、研児君……んくっ、んっ、んんんっ……」
 いつのまにか、智沙ちゃんは、自分から腰を動かしていた。
 白くて華奢な体が、僕の腰の上で、リズミカルに跳ねている。
「研児、くん……」
 僕の首に腕を回したまま、智沙ちゃんが、僕の顔を真正面から見つめる。
「好き……好きだよ……私……君のことが、好き……」
 その言葉が、奇妙な軽い痛みとなって胸を抉り――それを、僕は快感として感じてしまう。
「あん、あぁんっ……ずっと……こうなりたかった……こうしたかったの……研児君……研児君っ……」
「智沙、ちゃん……」
 僕は、智沙ちゃんの唇に、唇を重ねた。
 智沙ちゃんの言葉を遮りたかったのか――胸の中で大きくなる切なさをどうにかしたかったのか――それとも、ただ単にこの柔らかな桜色の唇をむさぼりたかったのか。
「んっ、んふっ、ちゅ、ちゅむ……んっ、んふっ、ふん……ふん、ふぅん、んふうぅ……」
 僕たちは、甘い息を鼻から漏らし、ぴちゃぴちゃと舌を絡めながら、夢中になってキスをした。
 温かいような、くすぐったいような、淡い快感が、舌と唇をとろけさせる。
「んっ、ちゅ、ちゅむ、ちゅっ……はぁ、はぁ、はぁ……研児君……好き……」
「智沙ちゃん……」
 智沙ちゃんが、同じ言葉を僕に求めていることは、分かっていた。
 けど、僕は、それを口にすることができず、ごまかすようにキスを続けている。
 それでも、僕は、今この瞬間も、僕自身の気持ちと――そして、美保さんを裏切ってるのだ。
「あん、ああぁんっ……あはぁっ……すごい……すごく気持ちいいの……あん、ああぁっ、あぅんっ……」
 高まる欲望。高まる快楽。高まる鼓動。高まる感情。
 これ以上はないというほどにいきり立ったペニスを、智沙ちゃんのクレヴァスから溢れる愛液が濡らしている。
 圧倒的な快感が、胸をさいなむ罪悪感を押し流しかけ、そのことがさらに罪悪感を育てる。
「ねえっ、わ、私……私、ヘン……ヘンになっちゃう……ヘンになっちゃうよっ……!」
 声を高くしながら、さらに激しく腰を動かす智沙ちゃんを、下から固い肉棒で突き上げる。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……! ダメ! ダメっ! わ、私――あああああああっ!」
 せわしない喘ぎ。切羽詰まった声。
 二人の肌は汗に濡れ、僕の胸を、勃起しきった智沙ちゃんの乳首がこすっている。
「あああっ……わ、私、どうなるの……? こ、こわいっ! やっ! やああっ! け、研ちゃんっ……!」
「智沙、ちゃんっ……!」
 ほっそりとした体を力いっぱい抱き締め、思い切りペニスを突き上げる。
「あっ……!」
 弓なりに体を反らせた智沙ちゃんの中に、僕は、射精した。
 びゅっ! びゅっ! びゅっ! びゅっ! びゅっ!
「あっ! ああっ! あつい……! あうっ……! ああああああああ!」
 びくん、びくん、と僕の腕の中で震える、僕の幼なじみ。
 その子が、まるで、この世に僕しか頼る者がいないとでもいいたげに、しがみついてくる。
「あっ、あああっ……ああぁ……あ……あ……あ……あぁー……」
 ひくっ、ひくっ、と膣内が痙攣し、僕のペニスを絞り上げて、最後の一滴まで精液を搾り取ろうとする。
「はあ……はあ……はあ……けんじ、くん……すき……」
 がっくりと体中の力を抜き、僕の肩に顔を伏せながら、智沙ちゃんが、ぼんやりとした声で言った。
「智沙ちゃん……」
 今までペニスに集中していた快感がほどけ、拡散し、全身を包む。
 その快感の正体は、智沙ちゃんの滑らかな肌の感触だった。
 胸の奥で、ある気持ちを押さえ付けていた蓋が、他愛もなくとろけていく。
「僕も……智沙ちゃんが、好きだよ……」
「研児くん……!」
 ひくん、と智沙ちゃんの肩が、動いた。
 僕も、智沙ちゃんも、そのまま、何も言わない。
 好きでない女の子を抱くことと――好きな人がいるのに他の人も好きになってしまうこと――
 そのどちらもよくないことだと思うけど、どちらかの罪は、犯さないで済むのなら――
 それが救いなのかどうかは分からないけど、でも、僕は――
「僕は――」
 その時――ドアが開いた。
「美保さん……!」
 智沙ちゃんが、驚きの声をあげる。
 僕は、のろのろと振り返り、そして、ドアのところに立っている美保さんの姿を見た。
 美保さんは、かすかな驚きの表情を、その顔に浮かべていた。 



第六章へ

目次へ