控え目な彼女 part1

 姫里詩乃を誘ってのデートの最中、レンタカーのエアコンがいきなり効かなくなり、ハンドルを握っていた大田繁は泣きたくなった。
 しかも、道は渋滞していて車はのろのろとしか動かず、目的地はだいぶ先で、天気は快晴だ。繁は、自分がいったい何をしたんだ、と信じてもいない神様に心の中で訴える。
「……ごめんね、詩乃ちゃん」
 大きな体を縮こまらせながら、繁が助手席の詩乃に言う。
「謝らないでください……繁先輩のせいじゃないですから……」
 詩乃の口調は、いつにも増して静かだった。
 だが、その軽く俯いた顔がどんな表情を浮かべているのか――落胆しているのか、それとも怒っているのか、繁には分からない。
 自分は詩乃に告白した時に一生分の運を使い果たしてしまったのではないか、などと繁は思ってしまう。
 この春、高校を卒業した日に、繁は二つ下の後輩の詩乃に告白した。それはダメ元というか、記念受験ならぬ記念告白というつもりだった。同じ部活――イラスト同好会で、一年間、一緒に過ごしていたとはいえ、眼鏡をかけた肥満漢の繁は、チェックのシャツとバンダナとリュックが似合う典型的なオタクなのだ。三次元美少女に告白してOKをもらえたこと自体、繁は大げさでなく奇跡だと思っている。
 詩乃を美少女と称することには、おそらく詩乃自身は強い抵抗を示すだろう。当たり障りのないデザインの眼鏡に、三つ編みのお下げ。地味で、控え目で、芸能界に疎く、自信なさげで、化粧っ気もない詩乃は――しかし、小動物的な可愛らしさに満ちていた。くりっとした大きな瞳と、ちまちまとした目鼻立ち、そして小柄な体は、男の庇護欲を駆り立てずにはいられない。
 そんな詩乃を彼女にできた繁が、持ち前の鈍臭さから教官に繰り返し罵倒されつつも必死に運転免許を取り――意気揚々とドライブデートに誘った結果が、これだった。
 冷気の供給が止まり、車内の温度がどんどん高くなっている。本格的な夏まではまだ間があるとはいえ、この時期の日差しは強烈だ。
「あ、あの……やっぱり、窓、開けた方が……」
 汗でぐっしょりとなったタオルハンカチで顔を拭いながら、繁が提案する。
「いいです……私、喉が弱くて……排気ガスとか、苦手で……」
 手詰まりだ、という思いから、繁の全身に新たな汗が吹き出る。
 もともと肥満していて汗かきな上に、車内の温度は今も上昇しており、この事態をどうにかしなくてはという焦りも手伝って、繁は頭から湯を浴びたように汗だくになっている。
 そんな繁に、時折ちらっと視線を向けるのみで、詩乃は自分からは何も言ってこない。
 これは、振られる――ということについては、繁は半ば諦めていた。ただ、このままだと、とても体が強いようには見えない詩乃が、熱射病になってしまうんじゃないかという懸念がある。
「詩乃ちゃん、えっと、そろそろどこかで休憩しないと……」
 繁の言葉に、詩乃はかすかに顔を上げ、窓の外を見る。
「……でしたら……あそことか、どうですか?」
 詩乃が細い指で差し示した建物を見て、繁は表情を固まらせてしまった。


 ――これがラブホテルかあ。まさか自分がこんなところに入るなんてなあ。
 室内を見回して、繁は奇妙な感慨を抱く。
 この三ヶ月、詩乃とキスだけの清い交際を続けている繁は、言うまでもなく童貞であり、この手のホテルに入ったことはない。
 詩乃はどうなのか――経験済みということはないと繁は信じているが、逆に、ここがどういうところなのか知っているのかどうか。そんなふうに繁は心配してしまう。
 もし、知らないのだったら、それにつけ込むようなことはできない――と生真面目に考えながら、繁は横目で詩乃の様子を観察した。
 詩乃は――下を向き、可憐なデザインの自らのスカートを両手でぎゅっと握っている。かなり緊張しているようだ。
「ええと、とにかく――シャワー浴びようか? 大丈夫、壁がガラス張りとかじゃないみたいだし……」
 そんなことを言いながら、繁は、詩乃をこれ以上おびえさせてしまうような不埒なギミックが無いかどうか確かめるべく、バスルームを先行偵察しようとする。
「あっ、あの――待ってください!」
 珍しく大きな声で、しかもかなり切羽詰まった口調で言われ、繁は目を見開いて振り返る。
「どど、どうしたの? 心配しなくてもちゃんと別々に――」
「待って――お風呂は待ってください……っ!」
 そう言って、詩乃が、繁の肥満した体に正面から手を広げて抱きつく。
「詩乃ちゃん……?」
「せん……ぱいっ……!」
 詩乃は、そのまま繁の胸元に顔を埋めるようにして、鼻から大きく息を吸い込んだ。
「んっ、んんっ、んく……すーっ、すーっ、んううっ……ああぁ……先輩の……匂い……♡」
「ちょ、ちょっと、詩乃ちゃん……」
 うろたえる繁をよそに、詩乃は、仔犬のように鼻を鳴らして、繁の汗の匂いを嗅ぐ。
「すんすんっ、すんすんっ、ンああっ……あっ、だめ、だめ、私っ……あっ、あううっ……♡」
 ぴくぴくっ、と体を細かく震わせた後、詩乃は、ぺたんとその場に座り込んでしまった。
「詩乃ちゃん……」
 体調が悪いわけではないということは、いかに経験不足の繁にも分かった。だが、いったい何が起こっているのかは、まるで理解できていない。
 そんな繁の顔を、繁の脚にすがるような姿勢で、詩乃が見上げた。
「す……すいません……先輩……」
 詩乃の顔は上気し、その瞳は艶っぽく潤んでいる。
「あの、私……車に乗ってた時から、ずっと……その……先輩の匂いを嗅いで……いっ、いやらしい気持ちに、なってて……」
 熱に浮かされたような口調で、詩乃が告白する。
「えっ? えっ? き、気持ち悪くなったとかじゃなくて?」
「違いますっ……! 先輩の、汗の匂い……すごく、素敵で……あの……ごめんなさい……っ!」
 我慢できなくなったように、詩乃が、今度は繁の股間に顔を埋める。
「うわっ、詩乃ちゃんっ!」
「くんくん、くんくんっ♡ あっ、あっ、すごいっ、くんくんくんくん……っ♡ あああ、ダメ、また、またいっちゃうぅ……すーっ、すーっ、すーっ……んんんっ♡」
 その言葉により、繁は、詩乃が先ほど匂いだけで絶頂に至ってしまったのだということを、ようやく理解する。
 そして、そのことを理解するずっと前から――詩乃に抱きつかれたその瞬間から、繁の肉棒はズボンの中で痛いほどに膨張していた。
「あ、あの……先輩……ここ、大きく、なってますよね……?」
 繁の股間の膨らみに可愛らしい小鼻を押し付けたまま、詩乃が指摘する。
「ご、ごめん……」
「そんな、謝らないでください……。私、嬉しいんです。先輩も……私と同じ気持ちなのかも、って思って……」
「うん……お、同じだよ……! 僕も……その……すごく、いやらしい気持ちになってる……」
「良かったです……。こんなふうになってる私を見たら、きっと、先輩に嫌われちゃうって思ってましたから……」
「そんなことないよ! 絶対に!」
 自分でも驚くほどに大きな声で、繁は詩乃の言葉を否定する。
「でも……でも……男の人の匂いを嗅いで、こんなふうになっちゃうなんて……やっぱり、その……変態、ですよ……」
「そんなことで、詩乃ちゃんを嫌いになるなんてありえないよ! だって、その……その、僕のだって、こんなになってるでしょ……?」
 うまい言い回しが思いつかず、結局、繁は自らの反応を証拠としてしまう。
 だが、それが強い説得力を有していることも確かだった。
「嬉しい……良かったぁ……」
 詩乃が、心の底から安堵したように言う。
 そして、詩乃は、うっとりと目を閉じ、徐々に強くなる繁のその部分の匂いを嗅いだ。
「すんすん、すんすん……♡ ああぁン……先輩……すんすんすん……っ♡」
 普段のおとなしげな様子からは考えられないような甘い声を上げながら、詩乃がぐりぐりと鼻を股間に押し付ける。
「ちょ、ま、待って……! そんなにされたら、でっ、出ちゃうよっ」
 繁の言葉に、一瞬きょとんとなった詩乃が、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「――じゃあ……脱いじゃいますか?」
 はにかんだ口調で、しかし目に期待の色を浮かべながら、詩乃は言う。
 繁は、こっくりと頷き、そしてベルトに手をかけた。
 ズボンとトランクスが下ろされ、剥き出しになったその部分から、むわっ、と蒸れた性の匂いが広がる。
「あぁ……っ♡」
 詩乃が、匂いに誘われるように、天を向いて勃起した繁の肉棒に改めて顔を近付ける。
「あの……あの……す、すごい変態なことしても、いいですか……?」
 ちろり、と小さな舌で唇を舐めてから、詩乃は言った。
「な、何……?」
 興奮と期待で喉がカラカラになるのを感じながら、繁は訊き返す。
「先輩のを……その……お口に、咥えたいんです……。駄目、ですか……?」
「いっ……いいよっ、もちろん……!」
 そう答える繁の肉棒の先端から、糸を引いて滴り落ちるほどに、先汁が溢れる。
「じゃあ、その……し、します、ね……」
 詩乃が、正座の姿勢になった後、両手を繁のシャフトに添えて角度を調節する。
「ンあ……あむっ♡」
「うあっ……!」
 温かく柔らかな感触に亀頭部分を包み込まれ、繁は声を上げた。
「んっ、んんっ、んむ……むぐ、んむっ……ふぅ、ふぅ、ふぅ……んっ、んふぅ……っ♡」
 口の中から鼻に強烈な性臭が抜けているのか、詩乃が、ますます顔を赤くする。
「んむむっ、ぷあっ……はぁ、はぁ、あの、私、ぬ、脱ぎます……汚れちゃうと、いけないから……」
 そんなふうに言ってから、詩乃は、再び肉棒を口内に収めた。
 そして、可憐な唇で繁の太い肉幹を締め付けながら、一枚一枚、服を脱いでいく。
 何度か服を脱ぐ動作のために口を離さざるを得なくなった詩乃は、そのたびに名残惜しそうな表情を浮かべ、そしてすぐに肉棒を咥え直した。
「あああ……詩乃ちゃん……すごい……」
 ほぼ全裸で――紺色のソックスと眼鏡のみを身に付けた格好で肉棒を口に含む詩乃に、繁は感動の声を漏らす。
 なだらかな肩。小ぶりだが形のいい胸の膨らみ。細い腰から丸い尻にかけてのライン。あどけなさと瑞々しさを感じさせる、どこか妖精を思わせる詩乃の裸体に、繁の獣欲は否が応にも高まった。
「ちゅぷ、ちゅぷっ、ちゅぷ、んちゅ、んちゅっ、ぷは……うふふっ、お口の中で舐めると、匂い、強くなります……。これって、気持ちいいからですか?」
「う、うん……」
「じゃあ、もっと気持ちよくなってほしいです……。いっぱい……気持ちよくなってほしい……」
 そう言って、詩乃は、ピンク色の舌を突き出し、ねろねろと繁のペニスを舐め始めた。
「はぷ、ちゅぶ、ちゅぷ、ちゅぱ……ハァ、ハァ、んちゅちゅ、ちゅぱっ……れろ、れろ、れろ……ちゅぷぷ、ちゅぱ、れろおっ……ふぅふぅ、ちゅぷ、ちゅぱっ……♡」
 時おり、さも愛しげにキスをしながら、詩乃が繁の肉棒を隅々まで舐め回す。
「ちゅぷ、ちゅぷっ、ちゅぱっ、れろれろ……実は……先輩にいつかしたいって思って……ちゅぱ、ちゅぱっ、こっそり、練習してたんです……ちゅむ、ちゅむ、ちゅぷっ、ちゅぷぷ、ちゅむむっ……♡」
 さすがに巧みとは言えないが、丁寧で情熱的なフェラチオが、繁の肉棒を追い詰めていく。
「ちゅむ、ちゅむっう、ちゅぱっ、はぁ、はぁ、んちゅ、んちゅぅううううぅぅぅーっ、ちゅぽん♡ んはっ、はぁはぁ、んちゅぅううううぅぅぅーっ、ちゅぽん♡ んあっ、はふぅ、んちゅぅううううぅぅぅーっ、ちゅぽん♡」
 詩乃が、唇を尖らせて繁の肉棒を繰り返し吸引しては、解放する。
「うあっ、あああっ、詩乃ちゃんっ……! もう、出る、出るっ!」
 鮮烈な快感の連続に、繁は情けない声を上げながら、腰をひくひくとおののかせてしまった。
「んちゅぅううううぅぅぅーっ、ちゅぽんっ♡ はぁ、はぁ、どうぞ、出してください……私に、んく、かけてくださいっ……。んぢゅぅううううううううぅ~ッ!」
 そう言って、詩乃は、赤黒く膨れ上がった亀頭部分を口に含み、強く吸い上げた。
「あ、あああああああ……っ!」
「ぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅううぅ~ッ、ちゅぽんッ♡」
「あうっ!」
 詩乃の唇が何度目かに離れたその瞬間、繁は射精する。
「あぷっ! んっ、んぷっ、ぷあっ……あああ、こ、これが……先輩の、精液っ……♡」
 逃げるどころか、積極的に顔を差し出すようにして、詩乃が次々と迸る白濁液を浴びる。
「あっ、あうっ、んふ、すっ、すごい、匂いぃ……♡ あああああ、あっ、あっ、あっ、あぁっ……っ♡」
 詩乃が、眼鏡にへばり付いた精液を指先に絡め、鼻先に持ってきて匂いを嗅ぐ。
「すんすん……うぶっ、はあぁ、すっ、すごい匂いっ……♡ すんすん、すんすんっ、んあっ、あううっ、す、素敵ぃ……♡」
 むせ返るほどに濃厚な精の匂いに陶然となりながら、詩乃が甘い声を上げる。
 そして詩乃は、まるで匂いを染み込ませようとするかのように、その可憐な指先で肌に付いたスペルマを塗り伸ばした。
「はあ、はあ、詩乃ちゃん……!」
 詩乃のあまりの淫らさに、繁はその肉棒を萎えさせる間もなく勃起させる。
「先輩……匂い、つけて……♡ 先輩の匂い……詩乃の体中に……体の中にも……つけて、ください……♡」
 繁は、無言で頷いてから、詩乃の小さな体をいわゆる“お姫様抱っこ”で軽々と持ち上げた。
「ん、ちゅっ……♡」
 自らのザーメンの匂いにもためらうことなく――むしろ興奮を新たにしながら、繁は詩乃の唇に口付けした。
 かちん、とファーストキスの時がそうだったように眼鏡と眼鏡がぶつかり、ふたりはくすりと笑い合う。
 そして、繁は、ベッドの上に詩乃の裸体を横たえた。
 詩乃が眼鏡を外し、繁も眼鏡を外すとともにまだ着ていた服を脱ぎ捨てる。
「ごくっ……」
 喉を鳴らして生唾を飲み込みながら、繁は、詩乃の両脚をMの字に開いた。
 詩乃の恥丘にはほとんどヘアがなく、その秘裂はピンク色の陰唇が覗いているだけのスリットに過ぎない。
 だが、幼い外観のそこは、前戯の必要などないくらいに、たっぷりと淫らな蜜を溢れさせていた。
「い、入れていい……? 詩乃ちゃん……」
 言いながら、ためらうように――あるいはその部分の感触を味わうように、繁はペニスの腹を詩乃のスリットに擦り付ける。
「はい……詩乃を……わ、私を、先輩だけのものにしてください……。お願い、します……」
 詩乃が、繁の顔を見つめながら、愛液と腺液にまみれた肉棒に手を伸ばし、指先で愛しげに撫で回す。
「ううっ、し、詩乃ちゃんっ……!」
 繁は、ネットやマンガで仕入れた知識を総動員し、自らのシャフトに手を添えて角度を調節しながら、先端を割れ目に潜り込ませた。
 詩乃のいたいけな秘唇が、精一杯に広がって、繁の怒張を健気に飲み込んでいく。
「ンああああっ、先輩、先輩っ……あ、あ、あっ、あぐっ……!」
 破瓜の痛みを懸命に堪える詩乃の表情に、説明のつかない興奮を覚え、繁はさらに腰を進ませた。
「ああああ……ッ!」
 とうとう、亀頭部分が詩乃の最奥部に達した。
 繁の剛直が根元近くまで収まった膣壺の入口に、じわりと純潔の証しである血が滲んでいる。
「い、痛い……よね? ごめんね、詩乃ちゃん……」
 膣内の熱さにますます肉棒を硬くしながらも、繁は詩乃を気遣う。
「謝らないで……ください……。私……嬉しいんです……。それに……お、思ってたほど、痛く、ない、ですから……」
 囁くような声で言う詩乃の膣肉が、まるで抽送をねだるように、キュッ、キュッと繁の肉幹を締め付ける。
 繁は、内に湧き起こる牡の本能に命じられるまま、腰を動かし始めた。
「ひうっ……んんっ、んぐ、ううっ、んぐぅ……はっ、はっ、はっ、あああ、先輩っ……!」
 涙で潤んだ瞳で、詩乃が繁るの顔を見上げる。
「ど、どうですか……あっ、あっ、私のそこ……気持ち、いいですか……?」
「うんっ……! すっ、すっごい気持ちいいよっ……! はあ、はあ、はあ、詩乃ちゃんのここっ、気持ちいいっ……!」
 繁が、思ったことそのままを余裕のない口調で言いながら、ピストンのペースを上げていく。
「あああ、嬉しい、嬉しいっ……♡ 先輩に、喜んでもらえて……わ、私ぃ……っ!」
「詩乃ちゃんっ!」
 繁が、詩乃の体に覆い被さり、唇に唇を重ねる。
「んむっ、んちゅ、ちゅぶ、むちゅっ♡ ふぅ、ふぅ、んむ、ちゅぶぶ、んちゅうっ♡」
 ほとんど夢中になって、詩乃と繁が互いの唇を貪る。
「ぷはっ……ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……♡」
 名残を惜しみながら唇を離すと、詩乃は、上気した顔にうっとりとした表情を浮かべながら、荒い息をつき始めた。
「詩乃ちゃん、重い? 体起こそうか?」
「だめですっ……! このままが、このままがいいいですっ!」
 焦ったような口調で言い、詩乃が繁るの太い首にしがみつく。
「あああっ……先輩っ、好きっ♡ 大好き、ですっ♡ あああっ、好き、好きっ♡」
「僕も、僕も好きだよ、詩乃ちゃんっ! はあ、はあ、はあ、はあ……!」
 繁が、獣のように喘ぎながらさらに肉棒をピストンさせる。
 ぎくしゃくしていた繁の腰使いが次第に滑らかになり、二人の結合部からは、あとからあとから愛液が溢れ出る。
「あううっ、いいっ、いいです……気持ち、いいぃ……♡」
 思わずという感じでそう声を上げてから、詩乃は羞恥に形のいい眉をたわめた。
「あっ、あっ、私、初めてなのに、感じ、ちゃってるっ……! 恥ずかしい……っ!」
「はあ、はあ、いいんだよ、もっと、もっと感じて……! うっ、うっ、うっ、ぼっ、僕も、すごい気持ちいいよ……っ!」
 繁が、詩乃の華奢な体を抱き締めながら、抽送のピッチをさらに上げる。
「あうっ、んぐっ、うくうっ……あっ、あうっ、あひっ、ハァ、ハァ、ハァ、んあああっ、ひああああっ!」
 半開きになった詩乃の唇が熱い喘ぎを漏らし、その蜜壺は嬉しげに繁のシャフトを締め付けている。
 繁は、荒い息をつきながら、その肥満した体に汗を浮かべ、腰を動かし続けた。
「すーっ♡ すーっ♡ ンはぁあああああああ♡ せんっ、ぱいぃ……っ♡ あうっ、んくっ、あううううううっ♡ 好きぃ、好きぃ……っ♡」
 さらに濃くなった繁の体臭を胸いっぱいに吸い込みながら、詩乃は甘く蕩けた声を上げる。
 いつも慎ましやかな表情を浮かべているその顔はだらしなく緩み、唇の端からは涎まで垂れている。
「うあああっ、可愛いっ! 可愛いよ、詩乃ちゃぁんっ!」
 繁は、つい先程まで処女だった詩乃に対する気遣いすら忘れ、欲望の赴くままに猛然と腰を使った。
「あひいッ♡ ひい、ひいぃ♡ いいっ、いいですうっ! あっ、あっ、すごいぃ! こ、こんなにいいなんてぇ! ああああああッ! あひいいいぃ~ッ!」
 詩乃の声が、徐々に切羽詰まったような響きを帯びていく。
 繁は、さらに膨れ上がった肉棒で詩乃の膣圧を味わいながら、最後のスパートに入った。
「ひぃーッ♡ ひぃーッ♡ いいっ、いいいっ、いひぃいいいいい! いっちゃうっ、いっちゃうっ! あああ、わ、私ッ、初めてなのにッ、い、い、いっちゃいますうッ! あひっ、ひいぃーッ♡」
 甘い啜り泣きのような声を漏らしながら、詩乃が繁に告げる。
「いってっ、いってっ、詩乃ちゃんっ! うっ、うああああっ、あーっ、あぁーっ! 僕も、もう、もうっ……出るぅ!」
 限界近くまで高まった快楽に、繁は情けなく声を漏らす。
「出してくださいッ! 今日っ、今日はっ! だいじょぶな、日ですっ! だから、だから、中にッ♡ 中に、先輩の、出してッ♡ ああああああああ!」
 言いながら、詩乃は、その細く長い脚を繁の腰に絡み付かせた。
 繁が、フィニッシュに向かって、動きの制限された腰を小刻みに動かす。
「あひ、あひ、あひ、あひっ♡ ひぃひぃ♡ んひいいぃ♡ イク♡ イク♡ イク♡ イク♡ イク♡」
「詩乃ちゃんっ……! うっ、うあああああー! あああああああー!」
 繁は、獣じみた声を上げながら、詩乃の膣奥にザーメンを激しく迸らせた。
「ああああぁぁぁーッ! いっ、いきますっ! い、いいい、いくっ! いくうううううううううううううううううう!」
 体内に打ち込まれた精液の勢いと熱さに、詩乃は絶頂に達した。
 きゅうううううう……っ♡ と詩乃の膣肉に肉幹を締め付けられ、繁はさらに射精する。
「あうっ、うっ、うあっ、ああああああああッ! あうっ、うっ、うあああン♡ いっちゃうっ♡ いっちゃううっ♡ ひっ、ひっ、ひうぅううううううううッ!」
 さらなるアクメを極める詩乃の膣内に、繁はなおもザーメンを注ぎ込む。
「ンうううううう……ッ♡ あっ……ひいいぃ……っ♡ あっ、あっ、すごいぃ……♡ いくう……♡ いく……♡ いっくうぅぅぅぅぅぅぅ……っ♡」
 ひくっ、ひくっ、ひくっ、とその華奢な体を痙攣させながら、詩乃は声を上げ続ける。
「はひぃ……ン♡」
 そして、詩乃は、糸の切れた操り人形のように、くったりと体を弛緩させた。
「あ、あううっ、うぐ……詩乃、ちゃんっ……ハア、ハア、ハア、ハア、ハア……」
 荒い息をつきながら、同じように体から力を抜きかけた繁が、詩乃の体をその重さで潰すまいと、力を振り絞って上体を起こす。
「ひゃんッ……♡」
 じゅぽんっ、と弾みでまだ硬さを保った肉棒が膣穴から抜け、詩乃が可愛らしい悲鳴を上げる。
「うっ……!」
 繁は、そんな詩乃の体に、まだそんなに残っていたのか、と思わせるほどの精液を、どぴゅっ、どぴゅっと浴びせかけた。
「はあぁぁぁぁ……ッ♡ せんぱいの……せーしぃ……♡ はぁ、はぁ、あついぃ……っ♡」
 下腹部を中心にへばり付いた繁のザーメンを、詩乃が、うっとりとした表情を浮かべながら、指で塗り伸ばす。
 たちこめる汗と精液の匂いに包まれ、詩乃は、本当に幸せそうな表情を、その顔に浮かべていた。


「あの……本当に……はしたないところを、お見せしちゃいました……」
 詩乃は、繁に背中を向けたまま、蚊の鳴くような声で言った。
 繁と同じ大きな円形の湯船に浸かった詩乃の顔は、耳まで真っ赤になっている。のぼせたからではなく、純粋な羞恥のためだ。
 二人で体を洗い合い、肌に付着した様々な体液を流し終えた今――詩乃は、繁が知るいつもの詩乃に戻っていた。
「先輩……呆れちゃいましたよね……。その……私が……こんな、変態で……」
 言いながら、詩乃は、次第に顔をうつむかせる。
「呆れたりなんかしてないよ」
 繁は、詩乃の体を後ろから抱き寄せ、自分の体にもたれかからせた。
「あ……」
「えっと……僕も、かなりそういうことは好きな方だから……詩乃ちゃんがエッチなのは、すごく嬉しいよ」
「先輩……」
 安堵の表情を浮かべながら、詩乃は、後ろを振り向く。
 その黒目がちな瞳には――可愛らしい顔に似合わない、どこか妖しい光が宿っていた。
「実は、その……私……匂いで、いやらしい気持ちになっちゃうってことだけじゃなくて……あと、ほんの少しだけ、まだ先輩に言ってないことがあるんです」
「な……何……?」
 繁は、んくっ、と生唾を飲み込み、詩乃の次の言葉を待つ。
「それは……まだ、ないしょ、です♡」
 そう言って、詩乃は、体を繁の方に向け、チュッ、とついばむように控え目なキスをした。


あとがき