「おじ様、お・は・よっ♪」
 奈緒の声で、私は目を覚ました。
 まだ見なれない天井を背景に、奈緒の顔が、軽く微笑みながら私の顔をのぞきこんでいる。
「ふあ……今、何時だい?」
「九時半だよ」
「なんだって!」
 がば、と私は体を起こした。頭をぶつけられそうになった奈緒が、あわてて体を引く。白いリボンでまとめられたポニーテールが、ふわっと揺れた。
「お、落ちついてよ、おじ様あ……」
「え……ああ、そうか……」
 私は、爽やかな日の光の差しこむ部屋の中で、レモンイエローのエプロン姿の奈緒を眺めながら、ぼんやりと言った。
「そうだ……事務所は、やめたんだっけな……」
 いちいち口に出して、確認する。
「それに今日は土曜日だよ」
「僕は、土曜日も出勤してたんだよ」
 私は、17歳の奈緒と話すとき、自然と一人称が“僕”になる。
 まあ、私だってまだ30代の半ばでしかない。年の割に落ちついている、つまり、老けているなどと、よく同僚に言われてはいたが。
「へえ……タイヘンだったんだねっ」
 言いながら奈緒は、そんな私の様子を、愛らしい顔で見つめていた。年甲斐も無く、頬が熱くなるのを感じる。
「あの……僕の分の、朝飯は?」
「きちんと作ってるわよ、おじ様♪」
 照れ隠しに問わずもがなのことを訊く私に、奈緒はにっこりと微笑んだ。



 私の名は、馳倉礼次。これまで、さして大きくは無いが雰囲気のいい建築事務所で働いていた。気さくで有能な仲間たちと、頑固だが男気のある上司が、そこにはいた。
「あと、美人の事務員さんもでしょ」
「奈緒ほどじゃなかったさ」
 からかう奈緒の言葉を、私は大人の余裕というやつで受け流す。
 今、私の湯のみにお茶を注いでいる少女は、死んだ兄の娘である奈緒である。
 私は、彼女と暮らすために、今までの生活を全て捨て去った。
 未練がないわけではないが、後悔はしない。幸い、当座、二人が暮らしていくだけの金は充分にある。貿易商をしていた父や兄が残した遺産である。
 以前の私であれば、兄の残した金で生活するなど、死んでもいやだと思っただろうが、今は、その点に関しては感謝している。
 あと……奈緒を、残してくれたことを。
「で、おじ様はずっと、家にいてくれるんでしょ。つまり、朝も昼も夜もずっと、ってことだけど」
「奈緒は、僕をご隠居にするつもりかい?」
「なってほしいけど」
「そりゃ、しばらくは金の心配はしなくてもいいかもしれないが……」
「いよいよとなったら、この家だけ残して、地所とか売っちゃえばイイでしょ」
 そんなことを言いながら、奈緒は食器をかちゃかちゃと鳴らしながら流しに運んだ。
「この家を改造してペンションにしてもいいし……」
「乱暴なことを言うね、奈緒」
「そうかなあ?」
 そう呟く奈緒の背後に、わたしはそっと近付いた。
「僕は……この家を改造するのは、反対だな」
「え? な、なんで?」
 私の声がすぐ近くから聞こえたのが意外だったのか、奈緒がちょっと声を上ずらせる。
「いろいろ、想い出のある家だからね……」
 言いながら、私は奈緒の胸に、背後から手を重ねた。
「あ、ちょ、ちょっと、おじ様ぁ……」
 奈緒の可愛らしい抗議の声を聞き流しながら、私は、ゆるゆると柔らかな双乳を揉んだ。
 エプロンと薄手のニット、シャツ、そしてブラジャーと、幾重もの布に阻まれたもどかしい感じも、悪くない。
「ダメ……洗いもの、できないよお」
「あとで、僕も手伝うよ」
「でもォ……」
 そう言いながらも、奈緒の手はすでに止まっている。私は、そんな奈緒の首筋にそっと顔を近付けた。
「んふっ」
 ポニーテールの後れ毛が数本かかった白いうなじに口付けすると、奈緒は笑いを噛み殺したような短い声をあげた。
 そのまま、清潔な髪の香りを楽しみながら、きめの細かい肌に唇を這わせる。
 さらに、手に少しずつ力を込め、最近ボリュームを増してきたように思える乳房を、やわやわと揉みしだいた。
「もう、こんな朝から……いけないおじ様」
 笑みを含んだ声でそう言いながら、奈緒は首をねじって私の方を向く。
「奈緒は、僕とずっとこうしたいんだろ? 朝も、昼も、夜も」
 そう言いながら、エプロンとニットの間に、手を差し込む。布地が一枚へっただけで、その手触りは全然違う。まろやかな弾力が、優しく、私の手のひらを押し返してくるのだ。
「そういう意味で……言ったんじゃないのに……」
 次第に早くなる呼吸の合間に、奈緒がそんなことを言う。
 私は、既に熱くたぎっている自分自身を、ぐい、と奈緒のお尻におしつけた。
「あ……!」
 奈緒の頬が、赤く染まる。
 そのことを確認して、私はすぐに体を離した。手も、胸元から外し、優美な曲線を描く脇を、服の上から撫で下ろす。
 そして、私は、奈緒の丸いお尻を両手で左右から挟むようにしながら、スカートをめくり上げていった。
 大事な部分を隠すには、あまりに小さく可憐なピンクの布切れが、視界に入る。
「や、やだァ……」
 奈緒が、形だけの抗議の声をあげる。見られてるということだけで興奮を覚えているのか、その声はどこか濡れているようだった。
 ショーツの薄い布地の上から、鼻先をお尻の割れ目に潜りこませる。
「あン……」
 かすかではあるが、明らかな牝の匂いがする。
 奈緒は、そのことを恥じるかのように、両手で流しのふちを持ち、顔をうつむかせた。
 私は、ショーツの肌触りを堪能した後、焦らすようにゆっくりとそれをずり降ろしていった。
 形のいい奈緒のヒップが、私の目の前でかすかにおののくような様子を見せる。まるで、主人を慕いながらも恐れる愛玩動物のようだ。
 私は、その白い肌を優しく撫で上げ、そして口付けした。
「ンんッ……」
 押し殺した奈緒の声を楽しみながら、キスを繰り返す。
 淫らな匂いが、ますます強くなったように感じられた。
 私は、お尻に添えていた右手を離し、中指と薬指の指先を、後から奈緒の両足の間に差し入れた。
「はぁ……ん」
 奈緒が、観念したように、恥じらいながらも両足を開く。
 その部分はすでにしっとりと潤んでおり、私の指に柔らかく吸いついた。
「もう濡れてるじゃないか……」
「イ、イヤっ……!」
 割れ目に浅く潜らせた中指を軽く前後させながら言う私に、奈緒は両手の間に顔を伏せながら、恥じらいの声をあげる。
 私は、我慢できなくなって、両手で大きく奈緒のお尻を割り開いた。
「ダ、ダメ……そんなに見ないで、おじ様……っ!」
 明るい日の光の中でその部分をまじまじと見られて、奈緒が悲鳴のような声をあげる。
 しかし、私は、魅入られたようにその部分を凝視していた。その視線を感じるのか、セピア色の慎ましやかなアヌスはひくひくと震え、その下の、ぷっくりした大陰唇に挟まれた複雑な肉色の襞は、さらなる愛液を分泌する。
「可愛いよ、奈緒……」
 正直にそう言いながら、私は奈緒のその部分に顔を寄せた。
 そして、伸ばした舌先で、奈緒の敏感な部分を舐め上げる。
「あハぁっ」
 しなやかな奈緒の体が、素直に快楽に反応し、ぴくんと震えた。
 そんな奈緒に限りない愛おしさを感じながら、私は夢中になって口淫を続ける。
「あ……ンあああああ……ソ、ソコは……おじさま……ダメぇ……ンふっ、んんんっ……!」
 快楽に濡れた喘ぎ声の合間に、弱々しい抗議の声をあげる奈緒。
「どうしてダメなんだい?」
「だ、だって……ンはぁッ!」
 舌を尖らせ、ちろちろと肛門の周囲を舐めまわすと、奈緒は一際高い声を上げた。
「ここも気持いいだろう? 奈緒」
「はくっ……ン……で、でも……そこ、きたない、よォ……」
 そう言いながらも、奈緒はアヌスから涌き出るアブノーマルな快感から逃げることができない様子だ。
 私は、奈緒の二つの部分をたっぷりと口と舌で愛撫した後、立ち上がった。
 はぁはぁと息をつく奈緒の背後で、ズボンをずり下ろす。
 すでに私のそれは、痛いほどにいきり立っていた。奈緒の痴態に、まるで性の悦びを覚えたばかりの中学生のように、他愛無く反応してしまっている。
 私は、熱く脈打つ自らの欲望に右手を添え、左手でずり落ちてしまった奈緒のスカートをめくった。
 そのまま、ペニスの先端を、奈緒の最も柔らかな部分に浅く潜らせる。
「ふぁ……」
 快楽の予感に、奈緒の体がわずかに緊張した。
 しかし、私は意地悪く奈緒の秘部を亀頭でかき回すだけで、挿入しようとしない。
「お、おじさま……」
 奈緒が、欲情に潤んだ流し目で、私の顔を見つめる。それだけで射精してしまいそうになるほどの、ぞくぞくするような目つきだ。
「おねがい……はやくぅ……」
 言われて、私はことさらゆっくりと、腰を進めた。
「ふあああああああっ!」
 奈緒は、流しのふちに両手をついたまま、猫が伸びをするような感じで背中を反らす。
 ずりずりと狭い奈緒の膣内を、私のペニスが進んでいく。粘膜と粘膜が、奈緒の愛液を潤滑液にしてこすれる感じは、まるで電気が走るような快感だ。
 ようやく、私は自らの欲望を奈緒の温かな体内に収めきった。
「ンはぁ……」
 奈緒が、恍惚とした声をあげる。
「ス、スゴいの……ねえ、おじさま……おねがい……うごいて……」
 しかし、私は、かなりの自制心をもって、勝手に腰が動きそうになるのをどうにか制止した。
「あぁ〜ン、ど、どうしてェっ?」
 耐えかねて、自ら腰を動かしそうになる奈緒のヒップを、両腕でがっしりと捕らえる。指が、わずかに、奈緒の肌に食いこんだ。
「お、おねがい、おじさま……じ、じらさないでよォ……っ」
 奈緒が、弱々しいと言ってもいいくらい、ひどく情けない声をあげる。
「奈緒……」
「な、なあに、おじさま……」
 すがるような表情で私をうかがう奈緒に、私は問いかけた。
「兄貴と僕、どちらがいい?」
「え……?」
 質問の意味を理解できなかった様子の奈緒の体内に、私は、軽く動きを送りこんだ。
「ンあっ!」
 それだけで、奈緒の体がびくンと震える。
 しかし、私は再び動きを止めた。そして、ゆっくりと自らの肉棒を後退させる。
「あ、イ、イヤぁ……ぬ、ぬかないで……っ!」
 奈緒が、悲鳴のような声をあげる。
「答えるんだ。兄貴と僕の、どちらが気持いい?」
「やッ……パ、パパのことは、言わないで……」
「答えないなら、これでおしまいにするよ」
「イヤ、イヤ、イヤあァっ!」
 私のペニスのほとんどが抜け出てしまった感覚に、奈緒は狂乱したように叫んだ。
「おじさまっ! おじさまが、おじさまがイイのっ!」
「奈緒……!」
 求める答えを聞き、私は激しく奈緒の中に自らを突き入れた。
「あああああああああああああああああァーッ!」
 それだけで、軽く達してしまったのか、奈緒が高い声を放つ。
 しかし、私はそれに構うことなく、夢中で抽送を繰り返した。
「あ! あン! あン! あくッ! くぅう! ふあッ!」
 奈緒の喘ぎに、愛液をあふれさせながら粘膜同士がこすれる、じゅぶじゅぶという淫猥な音が重なる。
「ど、どうだい……奈緒……?」
「イイ……気持イイ……イイの、イイのぉ……」
「お前の父親より、いいだろう?」
 残酷な口調で訊く私に、奈緒はこくこくと肯いた。
「イイの……パパのより、イイ、よぉ……っ。お、おっきくて、かたくて……あ、あああっ!」
(とうとう、言わせた……!)
 私は、死んだ兄から、確かに奈緒を奪い取ったという深い満足を覚えていた。
 その満足感は、すぐに性感に変換され、腰をとろかすほどの快楽になる。
 私は、最後までの時間をできるだけ引き延ばそうと、腰の動きを緩め、奈緒の背中に覆い被さった。
「おじさま……」
 後ろを向きながら、うっとりとそうつぶやく奈緒の可憐な口に舌を伸ばし、その小さな唇を貪る。そして、私の両手は、奈緒の胸のふくらみを、服の上から荒々しく揉みしだいていた。
 脳に、甘い痺れを感じながら、口を離す。
 奈緒は、とろんとした目で私の顔を見つめながら、そっとつぶやくように言った。
「おじさま……すき……」
 その言葉が、私の最後の理性を掻き消した。
 浅ましい牡の本能の命じるまま、ピストン運動を再開する。
「ひああああああああああああああああああああッ!」
 奈緒のしなやかな体が、弓なりにのけぞる。
 私は、奈緒の腰を血がにじむほどきつく抱えながら、獣のように激しく腰を動かした。ペニスの先端が奈緒の子宮口を叩き、そのたびに奈緒の体がびくびくと震える。
「あひぃッ! イ、イイっ! あ、あ、あ、あああアアアっ!」
 私の腰と奈緒のお尻がぶつかる音に、奈緒の切羽詰った声が重なった。
「ンあああああああッ! イ、イク! イクの、イクのォ! おじさま、あたし、イクぅッ!」
 奈緒の膣肉が、絶頂の気配におののき、私のペニスを柔らかなざわめきで追い込んでいく。
「奈緒……奈緒……!」
「おじさまぁ……あたし、もう……ッ!」
 限界を迎え、私は慌ててペニスを引きぬいた。
 その動きが、奈緒を絶頂にまで押し上げる。
「イっちゃううううううううううううううううううーッ!」
 奈緒の絶叫を聞きながら、私は服を着たままのその背中に、大量の精を浴びせ掛けていた。

「もう、おじさまったら、ヒドい……」
 台所のフローリングの床に座りこんだ奈緒が、上目遣いで私の顔をにらむ。
「ああ、ごめん。服が汚れたね……つい、夢中になって」
 そう言いながら、奈緒の粘液で濡れた陰茎をしまおうとする私の手を、白く小さな手がそっと押さえる。
「そうじゃなくて……おじ様のミルク、奈緒の中に、欲しかったのに……」
 そして、力を失った私のペニスを、そっと咥える。
「奈緒……?」
「んふふっ……」
 聞き返す私に、奈緒は亀頭を口腔に収めたまま、いたずらっぽく笑った。その動きに、情けないことだが、腰から力が抜けそうになってしまう。
 すると奈緒は、何かのし返しのつもりか、ちゅうっ、と音がするほどにきつくペニスを吸引するのだった。
 私は、どこか呆けたような顔で、そんな奈緒の顔を上から見下ろしていた。



「ただいま……」
 私がこの森の中の屋敷に帰ってきたときには、もう日は暮れていた。
 屋敷の広さに比べて、照明が少ない。薄暗い廊下を歩きながら、私は奈緒の姿を捜した。
「買い物にでも行ったかな?」
 だが、たしか表には奈緒のスクーターがあった。ということは、少なくともそんなに遠出はしていないはずだ。
「あ、おじ様? おっかえんなさーい♪」
 奥で、奈緒の声が聞こえた。不覚にも、少しほっとした後、わたしは不審の念にとらわれた。
「……?」
 奈緒の声が聞こえたのは、奈緒の部屋ではなく、彼女の死んだ母親……私にとっては義理の姉にあたる、馳倉理緒の部屋だったのだ。
(理緒さん……)
 私は、しばし、20年近く以前の出来事に思いを馳せながら、部屋のドアを開いた。
「あ……」
「えへへ……似合う?」
 大きな鏡台の前に座っていた奈緒が、立ちあがりながら、訊く。
 奈緒が、あのポニーテールをほどき、シックな黒のワンピースをまとっていた。どうやら、薄く化粧もしているようだ。
 綺麗だった。いつもの制服姿の奈緒にない色気がある。
 理緒さんに、似ていた。
 くるくるとよく動く、まだ幼い感じの瞳以外は、瓜二つと言っていいくらいだ。
「で、どうだったの?」
 内心の私の動揺を知らぬげに、奈緒が無邪気な様子で訊いてくる。
「あ、ああ……割と、いい反応だったよ」
 私は今日、街に住む知人に、共同で事務所を構える話を持ちかけたのだ。
 金に困ってないとはいえ、まだ私は、以前の自分を引きずっている。何か仕事をしていないと落ちつかないのだ。
「ふうん……」
 そんなふうに言いながら、奈緒が私に近付いてくる。
「また、おじ様は、奈緒を置いてっちゃうの?」
「い、いや、そんなつもりはないよ」
 そう言う私の声は、少しかすれていたかもしれない。
 奈緒は、悲しげにかぶりを振った。
「おじ様……」
 柔らかそうな唇が、そう動く。そのときには、奈緒は私の体にそのしなやかな体をすり寄せていた。
 口元だけを見ると、本当に理緒さんにそっくりだ。
 奈緒の母親……兄の妻……そして……私の、はじめてのひと……。
「奈緒……」
 私は、奈緒の不安と、そして自分自身の動揺を鎮めるように、その体を抱きしめた。みずみずしい弾力を、全身で感じる。
 奈緒も、その細い両腕を私の背中に回し、ぎゅっと抱きついてきた。
 彼女の鼓動と熱い息遣いが、胸に伝わってくる。
 私は、奈緒の背中に回した手で、服のファスナーを下ろした。そして、ブラジャーのホックを外す。
 できるだけ優しく体を離すと、まるで優美な蝶が脱皮するような感じで、するすると奈緒の裸身が現れた。もはやその白い双乳にまとわりついているだけのブラを、奈緒が恥じらうように両手で押さえる。
 私は、そんな奈緒の両肩に手を置き、そっと力を込めて跪かせた。
 私の意図を察して、奈緒が軽く微笑む。部屋が暗いせいか、その顔は、ひどく妖艶な表情を浮かべているように見えた。
 ブラから手を離し、私のスラックスの股間の部分に、手を這わせる。
 私は、息を漏らしながら、上に着ているものを脱ぎ捨てていった。
 すでに血液を充填させつつある私の陰茎を、奈緒が、慎重な手つきで、外に解放する。
「こんなになってる……」
 間近に見る私のペニスに、奈緒はうっとりとした口調で言った。その息が、敏感になった亀頭をくすぐる。
 奈緒は、その小さな口を精一杯あけて、ぱっくりと私のペニスを咥えこんだ。
 舌と口腔の、なんとも言えない微妙な柔らかさに、私は息を漏らす。
「ン……ンンん……んふっ……」
 可愛い鼻声をあげながら、奈緒が、私の腰に両腕を回し、頭を前後に動かし始めた。
 奈緒の唾液に濡れたシャフトが、かすかな部屋の明かりを反射する。
「ン……んぷっ……んふ……ンむむっ……」
 そんな奈緒の声の合間に、じゅるっ、じゅるるっ、という、唾液をすする音が聞こえた。
 舌が、奈緒の口内で私のペニスにからみつき、口蓋が柔らかく私の亀頭粘膜をこする。
 兄と私が、毎晩のように、幼い彼女に教え込んだ技巧だ。
 私のペニスは、浅ましいほどに静脈を浮き出させ、完全に勃起していた。
「わぁ……すごぉい……」
 長いまつげに縁取られた目を、満足した猫のように細めながら、奈緒は舌を出し、ちろちろと私の陰茎の裏筋を舐める。
 私が全てを脱ぎ捨てた時、奈緒が、名残惜しげに口を離した。
 私は、奈緒の体を、両手で抱え上げた。右腕で上半身を、左腕で膝の裏を支える、いわゆる“お姫さまだっこ”というやつだ。
「あはっ……」
 嬉しそうに笑いながら、奈緒が私の首に両腕を回す。
「ン……」
 自分自身を愛してくれたその唇に口付けし、そして、奈緒を部屋の中央のベッドに運ぶ。
 ショーツと、白い清楚な靴下を身につけただけのその体を、私はそっとシーツの上に横たえた。普段は誰も使っていない、はるか以前にベッドメイクされたままの、理緒さんのベッドである。
 私と理緒さんが、初めて関係を持った場所だ。
 胸の奥に、かすかな痛みのようなものを感じながら、奈緒の体に、自分の体を重ねる。
「おじ様ぁ……」
 情感たっぷりにつぶやく奈緒の顔にキスの雨を降らせながら、私は、そのショーツの中に右手を差し入れた。
 柔らかな若草のような茂みのさらに下で、クレヴァスが熱い蜜を溢れさせている。
「おしゃぶりして、こんなにびしょびしょにするなんて……奈緒は、イヤらしい娘だね」
「いやンいやン。おじ様のイジワルぅ」
 言葉でじゃれあいながら、私は、奈緒のその部分に指を潜りこませた。そのまま、右手を上下させ、敏感な肉襞を刺激する。
「あ……ああン……くぅン……」
 可愛い喘ぎ声を上げながら、奈緒は、硬くたぎった私のペニスを、あやすように撫でてくれる。
 私は、腰を浮かして協力してくれる奈緒のショーツを、その形のいい脚から抜き取った。
「おじ様……来て……」
 奈緒が、頬を桜色に染めながら、おねだりをする。
「もっと、はっきり言ってごらん。どうしてほしいんだい?」
 くちゅくちゅと淫らな音をあげさせながら、私が言う。
「お……おじ様のコレ……奈緒の中に……入れて……」
 小さな声でそう言いながら、奈緒が、私の陰茎をその小さな手で握る。
「もっとエッチな言葉で」
「そんなァ……」
 目を潤ませ、抗議の声をあげながらも、奈緒は、このやりとりに明らかに興奮していた。
「お……おちんちん……おじ様の、おっきくてあついおちんちん……お、お、おまんこの中に、入れて欲しいの……」
 はぁはぁと息を荒げ、恥じらいながらもその可憐な唇で淫語を紡ぐ姿が、この上もなくいとおしい。
「してあげるよ、奈緒……」
 わたしは、半身を起こし、奈緒の両足を高く持ち上げ、開いた。
「あああッ……!」
 羞恥と期待に震えながら、奈緒が声をあげる。
 私は、熱くとろけているその部分に、自らの分身をあてがった。
 そして、奈緒の両膝に手を当てて、ゆっくりと腰を進める。
「あ、あああ、ンあああああああ……っ!」
 膣壁を雁首がこすりあげる感覚に、奈緒が声をあげる。
 とうとう、ペニス全体が、奈緒の体内に収まった。先端が、子宮口に当たっているのが分かる。
 しばらく私は動きを止め、絡みついてくる粘膜の感覚を堪能した。
 そして、ゆっくりと抽送を始める。
「ぅあ……あああ……っ。あっ、あっ、あっ、あっ、あうっ……」
 眉を切なげにたわめながら、奈緒が声をあげる。
 私は、そんな奈緒が、いまや唯一身につけている白い靴下を、そっと脱がせた。
 そして、そのつま先を口に含む。
「ひあっ!」
 きゅっ、と私の口の中で、奈緒の指が丸まった。その指の間に舌をねじ込み、愛撫しながら、腰を動かす。
「あ……おじさま、おじさま……っ!」
 奈緒は、ふるふると首を振った。その白い手が、自らの頭の下にある大きな枕を、きゅっとつかむ。
「感じるかい? 奈緒……」
 左右の足先をひとしきり舐めしゃぶった後、私は訊いた。
「か、かんじる……すごく、かんじちゃうの……」
 奈緒が、舌足らずな声で答え、そして、何かを求めるように、私に向かって両手を差し伸べた。
「お、おじさま……ぎゅって、だっこしてェ……」
 快感に目元を色っぽく上気させながらも、子どものような口調で懇願する奈緒。
 私は、そんな奈緒の体にのしかかるようにして、両腕を背中に回した。吸いつくような白い肌と、さらさらの黒髪の感触が、魅惑的なコントラストを構成している。
「奈緒……」
 私は、夢中で腰を動かしながら、奈緒の柔らかなピンク色の唇を貪った。
「ん……ンンむっ……お、おじさまあ……」
「奈緒……奈緒……」
 激しいディープキスの合間に、互いのことを呼び合う。
 奈緒の両腕が私の首に、そして両足が、私の腰に絡みついた。
 そして、その膣肉が、私のシャフトを柔らかくも激しく締め上げる。
 私は、いっそう腰の動きを速めながら、奈緒の弱点である耳たぶを咥え、舐めしゃぶった。
「あ、あああッ! あーッ!」
 きゅうううっ、とまるで手で握っているような強さで、奈緒のアソコが私をとらえる。
「ダ、ダメっ! イクの、イク、イク、イっちゃうっ!」
「ああ……僕も、もう……」
 互いの耳に熱い息を浴びせながら、私と奈緒は絶頂を迎えようとしていた。
 かすかな警告音が、かすみのかかったような頭の中で響いている。
「な……奈緒、今日は……?」
 そう言いながら、奈緒の顔をのぞきこむ。
 と、奈緒の長い足が、一層強く私の腰をとらえた。
「おじさま……奈緒の中に、おじさまのミルク、ちょうだい……!」
「し、しかし……」
「あたし……おじさまの赤ちゃん、欲しいの……」
「!」
 私は、あわてて自分の体を制止しようとした。
 しかし、すでに私の体は奈緒に捕われ、引き返せない場所にまで至っている。
「な、奈緒! いけない、それは……!」
「どうして?」
 奈緒が、恍惚とした表情で聞き返す。
「あたし、おじさまが、好きなの……好きな人の赤ちゃん、欲しいよぉ……」
「だめだ……僕と、奈緒は……」
「叔父と、姪だから……? それとも……親子、だから?」
「うああああああッ!」
 限界が、来た。
 熱くたぎった精液が、私のペニスの中を駆け抜け、奈緒の体内に大量に注がれる。
 それは、奈緒の体の一番奥にまで届き、定められた本来の使命を果たすはずだ。
「あっ! あっ、あっ、あっ、あっ! あああああああああああああああああああああああァーッ!」
 奈緒は、私を最後まで逃すまいとするかのように、両手両足で私にしがみつき、高い歓喜の声を上げた。
 最後の血の禁忌が今、犯されつつある。
 私は、絶望に似た凄まじい快美感に、まるで全身を貫かれるような感覚を覚えていた。



「奈緒……お前、知っていたのか……?」
「なあに? おじ様」
 ぐったりと横たわる私の隣に寝転ぶ奈緒が、無邪気と言ってもいいような顔で聞き返す。
 私は、それ以上、何も言えなかった。
 死んだ兄は、自らの妻である理緒さんを省みることなく、自身の性癖に固執した。
 そんな理緒さんに対する、当時高校生でしかなかった私の想いこそ、思えば、最初の過ちであったのかもしれない。
 そして、理緒さんは奈緒を生み、兄は、恐らく何のためらいも無く奈緒を犯した。そして理緒さんは、絶望のうちに短い生涯を閉じた。
 恐らく兄は、女性に子どもを宿らせる能力が無かったのだろう。奈緒との関係において、兄が避妊をした様子はない。
 そんな兄が死に、そして、私は奈緒を犯した。
 けして犯してはいけない少女を……
「赤ちゃん、できてるといいな……」
 どこかぼんやりとした口調で、奈緒が言った。
「奈緒……?」
「そしたら、家族も増えるし……寂しくないでしょ」
「……」
 何とも名状しがたい感覚が、私の背中をぞくぞくと震わせる。
 私は、自分が元いた場所に戻ることができないことを、悟っていた。
 建築家としての仕事も、新しい事務所も、独立も、今や空しい夢でしかなかい。禁忌を犯した私がいられる場所など、あの街にはありはしないのだ。
 しかし……これは何と甘美な追放だろう。
「おじ様は、男のコと女のコ、どっちがいい?」
 気が付くと、無垢な童女のような奈緒の瞳が、私の目を覗き込んでいた。
「……やっぱり……娘、だな」
 そう言いながら、私は奈緒の体を抱き寄せる。
「あン♪」
 私は、再び力を得たペニスを、奈緒の下腹部に押しつけた。

 そして私は、その夜、何度も何度も繰り返し、奈緒の体内に精を注ぎ続けたのだった。
あとがき

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