隷嬢二人



第七章



「姫ちゃん……ど、どういうつもり?」
 夏希は、顔を背けるようにして姫乃のキスから逃れながら、そう言った。
「ど、どういうって……だって、なっちゃんが、キスしてって……」
 きょとんとした顔で、姫乃が言う。
 姫乃の白い顔は、今はぽーっとピンクに染まり、黒い瞳はうるうると潤んでいる。姫乃自身、このキスに興奮しているのだ。
 それでも、姫乃は、キスという行為自体に、抵抗を感じていない様子だ。
「姫ちゃん……普通じゃないよ……」
 夏希は、ここ最近、ずっと考えていたことを、口に出して言った。
 姫乃は、え? と小首をかしげる。
「……っ!」
 夏希は、何か悔しさのようなものに衝き動かされ、思わず、姫乃を強く抱き締めてしまった。
 このままだと、姫乃が、どこか遠くに行ってしまいそうに思えたからかもしれない。
 そんな夏希の、まだ上を向いたままのペニスが、何枚かの布越しに、硬い感触に触れた。
「――何これ?」
「や、やっ!」
 いきなり、姫乃が身をよじり、夏希の抱擁から逃れようとする。
 夏希は、訳が分からないまま、自分が今、姫乃の最も奥深い秘密に触れたのだと言うことを確信した。
「姫ちゃんっ!」
 あの日よりも、さらに暴力的に、姫乃を押し倒そうとする。
 姫乃は、その力から逃れようとして、あっけなく、公園の立ち木に押し付けられてしまっていた。
「ね、姫ちゃん、今の……」
「や、やめて、なっちゃん……ごめんなさい……お願い、忘れて……!」
 姫乃が、涙混じりの声で言う。
 もちろん、今の感触は、忘れられるようなものではないし、忘れていいものとも、夏希には思えなかった。
「ごめん、姫ちゃん!」
 夏希は、姫乃に関する全てを失う覚悟で、そのスカートに手をかけた。
 体全体で、姫乃を太い木の幹に押し付け、動きを封じた上で、スカートを捲り上げる。
「イ、イヤーっ!」
 姫乃が、叫んだ。
 夏希の体が、硬直する。
「な、何……? 何なの、ソレ……」
 夏希は、姫乃のスカートを掴んだまま、茫然と言った。
 姫乃は両手で顔を覆い、夏希から逃れることすら忘れてしまったかのように、細い嗚咽をあげている。
 ショーツのすぐ下で、姫乃という少女の女性そのものを拘束している、銀色のT字帯。
 夏希は、それが貞操帯という名であることは知らない。
 それでも、何ものかが不当に姫乃の秘部を閉じ込めているのだということは、何となく、分かった。



 泣きじゃくる姫乃をなだめすかし、一通り事情を説明させるのに、夏希は、二時間を費やした。
 怒りで気が狂うかと思った。
 視界が、真紅に染まっているようだ。握り締めた柔らかな手の平には爪が食い込み、血が滲んでいる。
 ただし、そもそもの発端の出来事――電車の中で剥き出しの秘部に痴漢をされたことについては、姫乃は何も言っていない。それは、とても夏希に言えるようなことではなかった。
「うっ……えっく……ううっ……ぐす……」
 姫乃は、童女に戻ったかのように、涙をこぼしながら泣いていた。
「姫ちゃん……やっぱり、警察に……」
 夏希は、今まで何度か言った言葉を、また口にした。
「ダメ……おねがい……それだけはダメ……」
 姫乃が、しゃくりあげながら、そう訴える。
 確かに、姫乃が今まで経験させられ、そして今もされていることは、とても他人に言えることではないだろう。
 それを無理矢理に聞き出してしまったという罪悪感を、夏希は、あえて無視した。
 夏希の吊り気味の目が、今は細められ、地面の一点を見つめている。
 その顔は、まるで凛とした少年のそれのようだ。
「行こう、姫ちゃん」
「え……ど、どこへ……?」
「決まってるでしょ。そいつの鍵を手に入れなきゃ」
「け、けど……そんなのムリだよ……」
「無理なんかじゃないよ」
 そう言って、夏希は、姫乃の細い手首をぎゅっと握った。
「い、いたい……」
「これから、その男の家に行くんだって言ってたよね」
「う……うん……」
「ボクも、一緒に行くよ」
「そ、そんな……ダメだよ、そんなこと」
「……」
 夏希は、姫乃の言葉には答えず、いきなり歩き出した。
「きゃっ! な、なっちゃん?」
「まず、ボクの家に行こう」
「え……?」
「いろいろ、準備しないといけないからね」
「じゅ、準備って何? ねえ、なっちゃんてば!」
 それ以上、夏希は何も言わず、駅の近くの住宅街にある自宅へと、姫乃を引っ張るようにして歩いていった。



 姫乃は、夏希の家の広い玄関で、所在なげに立っている。
 今日も、夏希の家には他に誰も人がいないようだ。
 と、数分で、夏希は部屋から出てきた。
 お待たせ、の一言もなく、怒ったような顔のままで階段を下り、玄関でスニーカーをはく。
 すでに制服は脱いで、今は動きやすそうな薄手のトレーナーにデニム地のスカートという格好だ。
「行くよ」
 そう言って、夏希が姫乃を促しながら大きなドアを開けた。
「じゃあ、その男の家に案内して」
「ほ……本当に、なっちゃんも来るの?」
「……」
 夏希は、思いつめた顔のまま、こくん、と無言で肯く。
 その右手が、何か見慣れぬものを握っているのに、姫乃は気付いた。
「なっちゃん、それ、何?」
「ナイフ」
 こともなげに、夏希が答える。
「ナ、ナイフって――!」
「姫ちゃん、声が大きいよ」
 夏希は、自分の手の中のナイフにちらりと目をやってから、言った。刃渡りは7センチ弱。折畳式の、アウトドア用小型ナイフだ。
「脅しに使うだけ。刺したりなんかしないよ。……本当は、刺してやりたいくらいだけど」
「な、なっちゃん、そんな……」
 姫乃が、目に涙を浮かべ、声を震わせる。
 だが、一度こうと決めた夏希の心を変えさせるのは、並大抵のことではない。そのことは、姫乃にもよく分かっていた。
 特に、今の夏希は尋常の状態ではない。
 結局、姫乃は、これまでと同じように、夏希の暴走に引き摺られるままだった。



 巳洞のマンションの前に姫乃と夏希が着いた時には、姫乃が巳洞に指定された時間を一時間以上オーバーしていた。
 その間、巳洞からは、何の連絡も無い。
 姫乃は、もともと白い顔を蒼白にしながら、震える足で、どうにか巳洞の部屋のドアの前に立っていた。
 そのすぐ斜め後に、夏希が控えている。
 目の前のドアが開いたら、姫乃の代わりに夏希が前に出る。ただそれだけの、作戦とも言えないような取り決めを、夏希は一方的に姫乃に言っていた。
 これまで、何度か夏希に思い直すように言ったが、夏希はけして引き下がらなかった。
 姫乃の心は、パニックを通り越し、強い非現実感の中にあった。
 ちょうど、巳洞の卑劣な魔の手に落ちてしまった当初に戻ってしまったような感じだ。
 状況に流されている、と言われても言い訳が出来ないような精神状態で、姫乃は、のろのろと手を上げた。
 指が、巳洞にかつて指示されたように、数秒の間をおいて、三回、ドアのチャイムを押す。
 ぴんぽん――ぴんぽん――ぴんぽん――
 その、日常的といえばあまりに日常的な音さえ、姫乃には、どこか別の世界から響いているように思えた。
 三十秒にも満たない時間が、永遠のように感じられる。
 そして、スチール製のドアが、開いた。
「……!」
 足がすくんで動けなくなっている姫乃の隣を擦り抜け、夏希がドアの奥に入る。
 そして、夏希は、手に持っていたナイフを、目の前の男に突きつけた。
「……」
 男は、驚いたように目を見開き、夏希を見つめた。
 そんな表情が、男の平凡な顔を、ますます平凡なものにしている。
 だが、そんなことに躊躇うこともなく、夏希は口を開いた。
「あんたが、巳洞?」
 ささやくようなその声に――巳洞は、小さく肯いた。
 その瞳には、しかし、驚きや恐れの色はなく、ただ冷静に状況を分析している様子だけがある。
「鍵、出してよ」
「鍵?」
「あんたが姫ちゃんに付けた変なのの鍵だよ! 早く出せっ!」
 巳洞は、夏希が握るナイフの刃と、開かれたままのドアの傍にいる姫乃を、交互に見た。
 その口元に、初めて、嘲笑に似た歪みが浮かぶ。
「な、何がおかしいんだよ。ボク、本気だよっ!」
「……そうみたいだな」
 巳洞は、笑みを引っ込め、表情を固くした。
 そして、その右手を、ポケットに入れる。
「……」
 巳洞は、まるで自分に向けられている夏希の視線を意識しているかのように、ゆっくり、ゆっくり、ポケットから手を出した。
 その手が、銀色の小さな鍵を指先に摘まんでいる。
「姫ちゃん、これ?」
 夏希が、巳洞から視線を外さずに、言った。
 姫乃が玄関に上がり、夏希の横に並ぶ。
「え、えと……」
 姫乃が、何か言いかける。
 その時――巳洞の手から、鍵が、するりと床に落ちた。
 ちゃりん、という音が響くよりも早く、巳洞が動く。
「きゃっ!」
 巳洞は、一瞬だけ鍵に気を取られた夏希の右手首を、右手で握った。
 そのまま、一気に背中までひねり上げる。
「あ……くううっ!」
 ナイフを握った右手を強引に極められ、夏希は、玄関に這うような姿勢になった。かなりの力が込められているのか、夏希の腕は、ひねられながら真っ直ぐに伸びきっている。
「うっ……」
 夏希は、歯を食い縛りながら、痛みに耐えている。
 巳洞が、力の緩んだ夏希の手から、難なくナイフをもぎ取った。
「あ、あ、あ……」
 姫乃は、両手で口元を押さえ、がくがくと震えていた。
 片手一本で夏希を組み伏せた巳洞が、そんな姫乃に視線を移す。
「な……なっちゃんを放して! 放してください!」
 姫乃が、声をあげた。
「私は、どうなってもいいです……でも、なっちゃんには何もしないで! ひどいことしないでください!」
「今さら何を言ってんだ、お前」
 呆れたように、巳洞は言った。
「いいからなっちゃんを放してっ! お、大声あげますよっ!」
 いつになく鋭い口調で、姫乃が言う。巳洞は、再び、驚いたように目を見開いた。
「そいつは困るな……」
 そう言って、夏希の右手を放す。
 だが、すぐにその襟首を後から掴み、無理矢理に体を起こして、その首を腕で締め上げた。
「は、放してって言ってるじゃないですか……!」
「黙れ」
 巳洞は、左手に持ったナイフを、夏希の顔に当てた。
「静かにして、ドアを閉めて鍵をかけろ。さっさとしないとこいつの顔を切り刻むぜ」
「う……」
 姫乃が、絶句する。
「ひ、姫ちゃん、こんなの脅しだよ……だから、逃げて……人を呼んで……」
 首を巳洞の腕に締められながら、夏希が苦しげに言う。
「脅しだと思うか?」
 巳洞は、無造作に、夏希の左の目にナイフを近付けた。
「きゃ……!」
 よく研ぎ澄まされた刃物に対する本能的な恐怖に、夏希が悲鳴をあげかける。
「や、やめて……やめてください……!」
「だったら言われたとおりにしろ」
 泣き声をあげる姫乃に、巳洞が命じる。
 姫乃は、その細い肩を落とし、閉じかかっていたドアをしっかりと閉め、鍵をかけた。
「そこに落ちてる鍵を拾って、俺のポケットに入れろ」
「……」
 姫乃が、言われるとおりに、玄関のたたきに落ちた小さな鍵を拾い、巳洞のポケットに入れる。
「――ついてこい」
 巳洞は、姫乃にそう言ってから、夏希を引き摺って部屋に入った。
「く、くそ……放せ! 放せよっ……!」
 巳洞に容赦なく喉を圧迫されながら、夏希が言う。
「座れ」
 巳洞が、夏希に命じた。
 ナイフを間近に突きつけられ、夏希は従うしかない。悔しげに歯を食い縛りながら、部屋の中にあるパイプ椅子に、座る。
「姫乃。そのテーブルに手錠があるだろ。二つ持って来い」
「……はい」
 夏希は、姫乃が素直に返事をしたことより、巳洞が姫乃を馴れ馴れしく呼び捨てにしたことに、より衝撃を受けた。
 姫乃が、うつむきながら、重そうな金属製の手錠を二つ、持って来る。
「よし。じゃあ、お前が嵌めてやれ」
「えっ?」
 姫乃が、顔を上げて、驚きの声をあげた。
「お前がこのお友達に手錠をかけてやるんだよ。手と、あと足にもな」
「で……できません! そんなこと!」
「ふぅん」
 巳洞は、夏希のトレーナーの襟首を掴み、その生地を、何の前触れもなくナイフで一気に引き裂いた。
「い、いやぁーっ!」
 夏希が、悲鳴をあげる。
「やめてーっ! お、お願い! やめてください!」
 なおも夏希の服を切り裂こうとする巳洞に、姫乃が必死になって懇願する。
「なら、言われたとおりにしろ」
「う……ぐすっ……は、はい……」
 姫乃は、嗚咽を漏らしながら、手錠を手に、椅子に座る夏希の後に回り込んだ。
「ごめんね……ごめんね、なっちゃん……ごめん……ごめんなさい……」
「姫ちゃん……」
 涙声で何度も何度も謝る姫乃に、夏希は、両手を差し出した。
「いいよ……姫ちゃんが、悪いんじゃないから……」
 自らも泣きそうになりながら、夏希が、言う。
「ごめん、なさい……」
 姫乃は、ぽろぽろと涙をこぼしながら、夏希の両の手首に、後手に手錠を嵌めた。
「次は足だ。椅子の脚に、鎖をからめながら嵌めろ」
「う、うううっ……ひっく、うっ……うぐっ……ぐす……ごめ……なさい……」
 姫乃は、泣きながら、夏希の左右の足首を、無慈悲な拘束具で繋いだ。



 大きく傾いた日の光が、部屋の中をオレンジ色に染め上げている。
 その部屋に、奇妙な音が、響いていた。
「う、うう……んっ……ああぁ……」
 細い、辛そうな、姫乃の声。
 姫乃は、ブラウスの前を開かれ、ブラを取られた状態で、緊縛されていた。
 剥き出しになった白い乳房の上下に縄が走り、その端は後手に両手首を戒めている。
 下半身は、スカートとショーツを脱がされ、膝を畳んだ状態で、左右それぞれの脚を縛られている。そのため、姫乃は立ち上がることが出来ない。
「ひっ……んあああ……あう……はっ、はぁっ……あん……ああぁっ……」
 まるで、芋虫のように自由の利かない格好にされながら、姫乃は、喘ぎ声をあげ続けている。
 そして、その声に、無機質な音が重なって、部屋に響いていた。
 じじじじじじじじじじじじ……
 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ……
 虫の羽音に似ていなくも無いが、それよりもはるかに単純な震動音。
 それは、姫乃の胸と股間から響いていた。
 姫乃の幼い秘裂は、無残にも割り開かれ、禍々しい黒色のバイブレーターが、そこに挿入されていた。
 さらに、毒々しいピンク色のローターが、クリトリスと乳首に当たる箇所に、絆創膏で固定されている。
 それらには、強弱を調節するための目盛がついていない。全てリモコン式なのだ。
 姫乃の性感帯を残酷に責めあげるそれらの淫具のコントローラーは、全て、巳洞の手に握られていた。
「姫ちゃん……姫ちゃんっ……」
 夏希が、両方の手首と足首を銀色の手錠で戒められたまま、姫乃に呼びかけている。
 泣き疲れたその声は、しかし、姫乃の耳に入っているのかどうか疑わしい。
「あ、ああぁぁぁ……あう……んああああああっ……」
 姫乃が、拘束された体をよじり、高い声をあげる。
 強制的に高められた性感が、姫乃の幼い体を、無理矢理に絶頂に導こうとしているのだ。
「イキそうか?」
 巳洞が、優しいと言ってもいいくらいの口調で、姫乃に訊く。
「んっ……ひいいっ……イ、イきそう……姫乃、イきそうです……んああああっ!」
 巳洞の言葉をきちんと理解しているのかどうか、姫乃が、切羽詰った声で訴える。
「そうか」
 巳洞は、そう言って、手元のコントローラーを操作した。
「あ、あうっ……イヤあ……と、止まっちゃうゥ……ああぁぁぁ……」
 今まで休み無く姫乃を攻め続けていた小さな機械たちが、一斉に停止する。
「ああ、あううぅ……イヤぁ……イヤあぁ……」
 姫乃は、涙と涎で顔を濡らしながら、嗚咽を漏らした。
 これまでの間、姫乃は、絶頂寸前で、何度となくこうやってお預けを食らわされている。
 すでに、姫乃の瞳には理性はなく、可憐な唇もだらしなく半開きになったままだ。
「さて、そろそろこいつも追加するか」
 わざと二人の少女に聞こえるように言って、巳洞が、奇妙な道具を取り出す。
 シリコン製らしい、いくつかのビー玉くらいの球形が連なったような形をした、棒状のものだ。
 それに、たっぷりとローションを塗り、はぁはぁと苦しげに呼吸を整えている姫乃の傍らに膝をつく。
「力、抜けよ」
 巳洞のその言葉に、姫乃は、横向きに寝たまま、返事をすることすら出来ないような状態だ。
「やめろ……もうやめろよっ! それ以上、姫ちゃんにヘンなことするなっ!」
 夏希が、ガチャガチャと鎖を鳴らして、叫ぶ。
 だが、椅子は金具で床に固定されており、足首に嵌められた手錠の鎖は、椅子の足に絡みついている。夏希は、それ以上どうすることも出来ない。
 巳洞は、夏希の声を無視しながら、姫乃の尻肉を割り開いた。
「ん、うあ……」
 姫乃は、声をあげるだけで、抵抗する様子を見せない。
 巳洞が、そんな姫乃のココア色のすぼまりに、手に持った新たな淫具――アナルバイブを押し当てた。
「あ、あぐ……ひっ……ひいいいぃぃ……んっ」
 排泄器官に異物を侵入させられ、姫乃が、ひくひくと体を震わせる。
 だが、姫乃の慎ましやかな肛門は、アナルバイブをすっかり飲み込んでしまった。
「きちんと入ったじゃないか。……まあ、初心者用だからな」
 そう言いながら、巳洞が、バイブ本体と繋がった電池ボックスらしきものを、姫乃の脚を縛る縄に固定する。コントローラーは、やはりリモコン式らしい。
「今日のところは、この程度だ。これから少しずつ慣らしてやるよ」
「くそっ! このキチガイ! 姫ちゃんを放せぇーっ!」
 アナルまで犯された姫乃を目にし、新たな涙を溢れさせながら、嗄れかけた声で夏希が叫ぶ。
 それには答えず、巳洞は、ゆっくりと立ち上がり、リモコンのスイッチを次々と入れていった。
「あ……あひっ……ひぎっ……あ、ああああああ……」
 乳首やクリトリス、膣内とともに、肛門まで震動に晒され、姫乃が、再び声をあげる。
 その黒目がちな瞳は見開かれ、顔には驚きに似た表情が浮かんでいる。
「だ、だめェ……こんな……おしり、くるしい……んっ、あぐぅ……ひっ、ひあああぁぁぁ……」
「やめて……やめてよ……おねがいだから……おねがいだから、やめてあげてよォ……」
 姫乃の苦しげな喘ぎ声と、夏希の泣き声が、響く。
 が、巳洞は、その鋭い目で、くねくねと体を悶えさせる半裸の姫乃を見つめ続けていた。
「あ、あひっ……んくっ、うっ……くふっ……んあ……はっ、はあぁ……ひあああんっ……」
 しばらくして、姫乃の声に、変化が現れだした。
 未だ苦しげではあるが、その響きに、甘いものが混じり始めたのだ。
 その小さな体の中で、快感が肛虐のおぞましさを圧倒しつつあるのか、頬も紅潮し始めている。
「だんだん良くなってきたみたいだな」
「あ、あひ、ひいっ……んあ……あうっ……あっ、あああっ、あーっ……!」
 勃起した乳首とクリトリスにローターが細かい震動を送り込み、ひくひくと蠢く膣内でバイブがうねっている。
 引き伸ばされた姫乃の膣内からは熱い蜜が溢れ、それは、床をも濡らしていた。
「ああ、姫ちゃん……」
 次第に、機械によって与えられる快楽に体を支配されつつある姫乃の姿に、夏希が、ぽたぽたと熱い涙をこぼす。
「ひっ、ひあああっ! ああぁ……イ、イく……イくぅ……もうすぐ、姫乃……んあああああっ……」
「おっと、そいつはまだお預けだぜ」
 にやりと口元を歪め、巳洞が、バイブやローターの震動を弱めていく。
「あ、あああ、そんなぁ……おねがい、おねがいですぅ……続けて……コレ、止めないでェ……あああっ……」
 これまで、かれこれ一時間近くも絶頂直前で寸止めを食らっている姫乃が、絶望に満ちた声をあげる。
 が、無情にも、姫乃を苛む機械は、再び全て停止してしまった。
「イヤぁ……イ、イかせてぇ……おねがいです、姫乃をイかせてください……こ、このままだと、気が狂っちゃいます……うっ、ううっ、ひっく……うううぅぅ……」
 姫乃は、ひくひくと体を震わせながら、嗚咽を漏らした。
「やめて……もう、姫ちゃんを助けて……助けてあげてよォ……ぐすっ、うっ、うううっ……」
 夏希も、ぐずぐずと鼻を鳴らし、本格的な泣き声になる。
 巳洞は、初めて、そんな夏希に視線を移した。
「姫乃を、イかせてやろうか?」
「……え?」
 夏希が、涙に濡れた顔を上げる。
「お前が俺にお願いするんだったら、こいつをイかせてやる。だが、そうするまでは、姫乃はこのまま生殺しだ」
「バ、バカっ! 何言ってんだよっ!」
「ふうん」
 巳洞は、つまらなそうに言って、バイブとローターの震動を再開させた。
「あっ、ああっ、あっ、あーっ……!」
 ほとんど間をおかないその攻めに、静まりかけていた姫乃の性感が再燃する。
「あ、あああ……あぁン……っ! き、きもちイイ……お願い……このまま、このままシテぇ……姫乃をイかせてくださいィ……!」
 口からは涎を、淫裂からは愛液を垂らしながら、姫乃が言う。
 夏希は、姫乃のあからさまな懇願に、圧倒されていた。
 緊縛された姫乃の体がまるでエビのように動き、ギシギシと縄が鳴っている。
「んんっ……あああっ……す、すごい……お腹の中、じんじんしてっ……あ、もう……イキそう……ああっ、イキそうですッ……んああぁーっ……!」
「いや、それがお前の友達が駄目だって言うんでな」
 巳洞が、くつくつと癇に障る声で嗤いながら、震動を止めようとする。
「いやっ! いやぁーっ! おねがいっ! おねがいしますっ! 姫乃をイかせて……何でも……何でもしますからっ!」
 姫乃は、もし四肢が自由なら、巳洞の脚にすがり付きかねないほどの勢いで、叫ぶ。
「そんな、あああッ……! おねがいですゥ……おかしくなる……姫乃、イけなくておかしくなっちゃいますゥ……」
「ふうん、そりゃあ気の毒だな」
「あ、ああ……おねがい……イかせてェ……」
 はぁっ、はぁっ、と姫乃が呼吸を荒くしながら、哀願する。
「でも、お前の友達はそんなのイヤだってさ。さすがにお嬢様なだけあって潔癖症な――」
「ま、待ってっ!」
 夏希が、血を吐くような声で巳洞の言葉を遮った。
「もう、許してあげて……ひ、姫ちゃんを……イかせて、あげて……」
「そうか」
 巳洞は、短くそう返事をして――そして、一気に震動を最大にした。
「ひっ――ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
 びくんっ! と姫乃の体が弓なりに反り返る。
「あっ、あーっ! これっ! これですゥ! 姫乃、これが欲しかったのォ……あっ、イクっ! イっちゃいますゥ! イクうううううううううううううううーッ!」
 ぷしゃああああああっ!
 姫乃は、陸に揚げられた魚そのままに、その瑞々しい体を悶えさせながら、股間から大量の潮を吹いた。
「あ、ああ……姫ちゃん……」
 びゅーっ、びゅーっ、びゅーっ、と連続して透明な体液を迸らせる姫乃から、夏希は、目を逸らすことが出来ない。
「あ、あああああぁ、あー……あうっ、あっ、ひあああぁぁぁ……!」
 びくん、びくん、びくん、と立て続けに訪れる絶頂に体を痙攣させながら、姫乃は、涎と、汗と、潮と、愛液で、床を濡らし続けた。
 そして――ぶるぶるぶるっと、全身を震わせた後、がっくりと、糸の切れた操り人形のように、その体を弛緩させる。
 巳洞は、それを見てから、ようやく、バイブとローターの震動を止めた。
「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ……」
 姫乃が、荒い、しかしどこか満足げな息をついている。
 夏希も、同じように、呼吸を荒くしていた。
「……?」
 巳洞が、不審げに目を細める。
 そして、無造作に夏希に近付き、そのスカートを一気に捲り上げた。
「きゃ――イヤああああああっ!」
 夏希が、必死に体を倒して自らの腰の部分を隠そうとするのを、巳洞が押さえつける。
「お前……男か?」
「バ、バカぁっ! 見るな見るな見るなァーっ!」
「……」
 巳洞の視線の先で、夏希のペニスが、ショーツから頭を出している。
 それは、ついさっきまで隆々と勃起し、夏希のスカートを内側から押し上げていた。
 そのことが巳洞の不審を誘ったのだということに気付き、夏希が、悔し涙を浮かべる。
 夏希のペニスは、姫乃の痴態を見ているうちにたっぷりと腺液を漏らし、ぬらぬらと濡れ光っていた。
 巳洞は、しばし考えた末に、ポケットにしまっていた夏希のナイフを取り出し、畳まれていた刃を展開した。
 そして、それを夏希の股間に近付ける。
「ひっ……な、なにすんだよっ!」
「おとなしくしろ。暴れるとケガするぞ」
 そう言って、無造作に夏希のショーツを切り裂き、その股間を露わにしていく。
「や、やめろ、やめろよォ……やめろォ……うっ、ううううううっ……」
 忌まわしい暴力によって自分の秘密が露わにされることに、夏希は、がっくりとうなだれて、嗚咽を漏らした。
 巳洞は、そんな夏希のペニスと、その向こう側にあるクレヴァスを、驚きの視線で見つめている。
「そうか……男には見えなかったが……いるんだな、お前みたいな奴が」
「う、うるさいっ、バカぁ……あっち行けぇ……」
 そう言う夏希の声は、しかし、ひどく弱々しい。
 しばらくして、巳洞は、ニヤリと笑い、その表情のまま、姫乃の傍らに膝をついた。
 巳洞が、姫乃の頭を持ち上げ、ぴたぴたとその頬を叩く。
「う……んあ……」
 姫乃は、ぼんやりとした瞳を、巳洞に向けた。
「お前、知ってたのか?」
 そう言って、巳洞が、姫乃の顔を、夏希の方に向ける。
 夏希は、涙を流しながら、顔を背けている。
「な……なっちゃん……」
 自分が惚けている間に、夏希の秘密が曝露されたのだということに気付いた姫乃が、声を震わせる。
「おい、訊いてんだよ。お前、あいつがああいう体だって知ってたのか?」
「……はい」
 姫乃は、聞き取れないほど小さな声で、巳洞の問いに答えた。
 そのことで、巳洞は、この二人の少女の関係を、ある程度まで正確に認識したようだった。
「――フェラチオしてやれよ」
 巳洞が、姫乃に言った。
「え……?」
「おっ……お前、何言ってんだよ!」
 姫乃と夏希が、巳洞の言葉に声をあげる。
「なんだ、まだそういうイタズラはしてなかったのか? てっきりこいつのチンポでフェラの練習してたんじゃないかと思ったぜ」
「そ、そんなこと……キャッ!」
 抗議らしきものを言いかける姫乃を、巳洞は、上半身を緊縛した縄を引き摺ることで、まるで荷物のように運んだ。
 そして、姫乃の顔を、夏希の脚の間に押し付ける。
「あ……」
「なっちゃん……」
 椅子に拘束された夏希と、その足元に跪く形になった姫乃が、一瞬、視線を絡める。
「やってやれよ。お前がイクところを見て勃起してたチンポだぜ。そう思えば可愛いもんだろうが」
 巳洞が、口元を歪めたまま、姫乃に言う。
「ち、違う! ボクは、そんなんじゃ……!」
「姫乃、早くしろ」
 夏希の言葉を、巳洞の声が遮る。
「……なっちゃん……ごめんね」
 姫乃は、そう謝ってから、夏希のペニスに、ゆっくりと唇を近付けた。
「ああ、姫ちゃん……そんなこと……」
 夏希が、声を震わせながら、自らの醜悪な器官に顔を寄せる姫乃を見つめる。
 ちゅ、とかすかな音をたてて、姫乃の唇が、夏希のペニスに触れた。
 電気が流れたような快感に、夏希が、体を震わせる。
「ん……ちゅっ……ちゅ……ちゅっ……」
 姫乃は、夏希のペニスのあちこちに、軽い、触れるようなキスを繰り返した。
「あ、ああ……あ……」
 夏希が、声を漏らす。
 姫乃の唇による刺激だけで、夏希のペニスは、再び力を取り戻していた。
 褐色の肉棒が、だんだんと大きさを増していく。
 包皮の奥に引っ込んでいた鮮やかな赤色の亀頭が、次第に顔を出してくるのを、姫乃は、どこか熱っぽい目つきで見つめていた。
「……びっくりしないでね、なっちゃん」
「え? 姫ちゃん何するつもり……あうっ!」
 姫乃の注意にもかかわらず、夏希は、驚きの声をあげてしまった。
 姫乃が、その口に、勃起しかけの夏希のペニスを咥えたのだ。
 生温かな姫乃の口内の感触が、夏希のペニスを包み込む。
「あうっ……こ、こんなの……あ、あぁっ……!」
 夏希は、いとも呆気なく、ペニスを完全に勃起させてしまった。
「んっ……んちゅ……ちゅっ……ちゅむっ……」
 姫乃は、まるで聞くものの興奮を煽るかのように、湿った音をたてて、口内のペニスを軽く吸った。
 そして、控え目な動きで、亀頭から裏筋にかけて舌を這わせる。
「あ、あくっ……! んっ……きゃうっ……!」
 姫乃の口内での舌の動きを、目ではなくペニスの表面で知覚しながら、夏希は、声をあげた。
「あ、ダメ……ダメだよォ……あっ……!」
 ぴゅる、ぴゅる、と鈴口から腺液が姫乃の口の中に溢れ出ている。
 親友以上に大切に思っていた少女の口を、自分のペニスが汚している、という事実が、夏希を襲う快感をさらに危険で甘美なものにした。
「あっ、あーっ……姫ちゃん、こんな……あ、あうっ……んっ……ああぁっ……!」
 夏希が、切なげな喘ぎ声をあげながら、拘束された体をもじもじと動かす。
 姫乃は、そんな夏希の反応に、ますます口淫を激しくさせた。
 一度口を離し、てろてろとシャフト全体に舌を使ったかと思ううと、再び口の中に咥え込み、頭を前後させる。
 ぐぷっ、ぐぷっ、ぐぷっ、ぐぷっ……という卑猥な音が、姫乃の可憐な唇から漏れる。
「あっ、あうっ、きゃんっ、あああンっ!」
 “男の部分”を淫らに攻められながら、夏希は、かつてなかったほどに少女らしい悲鳴をあげていた。
 ペニス全体が熱を持ち、その根元で、どろどろとした欲望がわだかまり、渦巻いている。
「ダメ、ダメだよォ……姫ちゃん、ボク、もう……あんっ、ああぁンっ!」
 高まった性感が後戻りできないところまで来てしまったことに気付き、夏希が、切迫した声をあげる。
 だが、姫乃は、緊縛された体を健気に揺らし、口だけで親友の腰から生えたペニスを追い詰めていった。
「お、おねがいっ! もう、お口離して……ダメ! ダメだよォ! このままじゃ……あっ……ダメーっ!」
 夏希の言葉がようやく耳に届いたかのように、姫乃が、唇を離した。
 絶頂寸前でビクビクと震えているペニスと、愛らしいサクランボのような唇を、唾液の糸が繋いでいる。
「いいよ、なっちゃん」
「え……?」
「姫乃のお口に出して……だいじょうぶ、姫乃が、ぜんぶ飲むから……」
 そう言って、もう一度、ぱっくりと夏希のペニスを咥え直す。
 そして、姫乃は、かつて巳洞を絶頂に導いた時と同じように、口の中でペニスに舌を絡めながら、頭を前後に動かした。
 ただ、あの時と違うのは、今は自発的に唇でシャフトを扱いているということだ。
「あ、ダメ……ダメ……ダメ……ダメぇ……!」
 夏希が、泣きそうな声をあげる。
 その声を聞きながら、姫乃は、じゅばばばっ、と驚くほど下品な音をたてながら、夏希のペニスを吸引した。
 夏希の快感が、臨界点を突破する。
「あ……ああああああああああああああああああぁーっ!」
 ぶびゅううーっ!
 夏希のペニスから、精液が、勢いよく迸り出る。
「あーっ! あーっ! あーっ! あーっ!」
 夏希は、為す術もなく、姫乃の口の中にスペルマを放出し続けた。
 びゅくん、びゅくん、と律動しながら、夏希のペニスが、何度も何度も精を放ち続ける。
「んっ、んんっ……んぐ……んっ……んぶ……んんんっ……」
 姫乃が、くぐもった声をあげながら、健気にもその小さな口で夏希の射精を受け止める。
「んっ……んぐ……んくん……んくっ、んくっ、んくっ……」
 溢れ出た白濁液を、唇の端から、一筋、二筋と垂らしながらも、姫乃は、口の中に溜まった夏希の精液を、ゆっくりと飲み干していった。
「あ、ああ……ぁ……」
 夏希が、放心したように声をあげながら、自分の精液を嚥下していく姫乃の顔を見つめ続けている。
 窓の外で日が沈み、部屋は、薄暗い闇に支配されていった。
第八章へ

目次へ

MENU