第六章
その朝、姫乃は、ひどく頼りない足取りで、電車に乗り込んだ。
顔が、自分でも分かるくらいに、熱く火照っている。
今朝も、あの淫夢を見た。
闇の中から現れ出た無数の手が、自分の体をまさぐる夢だ。
髪の先から足の指まで、いたるところを撫で、擦り、嬲りながら、けしてあの場所にだけは触れようとしない指先。
そのことで、自らの内なる疼きをますます意識してしまう――そんな夢だ。
すでに、金曜日。
月曜の朝から数えて五日連続で、同じような夢を見ている。
だが、今朝は、ある一点が違っていた。
姫乃の体をまさぐり、もてあそぶ何本もの手。
その手が、どれも、指を六本備えているのを、夢の中で姫乃は見てしまったのである。
「はぁ……ぁ……」
体の内にこもった熱が、そのまま吐息になる。
と、いつも通り、背後に気配があった。
だんだんと人の密度が高くなる電車の中で、振り返る。
そこに、巳洞がいた。
どくん――と心臓が強い鼓動を刻み、それが、下半身の甘い疼きをさらに煽る。
貞操帯に覆われた姫乃の秘部は、このところ、常に熱をもっているようだった。
昨夜は、思い余ってバスルームで冷水をシャワーで浴びせたが、それでも、火照る部分には届かなかった。
もちろん、姫乃の細い指がそこに触れることは不可能だ。
自慰防止板、というあまりに即物的な名称を思うだけで、姫乃は、絶望を新たにした。
自分の一部であるのに、戒められ、触れることすらできないという事実が――被虐的な性感をさらに煽り、もどかしさをますます強くする。そんな、負の快楽の悪循環。
それはまるで、アリジゴクの中でもがけばもがくほどに深みに嵌まる、小さく憐れな蝶に似ていた。
日に日に強くなる自らの中の粘液質な炎は、けして自分では鎮めることができない。
それを鎮めることができるのは――
「巳洞、さん……」
姫乃は、熱に浮かされたような声と顔でそう言いながら、ぎゅっ、と巳洞のスーツを掴んだ。
「お、お願いです……何でも……何でもしますから……もう、助けて……」
半ば人目も忘れて、切迫した小声で訴える。
「……」
巳洞は、無言で、笑みのカタチに唇を歪めた。
何の特徴もないごく普通の顔の中で、その目だけが、どこか尋常でない光を湛えている。
すでに姫乃の中で何が起こっているのか見極めているような顔だ。
そんな巳洞を、姫乃は、大きな瞳を涙で潤ませ、すがるような視線で見つめている。
「次で、降りるぞ」
巳洞が、姫乃に囁いた。
姫乃は、巳洞の命じるままに次の駅で降り、反対側のホームの電車に乗った。
嘘のように空いた電車で、もと来た路線を戻る。
そして、姫乃の最寄り駅を過ぎ、その次の駅で降りた。
さも当然のように歩く巳洞の後を、姫乃は、わずかに息を弾ませながら、ついていった。
行き先は、考えるまでもない。
巳洞は、自分のマンションのドアを開け、中に姫乃を招き入れた。
「あぁ……。み、巳洞さん……」
部屋の中に入った姫乃が、耐えきれなくなったように、喘ぐような声を漏らした。
自分は、今、学校に行くこともせずに、男の住処にいる……。
いつもの姫乃であったら、そのことに激しい罪悪感を覚えていただろう。
だが、今の姫乃の頭を占めているのは、絶望的なまでに昏く甘やかな欲望だけだ。
「服、脱げよ」
巳洞の言葉にこっくりとうなずいて、姫乃は、ブラウスのボタンを外し始めた。
カーテンの透き間から、朝の光が漏れ、相変わらず乱雑に散らかった部屋の中に差し込んでいる。
そんな中、姫乃は、かすかに震える指で、着ているものを次々と脱ぎ捨てていった。
「……」
その間、巳洞は、携帯電話でどこかに電話をしていた。
が、何を言っているのか、姫乃には分からない。
姫乃が、靴下と貞操帯だけの姿になるのと、巳洞がポケットに携帯電話を戻すのは、ほぼ同時だった。
巳洞が、姫乃の裸体を見つめる。
淫らな欲望にほんのりと肌を染める姫乃は、ギリシャの伝説に登場する、少女の姿をした淫蕩な妖精を思わせた。
ほっそりとしていながら、骨が細いせいか、少しも固そうには感じられない、姫乃の体。
その、控えめながら優美な曲線を描く腰に比べれば、薄い金属で形作られた貞操帯が、ひどく無骨な責め具に見える。
「それも脱げ」
「……はい」
巳洞が、靴下のことを言っているのだと気付いて、姫乃は小さく肯いた。
が、貞操帯で腰を戒められた状態では、立ったまま靴下を脱ぐのが難しい。
それでもどうにか靴下を脱ごうとする姫乃の体が、ゆらりと倒れかかる。
「きゃん」
可愛い悲鳴をあげる姫乃の華奢な体を、巳洞が抱きとめた。
「あ……」
姫乃の頬が、ますます赤く染まる。
姫乃は、巳洞に横から支えられるような状態で紺色の靴下を脱ぎ、そして、今更のように胸を両手で隠した。
「まず、風呂に入るぜ」
「はい……」
貞操帯以外は全裸になった姫乃を、巳洞がユニットバスへと導く。
そして、巳洞は、脱衣場で服を脱いだ。
股間で、グロテスクな肉棒が、すでに上を向きかけている。
「そこに膝をつけよ」
思わずちらちらとソレを見てしまっている姫乃に、巳洞が言った。
「え……?」
「そこに膝ついて、フェラチオすんだよ」
「ふぇら……なんですか?」
自分の知らない言葉に小首を傾げながら、それでも姫乃は脱衣場に跪いた。
これまで、満員の電車の中で、両手で愛撫し、絶頂に導いてきた牡の器官が、すぐ目の前にある。
「お前、本当に何も知らねえんだな」
「ごめんなさい……」
姫乃は、思わず目を伏せた。
「口で、俺のチンポを気持ちよくするんだ。それをフェラチオって言うんだよ」
「え……? お、お口で……ですか?」
姫乃が、かすかに目を見開く。
「ああ。俺をイかせたら、とりあえず貞操帯は外してやるよ」
「……」
んくっ、と姫乃が口内の唾液を飲み込む。
「……どうした? とてもそんなことはできねえか?」
動きを止めた姫乃を嬲るように、巳洞が言う。
「そ、そんなこと、ないです……」
姫乃は、何かを振り絞るように言った。
「でも……やり方が……」
その言葉に、巳洞が、一瞬笑みを引っ込めた後、またにやりと笑う。
「じゃあ、まず、先っぽを舐めろ」
「はい……こう、ですか……?」
ほとんど逡巡することなく、姫乃は、ピンク色の舌を突き出し、ちろりと先端で亀頭を舐めた。
「もっと舌全体で、アイスでも舐めるようにやってみろ」
「はい……」
てろ、てろ、てろ、てろ……。
姫乃の舌がぎこちなく動き、巳洞のペニスの先端を舐め上げる。
もどかしいような感触よりも、その視覚的なイメージに、巳洞は、ペニスを完全に勃起させた。
「あ……すごい……」
目の前で硬度と容積を増していく赤黒い肉棒に、姫乃は、驚いたような声をあげた。
「続けろ」
「は、はい……」
姫乃は、肯いて、再び舌を突き出した。
てろ、てろ、てろ、てろ……。
ぴちゅっ、ちゅぷっ、とかすかな音をたてて、姫乃の唾液が弾ける。
すっかり大きくなった巳洞のペニスに、伸ばした指の先端を添え、姫乃は、一心に舌を使った。
「ん……そうだ……その、くびれのところを舐めろ……」
「はい……ここですね……はっ、はぁ、はふ……てろ、てろ、てろ……」
「いいぞ……次は、裏筋だ。サオの裏側を舐めたり、唇で吸ったりするんだ」
「んぷ……は、はい……んっ……んんん……ちゅっ、ちゅぶっ、ちゅうっ……」
顔に押し付けられる、熱いペニスの感触
それを嫌がる素振りなど全く示す事なく、姫乃は、巳洞が言うとおりに肉棒に舌を這わせ、唇を押し当てた。
実際、熱い欲情に支配された姫乃は、巳洞のペニスにも、この行為にも、ほとんど嫌悪感を抱いていなかった。
それどころか、強烈な牡の匂いにセックスの予感を感じ、胸を高鳴らせてしまってさえいる。
「ちゅ、ちゅぶ……てろ……てろっ……ちゅ……ちゅぶっ、んっ、んちゅっ……」
褐色のペニスが、姫乃の唾液に濡れていく。
姫乃は、ますます顔を上気させながら、巳洞の排尿器官に口で奉仕し続けた。
その舌や唇の動きはまだ拙く、ぎこちないが、それがかえって巳洞の興奮を高めている。
そして、ますます熱くたぎっていくペニスの浅ましい反応に、姫乃自身も、もじもじと貞操帯に戒められたヒップを動かしてしまっていた。
「次は、咥えろ。口の中に入れるんだ」
「はい……」
「歯を立てるなよ」
「はい――が、がんばります」
思わず、といった感じでそんなことを言って、姫乃は、唇を亀頭に寄せた。
そして、あーん、と大きく口を開け、巳洞のペニスを口の中に入れていく。
「う、お……」
少しは抵抗するかと思っていた姫乃のその積極性に、巳洞は、思わず声を上げてしまっていた。
そんなことなど知らぬ気に、姫乃は、精一杯に、ペニスを口の中に収めていく。
それでも、姫乃の小さな口の中に入ったのは、巳洞のペニスの半分程度だ。
「ん、んぐ、んむ……ん、んむ、あむ……」
ふーっ、ふーっ、と鼻で息をしながら、姫乃が、問いかけるような目で巳洞を見上げる。
その目許は赤く染まり、瞳には媚びるような色さえあった。
姫乃の中で熱く燃えている情欲の炎が、その黒く澄んだ瞳から透けて見えるようだ。
「……」
巳洞は、姫乃の頭に両手を置いた。
そして、その手を、ゆっくりと前後に動かす。
「んっ、んぶっ、んぐ……んんんんンッ!」
口の中をゴツゴツとしたシャフトがこする感触に、姫乃は、思わずくぐもった悲鳴をあげた。
反射的に、巳洞の太腿に手を置く。
が、姫乃は、巳洞を押しのけようとするような動きを見せる事なく、されるがままに頭を前後に動かした。
長く、癖の無い黒い髪が、ゆらゆらと姫乃の背中を撫でるように踊る。
(私……私……お口で、されてる……)
姫乃は、頭の芯がさらに熱くなるのを感じながら、思った。
(私、お口でセックスされちゃってる……。フェラチオって、お口でするセックスなんだ……!)
そう思った瞬間、ぐらぐらと揺すられている頭の中で、何かが沸点に達した。
なぜか、口の中にペニスを挿入している男にもっと悦んでもらいたくなって、夢中になって口内の竿に舌を絡める。
「う、くっ……」
巳洞が声を漏らし、そしてますます激しく姫乃の頭を動かしたところを見ると、今自分がやったそれは、正解のように思えた。
「んっ、んふぅ……うン……うぐ……むぐ……あむ……ちゅぶ……ふぅン……」
苦しげな、しかしどこか陶酔したような声を漏らしながら、姫乃は、必死に舌を動かす。
「くそ……お前、どこでこんな……っ!」
巳洞が、慌てたような声をあげる。
姫乃には、そのことすら、きちんと分かっていない。
「そ、そうだ……もっと舌を動かせ! それから、チンポを吸い上げるんだ!」
それでも、巳洞の命令にだけは、煮えたぎった頭は素直に反応した。
「んっ、んぐっ、んぶ……はぶ、んんん……んちゅっ、じゅっ、じゅるるっ……」
口内を前後に蹂躙する逞しい牡の器官に、健気に舌を絡めながら、唾液と腺液の混じった体液を啜り上げる。
熱く麻痺した姫乃の脳はそれを不快と思わず、ただただ激しい性の刺激として捕らえていた。
「んっ、んぐっ、んぶ、うっ……じゅっ、じゅぶっ……んうっ、んううぅーっ……!」
唾液とともに、苦しげな声と下品な音を漏らしながら、巳洞の言い付けどおりに、ペニスに口で奉仕する姫乃。
その唇と舌は、巳洞がうろたえるほどの快楽を肉棒にもたらしていた。
「くっ……だ、出すぞ! 飲め! 飲めよっ!」
――びゅるるるるるるっ!
巳洞が、姫乃の喉奥目がけ、大量に射精する。
それが、予想外の快感とともに自らを絶頂に追い込んだ少女への報酬だった。
ぶびゅっ! びゅっ! びゅびゅびゅっ!
「うっ! んぐっ! んぶうっ! んんンーッ!」
喉を直撃するスペルマの勢いと量に、姫乃は悲鳴をあげた。
力を失った巳洞の手から逃れた頭がうつむき、口からどろどろとした白濁液を吐き出す。
「えっ、えく……げほっ……う……けほっ、けほっ……んえぇ……」
目から涙を、唇から嗚咽を漏らす、姫乃。
巳洞が、そんな彼女の艶やかな髪を、茫然と見下ろす。
「お、お前……こんなことで、調子に乗るなよ……」
思わず主導権を握られてしまった巳洞が、はぁっ、はぁっ、と息を荒げながら、言った。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい……」
苦しげに咳き込みながら、姫乃が、訳の分からないまま謝る。
そんな姿に、巳洞は、ようやく理性らしきものを取り戻した。
「あ、あの……お雑巾、どこですか……?」
「なに?」
「だ、だから、床が……ごめんなさい……私が、きちんと飲まなかったから……」
「……いや、気にするな、んなこと」
さすがに大人気ないことを言ったと反省したのか、巳洞は、姫乃を立たせ、その髪をかつてないほどに優しく撫でた。
「あ、ああぁ……ん」
暴虐の後の優しい愛撫に、姫乃は、ほっとしたような声をあげた。
もちろん、それとて、巳洞の計算の内なのだろう。
「……よかったぜ、お前のフェラチオ」
そう褒められて、姫乃は、奇妙な嬉しさに胸を温かくさせてしまった。
姫乃は、狭い風呂場で、貞操帯の鍵を外された。
そんな姫乃を後ろから抱きすくめるようにしながら、巳洞が、左手でシャワーヘッドを握る。
そして、ほぼ一週間ぶりに露わになった姫乃の股間に、温かな水流を当てた。
「ひゃう……っ」
姫乃は、その感覚に身をすくませた。
あれほど欲しいと思っていた秘裂への刺激が、今、巳洞の手によってもたらされている。
姫乃は、背中を巳洞の体に押し付けるようにしながら、うねうねと体を悶えせた。
「あっ、ああぁっ……あっ、あっ、あっ、あーっ……!」
巳洞が、次第に高くなる姫乃の嬌声を聞きながら、左手でシャワーのお湯を当て、そして、右手の指でクレヴァスをなぞるように洗う。
それだけで、姫乃は、軽く達しそうになっていた。
しかし――
「えっ……?」
姫乃の高ぶりを見透かしたように、巳洞は、手の動きを中断し、シャワーを止めた。
「あ、あの……あのっ……」
姫乃が、振り返り、すがるような目で巳洞を見る。
「ん、どうした? さすがにもうキレイになったろ?」
もじもじ、と言うより、くねくねと動く姫乃の腰を後ろから押さえながら、巳洞が言う。
「そん、な……」
「さて、じゃあ、もう一度、貞操帯を付けてもらおうか」
「あああああっ……」
度重なる快楽と虐待に揺さぶられ続けていた心が、直接、絶望の声をあげる。
「待って……待ってください……おねがい……」
「ん、どうした? 約束どおり貞操帯は外してやったし、その上きちんと洗ってやっただろ? まだこれ以上何かしてほしいのかよ?」
そう言いながら、巳洞は、とろとろと蜜を溢れさせている姫乃のその部分に手を重ね、淡い快感を与え続けてた。
もはや、姫乃の頭は、熱くねっとりとした何かで飽和状態になっている。
「おねがいです……おねがいです……イかせて……イかせてください……」
絶頂寸前でじりじりと神経を焼かれながら、姫乃は、そう口走っていた。
もちろん、自分が何を言っているのか、きちんと分かってはいない。
幼い少女の理性は、圧倒的に高まった性欲の前に、とっくに蒸発してしまっていた。
「――じゃあ、お前、俺の奴隷になるか?」
巳洞が、姫乃の耳に口を寄せ、言った。
「どれ、い……?」
「そうだ。これからずっと、俺の命令に心から従うか?」
巳洞のその交換条件に、姫乃は、ほんの一瞬だけ、戸惑った。
逡巡ではない。
なぜそんなこと確認するのか、という淡い疑問だけを、姫乃は感じていた。
なぜなら――自分は、すでに巳洞の言いなりになっているのだから――
「は、はい……姫乃は、ドレイです……巳洞さんのドレイですっ……!」
少女は、ほとんど無意識にそう叫んでいた。
とっくにそうなっていた自分の立場が、言葉によってカタチを与えられ、確かなものになる。
そのことに、姫乃は、安堵に似た感情すら覚えていた。
「姫乃、何でも言うこと聞きます……だから……ああっ、お、おねがいですっ! イかせて! イかせてくださいっ! ドレイの姫乃をイかせてくださいっ!」
いたいけな少女のあられもない訴えに、巳洞の唇が笑みを浮かべる。
「……いいぜ」
そう言って、巳洞が、両手で捕まえていた姫乃の幼げな腰を引き寄せた。
もちろん、姫乃は逆らわない。
熱い粘膜に、すっかり固くなった亀頭が触れた。
「あ……!」
姫乃が、それ以上声をあげる間もなく、一気にペニスが膣内に侵入した。
雁首が粘膜を擦り上げ、先端が最奥を叩く。
「――あああああああああああああああああああああああああああああア〜ッ!」
姫乃は、絶叫した。
ペニスに一瞬だけ遅れて、強烈な快感が下から上に姫乃の全身を貫く。
姫乃は、ただの一突きで、呆気なく達してしまっていた。
「あ、はあぁ……ひあ……あ、ああぁ……」
快楽一色に染め上げられていた感覚が元に戻ると、巳洞は、いつのまにかバスタブの縁に腰を下ろしていた。
姫乃は、ヒップを後ろに突き出すような格好で、背後から貫かれたままである。
腰を捕まえていた巳洞の手が、今は、左右の乳房に重ねられている。
どうやら、数秒の間、意識が飛んでいたらしい。
「入れられただけでイったな?」
「は、はひィ……」
巳洞の嗤うような問いに、姫乃は、まともに返事をすることができない。
絶頂の余韻で、全身が敏感になっている。
それを見越したように、巳洞は、姫乃の乳房をむにむにと揉み始めた。
「はっ、はわっ、あっ、ああぁン……!」
乳房から、温かな蜜のように全身に広がる快感に、姫乃がうねうねと体をくねらせる。
もちろん、その力は弱く、抵抗とさえ言えない。
そして、姫乃自身も、その愛撫に抵抗するようなつもりなど無かった。
「少しは大きくなってきたみてえだな」
たぷたぷと下から持ち上げるように乳房を弄びながら、巳洞が言う。
「こうやって、刺激すればするほど、薬は効いてくるらしいぜ? あとでまた注射してやるからな」
「はンっ、はあぁ……んあぁ……?」
「ふっ、言葉が頭に届いてねえみてえだな」
そう言ってから、巳洞は、後ろから姫乃の首筋に舌を這わせた。
「ひゃっ、ひぁうううン」
姫乃が、くすぐったそうな声を上げて、体をすくめる。
「はっ、はあああぁぁ……ああぁン……っ」
「気持ちいいか?」
「ひっ、ひぃン……い、いいです……いいですゥ……」
姫乃は、甘えるような声で、言った。
「お前だけヨガってても駄目だろ? 俺も気持ち良くするんだよ」
「あっ、ふわぁンっ! ご、ごめんなさいィ……!」
きゅっ、と乳首をつままれ、姫乃が体を硬直させる。
「尻、動かせよ。お前のオマンコで俺のを扱くんだ」
「は、はい……。んっ、あうン、あン……こ、こうですか……?」
背面座位の形でペニスを挿入された姫乃が、胸を嬲る巳洞の両腕にすがるようにして体を支えながら、くにくにと腰を動かす。
始めはぎこちなかったその動きは、だんだんとスムーズになっていった。
ぷりん、ぷりん、と白いヒップが躍るたびに、姫乃の靡粘膜が、巳洞のペニスを絞り上げる。
「んっ、いいぞ……もっと腰を大きく動かせ」
「は、はいィ……んっ、んうン、うン……あぁンっ!」
「おい、もっと動かせって言ってるだろ? どうして止まるんだよ?」
「ひぁン! ご、ごめんなさいっ……! で、でも、きもちよくてェ……ああぁン!」
はぁっ、はぁっ、と熱い息を吐きながら、姫乃は必死に腰を動かし続ける。
「あぁんっ……ダ、ダメぇ……ダメです……また、またきもちよくなって……私……ああぁンっ!」
「おいおい、お前、俺の奴隷なんだぞ? 自分がよくなるより、俺を優先させろよな」
「ああぁン……でも、でもォ……」
姫乃が、後ろを振り返り、恨みっぽい目で巳洞を見る。
黒い瞳はキラキラと光り、半開きになった唇はまるで濡れた花びらのようだ。
「奴隷が口答えするのか? だったら、もうやめにするぞ?」
巳洞が、姫乃の体を離そうとする。
「やっ! やあぁン! 抜かないでっ! オチンチン抜かないでくださいっ!」
姫乃が、必死になって叫ぶ。
自分が普段ならとても口にできないような言葉を口走ったことにも、気付いていない様子だ。
「お、おねがいです……続けてェ……このまま、姫乃とセックスしてください!」
姫乃は、自分の腰を抱える巳洞の腕にすがるようにして、言った。
「だったら、きちんと自分で動けよ」
「ハイ……だから、だからやめないで……おねがいですゥ……」
「くくくっ……分かったよ」
姫乃の懇願を聞き入れる形で、巳洞が手を放す。
「あぁ……巳洞さん……わたし、いっしょうけんめいやりますから……あン、あぅ、あぅン……」
今度は、巳洞の太腿に手を置いて、姫乃は体を動かした。
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と卑猥な音を立てて、ふてぶてしい外観のシャフトが、可憐なクレヴァスを出入りする。
「はっ、はわぁ……あン……あ、ああぁ……」
姫乃が、あからさまな喘ぎをあげながら、ヒップを揺する。
すっかり熱く蕩けながらも、きゅうきゅうと肉棒に絡み付く姫乃の秘肉の感触に、巳洞はますますペニスを固くした。
「あ、あん……やぁン……もう……ああぁン、あン、ああァ……っ」
次第に姫乃の声が切羽詰まったものになる。
「ど、どうしよう……わたし、また……あぁン……だめ、だめェ……!」
このままでは、また巳洞を満足させないうちに、絶頂を迎えてしまう。
姫乃は、必死になって、腰を小刻みに動かした。
「あっ、あぅ、あん、あん、あん、あん、あくっ、あうううっ!」
が、それは言わば諸刃の剣だ。
巳洞を追い詰めるはずだった動きは、逆に姫乃自身を追い詰め、後戻りのできないところにまで追い込んでいく。
「あ……あっ、ダメっ! もうっ! もうダメですっ! んあっ! ゆるしてっ! ゆるしてくださいっ!」
姫乃は、泣きそうな声で、そう訴えた。
そんな姫乃に、巳洞が、後ろから新たな動きを送り込む。
「んわああああああンッ!」
姫乃は、再び陥落した。
巳洞が、前に逃げそうになる体を両腕で捕らえ、両手で激しく乳房を揉みしだく。
「あっ! あーっ! イクっ! またっ! またイキますっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
びくびくびくっ、と姫乃の白く小さな体が震えた。
「ごめんなさいッ! あッ! イクっ! イクっ! イクううううぅ〜ッ!」
ぷしゃあああああーっ!
姫乃は、絶頂とともに、激しい勢いで透明な体液を迸らせていた。
「あ、あああ、あ、ああああああぁ〜ッ!」
自分が何かを漏らしている、ということすら気付かず、姫乃は立て続けに絶頂を味わった。
快感の小爆発が、何度も何度も姫乃を襲う。
「んあ、ああ……あン……んはァ……あぁ……」
そして、姫乃は、巳洞の腕の中で、ぐったりと弛緩してしまった。
巳洞が、満足げな笑みを浮かべながら、姫乃のほっそりとした脚を下から抱えた。
「んあ……ン」
姫乃は、されるがままだ。
幼女が屋外で父親に放尿させられるような格好で、姫乃の華奢な体が抱え上げられる。
愛液に濡れた肉幹は、姫乃の可憐な花園を押し広げるように貫いたままだ。
姫乃と繋がったまま、巳洞は、バスルームから出た。
「あ……あう……あうん……あう……あうぅ……」
巳洞が歩を進めるごとに、姫乃の中心に突き刺さった肉の杭が、靡肉を抉る。
姫乃は、ほとんど意識の無いまま、かくん、かくん、と壊れた人形のように頭を揺らした。
しっとりと水を含んだ黒髪が乱れ、汗と水滴に濡れた白い裸体に纏わり付く。
「んあああっ……」
姫乃は、ベッドの上に四つん這いにさせられた。
もちろん、そのいたいけな性器は、巳洞の肉棒をしっかりと咥え込まされたままだ。
巳洞が、姫乃の腰を抱え直す。
「ふゎああぁ……ン」
状態をシーツの上に突っ伏し、ヒップだけを高く掲げた姿勢で、姫乃は媚びるような鳴き声をあげた。
次第に、その瞳に、意識の光が戻ってきているように見える。
「ごめ……なさい……わたし……また、イっちゃいました……」
うわごとのように、姫乃が言った。
「いいさ。今日のところは、たっぷりイキ狂いな」
「ああぁン……み、巳洞さん……」
巳洞の、からかうような卑猥な言葉に、姫乃が甘えた声をあげる。
「ご主人様だ」
「……え?」
「お前は、俺の奴隷なんだろ? だったら、俺のことはご主人様って呼べ」
「は、はい……ご主人様ぁ……」
日常の中ではけして使われないであろうその言葉で、姫乃は、うっとりと巳洞のことを呼んだ。
「まだ欲しいか?」
「は、はい……ほしいです……ご主人様に、もっとセックスしてほしいです……」
恍惚とした表情で、姫乃が言う。
「――可愛いな、お前」
「え……? あ、あああンッ!」
聞き返そうとする姫乃は、一瞬のうちに頭の中を真っ白にされてしまった。
直前の自らの言葉を打ち消すように、巳洞が、激しく腰を使い始めたのだ。
ついさっき絶頂を極めたばかりの体は、ひとたまりもない。
「あーッ! あーッ! あーッ! あーッ! あーッ!」
姫乃は、高い声で叫びながら、白い指でシーツをかきむしった。
開きっぱなしになった唇から、涎がこぼれている。
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん……!
巳洞の腰が姫乃のヒップを打つ音が、嬌声と混じり合って部屋に響く。
「ひあああッ! いっ! イクっ! またっ! またイきますっ! ンあああっ! イキますっ! イキますっ! イキますっ! あーっ! イクぅーッ!」
姫乃は、幼い声で、自らが連続して絶頂に至っていることを訴えた。
巳洞の容赦のないピストンとグラインドによって膣内は撹拌され、愛液がしぶきとなって漏れ出ている。
まるで失禁でもしてしまったかのようにシーツを濡らしながら、姫乃は、髪を振り乱して悶え続ける。
恐れを覚えるほどの快楽が、その恐怖と不安を暴風のように吹き飛ばしてしまう。
「ンあああああっ! ひあああっ! も、もうっ! もう私っ! あッ! ンあああっ! あああ――ああああああああアアアアアアアアっ!」
恐れも、不安も、かつてあれほど強かった罪悪感も無く、ただかすかな驚きだけが、純白の快楽に彩りを加えている。
姫乃は、同年代の少女がけして味わうことがないであろう快楽に、ただただ圧倒されていた。
「くうっ……だ、出すぞっ!」
巳洞が、短くそう言った。
蠕動し、痙攣する姫乃の膣肉が、ペニスを搾り上げ、射精をねだっている。
「くだ、さい……ください……っ! セイエキくださいっ! ご主人様のセイエキくださいいィっ!」
彼女を溺愛する父親が聞いたら卒倒しそうなことを、サクランボのような唇で喚く姫乃。
が、今の姫乃は、煮えたぎるほどに熱い体液が自らを満たすことを、本心から願っていた。
「んっ……うああああああっ!」
びゅうううううううううっ!
獣のような声とともに、巳洞が、姫乃の子宮目がけ大量のスペルマを迸らせた。
「あああッ! ご、ご主人様っ! ご主人様あァ〜っ!」
姫乃は、覚えたばかりのその言葉で、自らが最高の場所にまで上り詰めたことを告げた。
びゅくんっ、びゅくんっ、びゅくんっ、びゅくんっ……!
体の中に、巳洞の精液が、何度も何度も注ぎ込まれる。
男の欲望を最後の一滴まで受け止めたことに、少女は、深い満足すら覚えていた。
(私……おかしくなっちゃったんだ……)
温かくねっとりとした闇に沈み込みながら、姫乃は思った。
(だって……こんなに、この人のことを……)
かすかに、胸が、きゅんっ、となるのを感じる。
(ごしゅじん、さま……)
致命的に誤っていながら、なおその誤りすら飲み込んでしまうような心地よさに、姫乃は、その未成熟な心と体を委ねきってしまった。
それから先、姫乃は、まさに夢うつつだった。
ぼんやりとした意識のまま、自分と巳洞の体液でどろどろに汚れたペニスを、丁寧に舐めしゃぶって綺麗にした。
そして、乳房にあの不思議な注射を打たれ、シャワーを浴びた後、貞操帯を装着し直した。
家に帰る間、姫乃の足取りは、まるで雲の上を歩くように頼りなかった。
翌日――姫乃の無断欠席は、特に問題になっていなかった。
姫乃の兄を名乗る人物から、連絡があったのだと言う。
もうお兄様に心配をかけてはいけませんよ、と、人の好い担任教師は姫乃に言った。
巳洞が、自分の兄を名乗ったのだろう。
そのことに、どこか複雑な情感を覚えながらも、正直、姫乃はほっとしていた。
そして、それとは別の次元で、姫乃は、奇妙におだやかな気持ちになっていた。
ひりつくような焦燥感や切迫感が今は無く、ただ、一定の高みまで達した性欲に身を委ねている。
溺れるかと思ってもがいていた温かな海の中で、足が付き、ゆったりと水にひたることができるようになった気分だ。
もちろん、何かの機会があれば、自分を包むこの情欲はすぐに沸騰してしまうだろう。
それでも、姫乃は、自らの立場にどこか安心していた。
巳洞の奴隷という役割に――
「――姫ちゃんってば!」
「ふえっ? な、なに?」
はっ、と姫乃は顔をあげた。
目の前に夏希が立っていることに、ようやく気付く。
全神経の何割かが、淡い性の刺激で占められているせいか、今日の姫乃は、いつにも増してぼんやりとしていた。
「いっしょに、帰ろ」
「う、うん……そだね」
すでに、教室にはほとんど生徒はいない。姫乃は、カバンを持って立ち上がった。
その何げない動作を、夏希は、じっと見つめている。
どこがと言うことはできないが、今日の姫乃は、いつもと雰囲気が違っているように、夏希には見えた。
ここ一週間はずっとそうだったのだが、動作が、いつも以上におとなしく、さらに言うならおしとやかなのだ。
そのことに、夏希は、まるで置いてけぼりにされたような気分になっていた。
あの日、強引に押し倒してしまった引け目から、夏希は姫乃に対して強く踏み込めないでいる。
しかし――それも、そろそろ限界だった。
「あの、姫ちゃん」
駅までの帰り道の途中、公園の中の緑道を歩きながら、夏希は姫乃に声をかけた。
「え、なあに?」
「今日は、午後、空いてるの?」
「えっ……? ううん、今日は、ちょっと用事があるの」
「先週の土曜日もそうだったよね?」
夏希は、少し拗ねたような口調になる。
「ごめんね、夏希ちゃん……」
夏希の気持ちを敏感に察した姫乃は、真面目な口調で言った。
やはり、あの日、土壇場で夏希との約束を破ったことを、姫乃自身も気にしているのだ。
沈黙が、重い。
「ん……え、えーっとね、じゃあ、ボクにキスしてくれたら、許してあげる」
夏希は、ぎくしゃくとした空気を冗談に紛らわせようと、そんなことを言った。
「ほんとに、それでいいの?」
姫乃は、ますます真面目な口調になった。
夏希が、笑みを浮かべかけた表情のまま、固まってしまう。
「じゃあ、えっと……ここで、いい?」
周囲に人がいないのを確認してから、姫乃は、夏希に顔を近付けた。
その柔らかそうな頬が、ぽーっと染まっている。
「え、えと、姫ちゃん?」
夏希は、完全に予想外のこの展開に、何も言うことができなくなってしまっていた。
もちろん、冗談だよ、と言って笑いかければ、姫乃は顔を真っ赤にしながらも困ったような笑顔を返してくれて――
「なっちゃん……いくよ……」
ちゅむっ……。
「んんっ!」
驚きに目を見開く夏希の唇に、姫乃が、唇を重ねた。
触れ合わすだけの、真似事のようなキスではない。柔らかな唇と唇が、ぴったりと、隙間なく重なり合う、本当のキスだ。
「ん……んっ……ん……」
木漏れ日の中の、理不尽なまでに突然現出した、甘く、柔らかい時間。
あらゆる意味で――夢の中の出来事のようだ。
夏希は、あまりのことに何も考えられない。
ただ、その股間のものだけが――スカートの中でかつてないほどに勃起し、射精寸前にまで追い詰められていた。