隷嬢二人



第二章



 姫乃が連れてこられたのは、男子トイレの個室だった。
 駅の端にあるため、滅多に人がこない場所だ。
 そこで姫乃は、初めて、男の顔をじっくりと見た。
 中肉中背というのだろうか。ダークグレーのスーツを着たその体格には、何の特徴も無い。髭を剃り、髪をやや短めに刈ったその顔も、同様である。普通の、どこにでもいる勤め人の顔だ。
 ただ、その目付きだけが、少し険がある。
 男性の知り合いというものがほとんどいない姫乃には、この男が、二十代なのか、三十代なのか、それとも四十代なのかさえ、よく分からなかった。
(お父様よりは若いけど……でも……)
 会社を経営する父親が姫乃を授かったのは、かなり遅くになってからである。そのため、姫乃のその目算は、男の年齢を知るのに何の意味もなさなかった。
「あ、あの……」
 姫乃は、震える声で、男に声をかけた。
 姫乃の脳を満たしていた絶頂の余韻は、今は、潮のように引いている。
 だが、依然として、現実感は希薄だった。
「どうした?」
 男が、訊く。
「こ……ここ……男の人の、お手洗いじゃないですか?」
「そうだよ」
 姫乃のどこかずれた問いに、男が、こともなげに答える。
「あのう……私……」
「ん? 今さら帰るとか言い出すつもりか?」
「……」
 姫乃は、きゅっ、と小さなこぶしを握った。
 さっきは、どうかしてたのだと、思う。
 見知らぬ男の――痴漢の言いなりになって、こんなところに来てしまうなんて。
 まるで悪い夢の中にいるような気がする。
 だが、そんな姫乃の思惑とは別に、彼女の下腹部には、何かを期待するような甘い疼きの名残があった。
 先ほど、何も分からないうちに経験したあの感覚を、もう一度味わいたいと、少女の中の最も淫らな部分が、望んでいる。
 姫乃は、それを振り払うようにかぶりを振ってから、言った。
「お願いです。あの、私を帰してください」
「おやおや……ようやく正気付いたって感じか?」
 男の言葉の、自分を揶揄するような響きに、姫乃は、少し言葉を詰まらせる。
「い……今だったら……警察とかには、何も言いません。本当です。信じてください」
 男は、姫乃の幼稚な交換条件に、くつくつと笑った。
「お前、本当に世間知らずだなあ」
「……」
 自分でも気にしていることをストレートに指摘され、姫乃は、今の情況も忘れて、むっと唇を結んだ。
「それに、さっき俺が言ったことも忘れてるしな」
 言いながら、男は、ポケットから小さな銀色のデジカメを取り出した。
 そして、両手でスイッチを操作する。
 右手に六本、左手に六本。左右合計十二本の指。
 だが、そのフォルムは、漫然と見ていれば見逃してしまいそうなほど、自然だ。
 それでも、一度意識してしまえば、通常と異なる指の数が、どうしても見る者の心に引っ掛かる。
 その両手が滑らかに動く様は、姫乃の非現実感を、間違いなく高めていた。
「見ろよ」
「――っ!」
 小さな液晶画面に、それは、はっきりと映し出されていた。
 スカートの中で剥き出しになっている、成長途上のヒップ。
 まぎれもなく、姫乃自身のものだ。
「お前は、俺に逆らえないんだよ。分かるだろ?」
 男が、口元ににやにやと笑みを浮かべながら、デジカメをポケットにしまう。
「そ……そんな……」
「だいたい、ノーパンで電車に乗るような女が、今さら純情ぶったって遅いぜ」
「ちが……!」
 姫乃は、大声を出しかけ、危うく自制した。
「ちがい……ます……」
「違うってことはないだろ? 現に履いてなかったんだからよ」
「それは……」
「なんだよ。ハンカチじゃないんだから、まさか道を歩いてて落とすもんじゃねえだろ?」
「……」
 姫乃は、男に対して反論できない。
 そもそも、夏希の淫らな悪戯に、途中まで抵抗することもできなかったのは確かなのだ。
「スリルを求めてたんだか、男を誘ってたんだか知らないけどな……ま、こっちとしては嬉しい誤算ってとこかな?」
「……え?」
 男は、聞き返す暇を与えることなく、姫乃に迫った。
 反射的に身を引いた姫乃の背中が、卑猥な落書きだらけの合板の壁に、当たる。
「狙ってたんだよ、お前のことをよ……」
 言いながら、男が、姫乃のスカートに右手を潜り込ませる。
「あっ……!」
 男の言葉と行動の双方に驚いた姫乃は、スカートの裾を押さえることすらできなかった。
 男の指が、姫乃の剥き出しの秘部に触れる。
 この世に、これ程柔らかい物があろうかというほどの、絶妙の感触。それを、男の指が堪能する。
 そして、男の指は、とんとん、とんとん、と軽く姫乃のそこをノックし始めた。
「あ、あぁ……」
 性急に指をこすりつけたりはしない。あくまでソフトに、一度は鎮まった姫乃の性感を起こそうとしている。
「だめ……だめです……こんなこと……」
 じわあっ……と秘部全体が熱を帯び始めるのを感じながら、姫乃は、弱々しく身悶えた。
 だが、大きな声をあげることも、激しく抵抗することも、姫乃にはできない。
 自分の、けして人には見せられない恥ずかしい姿を収めた機械が、男の手にある。
 姫乃は、どきどきと鼓動を刻んでいる小さな心臓そのものを、男の手に握られているような気持ちになった。
「濡れてきたぜ……」
 男が、指の動きを微妙に変化させながら、言った。
 先程の、軽く叩く動きから、羽毛のように繊細なタッチで、上下に撫でるような動きに変えている。
 その野卑な物言いからは想像できないような、男の優しい指の動きに、姫乃は混乱した。
 じわじわとむず痒いような感触に侵されながら、姫乃は、もどかしささえ感じてしまう。
「ああ……だめ、です……だめですっ……こんなこと、しちゃ……あぁん……」
「そうだよなあ。いけないことだよな、これは」
 男が、姫乃の貝殻のように愛らしい耳たぶに、囁く。
「知らない男にココを撫でられて、ぬるぬるにしちゃうなんてのは、いいとこのお嬢様にしてはちょっとはしたなさすぎるよなあ」
「そ、そんな……私……んんっ……!」
 まるで、悪いのは姫乃の方だとも言いたげな男の言葉に、姫乃は反論できない。
 実際、姫乃は、羞恥とともに、激しい罪悪感を感じていた。
「どんどん濡れてくるぜ……イヤらしいお嬢さんだな……」
「やっ……やあぁ……ウソです……そんなこと……私っ……あぁン……」
「嘘じゃないさ」
 男は、右手をスカートから出し、姫乃の目の前にかざした。
 その指先が、姫乃自身が息を飲むほどに、ぬらぬらと濡れ光っている。
(私……私……そんなにぬらしちゃったの……?)
 大きな目を見開く姫乃の顔に、男は、さらに手を近付けた。
 小指のとなりに、さらに六番目の指がある、その手。
 反射的に、姫乃は、ぎゅっと目を閉じて顔を背ける。
「気持ち悪いか?」
 男が、訊いた。
「え?」
 姫乃が、驚いたような顔で、目を開ける。
「俺の手だよ。指が余計にあって気持ち悪いって思ってんだろ?」
「そ、そんなこと……ありません……」
 姫乃は、声を震わせながら、言った。
「ふうん」
 男が、再び、右手の指を姫乃のクレヴァスに当てる。
「この手に大事なところを触られて、気持ち悪いとは思わないのか?」
 男の卑劣な論理のすり替えに、姫乃は、こくりと、小さく肯いてしまった。
「じゃあ、気持ちいいんだな?」
「……はい」
 姫乃が、答える。
 事実、男の指は驚くほど巧みに動き、姫乃の幼い性感を的確に煽っていた。
 姫乃は、高まる快感を、無視することも、やり過ごすこともできず、ただただその小さな秘部で受け止めるだけだ。
「あ……あぁ……ん……んうっ……くふっ……」
 姫乃が、唇を噛んで、声が漏れるのを防ごうとする。
「そんなに、無理しなくていいんだぜ」
 男が言い、そして、ちろりと、耳たぶを舐めた。
「ひゃう……!」
「くくっ……それくらいの声ならだいじょうぶだよ。ここには誰もいないからな」
 男が、姫乃の秘裂に、にゅるん、と指を食い込ませた。
「んああ……っ!」
 姫乃は、男の許可に従うような形で、声を上げてしまう。
 一度声を上げてしまうと、もう、こらえることはできなかった。
「あっ……ああぁっ……あン……あぁン……ああぁ……」
 あからさまな喘ぎ声が、姫乃の、濡れた花びらのような唇からこぼれる。
 同級生の少女たちが聞いたら、顔を赤らめるか、眉をひそめるかしそうな、淫らな声。
 それを、今、名前も知らない男に秘所を愛撫されて、漏らしているのだ。
「はっ……はあぁん……あっ? あああっ?」
 姫乃が、うろたえた声を上げた。
 男が、あの、未だ肉の莢にくるまれたままの快楽の突起を刺激し始めたのだ。
 鋭い断続的な快楽が、背筋を駆け登って行く。
(きもち……いい……)
 もともと、姫乃は、自分を偽ることのできるような少女ではない。
(どうしよう……きもちいい……きもちいいよう……いいっ……!)
 あまりにも素直に湧き起こる快楽を認めてしまいながら、姫乃は、さらなる罪悪感に打ちひしがれた。
(私……いやらしい……いやらしい女の子なんだ……こんな……こんなところで、こんなひどいことされて……それで、こんな声上げちゃうなんて……でも、でも……きもちよくて……声、止まらないよう……っ!)
 ひくんっ、ひくんっ、と、姫乃自身の他は、夏希しか触れたことのなかった幼い秘裂が、男の愛撫に応えるように、震える。
 溢れる蜜はぐっしょりと男の手を濡らし、太ももの内側にまで伝うほどだ。
「あっ……ああぁ……もう……だめ……だめです……っ! あああっ……!」
 さすがに大きくなり過ぎた声を遮るべく、男の左手が、姫乃の口をふさぐ。
「んーっ、んふーっ、ふーっ、んふぅ〜っ!」
 姫乃が、切羽詰まった鼻声を上げる。
 その幼い体は、電車の中で感じた物よりさらに大きな波を予感し、無意識のうちに期待に打ち震えていた。
 白い両手が、ぎゅっ、と男のスーツのジャケットを握る。
 視界が、真っ白になりかけた。
 全ての感覚と感情が熱く融け、弾けようとする。
 が、それを敏感に感じ取った男は、呆気なく、愛撫を中断させてしまった。
「んぐっ……? んっ……んうぅ……ぷはぁっ……ぁ……」
 顔から手を外した男の顔を、姫乃は、濡れたような瞳で見つめた。
「イキそこねたみたいだな」
 そう言って、男が、愛撫を再開する。
「あぅ……!」
 中途半端に放置されていた快感が、たちまち再燃した。
 指先が、ラビアをなぞり、膣口の周囲を円を描くように愛撫する。
 だが、男は、けしてクリトリスを包む包皮には触れようとしなかった。
「あ……あぅ……んっ……はあぁッ……」
 姫乃が、眉を寄せながら、もどかしげに声を漏らす。
 その幼い腰は、スカートの中で、くねくねと淫らに踊っていた。
 そんな姫乃の快感を、男が、巧みにコントロールする。
「ああっ……やっ……んああっ……私……んあああっ……」
「どうした?」
「あ……んっ! こ、こんなの……ひどい、です……ああぁんっ! あっ!」
 言葉でどう言えばいいのかはよく分からなかったが、姫乃は、自分の体がどうされているのか、はっきりと理解していた。
 男に、絶頂の一歩手前で、弄ばれているのだ。
 自分の体をオモチャにされてるという屈辱と羞恥が、なぜかますます姫乃の秘部を疼かせる。
 そして、一度絶頂の味を知ってしまったその体は、そこに至らない限り、この気の狂いそうなもどかしさを解消するすべはない、ということを、悟ってしまっていた。
「イキたいのか?」
「は、はい……イキたいです……イキたいです……イキたいですぅ……っ」
 意味もよく分からないまま、姫乃は、男の言葉にすがりつく。
「指じゃあ、イかせてやらねえよ」
 男は、ひどく楽しげな声で言った。
「そん、な……はあぁ……」
 姫乃の黒い瞳に、涙の膜がかかっていく。
「どうすれば……私、どうすれば、いいんですか……? あ、ああぁ……んっ……んあぁ……」
 半開きになった唇から、喘ぎとともに、つらそうな声が漏れる。
「おねがいです……私……せつない……せつないんです……ああぁ……えっ?」
 男は、弱々しく身をよじる姫乃の左手を、握った。
 そして、ズボンの中ですっかり固くなっている自らの分身に、導く。
「あぁっ……す、すごい……」
 思わず、姫乃はつぶやく。
 想像もしなかった感触に、思わず引っ込みそうになる姫乃の左手を、男は押さえ付けた。
 そして、姫乃の耳に、口を寄せる。
「コレが、お前をイかせるんだよ」
「え……?」
「お嬢様学校じゃ性教育なんかしないのか? セックスって言葉くらい知ってるだろ?」
「あ、あ……ぁ……」
 姫乃が、貞操の危機を、意識する。
 が、それは、圧倒的なもどかしさの前に、まるで些細なことのように無視されてしまった。
「ほら、おねだりしてみろよ、お嬢さん……」
 そして、男が、姫乃の言うべき言葉を、耳元で囁く。
「あぁ……っ」
 男の言葉の淫らさに、姫乃は、消え入りそうな吐息を漏らした。
 だが、すでに男のもたらす刺激に支配されかかっている少女には、選択の余地は無い。
「……して、ください……」
 姫乃は、言った。
「聞こえないよ」
「ああぁ……セッ……ス……セックス、してくださいっ……」
 直接的な言葉で、自ら性行為をねだる少女の姿に、男は、満足げな笑みを浮かべた。
「生理は?」
 と、男が、姫乃にとっては不思議なことを訊いた。
「え……?」
「生理だよ。次の予定日は、いつだ?」
 姫乃は、わけの分からぬまま、男に自分の周期を告げた。
 男が、一人、納得したように肯く。
「じゃあ、そこに手を付いて、尻をこっちに向けな」
「えっ? そ……そんな……」
 その姿勢のあまりのはしたなさに、姫乃は息を飲む。
「自分から言い出したことだろ? ほら、早くしろよ」
 男の言葉に滲むわずかな苛つきに、びくっ、と姫乃は体を震わせた。
 そして、おずおずと、男に言われるままに、洋式便器の閉められた蓋の上に、両手を付く。
 男は、そんな姫乃のワンピースを、大きくまくり上げた。
「ああぁ……っ」
 ショーツを履いていないヒップが、外気と、そして男の視線にさらされるのを感じ、姫乃が小さな悲鳴を上げる。
 男は、そんな姫乃をあやすように、綻びかけたクレヴァスに指を伸ばした。
「あ、あっ、ああっ……」
 くちゅくちゅと柔らかく湿った音を、少女のその部分が立てる。
 普段は縦線一本のその部分は、男の入念な愛撫によって、咲きかけの花のように、ピンク色の秘唇をのぞかせていた。
「お前、初めてか?」
 男の言葉に、姫乃は、恥ずかしい姿勢のまま、こくりと肯いた。
「だよな。いくらノーパンで電車乗るようなコでも、そこまではしてないか」
「そ、それは……あっ、ああぁ……」
 抗議の声が、喘ぎに飲み込まれる。
 幼い外観とは裏腹にたっぷりと濡れたその部分を、男が、さらに指で嬲ったのだ。
 くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ、くちゅっ……と湿った音が、響く。
 ひとしきり少女の性感を煽ってから、男は、両手の親指で、瑞々しい果実でも割るように、クレヴァスを左右に広げた。
 そして、いつのまにか露出させていた亀頭の先端を、そこに触れさせる。
「あ、あつい……っ!」
 姫乃が、男の体温に、驚きの声を上げた。
「力、抜けよ」
 男が言う。
 だが、姫乃は、どうしていいか分からない。
 男は、ゆっくりとした動作で、自らの腺液と、そして姫乃の愛液に濡れたペニスを、前進させた。
「あ、ああぁ、あぅ……」
 丸い先端が、ゆっくり、ゆっくり、少女のその部分をこじ開けていく。
 姫乃は、重苦しいような感触に、自然と口を開いていた。
 男の前進は、止まらない。
 軽い抵抗が、男のペニスに当たった。
 それを、ゆっくりと、しかし確実な動きで、貫いていく。
「あ、ああぁ……んっ……」
 鋭い痛みの前兆に、姫乃は、身を固くする。
 と、前屈みになった男が、手を伸ばし、姫乃のクリトリスに触れた。
「きゃう……!」
 苦痛と快感が入り混じり――ずん、と熱い衝撃となって、姫乃の体を貫く。
 何かが体の中で呆気なく千切れたような感触を、姫乃は、感じていた。
 しかし、その重大さに、姫乃はきちんと気付いていない。
「あ、ああ……あぅ……」
「入ったぜ」
「えっ……?」
 男の言葉に、姫乃は、声を上げた。
 じん、じん、と疼くような熱い感触があるが、それほど痛みを感じていない。
 それよりも、自分の体の中に、何かが刺さっている、という圧倒的な質感があった。
「痛いか?」
 男が、姫乃の背中に覆いかぶさるような姿勢のまま、訊いた。
「そ、その……あまり……いたくない、です……」
 素直に、姫乃が答える。
「そいつはよかった。やっぱり素質あるぜ、お前……」
「えっ? あ、あんっ……!」
 姫乃は、声を上げた。
 男が、姫乃のクリトリスを刺激しながら、抽送を始めたのだ。
 その姿勢ゆえ、動きのストロークは小さい。それでも、男を初めて迎え入れる秘部には、きつい刺激である。
 体の内側を擦られる、未知の感覚。
 それを、未成熟な陰核から広がる甘い痺れが、和らげている。
「ああっ……あっ……あっ……あぁっ……あっ……あぅっ……」
 ゆっくりとした抽送のリズムに合わせ、姫乃の唇から、自然と声が漏れた。
 体の底から、背筋を上って頭を痺れさせる、感覚の波。
 それは、痛みとも、痺れとも、熱とも、快感ともつかない。
 だが、その中で痛みの占める比率は、次第に小さくなっていった。
「あぁっ……あう……あ……あんっ……あん……あぁぁ……」
「気持ちいいか?」
「わかり、ません……でも……あうっ……あぁん……ああン……っ!」
 姫乃の声が、甘く濡れていく。
 体の中で起こる、強いうねり。
 それが、さらに大きくなっていくのを、姫乃は、茫然と感じていた。
「自分でさわってみな」
 男が、姫乃の右手を、股間に導く。
 男と姫乃の接合部に、彼女自身の指が、触れた。
「あ……ああぁ……っ!」
 姫乃は、驚きの声を上げた。
 その白い指先を、溢れた愛液と、破瓜の血が、ぬるぬる濡らしていく。
(すごい……本当に……本当に入っちゃってる……!)
 そのことに、姫乃の脳が、何かで一杯になった。
(私、今、してる……セックス、してるんだ……)
 喜びとも、哀しみとも、怒りともつかない――もしくはそれが複雑に入り混じった、熱い感情。
 それは、強いて言うなら、感動に近かった。
「自分で、クリトリスいじってみろよ」
「あ、ああン……はい……」
 男に言われるまま、姫乃は、自らの快楽の突起に、指で触れた。
「きゃん……っ!」
 強すぎる刺激に、姫乃は、叫び声を上げた。
 じいん、とその場所に痺れが残り、そして、それが甘い感覚に変わって行く。
 ちょうどいい刺激の強さを無意識に求めながら、姫乃は、指をうごめかせた。
「あ、あうっ……はぁ……あふっ……」
 男の逞しい男根に凌辱されながらの自慰行為に、姫乃が熱い吐息を漏らす。
 左手を大便器の蓋に置いて体を支え、右手で男とつながっている場所をまさぐる、可愛らしいワンピース姿の美少女。
 その、とてつもなく淫らな様子を、男は、体を起こして満足げに眺めた。
 そして、左右十二本の指で、姫乃の白いヒップを抱え、引き寄せる。
「きゃぁうっ……!」
 ずぅん、という重い衝撃が、クリトリスからの鋭い快感と融合し、圧倒的な快楽の波になる。
 姫乃は、驚くほどに熱い肉の杭に体を貫かれたように感じていた。
 その肉の杭が、先程よりも大きく動き始める。
 ずんっ……ずんっ……ずんっ……ずんっ……ずんっ……ずんっ……。
「ああっ……ああっ……あっ……ああっ……ああんっ……あうっ……!」
 重苦しいような、しかしはっきりと甘い感覚。
 男の抽送が、そのまま、湧き起こる快感のリズムになる。
「ああぁ……」
 かくん、と姫乃は左手を折り、便器に突っ伏すような格好になった。
 そのいたいけな体では受け止め切れないほどの快楽にさらされ、とても体を支えていられない。
 それでも、姫乃の右手は、さらなる快楽を求めるように、くりくりと自らのクリトリスをいじっている。
「はぁ……ぁ……あぁん……あァ……ああァ……んっ!」
 今や、姫乃は、その幼い体全身で、セックスの悦びを感じてしまっていた。
(はじめては……はじめてのときは……すごく痛いはずなのに……)
 そんな、耳で聞いただけの性知識を、快楽に翻弄されながら、ぼんやりと思い出す。
(なのに、私……はじめてなのに……きもちよくなっちゃってる……感じちゃってる……!)
 破瓜の痛みは、好きな相手に身を捧げる喜びによって、どうにか耐えることができる。それが、姫乃とその友人たちの“神話”であり“信仰”だった。
 それを、姫乃の体は、他愛なく裏切っている。
 もはや姫乃は、自分が、指で愛撫された時に感じたよりも、さらに大きな快感にさらされていることを、認めないわけにはいかなかった。
「あんっ……ああぁンッ……あうッ……ああぅッ……あぁーッ……!」
 細い、しかし抑えようとしても抑えきれない、淫らな声。
 男の動きに合わせて漏れるその声が、姫乃自身の心を追い詰めていた。
 男の抽送は、けして、激しくない。
 むしろ、ただひたすらに、少女の快楽を高めるべく、腰を使っている。
 そのことで、男は、少女の純潔そのものを凌辱しているのだ。
 それは、姫乃が意識したこともなかった何かを、ペニスによってえぐり出されているような感覚だった。
(私……変えられちゃう……!)
 唐突に、姫乃は思った。
(私、この人に……もっともっと、エッチで、イヤらしい女の子に変えられちゃうんだ……!)
 ほとんど確信をもって、姫乃は、そう直感していた。
 それが――思いもかけなかったような快楽の大波となる。
「あ……あああッ!」
 まるで頭に熱湯をかぶったような熱い快感に、脳が痺れる。
 そして、きゅううっ、と姫乃の膣道が収縮した。
「くっ……締まる……!」
 男が、それをペニスで感じ取り、耐え切れなくなったように抽送を速めた。
 粘膜と粘膜の摩擦がもたらす、ひりつくような熱さ。
 それが、姫乃の性感を一気に頂点にまで導く。
「ンあァー……っ!」
 最後は、声にならなかった。
 まるで息の苦しくなった金魚のように、ぱくぱくと口を開閉する。
 そんな姫乃の一番奥を目がけ、男は、大量の精液を迸らせた。
「……っ! ……っっ! ……っっっ!」
 男の放ったどろどろの粘液の固まりが、何度も、何度も、執拗に姫乃の子宮の入り口を叩いた。
 神経を灼き切るような、熱い刺激。
 ぱあっ、と視界の中でいくつもの光が弾け飛ぶ。
 姫乃は、自分でも意識しないまま、ひくっ、ひくっ、とその細い体を痙攣させていた。
 そして、そのすらりとした四肢から、力が抜ける。
 だが、男にしっかりと抱えられた白いヒップは、高く持ち上がったままだ。
「……ぁ……ぁ……ぁぁぁ……」
 姫乃は、屈辱的な姿勢で、幼い体内にたっぷりと男の精を注がれながら、意識を失ってしまった。



 姫乃が意識を取り戻すと、男が、奇妙なことをしていた。
 細身の、黒い革製ベルトを外し、姫乃の秘部に当てていたのだ。
 そして、そのベルトに、手に持っているナイフで刻み目を入れている。
 まるで、姫乃のその部分の寸法を計っているようだ。
「あっ……!」
 姫乃は、自分が蓋の締まった大便器に腹ばいになり、お尻を剥き出しにしているのに、今さらのように気付いた。
「ああ、もう終わったぜ」
 男が、ナイフをポケットにしまいながら、言った。
 あわてて姫乃が立ち上がり、服の乱れを直す。
 ずきん――と下腹部に、疼痛が走った。
「メジャーや専用のキットじゃねえから、ちょっと不正確だけど、ま、こんなもんだろうな」
「な……何を、したんですか……?」
 姫乃が、震えた声で言う。
「お嬢さんが、お尻剥き出しで寝ちまったから、後始末してやってたんだよ」
 男が、にやにやと笑いながら、言う。
 姫乃は、男の視線を追い、かっと顔を赤らめた。
 床に、丸められたトイレットペーパーが散乱している。
 それは、姫乃の破瓜の血と、それとは別の粘液で汚れていた。
「あと、ちょっとばかりお嬢さんのことを調べさせてもらったけどな」
 そう言いながら、男が、ベルトを締め直す。
「え……?」
「そうそう。これ、返しておくぜ」
 男は、臙脂色の手帳を差し出した。
「さすが、名門学園は生徒手帳まで高級品だな。――中等部3年1組の奥住姫乃ちゃんよぉ」
「ぁ……」
 姫乃は、絶句した。
 さっきまでの熱い快感の名残が、悪寒によって洗い流される。
「住所も連絡先も控えさせてもらったぜ。いちいち訊く手間が省けたよ」
 かたかたと、脚が震える。
 姫乃は、自分が、巨大な蟻地獄に飲み込まれつつあるような気持ちになった。
「まあ、お前はもともと俺には逆らえないはずだけどな。……また、いい写真を撮らせてもらったよ。今回は顔も入ってるぜ」
「――っ!」
 姫乃は、硬直した。
(そ……そうだ……スカートの中の写真だけだったら……私だって分かるわけなかったんだ……)
 あまりのことに思考が停止し、そんなことにさえ気が付かなかった。
 が、今や、もう遅い。
 姫乃は、先刻、自分がお尻を剥き出しにして、大便器の上に突っ伏していたことを思い出した。
 男がトイレットペーパーで始末する前は、秘部は、血と粘液で濡れていただろう。
 その姿を写している画像を想像するだけで、姫乃は、血液が逆流するような感覚を覚えた。
「これで、本当に、お前は俺に逆らえなくなったってわけだ」
 男の、笑みを含んだ声が、聞こえる。
「今日は、もう帰っていいぜ。けど、明日は……朝から、また一緒に楽しもうな」
 それが、姫乃には、ひどく遠くから響いているように感じられた。
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