奥様は魔女?

(後編)



 はたして、風呂から寝室に全裸で移動することが、俺と嫁の夫婦生活の中で、スタンダードなことだったのかどうか、よく思い出せない。
 思い出せないのは、今の俺が小学校高学年にまで若返ってしまったからなのか、それとも気を緩めると鼻血を溢れさせそうなほどに興奮しているからなのか――それも、分からない。
 だが、やはり、真っ昼間から一糸まとわず家の中を歩くというのは、たとえ短い距離とは言え、異常なことだと思う。
 そして、俺は、その異常さに、脳みそが沸騰しそうなほどの興奮を覚えてしまったのであった。



「んむ……ちゅ、ちゅぶ……ちゅぷ、んちゅっ、ちゅぱ……ちゅぶ、ちゅぶぶ、むちゅ、ちゅぶぶぶぶ……」
 ベッドの傍らで立ったまま抱き合い、嫁と濃厚なキスを交わす。
 すでに、俺の股間では、ペニスが完全に勃起を回復させていた。
 俺は、これから、嫁とセックスする――
 それは、ある意味ではとても当たり前のことのはずなのだが、今の俺は、キスをしながらまるで馬のように鼻息を荒くしてしまっている。嫁は、さぞ口元がこそばゆいだろう。
「ちゅぱっ……」
 しばらくして、俺と嫁は、唇を離した。
 今は、嫁の方が、少し背が高い。小学校高学年の頃は、けっこうチビだったのだ。
「うふっ……」
 嫁が、艶っぽい笑みを浮かべながら、ベッドに上がる。
「九郎さん、来て……あぁン!」
 俺は、嫁がみなまで言うのすら待てず、その体をシーツの上に押し倒してしまった。
「んっ、もう……乱暴です、九郎さん……」
「ゴ、ゴメン……」
 柔らかな双乳の狭間に顎を置くような位置で、俺は嫁に謝った。
「焦らなくても、逃げたりしませんから……ね?」
 嫁が、なだめるように俺の頭を撫でる。
 俺は、恥ずかしさに火照った頬を嫁の胸の谷間に擦り付け、そして、二つの乳房を両手で揉んだ。
 だいぶ昔、何かのマンガかゲームで覚えた、俗に“ぱふぱふ”という奴である。
 他にも愛撫の仕方はいろいろあるだろうに、俺は、とにかく嫁の乳房の感触を顔全体で味わいまくった。
「あっ、あふン……んああっ……九郎さん、本当にオッパイが好きなんですね」
 まるで子供に言うような優しい声音で、嫁が言う。
 いや、今の俺は、外見上はまさに子供そのものなのだ。
「んっ、んんんっ、んふ……あ、あん……はぁはぁ……んふ、はふぅ……」
 嫁が、切なげな息を漏らしながら、体をくねらせる。
 まるで、胸を愛撫されるだけでは物足りない、といった感じの仕草だ。
 俺は、ようやく嫁のバストから顔を上げ――そして、これからどうしたらいいのか尋ねるように、嫁の顔を見つめてしまった。
 実際、この後、どんなふうにしたらいいのか分からなかったのだ。
 セックスの手順すら忘れてしまった俺に、ニッコリとほほ笑みを向け……そして、嫁は、下から俺の肉棒を優しく握り締めた。
「あうっ……」
 不覚にも、思いの外かわいらしい声が、口元から漏れてしまう。
「もう、充分濡れてますから……これを……その……い、入れて、ください……」
 そう言って、嫁が、顔を赤くしながら、ゆるゆると脚を開く。
 俺は、何度も生唾を飲み込みながら、嫁の白い太腿の間に、ぺたんと座り込んだ。
 嫁に握られたままのペニスのすぐ前で、肉の割れ目が、ひくひくと慎ましげに息づいている。
 レースのカーテン越しに差し込む昼前の太陽に照らされたそこは、キラキラと濡れ光っていた。
 嫁が、右手で俺の肉棒を導き、そして、左手の指先で、くぱぁ、と秘唇をくつろげる。
 そして、俺は、自らのペニスを、肉のぬかるみの中にゆっくりと沈ませていった。
「うあ……あああっ……」
 予想外の温度と感触に、俺は、大きく口を開け、喘いだ。
「あっ、あっ、九郎さんの、入ってくるぅ……んあっ、ああああぁン……」
 嫁が嬉しげな声を上げながら、その肉壷で俺のペニスを迎え入れる。
「はああああっ……」
 ペニスを根元まで挿入し、俺は、一仕事終えたように大きく息をついた。
「んんっ……はぁ、はぁ、はぁ……あ、あの……九郎さぁん……」
 嫁が、悩ましげな声を上げながら、もじもじと腰を揺する。
「お願いです……そ、その……んく、動いてください……んふっ、んふぅン……」
 そ、そうだ……動かないと……。
 俺は、ひどくぎくしゃくと腰を使い始めた。
 体格が変わったせいか、それとも、“体の記憶”の欠落のせいか、うまく腰を動かせない。
 俺は、内心ひどく焦りながら、ペニスをピストンさせた。
 一往復、二往復、三往復――
「うっ……!」
 四往復目の途中で、俺は、自分が引き返せない場所にまで来ていることに気付いた。
「あ、あ、あっ、ヤバイ、出るっ……!」
 慌てて尿道を引き締めようとするが、もう遅い。
 ビュッ! ビュルッ! ドビュビュッ!
「あああああぁン♪」
 嫁が、膣内で精液を受け止め、喜悦の声を上げる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 俺は、三こすり半であっけなく射精してしまった自分に虚脱感を覚えながら、嫁の体の上に上体を伏せた。
「ゴメン、雅……」
 まともに嫁の顔を見ることができず、俺は、またもそのたわわな乳房に顔を埋めてしまう。
「謝ることなんて何もないですよ、九郎さん……素敵でした……」
 嫁は、そう言いながら、俺の頭をギュッと抱き締めた。
 その膣肉までもが、不甲斐ない俺の肉棒を、優しく締め付けてくれている。
 その感触に、俺は、次第に勃起を回復させていった。
「あふぅン……九郎さんの、まだまだ元気です……」
 そう言いながら、嫁が、俺とつながったまま横向きになろうとする。
 嫁の意図を何となく察し、俺は、ぐるりとベッドの上で仰向けになった。
 嫁が、俺の腰の上に跨がる格好になる。つまり騎上位だ。
「次は、私が動きますね……」
 そう言って、嫁が、上体を起こす。
 下から見上げる嫁の双乳のボリューム感に、俺は、息を荒くしてしまう。
「じゃあ、いきますよ……」
 嫁が、ゆっくり、ゆっくり、腰を動かし始める。
「んあっ……あ、あうっ、んく……み、雅……すごい……」
「んっ、んんんっ、んく……あふ……九郎さんのも気持ちいいです……んふ、はふぅ……」
 嫁は、喘ぎ声を漏らしながら、徐々に腰の動きを大胆にしていった。
 愛液と、そして精液にぬめる膣壁が、俺の肉棒を、ヌルヌルと擦り上げる。
「あっ、ああっ、あう……ん、んくぅ……感じちゃう……んく、感じちゃいますぅ……はっ、はふっ、んふぅ……!」
 嫁が、頬を上気させながら、くいっ、くいっ、と腰を使う。
 その動きに合わせて、スレンダーな体に似合わない美巨乳が、ブルンブルンと揺れた。
 俺は、思わず、両手を伸ばして嫁の双乳を鷲掴みにしてしまう。
「きゃうっ! あ、あふぅ……ああ、九郎さぁん……」
 嫁が、俺の両手の甲に、その左右の手のひらをそれぞれ重ねる。
 俺は、さらなる血液が肉棒に集まるのを感じながら、手の中の柔らかな乳房を揉みしだいた。
「あうっ、んっ、んくぅ……ハァ、ハァ……あああっ、あうン……! お、おっぱい、気持ちいい……んっ、んあっ、あふ、んふぅ……!」
 悩ましげに眉をたわめながら、嫁が、緩くウェーブのかかった黒髪を振る。
 そして、嫁は、そのヒップをぐりぐりと回したかと思うと、次は激しく上下にバウンドさせた。
「んあっ、あ、あううン……! す、すごい……んく、あふぅ、んううっ……あン、あぁン、あン、んああン!」
 手の平で、嫁の乳首が勃起していくのを感じる。
 俺は、堅くしこった乳首を指で摘まみ、くりくりと捻るように刺激した。
「ひうううううン! ああっ、あひ、あひン! あああっ、あく、んくぅ! やっ、やはっ、はひ……んあっ、ああああっ!」
 嫁の腰の動きがますます激しくなり、結合部から、愛液と精液の入り混じった粘液が溢れ出る。
 俺は、いつしかそんな嫁の腰の動きに合わせて、自らもペニスを突き上げていた。
「ひうっ! うあっ! あっ! ひああン! あああ、すごい、すごいぃ! んぐ、んっ、んくぅ! んあああああっ!」
 嫁が、切羽詰まった声を上げる。
 摩擦で熱くなった肉壷がキュウキュウと肉竿を絞り上げ、たまらない快楽を俺にもたらす。
「雅……ま、また出ちまう……!」
「あああッ! どうぞ、出して、出してくださいっ! わ、私ももう……んあああああああああッ!」
「み、雅ッ……!」
 ビュウゥーッ! ビュッ! ビュッ! ビュッ! ビュッ!
 さっきよりも勢いよく、そして大量に、俺はザーメンを放つ。
「イ、イク、イクッ! イクぅううううううううううううううううううううううううぅー!」
 嫁が、背中を弓なりにそらし、絶頂の声を上げる。
 そして、ヒクヒクとしばらく体を痙攣させてから、俺の体の上に上半身を倒した。
「ハァ、ハァ、ハァ……んく……い、いっしょにイっちゃいました……んふふっ……」
 嬉しそうにそう言って、嫁が、チュッ、チュッ、と俺の額や頬にキスをする。
 それだけで、俺は、まだ膣内に収まったままの肉棒を萎える間もなく勃起させてしまった。
「ああン……九郎さんたらぁ……んく、元気すぎますよぉ……んふ、はふぅン……」
 嫁が、甘い息を漏らす。
「雅……その、次は、後ろからしたいんだけど……いいかな?」
 今まで嫁にやられっぱなしだったということもあり、俺は、そんな要求をしてしまった。
「んく……う、後ろからって……あの、ワンちゃんみたいな格好で、ですか……? んく、ゴクッ……」
 嫁が、はしたなく生唾を飲み込んでから、顔を真っ赤にする。
「その……す、すごく、恥ずかしいですけど……九郎さんがどうしてもって言うなら……」
「うん、どうしても」
「もうっ……」
 即座に返事をした俺を、嫁が、可愛らしく睨み付ける。
 そして、嫁は、まるで片時も離れたくないといった感じで、俺と下半身でつながったまま、体ごとゆっくりと後ろを向いた。
 背面騎乗位の格好から、二人して息を合わせて膝立ちになり、後背位になる。
 そうしてから、俺は、水蜜桃を思わせる嫁のヒップに両手を置いた。
「雅の尻……でっかいなぁ……」
「イ、イヤッ! 何てこと言うんですかっ!」
 この日初めて、嫁が、うろたえた声を上げる。
「いや、こっちの体がちっこくなったせいかもしれないけど……改めて見ると、でかいなー、って……」
 そんなことを言いながら、嫁の尻をムニムニと揉む。
「あうっ……や、やっ……もう、九郎さんたらっ……あうっ、あくぅ……」
 嫁が、悩ましい声を漏らしながら、ヒップをくねらせる。
 このでかい尻を自分の思いどおりにできる――
 性欲とともに、男としての征服欲が、俺の肉棒をますますいきり立たせた。
「雅……」
 ぐっ、と尻肉に指を食い込ませ、腰を動かす。
「んあっ、あ、あくぅ……んううっ、あっ、あふ、んああっ……!」
 俺のピストンに合わせて、嫁が、甘い喘ぎ声を上げる。
 この日初めてイニシアチブを取ったことに興奮しながら、俺は、なおも腰を使い続けた。
「んぐっ! あ、あううっ……そ、そんな、激しいですぅ……んく、んああン! あっ、ああっ、あふ……あああン!」
 俺と嫁の敏感な粘膜同士が粘液にまみれながら擦れ合い、熱い快楽を紡ぎ出す。
 あれだけ何度も射精していなかったら、俺は、あっと言う間にフィニッシュに追い込まれていたはずだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、あっ、あああン! んぐっ、すごい……んああっ、す、すごいですぅ……うく、あ、あはぁン! き、気持ちイイっ……!」
「俺も気持ちいいよ、雅……」
「う、嬉しいっ……! もっと、もっと私で感じてください……! んくっ、んう、うううっ……!」
 嫁が、その尻を前後に振り、その膣肉で俺のペニスを扱く。
 高まる快楽に突き動かされ、俺は、腰の動きをさらに加速させた。
 俺の腰が嫁の尻にぶつかるパンパンという音が、部屋の中に響いている。
「あっ、ああン! あン! あン! あぁン! あっ、あううっ、あひぃ! 奥にっ! んぐっ! お、奥に来てますぅ! うあっ、あっ、あああっ!」
 体位によるものか、それとも嫁の子宮が下がってきたのか、俺の肉棒の先端が膣奥にまで到達する。
 張り詰めた亀頭が嫁の子宮口にキスを繰り返す様をイメージしながら、俺は、なおも肉棒を繰り出した。
「あああン! あひ、あひぃ! イ、イキますっ! イク、イっちゃうっ、イクうっ! んあっ、あっ、あはぁン! イ、イっちゃううううっ!」
 上体を支えきれなくなった嫁が、肘を折ってシーツの上に突っ伏す。
 ヒップだけを高々と上げたその姿勢のあまりのいやらしさに、頭の中が真っ白になる。
「ああああああ! もうダメ! ダメなのぉ! あン! ああン! 私、私ダメになっちゃうっ! んあ! あ! あっあっあっあっあっ! イ、イ、イクぅううううううううううううううううううううううううう!」
 ギュッとシーツを掴み、大きく口を開けて、嫁が、絶頂の叫びを上げる。
 肉壺が激しく収縮し、俺のペニスを圧し潰さんばかりに締め付ける。
「ぐっ……!」
 ビューッ! ブビューッ! ドビュ! ドビュ! ドビュ! ドビュ! ドビュ! ドビュ!
 俺は、嫁の蜜壺に根本まで肉棒を突き入れ、その姿勢で大量の精液を放った。
「んひいいいいいいいいいい! イっちゃうっ! また、またイっちゃいますぅ! うあっ、あっ、ああああああッ! 九郎さんのミルクでイっちゃう! イグぅううううううううううううううううううううううううううううううううううう!」
 普段のおっとりした様子からは考えられないような、どこか獣じみた絶叫を上げ、嫁が、さらなるアクメを極める。
「あうっ、あっ、あああっ……あっ、あっ……ひあ……あああ……あああああっ……!」
 ビクッ、ビクッ、と嫁の体がおののき、痙攣する膣肉が、最後の一滴までザーメンを搾り取ろうとする。
「あ、あああああっ……」
 嫁が、力尽きたようにシーツの上に俯せになり、俺は、後ろにぺたんと尻餅をついてしまった。
 ヒクヒクと震える嫁の膣口から、やがて、呆れるほど大量の精液が、こぽこぽと泡立ちながら溢れ出る。
 その卑猥な光景に――俺は、またしても勃起を回復させてしまったのだった……。



 ……てなわけで、俺は、その日一日、発情期の動物のように嫁とセックスを繰り返した。
 そして、翌朝――俺の体は、もとの25歳の体に戻っていた。
 裸で寝ていたからよかったものの、もし、体格にあった服を着ていたら、全身が締め付けられていただろう。まあ、そんな服の持ち合わせはなかったし、買いに行くヒマもなかったんだが……。
 ただ、汗まみれでろくに布団もかぶらず眠っていたため、俺は、今度は本当に風邪をひいてしまった。このせいで、仕事は二日続けて休みである。
「あらあらあら、すごい熱ですよ」
 嫁が、俺の腋に挟まれていた体温計を見て、言う。
 俺とは対照的に、嫁の顔には、昨日の荒淫の名残すら無い。心なしか、肌なんか前以上に艶々している。
「今、お薬用意しますからね」
「う……あ……たの、む……」
 俺は、高熱で意識を朦朧とさせながら、ベッドの中で言った。
 たぶん、嫁の薬を飲めば、この風邪も一発で治るだろう。
 だって……嫁の薬には、魔法がかかってるんだから。
 俺は、ぐにゃりと歪んでいる寝室の天井を見詰めながら、嫁の正体についてぼんやりと考え……そして、いつもの結論に達する。
 たとえ俺の嫁が何者であれ――俺が幸せ者であることには違いない。
 だから、時々あるこんなちょっとした騒動も、苦労のうちには入らないはずだ。
 まあ、俺がそんなふうに思うこと自体が、嫁の一番の魔法のような気もするわけだが……。




あとがき

BACK

MENU