奥様は魔女?

(前編)



 俺の名前は烏丸九郎。よく「9人目のお子さんなんですか?」と訊かれることがあるが、違う。親父が源義経のファンで、それでこんな名前を付けられたのだ。義経という名前にされなくて本当によかった、と思う。
 クロウという音は、苦労に通じるので、あんまりいい名前だとは思わないんだが、ただ、少なくともこの名前で苦労したことはない。字も簡単だし、読み間違いをされることもほとんどない。好きではないが愛着はある、といった感じである。
 では、普段、俺が何かに苦労しているか、と考えると――まあ、苦労の種が無いわけではない。
 仕事の方は、薄給ではあるが、大きなトラブルを抱えることもなく、うまくやっている。
 健康面でも、今のところ、特に心配なことはない。あ、25歳になってちょっと腹が出てきたってことはあるけどな。
 となると、家庭の方で苦労があるのか、という話になるわけだが――今、俺は、実家を出て、2歳年上の嫁と二人暮らしである。
 嫁の名前は雅。
 学生時代のバイト先で、ちょっと妙な縁で知り合って、5年以上付き合い続けて、去年の6月に結婚した。
 ここでのろける。俺の嫁は可愛い。おまけに優しい。いつもニコニコしている。あと、落ち着いていて、チャラチャラしたところがぜんぜん無い。高校で物理の教師をしてるんだが、家事もないがしろにしない。それと、おっぱいがでかい。ちなみに、着痩せする方なんでおっぱいがでかいのは俺と嫁だけの秘密だ。
 おっとりしてて、のんびりし過ぎているのが玉に傷のような気もするが、そんなの、虫メガネでなければ確認できないような些細な傷である。
 それから、まあ、この事はこれから書くことと関係あるんで触れるんだが――エッチ方面にも消極的ではない。そのくせ、俺とする時は、未だ恥ずかしそうに頬を赤くする。たまらない。
 そんな愛しい嫁と一戦交え、そして、まったりと身を寄せ合ったある夜の会話が、たぶん発端だ。
「素敵でした、九郎さん……」
 そんなふうに言いながら、嫁が、仰向けの俺の体を横抱きにして、指先で胸元を撫でる。
「雅も可愛かったよ」
 照れ臭く思いながらもそう言って、俺は、嫁の頭を右手で引き寄せた。軽くウェーブのかかった黒髪にこもる汗とシャンプーの匂いが官能的だ。
「九郎さん……」
 嫁が、優しい笑みを浮かべながら俺の顔を覗き込み……そして、ちゅっ、とキスをしてくる。
 何だか、まるでファーストキスみたいな、初々しいキスだ。
「九郎さん……初めてのキスって、いつでした?」
 俺の思考を読み取ったかのように、嫁が訊いてくる。
「あ、うーんと……中学の時だな」
「そんなに早かったんですか?」
 嫁が、驚いた表情を浮かべる。
「そういう雅はどうなんだよ」
「私は、九郎さん以外の人としたことないです」
 嫁が、ひどく真面目な顔で言う。
 嘘つけとは言えない。そもそも嫁は俺と付き合い始めるまで処女だったのだ。
「はぁ……中学生の時ですか……何だかショックです」
「いや、その、親戚の子とふざけてちょっと触れさせただけだって」
 嫁があんまりがっかりしてるので、俺は、言い訳がましく言った。
「でも……私、九郎さんの初めての人になりたかった……」
「……しょうがないさ。やり直しができるわけじゃないんだしさ」
 そう言って、嫁の柔らかな唇に、今度はこっちから口付けをする。
 キスでごまかすのは卑怯だと言われるかもしれないが、まあ、許してくれ。
 唇を離すと――嫁は、何かを考え込むような表情に変わっていた。
 ごまかしきれなかったかな、と思うと同時に――ちょっと嫌な予感を、俺は覚えた。



 翌日、仕事からマンションに帰ると、嫁が、リビングでチラシの裏に一心に何かを書いていた。
「あ、お帰りなさい」
 よほど夢中になっていたのか、嫁が、ようやく顔を上げる。
「ただいま……何それ?」
 俺は、嫁の手元を覗き込みながら尋ねた。そこに書いてあるのは、何やら複雑な記号や数字、さらには手書きのグラフなどだ。
 嫁は、高校で物理を教えてるんだが、数学にも造詣が深いらしい。嫁に言わせると、世界を物理的に説明するための言語が数学なのだということなのだが、文系一直線だった俺にはわけワカメだ。
 そんでもって、嫁は、暇があると、気晴らしの趣味としてやたら難解な数学の問題を解くのである。何だかキュリー夫人のエピソードを思い出す。
 だが、今日は、どうもその趣味に夢中になり過ぎていたようだ。
「あ、あの、一般四次元座標の固有性と不確定性を統一記述するためのルーシュチャ方程式なんですけど――」
「俺の理解の及ばない領域であることは分かった。って言うか、晩ご飯は?」
「ごめんなさい……お米は炊いてるんですけど、まだ……」
 嫁が、肩を落として小さくなる。
「共稼ぎなんだからそんな恐縮することないって。えーと、今日は俺が作ろうか?」
「い、いえ、私がやります! その、レトルトばかりになっちゃうけど」
 慌てて立ち上がりながら、嫁が言う。
「うん、それでいいよ。雅が準備すると、なぜかレトルトでも美味いからさ」
「もう……おだてても、何も出ませんよぉ」
「本当だって。たまに、魔法でも使ってるんじゃないかって思うよ」
「そ、そそそ、そんなことないですよっ!」
 なぜか、嫁が目に見えて動揺する。
 そして――その日の夕食は、やはり、レトルトとは思えないほどに、美味かった。



 次の日の朝、俺は、妙に早く目が覚めた。こんなに早く目が覚めたのはガキのころ以来かもしれない。
 見ると、ベッドの隣で、嫁がすぅすぅと平和な寝息をたてている。
 俺は、妙に気恥ずかしい気持ちになってベッドから降り、洗面所に向かおうとして――思い切りぶっ倒れた。
「いってぇ……」
 どうやら、パジャマのズボンの裾を自分で踏ん付けてしまったらしい。
 何てドジだ……しかし、このパジャマ、妙にでかいな。裾や袖が余ってる。
 洗濯して伸びたのか……? いや、昨夜はそんなふうには思わなかったけど……。
 そんなふうに思いながら立ち上がり、やたらずり落ちるズボンを手で引っ張りながら、改めて洗面所に行く。
「…………」
 この洗面台、ちょっと変じゃないか?
 いや、見た目は、俺のよく知ってる、この中古マンション備え付けの洗面台に違いない。だが、妙にでかく思えるのだ。
 まだ寝ぼけてるのか……とにかく顔を洗ってさっぱりしないと……。
 ぶかぶかのパジャマの袖をまくり、蛇口を捻って水を出したところで――俺は、ようやく、異変に気付いた。
「なっ……!」
 息を飲み、言葉を詰まらせる。
 鏡の向こうで驚愕の表情を浮かべている顔――
 俺の顔じゃない……いや、俺の顔には違いないんだが……今の俺の顔じゃない。
 これは……この顔は……どう見たって……。
「う――うわあああああああああああああああ!」
 ようやく叫び声を上げて、その声が、やたらかん高いことに気付く。まるで、声変わりする前の声だ。
 俺は、驚きを新たにしながら、目の前の鏡をまじまじと見詰めた。
 見間違いようがない……この顔は、明らかに……。
「どうしたんですか? 九郎さん」
 俺の声で目が覚めたのか、嫁が、洗面所にやって来た。
「あ、う、うあ……み、雅ぃ〜」
 情けない声で嫁の名を呼びながら、振り返る。
「きゃぁ〜ん! 可愛いぃ〜っ♪」
 どう見てもローティーン当時の姿に変身してしまった俺を見ての嫁の第一声が、それだった。



「……はい……はい、そうです……熱もあるみたいで……申し訳ないですけど、よろしくお願いします……」
 妻が、俺の職場に電話をしている。
 俺は、ぶかぶかのTシャツと短パンに身を包んだ姿で、何度目かの溜息をついた。
 キッチンのテーブルの上には、トーストと目玉焼きがのせられていた皿と、2杯目の牛乳が入っているコップがある。こんな状況なのに、呆れたことに腹はきちんと減るもんだ。ちなみに、コーヒーを要求したら、嫁に子供には毒だからと断られてしまった。
「……課長さんに、今日は休むって言っておきました」
 電話を切って、嫁が俺ににこやかな笑みを浮かべる。
「今日は、って……明日からどうするかな……」
「どうするって、何がですか?」
「いや……こんなナリじゃあ、もう、仕事に行けないだろ?」
 別に仕事が好きなわけじゃないが、それでも、俺は泣きそうな声を出してしまう。
 いや、マジで泣きたい気分だ。ある朝、目が覚めたら虫になってよりはマシかもしれないが、12歳の頃に戻ってたなんて、まるでシャレにならない。
「だいじょうぶですよ、九郎さん。24時間もすれば元に戻りますよ」
 嫁が、やたら具体的な数字を、何の根拠も無く言う。
 嫁は、俺のこんな姿を見ても、全く動揺していない。それどころか、ちょっと浮かれているようにすら見える。
 俺は、かねてからの疑問を、嫁にぶつけてみることにした。
「あのさ……雅、お前、いったい何者なわけ……?」
「九郎さんの奥さんですよ」
 ニコニコしながら、嫁が、俺に顔を近付けてくる。
「いや、そういうことじゃなくてさ、その、初めて知り合った時だって、お前――」
「何ですか?」
 息がかかりそうなほどの距離で、嫁が、小さく首を傾げる。
「ちょ、近いって」
「いいじゃないですか、夫婦なんですから」
 そう言いながら、嫁は、首を傾げたまま、俺の唇に唇をかぶせた。
「んっ……!」
 キス――
 これは、キスだ。紛れも無く、誤解のしようも無く、誰が何と言おうとも、キスである。
 自分が、嫁とキスをしている。ただ、それだけのことに、俺はパニックになってしまった。
 首から上がカーッと熱くなり、バクバクと心臓が高鳴る。
 そして――股間のモノが、恥ずかしいほどにいきり立ってしまう。
「んぐ……ちょ、ちょっと待てって……」
 キスで勃起してしまったことに激しい罪悪感を覚え、俺は、やや強引に嫁の体を離した。
「あ」
 その拍子に俺の肘がコップを倒し、中に入ってた牛乳が俺の下半身にかかる。
「あらあら、大変」
 相変わらずのおっとりとした口調で、嫁が言う。
「そ、その……ゴメン……」
「だいじょうぶですよ。片付けは私がしますから、お風呂に入ってください」
「え? 風呂?」
「どうせ、今日はお休みなんだし……実は、もうお湯は張ってあるんですよ」
「ん……わ、分かった……」
 そのあまりの準備のよさに首を傾げながら、俺は、風呂場に向かった。
 そして、脱衣所兼洗面所でマッパになり、浴室に入る。
「はぁ……」
 ちょぼちょぼとしか毛の生えてない下腹部と、さっきのキスの余韻で半勃ち状態のペニスを見下ろし、溜息をつく。
 でもまあ、嫁がああいう態度でいるってことは、今回の騒動は――今回の騒動も、そう長くは続かないのかな……。
 そんなことを思いながら体を洗っていると、洗面所に人の気配がした。
「着替え、置いときますね」
「あ、う、うん」
 曇りガラスの向こうの嫁に、俺は返事をする。
「…………」
 しばらくしても、嫁の気配は、いっこうに消えない。
 着替えを置くだけでそうしてそんなに時間がかかるのか、と訝しんでいると、いきなり浴室のドアが開いた。
「失礼しまぁす」
「うわっ!」
 素肌にバスタオル一枚を巻いただけの嫁を前に、俺は声を上げた。
「お背中、流しますよ」
「い、いや、その、いいって!」
「何を恥ずかしがってるんですか? 夫婦じゃないですか」
 嫁は、どこか面白がっているような口調で言った。
 一方、俺は、夫婦だから、一緒に風呂に入っても恥ずかしくない、という嫁の主張に、鼻血が出そうなほど興奮してしまっている。
 自分が顔を真っ赤にしているであろう事をさとられまいと、俺は、洗い場に座ったまま嫁に背中を向けた。
「それじゃあ、洗いますね」
 そう宣言して、嫁が、ボディーソープを染み込ませたスポンジで、俺の背中を流す。
「あ、わ、ひゃ」
 まるでくすぐっているようなソフトな感触に、俺は、思わず声を上げてしまった。
「ん、もう、九郎さんたら、そんなにクネクネしないでくださいよ」
「いや、その、くすぐったくて……」
「そうですか……じゃあ、こうしますね」
 いきなり、背中全体に、柔らかな何かがぴとっと押し付けられる。
 嫁が、その身にまとっていたバスタオルを外し、俺に体を押し付けてきたのだ。
「ひゃあ!」
 柔らかな嫁の体の中でも、一際ボリュームのある二つの膨らみの感触に、俺は、思わず前方に逃げそうになってしまう。
 そんな俺の体を、嫁の白い腕が、きゅっ、と抱き締めた。
「逃がしませんよぉ、九郎さん……」
 そんなことを言いながら、嫁が、ヌルヌルと体を擦り付けてくる。
「あわわ、わ、わわわっ」
 嫁のおっぱいが俺の背中をこすり、嫁の両手が、俺の下腹部をまさぐる。
 あまりのことに頭がクラクラしてくるのを感じながら、俺は、いつしか嫁になされるがままになっていた。
「ふふふっ……つぅかまぁえたぁ♪」
 歌うように言いながら、嫁が、さっきから完全に勃起してしまっている俺のペニスを右手で握った。
 一方、嫁の左手は、指先で俺の乳首をくすぐっている。
「あう……み、雅ぃ……」
「あふぅン……九郎さんたらぁ……こんなに可愛いのに、ここは、すっごく逞しいです……」
 嫁が、明らかに興奮した様子の声で、囁く。
「九郎さん……立ってください……」
「あ……う、うん……」
 俺と嫁は、体を密着させたまま、立ち上がった。
「こっちを向いて……」
「うん……」
 言われるまま、後ろを振り返り、嫁と正対する。
 惜し気もなくさらけ出された嫁のおっぱいに、俺は、ドキドキと心臓を高鳴らせた。
「さっきのキス、どうでした?」
「ど、どうって……よく分からないよ……初めてのことだったし……」
 そう言いかけて、俺は、はっとある事に思い至った。
 もちろん、さっきのキスが、俺にとって初めてのキスなわけがない。なのに、あの時の俺は、ファーストキスと同じだけのインパクトを感じてしまった。
 俺は、今、12歳頃の自分に戻ってるわけだが……もしかすると、知識や意識の方も、それくらいに退行してるのか?
 そう……そうかもしれない……だから、俺は、嫁のハダカを前にして、こんなに動揺しているのだ……。
「うふ……九郎さんの好きにしていいんですよ……私、あなたのお嫁さんですもの……」
 そう言われて――俺は、嫁の右の乳房にむしゃぶりついていた。
 しかも、右手で、嫁の左の乳房を揉みしだいている。
「あ、あううっ、んく……やっ……! あふ……噛んじゃダメですよ……あうっ、んくぅ……」
 嫁が、そう言いながら、悩ましげに体をくねらせる。
 俺は、口の中にセッケンの泡が入るのにも構わず、嫁の乳首をジュパジュパと音をたてて舐めしゃぶった。
「んふぅン……ああっ、き、気持ちいい……あっ、あぁン……上手ぅ……」
 嫁が、俺の頭をナデナデする。
 嫁が感じてくれていることにさらに興奮し、俺は、夢中で目の前の双乳を手と口で愛撫した。
「はぁ、はぁ……んく……九郎さんたら……こんなにしてぇ……」
 嫁が、さっきから握り締めていた俺の肉竿を、シコシコと扱く。
「あ、あああ、うあっ……」
 俺は、あまりの刺激に、思わず腰を引いてしまった。
「うふふっ……」
 嫁が、俺の前にひざまずき、手桶で汲んだお湯でペニスに付いた泡を洗い流す。
 もしかして、という期待と、まさか、という思いが、俺の頭の中でグルグルと渦巻く。
「あぁ〜ん……はむっ……」
 嫁が、大きく口を開けてから、俺の肉棒を咥え込んだ。
 フェラチオされてる……! 今、俺のチンポが、女の人の口に含まれている……!
 そういう行為があるということは、12歳当時の俺も、一応は知っていた。けど、それが自分に縁のあるプレイだとは思ってもみなかった。
 もちろん、嫁が、俺の肉棒を口で愛撫してくれたことがあるのは、知っている――が、そんな記憶を吹き飛ばすほどの衝撃を、俺は感じてた。
「あむ、んむむっ、ちゅぶ、んちゅ……んっ、んむむ、ちゅば……ぷあっ、気持ちいいですか? 九郎さん……」
「あ、う、うん……」
「うふっ……いつ出してもいいですからね……はむっ、んむむ、ちゅぶ、じゅぷっ……」
 嫁が、その口の中で、俺の肉棒に舌を当て、ウネウネと動かす。
「あ、あっ、ああぁ……!」
 声変わり前にまで戻ってしまった俺の喉から漏れる声は、まるで、女の子の喘ぎのようだ。
「んちゅっ、ちゅ、ちゅぱっ……ふふっ、いっぱいキスしちゃいますね……チュッ、チュバッ、チュチュ、チュババッ……!」
 嫁が、俺の肉棒のあちこちに唇を押し当て、吸引しつつ離す、ということを繰り返す。
 それを、張り詰めた亀頭部分に何度も繰り返され、俺は、腰を抜かしそうになった。
「んちゅ、ちゅば、ちゅばっ、ちゅぶ……あぁ、すごい……オシッコの穴から、オツユがいっぱい出てますよぉ」
 そう言って、嫁が、俺の尿道口を、チロチロと舌先でくすぐる。
「ひゃ、ひゃひ、ひはっ……ちょ、ま、待って……!」
 あまりの刺激に、俺は、情けない声を出してしまう。
「ちゅぶ、待てません……九郎さんがあんまり可愛くて……はむむっ……!」
 嫁が、俺の肉棒を根元近くまで口の中に入れる。
「ちゅぶぶぶ……んううっ、ちゅぶ、ちゅぶっ……んふ、んふン……じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……」
 嫁は、首を前後に動かし、口の中の粘膜を俺のペニス全体に擦り付け始めた。
 ぐっぽ、ぐっぽ、ぐっぽ、ぐっぽ……という、ちょっと滑稽な、しかしそれどころではないほどに卑猥な音が、浴室に響く。
「う、うああっ……雅……うく……」
「ちゅぶ、ちゅぶぶ、ちゅぱっ……ぷは……まだ出さないでくださいね……」
 そう言って、嫁が、ヒクヒクとおののく俺の肉棒から、口を離す。
 何とも言えない寂しさを感じていると、嫁が、その左右の乳房で俺の肉棒を挟み込んだ。
「うわ……!」
 まろやかな乳房の感触と、その視覚的なインパクトに、俺は、目を見開いてしまう。
「うふふっ……どうですか? 九郎さん……」
 嫁が、自らの乳房を両手で上下に動かし、俺の肉竿を扱き始める。
「うくっ……な、何か、すげえやらしい……」
「もう……九郎さんが私に教えたんですよ……こういうふうにするとすごく気持ちいいんだって……」
 そう言って、嫁は、とろーっと大量の唾液を自身の胸元に垂らした。
 嫁の左右の乳房が、ますます滑らかに、俺のペニスを刺激してくる。
「はぁ、はぁ……ううっ、す、すごすぎるっ……!」
「んふ……九郎さんてば、可愛すぎです……んうっ、んふ、んっ……あふ、はふぅ……」
 かすかな喘ぎ声を漏らしながら、嫁は、乳房による愛撫をますます激しくした。
 左右の乳房を揃えて、あるいは互い違いに上下に動かし、俺の肉棒を揉みくちゃにする。
 そして、嫁は、胸の谷間からひょこひょこと顔を出す俺の亀頭に、連続してキスをし始めた。
「ちゅっ、ちゅばっ、んちゅ……チュッ、チュッ、チュッ……んふ……すごい……九郎さんのオチンポ、ぱんぱんになってますぅ……んちゅ、んちゅっ、ちゅばばっ……!」
 嫁の乳房と唇が、俺のペニスを後戻りできないところまで追い込む。
「やばい……で、出る……出ちまうよっ……!」
「んふふ……いいんですよ、遠慮なんてしなくても……ちゅっ、ちゅぶぶ、んちゅ、ちゅばっ……!」
「でも、このままだと顔に……あ、あっ、ああっ!」
 警告の半ばで、俺は、限界を迎えてしまった。
「きゃうっ! うぷぷっ! あっ、あはぁン!」
 どぴゅっ! どぴゅっ! と迸るザーメンを顔で受け止めながら、嫁が、恍惚の表情を浮かべる。
 俺は、そんな嫁の顔が白濁まみれになるのを見つめながら、さらなる精液を放ってしまった。
「あふ……す、すごいです……うぷっ……こんなに出すなんてぇ……」
「ゴ、ゴメン……」
「いいんですよ……うふふっ、プルプルしてて、まるで寒天みたい……ん、んちゅ……じゅる、ちゅるるっ……ゴクッ……」
 嫁が、顔にへばりついた俺の精液を指で口元に運び、啜り飲む。
 俺は、その光景のあまりの淫らさに、感動に近い何かを感じてしまった。



 そして、その後、俺と嫁は、普通に風呂で体を洗ってから――服を着ず、そのまま寝室へと向かった。




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