ももえ熱演遊戯!



「直太くんって、妹属性あるの?」
 今付き合ってる彼女にこういうことを言われたら、普通のオタクはどう反応するもんだろうか。
 ちなみに、ここは俺の部屋。両親は旅行に出かけてしまってるので二人きりだ。
 どこに出かけるでもなく、対戦型シューティングコンピュータゲームだの対戦型シミュレーションボードゲームだの対戦型トレーディングカードゲームなどをして、こう次々とエキスパンションが発売されると、大人買いのできる“大きなお友達”でない高校生としてはつらいねー、なんて話の次に出たのが、冒頭のセリフである。
 何を隠そう、ナイチチシンボリよりシリメガネカレーの方が好みな俺なわけだが、この比喩で焦点になってるのは妹属性よりもツンデレ好きかどうかな気もするし、そういう意味では俺はわりと互いを素直に大事に思う感じのヒロインのルートが好みのような気もするわけで……。
 とまあ、虚構と現実の区別のつかないダメ人間のロールプレイは中断し、俺は、萌々絵に向き直った。
「俺には妹いないから、その質問は無意味だろう」
「またまたあ」
 萌々絵は、屈託ない顔でケラケラと笑った。
「属性って、そーいうんじゃないでしょ? 実際にいるかどうかとか問題にするんだったら、ネコミミ属性のヒトとか困っちゃうじゃない」
 いや、それは、猫耳属性のそいつそのものが困ったヒトなんだが。
 それはそれとして、萌々絵の言いたいことも分かる。前現代視覚文化研究会長の「血のつながった妹なんて要るわけないじゃないか」なる名セリフもあったことだし。
 しかし、こういう話を普通にできる彼女ってのも、たぶん珍しいんだろうなあ。それとも、これは俺という朱に交わって赤くなったんだろうか?
「そうだなあ……葛城みたいに実際に妹のいるヤツなんかは、よく“そんないいもんじゃないぞ”とか言うし……逆にいないからこそ、そういうフィクションを楽しめるのかもな」
「んふふー、フィクションだったらおっけーなわけね」
 萌々絵は、にっこりと笑った。
「じゃあさ、今日は、なりきりエッチしない?」
「……なんだって?」
 聞き返すと、萌々絵は、ほんのり頬を染めながら、俺を上目使いで見た。う、なんだ? 俺、セービングスローを要求されているのか?
「だから、なりきりエッチ。なりきり掲示板とかなりきりチャットのなりきり」
「いや、意味は知ってるけど」
 俺は、ついそう言ってしまった。やはりこちらもオタクの端くれ、ナニイッテンダワケワカンネーみたいな一般人的切り返しはできないのである。
「ねぇ、やってみようよ。萌々絵、前からちょっと興味あったんだ」
 萌々絵が、俺にはにじり寄ってくる。
 その柔らかそうな桃色の唇に浮かぶ、笑み。あくまで無邪気かつスウィートなその表情に、なぜか、俺は血液の温度を上げてしまう。
 ぴょこぴょこと動く、頭の両脇で結ばれた髪と、大きく円らな瞳。そして、あどけない顔立ちに小柄な体――確かに、全女性を姉系か妹系かに分けねばならないとするなら、萌々絵は妹系に分類されるべきキャラだろう。って、俺、何考えてるんだ?
 幻覚なのか、それともそこまで接近してるからなのか、どこか甘い匂いが、かすかに鼻孔をくすぐってるような気さえする。
「ねえ……お兄ちゃん」
 自然かつ無警戒な仕草で、萌々絵が、俺の太腿辺りに手を置く。
 ミスティックのジェントルタッチか――セービングスローの余地が無い……!
「ダメ……?」
 小首を傾げながら、萌々絵が俺の顔を覗き込む。
 これは、ダメ押しだった。まぎれもないオーバーキルである。
「分かった……」
 俺は、そう返事をして、こっそりと息を整えた。



「ね、お兄ちゃん、隣に座っていい?」
 萌々絵が、ベッドに腰掛ける俺に言った。
 うう、“お兄ちゃん”という言葉そのものに、全身をくすぐられているようだ。
「ああ」
 俺は、無愛想な声で応じた。いや、特段そういうつもりは無いのだが、俺の声というのはもともとだいぶ愛想の無いものらしい。
 そういうわけで、俺は、意識して演技する必要は無い、ということになっている。萌々絵カントクの絶妙なキャスティングというやつだ。
 ぽす、とやや無造作な動きで、萌々絵が俺の傍らに座った。
「あの……えーっと……お兄ちゃん……」
 役に馴染もうとしているのか、それとも演技の一環なのか、萌々絵が言いよどむ。
 ともあれ、萌々絵の態度は、この上も無くナチュラルだ。天然という言葉は、まさにこいつのためにある。
「萌々絵ね……明日、彼氏とデートするの」
 そう言って、エヘヘ、と萌々絵は照れたように笑った。
「デート?」
「うん……直太くん……えと、柳直太くんっていう人。まだ、お兄ちゃんには紹介してなかったよね」
 なるほど、そう来るか――
 事前にちょっと二人で“設定”を決めたが、もちろん台本など存在しない。俺は、テーブルトークRPGで培ったアドリブ力にエンジンを入れた。
「で、なんでわざわざそんなこと報告するんだ?」
 う、なんか、ちょっと不機嫌な声になっちまった。
「あ、うん……あの……それで、ちょっと相談したくて……」
「相談?」
「うん。お兄ちゃんにしか頼めないことなの」
 萌々絵が、体を近付ける。
 どきん、と心臓が撥ねた。
「で、具体的には?」
 もじもじ指を動かしてる萌々絵に、いささか意地悪く訊く。
「えと……そのう……萌々絵ね、決めたの……明日、直太くんと……えーっと……」
「ホテルに行くって?」
「ちが……! あ、ううん、場所は決めてない……けど……うん……そういうコト……」
「…………」
 顔が、熱い。
 やたら複雑な気分で、しかも、それを分析できない。
 ただ、ごちゃごちゃと入り混じり、みっちりと絡み合った感情が、熱く脈打ち、顔を火照らせている。
「でね……そのう……その時に、怖くなったりしないようにしたくて……えっと……」
「萌々絵は怖がりだからな」
「う……うん……だから」
 んくっ、と萌々絵が唾を飲んだ。
 俺も、次のセリフを身構えて待つ。
「お兄ちゃんに……男の人、見せてほしい、の……」
「……おい、あのなあ」
「見せて」
 萌々絵が、俺の言葉を遮る。
「お兄ちゃんなら……ちっちゃいころ、いっしょにオフロも入ったし……その……そんなに怖くないと思うの……だから……」
 ――舐められてる。
 俺が演じるところの架空の兄は、この、萌々絵という名の架空の妹に、甘く見られてるのだ。
 怒りと、苛つきと、暗い策謀を――その時、俺は確かに愉しんでいた。
「ねえ、お兄ちゃん……ダメ、かな……」
「……分かったよ。だから、そんな情けない声出すな」
「な、情けなくないもん」
 ぽこん、と弱い力で、萌々絵が俺の二の腕を叩く。
 俺は、一呼吸おいてから、おもむろにベッドから立ち上がった。
 そして、までベッドに腰掛けたままの萌々絵の前に回り込む。
「あ……お、お兄ちゃん?」
「自分で出してみろよ」
 うわ、凶悪。
 自分で自分のセリフに、苦笑いする。
「えっ……でも……」
 普段だったら言われなくてもそうする萌々絵が、ためらいの色を見せる。
 その態度の新鮮さが、ぞろりと俺の神経を撫でた。
「自分から頼み込んできたんだろ。いい練習だ」
「えっ……? その……そういうのって、女の子がの方がすることなの?」
「ああ」
 肯く俺。
 信じ込む萌々絵。
「…………」
 萌々絵は、ムチャクチャ生真面目な顔で、俺のズボンのファスナーに手をかけた。
 仁王立ちで、萌々絵がするのに任せる。
「あ……あぅ……」
 何だか目を潤ませながら、萌々絵は、俺のペニスを外に取り出した。
 今までのやり取りで、すでに、それは半勃ちの状態である。
「こ……こんなに大きかったかな……? お兄ちゃんの……」
 萌々絵の声がかすかに震えている。
「もっと大きくなる……。触ってみろよ」
 うわ、鬼畜。
 萌々絵は、ちょっと泣きそうな顔で俺を見た。
 その表情が、俺が自分で気付いていなかった嗜虐心を、昂進させる。
「ほら、早く」
「うん……」
 萌々絵の小さな手が、俺のペニスに伸びる。
 その指先がシャフトに触れた時、快感が、電気のように股間から背筋へと駆け上がった。
「あっ、あぁぁ……」
 むくりと鎌首をもたげる俺の肉棒に、萌々絵が声を上げる。
「すごい……こんなふうになるの……?」
「ああ……手で握ってみろよ……」
「う、うん、お兄ちゃん……」
 萌々絵のすべすべの手の平が、竿を柔らかく包み込む。
「やぁん……か、固くなってく……」
「男は誰だってこうなるんだよ」
「そ、そうなんだ……」
 萌々絵が、じっと俺のペニスを見つめる。
「お前の彼氏のもそうだぞ……。そしたら、お前が満足させてやるわけ。分かるか?」
「えっ……えっと……どうやって……?」
「扱くんだよ。手を握ったまま、上下に動かして……」
「うん……あ、で、でも……」
「するんだよ。本番で失敗しても知らないぞ?」
「ん……わ、分かったよ、お兄ちゃん……」
 ゆっくりと、萌々絵が、手を動かしだした。
 あくまでソフトな感触が、じれったいほどのろのろと、快楽を育てていく。
「やだ……ま、まだ大きくなるよ、お兄ちゃん……」
「それが普通なんだよ……もっと手に力入れて……」
「あ、うん……」
 静脈を浮かした肉竿を、萌々絵が扱く。
 ペニスに同調して、じんじんと耳の後ろが熱く疼いているのを、俺は感じていた。
「あ……やん……な、なんか、ぬるぬるして……すごい……」
 喘ぐような声で、萌々絵が言う。亀頭にかすかに息が当たってこそばゆい。
「先っぽから何か出てるよ……これ、セイエキ……?」
「違う。こんなんで射精しないって。もっと力込めないと」
「で、でもぉ……」
「いいからぎゅっと握れって……あと、舐めてもいいぞ?」
「ダ、ダメ……! それは……直太くんにだけ……!」
 右手でペニスを扱きながら、萌々絵が左手を口元に当てる。
「何だよ。もうフェラチオのこと知ってるのか?」
「あう……知らない……知らないもん……お兄ちゃんのバカ……」
 拗ねたように目を伏せながらも、萌々絵は手淫を続ける。
 溢れ出た腺液が萌々絵の指を濡らし、にちゅにちゅという卑猥な音が、部屋に響く。
「は……あぁ……こ、こんなの……すごすぎるよ……あうう……」
 何もされていないはずなのに、萌々絵が、怯えたような声を上げる。
 俺は、何も言う事なく、快楽に身を委ねた。
 しばらく、呼吸の音だけが、交錯する。
 そんな中、快楽と興奮のボルテージだけが、腰を破裂させんばかりに高まっていき――
「……萌々絵、出すぞ」
「え……キャッ!」
 ビュッ!
 最初の一撃を鼻頭に浴び、萌々絵は、可愛らしい悲鳴を上げた。
 そんな萌々絵の顔に、次々とザーメンを撃ち込んでいく。
「あっ、あうっ、やんっ……お、お兄ちゃん……あうぅっ……!」
 声を上げながらも、驚きですくんでしまったように、萌々絵は動かない。
 俺は、いつしか萌々絵の頭に手を置き、その額に押し付けるようにペニスを突き出して、射精を続けた。
 ビュッ、ビュブッ、ドビュ、ビュルッ!
「あっ……はわぁっ……やあぁ……お兄ちゃん、熱い……っ」
 前髪から頬、口元まで精液まみれになりながら、萌々絵が、茫然とした表情を浮かべる。
「あうう……ひ、ひどいよぉ……こんなに……」
「予行演習だよ。お前の彼氏だって、こうするのが好きかもしれないぞ」
「そんな……な、直太くんは……」
 いや、好きだ。間違いなく。
 その証拠に、白濁液によって汚されたその顔を見てるだけで、萎える間もなくペニスに血液が集まってきてる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……あうう……ふうぅ……」
「どうした? これぐらいで音を上げるんなら、諦めた方がいいんじゃないか?」
 言いながら、俺は、萌々絵の顔をティッシュで拭ってやった。
「あ、諦めるなんて……あう……でも……」
 萌々絵が、勃起したままの俺のペニスを見つめる。
「やっぱ、その……こんなに大きいんだったら……入らないかも……」
「……見てやろうか?」
 興奮に煮えたぎったままの脳の命令に従い、俺の口がそんな言葉を発する。
「なっ……お兄ちゃん……?」
「きちんと入るかどうか、きちんと調べといた方がいいだろ? 可愛い妹が彼氏の前で恥をかくのも可哀相だしな」
 俺は、そう言いながら、口元に笑みを浮かべた。
 ただでさえ人相の悪い俺だ。どんな表情になってるものやら、と思い――ますます唇を歪めてしまう。
 演技の中で萌々絵を汚すうちに、俺自身の意識までも暗く塗りつぶされてしまったようだ。
「で、でもぉ……」
「お前だって俺のをさんざん観察しただろ?」
 そう言って、俺は、萌々絵の両肩に手を置いた。
「あ……」
 声を漏らす萌々絵の体を、ベッドに横たえる。萌々絵は、ほとんど抵抗しない。
 萌々絵のスカートをまくり上げ、ショーツに手をかけた。
 クロッチの部分が熱く湿ってるのを確かめてから、果実の皮を剥くように、その可憐な布を取り払う。
「やぁん……!」
 その段になって、ようやく萌々絵が、両手で自らの股間を隠そうとした。
 だが、その動きは、煮えたぎる熱湯のような俺の興奮を、さらに煽るものでしかない。
 俺は、強引にその手をどかし、上体を倒して萌々絵のその部分に顔を近付けた。
 ぽってりとした白い恥丘の中心に、わずかにピンク色の襞をのぞいている。
「確かに、こんな子供っぽい場所じゃ、きちんと入るかどうか心配になるよな」
「そ、そんな……萌々絵のそこ、子供っぽいの……?」
「ああ……」
 まったく、これまであれほど俺のを貪欲に咥え込んでるなんて信じられない。
 俺は、そんなことを思いながら、両手の親指で萌々絵のそこを割り開いた。
「あああ……やっ、だめぇ……」
 萌々絵が、腰を揺する。
「動くなって。ここがきちんと広がるかどうか確かめてるんだから」
 驚くほどの伸縮性を見せながら、しだいに秘めやかな内部を露わにする萌々絵の牝の器官。
 そこは、すでに熱く潤み、悩ましい性の匂いを放っていた。
「あっ……あふ……は……あぁ……」
 敏感な粘膜の表面で俺の息遣いを感じているのか、萌々絵が小さな喘ぎを上げる。
 俺は、思わず唾を飲み込み、そして、ゆっくりとそこに唇を寄せた。
「――キャン!」
 陰核に舌を這わせた瞬間、萌々絵が、子犬のような声を上げる。
「ちょ、お兄ちゃん、そんな……あううっ……!」
 抗議する萌々絵の秘唇に舌を潜り込ませ、うねうねと動かす。
 新たに溢れた蜜が、俺の口元を濡らした。
「あううっ……な、何するの、お兄ちゃんっ……! こんな……はふっ、あうう……ひいいン……!」
 萌々絵の声のトーンが、次第に高くなっていく。
「セックスの前には、まずこうやって準備されるんだよ。知らなかったか?」
 逃げようとするヒップを捕まえながら、俺は言った。
「そ、そん、なっ……ひン……! 汚い……そこ、汚いよっ……オシッコのとこだもん……あうううン……!」
「そんなこと言ってクンニしない男は、結局本気じゃないってことだよ」
「あううっ……そ、そうなの? ひんっ、ひいいん、はひ……あうううっ……」
 萌々絵が、俺の舌の動き一つ一つに反応する。
「ああ……気持ちいいだろ? 男だったら、惚れた相手を気持ちよくしたくなるのが普通だって」
「ああぁっ……そ、そっか……あン……ああぁ……直太くん、萌々絵のそこ、舐めてくれるかな……? ひうっ、はひ、あはああぁっ……!」
 そんなふうに言いながら、シーツの上で萌々絵が体をよじるようにして悶える。
 俺は、萌々絵のそこにむしゃぶりつきながら、服をはだけさせ、脇腹を撫で回した。
「あはああぁっ……お、お兄ちゃんっ……ひいんっ……! ダメ……そんなのダメぇ……あうううっ……!」
 ひくっ、ひくっ、と萌々絵の体が震える。
 俺は、包皮ごとクリトリスを口に含み、舌の裏側で強くねぶった。
「ひあああああ……っ! やっ! やはあっ! そこイヤっ! ヤああああぁン! お、おかしくなっちゃうぅ〜っ!」
 鮮烈な快感に体を貫かれ、萌々絵が背中を反らす。
 俺は、執拗にクリトリスを責め続けながら、指先で浅く膣口を掻き回した。
「はっ、はくっ、はひ、ひいいいっ……あああああ! ひっ! ひいっ! ひきいっ!」
 ぎゅっ、と萌々絵がシーツを握り締め、痙攣する。
 絶頂に達した秘部が、とぷっ、とぷっ、と新たな愛液を分泌した。
「はっ、はひいっ、はふ……な、何……? 今の……」
「イったんだな、萌々絵」
 俺は、口元を拭いながら、体を起こした。
 そして、萌々絵の体に覆いかぶさりながら、薄手のニットをまくり上げる。
「スケベなやつだな……兄貴相手にそんなになって……」
「あうう……だって……だって、お兄ちゃんが……あン!」
 何か言いたそうな萌々絵の乳房を、ブラの上からすくい上げる。
 独特の布の感触を楽しんでから、俺は、ブラをずらしてたわわな双乳を解放した。
「ま、待って、お兄ちゃん……まさか……はあぁン……!」
 直に乳房を揉むと、萌々絵は他愛なく声をとろかせた。
「ここまで来たら、男は我慢できないんだよ。ほんと、勉強不足だな」
 そう言いながら、閉じかかる脚の間に、強引に腰をねじ入れる。
「やっ、やだよぉ……あああ……お兄ちゃん、やめてぇ……! あううっ!」
 濡れた股間にペニスを押し付けるようにしながら、胸を弄ぶ。
 たぷたぷと乳肉を揺らし、乳輪の周辺を舐め、乳首に軽く歯を立てた。
「はあぁっ……! ダメ……ダメぇ……! ああぁン! あひっ! ひいいン!」
 萌々絵が、俺の体の下で、釣り上げられた魚のように暴れた。
 だが、それは、本気の抵抗ではない。
「あああ……し、しないよね? お兄ちゃんは、萌々絵にひどいことしないよね?」
 この期に及んで、そんなことを訊いてくる萌々絵。
「馬鹿だな、萌々絵は……」
 俺は、そんな萌々絵の頬を撫でてから――ペニスに手を添え、ぐっと腰を進ませた。
「あうううううううううっ! お兄ちゃんやめてっ! イヤあああああああああーっ!」
 ぞくぞくと、背中を震わせる悲鳴。
 痺れた脊椎に、ペニスで感じた萌々絵の膣内の熱さが、電気信号となって走り抜ける。
「あああ……ウソ……入っちゃったの……? そ、そんな……ああぁンっ……!」
「入ってるぞ、萌々絵……よかったな」
「よっ、よくないよっ! こんなの……あああ……直太くん、ごめんなさい……はひ……ひいぃン……」
 萌々絵が、泣きそうな声を上げる。
 いや、それは、まさしく快楽による啜り泣きのように俺には聞こえた。
「いくぞ……」
 萌々絵の体にのしかかったまま、腰を動かし始める。
「はふっ! やっ! ああぁン! う、動かしちゃダメぇ〜!」
 粘膜と粘膜が摩擦し、熱い快楽を紡ぎ出す。
 我を忘れそうになる自分をどうにか律し、俺は、萌々絵の膣肉の感触を堪能した。
「はっ、はああっ、はひ……うあああン……ダメぇ……ダメなのぉ……ああぁン……!」
 俺の動きに合わせて、萌々絵が、甘い悲鳴を上げる。
「感じてるんだろ、萌々絵」
「やあん……! 知らない……知らないもんっ……! んくっ、ううっ、あく……あううううっ……!」
 萌々絵が、必死に声が出るのをこらえようとしている。
 俺は、亀頭で膣壁をこするようなつもりで、ペニスを出し入れさせた。
「ひうっ、うく、ああうっ……! ダメぇ……! ダメなのにいっ……! あっ、あううぅ……ひいいいン!」
「うっ……絡み付いてくる……」
「そ、そんなことォ……はっ、はひっ、ひいいンっ! あああああああっ……!」
 無数の肉襞が、うねうねと蠢きながら、竿を刺激してくる。
 まるで火がついたみたいに体を動かしながら、俺は、萌々絵を犯し続けた。
「あっ、あはぁっ、あン、ああぁン……! あひ……はひいぃ……!」
「やらしい声だな、萌々絵」
「あうううっ……だ、だってっ……ひあン! きゃひいいいン!」
「お前がそんなにスケベだなんて知らなかったぞ……!」
 体を重ね、萌々絵の耳元でそう囁きながら、腰の動きを加速させていく。
「ひあああああン! あうっ、あくううっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいぃ〜! ああぁン!」
 しきりに何かを詫びながら、萌々絵が、腰を浮かす。
 結合がより深くなり、肉棒の先端が、奥の壁を叩いた。
「あっ! あう! んくっ! そ、それダメ……! ひうっ! あぐうっ!」
 わずかに苦痛の色の混じった快楽の声を上げながら、萌々絵が体をよじる。
 溢れ出る愛液によって抽送が滑らかになり、ペニスの動きがますます激しくなる。
「あああぁぁ……も、萌々絵、もうっ……! はひっ! あひいっ! ひいいいいいン!」
 萌々絵の呼吸が切羽詰まったものになり、膣内がヒクヒクをおののく。
 そこで、俺は、ピストンを中断した。
「んあぁぁぁ……お、お兄ちゃん……」
 萌々絵が、とろんとした瞳で、俺を見る。
「どうした?」
「あ、あう……その……あ、あああぁぁ……」
 俺のペニスが突き刺さったままの下半身を、萌々絵が、もじもじと動かす。
「あうう……ね、ねえ、お兄ちゃん……イジワルしないでぇ……はふう……」
「そうだな……これくらいで勘弁してやるか」
 俺は、わざとそう言って、腰をゆっくりと引いた。
「あぁん……! ぬ、抜いちゃイヤぁん……!」
 萌々絵が、下から俺の体にしがみつく。
「あ、あう……お願い……お兄ちゃんっ……」
「何だよ。きちんと言わないと分からないぞ?」
 膣口の浅い部分に残ったペニスを動かしながら、次の言葉を催促する。
「あう……」
 萌々絵は、情けない声を上げながら、俺の背中に回した手に力を込めた。
「ね、ねえ……続けて……このまま……お願い……」
「何を?」
「だ、だからあ……あうぅ……セックス……してほしいの……っ!」
 目尻に涙を浮かべながら、萌々絵が叫ぶ。
「お兄ちゃんの……お兄ちゃんのオチンチン、奥まで入れて……ずぼずぼってしてほしいの……ねえっ……!」
「――分かったよ」
 萌々絵よりも、自分自身をこれ以上焦らすことができなくなり、俺は、そう言った。
 そして、萌々絵の体を抱き締めながら、抜けかかったペニスを前進させる。
「あ、あうううううっ……すごいぃ……っ! ひいいいいいンっ……!」
 柔らかな萌々絵の体に、戦慄が走る。
 俺は、萌々絵の白い首筋に唇を押し当てながら、ピストンを再開させた。
「あうっ、うっ、うああっ……! あひン! はひいいン! お兄ちゃん! お兄ちゃんっ! あああああ!」
 二度と放すまいとするかのように、萌々絵の膣肉が収縮し、ペニスを奥まで引き込んでいく。
 鮮烈な締め付けに逆らうように、俺は、抽送のピッチを上げた。
「あっ、あああっ、あう……ああぁン! はひっ! はひぃ〜! き、気持ちイイのぉ〜! ひあああああっ!」
 萌々絵の眉が悩ましげにたわめられ、その口元からは涎が垂れている。
 俺は、半開きの唇に、自らの唇を重ね、舌を吸った。
「うっ、うむ、ちゅぶぶ……んはぁ……あむ、んちゅうっ……あああ……感じちゃう……んふぅ……」
「まったく、どうしようもない淫乱だな、お前」
「あはぁっ……そ、そうなの……萌々絵、いやらしいの……インランなのぉ……あはぁっ、これ好きっ……セックス大好きぃ……あああああああン!」
 歓びを伝えるように、ぎゅっ、ぎゅっ、と膣肉がペニスを締め付ける。
 すさまじいほどの興奮と快感で、視界の中に白い火花が散った。
「ああぁ……イク……イっちゃうようっ……! ああっ! あはあああぁっ! ごめんなさいっ! イク、イクっ、イクうううう!」
「いいぞ、イけよ、萌々絵っ! 俺も、もうっ……!」
 余裕を無くし、無茶苦茶に腰を使いながら、萌々絵の顔にキスの雨を降らす。
「うん、イクっ! イクうっ! あああああ……イっちゃうっ! イクううううううううぅ〜っ!」
 萌々絵が、てっぺんまで昇り詰める。
 少し遅れて、俺は、萌々絵の膣内に勢いよく精液を迸らせた。
「あうう……あああああ……! 熱い……熱いよぉ……! あああン! またイクっ! イっちゃうううぅ〜!」
 ぶびゅっ、ぶびゅっ、と精液のカタマリが子宮口に当たり、そのたびに萌々絵が絶頂を極める。
 その膣肉は、まるで、一滴もザーメンを逃すまいとするかのように、俺のシャフトを搾り上げていた。
「あ、ああああぁぁ……あひ……うああああああン……」
 うっとりとした萌々絵の吐息を聞きながら、俺は、全身を弛緩させた。
 体の下で、二つの乳房がむにゅりとつぶれる感触だけが、妙に新鮮だった。



「うふふふふふ……」
 萌々絵が、俺の傍らで横たわりながら、含み笑いを漏らしている。
 一方、俺は、うつぶせの姿勢で、枕に顔をうずめていた。
「直太くん、ノリノリだったねー」
「や、やめてくれ……死にたくなるから」
 顔が、燃えるように熱い。
「うわぁ、直太くん、耳が真っ赤〜」
「う、うるさい……」
 そう言う俺の声に、力は無い。
「ああん、か、可愛い〜。直太くんがこんなに可愛いなんて知らなかったよぉ〜」
 お前は白いドレスの田舎娘か。お持ち帰りするつもりじゃあるまいな。俺はどっちかというと一人称おじさん娘が好きだぞ。
 にしても……設定のせいか、萌々絵の演技によるものか、異様なまでに興奮してしまったことは確かだ。
 ただ、快楽と引き換えに、何か大事なものを失ってしまったような気がする。まあ、これはいつものことなんだが。
「んふふふっ……ね、ねね、今度は、お姉さんプレイする?」
 嬉しげに弾んだ声で、萌々絵が提案する。
「それは却下。烈しく却下。音速で却下。絶対的却下」
「どして?」
「だって、俺、姉貴いるし」
「えっ!」
 ふはっ、と萌々絵は水木キャラのように鼻息を荒げた。
「しし、知らなかった。だって、会ってないし!」
「上京して下宿して大学行ってるからな」
 枕から顔を上げ、萌々絵の顔を見ながら、言う。
 ……うう、こいつ、期待で目が輝いてるぞ。
「ねえぇ〜、やろうよぉ〜。萌々絵だって、お兄ちゃんいるけどしたんだよぉ〜」
 ああ、そう言えばそうだっけ。
 なんだか、そのお兄さんまで自分の快楽のダシにしてしまったことへの罪悪感と――それとは全く別の、もっと黒い感情が、ふと胸に湧き起こる。
「ったく……」
 俺は、萌々絵を抱き寄せ、そして、まだ何やら言いたげなその唇を、唇で塞いだ。



 ところで、後日、萌々絵のお兄さんに会った。
 俺とぜんぜん違うタイプの、いかにも善人そうな人で、正直ほっとしたことを報告しておこうと思う。


あとがき

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