「あ、ところでさあ、初詣で、どうしよっか?」
「近場にしようぜ。年末のイベントで疲れちまったよ」
互いに携帯電話での年越しトークの最中、俺は、不用意にもそんなことを言ってしまった。
そう、俺は、大晦日が今まさに終わろうとしているこの時、萌々絵と電波を介して会話をしている。まさか、自分がこんな年越しをするなんて、萌々絵とこういう関係になる前は思いもしなかった。
「直太くん、疲れちゃってるの?」
「え? あ、ああ。ちょっとな」
心の底から俺を心配してくれる萌々絵の声に、俺は、ちょっとうろたえた。
俺の彼女、須々木萌々絵。
その天下無敵の天真爛漫かつ天衣無縫――要するに天然ボケっぷりを差し引いて考えれば、俺にはもったいないくらいの、素直で可愛らしい彼女である。
が、萌々絵の天然ボケは、某大阪弁女子高生や某黒服ゴスロリ天使に勝るとも劣らないもので、差し引いて考えることはできやしない。そういうわけで、そんな萌々絵と、外見がヤンキーで中身がオタクである俺とは、どっちもどっちのお似合いカップルということになるのだろう。
それはさておき――
「じゃあさ、初詣では中止して、あたし、直太くんにご飯作ってあげる!」
「え?」
「だって、今、直太くんのお父さんとお母さん、旅行に出かけてるんでしょ?」
「ああ、まあな」
そう、俺の両親は、この時期になると決まって旅行に出かける。2人とも勤め人で、まとまった休みが取れるのがこの時期だけだから、ということもあるのだろうが、残される俺がわびしい年末年始を過ごすであろうことは、あまり気にしていない様子だ。
まあ、この年になれば、年越し蕎麦やおせち料理などというものにあまり関心は湧かないし、お年玉なんか高校入学以来貰っていない。ちょうどいい具合の放任主義だと、俺は思ってる。
「どーせ、インスタントや外食で適当に済ませてるんでしょお」
「そりゃまあ、そうだけど」
この時期に都内某所に大量に出回る同人誌や限定グッズ購入のためなら、3食牛丼で食費節減を図ることも苦にならない。俺は、そういう人間だ。ネギだくにすればきちんと野菜は摂れるしな。
「そんなんだから疲れが取れないんだってばァ。じゃあ、明日、直太くんの家に晩御飯作りに行くねっ!」
「え? そ、それはありがたいんだが……迷わず、うちに来れるか?」
「え、えーっと……だいじょうぶ、お母さんに送ってもらうから!」
「あ、そう……」
「んじゃ、楽しみにしててね♪」
「分かった。腹を空かせて待ってるよ」
「は〜い♪」
萌々絵の嬉しそうな返事に、百八つ目の除夜の鐘の音が、ごーん……と重なった。
「こんにちは〜。あ、それと、あけましておっめでとーっ♪」
午後3時ごろ、チャイムの音にドアを開けると、大きなビニール袋を両手に提げた萌々絵がいた。
ぶおぉーん、という車の音が遠ざかっていくのが聞こえる。どうやら、本当にお袋さんに送ってもらったらしい。
俺の家から萌々絵の家まで、自転車だったら10分ほどの距離なのだが、何しろ、同じ町内で迷わず行ける場所が自分の通う学校だけという萌々絵である。俺の家までの道順を覚えろというほうが無理な話だろう。
「しっかし、ずいぶんと買い込んできたなあ」
2人分の食材としては明らかに多すぎるその量に、俺は、苦笑いしながら言った。
「お昼にね、お母さんと一緒に買物してきたの。元旦でもスーパーってやってるんだねー。あ、家に買い置きしてたのも持ってきちゃったけど」
「へえ……。えっと、親御さん、何か言ってなかったか?」
「お母さんはねえ、頑張ってきなさい、って言ってた」
頬を赤く染めながら、萌々絵が言う。
――もちろん俺はこの時、その言葉の意味を誤解していたのだが。
ところで、萌々絵のお袋さんには、一度だけ会ったことがある。身長が俺よりもありそうな人で、ものすごいナイスバディだった。華奢で小柄な萌々絵とはあまり似ていないように思えたが、胸のところだけは、幸いなことに遺伝したのかもしれない。
と、思考が桃色な方面に行きそうになるのを、あわてて修正する。何しろ、今日、萌々絵がここに来ているのは親御さんも知ってのことだ。高校生らしい付き合いを逸脱することは謹まなくてはいけない。
まあ、向こうの親御さんは、俺が正月から家に1人きりだということを知らないのかもしれないが……。
「じゃあ、お台所、借りるね」
言って、萌々絵が台所へと向かう。
「ああ。えっと……手伝おうか?」
「いいよお。今日は、萌々絵の料理の腕前を見てもらうんだからァ」
「そっか?」
「それに、そのー……見られてると、ちょっと恥ずかしい」
萌々絵のその言葉が、少しだけ引っかかる。
「じゃあ、分かったけど……その間、俺は何してたらいいんだ?」
「そんな気を使わないで、普通にしててよ〜。ここ、直太くんの家なんだし」
「普通に、ねえ……」
うーん、女の子が家で料理してくれている間、普通の男は、何して待ってるんだ?
エアガンの手入れをするか、ネットゲームに顔を出すか、作りかけのプラモデルをいじるか、録っておいた深夜アニメをDVDに編集するか……何か、全部違うような気がする。
「じゃあ、覗かないでね」
まるで、恩返しにきた鶴みたいなことを言って、萌々絵が、台所のドアを閉める。
結局、俺は、リビングに座って、すでに読んでしまったマンガをぼーっと読み返して、時間をつぶすことにした。
午後6時。夕飯にはまだちょっと早い時間に、全ての料理は完成した。
「すごいな……」
素直に、感嘆の声を上げる。
テーブルの上には、実に美味そうな料理がほこほこと湯気を上げて並んでいた。
萌々絵の料理の腕前については、クラスでも定評がある。調理実習では、少ない道具で実に手際よく課題の料理を作り、その味も家庭科の教師を唸らせたほどの腕前だ。
そう、“勉強”と名のつくことにかけては、萌々絵は完璧に近い。唯一平均以下なのは体育だけだろう。
あの萌々絵に我が家の台所を預ける決心ができたのも、そのせいだ。
結果、萌々絵はけして設備が豊富とは言えない台所で見事な料理を作り上げ、さらには料理をする前よりも綺麗に整頓した状態に掃除してのけたのだ。
出来上がった料理も、その匂いをかぐだけで食欲が増してくるような逸品ばかりである。
しかし――
「すごい、量だな……」
「あははははっ、ちょっと、作りすぎちゃったかな〜」
困ったように笑いながら、まだエプロン姿のままの萌々絵が言った。
しかしこれは、“ちょっと”作りすぎ、というどころの話ではない。
スープだけで4種類。オードブルにあたるスナックっぽい料理が大皿で2皿。サラダがでかいボウルに2つ分。魚料理2品(魚介類のマリネと糖蜜色の煮魚)。鳥料理1品(これは鴨だった)。鳥以外の肉料理3品(牛と豚と羊)。卵料理1品(いろいろと具の入った半熟のオムレツのようなもの)。そして、パエリアらしきご飯物が家族用ホットプレートに一杯。デザートも作って冷蔵庫に入れているという話だ。
萌々絵には、こういう極端なところがある。ゼロか無限大か、といった感じだ。多分、キャラメイクの時のポイント配分に問題があったのだろう。
俺は、ちょっと圧倒されながらも、イスに座った。萌々絵も、向かいの席につく。
「えーっと、いっぱい食べてね?」
「ああ。必然的にそうなるな」
俺は、そう言って、とりあえずスープから片付けるべく、スプーンを手に取った。
食卓に上がったものは残さず食べる、という躾を受けてきた俺は、この料理の大群を残すなどということを思いもよらない。
それに、これは、俺がつい「疲れた」などと漏らしてしまったのを気遣って、萌々絵が一生懸命に作ってくれたものなのだ。
「萌々絵も食べろよ。せっかく作ったんだからさ」
「う、うん」
萌々絵が、いつになく曖昧な表情で肯く。
えーと、萌々絵が1人分を食べるとすると……俺は、4人から5人分を平らげる計算になるな。
まあ、大丈夫だろう。きちんと昼は抜いているし、俺は痩せ型な割には胃がでかいのだ。
和洋中と色とりどりの――と言うか統一感にやや欠ける料理を次々と平らげるべく、俺は、猛然と食器を繰り出し始めた。
小一時間ほど、食事に費やしてからのことだった。
食べてるうちに、変な気分になってきた。
別に、料理が不味いではない。それどころか、ものすごく美味い。いずれの料理も、濃くも薄くもない絶妙な味付けで、歯触り舌触りとも申し分ないものばかりだ。
ただ、汗が出る。
特段辛いものを食べてるわけでもないのに、たらたらと額に汗が流れるのだ。
その上、頭皮の部分が、何だか妙に熱い。
暖房が効きすぎてるのかと思ったが、そうではなかった。
何と言うか、やたらと全身の血行がよくなってる感じである。
「……?」
不審に思いながらも、ビーフのトマトソース煮を口に運ぼうとした時、たぱぱっ、と赤い汁が服に落ちた。
「あ、ヤバ」
人前で食事をしてる時に情けない、と思いながら、あわてて拭おうとする。
たぱぱぱぱぱ……。
「なっ! 直太くん! 直太くんてば!」
「わ、分かってるって。いちいち言うなよ」
「じゃなくて、鼻血! 鼻血っ!」
「え?」
うわ。
鼻の下を拭ったら、手の甲が真っ赤になった。
「こっ、これ! これ使って!」
どうしようかなあ、などと思ってた俺に、萌々絵が、キッチンペーパーを差し出す。
うあー、これはすごいな。
気の弱い人間ならくらっときそうなくらいに、白いキッチンペーパーが、俺の鼻血で真っ赤に染まる。
しかしまあ、ちっとも痛みのない状態でこれだけ血が出るってのは、何か不思議な気分だ。
それにしても、この鼻血の量はちょっとハンパじゃない。
「……」
少し、思い当たることがあった。
萌々絵が、食事中、普段とは明らかに違う、何かを観察するような顔で俺を見つめていたことを思い出したのだ。
「萌々絵……お前、俺に何か盛ったか?」
思い切って、俺は訊いてみた。
「も、盛るだなんて……別に毒は入れてないよォ」
当たり前だ。入れられたら困る。
俺は、気を落ち着けるために深呼吸してから、質問を変えた。
「じゃあ、今回の料理に何を使ったのか、それを教えてくれ」
「えと、直太くん、嫌いなものとか、アレルギーとかあったの?」
「それは無いけど、とにかく教えてくれ」
「う、うん……。えーっとねェ……」
萌々絵が、斜め上を見つめながら、使った食材を指折り数える。
途中から、俺は震え上がった。
萌々絵は、外観や味からはけしてわからないような様々なモノを、隠し味に使っていたのである。
哺乳類のうちでは、偶蹄目はいいとしても、食肉目、鰭脚目、奇蹄目、クジラ目の、そして爬虫類では亀目と有鱗目(トカゲ亜目とヘビ亜目)の、両生類では有尾目と無尾目の、体のある部分が用いられていた。しかしまあ、ちょっとした動物園並である。
魚や鳥は、一応普通に食卓に上るようなものばかりではあったが、脊椎動物以外で、定番のハチノコの他に、ザザムシ、カイコ、カミキリムシの幼虫、そしてサソリの粉末を入れられていたのが印象的だった。
植物の方は、ニンニク、ニラ、ウコンは言うに及ばず、マカ、ガラナ、アガリクス、カツアーバ、パフィア、ゴツコーラと、まるで中世悪魔学のデーモンかRPGに登場するモンスターの名称のようなラインナップである。
“ジャイアン・シチュー”という単語が、なぜか俺の脳裏に明滅した。
ただし、萌々絵が隠し味に使った食材は、ある目的を以ってある人々に摂取されているものである。
即ち、体に衰えを感じ出した中高年が、夜の生活を再び充実するものにすべく云々、という……。
「お、お前なあ、どこのスーパーにそんなもん売ってるんだ?」
「えと、えと、だから、家に買い置きしてあるのも持って来たんだってば」
「……」
須々木家では、今晩、俺が口にしたものを、日常的に食材として使っているのだろうか。
ああ、なんか、クラクラしてきた。
「ちょ、ちょっと横になる……」
食事の途中でこんな状態になるのは情けないと思うし、たとえいかなる食材であれ、それを気持ち悪いなどと考えるのは惰弱なことだと思うのだが、それはそれとして、こうもばくばくと心臓が暴れていてはどうしようもない。
「だいじょうぶ? 直太くん……」
萌々絵が、本気で心配した顔で訊いてくる。
こんな顔で言われたら、お前のせいだ、と怒鳴りつけるわけにもいかない。
「大丈夫。ちょっと横になれば平気だ」
とりあえずそう言って、俺は、鼻をペーパータオルで押さえながら、自室に向かった。
しばらくして、とんとん、とノックの音がした。
「どーぞ」
俺が言うと、萌々絵が、すまなそうな顔で入ってくる。
「直太くん……ごめんね」
明らかな涙声で、萌々絵が言う。
「おいおい、何謝ってるんだよ」
「だ、だって……やっぱり、入れる量が多すぎだったんだよね?」
言いながら、萌々絵は、ベッドに横になってる俺に近付き、固く絞ったタオルで、顔を拭ってくれた。う、なんか人にされるとこそばゆい。
「あたし、直太くんにたくさん元気になってもらいたかったから、つい、いっぱい入れちゃって……」
いや、量よりも、入れたものの質の問題のような気もするけどな。
それはともかくとして――
「気にすんな。もう落ち着いた。たかが鼻血だし」
「うん」
ごしごしと、萌々絵が小さなこぶしで涙を拭う。
「それに、その――元気でたよ。きちんとな」
俺は、上体を起こしながら言った。
「え?」
「萌々絵も、期待してたんだろ? そういう効果を」
「直太くん……それって、そのォ……」
萌々絵が、上目遣いで、俺を見る。
いかん。
いかんな、やっぱ、こういう展開になるか。
でも、ダメだ。やっぱりこうなると、もう引っ込みがつかない。
だって――だってこれはもうしょうがないじゃないか。そう、自分に言い訳する。
俺は、自分の寝床であるベッドに引っ張りこむような感じで、萌々絵の両手を引き寄せた。
萌々絵も、逆らわない。
柔らかな重み。
ぎし、とベッドのスプリングが、2人分の体重で軋んだ。
「直太くん……」
再び横になった俺に覆い被さるような姿勢で、萌々絵が、俺の股間に右手を伸ばしてきた。
すでにガチガチに勃起している俺のそれが、萌々絵の手の感触を、トランクスと、ジーンズの布地越しに感じる。
「す、すごい……すごく元気だよ……」
「萌々絵のせいだぞ」
「あたしの……せい?」
「いや、違うな……。萌々絵のおかげ、だよ」
ぐるん、と狭いベッドの上で注意しながら、体の上下を入れ替える。
自然と、息が荒くなった。
荒い息のまま、萌々絵に口付ける。
ふーっ、ふーっ、と自分でもおかしくなるくらい鼻息が漏れた。
「んっ……ちゅっ……ちゅっ……ちゅうっ……んむっ……うン……ぷはぁっ……」
互いの唇と舌の感触に陶然となりながら、俺たちは、唇を離した。
萌々絵が、さっきから、俺の硬度を確かめているように、股間の強張りを触り続けている。
俺は、萌々絵にのしかかった姿勢のまま、片手でベルトを緩め、ジーンズを下ろした。
萌々絵が、俺のトランクスの中に、手を差し入れる。
「きゃ……」
それに、直接触れて、萌々絵は悲鳴のような声を上げた。
俺のそこは、かつてないほど固く勃起し、そして、早くもぬるぬると先走りの汁を漏らしている。
萌々絵は、それを、にちゅ、にちゅ、と音をさせながら、扱き始めた。
「すっごぉい……触ってるだけで、ドキドキしちゃう……」
「それ、いつも言ってないか?」
「えと、だったら、いつもよりもっとドキドキしてる」
そう言う萌々絵の顔は、ぽーっと赤くなり、大きな瞳はさっきとは別の意味で潤んでいるように見えた。
そんな萌々絵のスカートの中に、右手を差し入れる。
ショーツの上からアソコに触れると、薄い布の向こうに、はっきりと熱と湿り気を感じた。
「濡れてる……」
「だ、だって……直太くんのが、もうこんななんだもん……」
理由になってるようななってないような萌々絵の言い訳を聞きながら、俺は、いささか性急な動きで、萌々絵のショーツを脱がしにかかった。
萌々絵が、んっ、と声を上げながら、お尻を浮かして協力してくれる。
剥き出しになった、陰毛に淡く飾られた恥丘に、手を重ねた。
指先が、じっとりと濡れたクレヴァスに触れる。
柔らかいぬめりを感じながら、俺は、そこを上下に愛撫し始めた。
「ひゃ、ひゃうぅン……直太くんの指、アソコさわってるゥ……」
萌々絵が、うっとりと声を上げながら、俺のペニスを扱き続ける。
「直太くんのも、びちゃびちゃ……あぁン……びちゃびちゃだよォ……」
確かに、自分でも呆れるほどの腺液が、俺の鈴口からは溢れまくっている。
こりゃ、トランクス替えないとダメだな……。
そんなことを思いながら、俺は、萌々絵のアソコを執拗にまさぐった。
もう、受け入れ態勢は充分なような気がするのだが、ここで俺がすぐさま挿入してしまっては、あまりに一方的過ぎるような気がしたのである。
自分自身を焦らすような気持ちだ。
「あっ……ああぁン……きもちイイ……アソコ、いいのォ……っ!」
萌々絵が、着ている服がしわになるのも気にせず、その体をよじる。
俺は、その首に口を寄せ、ちろちろと首筋から耳たぶまでを舐めた。
「あっ、あーッ……な、直太くんっ……そこ、イイっ……♪」
きゅんっ、と萌々絵の靡肉が、収縮する。
「な、直太くん……あたし、あたしもう……」
「欲しいのか?」
つい、そうやって訊いてしまう。
「ウン、ほしいィ……直太くんのこれで……オチンチンで、萌々絵のこと、もっと気持ちよくしてほしいの……」
期待していた以上に淫らな口調と言葉で、萌々絵がおねだりをする。
俺は、そのことに、ますます欲情した。
すでにずり下がっていたトランクスとジーンズを脱ぎ捨てると、萌々絵も、自らスカートを脱いでしまった。
が、俺も萌々絵も、まだ上半身は服を着たままだ。
構わず、俺は、萌々絵の小柄な体にのしかかった。
熱いぬかるみをペニスの先端で感じ、一気に侵入する。
「あ、ああうンッ!」
いつもよりちょっと苦しげな声を、萌々絵が上げた。
それでも、俺は、萌々絵の一番奥にまで、亀頭を侵入させた。
根元まで萌々絵の温かな膣肉に押しつつまれ、じわーっと熱い快感が腰から全身に広がる。
「は、はわぁ……おっきいぃ……いつもよりおっきいよお……」
萌々絵が、うわ言のように言う。
俺は、ぐんっ、ぐんっ、ぐんっ、ぐんっ、と腰を動かし始めた。
「ひぃあうッ! あうッ! あんッ! あッ! あッ! ああぁッ!」
抽送にあわせて、萌々絵が悲鳴のような声を漏らす。
普段着を着たままの萌々絵を、無理矢理に犯しているような、そんな錯覚が、熱い興奮となって脳の中を灼いた。
「あんッ! ああんッ! 直太くんッ! 直太くんッ!」
萌々絵が、俺の背中に手を回し、しがみついてくる。
まるで、快感に屈服し、心ならずも陵辱者に抱きついているかのような、そんな風な感じだ。
「そ、そんな……そんなはげしく……っ! あんッ! きゃんッ! きゃうぅンッ!」
腰を腰に叩きつけるような、激しい動き。
何かに取り付かれたように、そんなピストンを繰り返す。
きつく摩擦する粘膜と粘膜が、ヒリヒリするような快感を紡ぐ。
もう、ペース配分も何もない。ただ、快感を求め、快感に煽られて、また快感を求める。
「あッ! あぁーッ! もうッ! もうダメっ! もうイっちゃう! もうイっちゃうよーッ!」
まるで短距離走のようなセックスが、早くも萌々絵を追い詰めている。
俺は、そのことに鮮烈な喜びを覚えながら、直線的な動きをさらに繰り出した。
萌々絵が、服の上から、俺の背中に爪を立てている。
そのお返しとばかりに、萌々絵の可愛らしい小さな口に、噛み付くようなキスをした。
「むぐっ! んぐうッ! んむっ! んッ! ふうぅーッ!」
少し苦しげな鼻声を漏らしながらも、萌々絵が、懸命に俺のキスに応えようと、舌を突き出す。
俺は、そのぬるぬると柔らかな舌を吸い上げながら、最後のスパートを萌々絵の中に送り込んだ。
「えうッ! んわッ! あッ!」
萌々絵が激しく身悶えた勢いで、ちゅぽん、と口が離れた。
「ああああああッ! イ、イクッ! イクッ! イクうううぅぅぅーッ!」
キスから解放された口でそう叫び、萌々絵は、ぐううっ、と背中を弓なりに反らした。
びゅううううううーッ! びゅぶッ! びゅぶッ! びゅぶッ! びゅーッ!
そんな萌々絵の膣奥に、最初の濃い精液を、連続して迸らせる。
「あっ……あつ、いィ……っ!」
きゅうぅーっ、と萌々絵の中が、強烈に締まった。
そして、その体が、ぴくん、ぴくん、ぴくん、と痙攣する。
「ふ、にゃああぁぁぁ……」
猫のような声を上げ、萌々絵は、かくん、と全身を弛緩させた。
その体に覆い被さったまま、俺も、ぐったりとなる。
しばらく、俺と萌々絵は、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返した。
初体験以来の、何とも余裕のないやり方だった。
ちょっと気恥ずかしくなりながら、萌々絵の顔を見る。
萌々絵は、まだ、夢の中にいるような恍惚顔だ。
そんな萌々絵に対する愛しさが込み上がってきて、俺は、ちゅっ、ちゅっ、とその頬や額にキスを繰り返した。
萌々絵も、そんな俺に幼い感じのキスを返してくる。
「ね、直太くゥん……」
萌々絵が、甘たるい声で言った。
「直太くんの、あたしの中で、まだカタいままだよ……」
「……」
言われて、気付いた。
萌々絵の中で、俺のモノは、一向に萎えていないのである。
「エヘヘ……やっぱり、お料理のせい?」
「かも、な」
俺は、先ほどとは少し違った照れくささを感じてしまった。
「……萌々絵の企みどおりだろ?」
そして、できるだけ意地悪い口調でそう言ってやる。
「えっとねェ……ちょっとは、ね♪」
悪びれもせず、萌々絵は言う。
「ね、直太くん……このまま、できる?」
「あ、ああ」
「じゃあ、おねがい……今度は、もうちょっと、ゆっくり、しよ……」
「分かったよ」
そう言って、俺は、少し考え込んだ。
そして、萌々絵のカーディガンのボタンを、一つ一つ、外していく。
「あーん……直太くんの、えっちィ」
萌々絵が、俺のことを甘く睨んで、そんなことを言う。
「何今さら言ってるんだ、お前」
「エヘヘヘヘェ……直太くんも、脱がしちゃうからァ……」
そんなことを言い合いながら、下半身は繋がったまま、服を脱がしあった。
その間、互いに身じろぎするたびに、粘膜がこすれ合い、ひくん、と反応してしまう。
そして、全裸になる頃には、俺も萌々絵も、すっかりそういう気分が出来上がってしまっていた。
愛液と、俺の放った精液でどろどろになってるその中で、再びペニスを動かし始める。
「あ、あふぅン……」
最初は、ゆっくりと。そして、少しずつ速く。
にゅるる、にゅるる、にゅるる、にゅるる……という滑らかな粘液質の感触が、恐ろしく卑猥だ。
「あ、あふぅ……ふぅン……あ、ああぁン……」
1回目ほど鋭くはないが、深く感じているような声を、萌々絵が上げる。
俺は、密着していた上体を起こし、萌々絵の体を見下ろすような形になった。
そして、両手を、萌々絵の胸に伸ばす。
「あ、きゃふン……はぁア……っ」
俺は、小柄な体の割に大きな萌々絵の胸を、むにゅっ、むにゅっ、と揉みしだいた。
柔らかく弾力のある、極上の感触。
俺の手に余るくらいの肌色の半球体が、自在にその形を変え、そしてすぐに元に戻る。
乳首を指に挟んでくりくりと転がすと、そこはすぐに固く勃起した。
「やン、やあぁン……おっぱい、だめェ……」
「どうしてだよ?」
「だ、だってェ……感じすぎちゃうもん……ああぁン……っ!」
その言葉どおり、抽送を続けながら乳房を愛撫すると、萌々絵は、くねくねとたまらなそうにその体をよじった。
「きもちいい……きもちいいよォ……あはン、あぁン……な、直太くゥん、いいのォ……っ!」
全身に走る快感の電流を味わっているような感じで、萌々絵が喘ぎ、声を上げる。
俺の行為で感じている萌々絵が、たまらなく可愛い。
俺は、そんな萌々絵ともう一度くっつきたくなって、彼女の上半身をぐっと持ち上げるように起こした。
「あっ……きゃううううッ!」
萌々絵が、驚いたような声を上げて、俺に抱きついてくる。対面座位の姿勢だ。
「あっ……くうううゥン……すごぉい……お、奥まで、来てるゥ……っ!」
萌々絵は、俺の首にかじりつくように両腕を回し、ぷるぷるっ、と体を震わせた。
「はぁ、はぁ、はぁ……ね、直太くん、動いていい?」
「ん?」
「あ、あのね……自分で、動きたいの……自分で動いてきもちよくなりたい……ダメ?」
普段は自分からいろいろやってくる萌々絵が、珍しく俺にそんな許可を求めてくる。
「駄目って言ったら、どうする?」
つい、俺は、そんなふうに言ってしまった。
萌々絵は、むぅー、と小さく唸ってから、かぷっ、と俺の肩に噛み付いた。
全然痛くない。むしろ気持ちいいくらいの刺激。
けど、俺は、取りあえず降参するふりをすることにした。
「分かった。分かったよ、萌々絵。動いていいから」
「むうぅ〜」
またちょっと唸ってから、萌々絵は、くいっ、くいっ、と自分から腰を動かし始めた。
自分の一番感じる部分を探っているような、そんな動き。
それが、妙に新鮮な感じで、俺のいきり立った肉棒を刺激する。
「あ、あぅン……あッ……ああァ……っ!」
ちょうど一番いい場所を見付けたのか、萌々絵が、白い喉を反らすようにして喘ぎ声を上げる。
萌々絵の動きが、より激しくなった。
まるで水蜜桃のような萌々絵のお尻が、ぷりんぷりんと動く様は、淫らで、そして何だか可愛らしい。
「やっ……やぁン……ここ、ここイイ……すごい……あいッ! あンッ! か、かんじちゃうゥ……ッ!」
きゅうん、きゅうん、と萌々絵の膣道が締まる。
その上、萌々絵は、さらに大胆に腰を動かし始めた。
上下運動に、ぐいん、ぐいん、と何かを捏ねるような動きが加わる。
まるで、萌々絵の中が、柔らかく俺のを締め付けながら、さらに絡みついてくるような感じだ。
「あッ、あぁンッ! あうッ! あン! あっく……んんんんんッ!」
「う……ぅ……っ……あ……ぁぅ……」
萌々絵の声に、俺の情けないうめきが重なる。
萌々絵は、自ら紡ぎだす快感に酔いながらも、俺が感じているということに気付いたようだった。
「ねっ、直太くん……あぅン! な、直太くんも、感じてる? 気持ちよくなってる?」
「う、くっ……」
俺が素直に肯くと、萌々絵は、嬉しそうに笑って、また、かぷっ、と肩を噛んできた。
かぷ、かぷ、かぷ、と肩から首筋にかけて甘噛みされる。
このまま攻められっ放しでは……と思い、俺は、萌々絵のヒップを固定し、ぐん! と腰を突き上げた。
「ふぐうっ!」
萌々絵が、強く俺の肩に噛み付く。
その痛みに、奇妙な勝利感を感じながら、萌々絵の腰を強引に上下に動かし、それに合わせてペニスを大きく抽送する。
「んっ! ふぐッ! あうッ! あッ! あッ! あーッ!」
とうとう、萌々絵は噛み付いていられなくなった。
「ずっ、ずるいっ! 直太くん、ずるいよっ!」
「んっ……何が、だよ……?」
「だってっ……ああぁんっ! だってえっ……!」
叫ぶ萌々絵を抱き締めながら、追い詰めていく。
1回目よりもさらに大きな、絶頂の予感。
それを感じながら、萌々絵の中に強い動きを送り込む。
「ひあぅッ! あぐッ! あうぅッ! 当たるッ! 奥にっ! 奥に当たるぅッ! 当たってるっ!」
先端で子宮口を小突かれ、萌々絵は悲鳴をあげた。
「あッ! あーッ! ダメ! 奥もうダメぇ! ダメなのッ! やああああぁぁぁッ!」
「どうして?」
「だってっ! あンっ! イっちゃう! 先にっ! 先にイっちゃうっ! んあああン!」
俺よりも一足先に絶頂を極めそうになる萌々絵。
その体を、こめかみのところに自分の脈拍を感じながら、ムキになったように攻め立てる。
「ああぁンっ! ダメってっ! ダメって言ってるのにっ……きゃうううッ! あーッ! ああーッ! あああーッ!」
俺に固定された腰を震わせ、両手で俺の肩を掴んだ状態で、ぐううっ、と萌々絵が体を仰け反った。
「イっちゃうッ! イっちゃうッ! イっちゃうッ! イっちゃうッ! イっちゃうーッ!」
ペニスの一突きごとに、萌々絵は、そう叫んだ。
上下運動に合わせて、ぶるんぶるんと乳房が揺れる。
「あーッ! イっちゃったっ! イっちゃったのにいッ! またッ! またなのッ! ダメえ! ひいいいいいいいンッ!」
連続したアクメにさらされ、萌々絵は、もう何も分からない状態のようだ。
ぎゅーっ、と俺の肩に、すごい力で爪を立てる。
その痛みを引き金に、俺は、1度目よりも強い勢いで精を迸らせた。
びゅうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーッ!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
近所に聞こえるのではないかと思われるような絶叫をあげ――萌々絵は、再び全身から力を抜いてしまった。
そんな萌々絵の体を、いろいろなものでじっとりと湿った状態のシーツに横たえる。
自分でも驚いたことに、萌々絵の中に収まったままの俺のペニスは、未だ、勃起しっぱなしだった。
それどころか、萌々絵のあまりの乱れっぷりにいつになく興奮してしまった俺は、ほとんど間をおかず抽送を再開させていた。
「はひぃい……っ」
萌々絵が、奇妙な声を上げながら身をよじり、俺から逃れようとする。
が、体にうまく力が入らないような状態だ。
横に体を捻った状態の萌々絵の右脚にまたがり、左脚を持ち上げるような格好になる。
側位と言うのか、帆掛け舟と言うのか――そんなこと、どうでもいい。
愛しい相手を、まるで性欲処理の道具のように扱う、狂った愉悦。
普段滅多にしない姿勢で萌々絵を組み敷きながら、俺は、猛然と腰を使った。
全身を濡らした熱い汗が、雫になって飛び散る。
「ひぎぃ……あぐッ……あッ……! もうッ……もう許してェ……許してよォ……!」
いつも、ことこの方面に関しては俺を翻弄しっ放しの萌々絵が、泣き声を上げている。
そんな萌々絵が愛しくてたまらなくなり、ますます激しくピストンを行い、粘膜を擦り合わせてしまう。
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ……!
ますます反り返った肉棒が、愛液や、射精2回分の精液を掻き出すように、萌々絵の中を攪拌する。
「ひいっ……ひいぃンっ! おね、がいっ……すこし……すこし、やすませてェ……あッ……んひいいいイッ!」
萌々絵の可愛らしい悲鳴を聞きながら、目の前にある左脚を抱え、足の指をちゅばちゅばと舐めしゃぶる。
ああ、そっか、この体位は、こーいうことをするためのものなのか……。
もう、俺の思考も、ぐらぐらに煮えたぎってて訳が分からない。
「だ、め……もう、だめェ……お口でっ、お口でするからァ……もう、もうしないでェ……あひッ! またッ! またイっちゃう! イっちゃうのッ! イっちゃうううッ! ンあぁーッ!」
萌々絵が、何やらヘンな交換条件を出してる。
口が、どうしたって……?
分かった、最後にアソコの中に射精したら、フェラチオさせてやるから。
フェラチオ、好きだもんな、萌々絵は……!
「イ、イっちゃったぁ……あいいいいいいいいッ! ンあああッ! ま、また……あひいいンッ! イきたくないッ! もうイきたくないのにッ! あああッ! 死んじゃう! 死んじゃうッ! 死んじゃううッ! ホントに死んじゃうよおォーッ!」
ずくん、ずくんというすごい痛みと、それをさらに上回る快感で、ペニスがぱんぱんになっている。
この状態でシャセイしたら、俺、どうなっちゃうんだ?
って言うか……もう……俺……どうにかなっちゃってるんじゃないか……?
「イクっ! イクのイヤッ! ヤなのっ! もうヤなのっ……んあああああああーッ! あーッ! またッ! またイク! イク! イク! イク! イク! イクーッ!」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
これ……おれの声?
びゅううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううーッ!
うわっ、すごい……。
すごくたくさん、出てるよ。
「あーッ! あーッ! あーッ! あーッ!」
「あーッ! あーッ! あーッ! あーッ!」
なんか、おれとももえ、おんなじようにさけんでるし……。
あ、あああああああ……。
あああ……。
あー……。
でた……ぜんぶ、でた……もう、からっぽだ……。
え、っと……。
さっき、ももえが、口がどーとか言ってたっけ……。
「ほら……」
のろのろとしかうごかないからだをのろのろとうごかして、どろどろのべちょべちょのペニスを、ももえのかわいい口元につきつける。
「……ふゎ、ぁ、ぁぁ……」
ちゅむ、とももえが、おれのペニスにキスをした。
おれは、そんなももえのあたまを、なでなでしてやる。
ももえが、ちからなく、それでも、にへっ、とわらった……。
――そこで、俺の記憶は途切れている。
そして、次に目を覚ました時、俺は猛烈な寒気に襲われていた。
39度近い熱が出ていた。
冬の夜に汗びっしょりの裸で眠りこけていたのだから、当然の結果だ。
だと言うのに、萌々絵はぴんぴんしてて、んでもってわたわたと慌てながらも、松の内の間中、俺の看病をしてくれた。
やっぱこいつには敵わないんだな、と、熱で朦朧とする頭で、俺は思った。