番外編
「ミミコちゃん誕生日」


 今日は、ミミコの誕生日だ。
 いや、厳密なことを言うなら、ちょっと違う。今日は、僕が、アンドロイドであるミミコを再起動させるのに成功した日である。
 でも、僕とミミコにとっては、誕生日と同じことだ。
 言うなれば“僕の”ミミコの誕生日、ってとこだろうか。
 涼香お嬢さんと一緒に、ミミコを直し、そして、ミミコが僕のことをマスターと呼んでくれてから、丸一年。
 いろいろなことがあったが、過ぎてしまえばあっという間だったような気もする。
 アンドロイドのパーツ製作という僕の新しい仕事も、どうにか軌道に乗り始めた。そういうわけで、ミミコにバースデイのケーキを買ってあげるくらいの余裕は、きちんとある。
「うわァー」
 可愛らしい赤いキャンドルを一本だけのせたケーキを前にして、ミミコは歓声をあげた。
 畳の上のちゃぶ台にケーキ、というのはヘンな感じだけど、これはこれでいいような気もする。
「えっとォ、電気消して、いいですカ?」
「ん? なんで?」
「そっちの方が、ロマンチックかなあって思っテ……」
 にへへ、と照れたように笑いながら、ミミコが言う。
 こうして見ると、未だに、ミミコの正体はごく普通の人間の女のコなんじゃないか、なんて思ってしまう。それくらい、自然な笑顔なのだ。
 僕は、そんなミミコの笑顔に笑いかけながら、蛍光灯の紐を引いて、ナツメ電球だけを点けることにした。
 絞られたオレンジ色の照明の中、キャンドルに火を灯す。
「にヤー……」
 ミミコが、感心したような声をあげながら、そのささやかな炎に見とれている。
「えーっと、これ、吹き消すんですよネ?」
「そうだよ」
「なんだか、消すの、もったいないでス……」
 その大きな瞳にキャンドルの明かりを反射させながら、ミミコが言う。
「でも、誕生日っていうのはそういうふうにするならわしなんだよ」
「あ、ミミコ、それなら知ってまス♪」
 嬉しそうな声で、ミミコが言った。
「この前、涼香さんとお電話したとき、聞きましタ」
「お嬢さんに?」
「はイ。それから、お誕生日には、好きなものおねだりできるっテ」
「うーん、どっちかと言うと、おねだりする前に、贈り物をもらう、っていうのが筋のような気がするんだけど」
「そうなんですカ?」
 きょとん、とした顔で、ミミコが言う。
「でも、ミミコ、欲しいものがあるんでス」
「ふーん」
 これは初耳だった。アンドロイドであるミミコが、そんな風なことを思ってたなんて。
 でも、アンドロイドの電子頭脳は、経験をつめばつむほど、その思考法が人間に似ていくはずだ。そう思えば、ミミコの言葉だって、驚くにはあたらない。
「ミミコは、何が欲しいの?」
 どんな答えが聞けるんだろう、とちょっとばかり好奇心を刺激されながら、僕は訊いた。
「あたし……マスターの赤ちゃんが欲しいんでス!」
「えええ?」
 僕は、思わず声をあげてしまった。



「マスターっ!」
 ミミコが、ててて、とおっきなお腹をかかえて小走りに僕に近づいてきた。
「だめだよ、走っちゃ!」
 僕は、慌てた声で言う。
「ご、ごめんなさイ……。でもでも、マスターに教えてあげたくっテ……」
「ん?」
「おなかの中の赤ちゃんが、動いたんですウ!」
 満面の笑みを浮かべて、どこか誇らしげに、ミミコが言う。
「へえー」
 そう言いながら、僕は、ぽこん、と傍目にもふくらんだミミコのお腹を、服の上から撫でた。
「服の上からじゃ分かりませんヨ。じかに、触らないと……」
「そ、そうかな?」
「はイ♪」
 そう言って、ミミコは、マタニティ仕様の紺色のワンピースをめくりあげる。
 子供っぽいデザインのショーツの上で、ミミコのお腹が、ぽっこりと大きくなっている。
 不謹慎な話だけど、どう見てもミドルティーンの少女でしかないミミコが、こういう姿になっているのは、なんだか妙にエロティックだ。
 そもそも、ミミコのあどけない顔と、“妊娠”という言葉とは、ひどくギャップがある。そのギャップに、僕は興奮してしまっているらしい。
「……」
 僕は、なんだかちょっとエッチな手つきで、ミミコのお腹を撫でた。
「んク……」
 ミミコが、小さく、くすぐったいのをこらえるような声をあげる。
 僕は、右手でミミコのお腹を撫でながら、左の腕でミミコの肩を抱いた。
「うーん、わかんないなあ……」
 そんなことを言いながら、僕は、すべすべのミミコのお腹を撫で続ける。
「で、でも……さっきは、動いたんですよ、赤ちゃン……」
 そう言いながら、ミミコが、僕の顔を見上げた。
「マスターの、赤ちゃんでス……」
「うん」
 そう言って、僕は、ミミコの猫耳に口を寄せた。
「僕と、ミミコの赤ちゃんだよ」
「はぁイ♪」
 嬉しそうにそう返事をするミミコの下腹部に、僕は、次第に手を伸ばしていく。
「あ……ッ!」
 ミミコが声をあげるのにもかまわず、僕は、可愛らしいショーツ――と言うより、パンツと言ったほうがしっくりくるんだけど、その中に、右手を差し込んだ。
「はにゃあン……」
 ミミコは、抵抗しない。それどころか、甘えた声をあげながら、僕の腕に体重を預けるようにする。
「ノックすれば、赤ちゃん、返事してくれるかな?」
 そう言いながら、僕は、パンツの中で、いやらしく指をうごめかせた。
「やんやあン……マスター、そんなことしたら、赤ちゃん、びっくりしちゃウ……」
 そう言いながらも、ミミコは、抵抗しようとはしない。
 それどころか、僕の胸に顔を押し付け、本物の猫みたいに、すりすりとほっぺたをすりつけた。
 次第に、僕の指の動きは大胆になる。
「はッ、はにゃッ! にやああン……ふにゃ……みゃあああぁ……ン♪」
 ミミコは、ぎゅっ、と僕の腕を握りながら、顔を上げた。
 潤んだ瞳で、キスをねだる。
 僕は、ゆっくりと、ミミコに顔を寄せた。
 二人の唇が、重なる。
 ぷちゅっ、ぷちゅっ、という音が聞こえるくらい、濃厚なキス。
 ぷるぷると、ミミコの小さな体が震えている。
「ふみゅ……んッ……ン……ふぅ〜ン……にゃ……はぁぁァ……」
 媚びるようなミミコの息遣いが、次第に高まり、濡れていく。
 僕は、ますます激しく、ミミコの秘所で、指を游ばせた。
 あふれた蜜で、ミミコのショーツにはシミができでしまっている。
 そして――
「ンにゃにゃーッ!」
 びくうん、とミミコの体がひときわ大きく痙攣した。
 ぴゅるぴゅると溢れた愛液が、ミミコのショーツをぐっしょりと濡らす。
 そして、ぐったりとなったミミコの体を、僕は、しっかりと抱きとめた……。



 とまあ、そういう夢を、ミミコは見ている。
 無論、一晩中、ミミコの夢をモニターしていたわけじゃない。起き抜けに、編集済のものをのぞいてみたのだ。
 夢というのは、断片的な記憶の映像化である。今僕が見ているのは、それを編集して、どうにか一貫性を持たせたものなわけだ。
 夢だから、舞台がころころ変わったり、夜のはずだった窓の外がいつのまにか昼間になったりもしている。
 人間の夢と同じだ。
 ミミコの電子頭脳は、他のアンドロイドと違い、夢を見ることによって、記憶の最適化を行っている。僕は昨夜、そのシステムにちょっと働きかけ、妊娠に関する記憶や知識を少し強化してみたのだ。これは、ミミコ自身の希望による。
 そして、これこそが、僕からのささやかなミミコへのプレゼントだったのだが――
「ミミコってば……」
 僕の独り言は、苦笑いになってしまって、そのあと言葉にならない。
 と、ミミコが目を覚ました。
「あ、マスター……」
「おはよ、ミミコ。いい夢見れた?」
 ちょっと意地悪な気持ちでそう訊くと、ミミコはかぁーっと顔を赤くして見せた。
 ミミコはいつも、下着を着けた半裸の状態で、メンテナンスベッドに寝ている。
 その下着が、エッチな汁で、ぐっしょりと濡れていた。



「なんだか、思っていたのと違いましタ」
 夕方、丘の上の公園を並んで歩きながら、ミミコは、僕にそう言った。
「うーん。まあ、そうだろうね」
 僕は、そんなふうに答える。
 週末なので、人通りは多い。普段は曜日に関係ない生活をしている僕だが、こういうときは、日曜日なんだということを意識してしまう。
 気持ちのいい春の緑色の丘を緩やかに上る遊歩道。親子連れやカップルが、笑顔を浮かべながら、暮れかけた空の下を歩いている。
 メイド服姿のネコ耳アンドロイドであるミミコは、そんな中、ちょっと浮いた存在ではあるが、皆の注目を集めるほどではない。
 すでにアンドロイドは社会に浸透し、さして珍しいものではなくなっている。
 とは言え、僕のように、アンドロイドを大っぴらに外に連れ出すような人間はまだ少ない。あからさまに僕の腕にじゃれつくミミコを、ヘンな目で見るおじさんおばさんだって、いることはいる。
 でも、そんな奇異の視線にはもうなれてしまった。
「うわーッ♪」
 僕たちの登る道が、ささやかな展望台に出たとき、ミミコが素直な歓声をあげた。
 そう言えば、ミミコをここに連れてきたのは初めてだ。
「ここからだと、街が一目で見えますネ」
「うん。けっこういい眺めでしょ」
「えーと、うまく言葉にできないけど、気持ちイイ、って思いまス♪」
 そう言いながら、ミミコは、うーん、と伸びをした。
 そして、視線を下に落とし、今まで僕たちが登って来た遊歩道を見下ろす。
「はややッ?」
 と、ミミコが妙な声をあげた。
 つんつん、と袖を引かれて、僕も視線を向ける。すると、中学生らしきカップルが、微笑ましいキスシーンを演じていた。
 遊歩道に人通りがないと思ってのことだろうけど、この展望台からは丸見えだ。
「ふわー……ン」
 ミミコが、奇妙な声をあげつづける。
「人間同士も、ミミコたちとおんなじようにスルんですネ〜」
「そりゃまあ、そうだよ」
 ミミコのちょっとずれた物言いに、僕は苦笑いしながら言う。
「ふーン……でも、いいなァ……」
「え?」
 僕は、ミミコのささやきを聞き返した。
「羨ましいの? ミミコ」
「えと……だって……」
 ミミコは、僕に向き直ってから、胸元の鈴の飾りを、もじもじといじくった。
「あの人たちは、そのォ……赤ちゃん、作れるんですよネ」
「うーんと、まあ、一般的にはね。それが羨ましいの?」
「えっと、何て言うか……赤ちゃんのことだけが、羨ましいわけじゃなくて……」
「?」
「なんだか、すごく一緒なんだなあ、って思っちゃっテ……」
 ミミコの物言いに、僕は首を傾げてしまった。
「だから、その……あたしとマスターって、別の時間の中に、生きてるみたいじゃないですカ」
「……」
 僕は、思わず絶句してしまった。
 たまにミミコは、思いがけないほど意味深なことを言うのである。
「一年たって、マスターはひとつ年をとって……でも、あたしは、一年前のあたしのままで……子供のままでス……」
 そう言うミミコは、こんなに近くにいるのに、なんだか寂しそうだった。
 細い手足が、可哀想なくらいに頼りなく見える。
「ロサンゼルスの涼香さんは、きちんと、年をとってるんですよネ」
「そりゃまあ、ね」
「マスターと、同じようニ……」
 どうやら、ミミコはミミコなりに、涼香お嬢さんに屈折を抱いているらしい。そりゃ、僕だって、完全に吹っ切れたわけじゃないけど。
「ミミコ……」
 ここで、抱きしめて、キスをして、そして、愛の言葉をささやく。
 そうすれば、ミミコはにっこり笑ってくれるだろう。でも、なんだかそれはごまかしのように思える。
 無論、ごまかしでも、それはそれでいいのかもしれないけど……。
 なんていう、愚にもつかないことを考えてると、いきなり、轟音が辺りに響いた。
「にゃッ?」
 ミミコが、ネコ耳型の聴覚センサをぴん、と立てながら、音の方角を見る。
 そこに、大型の土木用ロボットが、煙をあげながら突っ立っていた。
 一応、両手両足があるが、“アンドロイド”と呼べるほど人間的じゃない。二足歩行のショベルカーに、廉価版の電子頭脳を搭載したような代物だ。
 その姿には、見覚えがある。丘のふもとで、新しい建物のために造成作業をしていた奴だ。すぐ下の遊歩道を歩いてきた様子はなかったから、道を外れ、一直線にここまで登ってきたのだろう。
 でも、なんでそんなことを、と思ったとき、褐色に塗装されたそのロボットが、ぶんぶんと鋼鉄の腕を振り回しはじめた。
 人々が、悲鳴をあげながら逃げ惑う。
「暴走、してる?」
 思わず僕はつぶやいた。ボディの汚れ具合からしても、きちんとメンテされていた様子は見られないんだけど、電子頭脳のほうもほったらかしだったんだろう。
 展望台を囲む木製の手すりが音を立てて吹っ飛び、小さな木立がへし折られる。
「ぴいいいいいいいいいいいいイ!」
 ロボットは、壊れたラジオみたいな音を立てながら、僕たちに向かってきた。
 両目を模したLEDが激しく明滅している様子は、本物の狂気を思わせる。
「ミミコ、逃げて!」
 僕は、ロボットの背後に回り込もうとしながら、叫んだ。
 ここは、ミミコと一緒に逃げるほうが正解なんだろうけど、僕もアンドロイド技術者の端くれである。それに、何もせずにここを離れると、寝覚めが悪い結果になる。
 このタイプのロボットの緊急停止スイッチは、ちょうどお尻のところにある。それを作動させれば……。
「しまった!」
 僕は、思わず叫んでいた。スイッチのふたが歪んでて開かない。
 と、ぐるん、とロボットの上半身が真後ろに回転した。
 動力部がオーバーヒートしているのだろう。むわっ、と熱気が僕の顔を叩く。それは、まるでそのロボットの殺気のように思われた。
 安全基準を無視した素早い動きで、ロボットがごつい腕を繰り出す。
「危ないッ!」
 どん、というショックとともに、僕は真横に吹っ飛んでいた。
「んにッ!」
 押し殺された悲鳴と、耳を覆いたくなるような金属音。
 僕をかばって突き飛ばしたミミコの両脚が、膝の所で、ロボットの腕にへし折られていた。
「ミミコっ!」
 叫びながら、僕はミミコを抱き上げた。
「ン……」
 ミミコが、小さくうめく。機能停止にまでは至っていないが、かなりの重傷だ。
「ぴぅうううううううううううううううううううウ!」
 その狂った電子頭脳がどんな判断を下したのか、暴走ロボットは、僕とミミコめがけ、次々とその腕を振り下ろしてきた。
 狙いはあまり正確じゃないけど、腕の先端のショベル型の手が大地をうがつたびに、ずうん、ずうん、と重い音が響く。
 そのあおりだけで足をとられてしまいそうだ。
 もともとあまり運動の得意でない僕としては、ミミコを抱えて逃げるのは、かなり分が悪い。しかし、もともとは僕がヘンな考えを起こしたせいなのだし、ミミコをほったらかしにするくらいなら、死んだほうがマシだ。
 だけど、情けないことに、早くも息が上がってくる。
 と、ロボットの右腕を危うくよけたはずの僕の背中に、重い衝撃が弾けた。
「く……ッ!」
 呼吸が止まるほどの激痛を感じながら、地面に倒れ伏す。
 実際はかすめただけなんだろうけど、背骨が折れそうなほどの一撃だった。
 自然に溢れた涙でにじんだ視界に、両腕を振り上げたロボットの姿がある。
 絶望とか覚悟とか、そういうレベルの感情は起こらない。突然のことに、何か、悪い冗談に巻き込まれたような奇妙な驚きだけが胸を占める。
 と、倒れた僕の腕の中のミミコが、いきなり、左腕だけで跳躍した。
「!」
 腕のアクチュエーターの限界を無視したむちゃくちゃな動作だ。
 そして、そのままミミコは、指をそろえた右手を、ロボットの顔面に貫き手の要領で叩きこむ。
「ぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
 センサー類が集中する顔面を貫かれ、ロボットが、凄まじい音を上げながら体をよじる。
「マスタ……早く……逃げて……ッ!」
 肘から先を暴走ロボットの顔にめり込ませ、ぶんぶんとその小さな体を振り回されながら、ミミコが必死に言う。
 僕は、背中の激痛に耐えながら起きあがった。
 そして、再び後ろに回りこみ、暴れるロボットの緊急停止スイッチのところにすがりつく。
 僕は、ロボットの腰に左手でしがみつきながら、どうにか歪んだふたを開けようとした。
 爪が割れ、血がにじんだが、その時は気がつかなかった。
「マスターッ!」
「待ってて! ミミコ、もうすぐだから!」
 半ばロボットに引きずられるようになりながら、僕は、硬質プラスチックのふたを拳で叩き割った。
 そして、剥き出しになったスイッチをひねる。
 一瞬の間。
 そして、ロボットは、ぶひゅううぅぅぅん……といった音を立てて、嘘のように動きを止めたのだった。



 そのあと僕は、建築会社の人にずいぶん謝られて、そして、警察にちょっと叱られた。
 それから、けっこうな額のお見舞金をもらった上に、あの暴走ロボットの電子頭脳を譲り受けたのである。
 見たところ、きちんとメンテをすれば、まだまだ動ける様子だ。
 しっかりと修理して、今度は、もっとちゃんとした人に使ってもらえるような、そんなロボットにしてやりたいと思う。
 ロボット/アンドロイド・パーツ処分業者としての認可をもらっててよかった、と思った。



 2日たった。
 今、ミミコはまだメンテナンス・ベッドに寝たきりである。
 結局ミミコの両手両足は、僕が一から作り直している。彼女の手足だと思えば、できるだけいいものを作ってあげたいと思う。そういうわけで、このところ僕はそれにかかりっきりだった。
 その作業も一段落して、ミミコが寝ている部屋に行くと、彼女はぼんやりと天井を眺めていた。
「あれ? タイマーの設定間違えてた?」
「あ、マスター。そんなことないですヨ。あたし、今、起きたとこですかラ」
 そう言って、ミミコは、僕のほうに顔を向ける。
 僕は、メンテナンス・ベッドに腰かけ、両手両足のないミミコをそっと抱きかかえた。
「もうちょっとで、手も足も完成するからね」
「ふにゃ〜ン」
 僕の言葉に答えるように、ミミコは、すりすりと頭をすりつけてきた。尻尾までが、甘えの感情を示すように、くねくねとうねっている。
「嬉しいですゥ、マスター」
「いや、もともとは僕がもたもたしてたせいだから」
「そんなことないでス!」
 ミミコは、そのおっきな目で、僕の顔を見つめた。
「マスターは、あの子を、かばったんですよネ。あのままほっといたら、お巡りさんに鉄砲で撃たれちゃうかラ」
「うん、それだけじゃすまなかったような気はするけどね。けど……分不相応だったかな?」
「マスター、優しいでス……」
 なんだかうっとりしたような声で言って、ミミコは、こてん、と僕の胸に頭を預けた。
「それに……マスターに体を作ってもらえるって……ミミコ、すっごく幸せでス」
「そ、そう?」
「はイ♪」
 いつもよりはるかに軽い、ミミコの体。
 僕は、そのミミコの体を両腕に抱きながら、さらさらの髪を撫でつづけた。
 ミミコの体は、すごく柔らかくて、あったかい。
(あ、いけない……)
 そう思ったときはもう遅かった。
「んにゃッ?」
 ミミコが、再び顔を上げた。
 そして、にへへっ、と笑ってから、口を開く。
「マスターの、おっきくなってきましたヨ?」
「ご、ごめん……」
 下着姿のままミミコを抱いていたのがいけなかった。せめて、服を着せてあげてればよかったのに……などと後悔してももう遅い。
「マスター……」
 こうなると、そう、ささやくように言うピンク色の唇の動きさえ、すごくなまめかしく見えてしまう。
「したくなっちゃったんですネ?」
「ごめん……」
「ううん、いいんでス。ミミコ、嬉しいでス」
「ミミコ……」
「マスター、遠慮しないで、ミミコの体、使ってくださイ……」
 ぞくぞくぞくっ、と背徳の誘惑が、僕の背筋を駆け上る。
 そして、僕の股間のものは、無節操なことに、ズボンの中で完全に隆起してしまっていた。
「ミミコ……」
 僕は、んく、と生唾を飲み込んでから、そっとミミコの唇に唇を重ねた。
「あむ……んにゅ……ふン……ふみゅン……」
 ミミコが、僕の舌に舌を絡め、柔らかな唇で僕の唇をちゅうちゅう吸い上げる。
 僕は、ミミコを腕に抱えたまま、立ち上がった。
「んみュ?」
 唇を離したミミコが、どうして? といった顔をする。
「えっと、せめて、布団の上で、ね?」
 そう言う僕に、ミミコは、こくん、と素直にうなずいた。
 かつてしでかしてしまった過ちを繰り返さないように、うんと優しく、ミミコを抱いてあげたい。
 そう思いながら、僕は、ミミコを自分の部屋に運んだ。
「なんだカ……」
 と、ミミコが、僕に言う。
「なに?」
「なんだかミミコ、マスターの赤ちゃんになったみたいでス」
 そう言って、ミミコが、くすくすと笑う。
「そだね」
 僕も笑いながらそう言って、ミミコをゆっくりと布団の上に横たえた。
 そして、四つんばいで覆い被さるようになりながら、ミミコにまたキスをする。
 この痛々しい姿のミミコに、僕は浅ましくも興奮してしまっている。そして、その罪悪感が、さらに僕の欲望を昂進させてしまっているのだ。
 せめてその欲望をコントロールし、できるだけミミコに感じてもらおうと思いながら、ミミコのおでこやほっぺた、うなじなんかに、キスをしていく。
「はにゃン……な、なんか、もどかしいですゥ……」
 ミミコが、可愛らしい声をあげながら、身をよじる。
 その幼げな体には不釣合いなくらいのおっぱいが、ブラに包まれたまま、ふるふると揺れた。
 なんだか、まるで誘われてるみたいな感じだ。
 僕は、乱暴にならにように気をつけながら、ミミコのブラを外した。
 白い豊かな乳房の頂点に、ピンク色の乳首がなんだか恥ずかしげにしている。
 僕は、その小粒の乳首を口に咥えた。
 右手で左のおっぱいをゆるゆると揉みながら、右の乳首を舌で転がす。
「んにゅ……にゃ、ああン……にハ……はぁン……」
 うねうねと動くミミコの体を両手で押さえ、僕は、左右の乳首を交互に責め立てた。
 ちゅぱっ、ちゅぱっ、と軽く吸いたて、舌をくるくると動かして文字通り舐め回す。
 口の中で、ぷくん、と乳首が立つのが、なんだか可愛い。
 左右の乳首を平等に愛撫してから、僕は、さらに下の方へ唇を這わせていった。
 そして、すでににじんだ愛液でしみになってしまっているパンツに手をかける。
「脱がすよ」
「は、はイ……」
 ミミコは、顔をぽーっと染めながら肯いた。
 つるん、と果物の皮をむくみたいに、パンツを脱がす。なぜかリボンタイをしたシマ猫のキャラクターのパンツだ。
 蜜をたたえたミミコのその部分が、あらわになる。
 僕は、まるで吸い寄せられるみたいに、その部分に口付けした。
「ひあン!」
 つるつるのその部分を舌で舐め上げると、ミミコが、びっくりしたような声をあげる。
 僕は、溢れる透明な蜜を舐めとりながら、舌でミミコの柔らかな肉ひだをなぞった。
 舐めやすいように、丸いお尻を両手でささげ持つようにして、忙しく舌をうごめかす。
「はにャ! ンにゃア! ひア! ンにゃああン!」
 僕の手のひらの中で、ミミコのお尻が、ひくん、ひくんと動く。
「気持ちいい? ミミコ」
「きもち、いっ……ですゥ……♪ んにゃン! にゃう〜ン!」
 本当に気持ちよさそうに、はぁん、はぁんと喘ぎながら、ミミコがそんなことを言う。
 見ると、肉の莢からミミコの小さなクリトリスが、恥ずかしそうに顔を出していた。
 その敏感な快楽の入力器官を、尖らせた舌先でちろちろと刺激する。
「はにゃにゃにゃにゃッ!」
 ミミコは、ひときわ高い声をあげて、大きく身をよじった。尻尾がぱたぱたと左右に触れ、シーツの表面をこすっている。
 しかし、今のミミコでは、僕の腕から逃れることはできない。
 僕は、調子に乗って、クリトリスを舌で刺激しながら、柔らかな膣口に指を差し入れた。
 温かな体温を、指先に感じる。
「指、入れていい?」
 訊くと、ミミコは無言でうんうんと肯いた。
 僕は、じらすように数回スリットをなぞってから、ぬぷぷ、と中指をミミコの中に入れた。
 ミミコのぬらつく内部が、僕の指をなまなましく締め付ける。
 僕は、左手でミミコの腰を支え、指を出し入れしながら、クリトリスを舐め続けた。
「はにゃン! マ、マスターッ! す、すごいですゥ!」
 ミミコが、その体をうねらせ、身悶えさせながら、声をあげる。
 僕は、顔と指をミミコの愛液で濡らしながら、夢中でその部分を責めた。
 びくん、びくん、とミミコのお尻がおどる。
「あ、ダメ……ミ、ミミコ……イっちゃウ!」
「いいよ。イって見せて、ミミコ」
 僕は、熱に浮かされたような声で、そんなことを言っていた。
「はにゃッ! ゴ、ゴメンなさいッ! ミミコだけ……ミミコだけ気持ちよくなっテ……!」
「いいんだよ、ミミコ……好きだよ……」
 口唇愛撫のあいまに、そんな言葉をかける。
「はにゃン! ミミコも、マスターが、好きィ……! あッ! あッ! にゃああッ! にややゃーッ!」
 きゅううううっ、とミミコのアソコが、僕の指を締め付ける。
 そして、ミミコの体が、ひくひくと痙攣した。
「にゃ、はア……はァ……はァ……はァ……ン……」
 僕は、ミミコのお尻をそっと布団の上に下ろした。
 そして、ズボンを下ろし、トランクスからすっかり勃起したペニスを取り出す。
 恥ずかしい話だが、漏らしてしまったカウパー氏腺液で、パンツの中はちょっと惨憺たる有様だった。
 ミミコは、まだ時折、ひくん、ひくんと体を震わせてる。
 まだ絶頂の余韻の中にいるのだろう。
「ミミコ……」
 僕は、そんなミミコに再び覆い被さって、名前を呼んだ。
「ふにゃア……」
 猫のあくびみたいな声をあげて、ミミコがうっすらと目を開ける。
 その瞳は、涙で潤んでいた。
「マスター……ミミコ、イっちゃいました……」
「うん」
 僕がそう返事をすると、ミミコは、ちろっと僕の下半身に目を向けた。
「ふにャ……マスターのおちんちん、ほったらかしで可哀想ですゥ」
「いや、その……」
「早く、ミミコの中に入れてあげてくださイ」
「うん……」
 そう言って、僕は、ミミコの体を抱えあげ、あぐらをかいた。
「はにャ……!」
 小さく悲鳴に似た声をあげるミミコのアソコに、ペニスの先端を押し当てる。
「あ……マスターの、熱いでス……」
「ミミコのココも、とろとろにとろけてるみたいだよ」
「やぁ〜ン、マスターのえっちイ!」
 自分のことを棚にあげて、ミミコがそんなことを言う。
 そんなミミコがたまらなく可愛くて、僕は、その唇に唇を重ねた。
 そして、キスをしたまま、ミミコの体を下ろしていく。
「んッ……んゥ……ふ、うにゅン……」
 熱くたぎるペニスに、ミミコの膣肉がぴったりと吸いついてくる。
 その挿入の快感をできるだけじっくりと味わおうと、僕は、じわじわとミミコのヒップを落としていった。
 体内に僕のペニスが侵入していくにつれ、ミミコの息が、せわしなくなる。
 ようやく僕は、ペニスを根元までミミコの中に挿入した。
 ミミコの秘めやかな部分を、ペニス全体で感じる。
「ぷは……」
 さすがに息苦しくなって、僕たちは、唇を離した。
 しかし、すぐにお互いが恋しくなって、ちゅっ、ちゅっ、と軽いキスを繰り返す。
「んちュ……マスターの、ミミコのアソコの中に、いっぱいですゥ……」
「うん……ミミコの中、すごく、きもちいいよ……」
「うれしイ……ミミコも、すっごく、気持ちイイ……感じちゃってますウ……」
 そんなことを言いながら、飽きることなくキスをする。
 とろ火であぶられるような快感が、じんじんと高まってきた。
 ずうっとこのままつながっていたい気持ちもあるのだが、やっぱりガマンの限界だ。
「ミミコ、動かしていい?」
「はイ……動かしテ……マスターのおちんちんで、ミミコの中、かき回してくださイ……」
 その幼い顔に似合わない淫らな目つきで、ミミコがいやらしくおねだりする。
 僕は、ミミコの体を抱きしめたまま、上下させ始めた。
「はにャ……あア……んにゃア……はにゃ〜ン……」
 ミミコが、僕の胸におでこをくっつけるようにしながら、とろけるような声をあげる。
 熱く柔らかな膣内とシャフトの表面とが摩擦する感覚が、すさまじいばかりの快感をもたらす。
「ああ……ミミコ……ミミコ……」
「にゃあン……マスター……気持ちイイ……ミミコ、気持ちイイですゥ……」
 そう言いながら、ミミコは、意識してか無意識か、きゅうん、きゅうん、とアソコを締めつけてくる。
「マスター……お願い、お願いィ……」
「なぁに? ミミコ」
「お願いでス、もっと、もっと抱きしめてエ……」
「うん……!」
 ミミコの言葉よりも、それに込められた想いに応えたくて、きつくきつく、ミミコの体を抱きしめる。
 ミミコが、僕に抱きつきたく思ってる気持ちの分も強く、強く。
 そうしながらも、僕は、浅ましい欲望が命じるままに、ミミコの可愛らしいヒップを激しく上下させ続けた。
 おそらく、泡だった愛液が溢れ、僕の会陰を伝い、シーツをぐっしょりと濡らしているのだろうが、無論、そんなことはぜんぜん気にならない。
 この腕と、そしてペニスで感じているミミコだけが、全てだ。
 熱い射精欲求が、ペニスの根元で沸騰し、その水かさを増していく。
「ああ……僕、もう……」
「マスター……ミミコも、ミミコも、もうすぐ、イっちゃいますゥ……」
 互いに、短い悲鳴のような声の合間に、そんなことを言い合う。
「マスター……ミミコ、もうイク……イっちゃう……ッ!」
「う、うん……」
 僕は、煮えたぎるような快感で頭が一杯になって、まともに返事を返せない。
「お願い……早く……マスターの赤ちゃんのモト、ください……ッ!」
 そして、ミミコのその一言で、僕の中の何かが、一気に溢れた。
 痛いくらいの、射精――。
「にゃあああああああああああああああああああああああああああああッ♪」
 ミミコの歓喜の声に混じって、びゅるびゅるという僕自身の射精の音まで聞こえそうな、そんな感じだった。
 ミミコの膣内が、まるで、さらなる射精をねだるように、うねうねとうごめく。
 僕は、いつまでも持続する快感に体を震わせながら、ミミコの体を抱きしめ続けた。



 次の日、僕は、ミミコに手足を接続した。
 これまで仕事で腕を磨いてきた甲斐があって、予想以上の出来映えだった。ミミコとの相性もいいみたいだ。
 まだまだ師匠の域にまでは達していないが、ミミコに関してなら僕が一番だと、胸を張って言える。それが嬉しい。
 それに、ミミコをますます自分のものにしたような、そんな満足感も、実はある。
 そして――

 ――なんだかミミコ、マスターの赤ちゃんになったみたいでス。

 あのミミコの言葉が、僕の中で、なんだかもっと強い意味を持ちつつあるのである。



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