第7章
「ゴメンね、ミサちゃん」
再び服を着た後、妙にしおらしい口調で、お嬢さんが言った。
ミミコは、再び、メンテナンス・ベッドに横たわっている。そのミミコにつながったディスプレイを、お嬢さんはじっと見つめていた。
「別に、そんな……」
僕は、ごにょごにょと曖昧な口調でそう言った。
「ううん、そうじゃなくてね……あたし、ロスに、男がいるんだ」
「って……えええ?」
今日は、もう、お嬢さんに振りまわされっぱなしだ。
「あたし、バージンじゃなかったでしょ? そいつに、あげちゃったの」
「……」
「やっぱ、アメリカに一人で留学してて、心細くてさ……やだな、あたし、言い訳してる」
不意に、お嬢さんは僕に向き直った。
「そいつね、やっぱ留学生で……中国人でさ、ティンって言うんだけど……ミサちゃんそっくりなんだよね」
なんだか、複雑な気持ちだ。
ざらつくような嫉妬と、切ないような安堵感が、僕の頭を混乱させている。
「そいつといると、どうしても、ミサちゃんのこと考えちゃって……ティンにも、ミサちゃんにも悪いなあって思ってたんだけど……でも、これで、ようやく吹っ切れると思うんだ」
「それは、そのう……」
何て言っていいか、言葉が見つからない。胸に、もやもやと訳の分からない衝動が込み上げてくる。
僕は、その衝動に身を任せ、いきなりお嬢さんのことを抱き寄せた。
「あ、ちょっ……!」
何か言いかけるお嬢さんの口を、強引にキスでふさぐ。
そして、お嬢さんの細い体を、きつくきつく抱きしめた。
しばらく身をよじっていたお嬢さんの体から、くたっ、と力が抜ける。
そうなってから、僕はようやく体を離した。
「……これで、おあいこにします」
目の前のお嬢さんの顔に、僕はそう告げた。
「ひっでーなあ、人をその気にさせといてェ」
お嬢さんはそう言ったあと、くすくすと笑い出した。
「だから、おあいこですよ」
「はいはい……。ところで、ミミコちゃんのことだけど」
ようやく、話が本題に戻った。
「はい」
「ミサちゃん、おじ様の最後の仕事、憶えてる?」
「父の、最後の仕事……? えっと、確か、ソフト面からの次世代電子頭脳の開発でしたよね」
「そう。正確には、“ユングフロイド関数応用OSによる電子頭脳の次世代化”……論文、読んだ?」
「いえ。だって、ドイツ語で書くんですもん」
「あ、そうだっけ? でも英訳もされてるよ」
「それでもムリですよ。それに……父は、この理論はお前には必要ないだろうって言ってたし。子どものころのことだから、よくわからなかったけど」
「確かに、そうかもね」
訳知り顔で、お嬢さんはうんうんと肯く。
「ミサちゃんみたいなマジメ人間がヘタにこれを勉強したら、せっかくの才能がダメになっちゃう」
「才能、ですか?」
「そう。……アンドロイドを、人間と同じように扱う才能」
「いや、それは……」
「別に、精神論に走ってるわけじゃないわよ。アンドロイドってね、自分を人間扱いしてくれる人の前では、限りなく人間に近づいていくの。それも、口先だけじゃダメ。態度で示さないとね。一種の、総合情報群の複雑系フィードバックなんだけど……。ま、何を以って“人間”を定義するかは難しいけどさ」
「はあ」
「そして、ミサちゃんみたいな才能の持ち主は、アンドロイドが示す微妙なサインを無意識に受信して、最適な措置をとるわけ。ミサちゃんの“勘”っていうのは、要するにそれよ」
「だって、それは、みんなそうなんじゃないんですか?」
僕の言葉に、お嬢さんはきょとんとその猫目を見開き、そのあとでくすくす笑い出した。
「それよ、それ……それが、ミサちゃんの才能なの」
「……」
なんだかよく分からなかったが、そういうことにしておこう。
「えっと、話を戻すね。で、おじ様の開発したそのOSだけど……平たく言うと、それは、電子頭脳に夢を見せる機能があるわけ」
「はあ?」
「夢……言いかえるなら、記憶の最適化よ。起きている間にあった全ての経験を総合的に再編集して、これからの活動のために最も効率的かつ的確な“記憶”を構築する……人間だったら、誰でもやってることなんだけどね。それを可能とするのが、おじ様のOSなの」
「……」
「でも、世間の反応は冷たかったみたい。要するに市場は、そんなに人間そっくりのアンドロイドなんか必要としなかったわけね」
そして父は、僕が中学生に入学する頃、不遇のうちに亡くなった。
僕は、父の残した遺産を継承するつもりで中学時代を過ごし、そして高校に進学した。でも、そこにあったのは挫折でしかなかったのだ。
「結局、おじ様の開発したOSは、その論文ともども、ほとんど幻の品になっちゃったわけ。あたしも、最近までは知らなかったくらいだし」
「それが、ミミコに組みこまれてる?」
僕の言葉に、お嬢さんが肯いた。
じゃあ、ミミコを作ったのは……?
「でも、今は、ミミコちゃんのその機能は、壊れちゃってる」
お嬢さんの言葉が、僕の想念を遮った。
「たぶん、ミミコちゃんの電子頭脳にとって、夢にして処理するには、あまりにも衝撃的なことがあったんだと思うの。それで、ミミコちゃんの記憶は、バラバラになって……ミミコちゃんの動作の障害になってる。PTSDみたいなもんね」
PTSD。つまり、心的外傷後ストレス障害。強い精神的なキズを追った後に起こる、様々な行動障害の総称……。
「人間に似ていく、ってのも、考え物ですね」
「そりゃまあ、ヒトなんて、知的生命体としてはぜんぜん完成体と程遠いもの」
そう言いながら、お嬢さんはかしゃかしゃとキーボードを叩いた。ミミコにつながったディスプレイの表示が、猛烈な勢いでスクロールしていく。
「それはともかく、ここまで来れば、あとはカンタン。ミミコちゃんの悪夢の原因になってるトラウマを、徹底的に消去すればいいんだけなんだから」
「だけ、って言われても……」
「おじ様の残した論文や資料で、問題のユングフロイト関数も解析できるでしょ。そのあとは……」
くる、とお嬢さんは僕に向き直って、続けた。
「あとは、ミサちゃんのお仕事だよ」
僕の家の奥にある工房で、僕は、ようやく作業の最終段階に入った。
メンテナンス・ベッドに、ミミコが横たわっている。
もう、真夜中だ。暗い部屋の中、ディスプレイがぼおっと光り、僕の顔を照らしているはずである。
僕は、一度深呼吸をしてから、いくつかのスイッチを操作した。
目の前のディスプレイに、ミミコの主観映像が展開する。
それは、ミミコの悪夢の正体だった。
ベッドに横たわったミミコを、初老の男が組み敷いている。
男は、逆光になっててよく分からないが、どこか追い詰められたような笑みをその顔に浮かべているようだった。
場所は、あの『ドールハウス』の一室らしい。僕が案内された部屋よりは、格段にランクが上の部屋らしいけど。
「あ……あンッ……んン……ンにゃァ……」
耳にはめたイヤフォンから、ミミコの喘ぎが聞こえる。
その可愛い喘ぎ声は、ミミコが、感じてるときの声だ。
ミミコの目から見た映像の記録なので、ミミコ自身の顔は、映っていない。でも、この声をあげているときのミミコの切なげな顔は、容易に想像できる。
僕は、きつく歯を食いしばりながら、必死で耐えた。ミミコを悪夢から解放するこの作業を、途中でやめるわけにはいかない。
男は、ミミコの細い脚の間に自らの腰をねじ込み、動かしている。ミミコの可憐な秘部に、男の赤黒い陰茎が出入りする様が、ミミコの瞳にしっかり映っていた。
ミミコが目をそらそうとすると、男はミミコを汚い言葉で罵倒し、結合部分を注目するよう強制するのだ。
今、この場にいるわけでもないこの男に対する殺意で、気が変になりそうになる。
と、男が、どこからともなく、何かぎらぎらと光るものを取り出した。
それは、ぞっとするほどの刃渡りの、大きなナイフだった。軍隊で使われるような、凶暴なデザインのナイフである。
ミミコが、幼い声で悲鳴をあげた。
恐怖で、ミミコの膣肉が収縮し、絶妙な締め付けをもたらしたのだろうか。男が、喜悦の声をあげている。
そして、画面の中の男は、今まさに犯しているミミコの体に、ナイフを振り下ろした。
「やめろおッ!」
「イヤああッ!」
届くはずのない、過去の映像に対する僕の叫びに、ミミコの悲痛な絶叫が重なる。
が、ナイフは無情にミミコの胸に突き立てられた。
人工皮膚が易々と切り裂かれ、ミミコの内蔵パーツが剥き出しになる。
「やめて、やめて、やめてエーッ!」
ミミコの悲鳴にますます興奮したように、男はミミコを犯しながら、ナイフを振るい続ける。
「イヤあああああああああああッ! こわさないデ! こわさないでエ!」
ミミコの声が、僕の肺腑をえぐる。嘔吐感がこみあげ、画面をまともに見ていられない。
まさに悪夢そのままの、凄惨で理不尽な光景……。
メンテナンス・ベッドの上のミミコの小さな体が、ぶるぶると小刻みに震えている。今ミミコは、僕が見ているのと同じ悪夢に苛まれているのだ。
これを、ミミコの最後の悪夢にしなくてはならない。それは分かっているんだけど、今すぐこの作業を中断したくなる。
「ヤああああああああああああああああああああああああああああああああああアーッ」
ディスプレイが、一瞬で真紅に染まった。
「!」
僕は、声にならない悲鳴をあげる。
画面の中で、男がナイフを取り落とし、両手で喉をかきむしっていた。その指の間から、びっくりするくらいの勢いで、鮮血が溢れ出ている。
画面の中のミミコが、両手の格闘用クローを展開させていた。
男が、目を見開いて、何か言おうとするが、口から溢れるのは泡だった血液だけである。
その男の顔を、ミミコは右手で払いのけた。
悲鳴すらあげずに、男が広い部屋のすみの方にすっとぶ。
僕は、あの事件の現場を目の当たりにしてるのだ。
そして……。
「きゃアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!」
絶叫をあげて、メンテナンス・ベッドのミミコが起きあがった。
画面の中のミミコじゃない。現実の、僕の目の前のミミコがだ。
「ミミコ!」
身をよじり、自分に接続するケーブルを、力任せに引き千切ろうとする。もしそんなことをされたら、全てがお終いだ。
「ミミコっ!」
僕は、目を見開き、涙を流しながら暴れるミミコの体を、必死で抱き止めた。
「イヤああああア!」
叫びながら、僕の背中に、ミミコが爪を立てる。
「――ッ!」
冷たいような激痛が、背中に走る。
ミミコの指先からが、あのチタン合金の爪が伸びていた。
傷の深さは分からない。でも、貧血で、目の前が真っ暗になる。
「だ、大丈夫……」
痛みに耐えながら、僕は、ようやくそう言った。
「大丈夫だよ……大丈夫……大丈夫、だから……」
くらくらする頭では、それ以上の言葉が思いつかない。その代わりに、力が抜けそうな腕で、精一杯ミミコの体を抱き締める。
ミミコの体は、ほんとにちっちゃくて、頼りなくて、そして、可哀想になるくらい震えていた。
「ますたー……?」
ぼんやりと、ミミコが言う。
「そう、僕だよ……ミミコ……もう、大丈夫……」
「マ……マスターっ!」
腕の中のミミコが、はっと顔を上げた。
「マスター……うそ……あ、ああ、ヤダ……どうしてェ……?」
かたかたと歯を鳴らしながら、ミミコが言う。
「大丈夫……夢だよ、これは……全部、ただの、悪い夢……」
そっと体を離しながら、僕は気力を振り絞って、続けた。
「目を覚ませば、全部忘れてるよ……だから、安心して……」
そして、ミミコのスイッチを、できるだけ優しく切る。
「ア……」
茫然と、僕の血に染まった自分の両手を見つめていたミミコの体から、かくん、と力が抜ける。
僕は、大きく息をついて、よろよろとディスプレイに近付いた。
ミミコの悪夢の解析は、全て正常に終了していた。これで、ミミコの電子頭脳から、問題の記憶だけを消去することができる。
背中の傷も、思ったより深くなさそうだ。作業は、続けられる。
僕は、ミミコの心を傷つけた辛い記憶の一つ一つを、丹念に消していった。
そして、早朝。
工房に、薄汚れた白衣をまとった小柄な男性が現れるのを、僕は物陰からうかがっていた。
「……」
その人が、メンテナンス・ベッドの上のミミコを見て、なにごとかつぶやく。声は抑えているがどうやら驚いているらしい。
そして、その人は、そろそろと作業台の上に乗る機械類に手を伸ばした。
「そこまでです、師匠」
言いながら、僕は姿を現した。
「操……」
師匠が、かすれ声で僕の名を呼ぶ。
「そろそろ来る頃だとは思っていたんですが……」
「夜討ち朝駆けは兵法の基本だ。監視システムにひっかかっちまったかようだが」
ふてぶてしい口調でそう言いながら、師匠は懐に右手を突っ込んだ。
「涼美を、渡せ」
そう言いながら、師匠が懐から手を出す。その手には、黒光りする拳銃が握られていた。
「スズミ?」
「お前がミミコとか呼んでる、こいつのことだよ」
いつものひょうきんな態度からは考えもつかない物騒な口調で、師匠は言った。
「涼美は、俺のものだ」
「……父との合作じゃないんですか?」
「確かに、おつむは近衛が作った。しかし、もう、ヤツはいない。こいつを完成させたのは俺だ。だから、あいつは俺のものさ」
やはり、ミミコを作ったのは師匠だったのか。
今にして思えば、お嬢さんの“ミミコに見覚えがある”という言葉を、もっと突っ込んで考えるべきだったのかもしれない。お嬢さんが見たのは、父と師匠が一緒に作っていた、未完成のミミコの姿だったのだろう。
それにしても――
「ミミコをあんな場所に売り払っておきながら、よくそんなことが言えますね」
「……どこまで、知ってる?」
「全部ですよ。ミミコの欠落した記憶は、全て解析できました」
「まさか、お前が……? いや、さすがは、近衛の息子だな」
感心したように、師匠が言う。
「共同研究者である父が死んで、お嬢さんが病気になって……それ以来、いろいろと金銭的に大変だったことは、分かります。分かってる、つもりです」
「……」
「だけど、ミミコに人殺しをさせてまで、お金がほしかったんですか? お嬢さんもいくつか特許をとって、最近は、お金にだってそんなに不自由していなかったはずじゃないですか」
「お前も、技術者の端くれなら分かるはずだ……。俺にだって、プライドがある」
師匠の持つ拳銃が、細かく震えている。
「だからこそ、だからこそだよ。同じ業界を選んだ娘に食わしてもらうほど、落ちぶれたくはねえ。分かるだろ?」
「それで、ミミコに人殺しをさせたんですか? いくらもらったか知りませんけど……それが、師匠のプライドなんですか?」
「黙れ!」
「黙りません」
僕は、震える銃口に狙われながら、精一杯毅然として言った。
「あなたは、ミミコを売り払っただけでなく、敵対組織から清流会幹部の殺害を請け負って、それをミミコにやらせることにした。その幹部の歪んだ性癖を利用して……そうですね?」
「黙れ……」
「あの幹部は、行為中に、相手の体を破壊することで、異常な興奮を得ていた。それを知って、師匠は、ミミコを完成させ、その手の中に格闘用クローを埋め込み、何食わぬ顔で『ドールハウス』に売り払った。自己防衛機能が働き、その幹部を殺害することを期待して……」
「黙れよ!」
「だけど、ミミコの電子頭脳は暴走し、あなたが待つ場所へは来なかった。当たり前ですよ、あんな目に遭わされたら……。そんなことすら、師匠は思い至らなかったんですか?」
怒りに声が大きくなりそうになるのをこらえながら、僕は続ける。
「あなたはミミコを探すために、街をさ迷った。この前、僕に会ったのは、そんな時だったんでしょう? そして今、自分の犯罪の証拠を消すために、僕の家に忍び込んだ」
「黙れっ!」
「……師匠」
僕は、努めて冷静な口調で、師匠の怒声を受け流した。
「あなたの、負けですよ。僕は、あなたが壊したミミコを治し、あなたが植え付けた悪夢を全て消去しました。ミミコは、もう僕のものです」
「……」
「あなたが消そうとした事件の記憶は、すでに僕が完全に消してしまいました。あなたは、別にここに来なくてもよかったんですよ。……敗北を、認めて下さい」
「若造……ッ!」
師匠は、拳銃を構え直した。
僕は、じっと動かない。
そして……師匠は拳銃を持つ腕をゆっくりと下ろした。
「畜生……」
そう呟きながら、がっくりと肩を落とし、僕に背を向けて、歩き出す。
その背中が、やけに小さく見えた。
工房の椅子に座って、ぼんやりとミミコのことを眺めているうちに、窓から朝日が差し込んできた。
ミミコが、ゆっくりと目を覚ます。そして、僕に気付いて、にっこりと微笑み、体を起こした。
と、ミミコはちょっと不審そうに眉を寄せる。
「マスター……ヘンなこと言って、いいですカ?」
「ん、何?」
窓から差し込む朝日のまぶしさに目をしばしばさせながら、僕が聞き返す。
「なんか、今朝のマスターの顔、ちょっとコワい、でス」
「え? ……徹夜明け、だからかな?」
「徹夜しちゃったんですかア?」
「うん……」
そう言いながら、僕はミミコに近付き、そして、ひざまずいてその豊かな胸に顔をうずめた。
「マ、マスター……?」
「ごめん……ちょっと、このまま、させて……」
「も、もちろん……いいですヨ……」
可愛らしいピンク色のブラに包まれたミミコの双乳の感触を顔全体で感じながら、僕はうっとりと目を閉じた。
ミミコが、そんな僕の髪を、やさしく撫でてくれる。
「ミミコ……」
「はにャ?」
「今朝は、怖い夢、見なかった?」
「……はイ」
「もう、ずっと見ないですむよ……」
「え……? マスターが、直してくれたんですカ?」
「うん」
「う、嬉しいですウ!」
ぎゅうっ、とミミコが僕の頭を抱き締めた。
おっきくてやわらかなおっぱいに顔をふさがれ、息ができなくなる。
一瞬、このまま死んじゃってもいいかも、なんてかすかに思ったけど、僕はそっとミミコから体を離した。
「あ……ゴメンなさイ……」
顔を赤くしながら、ミミコが謝る。
僕は、膝立ちの姿勢で、ミミコの唇に唇を重ねた。
「んふン……」
ミミコが、嬉しそうな鼻声を漏らす。
僕は、ミミコの肩を抱きながら、舌先を口内に侵入させた。
ミミコが、僕の背中に手を回す。
「いたッ」
思わず言って、僕は体をよじった。傷に、ミミコの手が触ったのだ。
一応、自分で消毒して包帯を巻いておいたけど、まだちょっと疼いている。
「ど、どうしたんですカ?」
「いや、ちょっとドジってケガしただけ。気にしないで」
そう言って、まだ何か言いたげなミミコの口を、キスでふさぐ。
「ンンー……」
濡れた舌を唇で挟み、吸い上げると、ミミコの体からくたくたと力が抜けていった。
「ンはァ……」
上気したミミコの柔らかな頬に口付けを繰り返しながら、僕は、着てるものを脱ぎ始めた。
「マスターってば……今日、お仕事じゃないんですカ? ン、ああァン♪」
そんなことを言うミミコの首筋に唇を這わせると、ミミコのちっちゃな体がぴくぴくと可愛く震えた。
「今日は、休む」
「でもォ……にゃはァ〜ン」
ミミコの、幼げな体に似合わない大きなおっぱいを、すくいあげるように両手に収める。手の平からこぼれ落ちそうな感じが、すごくエロチックだ。
「もう、マスターったらァ……ン、んんん、んんッ」
やわやわと柔らかなおっぱいを揉みしだくと、ミミコは、恥ずかしそうに小さく喘ぎ始めた。
フロントホックのブラを外して、じかに、ミミコの肌に触れる。
形のいいミミコの胸の頂点で、小粒の乳首がすでに硬く尖っていた。
「ンあ、あ、ふにゃ〜ン」
くりくりとその乳首をつまんで刺激すると、ミミコの喘ぎ声が大きくなる。
僕は、乳房から手を離さずに、メンテナンス・ベッドのはしに座るミミコの前に立ち上がった。ちょうど僕の股間のところに、ミミコの胸が来る。
僕のアレは、ジーンズの上からも分かるくらい、完全に勃起してしまっていた。
「あ……マスターのおちんちん、もう、こんなになってまス……」
舌足らずな声でそう言いながら、ミミコは、すりすりとその小さな手で、僕のその部分を撫で上げた。
そして、かちゃかちゃと音をさせながら、僕のベルトを外し、ファスナーを下ろす。その間も、僕は、前かがみになって、ミミコの胸への愛撫を休まない。
「あはァ……」
外に解放された僕のペニスが、ミミコの熱い吐息を感じる。
「マスターの、可哀想なくらい、ビンビンになってますゥ」
そう言いながら、ミミコは僕のシャフトをやさしくしごき始めた。
「あっ……」
僕は、思わず声を漏らしながら、あまりの気持ちよさに、ちょっとよろめいてしまった。
ミミコの手に握られた僕のペニスが、柔らかな胸の谷間に触れる。
「えへェ……」
ミミコは、イタズラっぽく笑いながら、僕の手に手の平を重ねるようにして、その大きな乳房で僕の欲棒を挟んだ。たとえようもない優しい刺激が、僕のペニスを包みこむ。
「ミ、ミミコ……」
「マスターのおちんちん、すっごく熱いでス……」
上目遣いで僕の顔を見つめながら、ミミコが囁くような声で言う。
そして、そのおっぱいで、僕のペニスをしごきだす。
「あ、あ、あぁ……っ」
僕は、自分でも腰を動かして、ミミコの胸を犯し始めた。
「にゃあン……♪ マスターのおちんちんで、ミミコのおっぱい、感じちゃいますゥ……」
そんなことを言いながら、ミミコは、胸の谷間を出入りする僕の亀頭に舌を伸ばした。
そして、亀頭が舌に当たるたびに、ちろっ、ちろっと、その先端を舐め上げる。
僕の先走りの汁と、ミミコの唾液が、ミミコの胸を濡らし、汚していった。
「マスター……気持ちイイ……ですカ……?」
ミミコの問いに、僕は犬のように喘ぎながら、こくこくと肯いた。
「うれしイ……もっともっと、ミミコのおっぱいで、感じてくださイ……」
そう言うミミコの声も、なんだか欲情に濡れている。
僕は、ミミコの可愛らしい口をつつくような感じで、ますます腰の動きを激しくした。
僕とミミコの手の中で、ぷりぷりとした乳房が無残なくらいに形を変えている。
ミミコは、うっとりと目を閉じて、僕のペニスの先端にキスを繰り返した。
熱い塊が、体の奥からこみ上げてくる。
「うあっ、あっ、あっ、あーッ!」
僕は、悲鳴のような声をあげて、その塊を解放した。
どびゅびゅうッ! といった感じで、大量の白濁液がミミコの胸の谷間で弾ける。
「にゃはああああッ♪」
二つの乳房の間で、僕のペニスがのたうちまわり、ザーメンを撒き散らす感触に、ミミコは嬉しそうな嬌声を上げた。
ミミコのおっぱいは、僕が放出した粘液によってどろどろに汚され、ぬるぬると妖しく朝日を反射する。
「はぁ……っ」
僕は、自分の精を塗りこむように、しつこくミミコの胸をなぶりながら、大きく息をついた。
僕とミミコは、明るい浴室の中で、シャワーを浴びながら抱き合ってる。ネコの耳と尻尾を備えているとは言え、別にミミコは水やお湯を浴びるのを嫌ったりはしない。
ガーゼをばんそうこうで当てただけの背中の傷が、ちょっとひりつくけど、そんなこと、全然気にならなかった。
すでに、会社には休む旨を告げている。
「ホントに、会社いいんですカ? マスター……ああン♪」
まだそんなことを言うミミコの乳首を、僕はきゅっ、と優しくひねりあげた。
「いいんだ……もう、僕、あの会社やめるし」
「エ……?」
驚いた声をあげるミミコのおでこに、ちゅっ、とキスをする。
「お嬢さんがね、アンドロイドのパーツ・ショップを紹介してくれたんだ。しばらく、そこの下請けで、パーツを作りながら、勉強し直すことにした」
ちゅっ、ちゅっ、とミミコの顔中にキスの雨を降らせながら、僕は言った。
「ミミコの、おかげだよ」
「ふにゃッ?」
僕のキスを恍惚と受けとめていたミミコが、妙な声をあげる。
「ミミコの、おかげ、ですカ?」
「うん。ミミコが、僕の夢を、取り戻してくれたんだ……」
「みゅうゥ……よく、わかんないですゥ……」
素直にそう言うミミコの唇に、僕は唇を重ねた。
そして、たっぷりと舌を絡ませあった後で、ミミコの猫耳に口を寄せて、囁く。
「ずっと一緒にいてね、ミミコ」
「は、はい……ッ!」
ミミコはそう返事をして、ぎゅうっと僕を抱き締めた。背中だと傷に触っちゃうので、僕の腰に腕を回してる。
自然と、僕の股間とミミコの恥丘が密着する。
「ンはァ……」
すでに力を回復している僕の勃起にその部分を圧迫され、ミミコは媚びるようなため息をついた。
たまらなくなって、僕は、ミミコの背中をタイル張りの壁に押しつけ、片足を持ち上げた。
「ミミコ……」
ミミコの秘部は、すでにシャワーのお湯とは全く違うもので濡れていて、誘うようにぱっくりとピンク色の花弁がほころんでいる。
僕は、ちょっと腰を落としてミミコのその部分に亀頭をあてがった。敏感になった僕の粘膜が、ぷにゅぷにゅしたミミコの粘膜を感じる。
「ア……」
ミミコが、顔を真っ赤にして、身じろぎした。
「どうしたの?」
「なんか、ヘンでス……まるで、初めてのときみたいに、ドキドキしちゃってル……」
そう言いながら、ミミコは、恥ずかしそうにうつむいた。
そんなミミコの額に口付けする。すると、ミミコは顔を上げた。大きな目が、涙でうるうると潤んでる。
「ミミコ……入れるよ……」
「来て、マスター……」
その返事を聞いて、僕は、立ったまま一気にミミコを貫いた。
「ンはああああああああああッ!」
びくぅン、とミミコの体が硬直する。どうやら、挿入されただけで達してしまったらしい。
ぴくン、ぴくン、というミミコの可愛い痙攣を、僕は全身で味わった。
爪先立ちのミミコの足が、空しく浴室の床を滑っている。ミミコの小さな体は、僕のペニスによって支えられている状態だ。
僕は、ミミコの小さなお尻を両手で抱えて、ゆっくりと腰を使い始めた。
「あ、んにゃあッ! ふあ……あああああ〜ン」
イったばかりでいつも以上に敏感になった粘膜を僕の雁首でこすられて、ミミコが高い声をあげる。
「スゴい……ですゥ……はうううン……んわぁ……スゴすぎ……ですッ……!」
うわ言のように頼りない口調で、ミミコが快感を訴える。
「ダメ……ダメェ……ミミコ、感じすぎちゃいまス……マスター……マスター……ッ!」
ミミコは、悲鳴のような声をあげながら、僕の首に両腕を絡めて、ふるふるとかぶりを振った。濡れた髪が、頬にはりついている。
「おねがい……マスター……また、またミミコだけイっちゃいますゥ!」
「でも……ミミコ……僕、止まんないよ……」
止まらないどころか、ますます速く、激しく腰が動いてしまう。
「あ、あひッ! にやあああッ! あああああああああああああーッ!」
再び、ミミコは絶頂を迎えた。
でも、僕の動きはまだ止まらない。びくびくと震え続けるミミコの体を持ち上げて、夢中になって抽送を続ける。
「ふにゃあ……ンあァん……マスターのおちんちん、気持ち、イイ……ッ!」
そう言うミミコの顔は、何だか、すごく幸せそうだった。
「ミ、ミミコ……もうダメ……気持ち、よすぎて……壊れちゃいそう……ですゥ……」
「いいよ、壊れちゃっても……僕がすぐ……治してあげるから……」
快楽に頭の中が真っ白になりながら、僕は、言った。
「うれしい……マスター……ミミコを、ミミコをこわしてエ……ッ!」
「ミミコ……ミミコ……っ!」
僕は、ミミコの名を叫びながら、自らのペニスをその一番奥まで思いきり突き入れた。
「にゃああああああああああああああああああああああああああああああああァーッ!」
ミミコが、今までより数段高い絶頂に、高い声を上げる。
僕は、全身が痺れるような快美感に貫かれた。
その、目のくらむような快感がペニスに集まり、凄まじい勢いで迸る。
僕は、ミミコの体をきつく抱き締めながら、その体内に大量の精液を注ぎ込んだ。
お互いの体に腕を回しあった僕とミミコの体が、がくがくと痙攣する。
そして、僕とミミコは、たまらず浴室の床にへたり込んでしまった。
「あああぁぁぁ……」
「ふにゃぁ〜……ン」
それでも、互いの体を抱き締める腕を、ほどこうとしない。
そんな僕たち二人の体を、温かなシャワーのお湯が、優しく叩き続けていた。