特別編
『倒錯! 愛犬遊戯』
(後編)
まだ、レニウスは元の姿に戻っていない。
美玖は、数え切れないほどの絶頂に体力を根こそぎ奪われ、ぐったりと自室のベッドに横たわっていた。
レニーは、今、家の庭の日陰で呑気そうにくつろいでいる。
鎖にはつないでいない。そんなことをしなくても、レニーがこの家を離れることはないだろうという、根拠のない確信が、美玖にはあった。
さすがに、美玖は、家の中でレニーと一緒に過ごす気にはなれなくなっている。それに、家の中のものを何か壊されたらことだ。
もう、昼をだいぶ回っている。
くー、とおなかが健康そうな音をたてたのをきっかけに、美玖は、のろのろと起き上がり、階下に降りていった。
台所でお昼代わりにドーナツを食べる。
そして、ちょっと考えて、ビスケットと牛乳、そして大きな皿を2枚用意した。
「先生、ごはん、これでいい?」
窓から庭に出て、美玖が言う。が、返事はない。
「ねえってば」
美玖は、溜息をついた。
「レニー」
わうっ!
尻尾を激しく振りながら、ででででで、とレニーが美玖の足元に走り寄る。
「ちょ、ちょっと、そんなにあわてないで」
わうっ! わうっ! わうっ!
どうやら、かなりお腹を空かせていたらしい。レニーは、美玖の周りをバターにでもなりそうな勢いで走り回りながら、食事を催促している。
「はい」
美玖が、大皿を地面に置き、箱の中のビスケットをざらざらと半分ほどあけた。
もちろん、舞川家にあったのは人間用のビスケットである。愛犬家が見たら眉をひそめそうな光景だ。
が、レニー自身は、まったくそんなことを気にしない様子である。
がつがつがつがつがつがつ。
惚れ惚れするような食いっぷりで、レニーが、ビスケットを平らげる。
どうやら、レニーの口には合ったようだ。
それどころか、明らかに、まだ足りない様子だ。
「うーん、こんなのだけでだいじょぶなのかなあ?」
言いながら、美玖は、残りのビスケットを皿にあけた。
そして、別に用意した皿に、パックの牛乳を注ぐ。
がつがつがつがつ。ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ。
レニーは、美玖が用意したものをすべて平らげた。
そして、満足そうに口の周りを舐める。当たり前のことだが、まるきり犬の仕草だ。
わうん!
ごちそうさまの挨拶なのか、愛想よく一声吠える。
「……」
急に、美玖は悲しくなった。
じぶんでも驚くくらい唐突に、視界が、涙で滲んでいく。
「先生……」
美玖は、しゃがみこみ、レニーの首を抱き締めた。
わう? とレニーが不思議そうな声で鳴く。
「先生……先生……先生……先生……」
涙声で言いながら、美玖は、あとからあとから、涙を溢れさせた。
そんな美玖を慰めるつもりなのか、レニーが、すりすりと体を摺り寄せてくる。
美玖は、自分でも整理のつかない悲しみにとまどいながらも、夏の日の下で、いつまでも涙を流し続けた。
「はぁ……」
美玖は、再び自分のベッドに仰向けになり、溜息をついた。
庭では、レニーが、迷い込んできたアゲハチョウを相手に跳び回ってる。
「……エッチしたら、元にもどると思ったんだけどなあ」
とんでもないことを呟きながら、美玖は、寝返りを打った。
ちなみに乙女の涙も無効であった事は、先ほど証明済みである。
もちろん、美玖がいわゆるところの“汚れなき乙女”であるかどうかについては、議論の余地のあるところではあるのだが。
(このまま先生が元にもどらなかったら……)
美玖は、ぎゅっと枕を抱き締めた。
(先生が……レニーが、ドッグフード食べるところなんて、ぜったいに見たくないよっ!)
いろいろ他に考えることがありそうなものなのだが、なぜか美玖は、そんなことを考えてしまう。
多分、レニーは、犬の食事を嬉々として平らげるだろう。そのことを想像すると、美玖は、おぞましさのような感覚すら覚えてしまった。
「せんせえ……」
枕に向かって語りかけるように、美玖が呟いた。
庭では、セミが鳴いている。
そのまま、美玖は、眠りの中に落ちていった。
わうわうわうわうわうわう!
レニーの吠え声に、美玖は飛び起きた。
尋常な声ではない。あのレニーがと思うほど激しい声だ。敵を威嚇するための鳴き声である。
外は、もう夕暮れの色に染まっていた。
薄暗い庭を窓から見下ろすと、レニーが、何者かと対峙している。
不審者だ。
人の家の庭に侵入している時点ですでに不審極まりないのに、その服装が常軌を逸している。
この暑い中、ブルーのスーツを着ているのはまあいいとして、その顔をすっぽりと異様なマスクで覆っているのだ。
目の部分には、レンズのはまった小さな丸いノゾキ穴のようなものが開いており、口のところには円筒形の空気浄化装置がある。どうやらガスマスクか何かのようだ。
その上、背中にはアクアラングのようなボンベを背負っている。
「どろぼーッ!」
果たして本当にそうなのかどうかは分からないが、美玖は、そう叫んで窓を開ける。
と、美玖の声が合図であったかのように、レニーが不審者に跳びかかった。
不審者が、手に持っていた扇子のようなものを、レニーの腹部に触れさせる。
ぎゃん!
さして力がこもっているようには見えなかったが、レニーは悲鳴をあげて大きく後方に吹っ飛んでいた。
「レニーっ!」
美玖は大声で叫んで、窓から飛び降りた。
しゅばっ! とミルク色の光がはじけ、ショートバージョンの変身BGMが鳴り響く。
「ばんのーむてき! みるく・えんじぇるっ!」
自宅の庭に降り立ち、美玖――いや、ミルク・エンジェルは、大きく見得を切った。
不審者が、マスクに包まれた顔を、レオタードのような衣装をまとったその姿態に向ける。
「レニー、だいじょぶ?」
ミルク・エンジェルの声に、地面に横たわったレニーが、くーん、と弱々しく答えた。
「よくもやってくれたわね! このドロボー!」
ミルク・エンジェルが、不審者を睨みつける。
「どこのだれだか知らないけど、パパがのこしてくれたミルク・エンジンが回り続ける限り……」
「私は誰だ?」
不審者の、くぐもった聞き取りづらい声が、ミルク・エンジェルの言葉を遮る。
「え、えと、だれって、だれが?」
「だから、私は誰なんだ?」
口調だけは大真面目にそう言いながら、ガスマスク姿のその不審者は、ミルク・エンジェルに詰め寄った。
恐怖よりも気味の悪さに、ミルク・エンジェルが数歩後ずさる。
「な、何言ってんのよォ!」
「お前なら知ってるはずだ! この私が誰なのかを!」
「しっ……知らないわよ! あんたみたいな人に知り合いはいないもん!」
「ふふふふふ……驚くのも無理はない。死んだと思っていたのだろうからな」
ミルク・エンジェルの言葉を無視して、ガスマスクの男は一人言った。
「確かに私も、あのレニウスとかいうボンクラ少佐に脳を焼かれた時は死んだかと思ったが」
「先生のこと悪く言わないで!」
「だが、あいにく私の脳は7割以上がマイクロマシン細胞に換装されているのだ! 多少の損害を受けても自己修復するのだよ!」
左手でVサインを作り、右手の扇子を広げながら、不審者は言った。扇子には、銀河帝国のシンボルである“宇宙船に太陽”の紋章が描かれている。
「まあ、そのせいで色々と記憶障害が発生してしまったがな」
「だからあ、あんただれなのよ!」
「それが分かれば苦労せん! 記憶障害だと言っとろうが!」
不審者の言葉に、ミルク・エンジェルは大きく顔をしかめた。
「だが、お前なら知っているはずだ! 銀河系第4象現にその人ありと言われたこの私の名前を!」
「し、知らないよ!」
「私の名を言ってみろ!」
「知るもんかあ!」
叫びながら、ミルク・エンジェルは、両手を天にかざした。
「デカローグ・タブレット!」
その声とともに、キラキラと輝く光の粒子がミルク・エンジェルの手の中に集まり、形を作っていく。
そして、彼女の両手に、一抱えはありそうな石版が現れた。
「汝、盗むなかれえ!」
叫びながら、ミルク・エンジェルが、両手に持った石版を軽々と横に振り回し、男に叩きつける。
ぼかあぁん!
「どわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!」
派手な叫び声を上げながら、不審者は、放物線を描いて暮れなずむ空の彼方へと消えていった。
きらっ、とまるで一番星のように、不審者の姿が消えたその空の一点が、一瞬だけ光る。
「えーっと……言われてみれば、見覚えがあったような気がするなあ……」
ミルク・エンジェルが、今さらのようにそんなことを呟く。
「って、そんなことより! レニー?」
ミルク・エンジェルは、レニーに向き直った。
くーん、と弱々しげに鼻を鳴らしながら、レニーが頼りない足取りで立ち上がろうとする。
どうやら、先ほどの不審者が使用した扇子には、スタンガンのような効果があったらしい。
見ると、レニーのお腹のところが、火傷したように小さく水ぶくれになっている。
だが、それ以外の外傷はなく、もちろん命に別状もなさそうだ。
「くすり、ぬらなきゃ……えい!」
一瞬思案した後、ミルク・エンジェルは、レニーをひょいと抱え上げた。変身後のこの姿なら、自分よりも重そうなレニーの体も、軽いものだ。
ぱちぱちと驚いたように丸い目をしばたたかせるレニーを、階上の自室にまで運んでいく。飛行用の翼は、室内では邪魔にならないように手の平ほどに小さく縮めている状態だ。
二階につく頃には、レニーは、ショックから覚め、しきりに体を動かしていた。
「あん、もう、あばれちゃダメ!」
そう言って、ミルク・エンジェルは、自室のベッドにレニーを下ろした。
「えーっと、ヤケドのくすりでいいのかなあ?」
ミルク・エンジェルは、納戸に行き、救急箱から小さな看護婦姿の女の子がプリントされた軟膏の容器を取り出した。
そして、レニーのいる自室に戻る。
レニーは、ベッドの上に行儀悪く横たわり、ぺちゃぺちゃと自分の腹を舐めていた。
「あ、ダメだよ! おくすり、ぬってあげるから」
そう言って、ミルク・エンジェルはレニーの頭をどかし、白い軟膏を傷口に塗った。
レニーは、一瞬傷がしみたのか、ひくん、と体を震わせたが、おとなしくしている。
「よくガマンしたね。エライねー」
言いながら、ミルク・エンジェルは、薄手の素材の手袋をした手で、レニーのお腹を撫で続けた。
レニーは、仰向けの状態で、されるがままだ。いわゆる服従のポーズである。
「……」
ミルク・エンジェルは、バイザーの奥から、ちら、ちら、とレニーの下腹部に視線を送った。
その部分は、こんもりと盛り上がっているが、昼に自分をさんざんに犯した肉棒は収納された状態である。
「どうなってるの……かな……?」
あのときは、落ち着いて観察することもできなかったその部分に、指を伸ばす。
さす、さす、と盛り上がった部分を撫でてやると、レニーが身じろぎした。
が、イヤそうな様子ではない。
「こうすると……気持ちいいのかな?」
優しく、優しく、柔らかな毛に覆われたその部分を撫でる。
熱い温度が、手袋越しに伝わってきた。
「きゃ」
にゅるん、と、親指ほどの太さの肉の棒が、そこから現れた。
ヒトのそれとは全く異なる外観の、犬の、赤いペニス。
(これが……あたしのアソコを……あんなふうに……)
あれほどの質量を誇ったとは思えないほど、まだ小さいままのそこに、ミルク・エンジェルは、ゆっくりと顔を寄せていった。
「ん……っ」
不思議な、しかし紛れもない牡の性の匂いが、ミルク・エンジェルの鼻孔を刺激する。
レニウスに開発され尽くされた彼女は、その刺激に、きゅうん、と体の奥底を疼かせてしまった。
昼に味わった暴力的なまでの快楽を思い出しながら、ちろりと幼い唇をピンク色の舌で舐める。
「ね、レニー……してほしい?」
ふに、ふに、とペニスを刺激しながら、ミルク・エンジェルは訊いた。
その間にも、レニーのペニスは、ますます大きくなっていく。
「フェラチオされたい? オチンチン、ぺろぺろおしゃぶりしてほしい?」
自分自身の、そうしたい、という欲求に声を震わせながら、ミルク・エンジェルは重ねて訊いた。
レニーが、くぅん、と鼻を鳴らす。
ミルク・エンジェルには、それが、肯定の合図であるように思われた。
「してあげる……レニーのオチンチン、お口でアイしてあげるね……」
言って、ミルク・エンジェルは、レニーの下腹部に顔を伏せた。
仰向けになったレニーの左側で上体を倒し、唇を赤い肉茎に触れさせる。
ちゅ、とその表面に口付けたとき、ミルク・エンジェルの中にわずかに残っていた逡巡が、消えた。
そのまま、大胆に先端を口内に収める。
「んっ……ぴちゅ……ちゅっ……ちゅぶ……ちゅるっ……」
次第に長く、大きく、そして固くなっていく犬の牡器官に、舌を絡め、湧き出る唾液を啜り上げるようにして吸引する。
はっはっはっはっはっはっ……。
興奮し始めたのか、レニーが、せわしなく息をつき始めた。
口内のペニスの感触と温度、そして、その息遣いが、レニーの感じている快感を伝えてくる。
ミルク・エンジェルは、そのことに、じん、と脳内が痺れるような感覚を感じていた。
もっともっと、この可愛い犬の姿になった自らの主人に奉仕したいと思う。
その思いは、ミルク・エンジェルの幼い体を、さらに甘く痺れさせた。
「んっ、んぐ、んむ……んふン……ふーっ、ふーっ、ふーっ……」
片時もペニスを口から離したくない、とでも言うように、鼻で呼吸しながら、口唇愛撫を続ける。
口の中に広がる饐えたような牡の匂いは、ミルク・エンジェルの心と体を、まるで媚薬のように冒していった。
「んっ……んむっ……んぐ……んんン……」
いつしかミルク・エンジェルは、そのミルク色のレオタードのようなコスチュームの上から、自らの乳房をまさぐっていた。
ほっそりと幼い体には不釣合いなほど豊かな胸を、ふにっ、ふにっ、ふにっ、ふにっ、と調度いい力加減で揉みしだく。
あっという間に勃起した乳首が、コスチュームの上から浮かび上がった。
「んんッ、んゥ……んっ……んーっ、んーっ……!」
左手で上体を支え、右手だけで、左右の乳房を交互に愛撫しながら、ミルク・エンジェルは悩ましい鼻声を上げ続けた。
自らの最大の性感帯である乳房と乳首をこね回しながら、眉をたわめ、ぴちゃぴちゃとレニーのペニスを舐めしゃぶる。
(あっ……ヤダ……か、感じすぎてきちゃった……)
胸からの快感で、レニーへのフェラチオが疎かになってしまう。
(どうしよう……あっ、でも……これ、もうちょっとでイけそう……!)
ふに、ふに、ふに、ふに……。
見ている方が心配になるほど乱暴に乳房を揉み、乳首をひねりあげる。
そうしながら、ミルク・エンジェルは、股布に恥部をこすりつけるように、浅ましくヒップを揺らしていた。
ハイレグ状のその部分が、可愛らしい尻肉の谷間に食い込み、じっとりと蜜を分泌する秘所に貼り付いていく。
「んーっ、んふーっ、んーっ、んーっ……!」
絶頂という甘い果実の誘惑に、ミルク・エンジェルは、すでに屈しかけていた。
もはや、半開きになったその口からはペニスが外れ、ただ長く伸ばした舌でぴちゃぴちゃと舐めるのみだ。
そんな自分に罰を与えようとするかのように、ぎゅううっ、と柔らかな乳房に指を食い込ませる。
が、それとて、新たな快楽を引き出す刺激でしかない。
「ンあっ……ごめん、レニー、あたし……っ!」
びくびくびくびくっ!
ミルク・エンジェルは、乳房と乳首への刺激だけで、絶頂を迎えてしまった。
「あっ……あっ……あ、あっ……」
ベッドに横たわり、ひくん、ひくん、と肩を震わせる。
腹部から頭をどけられ、レニーはのっそりと立ちあがった。
そして、コスチュームが透けるほどに大量の蜜を溢れさせてしまったミルク・エンジェルの秘部に、鼻面を近づける。
「あぁ……ん」
横向きに寝ているミルク・エンジェルの目の前で、勃起したままのレニーのペニスが、揺れている。
「ゴメン……あたしだけ、先にイっちゃって……」
ミルク・エンジェルは、のろのろと体を起こした。
そして、低い四つん這いの姿勢で、レニーのお腹の下に体を差し込む。
わうっ?
レニーは、ミルク・エンジェルの意図を量りかねるような声を上げた。
構わず、ミルク・エンジェルは、頭を横に倒し、再びレニーのペニスを口に咥える。
しばらく、前足の置き場に困っていたレニーだが、いつしか、それをミルク・エンジェルの背中に乗せていた。
まるで、逆向きに交尾しているような格好である。
「んっ、んふっ、ふぅン……んっ、ちゅっ、んふん……ちゅるるっ……」
四つん這いで犬のペニスに奉仕するという屈辱的な体勢で、ミルク・エンジェルは、嬉しそうに鼻を鳴らしている。
はっはっはっはっはっはっ……。
レニーの荒い息遣いまでが、たまらなく愛しい。
再び膨張していくレニーのペニスに口腔を占領され、溢れた唾液がぽたぽたとシーツを汚す。
最初の発射は、不意に始まった。
ぴゅうううっ!
「んうン♪」
口の中に、一際生臭い性の匂いが、弾ける。
ぴゅううぅーっ、ぴゅううぅーっ、ぴゅううぅーっ、ぴゅううぅーっ……。
粘度の低い体液が迸り、ミルク・エンジェルの口内から溢れそうになる。
「ん……んぶっ……んっ……んくっ、んくっ、んくっ、んくっ、んくっ……」
ヒトのそれとは異なる熱い体液を、ミルク・エンジェルは、白い喉を鳴らしながら嚥下した。
(スッゴイ……たくさんでてるゥ……)
うっとりとそう思いながら、ふぅン、ふぅン、と鼻を鳴らし、腺液を飲み干していく。
(飲んであげるね……セイエキだって、オシッコだって……なんだって飲んであげるからね……♪)
ぞくぞくと身を震わせながら、ミルク・エンジェルは、レニーの体液を啜り続けた。
「……ぷはぁっ」
ようやく、腺液の噴出が終わり、ミルク・エンジェルは体を起こした。
まだレニーのペニスは勃起したままだ。
いや、これからが本格的な性交なのだということを、ミルク・エンジェルはすでに学んでいる。
「えーっと……こう、かな?」
ミルク・エンジェルは、はしたなく両脚を広げ、その間にレニーを導いた。
そして、ちょっと考えて、愛用の大きな枕を腰の下に起き、レニーを抱き寄せる。
そのまま仰向けになると、レニーが、ミルク・エンジェルに覆い被さってきた。
枕によって高く掲げられた腰が、ちょうどレニーのペニスの高さになる。
「ん……」
ミルク・エンジェルは、そのコスチュームの股の部分を、横にずらした。
伸縮性に富んだミルク色の布地の下から、物欲しげにひくつく幼い秘唇が現れた。
そこに、すでに固く勃起しきったレニーのペニスを導く。
レニーは、犬の本能にはインプットされていないこの姿勢に少し戸惑っていたが、すぐにミルク・エンジェルの考えを覚ったようだった。
レニーが、腰を進ませる。
「あっ……ああァン……すごいっ……!」
ずずずずずずずずっ……と未だ膨張を続けるペニスが、ミルク・エンジェルの膣道をこすりあげる。
陰唇に、ペニスの根元の亀頭球が触れた。
ミルク・エンジェルが、ためらうことなく脚を開き、両手の指で自らの秘孔を広げる。
レニーは、ぐいっ、とペニスをさらに挿入させた。
「あ……んぐっ!」
膣口を亀頭球がずるんと通過する感覚が、一瞬、頭を真っ白にする。
が、最初の頃ほどの苦痛はない。
それどころか、その刺激によって、ミルク・エンジェルは軽い絶頂を迎えてしまった。
「あっ……あぁッ……はあッ……はあぁッ……」
熱い肉の杭で貫かれ、ミルク・エンジェルは、荒い息を吐いた。
バイザーの下からのぞくその頬は、真っ赤に染まっている。
(いっぱいに……いっぱいになってるよォ……)
ぴっちりと隙間なく膣内を内側から圧する熱い圧力が、息が苦しくなるような快楽を紡いでいる。
自分の顔を見下ろすレニーと視線を交わすと、その円らな瞳が、興奮で濡れているように見えた。
ひくっ、ひくっ、と互いの粘膜が震えるたびに、鋭く深い快楽が体の奥で弾ける。
びゅううううっ!
射精が、始まった。
精液と前立腺液が、子宮口に食い込んだペニスの先端から、ミルク・エンジェルの体奥へ、びゅるびゅると注ぎ込まれる。
(ああン……すごォい……いっぱい、いっぱい入ってくるよぉ)
(あっついのが……体の中に、出されてる……っ♪)
(こ、こんなにたくさん……もし、あたしが犬だったら、ぜったいニンシンしちゃうっ!)
びゅーっ、びゅうーっ、びゅうぅーっ……。
ようやく、レニーの射精が収まった。
「い……いっぱい出たね……」
はぁっ、はあっ、と甘い息を漏らしながら、ミルク・エンジェルが言った。
このまま、しばらくは、静かだが力強い快楽に身を委ねようとする。
ぐんっ!
「きゃうン!」
突然、長大なペニスを体内で動かされ、ミルク・エンジェルは悲鳴をあげた。
「ちょ……まって……あうううううッ!」
そして、不意打ちのような絶頂に呆気なく追い込まれる。
「はっ、はわあぁ……ど、どう、して……きゃうっ!」
レニーが、ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ、と腰を使ってる。
明らかに、昼の時とは違う動きだ。
隙間なくぴっちりと埋め込まれたペニスが膣内をこねるように暴れる。
その動きは大きくはないが、もたらされる快感はすさまじいものだった。
「あっ、ああっ、ああっ、あン、あン、あン!」
まるで、正常位を経験したことで、人間だった時のやり方を思い出したように、レニーが腰を動かす。
ミルク・エンジェルは、それが生み出す快感の奔流に抗うことができない。
「だめッ! だめえッ! イっちゃう! イキすぎちゃう〜ッ!」
ミルク・エンジェルは、ヘルメットからはみでた栗色の髪を振り乱しながら、びくん、びくんとその小さな体を震わせた。
小学生離れしたたわわな巨乳が、揺れる。
その動きに誘われたように、レニーは、ミルク・エンジェルの乳房をべろべろと舐め回し始めた。
材質不明のミルク色の布地が、レニーの唾液でぬらぬらと濡れる。
その頂点が、勃起した乳首の形にぷっくりと盛り上がっているのがなまめかしい。
「はっ! はひっ! ひいン! ひあああああああッ!」
激しくのけぞり、身悶えるミルク・エンジェルの頭から、ヘルメットがずり落ちた。
あらわになった美玖の顔は、汗と涙と涎でべとべとである。
レニーは、そんな美玖の顔を、ざらついた長い舌で愛しそうに舐め回した。
「はっ! はあン! すきっ! だいすきいっ!」
美玖は、長い毛に覆われたレニーのしなやかな首を抱き寄せた。
そして、自らも犬になったように舌を突き出し、レニーの舌に絡める。
ぴちゃぴちゃという、あまりに卑猥な音を響かせながらの、ディープキス。
その時――しゅばっ! という鋭い音と共に、ミルク色の光が、レニーの全身を包んだ。
「……えぇ?」
全裸のレニウスが、美玖に覆いかぶさった状態で、間の抜けた声をあげる。
が、美玖は、自分の相方の姿が変わってしまったことすら、きちんと認識できない状況のようだ。
「いやあン! やめちゃダメ! もっと、もっとぉ〜っ!」
美玖が、はしたない声をあげながら、枕の上の腰を大きく浮かし、揺する。
「あっ! み、美玖ちゃんっ!」
レニウスは、混乱したまま、最も根源的な欲求に突き動かされ、腰の動きを再開した。
亀頭球という“栓”を失い、泡立った大量の体液が、美玖のその部分からじゅぶじゅぶと溢れ出る。
レニウスのペニスは、その熱い体液に溺れながら、発達した雁首で美玖の膣肉を容赦なくえぐった。
「せんせえッ! すごいっ! ああン! すごいよ〜ッ!」
今まで味わえなかった鋭い刺激が、美玖の神経を灼く。
「せんせえッ! 美玖は、美玖は、もう……ひああああああああああああッ!」
「っ……美玖ちゃん、僕も……」
二人の快楽曲線が、シンクロする。
(せんせい……せんせいが……美玖の中で、シャセイするんだ……!)
もはやまともな考えの浮かばない脳が、そのことを妙にはっきりと認識する。
それは、美玖がふだん意識していなかった至高の快楽を暴き立てた。
(ほしい……先生の赤ちゃん、ほしい……!)
ようやくその準備を整えたばかりのいたいけなカラダが、健気にも全身でそれを求めている。
「ニンシンさせてっ! せんせいのセーエキで、美玖をニンシンさせてェ!」
「み……美玖ちゃんッ!」
びゅるるるるるるるるるッ!
粘度の高い大量の精液が、美玖の幼い体内に注ぎ込まれる。
「きゃああァーっ! ニンシンするっ! ニンシンするうっ! 赤ちゃんできちゃう〜っ♪」
白い快楽のカタマリが爆発し、わずかに残っていた理性を瞬時に蒸発させる。
全身を、甘い電流が貫くようなカンカク。
美玖は、両手両足でレニウスの体を抱き締めながら――この日最高の絶頂に、意識を失ってしまった。
しばらく後――。
すでに、窓の外は夜の闇だ。
そんな中、ようやく美玖は目を覚ました。
確認するのが恐い、とでも言うように、のろのろとその大きな目を開く。
美玖の横には、見慣れたレニウスの姿があった。
首輪は、自分で外したようだ。その体には何も身につけていない。
「えっと……僕、どうなってたのかな?」
レニウスが、事情の説明を求めてくる。
その呑気さにちょっとだけ腹が立ち、美玖は、何か言ってやろうと口を開いた。
しかし、言葉が出てこない。
「もうっ!」
それだけ言って、美玖は、まるでその胸元に飛び込むような勢いで、レニウスに抱きついた。
「美玖ちゃん?」
きょとんとした顔のレニウスに抱きついたまま、美玖が、幼い子供のようにわあわあと声をあげて泣き出してしまう。
レニウスは、整理のつかない表情のまま、それでも、美玖の髪をいつまでも撫でてやるのだった。
《エンディング・テーマ》
『白い天使のうた』