はじめてのていそうたい


(前ぺん)



 一学期の終業式の日、リュウくんは、マミちゃんといっしょに、エリカちゃんの大きなおやしきで、お昼をごちそうになりました。
 食どうでエリカちゃんが作ったパンケーキを食べた後は、場所をエリカちゃんのお部屋にうつして、お茶会になります。
 話題は、もっぱらオーストラリアのことです。
 明日から、リュウくんはオーストラリアにホームステイに行くことになっているのです。
「いいなあ〜、おーすとらりあ!」
 じゅうたんの上に、本やパンフレットを広げながら、マミちゃんが言いました。
「コアラとかウォンバットとか、だっこしてみたーい」
「オオコウモリやエリマキトカゲやタイパンもいますわね」
 エリカちゃんが、にこにこと笑いながら言います。
「たいぱんって?」
「コブラよりもすごい毒をもったヘビさんですわ」
 質問してきたリュウくんに、おだやかな笑顔のまま、エリカちゃんが答えました。
「そうそう、アオジタトカゲの舌って、名前通り、とってもキレイな青でステキですの。ああ、あたしもいってみたいですわ」
「あたしもー」
 ちょっと青い顔になったリュウくんを前に、エリカちゃんとマミちゃんがそんなことを言ってます。
 と、マミちゃんが、急に浮かない顔になりました。
「どうしたの? マミちゃん」
「リュウくん、どれくらい、向こうにいるんだっけ?」
「えーっとね、ちょうど一週間」
「はぁー」
 ごろん、とマミちゃんはおぎょうぎ悪くクッションの上に横になってしまいました。
「これから一週間も会えないんだア……さみしいなあ……」
 その言葉を聞いて、リュウくんも、ちょっと沈んだ顔になります。
「だめですわ、マミさん。そんなこと言ってリュウくんを困らせたりしたら」
 エリカちゃんが、お姉さんみたいな口調で、そんなことを言います。
「でもさぁ……」
 マミちゃんは、ころん、とうつぶせになって、ぎゅうっとクッションをだきしめました。ちょうど、リュウくんやエリカちゃんにかわいいおしりを向けるかっこうです。
「だってさ、さいきん、そのぉ……なかなかチャンスなくって……」
 ひざから先を曲げてぶらぶらさせながら、マミちゃんがぼしょぼしょと言います。
「リュウくんに、愛していただけなかったんですね」
 エリカちゃんのダイタンな言い方に、二人の顔が、ぼっ、と赤くなりました。
「うーん、ザンネンですわぁ。本当なら、ここで三人で愛し合いたかったんですけど……」
 そう言いながら、エリカちゃんは、ちら、とリュウくんの方を見ました。
「うん。ボク、明日の準備があるから、もうすぐ帰んなきゃいけないんだ」
「みゅう〜」
 エリカちゃんとリュウくんの言葉に、マミちゃんは、まるでネコさんみたいな声をあげてしまいます。
「あ、そうですわ」
 ぽん、とエリカちゃんが、白くて小さな両手を合わせました。
「リュウくんがるすのあいだ、マミさん、わたくしといっしょに旅行に行きません?」
「え?」
 マミちゃんは、うで立てみたいなかっこうで上半身を起こしながら、エリカちゃんの方を見ました。
「急なことですから、行けるところはかぎられてしまいますけど……お父様の知り合いで、高原の温泉で旅館を経営されてる方がいらっしゃいますの。ひ暑にもなりますし、それに、とってもいいところですのよ」
「う、うん、それは、うれしいけど……」
 体を起こしてそう言いながら、マミちゃんは、ちら、とリュウくんの方を向きました。
 リュウくんも、何だか困ったような顔で、マミちゃんとリュウくんの顔を見比べています。
「――ははーん、分かりましたわ」
 エリカちゃんが、めがねのおくのきれいな黒いひとみに、イタズラっぽい光を浮かべました。
「二人とも、わたくしがマミさんをユウワクしないか、不安なんですのね?」
「え、えっと……」
 リュウくんは、思わずぜっくしてしまいました。図星だったのです。
「ご安心なさって。こういうこともあろうかと、わたくし、とってもいいものを準備してあるんですの」
 エリカちゃんのもの言いに、リュウくんとマミちゃんは、顔を見合わせてしまいます。
「いいものって、なに……?」
 好き心に負けて、マミちゃんは、つい、きいてしまいます。
「――“貞操帯”ですわ」
 エリカちゃんは、二人がはじめて聞く言葉で、そう答えました。



「なにこれ〜?」
 マミちゃんは、エリカちゃんが持ってきたものを手にして、思わず声をあげてしまいました。
「ですから、テイソウタイですわ」
 すまし顔で、エリカちゃんが言います。
「マミさんがわたくしとウワキできないようにするために、アソコやおしりをふさいでしまうものですの」
「……」
「もちろん、マミさんは、自分でおなぐさめになることもできなくなりますわ」
 エリカちゃんの言葉に、リュウくんとマミちゃんは、またもや顔を見合わせてしまいます。
 それは、一言で言うなら、うすい金ぞくの板で作られたパンツでした。
 金ぞくは、かるいステンレスのようで、それが黒いゴムでふちどりされています。
 形は、TバックならぬTフロントといった感じです。おしりの方は金ぞくが板ではなく、ぴかぴかにみがかれたワイヤーのようになっていて、ちょうどおしりのわれ目に通るようになっています。
「えっと……おすもうさんのまわしみたい」
「うーん、そう言われると、そうかもしれませんわね」
 リュウくんの正直な感想に、エリカちゃんが苦笑いします。
「じゃあ、マミさん、ためしに、はいてみてくださいな」
「えええ?」
 マミちゃんが、びっくりした声をあげます。
「サイズは、わたくしが指や手ではかったので、ぴったりだと思います。さ、どうぞ」
「あれって、そういうのだったの?」
 この前、三人ではだかになってイタズラしたときに、エリカちゃんがおまたのところを熱心にいじっていたのを思い出して、マミちゃんは声をあげてしまいました。
「そうですわよ」
 そう言ってエリカちゃんは、マミちゃんからていそう帯を受け取り、前の部分のロックを、かちゃ、と外しました。ちょうど、Tの字のせつごう部分が、三つに分かれます。
「さ、早く早く♪」
 エリカちゃんが、小鳥のさえずるような声で、楽しそうにさいそくします。
 見ると、リュウくんも、ほっぺたを真っ赤にしながら、じーっとマミちゃんの方を見つめていました。
「うー……」
 小さくうなってから、マミちゃんは、スカートをまくりあげてパンツに手をかけました。
 マミちゃんは、こうやって、きたいに満ちた目で見られるのに弱いのです。
 するするする、と健康てきな足からパンツをぬいで、かたわらにおきます。
「スカートも、ですわ」
「えーっ?」
「だってコレ、おへその上でとめるんですもの」
 ぴら、と両手で広げるようにていそう帯を持ちながら、エリカちゃんが言います。
「ううううぅ〜」
 またもやうなり声をあげてから、マミちゃんは、ヤケになったみたいにスカートをぬぎました。
 そして、Tシャツのすそを下にひっぱって、おまたのところをかくします。
「ふふ、では、着けてさしあげますね」
 そう言って、エリカちゃんは、マミちゃんの前にひざまずきました。
 そして、まるでちっちゃな子どもにパンツの用意をしてあげるように、ていそう帯をマミちゃんの足元に差し出します。
 マミちゃんは、Tシャツのすそを押さえたまま、一足ずつ、ていそう帯にくぐらせました。
 ウェストの輪になってる部分をちょっと開き気味にしながら、エリカちゃんが、するするとていそう帯をもちあげます。
「マミさん、手をどかして」
「……」
 言われるままにマミちゃんが手をどかすと、エリカちゃんは、おへそのところで、ウェストベルトの留め金を、かちゃん、と留めました。
「ちょっと、きっつい……」
「ぴったりに作られてますからね」
 そう言いながら、エリカちゃんは、ベルトの位置を調整します。
「前にくらべてお太りになった、なんてことはないですわよね?」
「そ、そんなことないもん!」
「ムリをなさってはいけませんわよ。何しろ、一週間、ずーっとつけっぱなしにするんですから」
「え……?」
 マミちゃんが、その大きな目を丸くします。
 エリカちゃんは、ふんふんふ〜ん♪ とハミングしながら、マミちゃんの足の間からおまたに当たる部分を前に通しました。
「ふゎ!」
 ひやっとしたステンレスの板がおまたに触れたとき、マミちゃんは、思わず悲鳴をあげてしまいました。
 かまわず、エリカちゃんはステンレス板を動かして、そこに空けられたたてに長いすきまから、マミちゃんのぴらぴらを出すようにします。
「大人の女性でしたら、もっときちんとこのスリットからラビアが出るんですけど、マミさんのアソコではまだムリですわね」
 はずかしそうに顔を出しているまだピンク色のそれを見つめながら、エリカちゃんが言いました。
「まあ、位置さえずれなければ、きちんとおトイレもできるはずですから」
「お、おトイレって、これ、はめたままするの?」
「当たり前じゃありませんか。――えい♪」
 エリカちゃんは、マミちゃんがそれいじょう何か言うヒマを与えずに、せつごうする所を、かちゃ、とはめてしまいます。
 そうしてから、エリカちゃんは、やはり同じようにうすい金ぞくでできた板を取り出しました。
 小さな穴がたくさん空いた板で、上の部分に留め金があります。
「な、なにそれ?」
「これは、“自慰防止板”と言って、自分でイタズラすることをふせぐものですのよ」
「そ、そんなのなくても……マミ、そんなことしないもん」
「なら、べつに付けてしまってもかまいませんわね」
 エリカちゃんはにっこりと笑って、じいぼうし板を、さっきのたて長のすきまをかくすようにおまたの板に重ねました。
「え、えっと――」
 そして、やはりマミちゃんが何か言う前に、留め金をかけて、固定してしまいます。
「はい、完成ですわ」
 そう言って、エリカちゃんは、できばえを確かめるように、ちょっと身を引きました。
「うわぁ……」
 エリカちゃんの肩ごしに見ていたリュウくんが、思わず声をあげます。
「……」
 マミちゃんは、耳まで顔を真っ赤にしながら、じっと、自分のおまたをかくしているていそう帯を見つめています。
「――はい、リュウくん。これ、カギですわ」
 そう言って、エリカちゃんは、リュウくんに金色の小さなカギを手わたしました。
「え……?」
「あの、おへそと、その下の所に、2か所、カギ穴があるでしょう? そこにカギをかけると、あのていそう帯は、ぜったいにぬげなくなってしまいますの」
 たしかに、エリカちゃんの言うとおり、二つある留め金の部分は、丸いボタンのように飛び出ていて、まん中に小さなカギ穴のようなものがあります。
「エリカちゃん……!」
 マミちゃんが、声をあげました。
「さっきは、ためしって言ったじゃない!」
「ええ、ここまでは、そうですわ。おあそびと同じですわね」
 エリカちゃんが、すまし顔で言います。
「でも、リュウくんがカギをかけてしまえば、それは、ホンモノのていそう帯になるわけですわ」
「……」
 マミちゃんは、むー、とまゆをしかめながら、リュウくんの顔を見つめました。
 リュウくんは、とつぜんのなりゆきに、目をぱちくりさせています。
「さあ、リュウくん、どうされます?」
「え? えーっと……ボクは……」
 手に持ったカギをいじりながら、リュウくんは言いました。
「ボクは、マミちゃんのこと、信用してるから……」
「それはそうかもしれませんけど」
 エリカちゃんが、にまっ、とイタズラっぽいほほえみを、そのお人形さんみたいな顔に浮かべます。
「では、わたくしのことも、信用していただけるということですの?」
「え……?」
「だって、わたくし、マミさんが好きで好きでたまらないんですのよ」
 そう言って、エリカちゃんは、座ったままで、いきなりマミちゃんのこしにだきつきました。
「きゃあん」
 思わず、マミちゃんはかわいらしい悲鳴をあげてしまいます。
「このすらっとした足も、なだらかなおなかも、かわいらしいちくびも、今はかくされてるおまたも、食べちゃいたいくらいに好きなんですから」
 そう言いながら、エリカちゃんは、マミちゃんの太ももに、そのほっぺたをすりすりとすりつけました。
「エ、エリカちゃん……」
「もちろん、リュウくんのことも大好きですわ♪」
 ほほえみを浮かべたままリュウくんの方を向いて、エリカちゃんは言いました。
「でも、リュウくんが遠い空のむこうに行ってしまわれるんでしたら……取り残されてさみしくなったわたくしたちが、どんなふうにしておたがいをなぐさめあうか、分からないでしょう?」
「……」
「たしかに、リュウくんはマミさんのことを信用なさっているでしょうけど――」
 そっとマミちゃんの体からはなれながら、エリカちゃんは言いました。
「信用や約束をカタチにしておくのも、悪いことではありませんわ。つまり、こんやく指輪と同じですわね」
「……」
「それに――このカギをかけるけんりを持っているのは、リュウくんだけでしょう?」
「……」
 ふだんの、おとなしくてひかえめなエリカちゃんからは考えられないようなそのお話を聞いてるうちに、リュウくんもマミちゃんも、なんだかふしぎな気分になってきました。
 あのエリカちゃんがこれだけ言うからには、なんとなくそれが正しいことのように思えてきたのです。
「……マミちゃん」
 そう言って、リュウくんは、マミちゃんの顔と、そのおまたをおおっているていそう帯を、こうごに見つめました。
「リュウくん……」
 マミちゃんが、不安そうな声をあげます。
 リュウくんは、カギをぎゅっとにぎったまま、エリカちゃんと交代するように、マミちゃんの前にすわりこみました。
「……」
 そして、ふるえる手で、カギを、カギ穴に差し込みます。
「こ、こわいよ、リュウくん……」
 マミちゃんは、ぎゅっ、とTシャツのすそをにぎりしめながら、泣きそうな声で言いました。そのあしが、ぷるぷるとふるえています。
 それなのに、マミちゃんは、にげようとはしません。
「だいじょうぶですわ、マミさん。マミさんのおせわは、わたくしが責任をもっていたしますから」
「……」
「さあ、リュウくん……」
 リュウくんのほてった耳にくちびるを寄せながら、エリカちゃんが、ささやきます。
「これで、マミさんのアソコも、おしりの穴も、リュウくんだけのもにすることができるんですのよ……♪」
「……っ」
 リュウくんは、ぎゅっ、と目を閉じて――
 そして、かちり、とカギを回しました。
「あ……っ」
 びくん、とマミちゃんの体がふるえます。
「さあ、下の方のカギも……。これにカギをかければ、マミさん、一人でなぐさめることもできなくなりますの」
「――」
 リュウくんは、まるでこわいものを見ているような感じで、閉じていた目をうっすらと開きました。
 そして、一つ、深こきゅうをしてから、もうひとつの、じいぼうし板のカギ穴にも、カギを差し込みます。
 カチャ――。
「んんん……ッ」
 リュウくんがカギを引きぬくと同時に、ぺたん、とマミちゃんが座り込んでしまいました。
 マミちゃんのドーナツ色のひとみが涙でうるうるしていて、目元がピンク色にぽおっと染まっています。
 その顔が、とてもキレイで、かわいくて、リュウくんはガマンできなくなってしまいました。
「マミちゃん……」
 まるで、教会でけっこん式をあげた花むこさんのようなげんしゅくな気持ちで、マミちゃんのくちびるにくちびるを寄せます。
「ン……」
 ちゅ、と小さな音をたてて、二人のくちびるがふれ合いました。
 二人とも、はじめてキスしたときのようにきんちょうしています。
「んふふふっ……とってもステキですわ、お二人とも♪」
 その顔に天使のようなほほえみを浮かべながら、エリカちゃんが言いました。



「……あ……あれぇ、リュウくんは?」
「もう、お帰りなりましたわ」
「えーっ!」
 今まで、ぽや〜ん、とした顔で座りこんでいたマミちゃんは、目を見開きました。
「先ほども、リュウくんおっしゃってたじゃないですか。明日の準備があるって」
「そ、それは、そうだけど……」
「ふふっ。マミさんったら、ていそう帯をつけられて、ほうけてしまわれたみたいですね」
 くすくすと笑ってから、エリカちゃんは、ずい、とマミちゃんに顔を寄せました。
「マミさん、どんな気分ですの?」
「ど、どうって……」
「好きな方に、ていそう帯をつけられて……」
「うんと……よ、よく分かんないけど……」
 マミちゃんは、はずかしそうにうつむいて、消え入りそうな声で話し出しました。
「はずかしいし、なんだかおっかなかったけど……リュウくんに、うんとすごいコトされてるんだなあ、って思ったら、あたし……ちょっとだけ、ヘンな気持ちになっちゃった……」
 そう言いながら、マミちゃんは、崩していた足を正座の形にして、もじもじさせ始めました。
「一人で、してしまいたくなったんですの?」
「それは……す、少しだけ、だよ……」
 エリカちゃんの言葉に、マミちゃんは、小さな声で答えました。
「でも、ムリですわ」
 エリカちゃんが、イジワルなほほえみを浮かべながら、言いました。
「エ?」
「だって、そのための、じいぼうし板ですもの」
「……」
 マミちゃんは、どんな顔をしていいか分からない、といった感じの表情です。
 そうしてから、ぶるっ、と体をふるわせました。
「あら、どうなさったんですの?」
「え……えっとね……おトイレ……」
「あら、ちょうどいいですわね。それでは訓練といきましょう」
 とても楽しそうな顔になって、エリカちゃんが言いました。
「く、くんれんって……」
「もちろん、ていそう帯をしたままおトイレをする訓練ですわ。ぶしつけなことを聞きますけど、小さい方ですの? それとも?」
「えっと……ち、ちいさい方……」
「そうですの。じゃあ、さっそくおトイレに参りましょう」
「え、エリカちゃん、ついてくるの?」
「当然じゃありませんか。マミさんのお世話は、わたくしがするんですから」
 ほこらしげにうすい胸をそらしながら、エリカちゃんが言いました。
「で、でも……」
「えーっと、とりあえず、消どく用のスプレーが要りますわね。けいたい用ウォッシュレットは――うちのおトイレでは必要ありませんけど、旅行に行くときは持っていかないといけませんわ」
 いつになくワクワクした口調になってるエリカちゃんが、立ちあがって、マミちゃんの手を取ります。
「あうー……」
 マミちゃんは、小さく声を上げながら、エリカちゃんに引っぱられるように立ちあがりました。

「あ、あっち、向いてて」
「わかりましたわ」
 ていそう帯をつけたまま便座に座ってるマミちゃんにそう言われて、エリカちゃんは、素直に体ごと後ろを向きました。
 エリカちゃんの家のおトイレは広いので、二人がいっしょに入ってもよゆうがあります。
「……」
 マミちゃんは、エリカちゃんの背中を見つめながら、まゆを八の字に寄せています。
 まるで、パンツをはいたままおしっこをしようとしている感じで、ぜんぜん落ち着きません。
 それでも、おしっこをしたい気持ちは、どんどんマミちゃんの中で高まっています。
「ガマンなさってはいけませんわよ」
 エリカちゃんが、背後のマミちゃんに、そんなことを言います。
「わ、わかってるってばぁ……」
 マミちゃんが、なさけない声で言いました。
 そして、ぎゅっ、とその小さな白いこぶしをにぎりしめます。
 出したいはずなのに、きちんと、体がうまく出してくれません。
 それでも――
「あ……」
 ちょろん、と最初のしずくが、スリットから出されたぴらぴらの間からほとばしり、そこをおおううすい金ぞくの板を、内がわからぬらしました。
「あ、やだ……いやぁん……」
 マミちゃんは、真っ赤になって、両手で顔をおおいました。
 しぱぱぱぱっ……と音を立てて、あたたかなおしっこがじいぼうし板の内がわではじけ、無数に空けられた小さな穴から、ちょろちょろとあふれ出てきます。
「あぁ……いや、いやぁ……はずかしいよぉ……」
 まるで、おもらしをしてしまったような気持ちになって、マミちゃんは泣きべそをかいてしまいます。
「……」
 エリカちゃんは、そんなマミちゃんの声を背中で聞きながら、きゅっ、と自分の服のむな元をつかんでしまいました。
 そして、ふり返ってしまいそうになるのを、一生けん命にガマンします。
 ちょろろろろ……とおしっこが便器をたたくかすかな音が、やがて、とだえました。
「もう、終わりまして?」
 エリカちゃんが、なるべく平静そうな声で、ききます。
「う、うん……」
「じゃあ、キレイにしないといけませんわね」
 そう言って、エリカちゃんは、ゆっくりとふり返りました。
 顔をまっかにして、目じりを涙でぬらしたマミちゃんが、ぼうぜんとした顔で便座にすわっています。
「ウォッシュレットのあるおトイレなら、ビデを使えばいいですわ」
「ふえ……?」
 マミちゃんの頭には、エリカちゃんの言葉がきちんと届いていない様子です。
「では、すこし足をお開きになって」
 そう言いながら、エリカちゃんは、まだぽぉーっとしているマミちゃんの代わりに、ウォッシュレットのスイッチを入れました。
 小さなくだが、冬眠を終えたヘビさんみたいにあらわれて、ちょろーっ、とマミちゃんのおまためがけて水をはっしゃします。
「ひゃ……」
 そこでようやく、マミちゃんはわれにかえりました。
「こうやって、ていそう帯や、おしっこのはねたところを洗って、それからペーパーでふけば、それで十分ですわ」
 そう言ってエリカちゃんは、ウォッシュレットを止めて、トイレットペーパーでていそう帯のおまたの部分や、むきだしの太ももの内がわを、ていねいにぬぐいました。
「あっ、じ、自分でするよお」
「最初くらいは、いいじゃありませんか♪」
 くすくすと笑いながら、エリカちゃんは手を止めません。
 だいじな部分をふかれているのに、アソコに何の感しょくもないのが、かえってヘンな感じです。
「もし気になるんでしたら、このスプレーで消どくすればよろしいですわ。でも、あんまり神けい質になることはないと思います」
「わかった……」
 そう言って立ちあがって、ざんばー、とオトイレの水を流してから、マミちゃんは、あっ! とさけびました。
「ど、どうしたんですの?」
「あ、あの、おっきい方!」
「え? 出したいんですの? でしたら、どうぞ」
「ち、ちが……今じゃなくて!」
 マミちゃんが、あわてた様子で、手をぶんぶんふり回します。
「おおきい方を出すときは、どうしたらいいのっ?」
「ですから、付けたままでだいじょうぶですわ」
 いつものおっとりとした口調のまま、エリカちゃんが言いました。
「後ろのロッドは、じゅうぶんに細くてじょうぶですから、さまたげになるようなことはありませんのよ」
「じゃ、じゃあ、その……まん中で二つに分かれちゃうの?」
「さあぁ?」
 エリカちゃんは、ガマンできなくなったように、ころころと鈴が鳴るような声で笑い出しました。
「どうなるかは分かりませんけど、おわった後は、ロッドをきちんと洗って、ふかないといけませんわね。やっぱり、気になるようでしたら消どくしてもいいかと思いますけど」
「エリカちゃぁん……やっぱり、コレってとんでもないよお……」
 マミちゃんが、とほうにくれたような声で言います。
「もちろん、そんなことは分かってますわ」
 そう言って、エリカちゃんは、黒いひとみで、じっとマミちゃんの顔をみつめました。
 そのくちびるは、まだ、笑った形のままです。
「でも、うんとガマンしたあとのエッチは、とっても感じますのよ……」
 マミちゃんは、あやしい顔でほほえむエリカちゃんに、それ以上何も言うことはできませんでした。



 よく日――。
 ひゅぃいいいいい……ん、と音を立てながら、ジャンボジェット機が、空へとまいあがっていきました。
「リュウくん、行っちゃったぁ……」
 空港の屋上で、見送りに来ていたマミちゃんは、ぼうぜんとそう言いました。
「ええ。行ってしまわれましたね」
 エリカちゃんも、風で飛ばされないように麦わらぼうしをおさえながら、言いました。
「マミさんの、ていそう帯のカギを持って」
「ふにゅぅ〜」
 小さくうなりながら、くる、とマミちゃんがエリカちゃんの方を向きました。
「そんな心配そうな顔をなさらなくてもけっこうですわ、マミさん。これから一週間、わたくしがついてるんですから」
「それは、安心かもしれないけど――かえって不安かもしれない」
 マミちゃんが、正直にそんなこと言います。
「まあ、マミさんてば、ひどいですわ」
「だって、本当のコトだもん」
「あらあら、わたくしって、やっぱり信用ないんですのねえ」
 はぁ、とエリカちゃんは小さくため息をつきました。


つづく

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