アマイクスリ



第五章



 甘い熾火が、絢華の体内を、内側からじりじりと炙っている。
 それは、明らかに性欲の高ぶりだった。
 毒原が処方した薬を捨ててしまってから、約一週間……今ではほぼ一日中、下半身が疼き続けている。
 どのような形であれ、あの薬がもたらす効果が、一時的にでも絢華の欲望を解消していたのは確かだったのだ。
 それなのに、あの薬は、今、絢華の手元にない。
 焦燥感にも似た後悔を味わいながら、絢華は、危なっかしく日々を過ごした。
 もう、授業に集中するどころではない。人の話はまるで耳に入らず、日常的な動作にも支障が出ている。
 それどころか、ただ歩くだけで、敏感になった秘部と下着が微妙にこすれ、忌まわしくも甘美な刺激を感じてしまうのだ。
(やっぱり……やっぱりあのお薬が無いと……)
 薬を飲めば、自分が何か恥ずべき行為をしてしまいそうな、確信に近い予感がある。それでも、絢華は、それによってもたらされる深い満足を欲していた。
(お薬が……お薬が欲しい……)
 気が付くと、四六時中、あの甘い糖衣錠のことを考えている。
(何てことなの……あれは……あれは、麻薬だったのだわ……)
 絢華には、具体的な麻薬の知識など無い。だが、それでも、自分があの薬に依存し、今や禁断症状に陥っていることは、理解できた。そのような事態を引き起こす薬が、麻薬でなくて何だというのだろう。
(それでも……それでも、欲しい……お薬が……お薬が欲しい……)
 薬を処方するのは、毒原だ。
 絢華は、毒原に強い不信感を抱いている。それでも、あの薬を出してくれるのは毒原しかいない。
 だが、毒原は、ここのところ、錦小路家に姿を現していなかった。
 他の医師に相談するというのは、論外だ。そもそも、今の自分の状態について他人に話しをするくらいなら、死んだ方がましだとすら思える。
 だが、毒原には、ただ例の薬が欲しいというだけでいい。
(ああ……いつなの……? 毒原先生はいついらっしゃるの……?)
 絢華は、恋に焦がれる乙女そのものの熱心さで、毒原が館に来訪することを願った。



 毒原が錦小路邸に現れた日曜日、絢華は、朝からベッドに臥せっていた。
 頭が朦朧とし、下半身が、心臓の鼓動に合わせて疼いている。
 メイドに寝室にまで運ばせた朝食を食べ、再び横になった時――部屋に、ノックの音が響いた。
「どうぞ……」
 絢華が、潤んだ瞳をドアに向け、言う。
「失礼します」
 そう挨拶をしながら入ってきた毒原の肥満した体を目にした瞬間、絢華の心臓は、ドキリと高鳴った。
「お母様から聞きましたよ。ここ数日、かなりお加減がよくないようですね」
 ベッドに近付きながら、毒原が言う。
 その声に含まれている意味ありげな響きに、しかし、絢華は気付くことができなかった。
「前に処方したお薬は、飲んでますか?」
「い、いえ……それが、その……」
 半身を起こしながら、いつになくはっきりとしない口調で、絢華が言う。
「申し訳ありません……お薬は……無くしてしまいましたの……」
「おや、そうですか。では、なぜ、すぐに教えてくださらなかったのです?」
「…………」
 絢華は唇を噛んで答えない。そもそも、絢華は、嘘を重ねることが苦手だった。
「まあいいでしょう。ともかく、診察が必要ですね」
「あ、あの……お薬だけいただくわけにはいかないでしょうか」
 絢華が、ささやかな抵抗を試みる。
 静音と毒原の痴態についての記憶を失っているとはいえ、絢華は、この中年医師に対し、はっきりと不信感を抱いていた。
「いえ、それはできません。診察あっての服薬ですからね」
 そう言って、毒原は、化粧台のところにあった椅子を引き寄せ、ベッドの傍らに座った。
「では、そこに腰掛けて、前をはだけてください」
 毒原が、着ている白衣のポケットから聴診器を取り出し、耳に嵌めながら、言う。。
「…………」
 絢華は、布団から体を出し、ベッドの端に座った。
「あ、あの……寝間着の上からでも、よろしいですわよね?」
 努めて何でもなさそうな口調で、絢華が毒原に聞く。
「いや、そういうわけにはいきませんねえ」
 どこか粘液質な響きの毒原の声に、絢華は、体を堅くした。
「きちんと前は開けていただかないと……。何、私は医者ですから、恥ずかしがることはありませんよ」
 そんなことを言いながらも、毒原の口元には、下卑た笑みのようなものが浮かんでいた。
「で、でも……」
 絢華が、思わず胸元を腕でかばうような姿勢になる。
「ああ、いや、無理にとは申しません。ですが、私の薬は、私の診察を受けた方にだけ処方するというのが建前でしてねぇ。いくら絢華さんが相手でも、それを曲げるわけにはいかないのですよ」
「くっ……」
 ネグリジェの下には、下着をつけていない。絢華は、我知らず、毒原の顔を睨みつけていた。
 一方、毒原は、ふてぶてしいまでの平静さで、絢華の視線を受け止めている。
「どうします? 絢華さん」
「わ……分かりましたわ……」
 絢華は、瞳を伏せ、その真珠のような歯で唇を噛んだ。
 毒原が、そんな絢華を粘つくような光をたたえた目で見つめている。
 震える指で、絢華が、ネグリジェのボタンを外した。
 だが、服の前を開いたその時、絢華は、その両手で自らの乳房を隠してしまう。
「絢華さん、恥ずかしいのは分かりますが、その手をどかしてください」
「で、でも……でもっ……」
 絢華の声は、泣きそうなほどに震えている。
「診察させてもらえないと、お薬は出せませんよ」
 駄目を押すように、毒原が言った。
 絢華は、それでもしばし逡巡し――そして、結局、手をどかしてその双乳を露わにしてしまう。
「ほう……」
 身を縮こまらせている絢華の、白く形のいい巨乳の頂点を、毒原が凝視した。
 乳首があるはずのそこに、それはなく、代わりに、慎ましく閉じられた小さな口を思わせる切れ込みがある。
「なるほど……それで隠したがっていたんですねぇ。くく、それにしても、絢華さんの乳首は恥ずかしがり屋さんだ」
「ううっ……い、いやぁ……」
 乳首の陥没という、自らの劣等感の痛点を刺激され、絢華は、目尻に涙を浮かべた。
 構わず、毒原は、絢華の胸元に聴診器を当てた。
 毒原が、聴診器越しに、嗚咽が漏れそうになるのをこらえている絢華の息遣いを聞く。
 絢華は、ぎゅっと瞼を閉じ、ただひたすら、この羞恥と屈辱の時を耐えた。
「さて……」
 絢華の体を目と耳でたっぷりと堪能した毒原が、ようやく聴診器を外し、言う。
「では、お薬を出しましょうか」
「お……お願い、します……」
 パジャマの前を閉じながら、恥辱の涙に濡れた声で、絢華が言った。
 だが、その頬はかすかに上気し、鼻から漏れる息はどこかなまめかしい。
 そんな絢華の様子に満足げな笑みを浮かべながら、毒原は、ポケットから薬包を取り出して絢華に渡した。
「い、一錠だけ……?」
「すいませんねえ。今、持ち合わせはこれしかないんですよ」
 驚きの声を上げる絢華に、毒原が言う。
「ですから、それが、今日の分です。明日以降の分は、また後程お持ちしますよ」
「…………」
 絢華が、唇を噛み締め、あのピンク色の糖衣錠の入った薬包と毒原の顔を、交互に見る。
「では、お飲みください」
 毒原が、にやけた笑みを浮かべたまま、言う。
「え……? こ、ここで、ですの?」
「そうですよ。それは今日の分ですし、今の絢華さんは非常に調子が悪いようですからね。さあ、飲んでください」
「そんな……」
 今の絢華は、錠剤を飲んだ時に、自分がどのようになってしまったか、おぼろげに覚えている。そのため、当然、逡巡した。
「必要ないのでしたら、お返しください」
 毒原が、そう言いながら、その太い指で絢華の持つ薬包を摘まみ取ろうとする。
「い、いえ……飲みますわ……!」
 反射的に、絢華はそう答えてしまう。
「そうですか。ええ、それがいいでしょうね」
 毒原が、ベッドの枕元に置かれた水差しから、グラスに水を注ぎ、絢華に差し出す。
「…………」
 絢華は、震える指で薬包から錠剤を取り出し、口に含んでから、グラスを受け取った。
 そして、瞼を閉じ、水とともに薬を飲み干す。
「はぁ……」
 絢華は、小さく息をついた。
「飲みましたね……飲めば、どうなるか薄々感づいていたはずなのに……」
 声を上げて笑い出しそうになるのをこらえているような声で、毒原が言う。
 絢華は、そんな毒原の顔を、きっと睨み付けた。
「もう、出て行っていただけません?」
 これ以上、この男にここにいられては大変なことになる――その怯えを表に出すまいと努めながら、絢華が言う。
 しかし、毒原は、いかにも厚顔な表情で、絢華の視線を受け止めた。
「――ああ、ところで、触診を忘れてました」
 そして、わざとらしく、そんなことを言う。
「え……?」
「診察が不充分だったと言ってるんですよ。さあ、もう一度前を開けてください……!」
 そう言いつつ、毒原は、返事を待つ事なく、絢華のパジャマの前をボタンを飛ばして強引に開いた。
「キャッ!」
 あまりの狼藉に、絢華は、胸を隠すことも忘れて、その場に凍りつく。
 毒原は、その右手で、絢華の左の乳首を鷲掴みにした。
「んあっ!」
 体に電流が流れたような刺激に、絢華が白い喉を見せてのけ反る。
 毒原は、そんな絢華の体を左腕で抱きすくめながら、ベッドに腰掛け、右手の中の乳房を荒々しく揉みしだいた。
「うっ、うぐっ……こ、これは……診察ではありませんわっ……!」
 乳房から全身に広がる甘い痺れに息を弾ませそうになりながら、絢華が、そんなことを言う。
「そうですねぇ……確かにこれは、触診ではない……愛撫です」
 嬲るような口調で言いながら、毒原は、絢華の双乳を交互に捏ね回した。
「んああっ……や、やめて……やめてくださいっ……! うっ、うく……んああああっ……!」
 絢華が、切なげに眉をたわめながら、身をよじる。
 だが、どうしようもなく湧き起こる熱い官能に神経を支配され、本気で抵抗することができない。
 毒原は、そんな絢華の黒髪に鼻を埋め、クンクンと犬のように鼻を鳴らして、匂いを嗅いだ。
「くく……絢華さんのような美少女は、汗の匂いもかぐわしいですねぇ」
「あううっ……や、やめてぇ……!」
 鳥肌が立ちそうなおぞましさが、快楽と混じり合い、絢華の羞恥心を妖しい色合いに染める。
「クックック……お母様の静音さんの匂いも私を興奮させますが、絢華さんのはより刺激的ですよ」
 その言葉に、絢華は、静音と毒原の情事を目撃したことを、思い出した。
「ハァ、ハァ……ああ……何てことなの……んああっ! どうして……どうしてお母様は、こんな人とっ……!」
 脳裏に、二人の痴態がフラッシュバックするのを感じながら、絢華が絶望的な声を上げる。
「また、思い出したようですね……。しかし、薬を服用した前後だけ記憶が回復するというのは、面白い臨床例です」
 今までの好色なそれとは別な、まるで実験動物でも見るような目付きで、毒原が、絢華の顔を覗き込む。
「り、臨床例……? んっ、んあっ! ど、どういうことですの……?」
 執拗な愛撫によって、理性が溶け崩れそうになるのを持ちこたえようとするかのように、絢華が訊く。
「先程の薬には、自制心や意志力、記憶力を一時的に減衰させて、人の欲望や無意識を剥き出しにする効果があるんですよ。また、副次的な効果として、暗示にかかり易くなるわけです」
 そう言いながら、毒原は、乳首の埋没した絢華の乳輪の辺りを、指先で摘まむように刺激した。
「んあっ! あっ、あううン!」
「まあ、小難しい話はこの際どうでもいいでしょう。絢華さんは、ただこの一時を楽しめばいいんですよ」
「た、楽しむだなんてっ……! んくっ! うっ、うあン! あああ、は、離してっ! 離してくださいっ!」
 絢華が、どうにか身をよじって毒原の手から逃れようとする。
 毒原は、ゆうゆうと体の位置を変え、絢華を背後から抱くような格好になった。
 そして、その両手で、絢華の巨乳をムニムニと弄ぶ。
「うううっ、いや、いやぁ……んく、んふぅ……こ、これは犯罪ですわっ……! あ、あうっ、あひいぃ……!」
 執拗な愛撫に全身を紅潮させながら、絢華が、声を振り絞る。
「おやおや、こんなにしておいて私を犯罪者呼ばわりですか」
 毒原は、その右手を、絢華の足の間に滑り込ませた。
「あうっ!」
「パジャマがもうグショグショですよ? まるでお漏らししたみたいじゃないですか」
 そう言いながら、毒原が、絢華の秘部を布越しに指でまさぐる。
「うっ、うううっ……そ、それは……んああ、それは、汗……汗ですわ……んふ、んふっ、あふぅ……!」
 朝から――いや、ここ数日中、ずっと疼いていた部分を刺激され、絢華は、息を荒くしてしまう。
「絢華さんは嘘が下手ですねぇ……。汗かどうかは、見ればすぐに分かりますよ」
 そう言って、毒原が、絢華の体を引き寄せてから、ベッドの上に押し倒す。
「いやああっ!」
 悲鳴を上げる絢華のパジャマの下を、毒原は、あっと言う間にずり下ろしてしまった。
 パジャマよりもさらに染みの目立つショーツが、剥き出しになる。
「ふふふ……可愛い割れ目が透けて見えてますよ?」
 毒原が、舌なめずりをしながら、絢華の白い太腿の間に顔を突っ込む。
「ひっ! いや! いやです! や、やめてください!」
 絢華が必死に毒原の頭を押しのけようとする。
 だが、毒原は、絢華のヒップを両手で抱えるようにして、その鼻先と口元を、じっとりと濡れたショーツに押し付けた。
「ひいいいいいいい!」
 おぞましさに、絢華は、絹を裂くような悲鳴を上げた。
 構うことなく、毒原が、その分厚い舌で、ショーツの上から絢華の秘裂を舐め始める。
「うあっ……! あ、あひぃ……や、やあああっ……! やめてください……うあン! や、やめてぇ……!」
 半裸の体をくねらせながら、絢華が哀願する。
 だが、毒原は、なおも舌を動かし続け、さらには、布地の上に滲み出る新鮮な蜜を、ジュパジュパと音をたてて吸いたてた。
「あうっ、うく、う、ああああっ……! ひぃ、ひいぃ……ひあ、あ、あっ……! あっ、あは、んはあぁン……!」
 体奥から湧き起こる甘い刺激に、絢華が、悩ましく喘ぐ。
 毒原は、秘裂をたっぷりと舐め上げた後、包皮の奥で充血しているクリトリスの辺りを、舌先でグリグリと刺激した。
「んぐっ! うっ、うあっ! あ、あああ、あ、あひン!」
 絢華が、ぎゅっとシーツを掴んで身悶えする。
 だが、その刺激も、絢華の性感を絶頂に導くには、まだ不充分だった。
「あひっ、ひ、ひは……あ、あううっ! あああ……んあっ、や、やめて、やめてぇ〜!」
 そんな言葉とは裏腹に、薄布越しのクンリングスをもどかしく思う気持ちが、絢華の脳内を占領していく。
「んあっ、んふうっ! あっ、あひ、あはぁン! あ、あっ、あうっ、あふぅン!」
 喘ぎが、ますます鼻にかかったものになり、腰が卑猥に踊る。
 体が――牝の本能が、狂おしいほどに、アクメを求めているのだ。
 今や、絢華がシーツを掴んでいるのは、毒原の頭を自らの秘部に押し付けそうになるのをこらえるためだった。
「うああぁぁ……私、私ぃ……ひ、ひいいぃ! お、おか、おかしくなるぅ……! んあ、あっ、あああっ! あひ、あひぃン!」
 だらしなく涎を垂らした口から、うわ言めいた言葉が漏れる。
 毒原は、いったん口を離し、愛液と唾液に濡れたショーツが透け、花のように綻んだ秘唇が浮き上がっている様を、ギラギラとした目で視姦した。
「あ、あああ、あう……あひぃ……」
 中途半端に官能を燃え上がらせたまま放置された絢華が、毒原に視線を向ける。
「ここを、直に舐めてほしいんでしょう?」
 毒原が、その口に悪魔じみた笑みを浮かべながら、訊く。
 絢華は――ほとんど無意識のうちに、こくりと頷いてしまった。
 毒原が、ますます笑みを大きくしながら、絢華のショーツをずり下ろす。
 そして、毒原の舌が、蜜にまみれながらひくひくとおののく絢華の靡肉を、ぞろりと舐め上げた。
「あひっ!」
 それだけで、絢華は、体を弓なりに反らしてしまう。
 毒原は、そんな絢華の腰を抱え直し、サーモンピンクの秘裂にむしゃぶりついた。
「あうっ! あ、ああっ! んく……んあっ! ああああっ! あぁ〜っ!」
 ぐねぐねと不気味に蠢く軟体動物のような舌にクレヴァスを刺激され、絢華は、喜悦の声を上げてしまう。
 毒原は、その舌と唇を巧みに駆使し、絢華の性感を追い詰めていった。
「んあ、あ、あああああ! そ、そんな、あ、あっ! あうっ! んあ! ああああああッ!」
 自らを指で慰める行為とは比べ物にならない快楽に、絢華が、快楽の悲鳴を上げ続ける。
 それは、あの甘い薬によって剥き出しにされた欲望を、直接、ざらついた舌で舐めしゃぶられているような感覚だった。
「ひッ! ひいッ! い、いいいッ! いや、あああ、いや、いやぁ〜ッ!」
 快感の大きさに恐怖すら覚え、制止の声を上げながらも、絢華は、はしたなく腰を浮かして、毒原の口唇愛撫を受け入れてしまっている。
 毒原は、その親指で絢華の陰唇をぱっくりと割り開き、蜜に濡れる果肉を執拗に舐め回した。
 まだ穢れを知らない膣口に舌が出入りし、とぷとぷと溢れる愛液を唇が啜り上げる。
 そして、毒原は、包皮からクリトリスを吸い出し、舌の柔らかな裏側でねろねろと刺激した。
「あッ! あッ! あッ! あッ! い、いひぃ! い、いく、いく、いくッ! いくぅうううううううううううううううーッ!」
 頭の中を真っ白にしながら、絢華が、かつて母が何度も叫んでいた言葉を、放つ。
 絶頂を迎えたそのしなやかな体がビクビクと痙攣し、迸った愛液が、毒原の顔の下半分を濡らした。
「あっ、あああっ、あく……あ……あ……ああ……あひ……ひああぁぁぁ……」
 シーツの上でブリッジしていた体が、やがて、がくりと弛緩する。
 毒原は、満足げな表情でその身を起こし、胸を大きく上下させて息をする絢華を見下ろした。
 そして、悠々と服を脱ぎ捨て、その肥満した醜い肉体を露わにする。
 突き出た腹の下で、その肉幹が、ふてぶてしいまでに勃起していた。
「さあ……いよいよ絢華さんの処女をいただきますよ……」
 毒原が、しどけなく開いたままの絢華の脚をMの字にし、その膝に手をかける。
 そして、毒原は、赤黒く膨れ上がった亀頭を、絢華の秘唇にむにゅりと押し付けた。
「あうう……い、い、いやぁ……」
 未だ強烈なアクメの余韻の中にある絢華が、わずかに身じろぎする。
「今更それはないでしょう。こんな魅力的な体を晒しているということは、私を抱いてと誘惑しているのと同じことですよ」
 自分勝手なことを言いながら、毒原が、その肉棒の先端で、絢華の秘苑をぐりぐりと嬲る。
「うっ! うあっ! あ、あああ……ち、違います……私、私、誘惑だなんてぇ……んひ、ひいい、あひぃ……!」
 一度絶頂に達して敏感になった秘部を刺激され、絢華は、他愛なく甘い喘ぎ声を漏らしてしまう。
「ククク……私のチンポは、絢華さんを、さっきよりももっともっと気持ち良くしてあげることができるんですよ?」
「うああ……も、もっと、気持ち良く……? ハァハァ……ああ、そんな……あっ、あひン、ひぃ、あひぃ……」
 すでに淫欲に捕らわれてしまっている絢華の心が、毒原のペニスに秘部をつつかれるたびに、ぐらぐらと揺れる。
「ほら、絢華さん、どうしてほしいか言ってください。私も、無理やりに絢華さんを抱きたくはないですからねぇ」
「んああっ……はぁ、はぁ、あああ、でも……あふっ、でも、でもぉ……ああぁン……」
「なあに、今は、何を言ってもいいんですよ。どうせ、薬のせいですからね」
 そう言いながら、毒原が、膣口にジュポジュポと浅く亀頭の前半分を出し入れする。
「あっ、あっ、あ、あああ、く、薬……んく、んふぅ……お、お薬のせい……はぁはぁ……」
「そうです。薬のせいにして、自分がしてほしいことを素直に言ってください」
「あっ、あうっ、んく……あ、あっ、あはぁ……!」
 毒原の、甘言にすらなっていないような粗雑な理屈が、絢華の半ば麻痺した心をさらに侵していく。
 絢華には、それが、自らの欲望と廉恥心の双方を満足させる、素晴らしい妙案であるかのように思えた。
「あっ、あああっ、毒原先生……どうか……どうか、私を……」
 絢華の脳裏に、毒原の肉棒によって何度も絶頂を味わう静音の姿がよみがえる。
「私を……はぁはぁ、私を、お母様みたいにしてください……んうっ……あ、あああああっ……」
 いつでも――絢華の理想は、あの美しい母だった。
 その憧憬を、自らの淫欲によって穢してしまったことにすら気付かないまま、絢華が、毒原に潤んだ瞳を向ける。
 その、快楽への期待に上気した顔の美しさに、毒原は、目を血走らせ、鼻息を荒くした。
「ふぅふぅ、してあげますよ、絢華さんっ! 静音さんに負けないような肉奴隷にね!」
 処女の膣内をじっくり味わうだけの余裕すら無くし、毒原は、一気に肉棒を突き進めた。
「ひぎいいいいいいいいいっ!」
 破瓜の激痛に視界が深紅に染まり、一瞬にして、絢華は理性を取り戻す。
「ひぐ……あああっ、な、な、何をなさってますのっ? あぐぐっ! いや! いやぁーッ!」
「ふひひ、何を今さら……!」
 毒原が、絢華の体にのしかかり、その巨根を根元まで膣内にねじ入れる。
「う、うぐっ……うあ、あぐぐ……く、苦しいっ……!」
「ふう、ふう、すいませんねぇ。でも、私をこんなに夢中にさせる絢華さんがいけないんですよ……!」
「はっ、はひっ、ひは……な、な、何を、勝手なことをっ……!」
 苦痛に眉をたわめながら、絢華が、すぐ近くにある毒原の顔を涙に濡れた瞳で睨み付ける。
「ふひひ、そんな顔で見つめられたら、ますます興奮してしまいますねぇ」
 そう、ふてぶてしく言ってから、毒原は腰を使い始めた。
「ひぐっ! うっ、うあっ、あぎいっ……い、いや……動かないでぇ……!」
「ふひ、ふひ、これが動かないでいられるものですか」
 絢華の膣肉の鮮烈な締め付けを感じながら、毒原が、ペニスをピストンさせる。
「ひぐっ、うああっ、い、痛い、痛いっ……! あ、あうっ、うぐ、んぐぐ……ひ、ひいいいい!」
「おやおや、さっきの勢いはどうしたんですか?」
「うぐ、うううっ……ケ、ケダモノっ……人でなしッ! うっ、うあっ、ああああッ!」
 絢華が、身を引き裂かれそうな苦痛に身をよじりながら、おそらく生まれて初めて他人への罵りの声を上げる。
 だが、毒原は、その顔に薄ら笑いをへばり付かせたまま、腰を動かし続けた。
 破瓜の血と、我が身を守るように分泌された愛液で、粘膜と粘膜がぬるぬると滑る。
「う、うううっ、うく……ひっ、ひいいっ……痛い……痛いぃ……あ、あっ……うああ、あ、あく、ひうううっ……!」
「ふふ、さすがに可哀相ですねぇ……でも、安心してください。すぐに気持ちよくなりますからねぇ」
「あううっ……な、何ですって……?」
「私のチンポと、絢華さんのオマンコの相性はぴったりですからねぇ。痛みなどすぐに無くなって、おかしくなるくらいに感じてしまうはずですよ」
「そ、そんなわけが……ああっ、な、何……? あっ、あっ、ど、どういうことですの……? うあ、あ、ああぁン!」
 絢華が、頬を上気させながら、戸惑いの声を上げる。
「絢華さんは、いま、薬の力でとても素直になってるんですよ……身も心もね……」
「ううっ、そ、そんな……あっ、あひ、んひいぃ!」
「薬の副作用で、暗示にかかり易くなると言ったでしょう? ふふ、さあ、もっと私のペニスで感じてください」
 毒原が、腰の動きをさらに大きく力強いものにする。
「うぐぐっ、か、感じるなんてっ……! うっ、うあっ、うく……あ、あ、イヤぁ……! あうっ、んあああ、あひ、ひいいン!」
 毒原の抽送に合わせて湧き上がる屈辱的な快感に、絢華は、身をよじって喘いだ。
「あああ、ダ、ダメ……負けてはダメぇ……うっ、うぐぐっ、こ、こんな……こんなことでぇ……うあ、あっ、あああ、あひいいぃ〜!」
「ほらほら、どんどんオマンコがきもちよくなってきたでしょう? くくく、素直に受け入れたらどうです?」
「イヤ、イヤです! んあ、んあああン! あ、あひ、あひぃン! あああ、こんなのイヤぁ〜っ!」
「うひ、うひひっ、痛いのも嫌、気持ちいいのも嫌なんてワガママ、世間では通りませんよ、絢華さん」
「うあっ、そ、そんな……あっ、あぁン! あああン! ひっ、ひいいン! ひああ! あ、あひっ、くひいいい!」
 巨大な肉棒で未熟な膣内を抉られる衝撃が、全て、快楽の信号となって絢華の神経と脳髄を灼く。
「うううっ、ぅ、悔しい……あ、あんっ! こんな、こんな人の言う通りになるなんて……あ、あうっ、うく、あひ、あひいい!」
 そんな絢華の嘆きが、毒原の獣欲をさらに煽り立てる。
「ふうふう、た、たまりませんよ、絢華さん……!」
 完全に余裕を無くし、毒原は、激しくペニスをピストンさせた。
 破瓜の血と混じり合った愛液がシーツに垂れ落ち、無残な染みを作る。
「あっ、あああっ! やめて! もうやめてぇ〜! んあっ! あ、あひ! んひい! ひいいぃ〜!」
 苦痛ではなく、このまま快楽を与えられ続ければどうなってしまうのかという恐怖で、絢華が叫ぶ。
 だが、その腰は無意識のうちに浮き、毒原の突き込みを積極的に受け入れていた。
「あああぁン! あン! あン! あン! あぁン! あっ! あくっ! あはぁ! ああぁン! あン!」
「ふひ、ふひっ! こ、こんなに私を夢中にさせるとは、な、何ていけない子なんだっ!」
 勝手なことを言いながら、毒原が、最後のスパートをかける。
「あああああああ! ダメっ! ダメえぇ〜っ! いっ! いひいいいい! い、い、いく! いきますわっ! あああ、い、いってしまいますのぉ!」
 そのしなやかな体を身悶えさせ、豊かな乳房を左右に揺らしながら、絢華が叫ぶ。
「うおおおお! 出しますよ! 中に! 中に出しますよっ!」
「イヤぁあああああああああああああああ!」
 絶叫する絢華の膣奥に、毒原の熱い精液が迸る。
「ひいいいいいぃーっ! イ、イ、イク! イクッ! イクッ! イクッ! イクッ! イクぅうううううううううううううううううううぅーッ!」
 悶絶せんばかりの絶頂を極め、絢華は、舌を突き出し、ほとんど白目を剥きながらのけぞった。
 ひくっ、ひくっ、と痙攣する絢華の膣内に、毒原が、ビューッ、ビューッ、と射精を繰り返す。
「おあ、おはあああああ! イ、イク、イクう! また、またイってしまいますわあ! あへ、あへえ! イグぅううううううううううううううううッ!」
 普段の彼女からは考えられないような動物じみた声を上げ、絢華がさらなる高みに達する。
 その膣肉はキリキリと肉幹を締め付け、毒原は、あまりの快感にまたもスペルマを放った。
「んおおお! んはぁ! ま、ま、まだ出てますのぉ! お、おほおおおおおお! イグ! イグ! イグ! イグっ! ぐひぃいいいいいいいいいいいいいッ!」
 断末魔のごとき絶叫を放ち、絢華は、とうとう失心してしまった。
「ふう、ふう、ふう、ふう……嫌いな相手に中出しされてイってしまうとは……ふひひひひ、お母様に負けないくらいのマゾっぷりですよ!」
 すっかり意識を失った絢華に、毒原が、下卑た笑みを浮かべながら言い放つ。
「うひひひっ……今日以降、セックスに関することは忘れないで結構ですよ……。いや、ぜひとも覚えておいてください。私と絢華さんが結ばれたことをねぇ……うひひひひひ……」
 その、毒原の粘液質な声は、新たな暗示となって、絢華の無意識にしっかりと刷り込まれてしまった……。



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