アマイクスリ



第三章



 絢華は、依然として、微熱と倦怠感、そして、下腹部の疼きに悩まされていた。
 それは、毒原に処方されたあのピンク色の糖衣錠を服用すれば、嘘のように解消する。
 だが、薬を飲むと、どういう副作用なのか、その前後の記憶が曖昧になるのだ。
 記憶の空白は、長くても1時間、短い時は十数分に過ぎない。その間、別に意識を失っているわけでもないようで、生活に支障は無いのだが――何度もそれが続くと、やはり不気味さを感じてしまう。
 とは言え、体の疼きは、放置しておけば学園生活に問題が起きるほどに激しくなる。絢華は、結局、薬を飲むしかなかった。
 そんな生活が、一週間近く続いている。
 しかし、実際のところ、絢華は、毒原の薬を飲むたびに下腹部の疼きが限界となり、人目につかない場所で、自慰行為に耽っているのだった。



(ああ……私、また、神聖なる学び舎の中で、こんなことを……)
 抑圧されていた性欲が顕在化するとともに、封印されていた記憶がよみがえり、絢華は、自分が幾度となく校舎の中でオナニーをしていたことを思い出す。
 だが、激しい自責の念は、不可解なことに、ますます欲望をかき立てるのだ。
 今、絢華がいるのは、あまり人の使わない特別校舎の中のトイレだった。
 一番奥の個室にカギをかけ、溢れる愛液で濡らさないようにショーツを脱ぎ、スカートをはしたなくまくり上げている。
 そんな格好で洋式の便座に腰掛けている自分の姿に、絢華は、激しい恥辱と興奮を、同時に感じていた。
「はぁ、はぁ……は、早く、済ませないと……」
 今の絢華は、自分が絶頂を迎えないとこの疼きが治まらないことを思い出している。
 次の授業まで、もう十分も無い。
 絢華は、繊細な陰毛の下で熱く火照っている自らの秘唇に、右手の中指を当てた。
「んあっ……!」
 ただそれだけの刺激で、甘い電流が腰に走る。
 絢華は、その黒い瞳を涙に潤ませながら、淫蜜に濡れたクレヴァスをなぞるように、指を上下に動かした。
「はっ、はふっ、んく、う、ううっ……はぁ、はぁ……あく……うううっ……」
 ピンク色の肉襞が指にまとわりつく。
 まるで、歯の無い口に指をしゃぶられているようだ。
「あ、ああっ、あく……んっ、んっ……うく……んふ、んふぅ……うっ、ううっ……」
 快楽の喘ぎが漏れないようにと、左手を口元に当てる。
 知らず知らず鼻息が荒くなっていくのをその手に感じながら、絢華は、指先を動かし続けた。
「んうっ、う、うふ、んうう……ふぅふぅ……んくく……うっ、うくっ、うふ……ふ、ふぁ、あああっ……!」
 溢れ出る愛液が指を濡らし、糸を引く雫となって、ポタポタと便器に滴る。
 高まる興奮と快楽に頬を上気させながら、絢華は、キュッ、と自らの指を噛んだ。
「うぐっ、んふっ、ふぅふぅ……んっ、んうっ、うく……んっ、んっ、んっ!」
 下腹部の疼きが全身に広がり、左右の乳房が切なく痺れる。
 絢華は、それだけが最後の矜持だとでも言うように、自らの胸を愛撫したいという欲望を必死にこらえた。
 その一方で、右手の指は、すっかり慣れた様子で愛蜜の源泉をまさぐり、快楽を引き出している。
「んうっ、うふっ、ふーっ、ふーっ……うく、んくぅ! うっ、うっ、うぐ……ううっ、うふぅ……!」
 淫らなぬめりにまみれた右手の中指が、その先端で、クリトリスの周辺を撫で回す。
 まだ、直には触れない。
 まるで自分自身を焦らすように、くるくると指は踊り続ける。
 そうした方が、次に来る快楽がより激しくなり、そして最後に訪れる絶頂がより深くなることを、絢華の深層意識は学習していた。
「んうっ、あふ、あっ……あ、ああっ、あく……うぐっ、うっ、うぐ……んっ、んんっ、んーっ!」
 まるで、まだ触れたことのない男根を求めるようにひくつく膣口に、浅く指を出し入れしてから、指先を、包皮にくるまれたままのクリトリスに当てる。
 そして、絢華は、指を細かく震わせた。
「んあっ! あ、あ、あっ! ひあ、あ、ああっ、あぁーっ!」
 閉じた瞼の裏に閃光が走り、電撃が全身を駆け巡る。
「あっ、あぐ、うぐぐっ! うっ、ううっ、うーッ!」
 再び左手の指を噛みしめて声を抑えながら、絢華は、ビクビクと痙攣を繰り返した。
「あ……あく……う、あ……あ……はひぃ……」
 ぐったりと四肢を投げ出し、絢華は、便器に腰掛けたまま、絶頂の余韻に浸った。
 自慰を行うたびに、絶頂の際に味わう快楽が大きくなっていることに、かすかな不安を感じる。
 だが、その不安の中身を、絢華は、数分の後に忘れてしまうはずだった。
 絢華の左手の人差し指に残る歯型から、うっすらと血が滲んでいる。
 そして、絢華は、その日初めて、授業に遅れた。



 週末、館を訪れていた毒原に、絢華は診察を受けることにした。
 絢華に受診を勧めたのは、静音である。だが、母の申し出がなかったら、絢華の方から、毒原に依頼していたかもしれなかった。すでに、あのピンク色の糖衣錠は、切れてしまっている。
「まだ、疲労感の方は残っていますか?」
「はい……」
 毒原の問いにそう返事をする絢華の頬は火照り、目許がぽおっと赤く染まっている。
 医師とは言え、異性を寝室に入れる気にはどうしてもなれなかったため、診察場所は、絢華の読書室だ。
 百科事典や文学全集を収めた本棚を背にして、毒原は、スーツの懐から聴診器を取り出した。
「前をはだけていただけますか?」
「――――」
 絢華は、思わず唇を噛んだ。
 だが、医師の申し出を拒むことは、無礼であるだけでなく、自身がはしたない想像をしたことの証明でもある。絢華は、努めて平静を装い、ブラウスのボタンを外した。
 雪白の肌と、スレンダーな肢体に似合わぬたわわな乳房を包んだブラのカップが、露わになる。
「下着は――」
 その言葉に、絢華は、毒原の顔を、キッと睨み付けてしまった。危うく、嫌です、と大声を上げそうになる。
「――いや、そのままで結構です」
 毒原は、何を考えているのか分からない鈍い表情のまま、聴診器を絢華の左の乳房の下に、当てた。
「んっ……」
 金属質のひやりとした感触に、絢華は、思わず小さな声を漏らした。全身の肌が異様なほど敏感になっている。
「ふむ……なるほど……」
 聴診器を持つ毒原の右手の指が、絢華の乳房の下側に、何度も触れる。
 ただそれだけで切なさが高まり、絢華は、熱い吐息を漏らしそうになってしまった。
 と、毒原が、聴診器を外し、芋虫のような太い指を揃えて、絢華の胸を、トントンと打診する。
「うくっ……」
 思わず漏らしそうになった喘ぎを、絢華は、必死に飲み込んだ。
 胸に、甘い痺れが、じーん、じーんと響き、下腹部にまで疼きが広がる。
 いつしか、絢華はハァハァと息をついていた。
(ああ……早く……早くお薬を飲まないと……)
 悩ましく眉根を寄せながら、絢華が顔を耳まで赤くする。
「はい、けっこうです」
 毒原の一言に、絢華は、ほう、と安堵の溜め息を漏らした。
「まだ疲れが抜けきってないようですね。春先は、そういうことがままあるものです。季節の変化に体がついていけないのでしょう」
(そんなことは分かってますわ……それより、早くお薬を……!)
 内心、すっかり余裕を失いながらも、絢華は、どうにか表面上、平静を保った。
「では、これまでと同じ薬をお出しします。一日一錠、用法用量は同じです」
 そう言って、毒原は、包装済みのピンクの糖衣錠を、絢華に渡した。
「では、お大事に」
「ありがとうございました」
 部屋を出ていく毒原に、絢華が、きちんと立ち上がって一礼する。
 そして、一人きりになった絢華は、読書机の上に置いてあった水差しからコップに水を注ぎ、毒原に渡された錠剤を一錠のんだ。
「ふぅーっ……」
 甘く疼くヒップを革張りの椅子に収め、一息つく。
 と、まるで、安堵する絢華の不意を討つように、官能の大波が腰の奥から湧き起こった。
「うくっ……あ、ああっ、どうして……? お薬は飲みましたのに……」
 服薬した前後の記憶が定かでない絢華は、この時も、不審の声を上げた。
 だが、それどころではないほどの熱い欲望が、絢華を下半身から飲み込もうとする。
「だ、だめですわ……こ、こんな場所でなんて……」
 もはや忌まわしい自涜の行為でしか淫欲の炎を消すことはできない。そのことを悟りながらも、絢華は、今すぐにでもオナニーを始めてしまいそうな自分自身に対して、最後の抵抗を試みる。
 身の内の葛藤があまりに激しかったため、絢華は、しばらくその異変に気付かなかった。
「…………?」
 大きな木製の読書机の上に置かれたパソコンが、ぶぅん……とかすかな唸りを上げている。
 絢華自身の持ち物とはいえ、彼女がそれを使うことはこれまでほとんどなかった。それでも、今、重厚な読書室に似つかわしくないこの機械が立ち上がりつつあることくらいは、分かる。
 LAN経由による遠隔操作などについてまるで知識にない絢華は、パソコンが故障したのではないかと、しばし疑った。
 そんな彼女の的外れな考えをよそに、パソコンに接続されたディスプレイが、ある人間の明確な意志の元、動画再生ソフトのウィンドウを展開する。
「……っ!」
 ディスプレイ上に現れた映像を目にして、絢華は、息を飲んだ。
 見覚えのある豪奢な部屋の中央にある大きなベッドを、カメラが映している。
 そこは、紛れも無く、この館の中の一室――静音の寝室だった。
 窓から入る光は明るい。おそらく昼下がりだろう。
「さあ、観念してもらいましょうか」
 パソコンのスピーカーから、機械的に変質した中年男の声が響いた。
「ああっ、い、いやです……」
「そらっ!」
 か細い声に、明らかに面白がっている様子の掛け声が重なる。
「きゃっ!」
 悲鳴とともにしどけなくベッドに体を横たえたのは、絢華の母、静音だった。
 しかし、その服装は異様だ。
 静音の豊満な体を包むにはサイズの小さすぎる体操服に、臙脂色のブルマ。そんな場違いな服装が、剥き出しの静音の二の腕や太腿にむっちりと脂の乗った様子を、いやが上でも強調している。
 それだけではない。その巨乳を上下から挟むように、荒縄が静音の胴を戒め、背後で、左右の手首をきつく緊縛しているのだ。
「あれは、私の……!」
 縄がけされた母が着ているのが、自分の服だと気付いた時、絢華は、小さく悲鳴のような声を上げた。
「くっくっく……もう何度も体を重ねた仲ではないですか。何を今さら嫌がっているんです?」
 その下卑た響きの声は、毒原だ。どうやら、この映像は、毒原自身がハンディタイプのカメラを構えて撮影しているものらしい。
「な、何をぬけぬけと……! しかも、こんな格好までさせてっ……!」
 思うように動かない体で、どうにか半身を起こし、静音が、レンズの方向を睨み付ける。
「恐い恐い……では、助けを呼びますか? このお屋敷の防音具合では、なかなか使用人にまで声は届かないと思いますが……試す価値はありますよ」
 毒原の言葉に、静音が、その紅い唇を悔しげに噛み締める。
(あんな格好をさせられて、助けなんて呼べるわけないわ……な、なんて卑怯なのっ……!)
 絢華は、身の内を灼く官能の炎のことすら一瞬忘れ、激怒に体を震わせた。
「なあに、安心していただいて結構ですよ。これまでと同じように、最後は、静音さんは自分から私のことを求めるようになります……。いや、今日は、その先に行っていただきましょう」
「そ、その先に……? なんのことですの……?」
 おぞましい予感に、画面の奥の静音が、唇をわななかせる。
「いずれ分かります……ちなみに、カメラで撮っているのはあくまで記念です。脅迫の材料になどするつもりはありませんので、安心してください」
「今さらそんなこと……とても信じられませんわ!」
「だから誤解ですよ。すぐ、脅迫なんて必要のない関係になるんですからね」
 カメラが、ベッドの上の静音に迫る。
「い、いやです……来ないで……!」
 どうにか立ち上がって逃げようとする静音の体を、画面の左側から現れた太い腕が、難無く押さえ付け、座らせる。
 そして、大きな左手が、前触れもなく静音の乳房を鷲掴みにした。
「ひうっ! あ、ああっ……やめ……んうっ、やめてくださいっ……!」
 静音が、顔を赤く染めながら、体をよじって抵抗する。
 だが、毒原の手は、まるで張り付いたように静音の胸に重なり、その柔肉を服の上から無遠慮に揉みしだいた。
「あううっ、うく、うっ、うああっ……や、やめて、くださいっ……あっ、あうっ、んくぅ……」
 屈辱に眉をたわめながらも、静音は、抗議の言葉を艶っぽい息に埋没させてしまう。
 脚で脚を押さえられているのか、静音の体は空しくシーツの上でくねるだけで、毒原になされるがままだ。
「おやおや、乳首が堅くなってますよ」
 毒原の指摘どおり、静音の乳首が勃起しているのが、体操服の厚手の生地越しにも、うっすらと見て取れる。
 毒原は、左手で静音の右の乳房を弄びながら、左の乳房に体操服の上からむしゃぶりついた。
「ああ、やめてっ……!」
 右手に構えられているビデオカメラのすぐ近くで、毒原の大きな口が、静音の乳房の先端をチュバチュバと吸いたてる。
 母が着ている自分の体操服に、毒原の唾液が染み込んでいく様を見て、絢華は、まるで自分自身が同時に犯されているような気分になった。
 ぞわぞわと背筋が震える――が、その感覚は、おぞましさ以外の何かを含んでいた。
「んふ、んふぅっ……あっ、あっ、だ、駄目ですっ……! それ以上は本当に……んくっ、あ、あああっ、あふ……あっ、ああああっ……!」
 崩れかかる静音の体を左手一本で支え、毒原は、左右の乳房を体操服越しに舐めしゃぶった。
 執拗な刺激で限界まで勃起してしまった上、布地が毒原の唾液にたっぷりと濡れてしまったため、両の乳首が、先ほど以上にくっきりと浮き上がってしまう。
「……ふうう、たまりませんね……じゃあ、そろそろ静音さんにもおしゃぶりをしていただきましょうか」
 毒原は、静音の目の前で仁王立ちになり、ズボンのファスナーを開けて、自らの男根を取り出した。
「ああっ……!」
 至近距離に現れたペニスの威容に、静音が瞳を見開く。
「さあ、静音さんの大好きなチンポですよ」
「す、好きだなんて……そんなわけありませんわ……」
 そう言いながらも、静音の白磁のような頬はほんのりと上気し、瞳は潤み始めている。
「そうですか? ふふ、昨夜はとても熱心にしゃぶってくれたじゃないですか」
「あ、あれは、その……」
「今日もしてほしいんですよ、静音さん……もし、静音さんがその口で私を満足させてくれたら、もう今日はこれきりにしますから」
「んくっ……ほ、本当ですの?」
「い、いけませんわ、お母様! そんな甘言に乗せられてはっ……!」
 画面の中の母に向かって、絢華が、思わず叫んだ。
 その声は、これから画面の中で起こるであろうことへの予感におののいている。
 画面の中の出来事に影響されているのは、声だけではない。絢華の秘唇はジンジンと疼き、胸の奥では、切なさにも似た感覚が湧き起こっていた。
「さあ……それとも、このままおいとましましょうか? しかし、そんな悩ましい格好の静音さんを見つけたら、いくら教育が行き届いているとは言え、使用人の皆さんが何と噂しますかねえ」
「ううっ……ひ、ひどい……何て方なの……」
 緊縛されたままの状態で発見されることを想像したのか、静音が唇をわななかせながら、悲嘆の声を上げる。
 だが、その響きの中には、マゾヒスティックな愉悦が、どこか含まれていた。
「ほ……本当に、満足していただければ……それで、終わりにしてくださいますのね……?」
「ええ、もちろんですよ」
 そう言って、毒原は、静音の口元にペニスを突き出した。
 興奮による先汁で恥垢が溶け、すさまじいまでの性臭が漂っているのだろう。静音が、その優美な曲線を描いていた眉をしかめる。
 だが、その黒い瞳は、グロテスクに膨れ上がった肉棒を見つめながら、悔し涙とは別の何かで、熱く潤んでいた。
「んっ……んあああっ……」
 静音が、おずおずと口を開き、毒原の剛直に顔を寄せる。
 そして、静音は、先端に唇を被せ、ゆっくりと亀頭部を口に含んだ。
「あむ……ん……んむむっ……ちゅぷ、んちゅっ、んぷ……ちゅぷっ……」
「おおおっ……ふぅふぅ、やっぱり静音さんの口マンコは最高ですよ……!」
 毒原が、息を荒くしながら、弾んだ声を上げる。
 その淫靡な褒め言葉に、悔しげに眉をたわめながら、静音が、その慎ましやかな口の中に、肉棒を迎え入れていく。
「んむむむ……ちゅぶっ、んちゅ、ちゅぶっ……んむ、ふぅふぅ……ちゅぶ、ちゅぶぶぶ……ぷちゅっ……」
 静音は、何かを諦めたように目を閉じながら、血管を浮かせた肉幹の上に、唇を滑らせた。
 唇からはげたルージュがペニスを染める様を、カメラがじっと撮影し続けている。
「ちゅむむっ、ちゅぶ、ちゅぷっ……ちゅぶぶ……んっ、ぬむむ、んぐっ……ちゅ、ちゅぶ、ちゅぶぶ……んむむっ……」
「うぐっ……た、たまりませんよ、静音さん……ふぅふぅ、次は、舌を突き出して舐め舐めしてもらいましょうか」
「んぱっ……はぁはぁ……う、ううっ、み、みじめだわ……」
 目尻に涙を浮かべながら、静音が、突き出した舌でペニスを舐め始める。
「ちゅぱっ、ちゅぱ、ちゅぷ……れろれろ……ちゅ、ちゅぷぷ、ちゅぱ……はぁはぁ……あああ、お願いです……せめて、ビデオに撮るのは許してください……」
「駄目ですよ。ほら、それより、続けてください。私のチンポの隅々まで、静音さんの唾でベトベトにするんですよ」
 毒原が、その肉棒でピタピタと静音の顔を叩き、催促する。
「うっ、うああっ……や、やめてください……んあっ、ちゅ、ちゅぷ……れろれろれろ……ちゅむ、ちゅぷっ、ちゅば……ちゅぷ、ちゅぴぴっ……んちゅ、ちゅばばっ……」
 両手を後ろで縛られた静音が、舌と口だけで肉棒を追いかける。
 その様は、体操服にブルマという倒錯的な服装もあいまって、錦小路家の女主人としての尊厳を徹底的に踏みにじるものだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 そんな母の姿を見ながら、絢華は、ぎゅっと股を閉じ、もじもじと足の付け根を擦り合わせている。
 秘裂から溢れた蜜が、シルクの下着を濡らしているであろうことを意識しながらも、絢華は、ディスプレイから視線を逸らすことができないでいた。
「上出来ですよ、静音さん……くく、日を追うごとに、舌使いが巧みになってきてますねぇ」
「い、いやです……そんなふうにおっしゃらないで……」
 目を伏せる静音だが、その声には、男に媚びるような甘い響きが含まれている。
「さあ、静音さん。もう一度チンポを咥えてくてください。喉の奥まで咥え込んで、それから、口で扱くんです。できますね?」
「ハ、ハイ……」
 そう返事をして、静音が、口内に再び毒原の巨根を迎え入れる。
「うぐ、むぐぐ、むふ……んぐっ、うぐぅ……」
「くく、どうですか? 亡くなったご主人のと比べて……咥えがいが有るでしょう?」
「んむっ、んはあっ……あ、あの人のことはおっしゃらないでっ……! そ、それに……それに……あの人には、こんなこと、したことありません……!」
 ペニスから口を離し、静音が哀切な声を上げる。
「ふふ、そうでしたか……では、静音さんの口マンコはまさに私専用というわけですね」
 そう言って、毒原が、静音の口に肉棒をねじ入れる。
「うぐぐ、んぐ、むぐっ……!」
「さあ、さっき言ったとおりにするんですよ。でないと、いつまで経っても終わりませんよ?」
「ふぐっ、うっ、うぐぐっ……ふぅふぅ……んむ、んむっ、むぐぐぐぐ……ぢゅぷっ……」
 苦しげな声を漏らしながら、静音は、浅ましく勃起した肉幹を根元近くまで咥え込んだ。
 そして、赤い唇をピッチリと締め、首全体を前後に動かして、ふてぶてしいまでに太いそのシャフトを扱き始める。
「むぶぶっ、んぐ、ふぐ、んふぅ……んじゅ、じゅぶぶっ……ちゅぶ、ちゅぶっ、ちゅぼ……んぼっ、んほぉ……ぢゅぼぢゅぼぢゅぼ……」
「おおお、奥の粘膜に亀頭がこすれてますよ……ふうふう、これはすごい……!」
 喜悦の声を上げながら、毒原が、前後に腰を動かしだす。
「んぶっ! ふっ、ふぐっ、むぐぐっ……! んぶ、んぶぶ、うぶ……じゅぶ、じゅぼぼっ、じゅぼっ……! じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽっ!」
 静音の唇に肉幹が出入りする様を、カメラは、執拗に撮影する。
 ディープスロートを続ける静音の口から、ダラダラと唾液が溢れ、そして、それは糸を引きながら体操服の胸元に滴った。
「んぶっ、じゅぶ、じゅぶぶっ、じゅぶ、じゅぼっ……! ふぅふぅ……んぶぶっ、じゅぶ、じゅぶぶ……じゅぶぶぶっ!」
「ふひ、ふひっ、静音さん、だんだん調子が出てきましたね?」
 毒原の言葉を証明するように、静音の動きは、最初に比べて格段に滑らかになっていた。
 しかも、その目許はぽおっと赤く染まり、瞳にはねっとりとした情欲の色が浮かんでいる。
「ふうぅ……そろそろですよ。さあ、吸って! 私のザーメンをその口で吸い出してください!」
「ふ、ふゎい……! んじゅっ! じゅる、じゅるるるるっ! ちゅぶぶ! ちゅぶっ! じゅぶ! じゅぶぶぶぶ!」
 毒原の命令どおりに、静音が、口の中で膨れる肉棒を吸い立てる。
「んじゅっ! じゅっ! じゅぼぼぼぼ! ちゅびっ、ちゅびびっ! ぢゅっ、ぢゅびっ……づぞぞぞぞぞぞぞ!」
 信じられないほど下品な音をたてながら、美貌の未亡人の唇が、醜い中年男のペニスを吸引する。
「うひ、うひぃ! 出ます! もう出ますよ、静音さんっ! うぐっ、ぐ、ぐおおおおおっ!」
 獣じみた声を上げながら、毒原が、腰を突き出す。
「うぐっ!」
 喉奥を亀頭で小突かれ、反射的に体をのけ反らせようとする静音の頭を、毒原が左手で押さえ付ける。
 そして、毒原は、静音の口内に大量のスペルマを迸らせた。
「おぶっ! うっ、うぐぐ……んぶっ! うっ、うぶう!」
 白目を剥きかけた静音の口元から、唾液混じりの精液が溢れ出る。
「飲むんですよ、静音さん! ほら、飲んで、飲んでっ!」
 そう言いながら、毒原が、ブビュッ! ブビュッ! と口内射精を繰り返す。
「んぐ、んぐぐ、ふぐ……んぐっ、ごきゅ……ゴク、ゴク、ゴク……んぐ……ゴキュッ……」
 静音が、細く白い喉を鳴らしながら、毒原の出したザーメンを飲み干していく。
 嚥下を続ける静音の口内の動きをしばらく堪能してから、ようやく、毒原は腰を引いた。
「ぷはっ……! はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……!」
 静音が、がっくりと俯いて、呼吸を整える。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……や、約束ですわ……はふ……早く、この縄を解いてください……」
「……約束? ああ、私を満足させたら、というやつですか」
 毒原は、とぼけたように言ってから、静音の前髪を掴み、その顔をぐいっと起こした。
 そして、まだ勃起したままの肉棒を、上気したままの静音の頬に、ヌルリヌルリと擦り付ける。
「あ、あうぅ……」
「これが、満足した状態に見えますか? まだまだ出し足りないくらいですよ」
「そ、そんなっ……!」
「だいたい、私が一発や二発で満足するはずがないことは、静音さんは分かってたはずじゃないですか」
 これまで幾度となく体を重ねてきたことを言外に言いながら、毒原が、粘液まみれの肉棒で、静音の顔を嬲るように撫で回す。
「ううっ、や、やめてぇ……」
「ふふ、静音さんだって、このまま終わっては欲求不満でしょう? 私のミルクを飲んで、すっかり体に火がついてしまったんじゃないですか?」
「な、何をおっしゃるの……そんなわけありませんわ……」
 そう言う静音の声には、どこか力が無い。
「隠しても無駄ですよ。ほら、もう乳首がビンビンじゃないですか」
「きゃうッ!」
 服の上から不意に乳首を摘ままれ、静音が、乙女のような悲鳴を上げる。
「すごいしこりようだ……さあ、次は、このオッパイを使わせてもらいますかね……」
 乳首から指を離し、縄で強調された乳房をタプタプと揺らしながら、毒原が言う。
「ううっ……」
 静音は、悔しげに唇を噛みながらも、もはや体を逃れさせようとはせず、それどころか、ふぅふぅと鼻から荒い息を漏らしてさえいた。
「ああ……お母様……」
 画面の奥の、恥辱にまみれた母親の姿を見て、絢華が、声を震わせる。
 だが、その右手は、いつしかスカートを捲り上げ、じっとりと濡れたショーツの奥に指先を滑り込ませていた。



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