首輪の彼女
6
あるいは彼女が好きな危険と遊び



 2年生になって、俺、こと的場鴻平と、初宮椎子は別々のクラスになってしまった。
 そのことがきっかけで、椎子とケンカしてしまったのは、また、別の話。
 で、そんな俺たちが、唯一同じ教室で授業を受けることが出来るのが、選択科目の時間である。
 うちの学校は文系理系にコースが分かれていない。その代わり、選択科目のうち自分の必要と思うものを選ぶ、というシステムなのだ。私立校にしては呑気なシステムのような気がするが、そういう呑気さに惹かれてこの学校に入ってきた連中ばかりなので、まあ、文句は言えない。
 で、水曜日の5時間目。各クラスの文系志望の生徒たちの何割かが、この教室で古文の授業を受ける。
 俺も、椎子も、この授業を選択した。
 二人とも文系志望だし、得意科目は国語である。不得意科目をフォローするより、得意科目で点数を稼いだ方がマシだというのが、俺と椎子が出した結論だった。だって、不得意科目を勉強するのは辛いけど、得意科目なら、ある程度までは苦にならない。
 けど、この古文の授業の退屈さは、俺たちの予想をはるかに超えていた。
 教室の中の睡眠率は目算で65%を突破。順々に当てられ、現代語訳をさせられる「今日の当番」以外は、思い思いの姿勢で、6月のしけっぽい空気の中、汗を滲ませながらも惰眠を貪っている。
 寝てない連中だって、鶴のように痩せた古文教師の目を盗んで、机の下で漫画を読んでいたり、携帯でメールを交換し合っていたり、ノートに授業とは全く関係なさそうな何かを熱心に書いていたりしてる。
 で、俺が何をしてるかというと――
「じゃあ、次、初宮さん」
「は、はい」
 教師にさされた椎子が、がたがたとイスを鳴らし、立ちあがる。
 普段より、動きがぎこちない。
 そんな椎子の背中からお尻にかけてを、俺は、すぐ斜め後の席から、見つめている。
 あんまり注目するとヘンに思われるだろうから、できるだけさりげなく。
 でも、そんな俺の視線を感じてるのか、椎子は、しきりにスカートの形を後手に直していた。
「え、えと、お寺の、じゃなくて、立派なお寺の、えーと、立派なお寺があって、深い岩の中に、聖が、つまりお坊さんが入っていった。そこに登られて、誰にもお知らせにならないで、とっても痩せてらっしゃいましたが、高貴な人だとすぐ分かる人だったので……」
 古文特有の、どこで切っていいのかよく分からない文章を、椎子がつっかえつっかえ現代語訳する。
 普段の椎子は、もっとはきはきしてる。ちょっとくらい分からない言い回しがあっても、ノリとハッタリで無理矢理に現代語にしてしまうのが椎子だ。それに、その方が教師からの突っ込みは避けられる。
 なのに、いつになく悪戦苦闘している椎子を見ながら、俺は、思わずにやりと笑ってしまった。
 そして、そんな笑みを浮かべてしまった自分に、ちょっと驚いてしまう。
「はい、じゃあ、そこの一文を黒板に書いて、文節ごとに分けてください」
 ようやく現代語訳が終わった、と安心していた椎子が、ぴきっ、と固まった。
 が、言われたこと自体は、大した問題じゃない。普通に誰でもできるようなことだ。それに、ちょっと間違えたからって、成績に影響するわけじゃない。
 なのに、椎子は、明らかに逡巡していた。
 教師や、他の生徒が不審に思いかけた時に、ようやく、椎子が歩き始める。
 制服のスカートの後側を手で押さえるようにしながら、黒板に向かう。
 その足の運びが、妙におしとやかだ。いつもの、無造作な歩き方じゃない。
 と、椎子は、教壇の手前で、立ち止まった。
 それほどの高さでもない、古い木の教壇に、万が一にでもけつまづいたりしないように、って感じで、慎重に上がる。
 再び、スカートのお尻を気にしながら、かつかつと黒板に字を書いていく椎子。
 普段、椎子がどんな字を黒板に書くのかよく知らないけど、なんだか、今日書いた字は妙に小さいように思える。
「はい、結構」
 教師が言い、椎子が教壇を降りた。
「えー、この文の特徴としてはですね、二つ目の文節の……」
 教師が、わざとやってるのではないかと思えるほどに抑揚のない声で説明を始め、生徒たちの眠気をさらに誘う。
 と、かっしゃーん、という音が、そんな生徒たちの眠気をほんの少しだけ覚ました。
 自分の席に座ろうとした椎子が、ペンケースを落としたのだ。
「……っ」
 ぎゅっ、と唇を噛んでから、やたらとそろそろと屈み、椎子がシャーペンや消しゴムを拾う。
 と、立ち上がりかける椎子と俺の目が合った。
 赤く染まった、椎子の目許。
 その大きな瞳が、うるうるしてる。
 俺は、脳味噌がかーっと熱くなるのを、感じた。



 6時間目、俺と椎子は別々の授業を受けた。
 そして、授業が終わって放課後。俺は、屋上で椎子を待っていた。
 もう夕方のはずだけど、夏至を少し過ぎただけなので、日はまだ高い。
 梅雨の晴れ間。
 連日の雨に洗われた空は一見すると爽やかだが、夏服のワイシャツのボタンを2つ外しても、一向に涼しいとは感じない。
 あっついなー、と思わず独り言を言った時、椎子が現れた。
「ごめん、待った……?」
「少し」
 俺は、正直に言った。
 椎子の顔が、熱でもあるみたいに、赤い。
 ホントに熱があるんじゃないだろうな、と思い、俺は椎子の額に触れた。
「ひゃん」
 不意を打たれた椎子が、ヘンな声をあげる。
「だいじょぶ? 風邪とか、ひいてないよな」
「え、なんで?」
「いや、顔が真っ赤だからさ」
 俺が言うと、椎子が、ますます顔を赤くする。
 苛めたつもりはなかったんだけど、なんだか、苛めてるみたいだ。
 いや、椎子を苛めるのは、これからなんだけど。
 ドアをきちんと閉めてから、俺は、ポケットから首輪を取り出した。
 椎子が、んくっ、と生唾を飲み込んでから、白い喉をそらす。
 俺は、その細い喉に首輪を巻きつけ、南京錠をかけた。
 はぁ……っ、と椎子が熱い吐息を漏らす。
「じゃあ……椎子、スカートめくって見せて」
「やだっ!」
 椎子が、反射的に声をあげる。
 だが、俺は退かない。
「椎子、あの言葉、憶えてる?」
「え、あ、うん……きちんと憶えてるよ……」
 なんだか、妙に頼りない感じの椎子の声。
 俺の中の、椎子を苛めたい、という欲求が、理不尽なくらい加速する。
「だったら、OK。……じゃあ、もう一回言うよ。スカート、めくって見せて」
「や、やだよお……こんなところで……」
 椎子が、抗う。
 もしかすると、椎子は、俺が無理矢理にスカートをめくるという展開を、望んでいるのかもしれない。
 だけど、俺は、さらに言った。
「命令だよ、椎子。スカートをめくって、俺に見せて」
「……」
「それとも、言いつけ通りにしてないの?」
 俺の言葉に、椎子の体が、ぴくんと反応した。
 そして、ゆっくりと、スカートの裾をまくりあげる。
 すらりと伸びた、健康的な脚。白い太腿。
 その、脚の付け根のところを隠しているはずの布地が、無い。
 ヘアに飾られた股間が剥き出しになっている。
「ノーパンで授業受けて、どんな気がした?」
「恥ずかしかった……すごく、恥ずかしかったよ……」
「それだけ?」
「それだけだもん」
 拗ねたような言い方で、椎子が言う。
「ふうん」
 俺は、その場にしゃがみこんで、椎子のその部分をじっと見つめた。
 俺の視線を感じているんだろう。スカートの裾を握った椎子の小さな拳が、ぷるぷる震えている。
 薄め(だと思う)のヘアの奥にあるスリットを、どうにか隠そうとするかのように、太腿をすり合わせる椎子。
 だけど、そんなことで隠れるようなものじゃない。
 俺は、椎子のその部分に、右手の人差し指を伸ばした。
「い、いやぁ……」
 思ったほど、濡れてない。ちょっと指先に湿り気を感じる程度だ。
 椎子のことだから、太腿の内側までびっしょり、なんてことを想像していたんだけど……。恥ずかしさや、ばれることへの恐怖から、あんまり感じなかったのかもしれない。正直、ちょっと拍子抜け。
 けど、あんまり幻想を抱くのもどうかって話だ。
 俺は、気を取り直して、ぷにぷにしたアソコを、右手の人差し指で弄び始めた。
「きゃうっ」
 椎子の可愛い悲鳴を聞きながら、くにくにと指を動かす。
「お、お願い、鴻平クン……やめてぇ……」
 普段の椎子とは違う、弱々しい声。その声に、ますます興奮しながら、俺は指をイヤらしく動かした。
「だめェ……見つかっちゃう……見つかっちゃうよォ……あッ……ああン……!」
 ひくん、ひくん、と腰を跳ねさせながら、椎子が言う。
「椎子が静かにしてれば、大丈夫だよ」
「だ、だって……声、勝手に出ちゃうんだもん……あうッ! あ、あぁッ……!」
「だったら、ハンカチでも咥えてなよ」
「えッ……」
 椎子が、予想外に驚いた声をあげる。
 なんだろ? 俺、そんなヘンなこと言ったかな?
「……」
 椎子は、少しだけ考え込むような顔をしてから、綺麗に畳まれたハンカチを取り出した。
 それを口に咥え、再び両手でスカートをめくった姿勢になる。
 きゅっ、と眉をたわめてる顔が、やたらと色っぽい。
 俺は、そんな椎子の顔を見ながら、指の動きを再開させた。
「んっ……ふうぅ……う……ンううぅぅぅ……」
 椎子が、くぐもった声をあげる。
「うわ、すげ……」
 アソコから温かな体液が溢れ、指を濡らしていく感触に、俺は思わず声をあげてしまった。
 ハンカチを咥えさせられて、興奮したんだろうか。
 柔らかいクレヴァスをなぞる俺の指に、熱い愛液が絡みつき、くちゅくちゅと湿った音がする。
「どうしたの、椎子……こんなに濡らしちゃって」
「んうう……っ」
 俺の言葉に、椎子がイヤイヤと首を振る。
 思わず抱き締めたくなるほど、可愛い仕草だ。
 けど、俺は、椎子を言葉で苛め続ける。
「なんだか、お漏らししちゃってるみたいだよ」
「ンうううゥ……!」
「授業中も、濡らしてたんだろ?」
「んうう! んっ……んんン……」
「椎子、変態のマゾだもんな。本当は、誰かに見られたかったんじゃないの?」
「ンんんー……っ!」
 俺が何か言うたびに、椎子が首を振り否定する。
 にしても、本当にすごい濡れ方だ。さっきまであんまり濡れてなかったのが嘘みたいだ。
 もしかして……。
「あのさ」
「んぅ?」
「椎子、ここに来る前に、アソコ拭いてきただろ?」
 そう言って、くいっ、とクレヴァスの狭間に指を立てる。
「ンあっ……!」
 俺の不意打ちに、椎子は、咥えていたハンカチを口から離してしまった。
「そうなんだろ? ちょっとイジっただけでこんなに濡らしちゃうんだもん。授業中もすごいことになってたんじゃないの?」
 言いながら、ちょっと乱暴に、アソコに指を出し入れする。
「ああッ……ダメ、ダメぇ! 鴻平クン、許してよォ……!」
「質問に答えてよ。アソコ、拭いてきたんだろ?」
「そ、それは……あぁン!」
 クリトリスのところを、親指で、ぐっ、と押し込むと、椎子は背中を仰け反らせた。
「ご、ごめ……なさい……拭いて、きちゃいました……」
「どこで、どうやって?」
「こ……ここに来る、階段の途中で……踊り場に、誰もいなかったから、ハンカチで……」
 そっか、俺、自分のアソコを拭いたハンカチを、咥えさせちゃったんだ。
「そのままで、屋上に来てって言ったのに」
「だって、だって……膝の方まで垂れてきちゃったから……」
 目尻に涙をためながら、椎子が、恥ずかしい告白を続ける。
 階段棟の陰に入っているっていうのに、まるで、直射日光を浴びてるみたいに頭がじりじりする。
「言いつけ、守らなかったんだね?」
「ごめんなさい……」
「お仕置きだよ」
 俺は、そう言って立ちあがった。
 アレがぎんぎんに勃起してるせいで、ちょっと立ちづらい。
「お尻、こっちに向けて」
「イヤ……やだよォ……」
「口答えするの?」
 俺の、わずかにイラ立った感じの声に、びくっ、と椎子が体を震わせる。
 ああ、俺、ヘンだ。
 椎子の怯えた顔に、ムチャクチャに欲情してる。
 このまま、ぎゅうっと抱き締めてやりたい気持をこらえて、俺は、じっと待った。
「……これで……いいですか?」
 右手を階段棟の壁につき、左手でスカートをめくりながら、椎子がお尻を突き出す。
 真っ白で、丸い、椎子のお尻。
 俺は、椎子に気付かれないように生唾を飲み込んでから、右手でそこに触った。
「んっ……」
 それだけの刺激で、椎子の背中がひくんと動く。
 俺は、乾いていた唇を舐め、そして、右手で椎子のお尻をぴしゃりと叩いた。
「きゃッ!」
 椎子が、悲鳴をあげる。
 多少、力の加減をしているとは言え、けっこう痛いはずだ。
 白かった椎子のお尻が、じわーっと赤く染まる。
 俺は、さらに、スパンキングを続けた。
 ぴしゃっ! ぴしゃっ! ぴしゃっ! ぴしゃっ!
「あうッ! いたァい! やッ! いやああああッ!」
 椎子のお尻が、赤く染まってく。
「や、やめてェ! いたい! いたいよォ! あああン!」
 涙をこぼしながら、椎子が、子供のような声をあげる。
 普段は絶対に聞けないような声。絶対に人に見せないような顔。
 それを、俺が今、無理矢理に暴き出している。
 俺、今、どんな顔して、椎子のお尻を叩いてるんだろう?
 一瞬だけ、そんな思いが頭に浮かび、熱い興奮の大波の中に消えていく。
 俺は、ようやくスパンキングをやめた。
 椎子が、壁に体を預けるようにして、はぁはぁと喘ぐ。
「ひどい……鴻平クンが、こんなことするなんて……」
 涙に濡れた瞳で流し目を寄越しながら、椎子が弱々しい声で、俺をなじる。
 だが、その涙は、けして苦痛や屈辱によるものだけじゃない。
「どうして? 椎子は、俺に苛められたかったんじゃないの?」
「それは、でも……こんなの……」
「だって、ほら……」
「きゃうッ!」
 俺が、後から椎子のアソコに指を差し入れると、ぐったりしていた椎子の背中が、びくん、と仰け反った。
「こんなに濡れちゃってるだろ?」
「う、嘘……」
「嘘じゃないって。ほら」
 ぐちゅっ、ぐちゅっ、とわざと音を立てながら、指を動かす。
「あ、ああぁ……あううぅ……っ」
 椎子が、俺の仕打ちと、そしてこんなシチュエーションで濡れてしまう自分のカラダを恨むような声を、あげる。
 が、それは、すぐに単なる甘い喘ぎ声に変わっていった。
「俺にお尻叩かれて、どうだった?」
「あっ……あうン……イ、イヤぁ……そんなふうに、きかないで……」
「言ってよ。スパンキングされて、興奮しちゃったんでしょ?」
「いやっ、いやっ、いやァ……鴻平クンの、ヘンタイ……!」
 自分自身の快感を必死に否定するようにかぶりを振りながら、椎子が言う。
 俺は、苦笑いしながら、愛撫を中断して、椎子のアソコから指を抜いた。
「あう……っ」
 椎子が、不思議そうな顔で、俺を見る。
「こ、鴻平クン?」
「じゃ、やめにしよっか?」
「え……でも、そ、そんな……」
 椎子が、えらく情けない声をあげる。
「変態だなんて言われちゃ、やっぱ傷つくしさ。それに、俺だって椎子のイヤがること、したくないし」
「あ、うぅ……ひ、ひどいよォ……」
 羞恥と情欲の板挟みになりながら、椎子が、泣き声に近い声で言う。
 ぞくぞくぞくっ、と、全身に、戦慄が走った。
「お願い……言う……言いますから、やめないで……ご主人様……」
 椎子の、その言葉。
 それで、俺の限界は、呆気なく突破されてしまった。
 そう、俺だって、とても途中で止められるような状態じゃないのだ。心も、体も。
「椎子……」
 俺は、いきり立った自分のモノを、椎子のお尻に押し付けるように、後からその体を抱き締めた。
「あぁ……ん」
「感じてたんだよね、椎子」
「うん……すごく、感じてました……」
 椎子が、耳まで真っ赤になりながらも、うっとりとした声で言う。
「鴻平クンに……ご、ご主人様に、お尻、叩かれて……痛いのに……いっぱい、感じちゃいました……」
「それじゃあ、椎子の方こそ変態だよ?」
 夏服の上から、椎子の胸を揉みながら、俺は言う。
 犬みたいに荒くなってる俺の息が、椎子の貝殻みたいな耳たぶをくすぐってるはずだ。
「はい……椎子は……変態です……」
 キスをねだるように、首を捻って後を向きながら、椎子が言う。
 俺は、そんな椎子の頬や首筋に唇を押し付け、ちろちろと舌でくすぐった。
「あぁン……椎子は、ご主人様にお尻を叩かれてよろこぶ、イ、イヤらしい、マゾの、変態女です……きゃううっ……!」
 自分自身を貶める言葉に、半ば陶然となりながら、椎子が言う。
「よく言えたね、椎子」
 俺は、布越しに感じていた椎子の体の名残を惜しみながら、身を離した。
「じゃあ、ご褒美あげるね」
「え……こ、ここで、ですか?」
「うん」
 言って、俺は、問答無用とばかりに椎子の腰を掴み、引き寄せた。
「きゃっ!」
 小さな悲鳴をあげて、椎子が、再び壁に手をつく。
 俺は、元に戻っていた椎子のスカートを再び捲り上げながら、ズボンの前を開いた。
 あんまり元気になりすぎて、外に出すのも一苦労だ。
「あぁン……こ、こんなところで……」
「そう。椎子は、まだみんなが部活とかで残ってる学校の校舎で、やられちゃうんだよ」
 椎子の羞恥と興奮をさらに煽るべく、俺は、言った。
 そして、完全に勃起しきったアレに手を添え、椎子のアソコに押し付ける。
「挿れるよ」
「ちょ、ちょっと待っ……あううッ!」
 椎子の言葉が終わるのを待たず、一気に挿入した。
 柔らかい椎子の中が、俺のアレをきゅううっと包み込んでくる。
「あぁ……ッ、そ、そんなァ……」
 壁に爪を立てるようにして、ぷるぷると震えてる椎子の細い腰を、抱えなおす。
 そして、俺は、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「あっ……あっ……あっ……あっ……」
 俺の動きに合わせて、椎子が短い喘ぎを漏らす。
 下を見ると、ぐっぷりと俺のモノを咥えこんだアソコから、とろとろと愛液がこぼれていた。
 それが、多分、雫になって屋上の床を濡らしている。
「やっ……ご、ご主人様……ああぁ……あン!」
 次第に速くなっていく俺の腰の動きに、椎子が、高い声をあげる。
 絡みつくような、椎子のアソコの感触。それを、じっくり味わってしまったら、すぐに終わってしまう。
 だから、できるだけそれから気をそらすようにしながら、俺は椎子に訊いた。
「今、椎子は、何されてるの?」
「いやぁン……そ、そんなコト……もう、許してよぉ……」
 椎子が、可愛い声で哀願する。
「ダメ。言うの」
「あ、ああァ……椎子は、今、ご主人様に……え、えっち、されてます……」
「えっちって、どういうこと?」
「だ、だから……セ、セックス……されて……ご主人様に……きゃうッ!」
 椎子の言葉に、俺は、無意識のうちに腰の動きを激しくさせてしまったらしい。
 俺の腰の動き一つ一つに、椎子の体が敏感に反応する。
 それは、アソコの中も同じだ。
「椎子のアソコ、俺のをすごく締め付けてるよ」
 俺は、いささか上ずった声で、椎子に言った。
「やッ! やぁン! 知らない!」
「学校でセックスして、興奮してるんだ?」
「あああッ! あうッ! あン! あああン!」
 高い喘ぎ声で返事をする椎子。
 ヤバい……このままだと、ほんとに出ちゃう。
 俺は、一度、腰の動きを休めた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「はぁー、はぁー、はぁー、はぁー……」
 二人して、呼吸を整える。
 もう、全身汗だくだけど、そんなことはどうでもいい。
 椎子のウェストを両手でしっかり固定して、腰の動きを再開させる。
 ゆっくりと、腰を回して、椎子のアソコの中を掻き回すみたいに。
「ンあああっ……!」
 再び高まった快感に、椎子が熱い喘ぎを漏らす。
 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ……。
 熱く濡れ、柔らかく絡みついてくる、椎子の中。
 首輪の南京錠が、俺と椎子の動きに合わせ、揺れていた。
 椎子が、その体の奥に隠している何かを、勃起したアレで強引に暴こうとしてるような、そんな感じで、腰をぐいぐいと動かす。
「すごい……すごいよぉ……ご主人様の……あうッ! ああン……す、すごい……っ!」
 再びピストン運動に戻り、腰を叩きつけるようにして抽送する。
 椎子を、そして自分を追い詰めることが目的の、容赦のないストローク。
 愛液でぬるぬるになったアレが、椎子のアソコを出入りする様子が、しっかりと見える。
「あぐッ! んううッ! 奥……ご主人様のが、奥に……きゃう! あううッ!」
「気持いい? 椎子」
「いい……いいですゥ……奥に、ずんずんって……あッ! ンああ! 当たって……ひああン!」
 椎子が、切羽詰った声をあげる。
「もう、ダメぇ……イく……イ、イっちゃうっ!」
「俺も……椎子、中に、出すよ」
「えっ? ああンっ! だめ、だめェ!」
 逃れようとする椎子の腰を、しっかりとつかまえる。
「おねがい! 中は、中はダメなの! 今日は……あああああッ!」
「椎子……いまさら、止められないよ」
「イヤっ! イヤーっ! 鴻平クン、許してェ! 赤ちゃんが、赤ちゃんできちゃうーっ!」
「うッ!」
 びゅううううッ!
「イヤアアアアアアアアアアアああああぁーッ!」
 椎子の悲痛な声を聞きながら、思い切り射精する。
 椎子の、体の奥に。
「ああぁッ……できちゃう……できちゃうよォ……」
 ひくん、ひくん、と絶頂に体を痙攣させながら、椎子が繰り返す。
 体が一度からっぽになり、そこに、背徳感に彩られた気だるい快感が満ちていく。
 俺は、指が食い込むほどに椎子の腰を掴んだまま、最期の一滴まで、その体の中へと注いでいった。



 一瞬途切れかけていた意識が戻ると、俺と椎子は、屋上の床にへたり込んでいた。
「椎子……?」
「やっ! だめだめだめ! ストップ!」
 床に突っ伏してる椎子の体を起こそうとした俺に、椎子が慌てて言う。
 俺は、あらかじめ決められたルールどおり、椎子の体から手を離した。
 セーフワード。
 “ストップ”と言われるか、体のどこかを手で3回叩かれたら、俺は全てのプレイを中断させる。その代わり、それ以外の場合は、椎子が何を言おうと、プレイを途中で止めたりしない。
 それが、椎子との間に決めたルールだ。こういうのをセーフワードと言うらしい。
 何でも、SMプレイをする際には、きちんとそういうことを決めておくものらしいのだ。確かに、相手を虐待することが目的ではないわけだし、安全のためには必要なことだろう。
「どした? 椎子」
「ゴメン、ちょっと……よだれこぼして、顔に砂がついちゃってたから……」
 恥ずかしそうに言いながら、半身を起こした椎子が、ごしごしと腕で口元をぬぐう。
「もう、OK?」
「え、あ、うん」
 そう返事をした椎子の体を、床に座り、壁に背を預けながら、抱き寄せる。
「あん♪」
 嬉しそうな声をあげて俺に身を摺り寄せる椎子の頬に、手を当てた。
 ちょっと生意気そうな、吊り気味の大きな目。柔らかなミディアムショートの髪。珊瑚色の唇。
 俺は、その唇に、自分でも恥ずかしくなるくらい優しく、ちゅっ、とキスをした。
「んん〜ン♪」
 椎子が、甘える猫みたいな声をあげながら、俺に抱きついてくる。
「あのさ、椎子」
「なに?」
「えっと……最後のあれ、本当じゃないよな?」
「ん? ああ、きちんとダイジョブな日だよ。ストップって言わなかったでしょ?」
「まあ、そうなんだけどさ」
 とは言え、やっぱり一抹の不安は拭いきれない。
 つまり、俺は、そういう意味でも、椎子にイニシアチブを握られっぱなしなわけだ。あとで、椎子のアレの周期、訊いておこう。
 いや、そもそも、あの時、仮にセーフワードを言われて、中断できたかどうか……。
 もっとしっかりせにゃ、などと思いながら、腕の中の椎子の体を抱き締めなおす。
「ね、鴻平クン」
「ん?」
「興奮した?」
「……した」
 俺は、正直に答えた。
「あたしも……お芝居のはずなのに、鴻平クンに苛められて、うんと感じちゃったよ♪」
「それは、どうも」
 とりあえず、そんなふうに言ってみる。
「……どうしよう」
 椎子が、俺の胸におでこを押し付けるようにしながら、言った。
「何が?」
「もう、あたし、鴻平クンから離れられないよー」
 あう。
 なんて殺し文句だ。
 こんなことを言われたら、俺だってこう言うしかない。
「離れようったって、絶対に逃がさないよ」
「……えへへへっ♪」
 恥ずかしそうに笑って、ぎゅっ、と椎子がしがみついてきた。
 屋上のドアは、さるルートから手に入れた鍵で施錠してる。しばらくは、このまま椎子の感触を感じていよう。
 もう、すぐそこまで夏が来てる。
 その前に期末テストだ、ということを都合よく忘れ、俺は、椎子と過ごす夏休みに思いを馳せていた。
あとがき

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