ふらっと・はーれむ



最終話



 鮎原時夫は、駅のホームに降り立ち、出口に通じる階段を探した。
 中年になって多少緩んだとは言え、堂々たる体躯である。髪を短く切ったそのいかつい顔に、今は、苛立たしげな表情が浮かんでいる。
 と、その時夫の目の前に、小さな影が立ちはだかった。
 それは、一見して白人と分かる少女だった。まだあどけなさの残る顔に似合わない発育した肢体に、どこの学校の制服とも知れない紺色のブレザーをまとっている。
 少女がどこから現れたのか、判然としない。まるで、空中から不意に出現したような印象さえ、時夫は抱いた。
「――鮎原時夫さんですわね」
 綺麗な発音の日本語で、少女が言った。
「だ、誰だ、君は――?」
「鮎原千秋さんの代理人ですわ」
 その淡いピンク色の唇に、あるかなしかの微笑みをたたえて、少女が言う。
「だ……代理人……?」
「ええ。千秋さんは、今はあなたに会うつもりはないとのことです」
「ばっ……馬鹿なことを言うな! 俺はあいつの夫だぞ!」
「そんなに大きなお声を出さずとも聞こえますわ」
 時夫の剣幕にいささかも動じる事なく、涼しげな顔で少女が言う。
「それに、以前にお伝えした通り、千秋さんはあなたとの離婚を決意されてます」
「く、くだらん……! 何を血迷って……」
「千秋さんの方からのお申し出を断ったのはそちらでしょう? 応じなければ離婚も辞さないという宣告を無視しておきながら、今さら何を激昂されているのか理解に苦しみますわ」
「だ、誰があんな条件を飲むというんだっ……!」
 時夫は、自分の目の前にいるのが千秋本人であるかのように、唾を飛ばして喚いた。
 駅のホームで、初対面の少女に対して、家庭内の争議について怒声を張り上げる――そんな異様なシチュエーションに対する違和感を、時夫は、なぜかまるで感じていなかった。
 周囲を行き交う人々も、二人には一瞥も向けない。
 それは、まるで、少女の周囲に魔法でもかかっているような、不思議な光景だった。
「……そもそも、離婚のお話は、あなたの単身赴任先での不倫が発端だったはずです。なのに、これまでの高圧的な態度――まともに交渉する気があるかどうかさえ、疑わしく思えましてよ?」
「う、うるさいっ! だいたいあれはただの遊びだ! 男だったら誰だってしてることだろうが!」
「弁解にすらなってませんわね。……つまらない小悪党にはお似合いの開き直りですわ」
 時夫の半分も年齢を重ねていないように見える少女が、明らかな嘲弄の笑みを、その貴族的な顔に浮かべる。
「まあ、人間、少しくらいの悪事は当たり前という主張には、同意してあげてもよろしいですわよ。――嫌いな相手を、自分の息のかかった職場に就職させて、裏から手を回して苛め抜くとか……なかなか趣味としてはよろしいですわね」
「なっ……ど、どうして、それを……」
 時夫の顔が、かすかに青ざめる。
「あの方に大きな苦痛を与えたという点では、看過することのできない事実ではありますけど……でも、そもそも私とあの方が契約する以前の話ですものね。それに、そのことがあったからこそ、私はあの方と出会うことができたわけですから」
「あ……篤か……? 今度のことは、やっぱりあいつが企んだことなのか?」
 時夫が、今度は次第に顔を朱に染めながら、金髪の少女に詰め寄る。
「さあ、どうでしょう?」
「ク……クソっ! まさか……まさか千秋は、あのデブのオタク野郎に……」
 バシッ! という鋭い音が、時夫の言葉を遮った。
「な……?」
 平手で打たれた頬を押さえ、無様に尻餅をつきながら、時夫は、少女を見上げた。
 少女の青い瞳が、燃えるような光を放っている。
「――あなた如きが今のご主人様を侮辱するなど、許されることと思っているんですの?」
 眉を怒らせ、尖った犬歯を剥き出しにして、少女が言う。
 時夫は、少女のあまりの変貌振りに、驚きよりも恐怖を覚えていた。
「あなたは、本当に何も分かっていない……。あなたがそうして五体満足で呼吸をしていられるのも、ご主人様の慈悲あってのことなんですのよ……!」
「な……何を、言って……」
「黙りなさいッ!」
 そう声を上げる少女の背後に――闇が広がる。
 その闇は、コウモリの翼の形に広がり、そして、少女と時夫をすっぽりと包み込んでいった。
 少女の頭から歪んだ角が生え、その耳が長く伸びる。
 漆黒の空間に捕らわれ、少女がヒトならぬものへと変化していくのを目の当たりにしながら、時夫は、声を上げることができなかった。
 声帯が凍りついたようになり、ただ、犬のような呼吸音だけが、喉から漏れる。
「私のご主人様を侮辱したその口には、永遠の沈黙が相応しい――もし自らの罪に気付いたとしても、懺悔などもとより求めるつもりはありません」
 少女――バロネッサは、がたがたと震える時夫に、その顔を寄せた。
「なぜなら……私は、悪魔ですからね」
 その声を聞きながら、時夫は、自らの体が氷のように冷たく痺れていくのを自覚する。
 不意に、バロネッサの姿が、消えた。
 だが、時夫の体は動かないままだ。
 静寂と暗黒の中、時夫は、悲鳴を上げることすらかなわず、ただ、時間の経過だけを感じ続けた。



 ……気が付くと、時夫は、堅く平らな板の上に座っていた。
 触覚とともに、次第に、視覚も戻ってくる。
 それでも、周囲はやはり暗いままだ。
 ここがどこなのか――首を巡らせて辺りを見ようとするが、それは適わない。
 ただ、辛うじて目だけが、動いた。
 ぎょろぎょろと血走った眼球を動かし、状況を確認しようとする。
 そこは、ロウソクの明かりだけが灯った、やや広めの空間だった。
 時夫が座っているのは、ベンチ状の椅子である。そして、時夫が座る椅子の前には、向かい合わせの形で、同様の椅子が整然と並んでいた。
 もう、夜になっているらしい。だが、壁に嵌まった窓はステンドグラスのようで、外の様子をきちんとうかがうことはできなかった。
(――教会?)
 そこは、どうやら、チャペルのようであった。
 しかし、時夫から見て左手にある祭壇の奥に掲げられている十字架は、なぜか、上下逆さまになっている。
 ただそれだけで、このホールの中の空気が、息苦しいほどに歪んでいるように感じられる。
「あ……大家さん、目が覚めたんですか?」
 その時、かすかに聞き覚えのある声が、聞こえた。
 時夫の顔を心配そうに覗き込んだのは、時夫が所有するアパートの住人である、本条桜だった。
「式までに目を覚まさないんじゃないかって、みんなで心配したんですヨ」
 さらに、もう一人の声が、桜のそれとは反対側から聞こえる。これは、天城美鶴だ。
 二人は、落ち着いたデザインのドレスを身にまとい、時夫を挟むように椅子に座っていた。
 異様なシチュエーションの中で知人の顔を見つけ、時夫が助けを求めようとする。
 だが、時夫の喉は痺れて動かない。
 そして――美鶴と桜の二人は、時夫の体が凍りついたように動かなくいことに、いささかの不審の念も抱いていない様子だった。
 時夫の背中に、じっとりと冷たい汗が浮かぶ。
「って、そろそろ時間だネ」
「はい……まずは、立会人の入場みたいですね」
「うん。でも、驚いちゃったなァ。まさか、ガッコの施設で式を挙げるなんて」
「けど、学生やOBの中にも、ここで挙式したカップル、いるみたいですよ?」
「ふーん……まぁ、まさかこんな形式でした連中はいなかったろうけどネ」
 仄暗いチャペルの中で、二人が、時夫を挟んで当たり前のように会話をする。
 二人の会話の端々から察するに――今夜、ここで結婚式が行われるらしい。
 しかし、その場の雰囲気は、とてもそのような明るい催しが行われるような感じのものではなかった。
 もっとグロテスクでいかがわしい何かが始まろうとしているような――
「あ、バロネッサちゃんだ」
 美鶴が祭壇の方を向く気配に、時夫は、そちらに視線を転じた。
「――!」
 叫び声は上がらず、ただ、驚愕に目が見開かれる。
 そこに立っていたのは、異様なコスチュームに身を包んだあの少女――バロネッサであった。
 時夫は知らないが、バロネッサがまとっているのは、基本的には普段の彼女の服装である。ただ、丈の高い装飾過剰な帽子をかぶり、左手に分厚い本を持っている点が、違っている。
「…………」
 バロネッサは、無言で、前方を見ている。
 祭壇の前には、赤い絨毯の通路が伸びており、その先には、外に通じるらしい大きな扉がある。
 そして、その扉の脇から――正装をした肥田篤が、現れた。
「へぇ〜、篤サン、けっこう決まってるゥ」
「ちょっと、普段とは雰囲気違いますよね」
 美鶴と桜が、どこかうきうきとした口調で言う。
 タキシードをまとい、白い手袋を握った篤の長い髪は、今は、全て後ろに撫でつけられていた。
 その顔には、表情らしい表情は浮かんでいない。
(あれが……あれが、あの篤なのか……?)
 時夫は、驚愕していた。
 おどおどと人の顔色をうかがうか、ただ薄ぼんやりと濁るかしていただけだったその目に、炯々とした光がたたえられている。
 その瞳が、真っすぐに、時夫の顔に向けられた。
(ひい……ッ!)
 時夫が、心の中で悲鳴をあげる。
 もし、篤が全てを知っているのなら、時夫を恨んでないはずがない――それだけのことを、時夫はしてきた。
 篤の就職の世話をするふりをして、自らは手を下さない形で陰険に苛め続けていただけではない。
 篤の父親も、母親も、その死の原因となったのは、時夫なのだ。
 そのことを、篤は知っている――何の根拠もなく、時夫は、そのことを確認した。
 それでいながら、篤の瞳に宿る強烈な光は、怨恨や憎悪によるものではなかったのだ。
 だから、時夫は、恐怖を覚えた。
 恨まれ、憎まれているうちは、自分の方が立場が上だということだ。
 しかし、もし、そうでないとするなら――すでに篤の復讐は成ったということになる。
 それは、即ち――
 ――篤が、堂々と絨毯の上を歩き始める。
 途中から、篤は時夫から目を逸らしていた。
 桜や美鶴に穏やかに笑いかけながら、時夫のことは、路傍の石のように無視する。
 そして、篤が、祭壇の前に立った。
 バロネッサが小さく肯き、右手の指を軽く振る。
 次の瞬間――何が起こったのか、時夫には分からなかった。
 いや、何ということはない。ただ、結婚行進曲が鳴り響きだしただけなのだ。
 その、聞き慣れた音楽が、時夫の胸の内の不安をかきたてる。
 そして、再び扉の方に視線を転じ――時夫は、息を止めた。
 純白のドレスをまとった人影が、三人。
 千秋。
 真夏。
 小春。
 それは、いずれも、時夫の家族であった。
 いや、今や、かつての家族と言うべきか――
 その三人が、ウェディングドレスをまとい、恥ずかしげに頬を染めながら、幸せそうな笑みを顔に浮かべている。
 いや、三人がきているのは、ウェディングドレスなどではなかった。
 ベールこそ被っているものの、その肩や乳房は剥き出しで、ただコルセットのみが腹部を引き締めている。
 それにより、千秋の巨乳はいやが上でも強調され、真夏の形のいい双乳も、まろやかな膨らみとなって自己主張していた。成長し始めたばかりの小春の胸でさえ、ほとんど無理やりに乳房の形をとらされている。
 そして、下半身をふわりと覆うスカートは、前に大きく逆V字型のスリットが開いており、ストッキングを履いたそれぞれの脚が、根元近くまで剥き出しになっていた。
 そんな、結婚という神聖な儀式そのものを冒涜するような衣装をまとった三人が、やや顔を伏せながら、絨毯の上を歩きだした。
 その先には、篤が待っている。
 脚の動きに合わせて、スリットの入ったスカートが時折めくれ、その奥で、三人が、脚にストッキングをまとったのみで下着を履いていないらしいことが、見て取れた。
 三人が、時夫の前を通り過ぎる。
 千秋は、時夫に対して一瞥もくれず、真夏は、恥ずかしげな微笑を向け、小春は、小さく手を振った。
 時夫は、いかなる反応も返すことができない。
 ただ、血走らせた目を三人に向けるだけだ。
 篤が、三人の手を一人ずつ取り、祭壇の前に並ばせる。
 行進曲が、止まった。
「肥田篤――」
 バロネッサのよく通る声が、薄暗いチャペルの中に響く。
「あなたは今、自らの欲望と快楽に従いて、この女たちの主人となろうとしています」
 ロウソクの光が、篤たちの影をいくつも壁に投げかけている。
 ロウソクの火が揺らめく度に影がうねうねと動く様は、まるで、形の無い魔人たちがこの式に参列しているように見えた。
「あなたはこの女たちを奴隷とし、その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これを望む時に抱き、これを望む時に犯し、これを望む時に辱め、これを望む時に弄び、その命ある限り、快楽を尽くすことを誓いますか?」
「――誓います」
 静かに、だが力強く、篤が返事をする。
「鮎原千秋――」
 バロネッサが、千秋に視線を転じた。
「あなたは今、自らの欲望と快楽に従いて、この男の奴隷となろうとしています」
 この男の奴隷――
 その言葉に、時夫は、胸が締め付けられているような息苦しさを感じていた。
「あなたはこの男を主人とし、その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これの望む時に抱かれ、これの望む時に犯され、これの望む時に辱められ、これの望む時に弄ばれ、その命ある限り、奉仕を尽くすことを誓いますか?」
「……誓います」
 静かに、千秋がそう返事をする。
「鮎原真夏――」
 バロネッサが、儀式を続ける。
「あなたは今、自らの欲望と快楽に従いて、この男の奴隷となろうとしています」
 真夏の顔が、喜びと、そして興奮に上気しているのを、時夫は見て取った。
「あなたはこの男を主人とし、その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これの望む時に抱かれ、これの望む時に犯され、これの望む時に辱められ、これの望む時に弄ばれ、その命ある限り、奉仕を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います……」
 はにかむような微笑を浮かべながら、真夏が、返事をする。
「鮎原小春――」
 バロネッサの言葉に、小春は、んくっ、と緊張したように唾を飲み込んだ。
「あなたは今、自らの欲望と快楽に従いて、この男の奴隷となろうとしています」
「ハイ……」
 思わず返事をしてしまい、ぺろっ、と小春が舌を出す。
 そんな愛らしい様子に、バロネッサも、篤も、千秋も、真夏も、美鶴も、桜も――時夫以外の全てが、微笑を浮かべた。
「……あなたはこの男を主人とし、その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も、これの望む時に抱かれ、これの望む時に犯され、これの望む時に辱められ、これの望む時に弄ばれ、その命ある限り、奉仕を尽くすことを誓いますか?」
「ハ、ハイ……誓います!」
 その言葉の意味を完全に理解しているのかいないのか、小春が、元気よく答える。
「それでは、誓いの首輪を」
 バロネッサが、どこから取り出したのか、大型犬用と思われる革の首輪を、篤に手渡す。
 黒と、赤と、どぎついピンク色――
 黒色のは千秋に、赤色のは真夏に、そしてピンク色のは小春に、それぞれ、篤が首輪を嵌めていく。
 首輪の感触に、三人は、陶然とした溜め息をついた。
「今、肥田篤と、鮎原千秋、鮎原真夏、鮎原小春とは、魔王と会衆との前で、厳かに真心から主従となる誓約を致しました」
 バロネッサが、チャペル中に響くような声で宣言した。
 ロウソクの炎が大きく揺れ、逆十字の影を歪ませる。
「ここに私は、帝王ルキフェルと皇太子ベルゼブブ、そして全ての堕天使の御名によって、この男女が主人と奴隷であることを宣言致します。人は、欲望と快楽が結び合わせたものを引き離すことはできません」
 時夫の脳裏に、手遅れ、という言葉が思い浮かんだ。
 全ては手遅れ――自分には、もはや、どうすることもできない。
 そんなふうに諦めながらも、時夫は、次のバロネッサの言葉に我が耳を疑った。
「では、主従の証の媾合を」
 バロネッサの言葉に肯き、篤が、自らのペニスを露出させる。
 肉茎部に静脈を浮かせたそれは、ふてぶてしいまでに勃起していた。
 千秋と真夏、そして小春が、その剛直をうっとりとした瞳で見つめてから、祭壇に両手をつき、尻を突き出す。
「さあ、いくよ……まずは小春ちゃんからだ」
「あぁン……お兄ちゃん、来てェ……」
 小春は、ぷりん、ぷりん、と腰を左右に振りながら、篤を誘った。
 篤が、白いドレスのスカートをまくり、白く小さなヒップを剥き出しにする。
 そのスリットからは、すでに透明な液が溢れていた。
「初めてで痛いかもしれないけど、ガマンできなくなったら言うんだよ?」
「やン……そ、そんなイジワル言わないで……。小春、お兄ちゃんのドレイだから、どんなコトだってガマンできるよっ……!」
 健気で、そして致命的におかしなそのセリフに笑みを浮かべながら、篤が、小春の細いウェストに両手を添える。
 肉棒の先端が、まだ縦筋一本の秘裂に潜り込んだ。
「はっ……あくうううぅ……!」
 体の最奥部を割り広げられる感覚に、小春が、やや苦しげな声を上げる。
「うううっ……すごく狭い……ふひいい……」
 篤が、鼻息を荒くしながら、腰を進ませる。
「うくっ……うあああっ……あひ、あひ……や、やっぱ、痛いかも……あうううン……!」
 小春が、眉をたわませ、目尻に涙を浮かばせる。
「小春ちゃん、がんばって……!」
「小春、しっかり……もう少しだよ……!」
 千秋と真夏が、横から、小春を励ます。
「ウン、平気……あうう……小春、お兄ちゃんのお嫁さんだもん……あふ……うくぅうううううっ……!」
 とうとう、篤の巨根が、小春の処女膜を突破した。
 ぽたっ、ぽたっ、と結合部から鮮血が漏れ、白いストッキングに真紅の花びらを散らす。
「あうっ……あはあぁっ……スゴイ……ぜんぶ入ったよォ……」
 秘部の無残な様相に反して、小春が、甘い声を上げる。
「大丈夫? このまま動いていい?」
「ウン……いっぱい動いて……こっちのお口で、お兄ちゃんのオシベさん、おしゃぶりさせてェ……」
「分かったよ……」
 篤が、ゆっくりと、腰を前後に動かし始める。
「あううっ……あひ……コスれるゥ……! うんっ、うくっ、あふ……はひいン……!」
「痛いかい? 小春ちゃん」
「ちょ、ちょっとだけ……でも、ぜんぜん平気だよっ……ああぁン……! そ、それより……すごくキモチイイの……ひぃン……!」
「ふふふ……いっぱい練習したおかげだね」
「うんっ……お、お兄ちゃんのおかげ……ああぁン……ありがとう……ひああああン……!」
 自らの愛娘が、鮮血と愛液で太腿の内側を濡らしながら、セックスの快楽に喘いでいる。
 時夫は、その光景のあまりの非現実ぶりに、気が遠くなるような思いだった。
「はっ、はふっ、くふっ、あうううン! ね、ねえ……お兄ちゃん、キモチイイ? 小春のメシベ、キモチイイかな?」
「うん、とってもいいよ……! すごくキツくて……ハァ、ハァ……気持ちよすぎる……!」
「うれしい……ああぁン……これで、小春、お兄ちゃんの本当のお嫁さんだね……あっ、あはぁっ、ああ……あううううっ……!」
「そうだよ……小春ちゃんは、ボクの可愛い奴隷妻だ……うっ、うぐうっ……ああ、腰が止まらない……!」
 腰をしっかりと掴み、小春の下半身を宙に持ち上げながら、篤が腰を使い続ける。
「きゃううン! あひっ! はひいいっ! スゴイっ! 小春の体、浮いてるっ! あン! あぁン! あぅン! きゃいいいいっ!」
「大丈夫? きつくない?」
「ううん、だいじょぶっ! あひっ! ひいいン! れ、れんしゅうよりずっとイイよう……! あああン! あひっ! あひいン! はひいいいいいいいッ!」
 ハイヒールを履いた足で床を空しく掻きながら、小春が、大きすぎる快楽に悶える。
「ああ、もうダメだ……! 出すよ! 小春ちゃんの中に……うううううっ!」
「あっ、あああっ! すご……ひあああああああああああああああああああああああああぁ〜っ!」
 びゅっ! ぶびゅっ! どびゅー! びゅびゅびゅびゅびゅ!
 ひときわ膨れ上がったペニスが、次の瞬間、猛烈に射精する。
 小春は、ぱくぱくと口を開閉させながら、激しすぎる絶頂に茫然としていた。
「はあ、はあ……次は、真夏ちゃんだよ」
 血と愛蜜と白濁液にまみれた肉棒を小春の膣穴から引き抜きながら、篤が言う。
「ああん……お、お願い……篤さん……真夏をずっと可愛がって……」
「もちろんだよ……。さあ、入れてあげるよ」
「ああっ……来て、来てェ……!」
 待ち切れなくなったように、真夏が後ろに尻を突き出す。
 篤は、すでにたっぷりと愛液に濡れている秘所に、未だ萎えていないペニスで狙いを定めた。
 そして、ぷりぷりとした真夏のヒップに指を食い込ませ、腰を前進させる。
「あふっ……うあああああン……! あひっ、すごいィっ……!」
 膣内を逞しいペニスで満たされる感覚に、真夏は喜悦の声を上げた。
 未だ幼さを残した娘の体が、すでに女の歓びを知っていることに、今更のように時夫は衝撃を受ける。
 篤は、ぐりぐりと腰を回転させ、真夏と体内を撹拌した。
「あうううっ、あん、あはぁっ……! ああ、すごいィ……! 篤さんのが、あたしの中、かき回してるぅ……うあああン!」
 真夏が、その瑞々しい唇を半開きにし、ピンクの舌をのぞかせながら、快楽に喘ぐ。
「ふうう……真夏ちゃんのオマンコ、ボクのにぴったり吸い付いてる……。まるで、ボク専用みたいだよ……!」
「あぁんっ! そうっ! そうなのっ……! 真夏のは、篤さん専用なの……! あひいン! 篤さんだけのものなのっ……! あっ、あううっ、あふ……ンあああああっ……!」
 篤のピストンに合わせ、お椀型の形のいい乳房が、ぷるん、ぷるんと前後に揺れる。
 その口元からは涎が溢れ、目許は、淫楽に赤く染まっていた。
 あどけなさをまだ多分に残したその顔に、とても十六歳とは思えないほど艶っぽい表情が浮かんでいる。
「あうっ、うくうん! あふ! あふっ! うああああっ! 気持ちイイっ! 気持ちイイ〜! あはあああっ!」
「はぁ、はぁ……真夏ちゃん、この前の生理終わったの、いつだっけ?」
 ぱんぱんと腰が尻を打ち付ける小気味のいい音に、篤の問いかけが重なる。
「うああっ、あふ、あひんっ……ああぁ……え、えっと……い、一週間くらい前っ……! あくっ! くひいいいっ!」
「ふふふ……じゃあ、もうそろそろ赤ちゃんできちゃう日だね?」
「あうっ、そ、そうっ! そうなの……! あはああっ! 妊娠しちゃう日っ……! うあああっ! あひいいいいン!」
「それじゃあ、たっぷり中に出してあげるからね……可愛い赤ちゃん妊娠してね」
(な、なんだと……!)
 篤の台詞に、時夫はぜいぜいと喘いだ。
 だが、依然、その喉は凍りついたままだ。
「ああぁン! に、妊娠させてっ! あふっ、あふうっ、はひ……! 赤ちゃん欲しいのっ……うああン!」
 父親の気持ちなど知らぬげに、真夏が叫ぶ。
「いい子だね、真夏ちゃん……! 必ずママにしてあげるからね……!」
 いっそう興奮しながら、篤が真夏への突き込みを激しくする。
「あううううっ! あひン! あひ! ひいいン! ひあああああっ!」
 真夏が、しなやかな背中を反らし、快楽の悲鳴を上げる。
「あうっ! うくうっ! あ、当たるっ! 奥に当たるのっ! あああン! 赤ちゃんの部屋に当たってるゥ〜!」
「ハァ、ハァ、ハァ……あああ、すごく締まるっ……! まるで、オマンコで扱かれてるみたいだ……!」
 篤が、そう言いながら肉棒の先端で真夏の子宮口を繰り返し小突く。
「うぐっ! あううっ! あひっ! あひいいン! ひううううううっ! イっちゃうっ! イっちゃうううっ! あたし、イ、イ、イクうううううううぅ〜ッ!」
「うあああああああっ!」
 絶頂に全身を痙攣させる真夏のヒップに腰を押し付け、篤が射精する。
 ぶぴゅっ! ぶっ! ぶびゅ! びぷぷっ! どぶっ! びゅびゅびゅびゅびゅ!
「ひああああああっ……あ、熱いっ……! あふっ! はふうっ! ひあああ……お腹に、直接来てるゥ……あはぁっ……!」
 子宮の入り口に食い込んだペニスが、子宮に精液を流し込む。
「はふ……あっ、あはぁっ……篤さんの赤ちゃんのモト、いっぱい……あうううン……あたし、ホントに妊娠しちゃう……」
 真夏は、うっとりと腹部をさすりながら、どこか満足げに微笑んだ。
「さあ……千秋さん、お待たせ」
 真夏の秘部から引き抜いた肉棒を、これ見よがしに扱きながら、篤が千秋に声をかける。
 そのペニスは、未だ勃起を保ったままだ。
「ああぁ……肥田くぅん……」
「ふふふ、そうじゃないでしょ?」
「うふ……そうね……篤くん……うふっ♪」
 嬉しげに微笑みながら、千秋は、自らスカートを捲り上げた。
 すでに充分すぎるほどに精神的に打ちのめされている時夫が、呼吸を止める。
 千秋のアヌスには、時夫が見たこともないような淫具がぐっぷりと咥え込まれていたのだ。
「ふふ……すごいなあ……もうこんな大きいプラグで拡張してるんだ?」
「あぁン……恥ずかしい……」
 千秋が、羞恥に頬を染める。
 篤が言うとおり、千秋のそこに嵌っているのは、シリコン製のアナルプラグだった。
 その直径は、篤の巨根より一回り小さい程度――平均サイズの男根くらいはゆうにある。
「ふふふ……じゃあ、ここで、千秋さんのアナルのバージン、もらっちゃうね?」
「あぁ……嬉しい……。篤くんに初めてをあげることができるなんて……」
 うっとりとした口調でそう言う千秋の秘唇が、とろとろと愛液を溢れさせる。
 篤は、口元を歪ませながら、千秋のアナルに刺さるプラグをゆっくりと引き抜いた。
「あうううぅぅ……やあっ……は、恥ずかしいィ……」
 まるで人前で排泄しているような心細さに、千秋が声を漏らす。
 ぬぽん、とプラグが、千秋の肛門から抜けた。
 篤が、すぐに窄まってしまった千秋のココア色のアヌスに、秘裂から溢れ出た淫蜜を塗りこめる。
「あううっ、うく、あふっ……やあああっ……ぞ、ぞくぞくしちゃうゥ……!」
 夫であった自分でさえ触れたことの無い場所を愛撫され、妻が――妻だった女が、恥ずかしげに喘いでいる。
 時夫は、不覚にも、ズボンの中でペニスを強張らせてしまった。
「さあ、いくよ……」
 娘たちの破瓜の血と愛液が染み付いた肉棒に、今また母親の愛液を塗りたくってから、篤は、千秋の菊の蕾に亀頭を押し当てた。
 千秋が、期待と不安に揺れる表情で、篤の挿入を待っている。
 かつて、新婚旅行先の初夜の床で見た千秋の表情が、時夫の脳裏に鮮やかに甦る。
「あっ、あうううっ、うぐ……うあああああ……」
 まるで、時夫の思い出を引き裂くように、千秋が高い声を上げた。
 赤黒い亀頭が、千秋のアナルにめり込んでいる。
「うくううっ……は、入ってくる……お尻に入ってきちゃうっ……!」
「ああぁ……す、すごくキツイ……うああああっ……」
 生ゴムにも似た括約筋の締め付けに声を上げながら、篤が直腸への侵入を続ける。
「あうっ……うくうううっ……! ああぁ……はぁ、はぁ、はぁ……篤くん……入ったの……?」
「うん、入ったよ……。これで、千秋さんのお尻の処女は、ボクのものだからね」
「嬉しい……私、幸せぇ……あううううン……」
 目尻に感動の涙すら浮かべながら、千秋が、甘えた声を漏らす。
「動いても大丈夫?」
「ええ……あ、でも……お願い……優しくして……」
「もちろんだよ、千秋さん……」
 篤は、そう言って、ゆるゆると抽送を始めた。
「はううっ……あっ、あはぁっ……うああああ……す、すごい……はひいっ……!」
 肛門をゴツゴツとした肉棒でこすられる感覚に、千秋がうめき声にも似た喘ぎを漏らす。
「はふっ、ふうっ、うぐ、あひいっ……ア、アソコとぜんぜん違うゥ……っ! ああ、でも、これ……あひいいン……!」
「ふふ……お尻で感じてるの? 千秋さん」
「ああぁ……恥ずかしいっ……! でも、でも、そうなのっ……お尻、気持ちよくて……あひいいン……!」
「嬉しいよ、千秋さん……拡張した甲斐があったね……」
「ええ……あ、篤くんの言うとおりにして、よかった……あっ、あふっ、ふあああン……はひいいいいっ!」
 まるで、無限に排泄を続けているかのようなアブノーマルな快感に、千秋が激しく声を上げる。
 篤の肉棒の動きに合わせて、皺がなくなるほどに広げられたアヌスが体内に食い込み、そして捲れ上がる。
「あううっ、あひ、んひいっ、はひ……あっ、ああぁン……! すごいっ……おしりすごいィ……!」
「はぁ、はぁ、はぁ……と、ところで、千秋さん……お医者さんは、何て言ってた?」
 強烈過ぎる快感をやり過ごそうとするかのように、篤がそんなことを訊く。
「あああっ……や、やっぱり、間違いなかったわ……三ヶ月だって……あうううっ……!」
「じゃあ、ボクたちは出来ちゃった婚だね……ふふふふふ……」
(う……うああああああああああ!)
 時夫が、声にならない絶叫を上げる。
 今、まさにアナルを犯されている千秋が、篤の子供を身篭っている……!
 口を開けることすらかなわない時夫は、その代わりのように、眼球がこぼれ落ちんばかりに目を見開いた。
「ああ……お母さん、もう妊娠しちゃってるんだ……すごい……」
「小春も、早くニンシンできる体になりたいなぁ……」
 真夏と小春が、千秋を羨望の瞳で見つめている。
「ふふふふふっ……やっぱり、今度も女の子がいいよね……。名前は、美冬ちゃんなんてどうかな?」
「ああン……篤くん、気が早すぎるわよ……。あうっ、あふうん、あうううっ……はひいぃっ……!」
「くううっ……す、すごく締まるっ……!」
 篤が、菊門の鮮烈な締め付けに声をあげながら、千秋の背中に覆いかぶさる。
「はぁ、はぁ……千秋さんのこのお腹が、もうすぐボテ腹になっちゃうなんて……たまんないよお……」
「ああぁン……! そ、そんなふうに言わないで……はふっ、あひ、はひいン……! 恥ずかしいっ……!」
「ふふふ……お腹ポンポンになっても、毎日エッチしてあげるからね……! アナルとオマンコ、いっぱいズボズボしてあげる……!」
「う、嬉しいっ……! あっ、あああっ! あひっ! はひいいいいいいいいいい!」
 千秋が、そのたわわな双乳をゆさゆさと揺らしながら悶える。
「ああ……すごい……すごすぎるぅ……」
 時夫の隣で、桜が、せわしない息を漏らしながら、からだをもじつかせている。
 見ると、桜は、スカートの中に手を入れ、自らのクレヴァスとアナルを指でまさぐっていた。
「もう〜、桜ってば、こんなとこでオナっちゃうなんて……欲求不満?」
「だ、だって……私、最近お側に控えてるばかりで……あっ、あうっ、あぁン……!」
 美鶴の言葉に対して切なげにそう答えながら、桜が、眼鏡の奥の瞳を涙で濡らす。
「アンタって放置キャラだもんネ」
 そう言って、美鶴は、時夫に視線を転じた。
 その顔に、かすかに同情するような表情が浮かんでいる。
「……ずいぶんとヒドイ仕打ちですけど、これって大家さんの自業自得なんですよネ」
 軽い口調でそう言われ、時夫の背筋に、冷たいものが走る。
「十年前……千秋さんが小春チャンを妊娠してる時、篤サンのお父さんを自殺に追い込んで……お母さんをレイプして……そういう話だって聞いたんですけど」
 もとより、時夫の喉は、何も言葉を発することは出来ない。
 だが、もし、何か言うことが出来たとしても、時夫に弁解の余地は無かっただろう。
 しかし――自分は、正義によって裁かれることすら許されないのか――?
「あううううっ! ダメっ! もうダメぇ〜! イっちゃうっ! お尻イっちゃうのっ! あひいいいっ!」
 千秋が、アナルセックスによる絶頂を極めようとしている。
 真夏と小春は、興奮に頬を火照らせながら、篤の肉棒が出入りするアヌスに、濡れた瞳を向けていた。
 自らの隣に座る桜は自涜の快楽に耽り、美鶴は興味深げにこの狂宴を見つめている。
 そして、祭壇の奥では、逆十字を背にして、黒衣の女悪魔が、そのあどけない顔に喜悦の笑みを浮かべていた。
 さらに――その後ろの闇の中に――あの女の顔が――
「出すよっ! 千秋さんっ! お尻に精液出すよっ!」
「あああああっ! 来てっ! 来てぇ〜っ! 千秋のお尻にいっぱい出してっ! はひいいいいいいい!」
「うううううううううっ!」
 びゅっ! びゅばっ! ぶびゅ! どびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅ!
 獣のような声を上げながら、篤が千秋の直腸に精液を注ぎ込む。
「ああぁーっ! イクっ! イっちゃうっ! お尻、イグうううううううううううううっ!」
 千秋が、初めてのアナルセックスによって絶頂を極める。
「あーっ! あぁーっ! あひ! あひいっ! ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 これまでの夫婦生活の中でも聞いたこともなかったような千秋の絶叫を聞きながら、時夫は、滂沱の涙を流していた。



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