ふらっと・はーれむ



第4話



 篤と千秋は、互いがもたらす快楽に、どっぷりと浸かりきっていた。
「ねえ……これでいいの……?」
 全裸になった後、持参したピンク色のエプロンを身につけた格好で、千秋は篤に訊いた。
「うはぁ、すごい……」
 篤が、自らの部屋の台所に現出した長年の妄想に、感嘆の声を上げる。
「やん……そ、そんなに見つめないで、肥田君……恥ずかしいわ……」
 千秋が、恥ずかしげに頬を染めながらエプロンの布地の上から、胸と股間の上に手を置く。
 だが、そのようなことで、ふくよかな乳房や左右に張った美尻を隠せるものではない。
「はぁはぁ……ち、千秋さんの裸エプロン……」
 ランニングにブリーフという格好のまま床に座り込んだ篤が、発情した牡犬のように息を荒げる。
 その股間では、力を漲らせた剛直が、ブリーフの白い布地を突っ張らせていた。
 千秋が、その部分に、ちら、ちら、と潤んだ瞳を向ける。
「えへへへ……じゃあ、千秋さん、その流しに手をついて、オシリ、こっちに向けて」
「え、ええ……」
 千秋が、篤の言う通りのポーズを取る。
「ああ……私、いやらしい格好してる……はふぅ……」
 千秋が、熱い吐息をついた。
 普段は少女のような微笑みを浮かべるその若々しい顔が、今は、官能への期待に上気している。
「ああ、千秋さん……」
 篤は、千秋の後ろ側で正座するような姿勢になり、その大きな手で目の前の白いヒップをぱっくりと割り開いた。
 そして、大きく口を開き、千秋の秘部にむしゃぶりつく。
「あくう……!」
 ひくん、と千秋の体が震え、そのたわわな乳房がぶるんと揺れた。
 篤が、動物のようにぴちゃぴちゃと音をたてながら、千秋の秘唇を舐めしゃぶる。
 千秋のそこは、まるで熟した水蜜桃が果汁を溢れさせるように、とろとろと愛液を分泌させた。
「あむ、じゅるる、じゅじゅじゅ、はふう……ああ……千秋さんのオマンコ汁、おいしいよ……じゅるる……」
 篤が、はむはむと口を動かしながら、千秋の果肉を味わい、淫蜜を啜り上げる。
「あ、あふん、はふ、はひいい……やんやん……そんなに音を立てちゃダメよォ……あああああン……!」
 千秋は、顔をさらに赤く染め、眉を悩ましげにたわめながら、かぶりを振った。
 その動きに合わせて、乳房がぶるぶると左右に揺れる。
 篤は、執拗に、千秋の秘所を攻め続けた。
「あっ、あああー……ダ、ダメぇん……あふ、はふ、はふう……あああぁぁ……あひいいいっ……!」
 まるで、形を探るように、篤の舌が複雑な構造の女性器をなぞり、ちろちろと舌先でくすぐる。
 さらには、ぷっくりと勃起した大粒のクリトリスを、柔らかな舌の裏側でねろねろと刺激し、ちゅばちゅばと卑猥な音をたてて吸い上げる。
「あくっ、あふ、あひいン……そんな……ああああン……そ、そんなにされたら、すぐイっちゃうわ……はひいいン……」
 昼前の爽やかな日光をカーテンで遮った薄暗いアパートの中で、千秋の性感が篤の舌と唇によって高められていく。
 自動車の音や、近所の幼い子供の声などが、かすかに外から響いているが、千秋の耳に入っている様子は無い。
 そして、篤も、口先に神経を集中させ、千秋に快楽を与えることに夢中になっていた。
「ああああン! ダメ、ダメ、ダメ……イ、イックうぅ〜……っ!」
 ぷしゃっ! と新たな愛液を溢れさせながら、千秋は、背中を反らせてビクビクと痙攣した。
 篤は、羊のように震えている千秋の尻を撫でさすりながら、独特の味のする愛液を、なおもぺちゃぺちゃと舐め啜った。
 そして、流しに額をついて、はぁはぁと息を整えている千秋の背後に、ゆっくりと立ち上がる。
 手の甲で口元を拭ってから、篤は、自らの肉棒を露出させた。
「ああぁン……」
 熱く勃起した男根で女陰をまさぐられ、千秋が甘い声を上げる。
「ああ、すごいわ、肥田君の……あ、あっつい……はふう……」
「へへへ……千秋さん、入れてほしい?」
「はぁ、はぁ、はぁ……ええ……欲しいの……。ねぇン……い、いじわるしないで、早く入れて……」
 千秋が、背後の篤に熱っぽい流し目をよこしながら、くねくねと体を動かした。
 その動きにより、エプロンの布地がずれ、たわわな乳房がこぼれ落ちてしまっている。
「イったばかりなのに、もうチンポが欲しいんだ?」
「あん……だ、だって……肥田君のオチンチン……気持ちいんだもん……」
 まるで少女のような拗ねた口調で、千秋が言う。
「ふふ……千秋さんてば、最初の時は一度だけだなんて言ったのに……エッチだなあ……」
「い、言わないで……肥田君のせいよ……。肥田君のオチンチンが、私を、こんないけない奥さんにしたんだから……」
 そう言われて、篤は、満更でも無さそうな笑みを浮かべた。
「へへ……じゃあ、このチンポで、千秋さんをもっともっといけない奥さんにしちゃうね……」
 そう言って、白いヒップに指を食い込ませ、腰を進める。
「あ、あうううう……あひいいいいいン……」
 ちょうど食べ頃の熟した果肉に、ペニスが入り込んでいく。
「あっ、あふう……すごいわ……ああン、すごいのっ……くひい……!」
「へへ、千秋さん、まだ半分くらいしか入ってないよ」
「ああっ、そ、そんな……あくう……ふ、深い……きゃひいいン……!」
 ずっぽりと、千秋のその部分が篤の肉棒を咥え込んだ。
 篤が、自らの分身を包み込む生温かい感触を、じっくりと味わう。
「あ……はあぁン……ねえ、肥田君……動いて……ずんずんシテぇ……」
「もう……ホントにスケベだね、千秋さんてば」
「いやぁン……わ、私がこんなふうになるのは、肥田君がしてくれる時だけよ……」
「へへへ……感激だなあ……」
 そう言って、篤は、ゆっくりとしたリズムでピストンを開始した。
「あふう……はあん……はふん……あふん……くふう……あああン……」
 篤の抽送に合わせて、千秋が甘い声を上げる。
「はふう……千秋さんの中……相変わらずにゅるにゅるして気持ちいいよぉ……」
 シャフトに絡み付く膣肉の心地よさを堪能しながら、篤が言う。
「あふうん……うっ、嬉しいわ……はぁん、あはぁん、はうぅん……も、もっと感じて……あああン……」
 千秋が、きゅっ、きゅっ、と膣肉を柔らかく締め付けながら、言う。
「ち、千秋さんっ、そ、それ、すごいっ……うひっ、うひいっ……!」
 篤の抽送のピッチが、自然と速いものになっていく。
「あぁン、あン、あはぁン、あああン……気持ちいいっ……肥田君の、気持ちいいィ……あああン!」
 千秋の嬌声に、篤の腰がヒップを打つぴたぴたという音が重なる。
 千秋の体が激しく前後に動き、エプロンの布地を谷間に挟むようにして露出した両の乳房が、ゆさゆさと揺れる。
「あああ、千秋さぁん……!」
 篤は、千秋の背中に覆いかぶさり、腕を前にまわいて、豊かな双乳を鷲掴みにした。
「きゃうううううン!」
 悲鳴を上げる千秋の巨乳を、篤がぐにぐにと揉みしだく。
「あん、あああん、あくん、あふう……あっ、あっ、あっ、あっ……すごいィ……っ!」
「あああ……オッパイ柔らかい……たぷたぷしてるゥ……」
「あうっ、あふうん、あああン……! いいのっ……! もっとして……オッパイもっとォ……あああン、あン、あひいいンっ……!」
 秘部と乳房がもたらす快楽が体内で溶け合い、混ざり合って、さらに大きな快楽のうねりとなり、千秋の体を満たしていく。
「うくっ、あく、ううううン……アソコも、オッパイも気持ちイイの……あはぁン……体中感じちゃうっ……!」
「もっと……もっと感じてよ、千秋さん……!」
 篤は、すでに勃起している千秋の朱鷺色の乳首をつまみ、太い指でくりくりと転がした。
「はひいいいいいいッ! ああああ、それ、すごいィ〜っ! あああああぁン!」
 千秋が、唇の端から唾液の糸を垂らし、悶える。
「もうっ……もうダメぇ……! イっちゃう……イっちゃうのっ……! あああン! イクう! イクうっ!」
 千秋の膣肉が激しい収縮を見せ、篤の肉棒を容赦なく攻め立てる。
 篤も、もう、限界を迎えようとしていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ねえ……今日も、中に出していい……?」
「ええ……も、もちろんよ……中に出してェ……アソコの中に……あん、あはぁん……!」
 千秋のそこが、まるで射精を催促するように、さらにきつく篤のペニスを締め付ける。
「中が……中がいいの……! あふっ、はふう、あひいン……中出し大好きなのっ……ああああン……!」
「うっ、うああああっ……! 出ちゃう、出ちゃう、射精するぅーっ!」
「来てっ! 精液来てえっ……! 私も……私もイっちゃうっ! あああああああ! イク、イク、イク、イク、イクぅ〜っ!」
 ビュッ! ドビュッ! ブビュッ! ブビュッ! ブビュッ!
 激しい勢いで精液が迸り、千秋の子宮の入り口を連続して叩く。
「あっ、熱いィっ……! あっ、あっ、あっ、あっ、あああああああああああぁ〜ッ!」
 叫び声を上げて背中を反らす千秋の体を、篤は、後ろからきつく抱き締め、さらなるスペルマを注ぎ込み続けた。



 朝、バロネッサの口内にたっぷりと射精し、それから午前中に千秋と濃厚な時間を過ごす。
 そして、午後からは、生活費の捻出のため、バイト仕事に精を出す。
 帰りは、夜になる。夕食は、駅前のファーストフードかラーメン屋で済ますことが多いが、まれに気が向けば自炊することもある。
 それが、ここ数日の篤の日課だった。
 今日の夕食は、行きつけのラーメン屋の、豚骨ラーメンとライスのセットだった。ついでにギョーザと鳥の唐揚げも平らげている。
 満たされた腹をさすりながら、外灯の照らす道をアパートへと歩いていると、美鶴と出会った。
「やっ、肥田サン。偶然だネ」
 美鶴が、軽い調子で手を上げて挨拶する。
「あ、う、うん」
 曖昧に返事をする篤の横に、美鶴は、ごく自然な動作で並んだ。
「――肥田サンは、バイト?」
 戸惑う篤に、美鶴が話しかけてくる。
「うん、そうだけど……」
「仕事やめちゃったんだ」
「うん……」
「どうして?」
「いや……合わなかったから……」
 実際は、繰り返されるいじめに耐え兼ねてのことなのだが、さすがにそのことを言うつもりにはなれない。
「ふうん……何か、他に夢があるとか?」
「夢?」
 美鶴の言葉に、篤は目を見開いた。
「あー、何か、意外そうな顔してる。アタシが夢とか言ったらおかしいかな?」
「ちょ、ちょっとね」
 図星を突かれて、篤は思わずそう言ってしまった。
「ふふん、どーせ、今時の若い娘に将来的なビジョンなんてあるわけないって思ってんでしょー」
 美鶴は、そう言って口元に軽い笑みを浮かべた。
「アタシ、けっこう田舎モンでさ、だっさーい道立高卒業して、胸に夢と大望を抱いて上京してきたのヨ」
「そ、そうなんだ……」
 いかにも都会的に洗練された美鶴の服装を見ながら、篤が言う。
「意外っしょ?」
 ごく自然なイントネーションで北海道弁を使ってから、美鶴は、たははははっ、と笑った。
 篤は、少し呆気に取られている。
 そもそも、いくら人懐っこい性格だとは言え、美鶴がこれほど篤と会話するのは珍しいことだ。
「はぁー、なんか、自分語りしちゃった。緊張してるせいかなー」
「緊張……?」
「うん」
 そう、美鶴が肯いた時、二人はちょうどアパートの前に来ていた。
 篤の部屋は一階、美鶴の部屋は二階だ。
 だが、美鶴は、外階段に足をかけようとせず、篤の顔を見つめた。
 その表情が、いつになく固いことに、篤が気付く。
「肥田サンさあ……」
 そこまで言って、美鶴は、一呼吸置いた。
 わけもなく、篤の動悸が高まる。
「肥田サン、管理人サンと浮気してるっしょ」
 あまりに直接的なその指摘に、篤は、しばらく言葉を失ってしまった。
 驚きが一定の水準を越えてしまった時の癖で、その表情が、妙に鈍くなる。
 長いような、短いような時間が、ただ、過ぎていった。
「え、えーっと……」
 しばらくして、美鶴が、長い髪の毛をいじりながら、口を開いた。
「緊張して喉乾いちゃったから、お茶飲ませてくんない?」



「あぁー! このゲームの原画集出てたんだ〜♪」
 主より先に篤の部屋に上がり込んだ美鶴が、はしゃいだような声を上げた。
「なっ、何見てるの?」
「これこれこれ。てへへへ、アタシこの原画サンのファンなんだ♪ エロ可愛いよネ〜」
 慌てる篤に対し、美鶴は、両手で持った原画集を見せた。
 暗い色調の中、あられもない格好で白い肌をさらした美少女の姿が表紙の大判の冊子である。成人向けのゲームの――それも、かなりハード指向なソフトの原画集であることは明らかだ。
「ふっふ〜ん、本編未収録の絵もけっこーあるね。あ、これ、特典テレカのイラストでしょ」
 ぱらぱらとページをくりながら、美鶴が言う。
「ちょっとやめてよお〜」
 さすがに恥ずかしいのか、篤が悲鳴のような声を上げる。
 が、そこで、篤はふと真顔に戻った。
「なんで、そんなに詳しいの?」
「だってアタシ、エロゲーマーだもん。中坊の頃から兄貴のお下がりプレイしてたんだヨ」
 しれっとした口調で、美鶴が言う。
「んふふ、肥田サンとは、けっこう趣味合いそうだなあ」
 傍若無人に本棚の奥にある何冊もの原画集を物色しながら、美鶴が言う。
 篤は、予想外の展開に飲まれっぱなしだ。
「ま……まさか、さっき言ってた夢って……」
「原画屋サン」
 美鶴が、短い言葉で言う。
「いや、別に、イラストレーターでもマンガ家でもいーんだけどネ。とにかく、絵で食べていけたら幸せだな〜」
「ふええ……」
「意外?」
「すごく」
 ごく正直に、篤は答えた。
「ふうん……でも、アタシだって、肥田サンのこと、すごく意外に思ったけどな」
 美鶴は、そう言って、悪戯っぽく目を輝かせた。
 篤は、緊張で体を固くする。
「そんな、警戒しないでヨ。別に、ことを荒立てるつもりないし」
「ホント?」
「うん。――だって、最近の管理人サン、何かすごくご機嫌じゃない? だったら、肥田サンとも、いいお付き合いしてるってことでしょ」
 でも、不倫であることには違いない、と言いかけて、篤は口を閉ざした。わざわざ自分から不利になるようなことを言うことはない。
 が、美鶴は、篤が何を考えているのか分かっているようだった。
「たとえ結婚してようが、オンナはオンナだもんネ。そばに相性のいいオトコがいたら、どーにでもなっちゃうヨ」
「相性……」
「エッチの相性いいんでしょ? 管理人サンと」
 笑みを浮かべたままの顔で、美鶴が言う。篤は、何と答えていいか分からない状態だ。
 この美鶴の話が、どういう方向に行くのか、それが分からない。美鶴の様子を見るに、告発だの脅迫だの、そういった恐ろしげな話にはならないような気もするが、かといって、油断していい状況とはとても思えない。
「今朝、たまたま忘れ物取りに帰ったら、見ちゃったんだよネ。カーテンの隙間から」
 美鶴は、話を続ける。
「管理人サン、すっごく気持ちよさそーだった。オンナのアタシから見てもネ」
「それは……」
「ねえ――アタシとエッチしてみない?」
「えええ?」
 さすがに、篤は大声を上げた。
「興味あるんだよネ。肥田サンが、どんなふーなエッチするか」
 美鶴の整った顔に浮かぶ笑みに、いつしか、艶っぽい色が現れ始めている。
「え、えっと……」
 篤は、目に見えて狼狽している。
「しよ?」
 美鶴は、そんな篤に顔を近付け、言った。甘い香水と、かすかな汗の匂いが、篤の鼻孔をくすぐる。
 あまりにもうますぎる話に、何かの罠なのではないか、という考えが、篤の頭に浮かぶ。
 そう――美鶴は、顔もスタイルも申し分のない娘だ。そんな娘と肌を合わせ、体を重ねることが出来るなんて、話がうますぎる。
 うまい話だと考えているということは――自分は、美鶴に魅力を感じているということだ、と、篤は改めて認識した。
「……うん」
 篤は、覚悟を決めたように、そう返事をした。



 篤が先にシャワーを使い、次に美鶴が使った。
 美鶴が、素肌にバスタオルを巻いただけの格好で出てくる。
 篤は、床に布団を敷いていた。千秋が出入りするようになってから、さすがに寝床を上げ下げするようになったのだ。
 その布団の上で、篤は、下着姿であぐらをかいている。
「んふふっ……」
 美鶴が、篤の目の前で、バスタオルを床に落とした。
 溜め息が出るほど美しい曲線を描いた体が、露わになる。
「天城さん……すごく綺麗……」
 均整の取れた肢体に熱い視線を注ぎながら、篤は、そんなことを言った。
「そう?」
 美鶴は、はにかむような笑みを浮かべ、篤の正面に両膝を付いた。
 篤が、美鶴の顔と、つんと乳首が上を向いた乳房を、交互に見つめる。
「え、えっと……天城さん、キスしていい?」
「――うん」
 篤の言葉に、美鶴が肯き、そして、自分から顔を寄せてきた。
「キスしないエッチなんて、盛り上がんないよネ……」
 ささやくようにそう言って、美鶴が、最後の距離を縮める。
 篤は、美鶴の細い肩に両手を置きながら、彼女の柔らかな唇を味わった。
「ん……ちゅ……んん……ちゅむ……」
 舌と舌とが淫らに絡み合う様が、キスをする唇同士の隙間からかすかにのぞく。
 美鶴は、積極的に篤の舌を吸った。
 負けじと、篤も美鶴の舌を吸い、唇をついばむ。
 たっぷりと唾液を交換してから、二人は、唇を離した。
「んふ……肥田サンのキス、ねちっこい」
 自分のことは棚に上げて、美鶴は言った。
「でもアタシ、そういうの嫌いじゃないナ……。興奮しちゃう……」
 そう言いながら、美鶴は、ほぼ正面から、篤の巨体にしなだれかかった。
 その手が、ブリーフの上から、肉棒を包み込むようにする。
「わあ……かたぁぃ……」
 嬉しげに言って、美鶴は、さらに篤に体重をかけた。
 篤が布団に仰向けになり、美鶴が、それに重なる。
 美鶴は、目を閉じて、篤の胸に口づけした。
「あ、あう……あひゃっ……!」
 ちろちろと乳首を舐められ、篤は奇妙な悲鳴を上げてしまう。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅむっ……んふふっ……オトコの人も、チクビって感じるんだよネ……」
 そう言って、再び篤の乳首を口に含み、ちゅぱちゅぱと音をたてて吸う。
 篤は、下から反撃に転じるべく、美鶴の乳房に手の平を重ねた。
「あ、ふぅン……」
 やわやわと胸を揉まれて、美鶴が、鼻にかかった声を上げる。
 篤は、左手で美鶴の背中をまさぐりながら、右手でもって交互に形のいい双乳を揉みしだいた。
 あくまで柔らかな千秋の巨乳とは異なる、心地のいい弾力を、手の平に感じる。
「あっ、あぁん、あく……あふぅン……ああ……気持ちいいヨ、肥田サン……」
 甘い喘ぎを漏らしながら、美鶴は、再びブリーフの上から篤の肉棒をいじり始めた。
 巧みに動く細い指が、布越しに、篤のペニスを刺激する。
 篤のそれは、その分泌液でブリーフの布地をぐっしょりと濡らしながら、さらに力を漲らせていった。
「あぁン……まだおっきくなるの……? 肥田サンの、すごい……」
 そう言いながら、美鶴が、そのすらりとした足で、篤の右の太腿をぎゅっと挟んだ。
 そして、篤の肌に秘唇をこすりつけるように、丸いヒップを小刻みに動かしだす。
「はっ、はう、んふっ、あはぁン……肥田サンのオチンチン、カチカチだヨぉ……」
 美鶴は、欲情に濡れた声でそう言ってから、ちろりと舌なめずりした。
 そして、ブリーフに手をかけ、ゆっくりと引きずり下ろす。
 その瞳は、自らが露わにしようとしている篤の股間に、熱い視線を注いでいた。
「キャッ♪」
 ブリーフの布地に引っ掛かっていたペニスが、びよん、と姿を現すのをみて、美鶴は嬉しげな声を上げた。
「おっきい……予想以上だヨ……。恐いくらい……」
 そう言いながらも、まるで確かめるように、美鶴は篤の肉棒を握った。
「はあぁン……ゴツゴツしてる……」
 美鶴の手が上下に動き、篤のシャフトをしこしこと扱く。
 たちまち鈴口から腺液が溢れ、肉棒と、そして美鶴の指を淫猥に濡らしていく。
「んふふ……ビキビキだヨ……中に、鉄の芯が入ってるみたい……」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ああぁ……天城さんの手コキ、すごい……」
 篤は、目を虚ろにしながら、だらしなく喘いでいた。
 美鶴の細い指先が、亀頭の縁の部分や先端など、感じる部分を的確に攻めているのだ。
 ひくん、ひくん、と篤の肉棒がしゃくり上げ、新たな先走りの汁を漏らす。
「肥田サンの、すっごく元気……。ねえ、もう出ちゃいそう?」
「う……うん……」
 篤が、そう返事をする。
 すると、美鶴は、意地悪く手淫の動きを止めてしまった。
「だーめ」
「ど、どうして……?」
「だって、肥田サンばっかり気持ちよくなるなんて、ズルイじゃない」
 そう言って、美鶴は、くるりと体を入れ替えた。
 体の方向を変え、逆さまに覆いかぶさりながら、美鶴が、膝で篤の頭を挟むようにまたぐ。
 篤の目の前で、じっとりと愛液に濡れた秘唇が、ひくついていた。
「ねぇ、舐めて……ああン!」
 その言葉が終わらないうちに、篤は、美鶴の肉の花びらにむしゃぶりついていた。
 そのまま、じゅじゅっ、じゅじゅっ、と音をたてて、ピンク色の肉襞ごと、愛液を啜る。
「あはぁン……すっ、すごいっ……! あうううン! き、気持ちイイよぉ……あひいいン!」
 美鶴は、篤の腰にしがみつくような格好で、声を上げた。
「あっ、あああっ、あふ……あああン……! すごい……クンニ、こんなに気持ちイイなんて……きゃううううン……!」
 ねろねろと力強く動く舌に秘裂をえぐられ、クリトリスを転がされながら、美鶴は、ひくひくと背中を震わせた。
「あン、ああン、あン……お、お返しするネ……あむっ」
 美鶴が、艶やかな唇で、篤の肉棒を咥え込む。
 流行色のルージュが塗られた唇が、浅ましく血管を浮かした肉竿の表面を滑り、唾液で濡らしていく。
「あむ、んむむ、はふ……ああン……おっきくて、口に入り切らないヨ……んむ、ちゅぶぶ、んぐ……ちゅぼっ、ちゅぼっ、ちゅぼっ、ちゅぼっ……んふン、んふぅン……ちゅずずず……」
 美鶴が、卑猥に湿った音をたてながら、舌と唇を大胆に使って、肉棒を愛撫する。
 一方、篤も、白いヒップに指を食い込ませながら、美鶴の秘唇を貪った。
 左右の肉襞をはむはむと唇で甘く噛み、さらには、セピア色のアヌスにまで舌を伸ばす。
「はうっ……やン! やあぁン……! そ、そんなとこ舐めちゃ……はひいいン……!」
 肉棒から口を離し、美鶴は高い声を上げた。
 篤は、構う事なく、その舌によって、美鶴の菊門から変態的な快楽を掘り起こしていく。
「あひン、あひっ、はっ、はひィ……! すごい……すごいよォ……! あああン……あっ、あっ、あっ、あっ……ひあああああン……!」
 もはやフェラチオを続けることができないほどに激しく喘ぎながらも、美鶴は、右手で篤の肉棒を扱きたてた。
 二人の快感が、まるで競い合うように高まっていく。
 篤は、美鶴のアヌスを舐めながら、右手でクレヴァスをくちゅくちゅとかき回した。
「あっ、あああああっ……ウ、ウソっ……! イ、イっちゃう! イクっ!」
 びくん、と美鶴の体が、震えた。
 ぶびゅっ!
 ほぼ同時に、美鶴の手の中に肉棒が、射精する。
「あっ、ああああっ、あふ……あああン……お、おしりでイかされちゃった……あああン……」
 ひくっ、ひくっ、と体を震わせながら、美鶴が、茫然と呟く。
 篤の肉棒は、どぷっ、どぷっ、と精液を溢れさせながらも、まだ固いままだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……肥田サン……もしかして、まだデキるの……?」
「ふう……ふう……ふう……うん……大丈夫みたい……」
「ああン……肥田サン、すごすぎるヨ……」
 右手を篤のザーメンでぬるぬるにしながら、美鶴が、篤の肉竿をさらに扱く。
 篤のペニスは、白濁液にまみれながら、なおも逞しく膨張した。
「ね、ねえ……これ、欲しいの……入れて、いいかな?」
「うん、もちろん」
「んふふっ……嬉しい……」
 美鶴は、再び体の方向を変えた。
 徹底して上から攻めるつもりなのか、篤の腰にまたがり、騎乗位の姿勢を取る。
「はああ……こ、こんな大きいの入れるの、初めて……ドキドキしちゃう……」
 自らが分泌した愛液を塗り込めるように、クレヴァスに肉棒をこすりつけながら、美鶴が言う。
「じゃあ、入れるネ」
「うん……」
「んっ、んんんっ……んくう……」
 すっかり淫蜜に濡れた美鶴の秘唇が、篤の肉棒を飲み込んでいく。
「あ、天城さん……っ! 天城さんのオマンコ、熱い……!」
「肥田サンのオチンチンも熱いよォ……ヤ、ヤケドしちゃいそう……あうううううン!」
 みっちりと肉の詰まった美鶴のそこに、篤のペニスが根元近くまで侵入する。
「あふうン……すごい……ああン……こ、このへんまで来てるゥ……」
 美鶴は、自分の臍のすぐ下辺りを撫でながら、そんなことを言った。
「ハァ、ハァ、ハァ……ああン……入れただけでこんなにイイなんて……んくうっ……」
「天城さん……動くよ……」
「えっ……? あっ、あっ、あっ、あああン!」
 篤が、美鶴のウェストに手を置き、下から腰を使い始めた。
 美鶴の均整の取れた体が、まるで波に弄ばれる船のように上下する。
「あふっ、あん、あはぁっ、あひいいン……! やああっ……す、すごい……すごすぎるヨォ……! あくうン! あふっ! あああン!」
 美鶴の動きに合わせて、その癖の無い長髪が乱れ、形のいい乳房が揺れる。
 篤は、その動きに誘われるように、腰から手を離し、美鶴の双乳に手の平を重ねた。
 そして、湧き起こる快感に犬のように喘ぎながら、手の中の乳房を揉みしだく。
「あん、あん、肥田サンの触り方、やらしいっ……やらしくて、気持ちいいヨぉ……あはぁン……」
「すごい……オッパイの先っぽ、ビンビンに勃起してるよ……コリコリしてる……」
「あああぁン……エ、エッチっ……!」
 すっかり勃起した乳首を太い指で転がされ、引っ張られながら、美鶴が声を上げる。 
「はぁ、はぁ、はぁ……んふン……も、もっとエッチなこと言って……!」
「あふう……天城さんのマンコ、オッパイいじるたびに、きゅーってなる……すっごい気持ちいいよ……! あううう……!」
「肥田サンのも……肥田サンのオチンポも気持ちいいの……すっごい奥まで届いて……あああン……こ、こんな気持ちいいセックス初めてェ……!」
 篤と美鶴の言葉に、ぐちゅっ、ぐちゅっ、という卑猥な音が重なる。
「あああッ……も、もうダメぇ……! イっちゃうっ! イっちゃううっ! アタシ、イっちゃうヨォ!」
「ボクも……ボクもイキそう……あああああ、出る、出るうっ!」
 篤は、美鶴の乳房を激しく捏ね回しながら、最後のスパートをかけた。
「ひああああああああン! イっちゃう〜っ! イクッ! イクッ! イクッ! イクーッ!」
 びゅううううううううッ!
 絶頂を迎えた美鶴の膣内で、大量の精液が迸る。
「ああああっ……! すごい……! すごい出てる……! ダメぇ……またイク! イクうっ! あっあっあっあっあっあっああぁ〜ッ!」
 ぶびゅっ! びゅるるっ! ずびゅっ! ぶぶぶぶぶぶっ!
 絶頂を繰り返す美鶴の子宮の入り口を、篤の精液が連続して叩く。
「あううう……あ、あああ、あ、あはあああぁ……っ」
 美鶴は、がっくりと体を弛緩させ、篤の腹の上に倒れ込んだ。
 絶頂の余韻を味わっているのか、ひくっ、ひくっ、とそのしなやかな体が、痙攣している。
「はふぅ……ねぇ、肥田サン……重くない?」
「ううん、ぜんぜん……」
 篤は、そう言いながら、しっとりと汗の浮いた美鶴の背中を撫でた。
「はふ……ああン……ゾクゾクしちゃうヨ……」
 くすぐったそうにそう言いながら、美鶴が体をくねらせる。
「んふふふっ……すっごく良かった……管理人サンがハマっちゃうのも分かるかも」
 くすくすと笑いながら、美鶴が、そんなことを言った。
「……アタシさあ、やっぱ、今までオトコ運あんまよくなかったかも」
「どうして?」
「セックスで、あんまり感じなかったの。オナニーの方がずっとよかった」
 美鶴の明け透けな言い方に、篤は、目をしばたいてしまう。
「だからネ……まるで、ゲームの声優さんみたいにすごい声出してる管理人サン見て、ちょっと興味持っちゃったんだ。アタシも、あんなふうになるのかナ、って……」
「それで、ボクとこういうことしようと思ったの?」
「ま、ネ。もともと、ちょっと気になってたしネ。このヒトってどんなオタクなのかなー、って」
「…………」
 篤は、どう答えていいか分からず、もしゃもしゃと頭を掻いた。
 そんな篤の顔を、美鶴が、じっと見つめる。
「あのサ……これで、おしまいじゃないよネ……? アタシたち、趣味も合うみたいだしさ」
「え、えっと……」
「心配しないで。別に、管理人サンから肥田サンのこと寝取ろうなんて思ってないから」
 美鶴が、その瞳に悪戯っぽい光を浮かべる。
「――でも、セフレだったらいいでしょ?」
「それは……えーっと、それだったら、まあ……」
「やった♪」
 篤の曖昧な言葉に、美鶴はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、次からはきちんと名前で読んでネ。篤サン」



 翌日の早朝――。
 珍しく早くに目が覚めてしまった篤は、寝床の中でぼんやりとしていた。
 昨夜の、美鶴との情事を思い出す。
 篤は、美鶴の態度に、やや戸惑いを感じていた。
 千秋のときとは、明らかに違う。千秋は、篤の精液の洗礼によって、まるで発情期のネコのようになってしまったが――美鶴は、全く自分を見失っているようには見えない。
 そうでありながら、篤に好意を抱いていないかというと、そうでもなさそうだ。
 と、かすかな音をたてて、ドアが開いた。
「……おはよう」
 そっと部屋の中に入り込んで来たバロネッサに、篤が声をかける。
「あ……起きてらしたんですの?」
 バロネッサは、何となくばつが悪そうな顔で言った。
「うん」
 篤は、寝床の上で体を起こした。
「あのさあ、ちょっと、訊きたいことがあるんだけど」
「な……何ですの?」
 バロネッサが、篤の前にぺたんと座り、小首をかしげた。
「うん、実はさあ――」
 篤は、昨夜の出来事について、バロネッサに語り出した。
 篤の話が進むにつれ、バロネッサが、その眉を寄せ、どこか不機嫌そうな顔になる。
「――ってわけなんだけど、これ、どうしてかなあ?」
「なぜ、その天城美鶴という女に術が効かなかったか、ということですのね」
 バロネッサは、つまらなそうな口調で言った。
「うんうん」
「もともと、世の中には、魔術にかかり易い人間とかかりにくい人間がおりますの」
 バロネッサが、その細い肩を小さくすくめる。
「さしずめ、あの美鶴という女は、後者なんでしょうね。……これは、体質――と言うより、魔法的、精神的な特質によるのですわ。“霊質”とでも言いましょうか……。ともかく、いくら私がかけた術が強力でも、その効果には個人差が出てくるのです。お分かりになりまして?」
「うん」
 篤は、素直に肯いた。
「ところで……その……」
 ちら、バロネッサが篤の股間に目をやる。
「どうしたの? バロネッサちゃん」
 篤は、にやけた笑みを口元に浮かべながら、訊いた。
 バロネッサは、悔しげに唇を噛んで、上目遣いで篤を睨んだ。ここのところ、篤が寝ている間にコトを始めることが出来たため、“おねだり”を口にしないで済んでいたのだ。
「あの……ですから……あなたのを、その……お口に欲しいんですの……」
「何を?」
「もうっ、分かってらっしゃるくせに……!」
 バロネッサは、そのブルーの瞳を涙で潤ませた。
「せ……精液ですわ……。あなたのザーメンを、私に飲ませてください……」
「――うん、いいよ」
 返事をする篤の股間では、バロネッサの言葉に反応したのか、ブリーフの中で肉棒が勃起し始めている。
「…………」
 バロネッサは、まるで、土下座でもするような屈辱的な姿勢で、篤の股間に顔を寄せた。




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