第5話
「面白くないですわ」
バロネッサは、ちゃぶだいに両肘を乗せ、形のいいあごを手で支えながら、一人つぶやいた。
ここは、篤の住む部屋の隣室である。もともとは別の中年女性が住んでいたのだが、今はその人物はバロネッサの魔術によって野良猫に変身させられている。
時刻は、夕暮れ時。
午前中は、千秋が、昼過ぎには、美鶴が、篤の部屋を訪ねた。
もちろん、ただ訪問したわけではない。バロネッサは悪魔である。その鋭敏な尖った耳は、二人の女の激しい喘ぎ声を余す事なく聞くことができた。
きちんと準備すれば、壁を透視することも不可能ではない。実際、数日前には、それを試みたこともある。
篤は、驚くほどの絶倫振りを見せ、千秋と美鶴を何度も絶頂に導いていた。
そんな篤の様子を知るたびに、バロネッサの豊かな乳房の奥で、奇妙な感情が湧き起こり、堆積していく。
それは、憤懣であり、鬱屈だった。
怒りというほど鋭くはないが、無視することができないくらいには存在感のあるわだかまりが、バロネッサの心をささくれさせている。
「……面白く、ないですわ」
ひらひらと尻尾の先を動かしながら、ふう、と、バロネッサは小さく溜め息をついた。
「本当だったら、無理やりにでも魂をものにしているところですのに……」
契約者の魂を得るのは、通常、相手が死んでからだが、もしきちんと契約を履行したのであれば、自然死を待たなくてもいいことになっている。そして、篤の命を奪うなど、バロネッサにとってみれば文字どおり赤子の手をひねるようなもののはずだった。
「でも……」
バロネッサが、宝石のように青い瞳を伏せた。
その白い頬はわずかに赤らみ、胸の中では、いらつきとは違う何かが、ざわざわと波打っている。
「惜しい――ですわ」
ちろり、とそのピンク色の舌が、サクランボを思わせる唇を舐めた。
篤のペニスから迸る熱いスペルマ――たっぷりと魔力を含んだ体液を、バロネッサは、諦める気になれない。
例えるなら、それは、無類の酒好きが、ふとした拍子に最高級の酒樽を置いてある酒場の店員になってしまったようなものかもしれない。
“酒樽”は、バロネッサのものではない。今の状況は、馥郁たる香りに誘われてやってきた他の酔客が、樽から溢れ出る蒸溜酒を堪能しているのを横目で見ながら、わずかに滴ったおこぼれを飲んでいるに等しい。
「もともとは、私の魔術によるものですのに――」
雲によって日が陰ったのか、奇妙に薄暗くなった部屋の中で、バロネッサがつぶやく。
「――そうですわ」
バロネッサの目に、危険な光が灯る。
「私の――私だけのものにしてしまえばいいんですわ――いいえ、そうすべきなんです――」
声に決意を込めて、バロネッサは、一人、肯いた。
「あ、真夏チャン、今帰り? 遅いね」
アパートのすぐ前で、美鶴は、夏服姿の真夏に声をかけた。
時刻は、とうに夕食時を過ぎている。女子高生が一人で道を歩くには、やや物騒な時間帯だ。
「あ、はい。文化祭の準備で遅くなっちゃって――美鶴さんもですか?」
「アタシは、バイト帰り」
美鶴は、にっこりと人懐っこい笑みを浮かべた。そのバイトに出る直前に、篤と濃厚な時間を過ごしたことなど、おくびにも出さない。
「いいなあ。あたしも、早くバイトして稼ぎたいですよー」
「家を出てバイトで生活費稼いでると、高校生の時の方が気楽だったなあ、って思うヨ」
嫌みの無い口調で、美鶴は言った。
「ところで、真夏チャン、文化祭は何やるの?」
「喫茶店です。あたし、ほんとはもっと他のことしたかったんだけど」
「他のことって?」
「うーん……何て言うんでしょう……その、もっと変わったことって言うか……本格的なことって言うか……」
真夏が、頭の中にある形の無い何かを、どうにか言葉にしようとする。
「そう言えば、美鶴さんや桜さんの大学も、もうすぐ文化祭でしたよね?」
「あー、学祭ネ。やることはやるヨ」
「美鶴さん、参加しないんですか?」
「ううん。アタシ、お祭り好きだからネ。学科の有志とか募って、変わったことを本格的に」
美鶴は、んへへ、と妙な笑みを浮かべた。
「へえ……美鶴さんのことだから、何かハデハデなこと考えてるんでしょ」
「どーだろネ。おしゃれに決めたいとは思ってるけど――できあがったら招待状あげるヨ」
「わあ、ほんとですか?」
真夏は、嬉しそうに声をあげた。
美鶴や桜の通っている大学は、キリスト教系の名門校である。学内には本格的なチャペルなどがあり、そういった雰囲気に憧れている地元高校生も少なくない。そして、真夏もその一人である。
「学祭のチケットくらいでそんなにはしゃがれちゃうとお姉さんくすぐったいナ〜」
美鶴は、そんなふうに言いながら、頭を掻いた。
「それはそれとして、早いとこ帰らないとお母さん心配するんじゃない? 不用心だし」
「あ、そーですね」
真昼は、自分の腕時計を確認して、声をあげた。
「じゃあ、これで。さようなら」
「さよなら〜」
家へと帰る真夏に、美鶴が白い手を振る。
「やれやれ――」
美鶴は、小さく肩をすくめた。
「何だか危なっかしいよネ。……そーいうところも萌えなんだけど」
その整った顔に、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、美鶴が言う。
そして、美鶴は、自らの住むアパートに向き直った。
「ん?」
ちょうどその時、篤の部屋の隣から、バロネッサが出てきた。
「……え?」
声をかけようとして、美鶴は、ただならぬ雰囲気を感じ取り、思わず電柱の陰に隠れてしまった。
バロネッサが、篤の部屋のドアノブを、がちゃがちゃと動かしている。
カギがかかってるのか、ドアは、開かない。
バロネッサは、右手で宙に何かを書き、呪文を唱えた。
かちゃん、と小さな音が響く。
バロネッサが、再び、ドアノブをひねった。
「うそ……」
美鶴は、半ば左目を隠している髪を掻き上げながら、両目でじっとバロネッサの様子を見つめた。
バロネッサがドアを開ける。どうやら今の呪文で鍵が解除されたらしい。
バロネッサが、音を立てないように静かに篤の部屋に滑り込む。
「い、今の……なに……?」
美鶴は、そう言って、ぱちぱちと目をしばたたかせた。
篤は、部屋の中で眠りについていた。
普段はもっと夜更かしをするのだが、今日は、千秋や美鶴を相手に、いつにも増して体力を消耗してしまったため、早めに床についたのだ。
肥満した体を満たす心地よい気だるさに、篤は早々に床に入り、夢も見ないで眠りこけている。
「う……」
違和感に、篤は、小さく声をあげた。
呼吸が、苦しい。
腹の上に、何かが乗っている。
「え……?」
暗闇の中、篤は目蓋を開いた。
突き出た腹に、小さな影が、馬乗りになっている。
それは、言うまでもなく、金髪碧眼の女悪魔――バロネッサだった。
「え、えと、まだ朝じゃないよね?」
「…………」
篤の問いに、バロネッサは答えない。
何か減らず口を叩こうとしてから、篤は、口をつぐんだ。とてもそんな雰囲気ではなかったのだ。
バロネッサの瞳が、何やら緑がかった燐光を発しているように思える。
「……私、決めましたの」
バロネッサが、囁くような声で、言った。
「き、決めた……? 決めたって何を……」
「このままだと、私、ダメになってしまいますわ」
篤の言葉を無視するように、バロネッサが続ける。
「せっかく難関を突破して契約課程を修業しましたのに……このままでは落ちこぼれの使い魔と変わらない生活を送ることになってしまいますわ」
「え、えーっと……」
「ですので、私、あなたの魂を凍結することに決めました」
「と……凍結ぅ?」
「資産凍結のようなものですわ。要するに、あなたを私の人形にします」
バロネッサは、その口元に、酷薄な笑みを浮かべた。
篤の背筋に、ぞくりと寒気が走る。
「冷凍物の魂は査定には不利ですし、精液の方の味も落ちてしまうと思うのですが……止むを得ませんわね」
「ちょ、ちょっと待ってよォ! つまり、ボクはどうなっちゃうわけ?」
「苦痛はありませんわ……。苦痛を感じることすら無くなります」
「それって……」
「あなたは、意思を無くし、私の言われるままに生きるようになるのです……」
バロネッサの顔から表情が消え、その瞳から発せられる光が、徐々に強くなっていく。
篤は、金縛りにあったように動けない。
「ま、待ってってば……そんな……そんなのひどいよォ……」
「悪く思わないでくださいね……。このままこんな生活を続けてると……私……」
一瞬だけ、バロネッサの顔に、苦悩の色が現れる。
だが、バロネッサは、唇を噛み、ますますそのブルーの瞳から溢れる光を強くした。
まるで、貧血でも起こしたように、篤の視界が暗くなり、頭の芯が痺れていく。
「う……わ……わわ……わああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
篤の口から、切れ切れに、情けない悲鳴が漏れる。
バロネッサは、ますます精神を集中し、篤の顔を見つめ続けた。
篤の目から、次第に生気が失われ、その瞳がガラス玉のようになっていく。
「あ……ぅぁ……ぁぁぁ……」
篤は、目を見開き、口をだらしなく開けたまま、徐々に体を硬直させていった。
その巨躯が、時折、ひくん、ひくん、と痙攣する。
「あぁー……」
まるで、人生最期の吐息のような細い声を上げ、篤は、動かなくなった。
バロネッサが、ゆっくりと、瞳を閉ざす。
その白い顔に、懊悩とも悔恨ともつかない奇妙な表情が、浮かんでいた。
「やっぱり、私、まだ未熟者ですわね……」
バロネッサが、小さな声で言う。
「せっかく、契約を結んだ魂ですもの……本当でしたら、もう少し……」
「――っぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!」
咆哮が、バロネッサの独白を遮った。
「え――? キャッ!」
驚きに目を見開いたバロネッサの体が、半回転する。
「な、な、な、何ですの……?」
気が付くと、バロネッサは、両手を押さえつけられた格好で、篤に組み敷かれていた。
「そ、そんな……どうして……?」
「――さあて、何でなんだろうねぇ〜」
篤が、普段どおりのような、そうでないような、判断に迷うような声音で、そんなふうに言った。
乱れた長い髪がかかっているため、顔の様子は判然としない。だが、その小さな両目が、ぎらぎらと光っているようにも見える。
「わ……私の魔力が弾かれてる……?」
バロネッサは、驚愕に声を震わせていた。
「そんな……もともと、私の術は効いていなかったんですの? だったら、今までのことは……この人の、力……?」
「ボクの力がどうしたって?」
そう言いながら、篤は、その腰で強引にバロネッサの脚を割り開いた。
そのまま、自らの股間をバロネッサの股間に押し付けるようにする。
「あ……!」
篤の肉棒は、すでに完全に勃起し、ブリーフから、半ばその姿を現していた。
「な……何をなさるつもりですの……?」
「それは、こっちのセリフだよォ。せっかく今まで仲良くしてこれたのにさあ」
篤はそう言って、バロネッサの腕を離した。
そして、器用な手付きで、バロネッサの股間を覆う貞操帯じみた衣装の留め金を外してしまう。
「あ、ダメっ……!」
バロネッサが、両手で股間を覆い隠す。
だが、篤は、バロネッサの細い両手首を片手で軽々と握り、脇にどかしてしまった。
もう片方の手は、バロネッサの白い太腿を押さえ、足を閉じようとする力を封じている。
「へえ……バロネッサちゃん、アソコの毛、生えてないんだ」
篤の言うとおり、バロネッサのそこは、清楚といってもいいほどのたたずまいを見せている。
ぷっくりとわずかに膨らむ恥丘はほとんど無毛で、スリットからは、ピンク色の秘唇がわずかにのぞいているに過ぎない。
「もっと大人っぽいアソコかと思ってたのに、意外だなあ〜」
「よ、余計なお世話ですわっ! それに、少しは生えてますっ!」
バロネッサが、眉を怒らせながら叫ぶ。
だが、その瞳は、涙で潤んでいるようだ。
「えへへへへ……可愛いよ。バロネッサちゃんのツルツルマンコ」
そう言いながら、篤は、自らのペニスを完全に露出させ、バロネッサのクレヴァスに押し付けた。
「あ、熱いっ……!」
敏感な粘膜で肉棒の温度を感じ、バロネッサが悲鳴のような声をあげる。
篤は、満足げな笑みを浮かべながら、ゆっくりと腰を前後に動かした。
浅ましく血管を浮かせた肉棒が、幼い外観の秘裂を擦り上げていく。
「ああ……イヤ……イヤですっ……! ダメ……セ、セックスはダメっ……!」
バロネッサが、節くれだったシャフトに蹂躙される自らのクレヴァスを見つめながら、声を震わせる。
「ああ……お願いです……いつもどおり、口でも、胸でも、あなたを満足させて見せますから……セックスだけは許して……!」
「へええ、珍しいなあ。バロネッサちゃんがそんな可愛い態度に出るなんて」
そう言いながら、篤は、執拗にバロネッサの秘唇を肉竿で嬲り続けた。
「どうして、そんなに嫌がるわけ? やっぱ痛いのが恐いの?」
「そ、そういうわけじゃありませんっ……!」
篤のからかうような口調に、バロネッサは、悔しそうな声をあげる。
「じゃあ、どうして? 教えてよ。ボクとバロネッサちゃんの仲じゃん」
「い……言えません……! もうっ! 調子に乗るのはやめてください!」
「教えてよぉ〜。ケチだなあ〜」
「だ、だから……そういう問題じゃなくて……」
バロネッサの言葉と言葉の合間に、はぁ、はぁ、と小さな喘ぎが混じる。
そのロリータな外観の秘唇が蜜を溢れさせているのを見ても、バロネッサが快楽を感じているのは明らかだ。
「ほら、言ってよぉ。それとも、このまま無理やり入れちゃおっか?」
「ダメえっ!」
バロネッサが、まるで子供のような悲鳴を上げる。
「わ、分かりました……分かりましたから、それだけは……」
目尻に涙すら浮かべながら、バロネッサが言う。
「あ……あの……わ、私たち、悪魔が、人間に処女を捧げるということは……その人の使い魔になるということなんです……」
「使い魔……?」
「はい……私たちの世界では、人間に仕えるということは、落ちこぼれ……落伍者ということなのですわ……。そ、そんなふうになってしまったら……私、故郷に顔向けが出来ません……」
「ふうん……」
篤は、そう言って、バロネッサの腰を抱えなおし、さらに力強く腰を動かし始めた。
「あああっ……そ、そんな……! きちんと言いましたのに……約束が違いますわっ!」
「大丈夫、安心して。ボクは、無理やりに女の子に入れちゃうなんてこと、絶対にしないから」
「で、でも……」
未だ、篤の肉棒は、バロネッサの愛液に濡れながら、クレヴァスを擦り続けている。
「レイプなんてしないよ。バロネッサちゃんが入れてほしいって頼むまで、入れたりしない」
「わ、私、絶対にそんなこと……あン!」
鋭い性感に貫かれ、ひくん、とバロネッサの体が震えた。
ロケット型の爆乳が、ゆさっ、と揺れる。
「へへ……クリちゃんが顔出しちゃってるよ。チンチンの先っぽでこすってあげるね」
「やっ……! し、しないで……ああン、あ、ああっ、あふ……あああっ……!」
女の最大の急所を刺激され、バロネッサは、他愛も無く声を漏らしてしまう。
「ああ、すごい……オマンコにゅるにゅるになってきた……。ボクのに吸い付いてくるみたいだよ」
「ああ……そ、そんなふうに言わないでください……ああン……」
「ふへへ……可愛いなあ、バロネッサちゃん……。今までで一番可愛いよ」
「そ、そんなことっ……あ、あン! ああン! あく……う、ううン……あふぅっ……!」
篤の肉棒によって秘部を捏ねくり回され、バロネッサがくねくねと身悶えする。
「ほら、バロネッサちゃん……ボクのチンチン触って、シコシコして……。もし、いっぱい精液出したら、ボクも諦めるかもしれないよ」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
バロネッサは、言われるままに、黒いレザーのような材質の長手袋をした両手を、篤の肉棒に伸ばした。
そして、優美な指先で、亀頭を撫でさするように刺激する。
「あー、そうそう……気持ちいいよォ……」
篤は、にやにやと笑いながら、この変則的な素股プレイを続けた。
時々、膣口に亀頭を浅く潜らせたり、肉竿を上下に動かして恥部を叩くようにしたりする。
バロネッサは、篤の執拗な攻めに、秘唇から愛液を溢れさせながら、喘ぎ続けた。
粘つくほどに淫靡な時間が、ゆっくり、ゆっくり、ナメクジが這うように過ぎていく。
「……はああっ、はぁ、はぁ、はぁ、はああ……あああ、許して……もう許してください……謝りますから……んくうン……もう、耐えられませんわ……あああン!」
全身をじっとりと汗で濡らし、唇の端から涎をこぼしながら、バロネッサが訴える。
「許すも何も……別にボク、怒ったりなんかしてないよ」
そう言いながら、篤は、腰を激しく動かした。
「あああっ! ダメ、ダメ、ダメ、ダメ……あひいいいいい! もう、もうダメえ……ああああああああ!」
ぐちゅぐちゅという湿った音に、バロネッサの甘い悲鳴が重なる。
「バロネッサちゃん、イキそう?」
「あっ、あああああン! そ、そんな……私っ……! あああ、もう、もう、あはあああっ……イ、イク……!」
「まだダメ〜」
篤は、笑いながら意地悪く腰を引いた。
「ああ、そんなっ……ひ、ひどいですわ……」
バロネッサが、篤の肉棒に指を絡め、自らの秘唇に押し付けようとする。
篤は、それに逆らわず、再び肉棒でバロネッサのクレヴァスを擦りだした。
「あ、あうううっ……はっ、はふ、はうううン……あン、あああン、あくっ……あああああン……!」
先ほどよりもあからさまになった喘ぎが、バロネッサの口元から漏れる。
「本当に強情だなあ……。入れてって言えば、すぐに入れてあげるのに」
「あああン……そんな、ダメです……それだけはダメですの……お、お願いです……ああああン、あンあンあンあンあああっ……!」
またも絶頂を迎えかけ、バロネッサの息がせわしなくなる。
だが、篤は、不意に動きを中断して、またも“おあずけ”を食らわせた。
「あうううううっ……! い、いやぁン……イかせて……イかせてください……!」
バロネッサが、はしたなく腰を浮かしながら、涙声で哀願する。
「お、お願いです……はぁ、はぁ……こ、このままだと、おかしくなってしまいますわ……あああン……」
「だからさあ、きちんと入れてって言ってくれれば、イかせてあげるってば」
そう言いながら、篤が、ずりずりと肉棒をクレヴァスにこすりつける。
「あああン……でも……でもっ……それは……あ、あううう、あふ……あうううううン……」
自ら腰を動かし、少しでも刺激を得ようとしながら、バロネッサが悩ましげに喘ぐ。
篤は、巧みにペニスの動きに緩急をつけ、バロネッサの性感を一定の場所に留め続けた。
「あああ……もう、イジワルしないでください……あふ、あふう、はふ……あっ、あはああっ……これ以上焦らさないでェ……ああああン……!」
「ふひひっ……もう少しだけ素直になりなよ……チンチン入れてほしいんでしょ?」
「あ、あくう……うううっ……私……あン、ああン、あひいいいいぃ……」
「別に、使い魔になっちゃってもいいじゃない……。ずっと、ボクが面倒見てあげるからさあ」
「あああ……ほ……本当ですの……?」
「うん……。ボク、バロネッサちゃんが好きだもの」
「ああ……っ」
どぷっ、と大量の蜜が、バロネッサの秘唇から溢れ、篤の肉棒を濡らす。
「い……今……何て、おっしゃいましたの……?」
「だからさあ、バロネッサちゃんのこと、好きだって言ったの」
「そんな……嘘です……ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
バロネッサが、目に涙を溜めながら、拗ねたような口調で言う。
「嘘じゃないってば。ホラ、ボクのチンチンだって、バロネッサちゃんのことが好きだから、こんなにギンギンになってるんだよ?」
「あううう……そ、そんな……あう、あうう、あく……あはぁ……」
そんな会話の間も、篤の固く強張ったペニスは、バロネッサの敏感な粘膜を執拗に攻め続けていた。
膜がかかったようになっていたバロネッサの瞳が、ますます光を失っていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……わ、分かり……ました……あううン……」
とうとう、バロネッサは、吐息のような声でそう言った。
「あ、の……お願いです……い……入れて、ください……」
「いいんだね?」
「ハイ……私……あなたのものになります……あはあああああああっ……」
とぷっ、とぷっ、と新たな愛液が、バロネッサのクレヴァスから溢れ続ける。
「ホント可愛いよ、バロネッサちゃん」
そう言って、篤は、一度腰を引き、肉棒の先端を膣口に潜り込ませた。
そして、そのまま、ゆっくりと腰を進めていく。
「あ、あああああああ……あひいいいいいいいい……!」
丸い亀頭で秘唇を割り広げられながら、バロネッサは、歓喜の悲鳴をあげていた。
篤の剛直が、バロネッサの膣内に侵入し、先へ先へと進んでいく。
「ん……?」
篤が、声を上げた。
柔らかな抵抗が、その侵入を拒もうとしている。バロネッサの処女膜だ。
「いくよ……」
篤は、バロネッサの脚を両手で大きく割り開き、さらにペニスを前進させた。
「あ……あくうッ!」
バロネッサの体が、弓なりに反り返る。
ペニスが、バロネッサの処女の証しを貫き、膣奥にまで侵入した。
「あ、あああ、あく……あうううううううううン……!」
「ハァ、ハァ……バロネッサちゃん、痛い……?」
「い、いえ……平気ですわ……あうううン……」
バロネッサが、せわしなく息をしながら、虚ろな瞳を宙にさ迷わせる。
「あああ……私……もう戻れないですのね……」
ブルーの瞳を濡らした透明な涙が、目尻から溢れる。
「――動かすからね」
優しいと言ってもいいような声音でそう言い、篤は、抽送を開始した。
「ああっ、あく、あっ、あふう……あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……!」
篤の動きに合わせて、バロネッサが、断続的な悲鳴を上げる。
「……大丈夫?」
「ハ、ハイ……あう……あうううン……あああっ……か、感じます……すごい……!」
「気持ちいいの?」
「あああン……いいです……いいですのっ……! あン、あうう……あはぁン……痛いのに……痛いのに気持ちイイ……あひいン……!」
篤は、バロネッサの反応に満足したように笑みを浮かべてから、その華奢な体に覆いかぶさった。
「ああンっ……」
バロネッサが、篤の背中に手を回すようにして、その巨体を抱き締める。
「あうううン……あっ、あくう、あふう、あああン……す、すごいですわ……これが、セックスなんですのね……あひいいン……」
「そうだよ……これで、バロネッサちゃんはボクのものだね?」
「は、はい、そうですわ……ああああっ……私は……バロネッサは、あなたのモノです……あン、あああン、あうン……!」
新たな涙を溢れさせながら、バロネッサが、わずかにほほ笑む。
「ああ、これ……私、これが欲しかったんですわ……あン、あああン、あくうン……はひい……っ!」
熱に浮かされたような声で、バロネッサが言う。
「今、分かりました……私、ずっとこうして欲しかったんですの……あっ、あくうン、あうう……くひいン……あふ、あふん、はふ、あああああああっ……!」
「すごいよ……バロネッサちゃんのが、ボクのに絡み付いてくる……はふう……」
熱い血と蜜にまみれながらもきっちりとシャフトを締め付けてくる処女肉の感触に、篤が声を声を上げる。
「もっと……もっと感じてください……あん、ああん、あく……あああ……私のここで、もっと気持ちよくなってください……」
意識してなのか、無意識になのか、バロネッサが、その膣肉を収縮させ、篤の肉棒を搾り上げる。
「うううっ、すごいよ、バロネッサちゃんっ……! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ううううううう……!」
まるで獣のように唸りながら、篤は、激しく腰を使った。
「あああン……! 壊れちゃう……私、壊れてしまいますぅ……あふっ、はふうう……あく……あああぁぁぁ……!」
甘い喘ぎを漏らし続けるバロネッサの唇に、篤が唇を重ねる。
バロネッサは、貪るような篤のキスに情熱的に応えながら、舌を突き出した。
「あむ、ちゅぶぶ、んちゅ……ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……あああっ……もう、もうダメですわっ……! 私……イ、イってしまいます……!」
「いいよ、バロネッサちゃん……イこう。一緒にイこうっ……!」
「ハ、ハイっ……!」
バロネッサが、まるで父親に甘える幼児のように、両手両足で篤の巨躯にしがみつく。
「ああ、ああ、ああ、イ、イクよっ……! 出すよ、出すよおっ……!」
「く、ください……! 精液を、私の一番奥にください……! 私の本当のご主人様になってください……! ああン! あン! あン! あン! あン!」
バロネッサの膣内が、強烈に篤の肉竿を締め付け、射精をねだる。
「ああああああ、で、出るうっ……!」
どばっ! と大量の精液が、バロネッサの体内に迸った。
「あああああああああああああああああああああああああ! イク、イク、イク、イク、イクうっ! ご、ご主人様あぁ〜っ!」
びゅっ、びゅるるっ、ぶびゅっ、びゅびゅびゅびゅびゅびゅ!
絶叫をあげるバロネッサの膣内を、篤の精液が満たしていく。
二人は、互いの体をしっかりと抱き締めながら、まるで一つの生き物のようにびくびくと痙攣した。
「あっ……あああああああ……あひぃン……はあっ……はあっ……はあっ……はあっ……」
バロネッサが、荒く息をつきながら、その瞳を天井に向けた。
「ひい……ひい……ひい……ひい……バロネッサちゃん……気持ちよかったよォ……」
「ああぁン……ご主人様ぁ……」
甘い声でそう言いながら、バロネッサが、うっとりと瞳を閉じ、キスをねだる。
篤は、バロネッサの唇に唇を重ね、その舌と唾液をたっぷりと吸った。
ちゅぽ、と音を立てさせながら、二人が唇を離す。
「あ……重いよね。ゴメンね」
篤は、そう言って、体を起こした。
「あン……」
どこか名残惜しげに、バロネッサが声を上げる。
少し遅れて上体を起こしたバロネッサは、篤の股間に両手を置き、そのペニスに顔を寄せた。
そして、愛液と破瓜の血にまみれた肉棒の先端に、ちゅ、と可愛らしい音をたててキスをする。
「ずっと……ずっとバロネッサを可愛がってくださいね……。約束ですわよ……」
はにかむような口調でそう言うバロネッサの髪を、篤は、太い指ですくように撫でた。
「うん……もちろんだよ」
「嬉しいですわ……」
ちゅっ、ちゅっ、とバロネッサが、篤の亀頭に口付けを繰り返す。
その時――かすかな音が、窓の外から響いた。
「――っ!」
一瞬で表情を引き締め、バロネッサが、体を起こして窓に指先を向ける。
鋭い音をたててカーテンが開き、さらには、窓までもが見えない力によって左右に開く。
「なっ……!」
バロネッサが、声を上げる。
そこには、目を丸くした美鶴が立っていた。
篤は、状況を把握しきれず、ぼんやりと鈍い表情をしている。
「あ……悪魔っ子……?」
美鶴は、茫然とした声で、そんなふうに言った。