えくすちぇんじ!

− Dual Face Children −




第四章



「緑郎さんですか? 葛城ですけど……」
「あー、朱美ちゃん?」
 普段通りのなれなれしい口調で、電話口の向こうの男は答えた。
「……なんか、声ヘンじゃない? 風邪ひいちゃってる?」
「そ、そんな感じです」
 朱美と知巳は、声が似ていることでも有名だった。が、やはり、知巳の喉でいくら声を作っても、元のようにしゃべるのには無理がある。朱美は、ちょっと咳き込んで見せた。
「そりゃまたタイヘンだね〜。女のコは足腰冷やしちゃダメだよん」
「うん……」
「ところで、オレの隠れ家に何かあったの?」
「えっと、そうじゃないんだけど」
 緑郎、と朱美が呼んだ男の言う“隠れ家”とは、朱美と奈々がプレイに使うあの廃屋の地下室のことだ。
 萌木緑郎。自称、フリーの情報屋。
 情報屋などという職業が成立するものなのかどうか、朱美にはよくわからない。ただ、この緑郎が、世間の裏事情にやたらと精通し、そして何やら怪しげな稼業で生計を立てていることは確かだ。
 朱美はひょんなことでこの緑郎と知り合いとなり、この街における彼の“隠れ家”を管理することになったのだ。管理といっても、鍵を預かり、そして時折掃除をするだけのことだが。
 自分が使わない間は、あの部屋は好きに使ってもいい、と言われ、実際朱美はそうしている。
「あの部屋のことじゃないってーと?」
「前に、緑郎さん、東京で探偵みたいなことしてるって言ってたじゃないですか」
「うんうん」
「実は、調べてほしいことがあるんですけど……」
「一応、依頼はお金をもらって受けることになってるんだけどね」
 緑郎はそう言って、朱美の反応を探るようにちょっと間を置いた。
「やっぱし……?」
「でも、他ならぬ朱美ちゃんの頼みだからねえ。あの時は、朱美ちゃんや知巳ちゃんに、随分お世話になったし……。あ、そー言えば、知巳ちゃんは元気ぃ?」
「えと……今は、あんまり元気じゃない、かな」
「二人して風邪? いかんねー」
 緑郎が、能天気な声でそんなことを言う。
「あのー、それで……」
「はいはいはい。話を戻しましょ。で、朱美ちゃんは、オレに何を調べてほしいって?」
「あの、津野田ってヤツのことを調べてほしいんです」
「ツノダ?」
「ええ。ボクの街出身で、最近まで東京に行ってた人で……たぶん、ヤバい系の仕事してる人」
「ヤバい系? マル暴とか?」
「よく分かんないけど……」
「年は? あと、顔の特徴とか」
「二十代半ばから三十の間かな? 顔は黒くて、ちょっと目つきがヘンだった」
「それだけじゃね〜。雲をつかむような話だわぁ」
 緑郎が、情けない声をあげる。
「あ、そう言えば、車は赤い外車でした」
「お?」
「ツードアのスポーツカーで、確かナンバーは……」
 朱美がうろ覚えのナンバーを告げると、電話の向こうの緑郎が満足そうな声をあげた。
「おっけおっけ。そういうことが分かれば、けっこう絞り込めるよ」
「よかった……」
「で、なに? ま・さ・かぁ……」
「は?」
 緑郎の妙な声音に、朱美が眉を寄せる。
「朱美ちゃんの彼氏じゃないだろうね〜」
「違いますッ!」
 朱美は、緑郎が耳を押さえるであろうほどの大声をあげた。
「最低のクズ野郎ですよ!」
「朱美ちゃ〜ん、分かったから、んなおっきな声出さないで……」
「あ、ごめんなさい」
「じゃあ、何か分かり次第連絡を……いたっ!」
 いきなり、緑郎が声をあげた。
「緑郎さん?」
「ち、違うよランちゃん! 誤解だって! 朱美ちゃんってのはお店のコじゃないってば!」
 言い訳めいた緑郎の言葉に、どたばたという元気な足音が重なって聞こえる。どうやら、電話の向こうで緑郎が彼女に詰問されているらしい気配だ。
「そりゃ、アケミちゃんなんて確かにお水っぽい名前だけど――」
「おーきなお世話です!」
「あ、ごめんごめん、とりあえず、もう切るから……わあ! ランちゃん、そんなん投げちゃだめだって!」
 そして、ぷつ、と電話が唐突に切れる。
 朱美は、コードレスの受話器をしばし眺めた後、はー、と一つため息をついた。
 そして、知巳の部屋を出て、自分の部屋に入る。
 そこでは、自分の体の中に入った知巳が、ベッドに寝こんでいた。
「兄貴、調子はどう?」
 そう訊く朱美に、知巳は、あーとかうーとか、そんな不明瞭な言葉で答える。
 知巳は、風邪をひいてしまったらしい。
 そして、これまでの気苦労もあってか、かなりの高熱を出してしまったのである。
「ったく、体はボクのなんだから、大事に使ってよ」
「にゃー……」
 知巳は、いかにも情けなさそうな声でうなる。
「こんな日に限って、母さんは法事だし……」
 と、その時、玄関のチャイムが鳴る。
「あ、来た来た♪」
「えぁ?」
 知巳は、“誰が?”という言葉さえしゃべれない。そんな知巳に朱美はにやっと笑いかけてから、玄関のドアを開けに行った。
「こんにちは〜」
 元気にそう挨拶をして入ってきたのは、二人の従妹である奈々だった。



(奈々が、来た……?)
 熱でぼんやりとなった頭で、知巳は考えた。
 ただでさえまとまらない思いが、さらに乱れる。
 昨夜、知巳は、とうとう朱美の机の引出しを開けた。
 そしてそこには、信じられないものが入っていたのである。
 双頭ディルドーをはじめとする、様々な淫具。ポラロイドカメラに小さなビデオカメラ。それで撮影されたとおぼしき、何枚もの写真と、幾つかのビデオテープ。
 そしてそれは、妹である朱美と、従妹である奈々の痴態を映したものであった。
 白いシーツの上で、淫らに絡み合う二人の少女……。
 ただし、被写体となっているのは、ほとんどが奈々だった。
 奈々が、その幼い顔に不釣合いな乳房に自ら手を這わせ、無毛の恥丘に指を這わせている写真。
 シリコン製のディルドーで未成熟なクレヴァスを貫かれ、愛液と、そして破瓜の血を流している写真もあった。
 そして、朱美が手ずから鋭い針で奈々の乳首にピアスホールを開けるビデオ。
 そんな映像の中で、奈々は、被虐の喜びにそのあどけない顔を染め、媚びるような視線をレンズに向けていた。
 にこにこと無邪気に微笑む、どこかおっとりとした一歳年下の従妹。その従妹のあまりにも淫らな一面を、知巳は発見してしまったのだ。
 知巳は、時が経つのも忘れて、それに見入ってしまった。
 明け方まで、汗をかき、股間を濡らした上に、半裸のままで、すごしてしまったのである。
 気がついたときには全身に悪寒が走り、頭は重く痛んでいた。
(奈々……)
 風邪の症状とは別に、胸が締めつけられるような思いがあった。
 一年余り前、知巳は、奈々に告白していたのだ。ちょうど中学を卒業するときだった。
 初恋だった。
 その知巳の申し出を、奈々は、申し訳なさそうに断った。
 ――ゴメンなさい……あたし……知巳ちゃんを、そんなふうに見れないの……。
 泣きそうな顔だったが、あの奈々が、と思うくらい、はっきりとそう言った。それによって知巳はむしろ救われたくらいだ。
 そして、そんな奈々の態度を、知巳はその時意外に思わなかった。けっきょく奈々にとって、知巳はあまりにも身近な一つ上の従兄でしかなかったのだろう。
 そんな奈々が、朱美と、そういう関係にあった。
(なんか……バカみたいだな……俺……)
 心の中で、自嘲じみた笑みをつい浮かべてしまう。
 が、奈々や朱美を恨む気にはなれなかった。
(もう、俺には、彩乃先輩がいるし……)
 そう思いながらうっすらと目を開けると、奈々が、心配そうに自分の顔をのぞきこんでいた。
「大丈夫? 朱美ちゃん」
「んン……」
 そう、返事にならない返事をしながら、ぼおっと奈々を見つめる。
 奈々は、休日にもかかわらず、彼女が通う学校の制服であるセーラー服を着ていた。
「なんで、せーふく?」
 ようやく、それだけ言葉にする。
「あ、これ? えへへ……似合う?」
 そう言って奈々は、くるりと一回転して見せた。フレアスカートが、花のようにふわりと広がる。
「朱美ちゃんに、見てほしくて」
「……かわいいよ」
 知巳は、素直にそう言った。
「ホント? 嬉しい……♪」
 奈々が、そのあどけない顔を、ぽおっと染める。
「――あ、そろそろお昼だね。奈々、おかゆ作ってあげる」
 そして、照れ隠しのようにそう言って、部屋を出てぱたぱたと階段を下っていく。
 知巳は、ぼんやりとした顔のまま、一つため息をついた。



 奈々がおかゆを作っている間にさらに一眠りして、知巳の状態はだいぶ落ち着いてきた。
 もともと、ここ一週間のストレスによる寝不足が一気に出て、体調が崩れただけだったのだろう。きちんと睡眠をとれば、若い体はすぐに回復をする。
「お・ま・た・せ〜」
 にこにこと微笑みながら、奈々がおぼんにおかゆを載せて部屋に入ってきた。
「あ、大丈夫?」
 半身を起こす知巳に、奈々が心配そうに訊く。
「うん。だいぶ、よくなったよ」
「よかった♪」
 そう言って、奈々はおぼんを知巳の膝の上に載せた。
「はい、あーん」
「じ、自分で食べられるよっ!」
 れんげでおかゆをすくって食べさせようとする奈々に、知巳は慌てたように言った。
「え〜。奈々、こういうのちょっと憧れてたのにぃ」
「ま、また今度ね」
 知巳は適当なことを言いながら、れんげをひったくるようにした。
 そして、次第に回復しつつある食欲に任せて、ぱくぱくとおかゆを平らげていく。
「朱美ちゃん」
「――な、なに?」
 つい、一瞬反応を遅らせてしまいながら、知巳が答える。
「梅干、食べないの?」
「げ――」
 知巳は、今まで無意識に無視していた小皿の上の赤黒い物体に注意を向けさせられ、声をあげてしまった。
「好きでしょ、梅干」
「そ、それは……」
 梅干は、ほとんど好き嫌いのない知巳の、唯一苦手とする代物だ。朱美や、母の千恵子がそれを喜んで食べるのを、知巳は心底不思議に思っている。
「今は、いいよ……」
「だーめ。梅干、体にいいんだから!」
 そう言って奈々は、梅干を箸でつまみ、知巳の口元に差し出した。
「……」
 じっとりと、額に冷や汗がにじむ。
 そして知巳は、まるで薬でも服むような感じで、その梅干をぱくりと口の中に入れ、一気に飲みこもうとした。
「んぐっ! わっ!」
 理の当然として、種が喉に引っかかり、あわててそれをおかゆの入っている土鍋の中に吐き出す。
「だ、だいじょうぶ? そんなに慌てなくても……」
 げへげへと咳き込む知巳の背中をさすりながら、奈々が言う。
 その小さな手で背中を撫でられる感触を、知巳は、つい意識してしまった。
 奈々の豊かな胸が、わずかに腕に触れている。
「奈々……」
 すぐ近くにある従妹の顔を見つめながら、知巳は、思わずそう呼びかけてしまった。
 脳裏に、その体を朱美にもてあそばれ、悦びの表情を浮かべる奈々の映像がよみがえる。
「汗びっしょりだよ、朱美ちゃん」
 そう言って奈々は、おぼんを床に置き、そして、知巳の着ているパジャマのボタンに指をかけた。
「あ、ちょっと……」
「奈々が、脱がせてあげる……」
 そう言って、白い指先で、一つ一つ、パジャマのボタンをはずしていく。
 知巳は、なぜかされるがままになっていた。
 素肌に触れるか触れないか、という奈々の指先の動きが、妙にこそばゆい。
 汗でしっとりと濡れた白い乳房が、外に解放された。ブラは、していない。
「きれいなおっぱい……」
 奈々が、目許をぽおっと染めながら、そんなことを言う。
「奈々……」
「あ、ごめん。体、ふいてあげなくちゃね」
 そう言って、奈々は、タオルを取り出した。
 そして、パジャマの上を脱いだその体の汗を、丁寧にぬぐっていく。
 そうしながらも、奈々の目は、乳房や首筋の曲線をうっとりと眺めている。
 と、奈々が持つタオルが、胸元をまさぐりだした。
「も、もういいよ。あとは、自分でやる」
「遠慮しないで、朱美ちゃん」
 ぷにぷにと、やや小ぶりながら形のいいバストを嬲るようにしながら、奈々が言う。
(うゎ……な、なんだこれ……んっ……!)
 じわーん、と胸から全身に広がるような性感に、知巳は、思わず身をすくめていた。
 この前、戯れに自分の乳首をいじってみたときとは明らかに違う。くすぐったいような、それでいながら、ひたひたと何か温かいものが少しずつ満ちていくような、そんな感じだ。
「朱美ちゃん……ちくび、たってきた……」
「え……」
 奈々の指摘に、知巳は、かあっと頭に血が昇るのを感じた。
「可愛い……っ」
 そう言って、奈々は、がまんできなくなったように、タオルを捨て、左の乳首に吸いついた。
「ンあっ!」
 柔らかな唇で、半ば勃起した乳首を吸引され、知巳は思わず声をあげてしまっていた。
 甘い衝撃が、じんじんと電気のように体に流れる。
 力の抜けた体を、奈々が、ベッドの上に押し倒す形になった。
「だ、だめだよ、奈々……」
 ちゅうちゅうと交互に乳首を吸われ、知巳は制止の声をあげる。
 しかしそれは、普段の知巳の口調や朱美の声とはかけ離れた、ひどく弱々しいものだった。
「あけ……じゃなくて、兄貴、家の中に、いるんでしょ?」
「知巳ちゃんなら、夕飯の買い物してくるって出かけちゃったよ」
 そう言ってから、くすっ、と微笑み、奈々は胸への愛撫を再開した。
 未知の快楽に、心臓の動悸が早鐘のように高まり、知らず知らずのうちに体がうねうねとシーツの上でくねる。
 それを押さえこむように、奈々は、その小さな体を重ねてきた。
「朱美ちゃん、ごめんなさい……あとで、どんなバツでも受けるから……」
 舌足らずな声でそう言いながら、奈々は、ふにふにと優しく乳房を揉み、乳首の周囲をくるくると文字通り舐め回す。
 充血し、かたくしこった乳頭が奈々の唾液に濡れている様に、知巳は、不覚にもますます興奮してしまう。
「はぁ……ン」
 ひとしきり胸への愛撫を一段落させた奈々は、ゆっくりと上体を起こした。
 そして、セーラー服の上を、手早く脱ぎ捨てる。
「奈々……」
 次第にあらわになっていく奈々の肌に、知巳は、思わず目を釘付けにしていた。
 初恋の少女の、その幼い顔に不釣合いな豊かな乳房を包む、白いブラ。
 奈々は、そのブラのホックをためらうことなく外した。
 そして、羞恥に頬を染めながらも、どこか誇らしげに、その胸を突き出すようにする。
「あ……」
 知巳は、思わず息を飲んでいた。
 小さな銀色の金属球を棒状の金具が結ぶ、バーベル型といわれるピアス。
 そのピアスのシャフトが、奈々の、可憐なピンク色の乳首を貫いていたのだ。
「見て、朱美ちゃん……」
 そう言って、奈々は、知巳が頭を乗せる枕の両脇に手を置いた。その重たげな乳房が、ちょうど目の前に来る。
「奈々のおっぱい、こんなにイヤらしくなっちゃった……」
 マシュマロを思わせる白く柔らかな乳房の頂点にある乳首が、ひくひくと震えているように見える。
「い、いたく、ない?」
 ぐるぐると頭の中で血液が旋回しているような感覚を感じながら、知巳は、思わずそんなことを訊いてしまった。
「キズも治ったし、ぜんぜん痛くないよ……それより、きもちイイの」
 んふっ、と奈々は、その幼い顔に淫らな笑みを浮かべた。
「普段は、そんなでもないんだけど、何かあって乳首のこと意識すると、スゴいの……つーん、って、引っ張られるみたいな感じで……奈々、学校のトイレで、いっぱい一人エッチしちゃったよ」
 奈々の告白に、知巳は、何かが自分の中でどばあっと溢れるように感じた。
(わ、わ、わ……なんだ、これ……?)
 粘性の高い温かな何かが身の内からこぼれ出る感覚に、知巳はパニックになりかける。
(やべ、どうしよ……俺……俺……)
(ア、アソコが……)
(濡れて、る……)
 全身が熱くなり、その中でも特に下腹部が、じんじんと疼きながら火照っている。
 と、腰のあたりをまたぐようにしていた奈々が、ぎゅっ、と体重をかけてきた。
 腰と腰が、ふわりと広がった奈々のスカートの中で、密着する。
「朱美ちゃん……」
 ピンク色の小さな舌で唇を舐めながら、奈々が朱美の名を呼ぶ。
「奈々……」
 知巳は、まるで吸い寄せられるように、奈々の巨乳の頂点に唇を寄せていた。
 歯に、ピアスの球が少し触れる。
「あうン!」
 声をあげ、ぎゅっ、と奈々は知巳の頭を抱きしめた。
 奈々の柔らかな胸が、知巳の顔をふさいでしまう。
「んうぅ……」
 その甘美な感触に身を任せそうになりながら、呼吸を維持するために、知巳はくるりと体を入れ替えた。
 奈々が下に、知巳が上になる。
(彩乃先輩……ごめんなさい……俺……)
 奈々の乳房をまさぐり、ピアスごと乳首を舐め回しながら、知巳は頭の片隅でそんなことを思っていた。
(……ごめんなさい……浮気、しちゃってる……)
 しかし、ピアスのせいで敏感になった乳首を責められ、甘く声をあげる奈々を前にしては、もう体を止めることはできない。
「き、きもちいいよ、朱美ちゃん……おっぱい、すごく感じるの……」
 朱美の調教の成果か、あからさまにそんなことを言いながら、奈々は、その小さな体を身悶えさせた。そのたびに、まろやかな曲線を描く双乳が、誘うようにふるふると揺れる。
「奈々……奈々ぁ……」
 名前を呼びながら、口の中で乳首ピアスを転がすように刺激すると、奈々は体を反らせて嬌声をあげた。
 そして、大胆な手つきで、知巳の脚の間に手を差し込んでくる。
「あゥ……っ!」
 その部分をパジャマの布越しに触られ、知巳は奈々の胸に突っ伏すような姿勢になってしまった。
「すっごぉい……朱美ちゃん、びちょびちょになってる……」
 くにくにと指でいたずらしながら、奈々が声をあげる。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
 驚くほど敏感になった女のコの部分を刺激され、知巳は、断続的に声をあげてしまっていた。自分でも恥ずかしくなるような、甘い喘ぎ声だ。
(俺……こんな声、出しちゃうなんて……)
 そんな屈辱を感じながらも、自然と声が漏れるのを止めることはできない。
「今日の朱美ちゃん、ホントに感じやすいね? カゼのせい?」
 自らの豊かな乳房に顔をうずめ、はァはァと喘いでいる知巳に、奈々が声をかける。
「たまにはいいよね、こういうのも……」
「う、うんッ。ン、あ、あん……ひゃぁン……!」
 しかし知巳は、まともに返事を返すことができない。
「でもでも……朱美ちゃんばっかり感じちゃって……ズルいよ……」
「あ、ゴ、ゴメン……」
「奈々のも、いじって……」
 そう言って、奈々は、腰を浮かした。
 奈々の意図を理解して、知巳は、そのスカートを脱がそうとする。
「ちょ、ちょっと、破けちゃうよ!」
 ファスナーもおろさずにスカートを引き摺り下ろそうとする知巳に、奈々が言う。
「ゴメン……」
 そう言って、丁寧にホックを外し、ファスナーを下ろしてから、学校指定の紺色のスカートを脱がす。
 その間、奈々も、器用に知巳のはいているパジャマの下を脱がしてしまっていた。
 奈々も、知巳も、ショーツ一枚のあられもない姿になる。
 二人のショーツとも、中身がすけて見えるほどに、ぐっしょりと濡れていた。
「んふ、パンツも脱いじゃお」
 珍しく自分がリードしているのが嬉しいのか、笑みを含んだ声で奈々が言う。
「うん……」
 そう返事をして、横たわったままショーツを脱ぐ奈々の傍らで、知巳もショーツを脚から抜いていった。
 そして、全く陰毛の生えていない、ひどく幼い外観の奈々の恥丘に、思わず目を奪われてしまう。
 写真やビデオで見て知っていたとはいえ、実際に目にすると少しショックだ。
(奈々……やっぱまだ、子供なんだよなあ……)
 そして、やや見当外れなことを考えてしまう。
「朱美ちゃん……」
 そんな知巳の思いなど知らぬげに、奈々は、両腕を広げて甘えた声をあげた。
 無言で知巳は奈々の体にかぶさる。
 そして、驚くほど自然に、唇を重ねてしまった。
(あ……)
 知巳の胸を、ちくりと罪悪感が刺す。しかし、やはり身の内の衝動を止めることはできない。
(それに、もう俺……元に戻ることはできないかもしれないんだし……)
 そんな言い訳めいたことを考えながら、ヤケになったように、奈々の舌に自らの舌を絡めた。二人の少女の唇の間で起こるちゅぴちゅぴという音が、部屋に響く。
 再び奈々が、知巳の秘所に指先を伸ばした。
「うッ……」
 唇を重ねたまま、知巳はうめいてしまう。
 そして、お返しとばかりに、奈々のその部分に手の平を当てた。
 無毛のヴィーナスの丘の奥で、熱い粘膜が息づいている。その部分はすでに愛液に濡れ、知巳の指先にぴったりと吸いついた。まるで、触れられるのを喜んで迎え入れているかのようだ。
「う……うン……んぐ……ンむ……ふン……」
 ちゅっ、ちゅっ、とキスを繰り返しながら、二人は、互いの秘苑をしなやかな指先でまさぐった。
 あとからあとから溢れ出る熱い体液が、互いの指先を濡らし、きらきらと光らせている。
 奈々と知巳は、互いにその脚を絡ませあうようにしながら、体の奥から湧き起こる快感に夢中になった。
(あ……す、すごい……こんなふうなんだ……)
 特に知巳は、始めて感じる女の性感に、文字通り溺れそうになっている。
(熱くて、痺れて……このまま融けちゃいそうな感じがする……)
 と、その時、奈々の悪戯な指が、莢に隠れていた快楽の小突起に触れた。
「ふぐっ!」
 全身に電流を流されたかのように、びくっ! と知巳は体を震わせる。
「も〜、朱美ちゃん、ひっどーい」
 奈々が、なじるような声をあげる。知巳が、口内にあった奈々の舌に、思わず噛みついてしまったのだ。
「ご、ごめん……」
「お返し、しちゃうからぁ♪」
 どこか小悪魔じみた顔でそんなことを言いながら、奈々は、クリトリスを納めた莢を指先で軽く挟み、くにくにと弄んだ。
「あ! ンわっ! ひゃっ! きゃあ!」
 知巳は、奈々に覆い被さった姿勢で、次々と屈辱的な悲鳴をあげてしまった。
 鋭い快美感に突き上げられ、びくっ、びくっ、と体が勝手に震えてしまう。もはや奈々を攻めるどころではない。
「あぁン……朱美ちゃん、すっごく可愛い……っ」
 指先だけで普段は強気の従姉の体を自由に嬲ることに成功した奈々は、うっとりとした声で言った。
 そして、首筋や胸元、乳首をちゅうちゅうと吸いながら、クリトリスに対する攻めを徐々に強くしていく。
「あああッ! ひあ! ンわああああッ! ああああッ!」
 知巳は、自分より小さな奈々の体にすがりつくようにしながら、声をあげ続けた。
(すごい……すごい……っ! どうしよう……俺……俺、どうすればいいんだよおっ!)
 男の時と違って、身の内に湧いてくる快感を制御することができない。そんな、焦りを伴った感覚に、知巳はいいように翻弄されていた。
 そもそも、どうすればイけるのか、どういうことがイったことになるのか――
 射精というはっきりとした現象を伴わない女性の体がもたらす底知れぬ快楽に、知巳は、はっきりと恐怖を抱いていた。
 そんな知巳の、すっかりほころんだクレヴァスに、さっきまでクリトリスを愛撫していた奈々の指先が、ずるん、と一気に侵入する。
(犯される……!)
 そう思った瞬間に、知巳の意識を縛っていたいくつもの枷が、次々と砕け散った。
(あ、イク……俺、朱美の体で……イク……ッ!)
 ぴゅうううううっ、とまるで小水のように潮を吹き、奈々の手をびっしょりと濡らしながら、知巳はびくびくと体を震わせていた。
「あ、ああ……あッ……あああ……ッ!」
 高く声をあげたいのだが、発声どころか呼吸すらままならない。
 そんな知巳の意識を、快楽の大波がさらっていく。
「あ……ンああぁ……はぁ……あぁ……ン……」
 知巳は、ひどく満足げな声をあげながら、温かな快楽の海の底へと沈んでいった。



 そして知巳は、再び、淫夢の中にあった。
 四つん這いになった全裸の少女のお尻を後ろから抱え、じっとりと濡れたその秘部に、ペニスの先端を押し当てている。
 ペニスがある、というだけで、奇妙な安心感があった。そんな自分に、思わず苦笑いをしてしまう。
 そんな笑みを浮かべたまま、ぴしゃりと、目の前のお尻を叩く。
 その白かったヒップは無残にも赤く染まり、これまで激しいスパンキングを受けていたことを物語っている。
 ――ほら、おねだりはどうしたの?
 そんな言葉で、自分が少女を嬲っている。
 ――知巳ちゃん、もう、許して……。
 そう言って、少女が、涙を一杯に溜めた目で、こちらを向いた。
(奈々……)
 少女は、奈々だった。
 その両手首は革製の手錠で戒められ、乳首には銀色のピアスが光っている。
 そんな格好で、おどおどとした流し目をこちらによこす奈々に、ぞくぞくとサディスティックな欲望が高まっていく。
 ――ふふっ……。
 笑みを浮かべながら、固く勃起したペニスの先端でクレヴァスの入り口をまさぐる。すでに蜜を溢れさせているその部分からは、新たなしずくがしたたり、ぽたぽたと床に落ちていった。
 ――あんあんっ……ダメ……な、奈々、もうガマンできないよォ……っ!
 ――だったらきちんとお願いしなよ。いつまでも甘えんぼじゃダメだよ。
 ――ひ、ひどいよォ、知巳ちゃん……。
 恨みっぽくそう言う奈々のお尻を、またもやぴしゃりと叩く。
 ――ンあああ……っ。
 奈々のあげる声は、しかし、悲鳴よりも嬌声に近かった。
 ――奈々は変態だから、叩かれて感じちゃってるんだよね?
 ぴしゃっ、ぴしゃっ、とスパンキングを続けながら、言葉によっても嬲る。
 苦痛ではなく快感で、自分は奈々を追い詰めているのだ。
 その証拠に、奈々の無毛のクレヴァスからは、まるで失禁してしまったかのようにとめどなく愛液が溢れている。
 ――ほら、早く言わないと、オレもやる気なくしちゃうよ?
 そう言いながら、言葉に反して熱くたぎったペニスを、すっと奈々のその部分から離した。
 まるで、奈々の浅ましさをしめすように、亀頭部に絡んだ愛液が糸をひき、二人の陰部をつなぐ。
 ――あぁ、いやぁン!
 慌ててペニスを追いかける奈々のヒップを、がっしりと両手で固定する。
 ――ほら、お・ね・だ・り・は?
 そして、その小さな背中に覆い被さるようにして、奈々の耳元に囁く。
 ――ああ……お願い……奈々に、入れてえ……っ。
 半泣きになりながら、奈々が、恥ずかしい要求を口にする。
 ――何を、どこに入れるの?
 ――オ、オチンチンっ……知巳ちゃんのオチンチンを、奈々のオマンコにいれてください……っ!
 ――分かったよ、奈々……。
 そう言って、焦らしに焦らした奈々の膣内にずぶずぶとペニスを挿入していく。
 ――ンあああああッ! あ、熱いぃッ!
 奈々が、高い声をあげながら、背中を弓なりに反らす。
 そんな奈々の靡肉が、きゅるきゅるとシャフトに絡みついてきた。
 まだ狭い膣内に、ペニスを根元まで埋め込み、中の感触をじっくりと味わう。
 ――どんな感じ? 奈々。
 ――あア……。と、知巳ちゃぁん……。
 ――言わないと、抜いちゃうよ?
 そう言いながら、ずりずりとペニスを引き抜いていく。
 ――ああン! いやア! 言う、言うからっ!
 きゅっ、と膣肉を締めつけ、ペニスを逃すまいとしながら、奈々が慌てた声をあげる。
 ――どうなの?
 ――お、おっきくて……あつくて……すごく、感じちゃう……ああっ、朱美ちゃん、ごめんなさいっ!
 ――朱美に謝ることなんてないよ。あいつも、こうなることを望んでたはずだから。
 ――え?
 不思議そうな声をあげる奈々のそこに、ぐん、とペニスを突き込む。
 ――ひああああああッ!
 ――ほら……こうすると、もっと気持ちいいでしょ?
 反り返ったペニスで抽送を繰り返しながら訊くと、奈々は、こくこくと肯いた。
 そんな奈々のお尻を優しく撫でながら、ぐっ、ぐっ、と抽送を続ける。
 ――ああン……と、知巳ちゃん……知巳ちゃぁん……。
 ちらちらと後ろに視線をよこしては、湧き起こる快感に顔を突っ伏す、ということを繰り返しながら、奈々が甘い声をあげる。
 そんな奈々の背中に再び覆い被さり、豊かな胸に手を回す。
 たっぷりとした量感の乳房を両手で揉むと、ころころと掌で乳首とピアスが転がった。
 ――ンあああっ! そ、それ、それキモチイイっ!
 固くしこった乳首をピアスで痛いほどに刺激され、奈々が悲鳴のような高い声をあげた。
 そんな奈々の胸元で手を重ね、ぐっ、と上半身を抱え起こす。
 ――あっ? ンああっ!
 膝立ちの状態で後ろから犯される体位になり、奈々がとまどったような声をあげる。
 かまわず、亀頭の裏側で膣の前壁をぐりぐりと刺激すると、奈々の表情がさらに一転した。
 ――そ、そこは……あ……ンあああああッ!
 目許を赤く染め、イヤイヤと頭を振りながら、切羽詰った声をあげる。
 ――ほら、ここ……何て言うんだっけ?
 突き上げるような抽送の煽りで、ぷるぷるとゆれる双乳を目でも楽しみながら、そんなことを訊く。
 ――え、えっと……ンあああッ! じ、Gすぽっと……あ、んンッ! ンうううっ!
 ――正解♪
 ちゅうっ、とうなじにキスをしてからますます激しく腰を使う。
 ――あッ! ダメえ! お、おもらししちゃうッ!
 そう言われても、腰の動きは止まらない。
 ――してみなよ、奈々……。すごく気持ちイイよ……。
 耳元でそう誘惑するように囁くと、奈々の小さな体が、ぷるぷるぷるっ、と震えた。
 ――ダ……メぇ……っ!
 そして、ぷしゃあああっ……と激しく潮を吹いてしまう。
 そんな奈々を後ろから抱きすくめ、ラストスパートに入った。
 ――あ、イヤあ! お、おもらし止まんないよおっ!
 無毛のその部分からぴゅるぴゅると透明な体液を迸らせながら、奈々はびくびくと体を痙攣させる。
 ――イ、イクっ! イクう! イっちゃうよーっ!
 きゅうううっ、とひときわ強く、奈々のそこがペニスを締めつける。
 その力にどうにか逆らって、ずるっ、と愛液にまみれたペニスを引き抜く。
 ――ンわああッ!
 その衝撃で、奈々は、がっくりと倒れてしまった。
 その奈々の体めがけ、ペニスが、びゅるびゅると大量のスペルマを放つ。
 ――ンあああっ……あ……ひあああン……。
 熱い迸りを全身に感じながら、未だ絶頂の中にある奈々は、ひくン、ヒクン、と体を痙攣させた。
 そして、その股間から、ちょろちょろと本物の小水を漏らしてしまう。
 知巳は、そんな奈々を、ぼんやりと眺めていた。



 がばっ、と知巳はベッドから半身を起こした。
 床に、奈々が全身を白濁液にまみれさせた姿で横たわっている。
 そしてその傍らに、ワイシャツをまとったままで下半身剥き出しの自分の体が、膝立ちで立っていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……あ、起きた?」
 にっ、と背筋が寒くなるような笑みを浮かべ、自分の顔が笑みを浮かべる。
 朱美の、笑みだ。
「お、お前はッ!」
 知巳は、全裸のまま、朱美に踊りかかっていた。
 朱美が、すっと身をかわす。
 が、やはり、葛城流に関する蓄積に付いては、知巳のほうが上だった。不慣れな妹の体を操りながらも、朱美の予想をはるかに越える速度で、右手を伸ばす。
「!」
 鉤状に曲げられた指先が襟首を捉え、強引に引き寄せる動きに連続して、右の肘を頬に叩きこむ。
 相手が着衣の状態を想定した、強制的なカウンター技――葛城流で“弓月”と言われる肘打ちだ。
 口の端から血を流しながら、朱美が倒れる。
「な、何すんだよ……歯が折れるよぉ」
「黙れ、この……」
 怒りの余り、まともに口もきけない、といった状態で、知巳が朱美につかみかかろうとする。
「やめてえ!」
 そんな知巳の腰に、いつのまにか起きていた奈々が抱きついた。
「やめて朱美ちゃん! 二人とも、ケンカなんかしないでえ!」
「で、でも……」
 奈々と、そして目を丸くしている朱美を交互に見ながら、知巳が言いかける。
「知巳ちゃんは悪くない! 悪くないのっ! ずっと、知巳ちゃんを仲間はずれにして……あたしたちのほうがいけなかったんだよっ!」
 ぽろぽろと涙をこぼしながら、奈々が、強い声で訴える。
「なのに……やだよ……二人がケンカするなんて……そんなの、やだようっ!」
 朱美は、茫然とした顔で、そんな奈々の顔を見つめていた。
 知巳が、がっくりと肩を落とす。
 そして奈々は、緊張の糸が切れたのか、まるで小さな子供のようにわあわあと声をあげて泣き出した。



 いつまでも泣き止まない奈々をどうにかなだめすかして家に帰らせた頃には、すでに日が傾いていた。
 奈々を送り出した玄関口で、じろりと、知巳が朱美をにらむ。
「……」
 朱美は、決まり悪げな顔で、目を伏せている。
「どういうつもりなんだよ、朱美……」
 険のある口調で、知巳が言った。
「どういうって……」
「奈々のことだよ」
「それは……ごめん……兄貴を、悪者にしちゃったね……」
「そんなこと言ってんじゃねえよ」
 ぐっ、と拳を握りながら、知巳が言う。が、ケンカはしないとさっき奈々に指切りまでさせられた身なので、手を出すようなまねはしない。
「俺がどうこうより、奈々が傷つくだろ。そういうこと、考えなかったのかよ」
「か……考えたよ」
「じゃあ、なんで、そんなことを……」
「――憎かったから」
 ぼそっ、とつぶやいた朱美の予想外の言葉に、知巳は思わず絶句していた。
「憎かった……お兄ちゃんに、いっぱい可愛がられて、なのに、お兄ちゃんの気持ちを傷つけて……そんな奈々が憎かった……可愛かったけど、憎かったの……」
 知巳は、朱美の言葉が理解しきれない様子で、ぼんやりと立ち尽くしていた。
 衝撃のあまり、いつもの“兄貴”が“お兄ちゃん”になっていることにさえ、気付いていない。
「ボク……お兄ちゃんが……好きだったから……」
 そしてとうとう朱美は、顔を覆って泣き出してしまった。


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