第六章
夜中に目が覚め、俺は、しばし微睡みながら天井を見つめた。
まるで、金縛りにでもあったように体が動かず、世界の上下を区別する平衡感覚すら、今は喪失している。
これこそ、まさに、頭は起きてても体が眠ってるって状態か。
自分の存在そのものが何とも不安定に感じられる中、奇妙なことに、不快も不安も不満も感じない。
瞬きをして、瞼だけは動くことを発見。俺は、そのまま目を閉じた。
自らの意識を暗黒に閉じ込めると、ぐるぐると世界が回転しているような錯覚がさらに強調される。
まるで、自分の体を、誰かにいいように運ばれているような感覚。
おお、こりゃすごい、なんて暢気に思っているうちに、次第に気が遠くなっていく。
混濁した意識は混線し、混沌の中を混乱しつつ混迷する。
まるで、空の上に浮かぶ粘っこい海の中を、上昇しながら沈んでいるような――
――そして、俺は、境界を超え、再び眠りにつくとともに、目を覚ましていた。
「う……」
目を覚ましたとたんに、吐き気が込み上げた。
その上、体中のあちこちが重苦しく痛い。まるで二日酔いのような気分だ。
こんなことなら、目を覚まさなきゃよかった、なんて愚にもつかないことを考えながら、自分の状態を確認する。
「あ?」
俺は、何やら堅い材質の椅子に座らされていた。
ただ座らされているだけじゃない。両手首、両足首が、金属の輪で戒められている。しかも、手首を戒める輪は椅子の肘掛けに、足首を戒める輪は椅子のごつい脚につながれていた。
要するに、俺は、全身を拘束されている状態なのだ。
場所は、薄暗い部屋だ。部屋全体が大きな円筒形をしていて、壁は石材が剥き出しである。何だか、塔の一室を思わせる。
そして、その円筒形の部屋の中には、怪しげな道具の数々が所狭しとひしめいていた。
何が入っているのか見当もつかない陶器の壷に、天井からぶら下がった束ねられた草。目の前にある木製のテーブルの上には、不気味な色合いの液体に半ば満たされたフラスコやらビーカーやらが並べられている。部屋の端の暖炉には黒い鉄製の大釜がかけられ、大きな本棚には革で装丁された書物のほかに、動物の頭蓋骨らしきものまで並んでいた。
こいつは、誰がどう見たって魔女の隠れ家じゃないか、と思ったその時に、そいつが現れた。
「ミスラ……!」
銀色のベリーショートの髪に、キツい感じのオレンジ色の目の、ここアイアケス王国の第三王女は、さっきまで着ていた丈の短い青いワンピースの上に、真っ黒いマントをまとい、ご丁寧にもつば広のとんがり帽子まで被ってた。
しかし、こいつがここにいるってことは――
えーと、つまり俺は、こいつが一服盛ったお茶を飲んで意識を失い、ここまで運ばれたってことか?
お茶とお菓子を運ぶだけにしては大袈裟なワゴンだと思ったが――あれは、俺を運搬するためのものだったわけだ。
「気安く呼ばないでくれるかな」
ミスラが、非友好的な表情で、メガネの奥の双眸を細める。
「気安かろうが気難しかろうが知ったことか! これ、いったい何の冗談だよ!」
俺は、自分の両手足を戒めている金属の輪をガチャつかせた。うう、これ、かなり頑丈な作りだぞ。
「冗談でこんなことするわけないだろ」
それだけ聞けばもっともなことを言いながら、ミスラが、ちらりと部屋の一角に視線をやる。
そこには、何本もの鎖に縛り付けられた状態で宙からぶら下がってるサタナエルの剣があった。
「ホント、危険な剣だよ。邪悪な魔力が吹きこぼれてる。あの男の遺品だからって、どうしてイレーヌ姉上は、あんな魔剣に国の運命を賭ける気になったんだろう」
サタナエルの剣がまっとうなアイテムでないことは確かだと思うので、俺の方は特に反論はない。
だが、だからって、成り行きでそのオーナーになっちまった俺にまでこんな仕打ちをするのは無茶が過ぎないか?
「――僕はね、キミのことも、信用してないよ」
俺の思考を読み取ったかのように、ミスラが、こっちに視線を戻しながら、言う。
「母上や姉上たちにどうやって気に入られたのか、考えたくもないけど――僕は、キミのこと、淫魔の類いだと思ってる」
「インマぁ?」
「そう。インクブスだとか、そういう邪悪で低級な精霊だってね。キミから感じられるオーラには、淫魔や夢魔に近い相がかすかに見て取れる……。でも、僕は誤魔化されたりなんかしないよ」
「――お前の言ってることはよく分からんが、誤解されてることだけは確かだな」
「フン……下手な芝居だね。キミは、母上や姉上をたぶらかすために遣わされた熾皇帝ロギのスパイなんだろう?」
「だから誤解だって。ロギなんてやつには会ったこともねーよ」
渋面を作ってから、俺は、ちょっと心配になって改めて周囲を見回した。
「もしかして、お前、俺を拷問にでもかける気か?」
やはり、そういう目に遭うのは御免こうむりたい。相手が、それなりに覚悟を決めて守ろうとしている王国のお姫様とあっては、なおさらだ。
「僕は、そんな野蛮なことはしないよ」
「今やってることも充分以上に野蛮だぞ」
俺の指摘に、ミスラは挑発的な笑みを浮かべた。
「何とでも言えばいいよ。キミの口車には乗らないからね」
そんなふうに言いながら、ミスラが、俺の座らされている椅子のすぐ前に置かれたテーブルの上に腰かける。まったく、行儀が悪いぞ。
なんて、暢気なことを考えてる俺に、ミスラは、テーブルの上においてあった薬ビンらしきガラスの容器の中の液体を、ぴしゃっ、とぶちまけた。
「わぷっ! な――何をしやがる!」
妙に甘たるい匂いのするそれをもろに顔面にかけられ、俺は、抗議の声を上げた。
「さあ……何をしたんだろうね」
ミスラは、クスクスと笑いながら、俺の目の前で脚を組んだ。って、うわ、生足かよ。
ミスラがマントの下に着ているワンピースはやたら丈が短い。しかも、靴下無しのサンダル履きだ。イレーヌさんの太腿のようにムッチリした感じはないものの、すらりとした脚がマントの裾からにゅっと現れて組まれてる姿には、どこか倒錯的な色気のようなものがある。
って、何考えてるんだ? こんな状況で、しかも俺をこんな目に遭わせてる女相手に、どうして色気を感じるんだよ!
だが、しかし、俺は、このミスラのマントの中に隠れた体が、小柄な肢体に似合わぬ巨乳であることを知っている。
その上、ミスラの生意気そうな顔に浮かぶ、どこか小悪魔じみた表情までが、俺のスケベ心を妙に刺激するのだ。
いや、待て待て。何かおかしい。頭の中がぼーっとして、それなのに心臓がバクバクいってる。体全体が、妙に熱い。
「……効いてきたかな?」
少年ぽい口調で話す、その化粧っ気の無い桜色の唇の動きが、なぜか、妙に生々しく、艶っぽい。
「て、てめ……また、何かクスリを……」
自然に荒くなった息で、言葉が途切れる。
目の前にある、細い脚。その、静脈が透けそうなほどに白い肌。ミスラの抑えた笑み。こっちを見るオレンジ色の瞳。
「淫魔の正体を暴くには、その本性を暴走させるのが一番だからね……ふふふっ」
ミスラの言葉の意味の半分も脳に届かない。目の前の風景がグルグルする。
全身を循環する血液の温度と速度が増し、それが、俺の体の奥底に集まって、強烈な圧力でもって迫り上がっている。
「いやらしい……こんなにしてさ……」
ぎゅっ、とサンダルを履いた右足が、俺の股間を踏んだ。
「ぐっ……!」
当然感じるはずの痛みが、それとはちょっと違う強烈な刺激となって、俺の全身を痺れさせる。
そして、俺は、ようやく、自分がズボンの中のペニスを無茶苦茶に勃起させていることに気付いた。
「全く……恥ずかしくないの? こんなにおっきくさせてっ……!」
ミスラが、頬を紅潮させ、瞳に妙な光を浮かべながら、俺の股間をサンダルの底でぐりぐりと踏みにじる。
「う、うぐっ……やめ……う、ううっ……」
食い縛った俺の歯の間から、獣じみた呻き声が漏れた。
やばい。こいつは実にやばい。俺は、こんな状況で猛烈に興奮してしまっている。
たとえどんな刺激であれ、今の俺のペニスは快楽と錯覚してしまう。この勘違い女に足蹴にされるような行為でさえ、だ。
脳を灼くような屈辱と、神経を削るような羞恥。それが、どこでどう化学反応を起こしたのか、俺の肉棒をさらに堅くいきり立たせる。
「ほら、ほらっ……さっさと正体を現しなよ! この低級淫魔っ……!」
このシチュに倒錯的な興奮を覚えているのか、ミスラが、その右足をさらに激しく動かす。
すでにサンダルは脱げかけ、布越しに俺の勃起を捏ね繰り回しているのは、ほとんど素足であった。
「これが……これが、イレーヌ姉上の体を汚したんだねっ! いやらしい! いやらしい! いやらしいっ!」
肉棒を踏み潰さんばかりに、ミスラが、足に力を込めた。
この足があと数センチ下にいったらと思うとぞっとするが、その恐怖すら、強烈な快感に上書きされ、どこかへ行ってしまう。
「こ、のっ……いい加減にしろっ……! マジで怒るぞ……!」
ってことは、まだ俺はマジギレしてなかったのか。お人好しなことだ。
――なんてことは思わない。すでに脳は股間への刺激で飽和状態。まともな思考ができる状態じゃない。ただ、真っ赤に燃え盛る欲望とも激情ともつかないものが、俺を内側から焼き焦がしている。
ガキガキと、異様な金属音が部屋に響いている。
俺の四肢を戒める金属の輪がたてる音だ。俺は、知らず知らずのうちに、この椅子から逃れようと空しくもがいていたのである。
「テメエ……外せ! これを外せッ! ど――どうなっても知らねえぞッ!」
「ハン……下らない脅し文句だねっ!」
ミスラが、熱い血液で膨れ上がった俺の肉棒を、ギリギリと捻り踏む。
「あいにく、その椅子は魔力の込められた特別製なんだよ。キミみたいな淫魔風情はおろか、上級魔神ですら、一度捕えられれば――」
刺激。脳天を突き抜ける快楽。ミスラが何を言ってるか全く不明。未だ射精に至っていない事が信じられない奇跡。あまりにも大きすぎる欲望が出口を求めて体内で暴れ狂っている状態。
その時――
俺は、赤く染まった視界に、自らの背中を見ていた。
いつの間にか椅子の戒めから脱出した俺が、まるで、飢えた肉食獣のようにミスラに踊りかかって――
「きゃんッ!」
静止していた時間が元に戻り、妙に可愛らしい悲鳴と、派手な破砕音が鼓膜を震わせた。
悲鳴は、ミスラのもの。破砕音は、テーブルが倒れ、上に乗っていたガラス容器が砕け散った音だ。
そして、人工的な甘たるい匂いが充満する中――俺は、床の上に、ミスラの小柄な体を組み敷いていた。
「う――うそ――どうして――?」
驚きに目を見開いたその顔が、身震いするほど可愛らしい。
そう――可愛くて可愛くて、思わず犯したくなるほどだ。
「ひゃうっ……!」
何かの気配を察したのか、ミスラが、俺の下から逃れようと身をよじる。
俺は、四つん這いになって逃げようとするミスラのお尻を捕まえ、思い切り手前に引き寄せた。
「いやーっ!」
またもや可愛い悲鳴を上げるミスラのワンピースを、その上のマントごと、大きく捲り上げる。
成長途中のミスラのヒップは、コットン地らしいあまり色気のない下着に包まれていた。
当然、それを引き摺り下ろし、ミスラの可愛いお尻を剥き出しにする。
「やだっ! やめろっ! やめろおっ! な、何する気だっ!」
さっき俺にあれほどのことをしたくせに、ミスラが、ほとんど泣き声になって喚く。だが、そんな様子もゾクゾクするほど可愛い。
俺は、薄皮を剥いた桃を思わせるミスラのヒップを抱えなおし、自らはあぐらをかきながら、ぐっと持ち上げた。
「ふわわっ!」
ミスラの体は軽く、その力は笑ってしまうほどに弱い。結局、俺が意図したとおりのポーズを、ミスラは取ることになる。
それは、足を大きく開いて前屈し、お尻を俺の顔に向けて突き出すような、そんな屈辱的な格好だった。
「い、いやあぁ〜!」
可愛い。可愛い。あのクソ生意気なミスラがこんな可愛い声を上げるとは思わなかった。
そんな感動を味わいながら、目の前のミスラの股間を凝視する。
まったく色素の沈着のない、ぴったりと閉じあわされた、ぷっくりとしたアソコ。そのさらに上には、ココア色のアナルが、恥ずかしげにヒクついている。
陰毛は、髪よりちょっと濃い銀灰色で、しかもそれがうっすらと生えているだけだ。
「な、な、何見てるんだよっ! はなせ! はなせ! はなせ〜ッ!」
じたばたとミスラがもがく。
俺は、ぷりぷりと暴れるお尻を両手で押さえつけ、その中心におもむろに顔を寄せた。
そして、閉じたままのスリットを、ぞろりと舐め上げる。
「ひやあああああ!」
この悲鳴。この反応。そしてこの舌に残る感触。
俺は、夢中になって、ミスラの秘唇を舐めしゃぶった。
「や、やだっ! 舐めてる! 舐めてるぅ! 変態っ! この変態! やめろぉ〜!」
もちろん、やめない。やめる代わりに、親指を使って、俺の唾液まみれになった秘唇をくぱっと左右に割り広げてやる。
「きゃああああぁ〜ッ!」
身も世もないような悲鳴を上げるミスラの粘膜に、直接、舌を這わせる。
「ひやや、や、やめろ、やめろぉ〜! あっ、あううっ、うく……やだ……こんなのやだぁ……あうっ、うく……うああっ……やめて……ひ、ひぐっ、ひううっ、やめてぇ〜!」
舌先に感じる、ミスラの柔らかな花びらの感触。それを、夢中になって堪能する。
まるでミルクを舐める犬のように一心不乱に、舐める。舐める。舐める。舐める。
すると、次第に唾液以外の潤みが、ミスラの秘唇の中心から溢れ出てきた。
「あうううぅっ……やだぁ……やめて……やめてよぉ……あうっ、うく……ンああっ、あふ、あふっ、あふぅううぅ……」
ミスラの声が甘くとろけ、ますます可愛くなっていく。
「あ、あぁっ……はっ、あくっ、うっ、うあああっ……い、いやだぁ……いやなのにぃ……いやなのにぃ……うんっ、うふっ、うぅんっ、うく……ふっ、ふっ、ふく……ふっ、んふっ! んふっ、んふうっ……!」
声を漏らさないようにと必死に口をつぐむミスラの鼻から、興奮した仔犬のような息が漏れている。
俺は、ますます蜜を溢れさせているミスラのクレヴァスを舌で抉り、その中心部に硬く尖らせた舌先を捻じ込んでやった。
「んふっ、んふぅ、ふ、ふくっ……ふン、ふぅン、ふン、ふン……うふ、うふっ……んんんんんっ……う、うぅ、う、うあ、うぁああああああ!」
耐え切れなくなったように声を上げるミスラの秘部に口をつけ、奥の肉襞ごと、愛液を啜る。
「あうっ、うっ、うああっ! す、吸うなっ! や、やっ、やはあっ、はひ、はひぃ、す、吸うなぁ〜! あ、あああっ、あひぃ……ンやっ! やン! んやぁン! ンにゃ! んにゃぁ〜!」
仔犬の次は仔猫かよ。
そんなことを思いながらも、ミスラの悲鳴を耳で、そして秘裂を口で、存分に堪能する。
「にゃううっ……あ、あううっ、うく……ンあ、ンああ、ンなああっ……も、もうダメ……もうダメぇ〜!」
こんこんと溢れる愛液の泉のすぐ下で、肉の莢に守られていたクリトリスが、かすかに顔を出している。
俺は、そこに舌を当て、小刻みに震わせてやった。
「ひにゃあああああああああああああ!」
ピンク色の秘唇から、ぴゅっ、ぴゅっ、と淫蜜が噴き出し、俺の口元を濡らした。
俺の舌に嬲られたミスラの陰核が、すっかり勃起し、ひくひくと物欲しげにおののいている。
それはまるで――ズボンの中ではちきれんばかりになっている、俺のペニスのようで――
「う……っ」
ミスラのお尻の可愛さに、すっかり忘れていた。
が、意識を向けると、自分のペニスが、もう一時だって我慢できないほどの状態になっていることを自覚してしまう。
コイツを、ミスラのここにブチ込みたい――!
俺は、ミスラの膝を床につかせ、自らは立て膝になって、ズボンからペニスを解放した。
「キャッ!」
剥き出しになった俺の勃起に視線を向け、ミスラが、またも可愛い悲鳴を上げる。
俺は、ますますいきり立った肉棒の先端を、唾液と愛液にまみれた肉の割れ目に押し付けた。
「やだ、やだ、やだ、やだ、やだ、やだ……!」
まるで駄々っ子のように、ミスラが涙声で繰り返す。
俺は――身の内で荒れ狂う獣欲の矛先を少し逸らし――張り詰めた亀頭で、ミスラの秘唇をグチュグチュとかき回した。
「や、やああぁ……やめろ、やめろぉ……んっ、んああっ……き、汚いの押し付けるなぁ……! は、はふっ、ふく……うぁっ、あひ……! あ、ああぁっ、あく、あぁんっ! あぁ〜!」
すっかり受け入れ態勢になっている秘部をまさぐられて、ミスラが、甘い喘ぎ声を上げる。
「入れてほしいんだろ?」
「そ、そんなわけあるかっ! あううっ……そんなの……そんなの、入れてほしいわけないだろ……そ、そんな、気持ち悪いもの……んっ、んんっ、んくぅ……あふ、あふぅ……んああああっ、あ、あひぃ……!」
柔らかな肉襞を、おののく膣口を、勃起した淫核を、ペニスの先っぽで執拗に刺激する。
溢れ出る愛液がミスラの太腿の内側を伝っている。
「はっ、はっ……ンああ……やめてよっ……も、もう、そんなふうにしないでっ……! うくっ……う、うぅン……はふ……あ、ああ、あ、あっ……!」
ミスラの秘部が、自らの熱い蜜で溶けそうになっている。
柔らかな肉の割れ目が、まるで亀頭に吸い付いてくるような感触。
俺は、このまま進んでしまいそうになる腰を止めながら、なおもミスラのクレヴァスを嬲り続けた。
「はひぃ、はひいぃ……うぁ、あ、あああぁン……ひああ……お願い、もう許してよぉ……んあっ、あっ、あっあっあっ……! お、おお、おかしくなるぅ……あああああぁ〜っ!」
「欲しいんだろうが!」
そうであることを確信しながら、叫ぶ。
「わかんない……わかんないよっ……!」
「いいから、欲しいって言えよっ!」
ぐっ、とクレヴァスに強く亀頭を押し付ける。
「あ、ああっ、あひ……ほ、ほ……欲しい……欲しいぃ……あううっ、も、もう、どうにでもしてぇ〜!」
とうとう、ミスラが、自分から俺のペニスを求める。
俺は、ミスラのウェストを抱え直し、これまでの自分自身の我慢に報いるように、一気に腰を突き出した。
「あああああああああぁーッ!」
肉棒に体奥まで貫かれ、ミスラが、明らかな歓喜の声を上げる。
俺は、ペニスを包み込む甘い感触に酔いしれながら、飢餓状態の動物が餌を貪るような感じで、がつがつと腰を使った。
「ひぐっ! う、うあっ! あひ、あひン! はぐ、はぐっ……うあ、ああああああああ!」
亀頭が膣奥を叩くたびに、ミスラが悲鳴を上げる。
「ちょ、ちょっと……あっ、あうっ……もう少し、優しくっ……んあっ、んあううっ、んあああああっ!」
体をよじり、床をかきむしるようにのたうつミスラのヒップに、俺は、ひたすら腰を叩きつけた。
ミスラの膣肉が、俺のペニスを食い千切らんばかりにきつく締まり、鮮烈な快感をもたらす。
俺は、その締め付けに逆らうように、さらに動きを加速させた。
「きゃうっ! うぐっ! んあ! んあああああ! バカ、バカぁっ……! つ、強すぎっ……うあ、うあああああ! あひ、あひぃ、きゃひいいいいいぃ〜!」
ミスラの高い声に、肉と肉がぶつかるパンパンという音が重なる。
ヒリつくような気持ち良さがペニスをさらに膨張させ、それによって、摩擦による刺激がさらに大きくなる。
「あううっ、もう、もうダメぇ〜! 僕、僕、おかしくなるうっ! うあっ、あ、あああ、あ、あーっ! 壊れるう! アソコが壊れちゃうよっ! ああああああああああああああ〜ッ!」
背中を反らし、絶叫をあげるミスラの肉壷が、俺のペニスにぴったりと吸い付いたまま、きゅーっと収縮する。
俺は、膨れ上がった肉棒を根元までミスラの体内に押し込み――そのまま精液をぶちまけた。
「ああっ! だ、出した、ナカに出したぁ……! あ、あああ、ダメ、ダメ、ひやあああ! イ、イクううううぅ〜ッ!」
膣奥に俺の精液を感じながら、ミスラが、ビクッ、ビクッ、と体を震わせる。
「あ、ああああっ……そんな……中に出すなんてぇ……はへ、はへぇ……な、何てこと、すんだよぉ……」
そう言いながらも、ミスラの声は、快楽の余韻に震えている。
「気持ち良かったろ?」
「ううっ……バ、バカっ……そ、そんなわけ、ないだろ……」
「嘘つきだな、お前……!」
俺は、そう決めつけて、まだ萎えてない肉棒を、再び動かし始めた。
「ひうううっ……そ、そんな……まだ終わらないの……? ひ、はっ、あ、あん、やぁん……あひ、あひぃ〜ン」
絶頂を味わったばかりの肉壷が、再開されたピストンを歓迎するかのように、ウネウネと動く。
「はぁー、はぁー……あ、あはぁっ……そ、そんなっ……あうっ、うくぅン……ダ、ダメ……やめろぉ……ひゃややっ……ひゃふぅ……」
ペニスが動くたびに、ミスラの狭い膣内に収まりきらなかった俺のザーメンが、結合部の隙間から溢れ出る。
泡立ち、白濁したその液には、わずかに血が混じっていた。
ミスラのバージンを俺が奪ったのだ、ということを意識した途端、新たな欲望と興奮が、体の奥底から湧き上がる。
「ひううっ、あ、やああっ……また、また大きくしてっ……う、うぐっ、この、ケダモノぉ……あン、あひぃン……あ、ああン、あひ……うあああっ、あん、あああぁ〜ン!」
最初から夢中だったが、さらに夢中になりながら、俺は、ミスラの膣内をペニスで蹂躙した。
きつく締まった靡肉に扱かれるような感覚に、熱い固まりが体奥から再び迫り上がってくる。
「ひうっ、あっ、ああぁン! く、来る、来るう……さ、さっきよりすごいのっ……んっ、んあああっ! や、やだっ、僕、僕ぅ……んにゃああっ! バ、バカになるう! バカになっちゃうよぉ〜!」
「だったらバカになっちまえ!」
俺は、張り詰めた亀頭で、ミスラの子宮口を連続して叩いた。
「あああああー! あひ! あひ! あひぃ! イ、イキそうっ! はひ、はひいいっ! もう、もうイク! 僕、イクのぉ! あっあっあっあっ! あひいいぃ〜!」
「ぐっ……出すぞっ! また、俺のザーメンでイかせてやるっ!」
「んにゃあああああああ! 出して、出してぇ! 僕の中に、トールの汚いザーメン出してぇ! うっ、うあああっ! 中に出してイかせてっ! ザーメンでイかせてぇ〜!」
ミスラの膣道が、すさまじい圧力で俺の肉棒を絞り上げる。
俺は、ミスラの小さな体を押し潰すような感じで覆いかぶさり、そのまま、激しい勢いで射精した。
「あああああああああああああああああああああああああああああ!」
ミスラが、絶叫する。
ビクッ、ビクッ、と痙攣するその体が、完全に床の上に腹這いになり――そして、折り重なるように、俺もその上に倒れてしまう。
「ひ、ひああぁぁ……あぅ……イっちゃった……トールのザーメンでイっちゃったぁ……あ、あうぅ……あひぃン……」
俺の体の下で、いつまでもヒクヒクとおののいているミスラが――どうしようもないくらいに、愛しく思える。
俺は、全身を弛緩させながら、布越しにミスラの体温をいつまでも感じていた……。
「……重い! 重いよっ! いいかげん降りろっ!」
「わっ……!」
下から体を引っ繰り返され、俺は、ごろんとその場に転がった。
まだ剥き出しのままだったペニスを仕舞いながら上半身を起こすと、真っ赤な顔をしたミスラが、メガネの奥のオレンジ色の瞳を潤ませながら、俺を睨んでいる。
「あ、う……えーと……」
「自分が僕にしたこと、覚えてないの?」
服の乱れを直しながら、ミスラが訊く。
「いや、それは――」
断片的だった記憶が次第に再構成され――俺は、自分が、この国の第三王女をレイプしてしまったことを、はっきりと思い出した。
そして、その発端が、俺に対する拷問まがいの仕打ちだったことも、だ。
俺は、詫びを言うべきなのか? それとも、謝罪するのはミスラの方で――
「す……すまない」
考えを整理する前に、俺は、ミスラに頭を下げてしまった。
いや、これでいいんだ。たとえどんな理由があれ、同意なしであんなことをするような男は、誰が許しても俺が許さない。そして、少なくともこの件については、俺は、俺自身を許せる男でいたいと思う。
だから――理不尽な点が多々あることを踏まえつつ、俺は、ミスラに頭を下げ続けた。
「あ……も、もういいよ……いや、いいわけじゃないけど……」
しどろもどろな口調で言ってから、ミスラは、ふーっ、と溜息をついた。
「あの……僕こそ、ゴメン。君のことを、誤解してたかもしれない」
「え……?」
驚きのあまり言葉を失った俺の顔を、ミスラが、いつものキツい視線で睨んでいる。
「何、呆気に取られてるわけ? 僕が素直に謝ったのが、そんなに意外?」
いや、分かってるじゃねーか。
と言ってしまってはケンカになる。俺は、とりあえずふるふると首を横に振ってやった。
「ま、いいや。とにかく、さっきまでのことは、おあいこってことにしよう。君としては納得いかないかもしれないけどさ」
「ん、まあ、そうだな」
煮え切らない返事をする俺に、ミスラが、ぐっと顔を近付けた。
「それから……さっき、僕が、あんなになったの……薬のせいだからね」
どうやら、ミスラ自身、机ごとひっくり返ったときに、自分で作ったあの薬を浴びてしまったらしい。
「いい? 分かった? 勘違いはゴメンだよ!」
「分かった、分かったって……お互い、あれは薬のせいだ。忘れよう」
「忘れる……?」
一瞬だけきゅっと吊り上ったミスラの眉毛が、しょぼーん、とハの字になった。
「う……うん、そうだね……うん……忘れるのが、いいよね……」
何なんだよ。まったく、感情表現の忙しい奴だな。
しかし……一見クールに見えるくせに、何かあるととたんに熱くなるところが……何だか、あいつに似てるよな。
って……えーと、あいつって、誰だ?
「それにしても……また、分からなくなっちゃったよ」
「何が?」
「だから、君の正体」
「あ……いや、少なくとも、ロギとかいうやつの手下じゃないってことは、納得してくれたか?」
「まあね。あの薬で暴走状態になっていながら、君は、未だに人間としての姿を保ち続けてるし……それに、僕を始末したり支配したりする絶好の機会を与えられながら、ただのびてるだけだったしね」
「分かってくれたようで何よりだ」
「ただね、僕が言ってるのは、そういう低次元なことじゃないんだ」
俺が敵か味方かって話は低次元ですかそうですか。
「あのさ、君を拘束していたあの椅子、あれ、かなりの魔力が込められてるわけ。って言うか、拘束している奴の魔力を逆流させて相手を押さえ込むっていう仕掛けだから、基本的に、逃れようがないものなんだよね」
「よく分からないが、やたらと物騒な代物に座らせられたことだけは、分かった」
「それだけ、君を警戒してたってことなんだよ」
そう言って、ミスラが、まだ鎖で吊るされたままのサタナエルの剣に、視線を移す。
「この仕掛けは、あの鎖にも応用されててね。見ての通り、世界に七十二しかない魔剣の一本でさえ、捕えておくことができるんだ」
一瞬、剣が、不満げに唸りながら身じろぎしたような気がする。
「でも、君は、いとも簡単に、あの椅子から脱出した。現象としては、いわゆる瞬間移動の魔法で、高位の術者だったら可能なことなんだけど――」
その時、何とも奇妙な音が、ミスラのセリフを遮った。
部屋の外からだ。まるで、大勢の人間がいっせいに声を上げたような、どよめきに似た音である。それと、何かの金属音。
「なんだろう……?」
ミスラが、壁にあいた小さな窓から、外の様子を窺う。
「あっ――!」
「ど、どうした?」
「城壁に騎士団が――それに、あいつは――!」
「ええい、ちょっと向こうに寄ってくれ。見えやしない」
俺は、ミスラの横に並び、頭一つくぐらせることも難しそうな小窓から、外を見た。
うわ、高い。やっぱり、ここは塔の一室だったらしい。眼下には、王宮の様々な建物が見て取れる。
そして、その王宮と市街とを区切る城壁の上で――剣を抜いた人々が、戦闘を行っていた。
「な、なんだありゃ……」
遠目に見ても巨漢だと分かる黒い鎧の男が、すでに見慣れたアイアケス王国騎士団の人たちと、戦っている。
騎士は、ざっと見たところ十人前後。そして、それを率いているのは、ニケだ。
黒い鎧の男は、そんな状況にもかかわらず、ゆうゆうと手にした剣を振り回し、騎士団と渡り合っている。
いや、それどころか、アイアケスの騎士たちのほうが押されているように見えるぞ?
黒い鎧の男が、剣を振り回すたびに、騎士たちが吹っ飛び、城壁の上に転がっていく。
強い……強いなんてもんじゃない。ありゃあデタラメだ!
「あれは――黒騎士! 黒騎士リルベリヒ!」
ミスラが、悲鳴のような声を上げる。
と、その時――ニケを守るように立ちはだかっていた騎士が、そのリルベリヒの一撃により、崩れ落ちた。
城壁の上で、ニケと、リルベリヒが対峙する。
って、いくらなんでもムチャだ! 体格からして階級が違いすぎる!
「トールっ!」
高い声に振り向くと、いつの間に鎖を外したのか、ミスラが、鞘に納まったままのサタナエルの剣を、俺に差し出していた。
その顔には、今まで見たことのないような切羽詰った表情が浮かんでいる。
「早く、早く行ってあげて! ニケ姉上を助けてよっ!」
「そ、そりゃあ――いや、しかし、ここからあそこまでどれだけかかるか――」
「だから、あの力を使ってよ! ここからあそこまでだって飛べるでしょ!」
ミスラが、俺の手にサタナエルの剣を押し付けるようにして、詰め寄る。
「そんなこと言われたって、意識してやったわけじゃあ――」
言いながら、窓の外に視線を移す。
ちょうど、その時だった。
リルベリヒが、悠々と前方に踏み込み、カウンターを取ろうとしたニケの剣を、手にした大剣で弾き飛ばす。
衝撃で倒れたニケの右腕を、リルベリヒは、無造作に左手で掴み――そのままぐいっとニケの体を宙に吊るした。
「あ、姉上ッ!」
な――何してやがる、あのデカブツがっ!
そして、俺は――この塔から城壁まで、ミスラを抱えて一気に跳躍した俺の背中を見た。
静止した時の中で、意識が、自分の背中に追いつき――
一瞬の世界の断絶。
「うっ!」
両足の裏に、衝撃を感じた。
そのまま、数人の人間といっしょに、城壁の上にもつれ合うように倒れる。
「いててててて……」
俺は、呻き声を上げながら、その場に立ち上がった。
足元には、ミスラと、そしてニケが倒れている。
そして、目の前には、リルベリヒが仁王立ちしていた。
「貴様……どこから現れた……?」
リルベリヒが、その鉄色の目を俺に向けながら、言う。うう、なんか、けっこう美形だな。波打った赤い長髪が兜の下からこぼれてるとこなんか、ちょっと耽美系っぽいぞ。
しかし、この状況――どうやら、空中に現れた俺は、そのままこいつにドロップキックをかましてしまったようだ。
リルベリヒは、その衝撃でニケを落としはしたが、倒れるまでは至らなかったらしい。そうとう腰が重いんだな。
「ほう……貴様もか……」
リルベリヒが、俺の抱えるサタナエルの剣を見て、目を細める。
その時、俺は、ようやく気付いた。
奴が右手に持っている剣の刀身は、サタナエルの剣と同じように漆黒で、そして、びっしりと禍々しい文字が刻まれていた。