第4章
「お久しぶりです、ご主人様」
そう言って微笑んだのは、先日、遼の店でオークションの対象となっていた、あの黒髪の美女だった。
「ああ……大変だったみたいだな、結花里」
遼が、二人分のコーヒーを用意しながら、言う。昼下がり。遼の家の、応接室である。
「そんなことは、なかったですよ」
結花里は、花がほころぶようなあでやかさで、笑った。腰にまで届きそうなその髪はつややかで、肌はあくまで白い。それが、身にまとった青紫のスーツによく似合っていた。さらには、涼しげな目元や通った鼻筋が、とても上品な印象を人に与える。
とても、あらゆる技術を体の奥底まで染み込まされた性奴隷には見えない。
「木原とかいう男を、落としたそうだな」
無表情な顔で、遼が言う。しかしその声は、どこか微妙な響きを帯びていた。
「いやですわ」
ぽっ、と結花里の頬が桜色に染まった。
「あの人は、とても激しく、私をお求めになりました。私は、それに応えたに過ぎません」
結花里も、乾に捕らえられた木原という男の運命については、知っているはずである。しかし、その表情に何らかげりはない。
「それで、私に頼みって、なんですの?」
「……実は、仕事を手伝ってほしくて、な」
「お仕事を、ですか?」
結花里が、少し、目を見開く。
「思わしくないんですの?」
「いや、そういうわけじゃないが……」
コーヒーカップに目を落としながらそう言う遼に、結花里は、ふふ、と笑いかけた。
「いいですわ。他ならぬご主人様の頼みですもの」
「助かる」
そう言いながら、遼は、熱く苦いコーヒーをすすった。
由奈は、ぼんやりとした目で手の中の写真を見ていた。
バスケットボールのユニフォームを着た、すらりとした長身の少年が、こちらに笑いかけている。
その笑顔は、今の由奈には、何も語りかけはしなかった。
誰に向けられ、どんな意味を有するのかも分からない、爽やかな笑顔。
「バカみたい……」
由奈は、感情を感じさせない声でそうつぶやき、何のためらいもなく、写真を引き裂いた。
引き裂いた紙片を重ねてさらに引き裂き、もとの画像が分からないくらいの小片にする。
そして、由奈はバスユニットまで歩き、それを、便器に流してしまった。
レバーを倒し、渦巻く水が下水めがけ流れていく様を、乾いた目で見つめる。
「バカ、みたい……」
誰に対する言葉なのか、由奈は、再び、そう言った。
「……どうしたんだ? 由奈」
その時、ドアが開く音に続いて、遼の声が、地下室に響いた。
「あの……写真を、捨ててました」
「お前の王子様の写真をか?」
遼の声には、相変わらずの嘲弄の色がある。
「王子様なんかじゃ、ありません」
言いながら、バスユニットから出て、由奈は絶句した。遼の傍らに立つ結花里の姿を認めたのだ。
(きれいな……ひと……)
ぼんやりとそう思った後、はっと気づいて、由奈は大きな胸を腕で隠して、しゃがみこんだ。自分が、遼に与えられた首輪以外は、何も身につけていないことを思い出したのである。
「王子様の写真て、何ですの?」
そんな由奈の様子に頓着せず、結花里が、おっとりした声で遼に訊く。
「憧れの先輩の写真さ」
「ふうん……」
結花里は、にっこりとその黒目がちな目を細めた。そして、ひどくやさしい調子で、由奈に語り掛ける。
「それは、仕方ないわね。初恋って、たいがいは実らないものだもの」
そんなことを言いながら、ちらりと、遼に視線を向ける。
その視線に気づいているのかいないのか、遼は表情を動かさない。その無表情のまま、遼は由奈に近付いていった。
自らの傍らに片膝をつく遼に、由奈は、しゃがみこんだまま、涙の浮かんだ目を向ける。
「お前も、女になったばかりだからな」
言いながら、遼は、ポケットから犬をつなぐための細身の鎖を取り出した。それを、由奈の細い首にはまった赤い革製の首輪に取りつける。
「今日のところは、見学だ」
そして立ちあがり、まさに犬を引くような要領で、部屋の隅に由奈を導こうとする。
「んうっ……」
由奈の喉に、首輪が軽く食い込む。由奈は、真っ赤になってうつむきながら、遼に従った。
遼は、部屋の壁にある手すりに鎖を結びつけた。鎖も首輪も、外そうと思えば、外せないことはない。これは、今の由奈の立場を象徴しているのに過ぎないのだ。
その立場に甘んじるように、由奈は、鎖で手すりに繋がれたまま、そこに、いわゆる体育座りで腰を下ろした。
「先輩奴隷のやり方を、よく見ておけ」
数歩下がりながらそう言う遼の傍らに、結花里が、そっと寄り添った。
「ご主人様……」
囁くようにそう言いながら、目をうっとりと閉じ、遼の胸元に顔を寄せる。
(せんぱい……どれい……?)
由奈が、その言葉の意味するところを完全に理解する前に、結花里は、遼の前でひざまずいていた。
「失礼いたします、ご主人様……」
そう言いながら、遼の腰に手を添え、そのスラックスのジッパーを咥え、口だけで下ろしていく。
「んふっ」
小さく微笑んで、結花里は、遼の股間の布地の間に、顔をうずめた。
そのまま、顔をねじるようにして、遼のその部分を刺激しつつ、スラックスの下のトランクスから、口だけでペニスを外に導こうとする。
「はァっ……」
ようやく、半ば血液を充填させた褐色の肉茎が現れたとき、結花里は情感たっぷりにため息をついた。
「お久しぶりです」
「どこに話しかけてるんだ、お前は」
「うふふっ」
結花里は、口元に軽く笑みを浮かべたまま、愛しそうに、すりすりと遼の男根に頬ずりした。グロテスクな牡器官と美しく整った白い顔が、異様なコントラストを形成している。
「あぁ、すてき……ご主人様の、匂いがします」
言いながら、結花里は、反りかえりつつある遼のペニスの裏側に、唇を寄せた。
そのまま、顔を上にもっていき、その朱唇を大きく開いて、赤黒い亀頭をぬるりと咥えこむ。
「んっ……」
その口腔で、いかなる技術が駆使されたのか、遼はかすかにうめいていた。
結花里は、そんな遼の反応に嬉しそうに目を細めながら、深々と遼のシャフトを口内に収めていった。
(スゴい……)
由奈は、その垂れ目を大きく見開いていた。今まで、自らしたことはあっても、人がフェラチオをするところをまともに見たことはなかったのだ。
(……あんな綺麗な人が、あんなエッチな顔で……あの人の、おしゃぶり、してる……)
結花里は、ゆっくりとしたペースで、自らの頭をピストンさせ、遼のペニスを唾液で濡らしていった。かと思うと、時々、ペニスを口から解放し、長く伸ばしたピンク色の舌で、逞しく反り返ったシャフトをちろちろと舐めあげる。
そんな淫らな奉仕を続けながらも、結花里の顔の上品さは、いささかも損なわれてはいない。
結花里は、その長いまつげにふちどられた目を上目遣いにして、遼の表情をうかがっていた。伸ばした前髪の奥に隠された遼の目が、その欲情に濡れた視線を受け止めている。
なぜか、由奈は胸がきゅうんと苦しくなった。
少しずつ、結花里の頭の動きが速くなっていく。
「んんン、んむ、んふン、んぅン……」
遼の雁首が口腔粘膜をこすりあげるたびに、結花里が、さも嬉しげな鼻声をあげる。
結花里は、いつのまにか、自らの衣服を一枚いちまい脱ぎ捨てていた。
青紫のスーツの上を脱ぎ、ブラウスを脱ぎ、まだ履いていた黒のハイヒールを脱ぎ捨てる。
スーツと同系色の、レースをあしらった高級そうなブラジャーが、その形のいい乳房を包んでいるのが、由奈にも見えた。くびれた腰といい、未だ身につけているスカートの上からもうかがえる張りのあるヒップといい、同性の由奈が見ても、ため息が出そうなほどに、綺麗なボディラインである。
結花里が、ちゅぼちゅぼと淫猥な音をたててペニスを口に出入りさせるたびに、癖のない豊かな黒髪が、白いなだらかな背中で踊った。
遼の手が、そんな結花里の頭を撫でている。
由奈は、体内に湧き上がるざわつきを抑えるかのように、ぎゅうっと、自らの膝を抱いた。目をそらしたいのに、どうしても、結花里の奉仕から目をそらすことができない。
「ご主人様ァ……」
はぁはぁと息をつきながら、遼のペニスから口を離し、結花里は甘い声をあげた。
「お願いです……結花里のイヤらしい体を、慰めてください……」
目元をぽおっと染めながら、あくまで上品な顔で、はしたないおねだりをする。
「どうしてほしい?」
「あぁン……結花里、おっぱいを、ご主人様にいじってほしいんです……」
言いながら、すがるように、遼の腰を抱き、その右脚に自らの胸を押しつける。
「しょうのないヤツだな」
遼は苦笑いしながら、立ったまま上体を倒し、カップの中の結花里の乳房を、その手に収めた。
「嬉しいです、ご主人様」
結花里が、再び遼への口唇奉仕を再開する。
ブラのカップの中に侵入した遼の手の平は、少し手に余る感じの結花里の左右の乳房を、ぐにぐにと無遠慮に揉みしだいた。
「ふうン、うン、ンううううぅ〜ン」
たまらない声をあげて、結花里はいっそう激しく奉仕を行い、体を遼の脚にこすりつける。
粘膜同士が、唾液を潤滑液にしてこすれ合う、なんとも卑猥な音が、コンクリートむき出しの部屋の中に響いた。
次第に、遼の呼吸がせわしないものになっていく。
(あの人……もうすぐ、イクんだ……)
何度も自らの体で射精へと導いた男が、別の女の手によってフィニッシュへと追いこまれつつあるのを、由奈はどこか熱っぽい目で見つめていた。
「くッ……!」
不自然な姿勢のまま、遼は、さらに深く上体を倒し、結花里の頭を抱え込んだ。
結花里も、そのしなやかな白い腕で、遼の腰を抱きしめる。
遼の体が、断続的に、震えた。結花里の口の中に、大量の精を放っているであろうことは、由奈にも分かる。
(あ……)
由奈は、声にならない声をあげていた。
切ないような、辛いような、説明のつかない気持ち。
そのままの姿勢で、遼と結花里の動きが止まっている。
(早く……はなれてェ……)
何かに祈るような気持ちで、由奈は思った。
しばらくして、じれったくなるほどゆっくりと、結花里は遼かから体を離した。
そして、濡れた黒い瞳を、由奈に向ける。
「どうした? 由奈」
しかし、由奈に声をかけたのは、遼だった。
「なんだか、物欲しそうな顔してるぞ」
「……」
由奈は、唇を噛み、目をそらした。遼に、心の奥底を見透かされたような気がしたのだ。
自分でさえも整理がついていない、自分自身の心。
「いいの? 由奈ちゃん」
しばらくして、女の由奈が聞いてもぞくっとするような艶っぽい声で、結花里が言った。
「そこで、おとなしくしていられる?」
「あ、あたし……」
由奈は、遼と結花里に視線を戻した。スカートを脱いで下着姿になった結花里が、立ちあがって遼の体にしなだれかかり、細い両腕を絡めている。
「お願いします……あたしも……あ、あたしにも……」
由奈は、自分で自分が何を言おうとしているのか、分からなかった。
ただ、突き動かされるように、言葉が勝手に口から出てしまう。
「……由奈にも、ご主人さまに、ご奉仕、させてください……」
ムチによる痛みと、愛撫による快楽によって、無理やりに言わされていたはずの言葉。それを、由奈は、顔を赤く染めながらも、はっきりと口にしていた。
由奈は、まるで叱られている子どものように、目に涙を溜めながら、下を向く。
「結花里」
「はい、ご主人様」
軽くあごをしゃくっただけの遼の意思を、結花里は充分に察し、軽やかな足取りで由奈に近付いていった。
すぐそばに両膝をついた結花里の気配に、由奈はびくっと顔を上げる。
「あ、あの……」
「いっしょに、ご主人様にご奉仕しましょう、由奈ちゃん」
にっこりと笑いながら、結花里は、その白く細い指で、由奈の首輪から鎖を外す。
由奈は、均整のとれた結花里の肢体を盗み見ながら、その幼い顔に似合わない複雑な表情で肯いた。
遼は、鉄パイプ製のベッドの上で、頭の後ろに両手を組んで、仰臥していた。
その体を、二人の女奴隷が、指と舌と唇で愛撫している。
「んんン……んぶ……んぐ……ンふん……」
四つん這いになって遼のペニスを咥え、竿の部分に舌を絡めているのは由奈だった。
辛そうに眉を寄せながらも、その小さな口をいっぱいに開いて、けなげに奉仕を続けている。精を放ったばかりのはずの遼のその部分は、すでに堅く反りあがっていた。
「上手よ、由奈ちゃん……」
結花里は、遼の右脚をまたぐようにしている由奈の横で、左の脚をまたいでいる。そのしなやかな指は遼の腿を撫で、陰嚢をやわやわと揉みほぐしていた。
その結花里の指までが濡れるほどに、遼のペニスは由奈の唾液にたっぷりと濡れている。
「さすが、ご主人様が教え込んだだけあるわね……」
結花里は、由奈のピンク色の唇を、てらてらと光る遼のシャフトが出入りする様を、うっとりと濡れた瞳で見つめていた。それは、由奈の口が可憐な分、無残とも言えるような姿である。
しかし、由奈は、何かに憑かれたように、情熱的に遼のペニスを刺激し続けた。もし、一度精を放っているのでなかったら、遼はあっけなく陥落していたかもしれない。
「ふふ、由奈ちゃん、一生懸命ね。……でも、追いつめるばっかりじゃ、ダメよ」
結花里は、そっと由奈の丸い小さな肩に手を置いた。唇を半開きにした由奈が、え、といった感じで結花里に顔を向ける。
「たまには焦らしてさしあげたほうが、男の方は、もっと感じてくださるのよ……」
結花里は、ちろりと自分の唇を舐めた。ぞく、と由奈の体がかすかに震える。
「さ、今度は、二人でお舐めしましょう」
そう言って、結花里は、まだ亀頭に口を近づけたままの由奈の顔に、自分の顔を寄せるようにした。長い黒髪が、遼の脚の内側と、そして由奈の肩を撫でる。
ちゅっ、とかるく口付けした後、結花里は赤黒い亀頭にぺろぺろと舌を這わせ出した。
少し遅れて、由奈も亀頭に舌を寄せる。
「うっ……」
二枚の舌が、別々の動きで敏感な粘膜を刺激する感覚に、遼は思わず声をあげていた。
結花里と由奈は、半ば開いた口から、はァはァと切なそうな息を漏らしながら、遼のペニスに舌を絡めていく。
遼のペニスの先端からにじみ出る透明な雫を、由奈は、ぺちゃぺちゃと音を立てながら舐めとった。
一方、結花里は、顔を深く沈め、遼の陰嚢に唇を寄せている。
「男の方はね、ココも感じるのよ」
不思議そうな顔で自分の方を見る由奈に、結花里は笑みを含んだ声でそう言った。
「由奈ちゃんも、おしゃぶりしてみる?」
由奈は、こくンと肯き、結花里の反対側から、クルミを思わせるその器官にキスをした。
「きつくしてはダメよ。ココは、優しくしてあげるの……」
そのことばをまるで実践するかのように、結花里が、その袋の中の睾丸を、柔らかく口に含んだ。
由奈も、その様子を見て、おずおずと自分でも試してみる。
そして、結花里の指示に従い、むぐむぐと唇や舌を動かしながら、口内で睾丸を転がすようにした。
もどかしいような快感に、遼のペニスが、断続的にひくつく。
そうやって、ひとしきり遼の陰嚢を刺激した二人は、再びシャフトに舌を這わせ始めた。
先端を指で刺激しながら、ハーモニカを吹くように横咥えに刺激したり、舌の裏側の柔らかい部分で亀頭粘膜を刺激するなど、様々なテクニックを結花里は由奈に教えていく。その度に、遼のペニスは、ひくひくと動いてしまった。
「可愛いでしょう、由奈ちゃん」
遼のペニスに熱心に舌を這わせる由奈の耳に、結花里は息を吹きかけるようにして話しかけた。その白い腕は、由奈の背中を優しく抱くようにして撫でている。
「ご主人様って、なかなかお声をあげてくださらないんだけど……オチンチンは、正直に感じてるって言ってくださるのよ……」
「余計なことを言うな、結花里」
「申し訳ありません、ご主人様」
苦笑しながら言う遼に、結花里は丁寧に謝った。しかし、その顔にも笑みが浮かんでいる。
いつのまにか、由奈は、遼のペニスに奉仕を続けながら、その体を遼の脚にこすりつけるようにしていた。
「んふぅ……んあぁ……はぁァア……」
頬を染め、目を涙で潤ませながら、悩ましい声をもらす。
「感じてしまってるのね、由奈ちゃん」
「えっ……そ、そんな……」
結花里の指摘に、赤くなった顔をさらに赤く染め、由奈はうつむいてしまった。
「いいのよ、由奈ちゃん。その大きな胸を押しつけられるのも、男の方は嬉しいんだから……」
「で、でも、あたし……」
「自信を持っていいのよ、由奈ちゃん」
言いながら、結花里は由奈の背中を抱く腕に、優しく力を込めた。
「ほら、ご主人様のアレだって、由奈ちゃんに、あんなに興奮なさってるのよ……」
そう言う結花里の視線の先に、唾液に濡れ、臍の方まで反り返った遼のペニスがある。
「あたし……」
「素直に、おねだりしてごらんなさい。それに応えられるかどうかは、ご主人様がお決めになることだけど……」
「あ、あっ……」
由奈が、うろたえた声をあげた。結花里が由奈の乳房を、後から手の平に包んだのだ。
「柔らかくて、気持ちいいおっぱいね……私、うらやましいわ……」
細い指先でくりくりと乳首をいらいながら、結花里が言う。
「あ、あたし……あたし……ッ」
結花里に抱え起こされるようにして、遼の足元で膝立ちになった由奈が、熱っぽい声で繰り返す。その大きな瞳は、すがるような感じで遼の顔とペニスを交互に見つめていた。
「ご主人様……あたし……あたし、欲しいです……」
「ダメよ、由奈ちゃん」
「きゃン!」
唇で背中をすぅーっと撫でられ、由奈が可愛い悲鳴をあげる。
「ご主人様に、言われてるでしょう。おねだりは、もっとはっきり言わなくちゃ……」
ぞくぞくと震えてる由奈の小さな体に、背後から手と口を這わせながら、結花里は続けた。
「ココは、もうガマンできないみたいよ……」
「んあああああ〜ン」
くちゅ、と音をたてて結花里の指が処女を失ったばかりの由奈のクレヴァスに潜り込む。そこは、しっとりと蜜を分泌し、むれそうなほどに熱く息づいていた。
ちゅくちゅくと音をさせ、優しく、しかし残酷に、結花里はそこで指を遊ばせる。
「ああ、あ、あぁン……ダ、ダメ……ダメです……ッ」
「私の指なんかでイっちゃっていいの?」
後から由奈のうなじに唇を這わせながら、結花里が訊く。由奈は、ふるふると首を振った。
「ご主人様……あ、あたしのアソコに、ご主人様のを、下さい……ッ!」
「も・っ・と・は・っ・き・り・♪」
結花里が、意地悪く追い討ちをかける。
「オ……オ×ンコ……オ×ンコに、ご主人様のオチンチン……い、入れて、ください……」
耳まで赤く染め、目尻に涙をにじませながら、由奈が哀願する。
「好きにしろ」
遼は、自らの組んだ指を枕にした姿勢のまま、鷹揚に言った。
「ハ、ハイ……」
そう返事をしつつも、由奈にはどうしていいか分からない。
「由奈ちゃん、膝で、ご主人様の腰を、またいでみて……」
そう結花里に言われるまま、由奈は、おずおずと自らの膝の間に遼の腰をとらえた。
「そのまま、ご主人様のオチンチンに手を添えて、由奈ちゃんのアソコに当てるの」
「こ、こう、ですか……?」
強い力で反り返っている遼のペニスの角度を、おっかなびっくりといった調子で、由奈が両手で調整する。
「そう、そうよ……さあ、ゆっくり、腰を落として」
ぴと、と遼の亀頭が、由奈の膣口に接触した。
「ああ……由奈、怖い……」
何と言っても、昨夜、処女を失ったばかりなのだ。由奈の動きはぎくしゃくと堅く、ともすれば動きが止まりそうになる。
「大丈夫よ……」
結花里が、由奈の緊張をほぐすように、その豊かな胸を揉む。そして、その姿勢で、ゆっくりと由奈の体を下に導いてやる。
「あ、ああア、うあああああああああア……ッ」
ずるり、とまだ固い膣肉を、遼のペニスがこすりあげる感触に、由奈は悲鳴のような声をあげた。
それでも、由奈のそこは、遼の剛直を飲みこんでいく。
「ス、スゴい……いっぱい、いっぱい、入ってくるゥ……」
ぴったりとした靡肉が、半ば強引に遼のペニスによって割り広げられる感覚に、由奈は圧倒されていた。
ようやく、遼のペニスが、すべて由奈の中に収まる。
だが、無毛に近い幼げな恥丘は、とてもそんな仕打ちに耐えられるようには見えず、今にも凶暴なペニスが下腹を突き破りそうな感じだ。
「はア、はア、はア、はア……」
騎乗位の姿勢で、由奈は、がっくりとうなだれ、半開きの口から舌をのぞかせながら、荒い息をついている。
「さあ、由奈ちゃん、動いてみて」
ともすれば、そのまま遼の体の上に倒れこんでしまいそうな由奈の体を支えるようにしながら、結花里が言う。
「そ、そんな……」
弱々しく抗議めいたことを言いながらも、由奈はゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
「あッ……ん……んぁ……ッ……んくッ……」
その刺激によって、由奈のその部分が、さらに愛液を分泌する。そしてその愛液が潤滑液になり、由奈の動きは少しずつスムーズになっていった。
「あ……ああァ……あひっ……ひ……ひああぁ……」
由奈の体内で、きつい、ひりつくような痛みが、次第に快感に駆逐されていく。
「由奈ちゃん、気持ちイイ?」
その両肩に手を添えて、後からのぞきこむようにして、結花里が訊く。
「わ、分かりません……で、でも……なんだか、だんだん……ひあッ……!」
不意に、快感が、苦痛を凌駕した。いや、苦痛が快感に変換されたのか。
「あ、ああァ……あくう……んんんッ、んッ、んふゥ……」
由奈の腰の動きが、次第に大胆になっていった。その体が動くたびに、巨乳が、ふるん、ふるんと震える。
遼は組んでいた指を解き、両手を由奈の胸に伸ばした。
「ふあァっ!」
かなり乱暴に乳房に指を食い込まされたのに、由奈は、甘い嬌声を上げていた。
遼は、きれいな半球型を保った由奈の双乳の感触を楽しむように、手で円を描くようにして揉みしだく。
「はああァン、き、気持ちイイ……気持ちイイですゥ……」
由奈は、まるで夢を見ているような頼りない表情で、うっとりと快感を訴えた。
「まだ二回目なのに、もうそんなに感じてるのね……うらやましいわ……」
「い、言わないでください……恥ずかしい……」
「でも、自分だけ感じてはダメよ……ご主人様にも、感じていただかなくちゃ……」
結花里の言葉に、由奈は素直にこくンと肯く。
「もっとリズミカルに、腰を動かすのよ」
「こ、こう、ですか……?」
由奈は、息を荒げながら、精一杯、結花里に言われたように、腰を動かそうとする。
「あ、ああン……んく、んんん、んうゥ……」
しかし、その動きによる快感のために、かえって由奈の腰は止まりかかってしまった。
「感じすぎちゃってるのね、由奈ちゃん」
「だって、だってぇ……」
由奈は、子どものような舌足らずな声をだしてしまう。
「しばらくはガマンして、夢中で腰を動かすの。それで、もうダメ、って思ったら、一休みするのよ」
「そ、そんなの……」
「そうすれば、ご主人様もとても感じてくださるし、由奈ちゃんももっと気持ちよくなれるのよ」
「……」
由奈は、結花里に導かれるようにして、くにくにと再び腰を動かした。その眉は切なげにたわめられ、可憐な口からは絶え間なく喘ぎが漏れる。
「あ、ああン、んあン、あン、あッ、あッ、あああア〜ッ」
「いいわ。腰の動きを、休めて」
「ふあァ……ん……んく……くうゥ……」
汗をうっすらとにじませ、かくんかくんと頭を振りながら、非常な努力をもって、由奈が自分の腰の動きをコントロールしようとする。
そんな試みを繰り返しているうちに、由奈の体内で、快感がたまらない苦痛となり、さらにまた一段高い快感になっていった。
「も、もう……もうダメ……これ以上は、もう……おかしく、なるゥ……」
本当に、ちょっと心配になるくらい辛そうな顔で、由奈は訴えた。
「可愛いわ、由奈ちゃん」
ひし、と結花里は後から由奈の首に抱きついた。
「もういいわよ。由奈ちゃんが、一番感じるように動いてみて」
「んああああア……ン」
由奈は、背後の結花里に体重を預けるような感じで、上体を反らせた。結花里が、その熱く火照った体を優しく抱きとめてやる。
「あ、あひ、あひ、あひぃ、ひああァン……由奈、ココが、ココが感じるの……」
うわ言のような口調で言いながら、由奈は、そり返る遼のペニスの亀頭の部分に、ざらつくような感触の膣壁をこすりつけた。
いわゆるGスポットと言われる個所だが、由奈はその部分の名前など知らない。今までの行為で、偶然に発見したのだ。
「スゴい、スゴいの……スゴくイイの……由奈、コレ好き、好きィ……」
大きく腰をグラインドさせ、かつてないほどの快美感を貪る由奈。
「んわッ!」
一際おおきな声を出し、由奈は体をがくンと反らした。
遼が、由奈の胸から離れた手を幼げな腰に添え、腰を突き上げたのだ。
そのまま、下から激しく由奈のそこを責める。
「ダ、ダメ……ダメ、です……そんな、に、したらァ……」
そんな、弱々しい由奈の抗議など耳に届いていない様子で、遼は、ますます激しく腰を動かす。
「はうッ!」
由奈が、何かに驚いたように、大きな目を見開いた。
「ダ、ダメぇ、ダメえーッ! おねがい、おねがいィーッ!」
見開いた目を、今度はぎゅっと閉じ、いやいやをするように首を振りながら、その身をよじる。
「あふれちゃいそうなんでしょ? 由奈ちゃん」
くすくす笑いながら結花里が訊くと、こんどはこくこくと肯いて見せる。
「大丈夫よ、それ、おしっこじゃないから」
「でも、でもォ……あ! も、もれちゃう、もれちゃうゥ〜ッ!!」
しかし、遼はがっしりと腰をつかんだまま離そうとしない。
「ご主人様は、ご覧になりたいようよ。由奈ちゃんが、あふれちゃうトコ♪」
「そ、そんなの、イヤ、イヤですゥ……ッ!」
しかし、遼と結花里に挟まれた由奈の体に、逃げ道はない。いや、あったとしても、官能の鎖にとらえられた由奈が、逃げることができたかどうか。
「い、ヤああああああああああああああああああアアアアアアァ〜ッ!」
その由奈の悲鳴をきっかけにしたかのように、二人の結合部分から、驚くほど大量の液がしぶいた。
絶頂のしるしの透明な飛沫が、遼のひきしまった腹を濡らしていく。
たとえ、それが小水でないにしても、人前で排尿同然の姿をさらすのには変わりはない。由奈は、羞恥と、そして名状しがたい快感に、がくがくと体を震わせながら、潮を吹きつづけた。
「くぅッ!」
今まで、歯を食いしばって耐えていた遼も、とうとう最後を迎えた。
股間に溜まっていた精液が、輸精管をすさまじい勢いで昇り、由奈の体内に放たれる。
「あ!! イ、イク! また、またイっちゃう〜ッ!!」
熱い粘液の小爆発が、由奈をさらなる高みへと舞い上げていく。
「んあッ、ああう、あう、ンうううううううゥ……」
ぴくん、ぴくんと、硬直した由奈の体が、痙攣した。
そして、しばらくして、由奈の体からぐったりと力が抜ける。
結花里は、にっこりと微笑みながら、その由奈の体を、未だ荒い息をついている遼の体の上に重ねてやった。
遼は、どこかぼんやりとした顔で、そんな結花里の顔と、眠っているような由奈の顔を、交互に眺めている。
ぬるり、と力を失った遼のペニスが膣圧によって由奈の体の外に出され、あふれる白濁液が、それに続いた。
「私、お役に立ちまして?」
どこか寂しそうな顔で、結花里は訊いた。
二日後の夕刻。結花里が、遼の館から去るべき日である。
玄関口で、結花里と遼が向かい合っている。
「どうだかな」
両目を隠すほどに前髪を伸ばした遼の顔からは、表情を読み取るのは難しい。
「あいつは、俺以外の誰とでも、できるようにならなくてはならない」
やはり、感情を読み取りにくい声で、遼が続ける。
「だから、私をお使いになったんでしょう?」
「ああ……少しずつでも、他人とすることに、慣れさせなくてはならないからな」
「……」
結花里は、そのしっとりと濡れた黒い瞳で、じっと遼の顔を見つめている。
「それで、いずれは、ご主人様以外の誰かに、由奈ちゃんを抱かせるんですのね」
「ああ」
「……私に、そうしたように」
「そうだ」
遼の表情は、動かない。
「まだ、期限まで半月以上ある。問題ないさ」
結花里は、優雅な動作で振り返った。その視線の先に、組織のよこした迎えの車がある。
「問題は、由奈ちゃんだけにあるんじゃ、ないですわね」
意味ありげにそう言いながら、結花里が車に歩み寄る。
「どういう意味だ? それは」
「私の、失われた希望です」
謎かけのようなことを言いながら、結花里は車に乗りこんだ。
「……」
何か訊こうとした遼だが、結局は、口をつぐむ。
そんな遼に、結花里は車のガラス越しにちらりと視線をよこした。何か言ったように口が動いたが、その声は遼の耳に届かない。
そして、車が走り去る。
館には、また、遼と由奈だけが残された。