葵は、俺の幼馴染である。
家が隣、しかも、鍵さえかかっていなければ窓から窓へと互いに自由に移動できるような環境だ。学年は俺のが2コ上だが、俺が4月生まれ、葵が3月生まれなので、実質的な年齢差は3歳である。しかし、俺は“テルにぃ”という呼びかけ以外で、葵に年上扱いされたことがない。
で、その葵が、俺の部屋で、俺の対面に座り、ぐしぐしと泣いていた。
「テルにぃ、ボク、どうしたらいいのかなあ」
グレープフルーツの果汁入りサワーを缶一本空け、真っ赤な顔で、そんなことを言う。
俺は、二本目のサワーをちびちび舐めながら、葵の顔を見つめていた。
ちょっと癖っ毛のショートカットに、ちまちました目鼻立ち。美人じゃないかもしれないが、二重の大きな目や、くるくると変わる表情なんかは、なかなか愛嬌がある、と思う。
「なんで――なんでいつもこうなっちゃうんだろ? ねえ、どうして?」
「知るかよ。お前にオトコ見る目がねえんだろ?」
「どうしてそんなこと言うの? テルにぃのバカ! 冷血漢! へんおんどーぶつ!」
葵の、訳の分からない罵倒に、俺は思わず苦笑いしてしまう。
通算5人目だか6人目だかの彼氏が浮気していたことが発覚し、たいして呑めやしないのにヤケ酒を煽っている相馬葵は16歳。ちなみに、俺こと日高輝騎は19歳である。未成年が酒を呑んではいかんということは重々承知してはいるのだが、葵が男関係でトラブった時に、こうやって二人して呑むのは、今や定番のイベントのようになっていた。
ただ、葵は童顔な上に小柄なので、こんな夜中にアルコールをコンビニで買うのは障りがある。というわけで、今、テーブルの上にあるサワーは、俺が自転車で買ってきたものである。まったく、体のいいパシリだ。
ちなみに、先ほど挙げた葵の彼氏の累積人数がはっきりしないのは、俺の記憶力に原因があるためではない。俺の知らないうちに葵が彼氏を変えていたことがあったからだ。
さて、葵は男運が無い。
それなりに可愛い顔と、中学に入ってからぐんと育ったその胸を目当てに寄ってきた男どもに、葵が、いとも簡単に籠絡されてしまうからである。
好きだと一言でも囁かれれば、ただそれだけで舞い上がってしまうような葵である。ただし、恋多き女と言うには、なかなか男のあしらいというのをおぼえない。
かく言う俺はと言えば――
しかし、葵がこうやって男関係で荒れるたびに、ケアとサポートに回っているんだから、俺も大概お人好しだ。
「どうしたら……どうしたらいいんだろ……うっ……ぐずっ……」
葵の泣き方は、子供のころから変わってない。べそをかき鼻水をすすり、涙をこぶしでゴシゴシ拭う。色っぽくないことこの上ない。
「だからさ……別れろよ。そんなヤツとは」
「だって……!」
「お前、いーかげん学習しろって。ヤツぁ浮気してんだろ? そんなのに尽くしたってぜってえ報われねえよ」
「でも……でもっ……! カレ、騙されてるんだよ……! カレの浮気相手だって、きちんとした彼氏が別にいるんだよ? なのに、ボクまでカレのこと見捨てたら……」
「そいつにとってもいい勉強になるだろ」
「そんなこと……!」
「あのなあ、第三者的視点に立てば、ヤツの浮気でこの関係はもう終わりなんだよ。いくらお前が元の鞘に戻ろうとしたって、どうにかなる性質のもんじゃないだろ?」
「けどさ……魔が差すってこともあるでしょ……? だから……」
「で、次に魔が差すまで騙され続けるのか?」
「違う、違うよっ……! そんなことない! 今回だけだもん!」
「……前の時もそう言ったろ、お前」
俺は、いささかうんざりしながら、言った。
「何だよっ! テルにぃのバカ! バカバカバカ! 百万点バカっ!」
「おいおい、何だそりゃ」
「テルにぃには――テルにぃには分かんないよっ! 人を好きになったこともないくせに!」
「…………」
はぁーっ、と俺は溜め息をつき、テーブルを回り込んだ。
「な、何? 勝負する?」
小学生のころ、子犬のように取っ組み合いをしていた記憶が抜けないのか、葵が、様にならないファイティングポーズを取る。
「取り敢えず鼻をかめ。話はそれからだ」
俺は、ボックス入りのティッシュを葵に差し出した。
「う……」
葵が、ティッシュを抜き、びーむ、と鼻をかむ。
「あのな、葵。たまには引くことも覚えろ。お前、今からそんな暴走機関車っぷりだと、大人になってさらに苦労するぞ」
俺は、葵とテーブルを挟んで90度の角度で座りながら、言った。
「何だよぉ……子供扱いしてぇ……」
「したくもなる。あとな、俺が誰も好きになったことがないっていうのな、あれ、訂正しろ」
「ふぇ? ど、どして? テルにぃ、カノジョできたの?」
「できてない。依然として、年齢イコール彼女いない歴だ」
って、これは胸を張って言うことじゃないな。
「じゃあ、その……片思い?」
現金なことに、興味津々といった表情で、葵が身を乗り出してくる。
「まあ、そうだな。現在進行形で」
「誰? 誰? ボクの知らない人?」
「いーや。よくご存知のはずだよ」
「えっ……! ボクの知り合い? うっそ! どーして教えてくれなかったのさ!」
「…………」
俺は、はあぁーっ、と再び溜め息をついた。
「……お前、ぜんぜん覚えてないのな」
「な……何が?」
「お前が中学一年の時、俺、告白したろ?」
「はひゃっ?」
葵が、でかい目をぱちくりさせる。
そう、忘れもしない、俺が中学3年生、葵が中学1年生の、夏休み前日のことだ。俺は、こいつに告白し、その場で振られてしまったのである。
「あ、でも……えっと……あれって、ノーカンじゃないの? だって、あの時は二人ともまだ子供で……」
「お前、その年のクリスマスに学校に来てた教育実習生とくっついて、その上とっととヤっちまってたじゃねーか」
「あ、あれは――」
俺のきつい言い方に、葵が絶句する。
「悪い。責めてるわけじゃねーんだけどさ……ただ、まあ、やっぱショックだったんで」
「あ……ショック……だったんだ」
そりゃそうだ。半年前に告白した幼馴染に“初体験しちゃったー♪”なんて聖夜翌日に報告されてみろ。俺は、年明けまで熱出して寝込んでたんだぞ。
しかも、それから3カ月も経たずに別れたとあっちゃあ……驚きを通り越して呆れるばかりだ。
でもって、似たようなことが今までずーっと続いてるんだから、俺でなくたって、説教の一つもしたくなるってもんだ。
「テルにぃ……その……でも、さっき、現在進行形って」
「ああ、言ったぞ」
「じゃあ、まさか今も?」
「ああ」
我ながら諦めが悪いとは思うが、毎日のように顔を合わせている以上、気持ちを清算することもできない。
「しかし……葵が忘れてるとはなあ……いや、そうじゃないかとは思ってたんだが……」
「そ、そんなことない! 覚えてたよ! 覚えてるもん!」
大声を出したせいでアルコールが回ったのか、葵の顔が赤い。
「今だって、覚えてるよ……でも、諦めてなかったなんて……ボク、諦めてると思ってたから、諦めちゃってたのに……」
葵が、顔をうつむかせる。
俺には、葵が何を言ってるのか、よく分からない。
「ともかく、だ……今の男とはキッパリ別れろ。年長者としての忠告だ」
「年長者ぁ……?」
葵が、俺を、上目使いに見た。
その瞳が、何やら潤んでいる。
「そ……そういう言い方……しないでほしいな……だって……」
「お前、まだ聞き分けないのかよ!」
さすがに苛立って、俺は、テーブルに手をかけ、葵に顔を寄せた。
ずる。
「おわっ!」
「きゃん!」
マヌケな俺の声と、意外なほど可愛い葵の悲鳴が、交錯した。
手をかけたテーブルが、カーペットの上でずるりと滑り、そのせいでバランスを崩した俺が、葵に覆いかぶさってしまったのだ。
「ちょ、ちょっと、重いよー!」
「わ、わ、今どくから暴れんな!」
焦り、狼狽え、ドタバタを手足を動かす。
その結果――上体を支えようとした俺の右手が、むにゅん、と柔らかな感触を鷲掴みにした。
「あン……!」
甘い、声。
見ると――すぐ間近で、葵が、切なげに眉を寄せ、俺の方を見ている。
「あ――葵――」
服の上からは分からなかった、たっぷりとしたボリューム感。
その感触が、俺の脳髄の最も奥の部分を、不意打ちした。
不覚にも、そこから、手を離すことができない。
「テ……テルにぃ……ねえ……重い、よ……」
そう言われて、俺は、葵に体重がかからないように、体の位置をずらした。
だが、手の位置はそのままだ。
おあつらえ向き――なのかどうか、この家には、今、俺と葵しかいない。
いや、もし家族がいたとしたって――俺は自分を止められたかどうか――
「ねえ、テルにぃ……あ、あんっ……!」
手の中の柔らかな膨らみを揉むと、葵が、またも甘い声を上げた。
こいつ……これだけで感じてるのか……?
もともとそういう奴だったのか……それとも、誰かにそういう体にさせられたのか……
そんなことを思いながら、俺は、ますます激しく葵の乳房を揉んでしまった。
「あっ、あぁン……やだっ……テルにぃ、やめてっ……ああぁン……ダメぇ……!」
俺の体の下で、葵の体が、クネクネと悶える。
それは、俺を撥ね除けようという動きではなく、あからさまな快楽の反応だった。
「葵……」
俺は、右手で葵の乳房を揉みながら、その顔を覗き込んだ。
「やっ……やあぁン……」
葵が、俺から顔を背ける。
「お前……感じてるのか……?」
俺は、葵の耳に口を寄せ、訊いた。
「あううン……! そ、そんなこと……はあぁっ……」
ひく、ひく、と葵の体が震える。
「おい、こっち向けよ……」
「やっ、ダメぇっ……み、耳に、息が……あううぅ〜ン……」
葵が、切なげに眉をたわめながら、体を縮こまらせようとする。
「葵……」
「ダメぇ……そこ、弱いのぉ……ね、ねえっ、耳は許して……きゃうン!」
ふっ、と息を吹きかけただけで、びくん、と葵の体が跳ねた。
「お前……どんだけ敏感なんだよ……」
「んっ……し、知らないっ……! はぁ、はぁ……テ、テルにぃのイジワルっ……あううううっ……!」
意地悪か――4年前、“テルにぃはたまにイジワルするから嫌い”と言われた思い出が、蘇る。
好きな相手に意地悪するなんて――ホント、俺ってガキだったんだな。
でも――
「ああ、どうせ俺は、意地悪だよ」
そう言って、俺は、葵の耳をべろんと舐めた。
「ひいいいいいいいン!」
大袈裟なくらいの声を、葵が上げる。
俺は、葵の体を抱きすくめながら、その耳をねろねろと舌で嬲った。
「あ、あうっ、うく……んんんんんんんッ……! ダメぇ……ダメって言ってるのにィ……あっ、ああああああっ……!」
葵が、両手を口元に当てながら、恨みっぽい声を漏らす。
だが、その肌はピンク色に上気し、体はピクピクとおののいていた。
「あ、あうっ、あふ……うううんっ……! テ、テルにぃ……やめてェ……これじゃ、レイプだよぉ……あああぁン……!」
そう言いながら、葵が、潤んだ瞳を俺に向ける。
俺は、葵の耳から口を離し、その両肩を押さえ付けるようにして、体ごとこちらを向かせた。
「あ……」
正面から、俺と葵の目が合う。
葵の大きな瞳に映る俺が、今どんな表情をしているのか――俺には分からない。
「ね……ねえ、やめよ……? ボク……浮気なんかしたくないよ……」
「ヤツに浮気されてるのにか?」
「そんなふうに言わないでよ……ズルイ……」
拗ねたような顔になって、再び、俺から目を逸らす葵。
俺は――ひとつ深呼吸してから、葵のシャツのボタンに、指をかけた。
情けない……指先が震えて、うまくボタンが外せない……。
予想外にもたもたする俺に対し、葵は、なぜか、されるがままだ。
シャツをはだけさせると、ちょっと子供っぽいデザインのブラが、たわわな乳房を包んでいた。
んくっ、と生唾を飲み込んでから、ブラのフロントホックを外す。
「あぁ……っ」
乳房を露わにすると、葵は、手の平をこちらに向けた右手で顔を隠すようにして、溜め息のような声を上げた。
「でかいな、お前の胸……」
「んっ……テ、テルにぃの、スケベ……」
そんな葵の憎まれ口に、なぜかちょっと安心しながら、俺は、両手で葵の乳房を揉みしだいた。
「あ、あうう……あふ……ああぁン……! はひ……ひいン……!」
葵の唇から、悩ましい息が漏れる。
半ば勃起していた乳首が、むくむくと隆起するのが、見ているだけでも分かった。
「葵……乳首立ってるぞ……」
「いっ、いちいち言わないでよっ……! そんなこと……!」
「いや……反応してくれてんのが、何だか嬉しくてさ」
「え……? あっ、やあああああっ!」
俺の言葉に一瞬おどろいた顔を見せた葵の右の乳首を、口に含む。
「やだ……あっ、あああン……ダメぇ……そんなに舐めちゃダメだよっ……あはああぁぁっ……!」
葵の声が、甘くとろける。
俺は、右手で葵の左の乳房を捏ね回しながら、右の乳首を舐めしゃぶり、ちゅばちゅばと音をたてて吸った。
「ひゃううっ……す、吸うのもダメぇ……あっ、あっ、先っぽ吸っちゃダメぇン……あうっ、あっ、あううっ……あああああっ……」
まるで、胸を突き出すように背中を反らしながら、葵が体をくねらせる。
俺は、時折、その豊かな乳房にキスをしながら、左右の乳首を交互に舐め、吸った。
葵の指先程もある乳首が、俺の唾液に濡れながら、卑猥に勃起している。
「あううっ……ダメぇ……ダメなのにィ……あっ、あううっ、あふ……あううううン……!」
葵が、俺の頭に両手をあてがいながら、ぶんぶんと左右に首を振る。
俺は、初めて行う愛撫という行為に夢中になりながら、葵の胸を責め続けた。
「ひゃふ……あうっ、ああぁン……! ダ、メぇ……ああうっ! はっ、はふっ、あふ、ひいいいン……!」
葵の呼吸が、次第にせわしなくなっていく。
俺は、その双乳をたっぷりと手と舌で堪能してから、葵のスカートをまくり上げた。
「あう……」
葵が、どこか観念したような声を上げた。
探るように臆病な手つきで、葵の股間に触れる。
そこは――葵が分泌した液で、じっとりと湿っていた。
「すげ……こんなに濡れて……」
「バカ、バカ! 知らない! テルにぃのせいだもんっ! バカあ!」
葵が、奥歯が見えそうなくらいに大きく口を開けて、叫ぶ。
だが、俺は、その声すら耳に届いてないくらいに、興奮していた。
葵に覆いかぶさったまま、右手を、ショーツの中に入れる。
信じられないほど柔らかなぷにぷにした感触が、指先に触れた。
「あンっ……!」
葵が、ひくっ、と体を震わせた。
力を込め過ぎないよう、細心の注意を払って、そこを撫で上げる。
「あ、あううぅン……はっ、はふっ、あ、ああ、らめ、らめぇ……ひあああああっ……」
呂律の怪しい言葉を上げながら、葵が身をよじる。
熱い粘液が指に絡まり、俺の愛撫をさらに滑らかなものにした。
「あああああン……も、もう、もうっ、ボクぅ……あぁン、あン、あはぁっ……!」
今まで聞いたこともないような、葵の嬌声。
この声を――俺より先に聞いた奴らがいる――!
その事実に、俺は、前後不覚になるほどに興奮してしまった。
「葵っ……!」
白とブルーのストライプのショーツを、引き千切るようにしてずり下ろし、そして、いきり立った自らの肉棒を解放する。
「きゃ……!」
凶暴なまでに反り返った俺のペニスを見て、葵は、悲鳴を上げた。
「ウ、ウソ……おっきい……」
わずかな恐怖と、紛れも無い感嘆と、そして、密かな期待を含んだ、その声音。
俺は、大きく息を荒げながら、肉棒の先端を葵の秘唇に当て、そのまま腰を進ませた。
「あうううン!」
ずるっ、と肉竿の裏側が、葵のクレヴァスを擦り上げる。
俺は、焦燥に歯噛みしながら、何度か腰を前後させた。
その度に、ペニスが、挿入を果たせないまま、濡れそぼる秘裂の表面を空しく滑る。
「あああ、イ、イヤぁっ……あン、あン……じ、焦らさないで……どっちかにしてよォ……!」
葵が、目尻に涙すら浮かべながら、見当違いな懇願をする。
「ち、違うって……焦らしてるわけじゃ……」
葵の泣き声に、わずかに理性を取り戻して、俺は言った。
「え……えっと……あの……もしかして……テルにぃ、初めて……?」
「わ……悪いかよっ……!」
屈辱のために、かっと頭に血が昇る。
「そ……そんなこと……でも……でも、ボクでいいの? ボクなんかが、初めての相手で……」
葵は、奇妙な色の瞳で、俺を下から見上げた。
「何言ってんだよ……お前、俺にレイプされてんじゃないのか?」
「そ、それは……そうなんだけど……」
口ごもりながら、葵が、ちらちらと俺の剛直に視線を向ける。
「……お前、もしかしてすげえ淫乱?」
「ひど……! ボク、そんなつもりじゃ……!」
抗議しかける葵の秘唇に、最低限の冷静さを取り戻した俺は、張り詰めた亀頭を浅く潜らせた。
「あう……っ!」
ただそれだけの刺激で、葵が、甘く喘ぐ。
俺は、そのまま、ゆっくりと肉棒を葵の中に埋没させていった。
「う、うああああっ……! おっきいっ……! おっきいようっ……!」
葵が、あからさまなことを叫ぶ。
一方、俺は、熱く火照った肉のぬかるみの感触に、ほとんど呆然となっていた。
進み続ける俺のペニスを、葵の膣内が包み込んでいく。
「あううっ……そ、そんな……ウソっ……! ま、まだ入ってくる……ンひいいいっ……!」
どこか苦しげな、葵の声。
だが、その奥にある官能の響きを、俺は、本能で感じ取っていた。
「あああっ、ダメ、ダメ! そんなに入れちゃ……あう、あうう、あ……ああああああああっ……!」
幾重にも重なった肉襞を掻き分け、先端が、奥へ奥へと侵入していく。
葵は、だらしなく口を開きながら、ひくひくと体を震わせていた。
「あう……ああああっ……あっ、あっ、ああっ……あひいン!」
まだ肉竿に多少の余裕を残したところで、亀頭が、膣の最奥部にぶつかった。
葵の内側が、ぴったりと、俺のペニスに吸い付いている。
俺は、そのまま射精してしまいそうになるのを、必死の思いでこらえた。
「あ、あううっ……は……ひいン……! こ、こんな……こんなのって……」
葵が、信じられない、といった声を上げる。
だが、俺には、葵の今の様子を解釈する余裕すらない。
「動かすぞ、葵……!」
「あっ、ま、待って! 待ってっ……ひいいいいいいっ!」
葵の制止の声に構わず、俺は、腰を使い始めた。
ぎくしゃくと、ペニスが葵の体内を出入りする。
「はひっ……あうっ、あひ、はひいいいいン……! な、何……? 何これぇっ……! あっ、あうっ、あうう……ンあああああ!」
激しく喘ぎながら、葵が、釣り上げられた魚のように暴れる。
「葵……感じてるのか……?」
「は、はひっ! ひんっ! あひいいっ!」
葵が、余裕のない動きで、うんっ、うんっ、と肯いた。
もう、自分の感覚を偽ることすら、できない状態のようだ。
葵の敏感な反応を見ているうちに、少しずつ、俺は自分を取り戻していった。
「あうううっ……! ひんっ! あひいいんっ! すごい……! すごいよおっ……! あっ、あううっ、あひ……あああああン!」
「おい、お前、レイプされてんだろ? そんな感じていいのかよ」
「だってっ……だってえっ……! うああン! ああああああっ……! に、にぃのが……テルにぃのがすごすぎてぇ……うああああっ!」
葵の秘部からは、次から次へと愛液が溢れ、ピストンをスムーズにしていく。
俺は、ようやく要領を掴みながら、腰を使い続けた。
「ひあああっ……オチンチンすごい……すごいのおっ……! あっ、あっ、ダメえぇ〜! こんなにすごいの、反則だよぉ〜! あはあああぁン!」
可愛らしい声で悲鳴を上げながら、葵は、その豊かな胸を揺らすように身悶えた。
はだけたままのシャツの胸ポケットから、ケータイが床に滑り落ちる。
「はうン! あン! あううン! あひいいぃ〜! ダメぇ! ダメええええぇ〜! ボク、ボクっ……! ああああああっ!」
肉竿に絡みつく肉襞の動きに逆らうようにペニスを抜き、そして、奥まで滑り込ませる。
その単純な反復運動が、たまらない快楽を紡ぎ、俺と葵を狂わせていった。
「あううっ! あひン! あっ! ああぁ〜っ! イイっ! イイのおっ! あああああ! オマンコいいいいぃ〜!」
「お前……そういうふうに言うように、前の男に仕込まれたのか?」
「あうううン! だってっ! だってえっ! あひ! あひいい! ああああ! イイんだもんっ! ホントにオマンコきもちイイんだもんっ! あううううううン!」
痛みにも似たヒリつくような快感に、頭皮がかーっと熱くなる。
俺は、獣欲の赴くまま、葵の秘処を犯し続けた。
「あうっ! あっ! あああっ! あン! ああぁン! あひン! ひああああああぁぁぁぁ〜!」
ビブラートの効いた葵の叫びに――葵のケータイの呼び出し音が重なった。
「あ、あうっ、あわっ、あうううっ……!」
葵が、起き抜けの時に目覚ましを探すような動きで、ケータイを手に取る。
どうやら、それは、葵の男からの電話のようだった。
「あっ、あのっ、あのねっ! 今ダメ……! あっ、ああっ! ダメなのっ……!」
喘ぎ混じりの声で、必死に言葉を紡ごうとする葵。
俺は、その姿を見つめながら、さらに激しく腰を使い続けた。
「ああっ! あっ! あぁ〜っ! あ、あのっ……あとで、かけるから……ゴメンねっ……!」
一方的にそう言って、葵が電話を切る。
その目尻には、透明な涙が浮かんでいた。
「あああああああ……ゴメンね……ゴメンね……ゴメンね……ゴメンね……ゴメンね……ゴメンね……っ!」
葵が、俺のピストンのリズムに合わせて、侘びの言葉を繰り返す。
俺は、苛立ちに胸を灼かれながら、ペニスを葵の中に突き込んだ。
葵に対する苛立ちじゃない……俺が、もっとしっかりしていれば、葵はこんなふうに泣かなくて済んだんだ……。
その思いを噛み締めながら、葵の体を抱き締め、抽送のピッチを上げる。
「あっ、あああああああああああ! あひい! あひいいいいい! 子宮っ! 子宮に来てるうぅ〜っ!」
ほとんど半狂乱になって、葵は絶叫した。
「んぎっ! ひぎいいいいいいっ! こ、こんな……こんなの初めてぇ……! あっ! ああああああっ! あひ! あひい! 子宮、ズンズンされてっ……! あああああああああっ!」
葵が、女の中心ともいえる内臓で、俺を感じている。
眼の眩むような興奮に衝き動かされ、俺は――葵の唇に、唇を重ねた。
「んんっ……!」
最初、わずかにためらっていた葵が、俺の唇に吸い付いてくる。
「あうっ、うっ、うむむっ……はふっ、はっ、はああっ……んむっ……んぐうぅ……!」
噛み付くようなキスの合間に、獣の牝のように喘ぎ、そしてまた、舌を絡め合う。
唾液と唾液を交換しながら、俺と葵は、互いがもたらす快楽を貪り合っていた。
どこか遠くでケータイが鳴っているような気がするが、全く、それが気にならない。
「あうっ! ああああ! もう、もうらめ! らめぇ〜! ひいあああ! い、いううっ! イク! イクうううううううううう!」
そう叫んで、葵が、下から俺にしがみついた。
俺の胸板の下で、豊かな乳房が淫らに潰れる。
「あああああ! イクの! ボク、イっちゃうのおっ! ねっ! ねえっ! にぃも……にぃもイってええっ……! ああああああああっ!」
すらりとした両脚で俺の腰を引き寄せ、さらに深い結合をねだりながら、葵が声を上げる。
俺は、肯く暇すら惜しんで、最後のスパートをかけた。
「ひうっ! ひぐううううううううう! いっ! いいっ! いぎ! い! いぐうっ! いぐううううううううううううぅ〜!」
膣肉がきゅーっと俺の肉竿を搾り上げ、射精を促す。
俺は、葵の子宮をこじ開けるようなつもりで、ペニスを根元まで挿入した。
「あっ! ああああああああああああ! わあっ! ああああああああああああああああああああああああああああぁー!」
ぶっ! ぶびゅっ! びゅるる! ぼびゅっ! どぶっ! どぶぶっ!
これまで経験したこともなかったような快美感が、腰からペニスを貫き、葵の中に迸る。
「イクっ! イクイクイクイク! イク! イクううううぅーっ! ああっ! あっ! あっ! あっ! 熱いっ! 熱いよおっ! あああああ! 子宮イク! 子宮とけちゃうぅ〜! 子宮マンコいっちゃうよおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜ッ!」
びゅるるるるるるっ! びゅーっ! びゅーっ! びゅびゅびゅびゅびゅびゅっ! どびゅびゅっ!
葵の叫びと、射精の感覚だけを、俺の脳は認識する。
それ以外の感覚は――もはや、何も感じない。
「ああぁーっ! あっ! ああっ! あっ! あはああぁぁぁぁぁぁっ! あひいっ! あひいいいいいぃ〜! イク、イク、イク、イク! イグうううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ〜っ!」
びくっ、びくっ、びくっ、びくっ……! と、俺と、葵の体が痙攣する。
もし、誰か別の人間が見ていたら、俺たち二人は、まるで一つの生き物のように見えただろう。
「あ……あああぁぁぁ……あひ……ひいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ……」
下半身を、生温かな奔流が濡らしている。
それは……ほとんど意識を失っている葵が漏らしてしまったものらしい。
そのことすら愛しく思いながら、俺は、ぐったりと体を弛緩させた……。
…………。
何か、聞こえる。
葵の息遣いでも、ましてや心臓の音でもない。
ただ、無粋な電子音の連なり。
今、この瞬間のまどろみをさえぎる権利が、どこの誰にあるのか。
そんなふうなことを思いながら、ゆっくりと瞼を開ける。
その時には、すでに電子音は消えており――葵が、ケータイを右手で取っていた。
「うん……あのね……ゴメン……ボク、もうキミに会えない……ううん、会いたくないの」
葵の言葉に、受話器の向こうで、誰かが何かを喚いているのが、聞こえた。
何を言ってるかは不明だが、だいたいのところは、想像がつく。
俺は、手を伸ばして、葵からケータイを取り上げた。
「あ」
葵が驚きの声をあげるのにも構わず、男の情けない繰り言を、しばし聞いてやる。
一息ついたところで、俺は、口を開いた。
「葵は俺の女だ。もう近付くな」
そして、ぷち、と通話を切り、さらには電源も落とす。
「あ、あの……テルにぃ……」
「何かあったら俺に言えや。いや、それとも、俺の方からそいつに会ってやろっか?」
ケータイを返しながら、俺は、葵に言った。
「う……ううん……でも……あの……これでいいの?」
「そりゃ、こっちのセリフだ。お前、これでよかったんだよな?」
そう言いながらも、俺は、葵がどんな返事をするのか、分かっていた。
「……うん」
葵は、予想通りにそう言って、そして、甘える猫のように、俺に体を摺り寄せてきたのだった……。