第9章
「きっと、帰りますから」
そう、由奈は言った。
「今まで黙ってて、すいません……」
あの後の夜、由奈は全てを語った。
長らく生き別れていた由奈の父親が、裏社会の中で、相当の地位にいた人物であったこと。
その由奈の父親が、裏社会での地位を守るため、娘である由奈を、ある顔役に人身御供の性奴隷として差し出そうとしたこと。
由奈の父親が、遼に由奈の調教を依頼したこと。
そして、由奈の父親が、由奈の調教を強引に中断したこと。
それを理由に、遼が由奈を奪還したこと。
由奈の父親が、それによって裏社会における地位を失い、破滅したこと。
そして、由奈の父親が、復讐のために、遼を襲撃したこと。
そして――遼の記憶喪失が、その襲撃の際の傷によるものであること。
「そう……」
遼は、自分でも驚くくらい、穏やかな口調で言った。
「言いにくいことなのに、よく話してくれたね」
「……許して、くれるんですか?」
由奈が、涙で濡れた目で遼の顔を見る。
「許すも何も……由奈がしたことじゃないだろ」
「でも、そうかもしれませんけど……あたし、ずっと、そのこと黙ってて……ご主人様が、一番辛かったはずなのに」
「いいよ、そんなこと」
遼の言葉に、ようやく由奈は、泣き止んだのだった。
その後、二人は何も言葉を交わさず、それぞれの寝床で眠りについた。
そして翌朝。
「しばらく、旅に出たいんです」
そう、由奈は言った。
「あたしがココにいると、小夜歌さんのことで、ご主人様に迷惑がかかるし……それに、あたし自身、気持ちに整理、つけたくて」
「……」
「お父さんのことは、いいんです。ご主人様は、許してくれたし……しばらくは、塀の中だって、乾さんが言ってましたし……もともと、全然、お父さんって感じじゃなかったし」
「……」
「でも、この一年、すごく色々なことがあって……お母さんが死んで、お父さんが現れて、学校やめて、ご主人様と会って、それから……それから……」
「……」
「自分でも、受け止めきれてないって言うか……よく分からないんです。なんだか、夢の中の出来事みたいな気がして」
「……」
「あ、あの、あてだったら、ないわけじゃないんです。親戚のおばあちゃんが、近くに住んでて……すごくいい人で……これまでは、巻き込みたくなかったから、会ってなかったけど……お父さんのことも、一段落したし」
「……」
「だから、しばらくそこにいて……小夜歌さんとのコトも、いろいろ考えて……」
「……」
「でも、あたし」
じょじょにうつむきかけていた由奈が、再び顔を上げ、ひどくきっぱりした口調で言う。
「きっと、帰りますから」
遼は、無言で肯くしかなかった。
出発当日。
(多分、由奈が正しい)
窓越しの、やけに爽やかな昼前の日の光を浴びながら、遼は自室のソファーに座り、物思いにふけっていた。
(小夜歌と何か話をするにしても、冷却期間が必要だろうし……由奈にだって、一人で考える時間が要るはずだ。俺が止める権利は、ない)
そんなことを、暗い天井を見上げながら、ぼんやりと考えている。
(それに、由奈は帰ってくると言ったんだ。……必ず、由奈は帰ってくるさ)
遼は、伸ばした前髪に隠れた目を閉ざした。
眉や口の端が、かすかに歪んでいる。どことなく、よくない夢を見ている人の寝顔を思わせるような表情だ。
握られた拳が、かすかに震えているように見える。
控えめなノックの音に、はっと遼は目を開いた。
「ご主人様」
言いながら、由奈が扉を開ける。例のメイド服ではない。明るい色調のワンピースの上に、フリルのついたブラウス。ご丁寧にもリボンのついたつば広の帽子まで右手に持ち、「おめかし」とか「よそゆき」というような言葉がぴったり来るような服装だ。
「あの、ご挨拶に来ました」
そう言って、由奈はちょっと照れたような笑いを浮かべる。その表情といでたちのせいで、幼い顔がますます幼く見える。
「……」
遼が、無言でソファーから立ち上がって、そんな由奈に歩み寄る。
「ご主人様?」
遼が、由奈の両肩に両手を置いた。
顔を近付けてくる遼のキスに応えるべく、由奈が大きな目を閉ざした。
二人の唇が重なる。
「ン……」
由奈の腕にそって、遼は両手をそろそろと下ろしていく。
そして……
遼の中で、何かが、切れた。
がちゃり、という金属音とともに、由奈の両手が後ろ手で拘束された。
「!」
遼が、ポケットに忍ばせていた手錠を、由奈の手首に素早くはめたのだ。
「な、何?」
大きく見開いた由奈の瞳に、遼の無表情な顔が映っている。
「ご主人様、どうして……キャッ!」
何かを言いかける由奈を、遼は軽々と抱え上げた。右手で膝の裏を、左手で細い肩を、それぞれ支える。
「や、やめてください、ご主人様! お願いです、下ろして……!」
由奈が身をよじり、ぱたぱたと足を振る。しかし、そんなことを意に介せず、遼は由奈を隣室のベッドへと運んでいった。
「きゃン!」
ベッドに放り投げられるように横たえられ、由奈が短く悲鳴を上げる。
その由奈の小さな体に、遼がのしかかった。
「やめてください! こんなの、こんなのイヤあ!」
そうわめく由奈の服のボタンを、遼がむしりとるような手つきで外していく。その息が、獣のように荒い。
「なんで……? どうしてこんなコト……」
由奈は、その大きな目から、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
「あたし、必ず戻ってきますから……! こんなコト、やめて下さい!」
悲痛な声で、由奈がそう訴える。
「ダメだ……」
遼は、低い、うめくような声で言った。
「え……?」
「ダメだ、ダメだ、ダメだ……」
何がダメなのかを言おうともせず、遼はワンピースのスカートを大きくめくり上げる。
「や、イヤああああーッ!」
羞恥よりも恐怖に、由奈は叫んだ。
「やめて、やめてェーっ!」
両腕を拘束されながら、必死でその身をくねらせる由奈のショーツを、引き千切るようにずり下ろす。
そして、その両足を大きく割り開き、遼は体をねじ込ませた。
「ひッ……」
いつの間にあらわにしていたのか、遼の熱くたぎる剛直が、由奈のそこに押し当てられる。それは、まるで得体の知れない獰猛な小動物のように、びくびくと脈打っていた。
「ま、待って! 待ってください……!」
どうにかして、その肉の凶器からのがれようとする由奈の両肩を、遼はがっしりと掴んだ。
そして、何の準備もない由奈の陰部へ、硬く強張ったペニスを、強引に侵入させていく。
「い、いやああああああああアアアアアアアアアァァァァァァァア!」
激痛に、由奈の視界が、真紅に染まった。
由奈の中で、遼の猛り狂う肉棒が動いている。
(ヒドい……ヒドいよぉ……)
体の痛みよりも、心の痛みに、由奈は涙を流していた。
(ご主人様は、あたしのこと、信用してくれてないのかなあ……)
それが、何よりも哀しい。
「ご主人様……」
少しかすれた声で、由奈が遼の事を呼ぶ。
遼は、荒い息を由奈の耳に吐きかけながら、無言で腰を動かしていた。
「あ……」
ぴくん、と由奈の体が、遼の体の下で跳ねた。
由奈にとっては信じられないことに、遼によって開発された彼女の肉体は、この状況でも、浅ましく快楽を求め始めたのである。
痛みにざわめいていたはずの粘膜は、自らを保護するかのように愛液を分泌し、それによってくちゅくちゅというイヤらしい音を立てている。
「そんな……こんなのって……んあァ……」
自分の体内で育っている、まぎれもない快美感に、由奈は切なげに眉根を寄せた。
「由奈……」
遼は、犬のように舌を出し、由奈の顔を濡らす涙を、丁寧に舐め取っていった。その間も、腰の動きは一向に衰えない。
今や、由奈のその部分は充分過ぎるほどに潤い、シーツに染みるほどに愛液を滴らせていた。
「んあッ……イヤぁん……ご主人様……ヒドい、ヒドいですぅ……ふああァん……」
明らかな快楽の喘ぎの合間に、由奈の恨み言が挿入されている。
しかし遼は、何の躊躇も遠慮もなく、由奈の小さな体を貫き、犯し続けた。
ワンピースの胸元を大きく開け、ブラに包まれた巨乳に、背を丸めるようにして顔を埋める。
「あひッ! ふあァ、あふ……ふぅうッ! んくっ……あ、ああああああああァ!」
犯されることによって感じるという、女性にとっての最大の屈辱が、かえって由奈の歪んだ官能を燃え立たせる。
熱を持った粘膜同士がこすれ合い、雁首がえぐるように膣壁を責め、肉襞がシャフトに絡みついた。
「いやン、いやァン……んうゥ……ぅあッ! んふゥん……んあァッ!」
半開きになった由奈の可憐な唇は、白い歯とピンク色の舌をわずかに覗かせ、絶え間ない喘ぎ声を上げる。間違いようのない快感に、綺麗にカールした長いまつげが震え、目元がぽぉっと染まっていく。
「あァっ……あァっ……あァっ……あァっ、あァっ、あァっ、あァっ、あァっ!」
とうとう由奈は、遼の動きをより深く導くべく、はしたなく腰を浮かしていた。
「ごしゅじんさま……ごしゅじんさまア……!」
遼は、大きな由奈の乳房を包むブラのフロントホックを、器用に片手で外した。
そして、ひどく乱暴な手つきで、張りのある双乳を両手で揉みしだく。
「んはァああああ!」
きつく、甘い刺激に、由奈はひときわ声をあげていた。遼の十本の指に責められ、白い乳房が淫猥に形を変え、桃色の乳首がはっきりと尖っていく。
その尖った乳首を、遼は繊細な、それでいながら残酷な手つきでしごくように愛撫し、さらなる快楽を引き出していく。
「イヤあぁ! アソコが、アソコが、きゅんきゅんしちゃうゥっ!」
その言葉通り、胸の先端から発した快楽の電気は、由奈の小さな体を駆け巡り、膣壁はそれに応えるかのように収縮を繰り返す。
粘膜同士の摩擦はさらに激しくなり、それによって生じた熱い快感は、二人の下半身をどろどろに溶かしてしまうように感じられた。
「スゴい……あぁ、スゴいですゥ……ッ!」
由奈が、半ば茫然とした表情で、うわ言のように繰り返す。
遼は、一時ピストン運動を緩め、由奈の腰を抱えるようにした。
そして、完全に自らの上半身を起こし、仰臥したままの由奈の腰をぐりぐりと回すようにゆさぶる。
「ふあッ! あッ! んうゥううううううッ!」
由奈の声が、切羽つまってきた。イヤイヤをするかのように首を左右に振る。
「あいっ! んあァっ! ご、ごしゅじんさまァ、由奈は、由奈はもう……!」
激しい喘ぎ声の合間に、由奈はようやく、それだけを告げた。
遼も、快感に追いこまれたかのように歯を食いしばり、腰の動きを細かく早くして、最後のスパートをかける。
「んあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアアっ!」
とうとう、由奈は背を弓なりに反らせ、絶頂の声をあげた。
その由奈の絶頂に追いつこうとするかのごとく、遼が滅茶苦茶に腰を振る。
そして、遼のペニスは、由奈の子宮めがけ、熱い白濁液を放出した。
「ああああッ? あアアアアアっ! ふあああああああアアア!」
何度も何度も、牡の粘液によって子宮の入り口を叩かれる感触に、由奈は立て続けに絶頂に押し上げられる。
「あァ……あン……んくぅ……」
やがて、がっくりと由奈の全身から力が抜けた。
手を戒められたまま、快楽の海を漂っていた由奈の半身が、ぐい、と無理矢理起こされた。
「あ……」
痴呆のような表情で遼を見上げる由奈の口元に、愛液と精液でべっとりと汚れたペニスが押し付けられる。
「あン……」
その性臭に、むしろ目をとろんとさせて、由奈は濡れ光る亀頭にくちづけけする。
遼は、従順にペニスへの愛撫を始めようとする由奈の頭を、がっしりと掴んだ。そのまま、可憐な唇をむりやりこじあけるようにして、半勃起の状態の肉棒を侵入させる。
「んむぅ……んっ……んぐっ……」
半ば力を失っていても、遼のそれは、由奈の小さな口には大きすぎるほどだ。それでも、由奈は懸命に遼のペニスを喉の奥まで迎え入れようとしている。
そんな由奈のけなげな様子に、逆にまるで憎しみを覚えているような調子で、遼は荒々しく腰を前後させた。
「んんッ! んぐ、んんンーッ!」
がくがくと頭をゆさぶられながらも、遼の敏感な粘膜の表面に歯を立てないように注意しながら、由奈はシャフトに舌を絡める。
由奈は、久しぶりに、物のように乱暴に扱われる悦びに、陶酔しきっているようだった。
女性としての、人間としてのプライドを脱ぎ捨て、奴隷としての立場に身を任せきる、脳髄が痺れるような快感。
もはや、由奈の頭の中には、旅の間に自分を見つめ直そうなどという、人がましい考えはカケラも残っていない。わざわざ「自分探し」などしなくても、自身を性奴隷として強烈に規定してくれる主人が、文字通りすぐ目の前にいるのだ。
「ふぅン、ンふぅうン……」
由奈は、遼の乱暴なイラマチオに嬉しげに鼻を鳴らした。ついさっき、あれほどオルガスムスを貪ったはずの靡肉が熱くうずき、腰が知らず知らずのうちにもじもじと動いてしまう。
遼のペニスは、由奈の口の中で、すっかり硬くなり、大きさを取り戻していた。
まるで、そのことを誉めるかのように、ようやく遼は腰の動きを止め、由奈の頭を撫でる。
「おいひい……ごひゅじんさま、おいひいれすゥ……」
ようやくイニシアチブを取り戻した由奈が、亀頭を口に含んだまま、もごもごと呟く。
そして、ひとしきり亀頭を口の中で舐めまわした後、口を離し、逞しくそり返るシャフトの裏側に、丹念に舌を這わせる。
赤黒い亀頭や、濃い褐色の陰茎を、ピンク色の唇と舌が這い回る姿は、痛々しいほどに淫猥だ。しかも、由奈はその間、うっとりと目を閉じ、恍惚とした表情で、自らの唾液に濡れたシャフトに頬ずりまでする。
「ああ、熱い……ご主人様のオチンチン、すごく熱いです……」
由奈は、柔らかい頬や広い額で遼のペニスの温度を感じながら、そう言った。
そして、可愛く小首をかしげて茎の部分を横咥えにし、くにくにと首を振って刺激する。両手に手錠をはめられて使えないのが、なんとももどかしそうだ。
「ご主人様……ご主人様の熱いミルク、由奈に呑ませて下さい……」
隷従しきった口調でそう言って、由奈は、再び遼のペニスを亀頭から咥えこんだ。
そのまま、頭を前後に動かし、舌と口腔粘膜で、熱くたぎる剛直をこすり上げる。
「由奈……」
遼が、由奈の頭を撫でながら呟いた。由奈は上目遣いに遼の顔を見、目だけでにっこりと微笑む。
由奈の動きが、早くなった。
頭を左右にねじるようにして、遼のペニスから精液を搾り取ろうとする。
たまらず、遼も再び腰を動かしていた。
ぶちゅぶちゅという卑猥な湿った音が、白昼の寝室に響き渡る。
「くッ……!」
遼が、小さくうめく。
どぴゅうっ
という音まで聞こえそうな射精が、由奈の口の中で弾けた。
二度目だというのに、驚くほど大量の精液が、由奈の可憐な口に注ぎ込まれる。
その噴出がひとしきり終わると、由奈は白く細い喉をこくこくと鳴らし、口内にたまった青臭い粘液を、嬉しそうに飲み干していった。
そして、尿道に残った精液までちゅるちゅると吸い出した後に、ぷはっ、と可愛い吐息が漏らして、ようやく口を離す。
「おいしかったです……ご主人様のミルク……」
由奈は上気した顔で言った。
姿勢を変え、遼は由奈を後ろから責めている。
由奈も遼も、すでに全裸になっていた。
由奈は、両膝と頭で、体を支えていた。本来であれば四つん這いの姿勢なのだが、未だに両手を背後で戒められているのだ。その銀色の手錠だけが、由奈の身につけている唯一の物であった。
しわくちゃに乱れた服を脱がされている間、この手錠は外されていた。その間も、由奈は何の抵抗もしなかった。
そして、生まれたままの姿になった由奈に、遼は再び手錠をかけたのだ。由奈は、自分から手を後ろに回して、そんな遼に協力した。
今、柔らかい三角形を描く由奈の体は、ひときわ高くお尻を上げている。
白桃を思わせる小ぶりなヒップを抱え込むようにしながら、遼は由奈の陰部を舐めしゃぶっていた。
舌でサーモンピンクのクレヴァスをなぞり、靡肉をかき分けるようにして、尖らせた舌先を侵入させる。さらには、ぱっくりと開いたその部分から覗く肉の襞を唇で咥え、じゅるじゅると音をたてて、その部分から滴る粘液をすすった。
溢れ出た愛液と膣から逆流した精液は、由奈の太腿の内側まで濡らし、ぬらぬらと光っている。
「ああァ……きもちイイ……きもちイイです、ご主人様ァ……」
無理な姿勢でお尻を突き出しながら、由奈は喘ぎ泣くように訴えた。
遼は、そんな由奈の尻肉の形や感触を楽しむように、舌や唇を肌の上に這わせ、ちゅっ、ちゅっと軽いキスを繰り返す。
「んふぅ……ン」
陶酔しきった声を出す由奈。
そんな由奈の、ひそやかに息づく菊の蕾に、遼は不意にくちづけした。
「ひゃッ!」
由奈が、可愛い悲鳴を上げ、体を小さく跳ねさせる。
「ダ、ダメ……そこは、そこはァ……」
汚い、と言おうとする由奈を黙らせようとするかのように、硬く尖らせた舌で、細かなシワに囲まれた小さな穴を、ぐりぐりとえぐる。
「ひァああああああああン」
妙な悲鳴をあげながら、由奈がかくかくと脚を震わせる。どうやら、腰から下の力が抜けてしまっているらしい。
遼は、たっぷりと由奈の菊門を責めた後、下の方に口を移した。
そして、由奈の前と後を、交互に口唇愛撫する。
「あァっ、もう、もう……ッ!」
近付いてくる絶頂感に身をおののかせた由奈から、遼は口を離した。
「あァん、や、やめないでェ……」
そう、あられもない声で言いながら、由奈が背後の遼に流し目をよこす。
遼は膝立ちになり、またも勢いを取り戻しているペニスで、由奈のその部分に狙いをつけていた。
「ご、ごしゅじんさまァ、早く、早くくださいィ……」
鼻にかかった甘たるい声で、由奈がおねだりをする。
遼は、わざと焦らすように、由奈の靡肉の入り口に、浅く亀頭を潜り込ませた。
そのまま、ペニスを上下に動かし、くちゅくちゅと音を立てる粘膜を刺激する。
「いやんいやん。ごしゅじんさまァ、早く、早く奥までェ……っ!」
由奈が、もどかしい快感に、体を揺らして訴える。
遼は、ことさらゆっくりと、由奈の膣内へペニスを侵入させていった。
「ああァ……きもちイイ……由奈、う、うれしいです……ッ」
逞しく膨張した牡器官が、背後から自らを犯していく、圧迫感に似た快感に、由奈が高い声をあげる。
ようやく、遼のペニスが、根元まで由奈の内部に収まった。
「くふゥ〜ん」
由奈が、何とも幸せそうな声をあげる。
由奈のアソコはやや上付き気味なので、よほどお尻を高く上げないと、後背位はキツい体位である。しかし、そのキツさそのものまでも、由奈は快感としてとらえているようだった。
遼が、由奈の幼げな腰をつかみ、抽送を始めた。
「あァっ! あァ、ああァ、ああーッ!」
硬く反り返ったペニスが、膣内粘膜をこすりながら前後する快感に、由奈が声をあげる。
「あひッ! イっ! イイっ! き、きもちイイですゥ……ッ!」
そんな由奈の嬌声に、ぱァン、ぱァン、ぱァン、ぱァン、という、遼の腰が由奈のヒップをリズミカルに叩く音が混じる。
しばらくして、遼は、自らを射精に追いこもうとする、最初の快感の大波をやりすごすべく、ピストン運動を緩めた。
そして、犬か狼のような荒い息を吐きかけながら、由奈の小さな背中に覆い被さるようにし、背後から乳房をすくいあげる。
重たげに揺れる乳房は砲弾型になり、遼の手からこぼれおちそうなほどだ。
遼は、由奈の双乳を揉みしだきながら、なだらかな曲線を描く背中を舐め上げた。
「んはあああァ〜……ン」
ぞくぞくぞくっ、と体を小刻みに震わせながら、由奈が可愛い泣き声をあげる。
遼はそのまま、肩やうなじに舌を這わせ、髪の毛の匂いをかぐようにする。
そして、遼は、由奈の乳房に指を食い込ませたまま、体を起こした。
「ふあああああッ?」
膝立ちの遼が、同じく膝立ちの姿勢の由奈を、背後から貫く姿勢になる。が、身長差があるために、由奈の膝は、半ばシーツから浮いた状態になる。
「あ、あ、あああああああァ」
由奈自身の体重が、遼のペニスに深々と貫かれた股間にかかった。
斜め上を向く遼のペニスは、由奈の膣壁の、前の部分を圧迫する形になっている。
遼が、由奈の体を上下させて、抽送を再開する。
「あッ? ああァ、あイッ! そ、そこはァ……っ!」
由奈が、うろたえたような声をあげる。
遼の亀頭の裏側が、由奈のGスポットをとらえたのだ。
「あひッ! ひああああああァ! ダメ、ダメぇ!」
これまでとは別種の快感に、由奈がイヤイヤをする。
「何がダメなんだ?」
遼が、由奈の耳元に口を寄せ、訊いた。
「なんなら、やめてやろうか?」
さらにそう言って、不意に体の動きを止める。
「あァっ! イジワル、ご主人様のイジワルぅ!」
由奈が、さらに大きく首を振った。そして、もどかしげに、由奈が遼の腕の中で体をゆする。
「やめないで、ソコを……ソコをもっと……!」
由奈が言い終えないうちに、遼は大きく腰を突き上げた。
「んああああああああああ!」
びくッ、と由奈の体が痙攣する。
さらに、遼は大きく由奈の体を上下し、由奈の感じる部分をペニスで激しくこすり上げた。
「ひあ! あ、あ、あ、あ、あァ〜ッ!」
由奈の高い悲鳴が、広い寝室中に響く。
「んああ、出ちゃう! も、もう、漏れちゃう、漏れちゃうよォ〜っ!」
強烈な尿意にも似た快感が、由奈の股間で高まっていく。
「んわぁああああァッ!」
悲鳴を合図に、ぷしゃあああああ……と音を立てて、由奈の股間から透明な液体がしぶいた。まるで失禁してしまったような勢いで、大量の液がシーツを濡らしていく。
羞恥と快感とに全身を赤く染めて、由奈の小さな体が身悶える。
「由奈……っ!」
潮を吹きながら、びくびくと蠢く由奈の膣の動きに追いこまれ、遼は声をあげた。
「ああッ、ごしゅじんさま! ください、ごしゅじんさまのミルク、由奈にくださいッ!」
遼の絶頂が近いと見て、由奈が背後に流し目の視線を向けながらおねだりする。
「くゥっ!」
ついに、遼が最後の声をあげた。
びゅゥっ! と凄まじい勢いで、遼のペニスから白濁液が放たれる。
「ふわァっ!」
その感触に、由奈も絶頂に舞い上げられた。
「あついッ! ごしゅじんさまのミルク、あついィーッ!」
その熱い精液が下から子宮口に叩きこまれる感触に、由奈は頭の中が真っ白になる。
「あ、ああああァ……んあァ……ふぁ……」
羽毛になって、光に満ちた空に軽々と浮かんでいるような感覚。
(ああ、ステキ……ずっと、ずっと……こうしていたい……)
そのまま、由奈は失神した。
由奈が目を覚ますと、すでに手錠は外されていた。
ふわふわの枕に頭を乗せ、ベッドに横たわる由奈を、同じく横になって、立てた前腕で頭を支えている遼が見下ろしている。
「挨拶は、どうした? 由奈」
遼は、かすかに笑みらしきものを浮かべた口で、そう言った。
「あ……」
由奈は、快楽に溺れきった自分を恥じるように、ぽっと赤く頬を染めた。そして、いそいそと正座の姿勢になる。
「ありがとうございました、ご主人様。これからも、このいやらしいメス奴隷を、うンと、可愛がってください……」
そう言って、深々と頭を下げる。
頭を上げたとき、由奈はひどく不思議そうな顔をしていた。
「あの……」
前髪の奥の、表情の読み取りにくい遼の目を、由奈はじっと見つめた。
「あの……もしかして……」
声を震わせながら、由奈が訊く。
「記憶、戻ったんですか?」
「悪い……そうみたいだ」
由奈の大きな目が、みるみる涙で濡れていく。
「ホ、ホントに……ホントに?」
「ああ……」
遼が、苦い顔でうつむく。
由奈は、その遼の胸に飛び込むように抱きついた。
「お、おい」
横たわったまま、ベッドから転げ落ちそうになった遼が、慌てた声をあげる。
「ごしゅじんさま、ごしゅじんさまあああああ!」
由奈は、遼の胸に顔を押し付け、子供のように声をあげて泣いていた。
遼は、そんな由奈を困ったように見下ろしている。
「由奈……」
ようやく、由奈の泣き声がやんだのを見計らって、遼が声をかけた。
「ふえっ、えっ……ええっ……えくっ……」
とても18歳とは思えない、なんとも情けない声でしゃくりあげながら、由奈が涙でぐしゅぐしゅに濡れた顔を遼に向ける。その両腕は、遼を逃すまいとするかのように、その胸にしっかりと回されていた。
「ご……ご主人様、お帰りなさい」
由奈が、まだちょっと涙声で、それでもにっこりと微笑みながら、そう言う。
「妙な、気分だよ。記憶を取り戻したら、記憶喪失中のことは憶えてないと思ってたけど……違うんだな」
「それは……そうですよね。何も憶えてなくても、ご主人様は、ずっと、ご主人様のままでしたもん」
「そうか?」
「いつもより、ちょっと優しかったけど……」
「ベッドでのコトか?」
「もう!」
遼の軽口に、ぷっ、と由奈が頬を膨らます。しかし、すぐ真顔に戻り、そっとつぶやいた。
「やっぱり、ご主人様だ……」
そして、甘える猫のように、遼の胸に頬ずりする。
「……あのな、由奈」
そんな由奈に、遼は覚悟を決めたような口調で話しかけた。
「俺……ずっと……言えなかったことが、あったんだ……」
「え……?」
きょとんとした由奈の顔を、ひどく真剣な表情で遼が見つめている。
「好きだ、由奈」
数瞬の後、その言葉の意味が脳に届いたとき、由奈はその大きな目を一杯に見開いた。
お前は自分の妹だ、と告げられても、こんなに驚いた顔はしなかったろう。そんな顔だ。
「好きだ……愛してる。ずっと……言えなかった」
遼が、かすかに震えているような声で、告白を続ける。
「言えば、お前を失いそうで……。お笑いだな。初心なガキでもあるまいし」
「そんな……だって、だって……」
由奈が、驚きの表情のまま、言った。
「だって、あたし……胸ばっかりおっきくて、全然かっこよくないし……チビだし、童顔だし、子供みたいだし……泣き虫で、ワガママで……」
「前にも言ったろ。お前は、男にとっては、すごく可愛い顔と体をしてるって」
くすり、と遼は笑った。
「特に、イクときの顔がな」
「ご主人様のバカぁ! いじわるッ!」
かあっ、と顔を赤く染め、由奈が遼の胸に顔を伏せる。そして、その姿勢のまま、小さな声で続ける。
「……あたしの気持ちは、前に、言った通りです……好きです……大好きです……」
「いいのか? 俺は……俺は、記憶を無くす前の俺なんだぞ……由奈のことは、奴隷として愛しているんだし……他の女を調教することだって、やめやしないんだぞ……」
「由奈は、ご主人様の奴隷です……」
うっとりとした調子でそう言いながら、由奈が遼の胸にくちづけする。
「ずっと、ずっと、由奈をご主人様の奴隷でいさせてください……」
「由奈……」
それ以上は何も言わず、遼は、強く由奈を抱きしめた。