第8章
数日が、経った。
遼と由奈が、食堂のテーブルで、向かい合って朝食をとっている。トーストとベーコンエッグ、簡単なサラダ、そして冷たいミルク。
由奈は、トーストの切れ端を口に運びながら、ちらちらと遼の顔を盗み見ていた。
遼の顔は、最近、どこか明るい感じがする。記憶は一向に戻る様子がないのだが、そのことにこだわるのを止めたらしい。
それが、自然とそうなったのか、無理してそうしているのか、由奈には分からない。
とにかく遼は、過去を吹っ切るつもりでいるらしい。新しい就職口を見つけ、可能ならこの屋敷も引き払うつもりのようだ。幸い、遼の口座には、かなりの額の金がある。彼の年齢で人生をやり直すための資金としては充分すぎるほどだ。
「あの……」
由奈は、そんな遼に、何か決心したように言いかけた。
「何?」
トーストをかじりながら新聞を読んでいた遼が、顔を上げる。
「えっと……やっぱり、何でもないです」
「ふうん」
ふっ、と遼は笑った。数日前の、風呂場でのやり取りを思い出したのだ。
(今なら、言えるだろうか……)
そう思いながら、ミルクをお代わりしようと、パックに手を伸ばす。
「……?」
遼は、しきりに目をしばたいた。急激で不自然な眠気が、突如、湧き起こってきたのだ。
「な……?」
見ると、由奈も大きな目をぱちぱちさせ、上体を揺らしながら、不思議そうな顔をしている。
「よく効くクスリね♪」
聞き覚えのあるきれいな声が、食堂に続く厨房から聞こえた。
「小夜歌……!」
振り返り、頼りない声で遼がそう言ったときには、由奈はことんと頭をテーブルに落としていた。そのまま、くーくーと眠りについてしまう。
「あらら、お行儀の悪いメイドさん」
嘲弄を含んだ声で、食堂のドアのところに立つ小夜歌が言う。黒い薄手のニットに、赤いミニといういでたちだ。週末、学校は休みである。
「ど、どうやって……?」
「ここは、あたしの家だもん、鍵くらいは持ってるわよ。ちょっと早起きしちゃったけどね」
皮肉げな口調で、小夜歌が言う。
その小夜歌の背後に、場違いな明るい顔でにこにこと微笑む円の姿を認めた時、遼の意識も強烈な睡魔の中に飲み込まれてしまった。
どれくらいの時間が経ったのか、遼は、鉄パイプで作られた簡素なベッドの上で目を覚ました。
マットレスは固く、とても寝心地のいい代物ではない。その上、遼の手は、バンザイの姿勢で、手錠でベッドのパイプに固定されている。
「……」
遼が、声に出さずに小さく唸る。
そこは、屋敷の地下室だった。
コンクリートが打ちっぱなしの壁や床を、蛍光灯の薄暗い光が照らしている。天井からは、滑車に通された鎖がいくつも下がり、壁には大きな鏡や、磔台が備えられていた。さらには、どういうつもりか部屋の隅には、剥き出しのバスユニットまで置かれている。
遼が、そしてさらに遡れば彼の父である秋水が、拘束された女体に対して数々の仕打ちをしてきた部屋である。
「やっと目が覚めた?」
その声に、遼は重く痛む頭を巡らせた。視線の先で、小夜歌が綺麗な顔を笑みの形に歪めて立っている。
そして、その足元に、全裸にされた由奈が正座を崩したような姿勢で座りこんでいた。両手が手錠で戒められている上、その手錠が、天井から下がる鎖に繋がれているため、両腕を上げた姿勢で、がっくりとうなだれている。さらに、犬にでもするような黒い革製の首輪までされ、首輪から伸びる鎖は床のフックに固定されている。
まだ、由奈の意識は戻っていないらしい。
「由奈に……何をした……?」
覚束ない声でそう言う遼に、小夜歌はかすかに眉を跳ね上げた。
「まだ、何もしてないわよ」
そう言いながら、遼に見せつけるように、由奈の顔を顎に手をかけて起こし、ぴたぴたと軽く頬を叩く。
「ンン……あ……」
由奈は、その垂れ気味の大きな目を、ゆっくりと開いた。睡眠薬の影響が抜けないのか、その瞳はぼんやりとしている。
「あ、ああッ!」
しばらくして、ようやく自分の姿に気付いたのか、あわてて剥き出しの胸を隠そうとする。しかし、鎖がじゃらんと鳴っただけで、それはかなわなかった。むしろ、その大きな乳房が、まるで見せ付けるようにふるんと揺れる。
「おっきなおっぱいね……」
声にかすかな嫉妬をにじませながら、小夜歌がそっと由奈の胸に触れた。
「あ、イヤ! やめてください!」
由奈の抗議の声にもかかわらず、小夜歌は胸への愛撫をやめようとはしない。それどころか、由奈の背後で膝をつき、腋の下から乳房に両手を回し、揉み始める。
「すごい巨乳……ふふっ、まるで牛みたい」
残酷にそう言いながらも、小夜歌の手つきはあくまでソフトだ。
由奈は、屈辱と羞恥に頬を染めながら、うつむいた。声を漏らすまいと、ぎゅっと唇を噛んでいるが、小夜歌の巧みな指使いに、時折、小さく鼻を鳴らしてしまう。
「あんた、こういう大きいのが好きだったの? おっぱい以外は、ずいぶんとロリロリだけど」
あけすけにそう言いながら、小夜歌が遼の方を見る。しかし、手は休まず、由奈の豊か過ぎる胸をこね回し、白く細い指先で乳首を弾くように刺激している。
「イ……イヤ……な、なんでこんなコト……」
同性ならではの繊細な愛撫に、必死で喘ぎ声を漏らすまいとしながら、由奈が言った。
「よせ、小夜歌……由奈は、関係ないだろ……」
遼も、苦しげな口調で、うめくように言う。
「……そうね」
拍子抜けするほどあっさりとそう言い、小夜歌は由奈の裸身から離れた。そして、ゆっくりと、ベッドに拘束されている遼に歩み寄る。
「本来の目的は、あんただもんね」
言いながら、ベッドの傍らに立ち、切れ長の黒目がちな目で、遼の顔を見下ろした。その小夜歌の目とそっくりな遼の目が、乱れた前髪の奥から小夜歌の視線を受け止める。
「本当は、殺してやろうかとも思ったんだけど……」
囁くようにそう言いながら、小夜歌はその長い指を遼の首に絡めた。背後で、由奈が息を呑む気配がする。
「記憶を失ってるんじゃ、しょうがないもんね。とりあえずは、コレで、許したげる……」
意外なほど優しい声で言い、小夜歌はゆっくりとその指を滑らせていった。しわくちゃになったワイシャツの上を、胸から腹にかけて撫で、さらに、スラックスの股間の部分を、両手で包み込むようにする。
遼は、屈辱に目を閉じ、眉をひそめた。いっそ小夜歌を蹴飛ばしてやろうとも思ったが、両足首にも拘束具がはめられ、それもやはりベッドのパイプに接続されている。
くくっ、と小夜歌が年に似合わない色っぽい声で笑った。
「ちょっと、硬くなってる……」
「そりゃそうだよ。お姉ちゃん、由奈さんの胸、すっごいエッチな顔でいじってるんだもん」
いつのまにか、小夜歌と反対側のベッドの傍らに、円が立っていた。薄いブルーのチェック柄のワンピース姿だ。相変わらず、胸のふくらみを差し引いたとしても、どうしても少年には見えない。
「ホラ、お姉ちゃんが触ってるうちにも、どんどんおっきくなってる……」
濡れた声で言いながら、円も遼のその部分に手を伸ばす。
「よ、よせ……っ」
そう言う遼の声には、力がない。まだ、脳に膜がかかったような倦怠感が残っているのだ。
無邪気な笑みを浮かべながら、円が遼のベルトを外し、ジッパーを下ろす。そして、半ば血液を充填させたペニスを、壊れ物を扱うような手つきで、トランクスから解放した。
「ボク、お兄ちゃんのコレ触るの、初めてなんだ」
円が、何となく感慨深げにそう言いながら、さすさすと優しく遼の男根を撫で上げた。
小夜歌は、そんな兄と弟の姿を、なんとも複雑な表情で見ている。
「どうするの? お姉ちゃん」
円が、悪戯っぽい目つきで小夜歌の顔を見た。
「どうって……?」
「お姉ちゃんがしないんなら、ボクが先にしちゃうよ」
「……」
まだ、何かを迷ってるような表情の小夜歌ににっこりと微笑みかけ、円はその可憐な桜色の唇で、兄のペニスに軽いキスをした。そして、唇を亀頭に付けたまま、より強いタッチで、すりすりと両手でシャフトを撫でさする。
「くッ……」
いくら少女の姿をしているとはいえ、弟なのだ。それなのに、遼の肉茎は、円の刺激に浅ましく反応していた。
「あはっ、元気元気♪」
自分の口元で熱く、硬くなっていくペニスに、円は歓声を上げた。そして、頬を軽く染めながら、亀頭にキスを繰り返す。
「……お姉ちゃん?」
うっとりと閉じていた目を開け、再び円が小夜歌の顔を見た。
「……」
小夜歌は、なぜか背後の由奈の方を振り返った後、その顔を遼のソレに寄せていった。
「ね、いっしょにしよっ♪」
そんな小夜歌に円は楽しげに言って、遼の熱くたぎり始めている部分への愛撫を再開した。
いざ始めると、小夜歌は激しかった。
紅い唇を開いて、一気に亀頭からシャフトへと喉奥に飲み込む。
そして小夜歌は、さらさらの黒髪を揺らしながら、口唇によるピストン運動を行った。じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ、じゅぷというイヤらしく湿った音が地下室に響き、その口から出てくるたびに、遼のペニスはぬらぬらと唾液に濡れ、そこだけ光って見える。
「もう、お姉ちゃんてば、ボクにも残してほしかったのに……」
そんなことを言いながら、円はベッドに上がり、遼の開かれた両足の間にうずくまった。そして、その股間に顔を寄せ、スラックスとトランクスを太腿までずり下げ、皺だらけの陰嚢にくちづけする。
それを見て、小夜歌は一時、フェラチオを中断した。口元に笑みをためながら、円にならってベッドに上がる。どうやら、遼のその部分に何をするのか、拘束されたままの由奈に見せ付けるつもりらしい。
三人の体重を乗せても、頑丈そうな鉄製のベッドは、軽く軋みをあげただけで、びくともしなかった。
小夜歌は、その白く長い足で遼の上半身をまたいだ。そして、ミニスカートの中のショーツが半ばあらわになるのも構わず、上体を倒して、円が舐めしゃぶっている遼のペニスに口を近付ける。ちょうど、シックスナインに近い態勢である。
円は、ひとしきり陰嚢を口に含んで愛撫し終え、今は遼の竿を両手の指で支え、ちろちろと裏筋を舐めていた。
それを見て、小夜歌も舌を出し、亀頭の表面を、まるで子供がアイスキャンディーでも舐めるように舐め上げる。
「おいしい……お兄ちゃんのオチンチン」
まったく邪気のない表情で、円は言った。
「パパのより硬いかな……おっきさは、同じくらい大きいけど」
そんな言葉を聞くたびに、遼の頭にかあっと血が上る。しかし、そんな激情も、二人の巧みな技術の前に、単なる性的興奮に変換されてしまうのだ。
「……くっ……うぅっ……くぁっ……!」
二枚の舌が、ペニスの表と裏を同時に刺激する快感に、遼は他愛なく声を漏らしていた。二人とも、男が感じる部分を知り尽くしているかのように、的確にポイントをおさえ、舌の平をこすりつけるように刺激したかと思うと、雁首の縁や、亀頭の先端の鈴口を、舌を尖らせてえぐるように舐める。
その上、遼の絶頂が近づくと、じらすように口を離すのだ。
その間、二人分の唾液でぬるぬるになったペニスをあやすようにしごき、互いに互いの唇を貪るようにキスをする。
円はキスの間、目元をぽおっと染めながら、うっとりと目を閉じていた。一方、小夜歌は、時折、ぞくっとするような流し目を由奈によこす。
由奈は、そんな三人の兄弟の姿から目を離せないでいた。
大きな目を見開き、顔を耳まで赤くして、そして、無意識に、もじもじと太腿をこすり合わせている。
そんな由奈の様子を満足そうに見て、小夜歌は、一足先に兄のペニスにむしゃぶりついていた円の後を追うように、行為を再開した。
吸盤のようにぴったりと唇をペニスに当て、茎の部分に這わせ、左右から同時に、つるつるとした感触の亀頭を吸引する。そして、小夜歌は亀頭を口に挟んで、舌を回すようにその部分を刺激し、円は再び陰嚢を口に含み、左右の睾丸を交互に舌の上で優しく転がした。
ちゅぱっ、ちゅぱっ、と可愛い音を立てながら、逞しく反りかえった赤黒い剛直を、タイプの違う二人の美少女が仲良く口唇愛撫している。男であれば、羨ましく思わぬ者はないような風景である。
しかし遼は、まるで凄まじい苦痛に耐えているかのように、歯を食いしばっている。
「んふ……もう、カンネンしちゃったら? お兄ちゃん」
遼の太腿まで舐めしゃぶり、唾液でぬらぬらと濡らしながら、円が言った。
「イキそうなんでしょ? お兄ちゃんのココ、もうガマンできないーって、びくんびくんしてるよォ」
円の言葉どおり、遼のペニスはどくどくと脈打ち、見ているものが痛みすら感じるほどに膨張していた。
しかし、遼は、じっとこちらを見ている由奈の視線を避けるように顔を背け、快感が爆発するのをこらえている。
「ごーじょーなんだから……」
そう、円が言いかけたとき、小夜歌が最後の攻勢に出た。
もう一度、遼のペニスを根元まで咥え、頭を激しく上下させる。
「……〜ッッッッッ!」
遼は、食いしばった歯の間から、声にならない声をあげていた。
いよいよ限界が来た遼のシャフトの根元を、ディープスロートを続けたまま、小夜歌が指先で締め上げたのだ。
イきたくてもイけない、甘美な苦痛に、両手両足を戒められた遼の体が、小夜歌の体の下でのたうつ。
「ぅあああああああああああーッ!」
小夜歌の指からペニスが解放されたとき、遼は、悲鳴を上げていた。
一瞬遅れ、小夜歌の口の中に、呆れるほどの量と勢いの精液が溢れた。
さすがに、小夜歌が顔を引く。
遼のペニスは、陸に上げられた魚よりも激しく跳ね、そこらじゅうに精液を撒き散らした。
「お姉ちゃん、ボクにも……」
やや茫然とした表情の小夜歌に、円がキスをする。
「んんっ、んくっ……んっ……」
姉の口にぴったりと吸いつき、その口内に溢れる粘液を、こくこくと喉を鳴らしながら飲み込んでいく。
そして、いかにも満足げな顔で、円は口を離した。
「おいしかった……お兄ちゃんのセーエキ」
にこっ、とまるで甘いものを食べた後の幼女のような無邪気さで、円は微笑んだ。
由奈が我に返ると、目の前に小夜歌が立っていた。
「あ……」
由奈は、反射的にうつむく。
その由奈の太腿の間に、小夜歌は靴をはいたままの右足を差し入れた。
「あッ!」
眉をたわめ、由奈が短い悲鳴を上げる。小夜歌の靴先が、由奈の最も大事な部分に押し当てられたのだ。
小夜歌が、口元に笑みを浮かべながら、足の先をくりくりと動かす。
「……ンン……イヤ……や、やめてェ……!」
由奈は、小夜歌の足から逃れようと、腰を引いた。しかし、両手を天井から下がる鎖に繋がれ、首輪に鎖までつけられた身では、それもままならない。せいぜい、その顔を白い腕で隠そうとするくらいだ。
小夜歌は、ぞくぞくするような表情で、由奈を足一本で追い詰めていく。
「あなたのココ、濡れてるわよ……」
「……!」
小夜歌の指摘に、由奈はきつく目を閉じた。目尻からぽろぽろと涙の玉がこぼれる。
「大事なご主人様がなぶられるのを見て、興奮しちゃったの?」
「……許して……許してください……」
涙を流しながら、由奈は哀願した。しかし、小夜歌は明確なS性をにじませた顔で、さらに由奈を攻めたてる。
「やらしいのはオッパイだけじゃなかったのね、この牝牛ちゃんは」
「あッ!」
由奈が高い声をあげた。小夜歌が、由奈の双乳をきつくつかんだのだ。
「い、痛い……やめてェ……」
「何言ってんの。乳首が、びんびんに立ってるわよ」
そう言いながら、乳首を指でつまみ、ぐい、と上に持ち上げる。
「イヤアァーッ!」
じゃらじゃらと鎖を鳴らし、体を反らすようにして、由奈が身悶える。
ぱっ、と小夜歌が手を離した。由奈の巨乳が、滑稽なほどに上下に揺れる。
「うっ……ひくっ……うぅゥっ……」
子供のようにしゃくりあげる由奈を見下ろし、小夜歌は舌で淫靡に唇を舐めた。そして、再び靴先を由奈の股間に差し入れる。
「ンあッ!」
「ふふっ、すごい濡れてる……あなた、いじめられて感じちゃうんでしょ?」
「そ、そんなコト、ありません……」
「ウソツキね……」
囁くように言って、小夜歌は足の動きを速めた。
「あッ、あああッ! あァーッ!」
由奈の悲鳴に混じって、くちゅくちゅという濡れた音が、地下室のよどんだ空気を震わせる。
小夜歌の動きだけでなく、戒められ、抵抗できない状態でなぶられるというシチュエーションによって、由奈は、確実に追い詰められていった。今や由奈は恥辱と被虐の快感に喘いでいる。
そして小夜歌は、絶妙のタイミングで身を引いた。
「え……?」
由奈が、ひどく情けない表情で小夜歌を見上げた。イキそこねた腰が、がくがくと震えている。
「どうしたのかな、牝牛ちゃん。続きをして欲しいの?」
小夜歌が、腰に手を当てて、わざとらしく訊く。
「それとも、続きはあいつとしたい?」
そう言って、小夜歌は、遼の方をちらりと向いた。
「……」
由奈は、ちょっと心配になるくらい空ろな瞳を、遼に注いだ。その息が、荒い。
遼は、未だベッドに拘束され、その股間のモノを、円に弄ばれている。
「どうなの? 黙ってたら、分かんないでしょ?」
まるで幼稚園児に話しかけるような口調で、小夜歌がうながした。
「したい、です……あたし、ごしゅじんさまと……」
由奈が、うわ言のように言う。
「だったら、あなたのアレで汚れたあたしの靴、舐めてきれいにしなさい」
そう言って小夜歌は、由奈の手錠を固定しているフックを外した。
「ハイ……」
素直にそう返事をして、由奈は、犬の姿勢で、自らの愛液で濡れ光る小夜歌のエナメルの靴に口付けした。そして、ピンク色の舌で、ぺろぺろと懸命に小夜歌の靴を舐め清める。
その表情は、屈服と恥辱に酔いしれ、犯罪的なほどの被虐美をにじませていた。
「……もういいわ」
しばらくそうさせた後、小夜歌は、由奈の首輪の鎖を外した。そして、その左右で結んだ髪を掴んで、ぐい、と立たせた。
「ああッ!」
たまらず、由奈が悲鳴を上げる。
「乱暴したらダメだよォ、お姉ちゃん……」
今まで含んでいた遼の肉茎から口を離し、円が言う。そして、由奈の方を向き、にっこりと笑いかける。
「ホラ、由奈さん、準備しといたからね」
その言葉通り、遼のペニスは、先程あれだけの量の精を放ったにもかかわらず、すっかり勢いを取り戻していた。その表面は、ぬらぬらと粘液で濡れ光っている。
「あぁ……ごしゅじんさまの、オチンチン……」
そう、うっとりとした口調で言って、円と入れ違いに、由奈はのろのろとベッドに上がった。未だ、手錠で両手をつながれているため、その動きはちょっと危なっかしい。
しかし構わず、由奈は遼の腰をまたぎ、そろえた手を遼の腰骨のところに添えた。
「ごしゅじんさま……」
「由奈……」
由奈の声に、薬の後遺症もあってか半失神状態の遼が、辛うじて答える。
「ゴメンなさい、由奈、もうガマンできません……」
そんなことを言いながら、遼のペニスに両手を添え、角度を調節する。
「ごしゅじんさまのオチンチン、スゴくあつい……」
そう言いながら、自らのぬかるみに亀頭の先端を当て、挿入を試みる。
「あァん、だ、ダメ……足が、ふるえちゃう……」
その言葉通り、由奈の膝はかくかくと震え、なかなか狙いが定まらない。結果、いたずらにシャフトをクレヴァスにこすりつけることになり、由奈の足からはますます力が抜けていく。
「うン……くぅン……はァ〜ン……」
切なげな息を吐きながら、ふりふりと可愛いお尻を動かす由奈。しかし、本人にとっては必死の作業である。
円は、ひどく熱っぽい目で、そんな由奈を見つめている。一方、小夜歌の黒々とした瞳は、なんとも奇妙な表情を浮かべていた。
「あ。あァっ!」
由奈が、歓喜の声をあげた。
とうとう遼のペニスをアソコでとらえることに成功したのだ。
「あ、あああ、あはっ。はァあああァンンンン……」
そのまま、雁首が膣内粘膜をこすり上げていく感触を楽しむように、ことさらゆっくりと腰を落としていく。
「ンはアッ!」
すっかりアソコがペニスを飲み込み、その先端が子宮口を叩いたところで、由奈は軽い絶頂を味わっていた。ぴくん、とその小さな体が痙攣し、白い喉を反らせて頭がのけぞる。
そして、がっくりと由奈は上体を前に倒した。
「はァっ、はァっ、はァっ、はァっ……」
まだワイシャツをまとったままの遼の体に体重を預け、荒い息をする。
しばらくそうやって余韻を楽しんだ後、由奈の腰が、はしたなく動き出した。
「あっ、はァっ、はッ、んはッ……」
まるで、そこだけ別の生き物のように、白くて丸いお尻が、くにゅくにゅと前後に動く。由奈の頭は、遼の胸に預けられたままだ。
「スゴい……由奈さんのアソコ、スゴくおいしそうに、お兄ちゃんのオチンチン、食べちゃってる……」
円が、たまらなくなったように、自らの胸に手を当てた。そして、由奈はもちろん、小夜歌に比べてもまだ薄い少女の乳房を、優しく揉み始める。
「んふっ……ボク、見てるだけで感じちゃう……」
そんなことを言いながらも、可愛いチェックのワンピースの上から、自らの胸を右手でこね回し、そして両足の間に左手を当てた。小さな舌が、ピンク色の唇を、しきりに舐める。
由奈の腰の動きは、次第に大胆になっていった。忙しく前後に動いたかと思うと、ペニスを奥まで迎い入れ、そのまま腰を回すようにして、互いの粘膜を摩擦させる。
「ごしゅじんさま……ごしゅじんさまァ……ッ!」
この異様な状況の中で、必死にすがりつくような感じで、由奈は遼のペニスを下半身で貪っていた。その眉は切なげにたわめられ、目はうるうると性感に潤んでいる。
「……円」
小夜歌が、切れ長の物騒な目つきで、円に呼びかけた。円は、自らを服の上から慰めるのを止め、小夜歌に向き直る。
「お姉ちゃん?」
聞き返す円に、小夜歌は無言で肯きかけた。円が、ちょっと困ったような顔をする。
しかし、由奈と遼は、そんな二人のやり取りなど、耳に入ってはいない。
「きもちイイ……ごしゅじんさまァ、もう、もう……」
「由奈……由奈……」
腰がとろけるような快感の中、互いのことを呼び合うだけだ。
「ああッ、あッ、あはァっ! ご、ごしゅじんさま、由奈、もう……もうすぐ……ッ」
二度目の、より高い絶頂が目前に迫り、由奈の腰の動きがさらに速くなる。
と、その跳ねるように動く腰が、背後からの手によって止められた。
「ああッ! イヤ、お願い、イかせて、イかせてェ!」
突然腰をつかまれたことよりも、絶頂までの道を止められたことに、由奈が悲鳴のような声をあげる。
由奈が背後に目をやると、そこに、ワンピースを脱ぎ捨てた円がいた。美しい極線を描く、未成熟な少女の裸体の股間で、反りかえったペニスが上を向いている。細身ながら充分以上の大きさのそれは、なぜかぬらぬらと濡れ光っていた。
「な、何……どうするの……?」
由奈の、今まで快感に潤んでいた大きな瞳に、怯えの色が浮かぶ。
「由奈さん、ゴメンね……いたくしないから……」
そんなことを言いながら、円は腰を進め、一気に由奈のアヌスを貫いた。どうやら、ペニスにあらかじめローションを塗ってあったらしい。
「んはあああああああァッ!」
由奈が、高い絶叫を上げる。
「スゴい……由奈さんのお尻、スゴく気持ちイイ……」
円が、うっとりと声を漏らす。その顔は、快感に身をゆだねきった美少女の表情そのままだ。
「ま、まどか……何を……?」
完全には状況を把握していない遼が、急にきつくなった由奈の締め付けに、うめくような声をあげる。
「ふふふっ……由奈さんのおかげで、ボクとお兄ちゃん、やっと一つになったよ……」
そう言って、発育途上ながらきちんと半球型になった自分の乳房を優しく撫でさすりながら、円がゆっくりと腰を動かす。
「んぐッ! んッ! んふッ! んんんんんんンッ!」
前後から剛直によって貫かれ、由奈は苦しげな声をあげた。しかしその響きの中には、確かに快感の色がある。
「んあァ! あぅ、うッ、うぅッ! んうぅ〜ッ!」
直腸と膣の間の薄い肉の壁が、二本のペニスによって揉みつぶされ、こすり上げられた。
「ああ、感じる……お兄ちゃんのオチンチン……ボクのオチンチンにくりくり当たってるの、分かるよォ……」
円はそう言い、その感触をより楽しもうとするかのように、ことさら腰の動きを細かくする。
「はひぃいッ!」
とうとう、由奈の中で、括約筋を押し広げられる苦痛に、前後からの圧倒的な快美感が勝った。
「イイっ! スゴいィ! あうぅゥッ! ……こんな、こんなの……由奈、はじめてッ……!」
もはや、快感のために自ら腰を動かすこともできず、声だけを出す人形のように、二本のペニスの動きに翻弄される。
「お、おかしくなるゥ……奥で、ぐりぐりして……ッ! 由奈、おかしくなる、おかしくなっちゃうゥーッ!」
半開きにした可憐な口から涎までこぼし、由奈は言葉通り半狂乱になって悶えていた。
そんな由奈の髪を、小夜歌が、ぐい、と掴んで持ち上げた。
「いいザマね、牝牛ちゃん」
小夜歌自身も興奮しているのか、頬を妖しく染め、息を少し荒くしながら、由奈に言う。
「結局、あんた、男のアレだったら何でもいいんでしょ?」
そう言いながら、頭をぐらぐらと揺すぶる。しかし、由奈はあまりの快感のために、痛みを感じていないようだ。
「あァ……そんな、そんなァ……由奈、そ、そんなんじゃないですゥ……」
残り少ない理性をかき集めるようにして、由奈がなんとか答える。
「アソコとお尻に一度に咥えこんどいて、まだそんなこと言うの?」
小夜歌が、嘲弄の笑みを浮かべる。どこか女悪魔を思わせるような、壮絶で美しい微笑みだ。
「イヤ、い、言わないでェ……んああああああああァッ!」
由奈が悲鳴のような官能の声をあげた。小夜歌が由奈の乳房を荒々しく揉みしだいたのだ。
「言っちゃいなさいよ、自分がだれのチンポでもいい淫乱女だってことを」
そう、小夜歌が由奈の耳元に囁く。
「んはア! 由奈、もうダメ、ダメえええええぇッ!」
三人がかりで全身を責められ、とうとう由奈の頭の中で、理性の最後の火が消えた。
「スゴいのォ! 由奈のアソコとお尻、オチンチンでいっぱいィ! いっぱいぃッ!」
そして、かつて遼にしこまれた淫語を、狂ったようにわめき散らす。
「イク、由奈、両方で、両方でイっちゃうーッ」
由奈が、絶頂に全身を細かく痙攣させた。
「イ……イっちゃった、イっちゃったのにまだ……ふあああああ! お尻とオマ×コ、スゴいのォ!」
由奈が両穴責めによって絶頂を迎えても、円の腰の動きは止まらない。さらには、遼の腰まで、何かに取り憑かれたかのように激しく上下し、由奈の幼げな下半身を責めたてる。
「きもちイイよォ! 由奈、由奈、チンポ大好き! おチンポ大好きなのォ!」
「ようやく白状したわね、この変態メイドさん♪」
「そうですッ! 由奈、ヘンタイですッ! だからもっと、もっとイジめて! オチンチンで、由奈のお尻とオマ×コ、メチャメチャにして下さいッ! あァ、また、イクーッ! イ、イっちゃうゥーッ!!」
すでに、何度も何度もアクメの小爆発にさらされ、由奈は呼吸さえままならない。
小夜歌は、奇妙に満足げな顔をして、由奈の胸を両手ですくいあげるようにこね回しながら、その広いおでこに軽くキスをした。
そして、いよいよ激しく細腰を振る円に目を向ける。
「おねえちゃん……」
円も、もはや限界のようだ。そんな円に、小夜歌はくすりと微笑みかけ、言う。
「そろそろ、出してあげなさい」
「あッ! んあああッ! 由奈さん、ボク、ボク、由奈さんのお尻に、セーエキだしちゃうッ!」
由奈の狂乱が感染したかのように、円もそんなことを言いながら、最後の時を迎えた。
「んくッ! んんんッ! んあああああああああッ! イク、イクーッ!!」
高い少女の声で、円が絶頂を告げる。
「あぅッ! あつい、あついィいいいいいいいいッ!」
敏感な直腸粘膜に、次々と熱い精液の弾丸を撃ち込まれ、由奈もかつてないほどの絶頂に押し上げられる。
そして、激しく収縮する膣内の微細な蠢動が、遼をも絶頂に追い込んだ。
「んぁッ!」
短いが決定的な敗北の声をあげ、遼が下から大量の白濁液を、由奈の中に注ぎこむ。
「ぅああアッ! あアッ! うあああああああああアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーッ!」
体内でなんどもしゃくりあげ、精液を放出する遼のペニスの動きに、由奈は最後の絶叫を上げた。
びくびくと、まるで熱病患者のように、由奈の小さな体が痙攣する。
そして、由奈の意識は、暗く優しい闇の中に、どこまでも堕ちていった。
我に返り、ふーっ、と小夜歌は溜息に似た息を吐き出した。
赤いミニの中で、ショーツがぐっしょりと濡れている。由奈と遼、そして円の行為を見ているだけで、軽くイってしまったらしい。
それから、どれくらい時間が経過したのか、小夜歌には判然としない。
羞恥のため、年相応に頬を赤く染めながら、小夜歌はベッドの上に目を戻した。
快感のためか、薬のためか、遼はとろんと半ば目を閉じ、ぴくりとも動かない。その上にうつぶせに横たわる由奈も同様だが、両目は眠っているかのように閉じられている。
由奈は、何か満たされたような、ひどく幸せそうな顔をしていた。
円の姿は見えない。
「……さま……」
その時、小夜歌は聞いた。
「……ごしゅじんさまァ……」
寝言なのかどうなのか、由奈が、舌足らずな甘え声で、遼のことを呼んでいる。
小夜歌の視界が、急激に赤く染まった。ざあああああああ……と、雨音のような音が聞こえる。
小夜歌には、それが自分の血管を血液が流れる音のように思えた。
ぱあン!
小気味いいほどの音が、地下室に響く。
髪を掴んで引き起こした由奈の頬を、小夜歌が思いきりひっぱたいたのだ。
「……!」
その一撃で正気に戻ったのか、由奈は大きく目を見開いていた。頬が、血をにじませてるように赤く染まる。
「あンた、何様のつもりよ!」
小夜歌は、自分でもイヤになるくらいうろたえた声で叫んでいた。
「この期に及んで、まだお兄ちゃんを独占するの!? さんざ、円のアレでよがり狂ってたくせに!」
「……」
由奈は、まるで何が起こったのか分からない様子で、まだ手錠で戒められた手で頬を押さえている。
「あんたのせいなのに、のうのうとココで暮らして……可愛げな顔して、何も知らないフリして……」
そう言う小夜歌の声は、涙声になっている。
「そもそも、お兄ちゃんが記憶喪失になったのも、あんたの父親のせいじゃない!」
「お姉ちゃん!」
小夜歌の背後から、円が呼びかけていた。
いつもの、どこか甘いような声とは違う、凛とした声だ。
小夜歌と由奈、そして、小夜歌の剣幕にさすがに目を覚ましていた遼も、円の声の方を向く。
円は、たった今、シャワーを浴び終えた様子で、全裸の体に軽くバスタオルをまとっていた。あの雨音は、シャワーの音だったのだ。
均整の取れた少女の肢体が、男根を備えているその姿は、大げさに言うなら、古代宗教の天使を思わせた。
「ダメだよ、お姉ちゃん……由奈さんが、言わなきゃいけないことでしょ……」
ひどく哀しげな顔で、円が言う。
「……」
小夜歌は、唇をきつく噛みながら、由奈の髪を放した。由奈が、がっくりとうなだれる。
そして、小夜歌はのろのろと地下室から出ていった。
「……ゴメンなさい、由奈さん」
そのまま、じっとうつむいている由奈に、手早く衣服を身に着けた円が話しかけた。
それきり無言で、由奈と遼を戒める拘束具の鍵を、かちゃかちゃと丁寧に外していく。
ようやく、由奈と遼は解放された。
「二人とも、その……仲良くしてね」
そんなことを言い残し、円も、地下室の扉から出て行く。
「由奈……?」
自分の体にまたがり、うつむいたままの由奈に、遼がようやく声をかける。
由奈は、静かに涙を流していた。