awakening


第7章



「ご主人様……どうしたんですか、その格好!」
 由奈は、大きな垂れ目を見開いて、叫ぶように言った。
 玄関で由奈が出迎えた遼は、まるで服を着たまま泳いできたかのように、ずぶ濡れだった。降りしきる豪雨の中、徒歩十分の距離のあるバス停から、傘も差さずに歩いてきたのである。
 その顔には、ひどく険悪な表情が浮かんでいた。
「す……すぐ、おフロ、沸かしますから」
 その顔に圧倒されそうになりながら、由奈はようやくそう言った。

 遼の屋敷には、ほとんどの居室にユニットバスがついている。しかし、本格的な浴室は、また別にあった。
 四畳半ほどの広さのある、個人の邸宅のものにしては大きすぎるほどの風呂である。バスタブは、所々欠けてはいるが大理石製らしく、広さだけではなく造りも、個人の家のものとは思えない。
 遼は湯船につかり、顔をうつむかせて、水面を見ていた。
「ご主人様ぁ」
 浴室の外から、由奈が遼に呼びかけた。
「あの、お背中、お流しします」
 そう言って、がらがらと音をたてて浴室のサッシを開ける。
 由奈は、薄いピンクのバスタオルしかまとっていなかった。頭の左右にたらしている髪は、まとめてシニヨン・カバーに収めている。まるでマンガの中に登場する中国人の少女のような髪型だ。
「い、いいよ、別に」
 何度か肌を合わせていても、不意打ちにはどうしても弱い。遼は、顔を赤くして目をそらした。
「そんな……」
 由奈の情けない声が、浴室の中で反響した。
「ご主人様……また何か、怒ってるんですか?」
「お、怒っては、いないけど……。いや……怒ってるかな、自分に」
「じぶん?」
「今日、妹に会ったんだ。それと弟にも」
「そう……ですか」
「それで……妹に、聞かされたんだけど……俺……妹を、犯してたんだ。力づくで」
 吐き捨てるように、遼は言った。
「それに、自分の親父を殺してるのかもしれない……分からないけど、多分、そうだ」
「ごしゅじん、さま……」
「……由奈との時はどうだったんだ?」
 遼は、目をそらしたまま、訊いた。
「え?」
「由奈と最初にしたときは、どうだったんだよ。やっぱり、レイプだったのか?」
「……」
 由奈は、何も言わない。その由奈の沈黙は、何よりも雄弁に、事実について語っていた。
「そうなのか、やっぱり……」
 遼は、きつく唇を噛んだ。
「なんで……」
 しばらくして、無言のままの由奈に、遼は言った。
「え?」
「なんで、そんな奴のことが、好きなんだよ……俺、最低の人間じゃないか……」
 自分に対する怒りと嫌悪、そして、もっとどろどろとした感情が、遼の声を震わせる。
 ぴしゃっ、といきなり遼はお湯をかけられた。
「な、何するんだ!」
 思わず立ちあがって向き直る遼の前で、由奈が泣きそうな顔で、洗面器を持って立っていた。
「そんな風に言わないで下さい!」
 そして、洗面器を放り出し、バスタオルのまま湯船の中に入り、遼の体に抱きつく。
「由奈……」
「どうしようもないんです……あたし……あたし、何をされても……ううん、されればされるほど、ご主人様のことが……」
 そう言いながら、腕に力を込め、遼の胸に顔を押し当てる。
「好きなんです……ごしゅじんさまが……だから……」
 あとは、言葉にならない。
(でも……お前が好きなのは……今の俺じゃないんだろ……)
 そんな言葉が声になるのを、遼は必死で押しとどめた。そう言って由奈を責めても、何もいいことはない。
 怒りが冷え、憎しみが静まると、遼は、身の内を最も大きく占める感情が何であるのかを思い出していた。
(そうだ……嫉妬……だ……)
 遼は、自分の胸の中で小さく泣き声を上げている由奈に気付かれないように、ふっと溜息をついた。
(俺は、過去の自分に嫉妬してるんだ……この自己嫌悪も、突き詰めれば、それを正当化するための言い訳なのかもしれない……)
 遼は、自分の中で渦巻く嫉妬ともに、由奈の小さな体を強く抱きしめた。



 遼は、バスマットの上のイスに座り、由奈が背中を流すのに任せていた。
 二人とも、無言である。無言のまま、まるで新婚の夫婦のように、頬を赤く染めている。
「ごしゅじんさま……」
 ひとしきり背中をスポンジで洗い、泡をお湯で流した後に、由奈は遼の耳元に囁いた。
「さっきは、すいません……また、あたし……」
「いいんだよ」
 そう言った遼の顔は、どこか寂しげな笑みを浮かべていた。しかし、背後の由奈には、その表情は見えない。
「あたし……ご主人様と、仲直りしたいです……」
 そんなことを言いながら、由奈は背後から遼の腰に手を回した。
「あっ……」
 由奈は、小さく驚きの声をあげた。あんなやりとりの後だというのに、タオルに隠された遼のそこは、すでに硬くなっていたのだ。
「ゆ、由奈……」
 遼は、自分の股間をまさぐる由奈の白く小さな手を、茫然と眺めていた。払いのけるべきなのかどうなのか、判断がつかないうちに、欲望が脳内の理性を駆逐していく。
「ご主人様、お願いです……由奈に、ご奉仕させてください……」
 そう言いながら、由奈は、左手で遼のシャフトをこすり上げ、右手で丸く撫でて先端を刺激した。そして、左の頬と、豊かな双乳を、ぴったりと遼の背中に押し付ける。
 結局、遼は由奈の申し出に肯いてしまった。
「うれしい……」
 由奈はそう言って、ちゅっ、と遼の背中にキスをした。そして、名残惜しげに遼の体から離れ、シャンプーの容器などとともに並ぶ円筒形の容器の中身を、洗面器の中のお湯と混ぜていく。
「うふふっ……」
 悪戯っぽく笑いながら、由奈は、洗面器の中身を両手ですくい、遼の背中に流した。てらてらと遼の背中が浴室の照明に輝き出す。それは、適度なぬめりをもったローションだった。
「あ……」
 遼は、思わず声を漏らした。由奈が、自らの体にもローションを塗りこみ、その乳房を遼の背中に押し付け、動かしたのだ。
 ぬるぬるとした感触とともに、柔らかく、それでいて張りのある由奈の双乳が、遼の背中を這い回る。
「どうですか、ご主人様……? 由奈のおっぱい、感じますか?」
 由奈の問いに、遼は子供のようにこっくりと肯いた。
「由奈も、すごくご主人様を感じます……あァん、乳首、立っちゃう……」
 その言葉どおり、自らの背中を滑る由奈の乳房の頂点が、次第に固く尖っているのを、遼は感じていた。
「ご主人様、うつぶせになってください……」
 欲情に濡れた声でそう言う由奈に、遼は素直に従った。両手を顎の下で組み、まるでビーチで日光浴をするような格好になる。
 由奈は、そんな遼の背中にローションを追加する。そして、体重を一箇所にかけないように注意しながら、自分の体をぴったりと遼の背中に重ね合わせた。
「はァん……」
 それだけでそうとう興奮するのか、熱い息を漏らしながら、由奈はゆっくりと体を前後に動かした。背中全体が温かいぬめりに刺激され、由奈の淡い恥毛が、遼の尻をこする。
「感じる……すごく、すごく感じちゃう……」
 いつしか、由奈は開いた両脚で、遼の右脚の付け根を挟むような姿勢となり、腰を大きく動かしていた。ローションとは違うぬめりが、由奈のクレヴァスから次々と分泌されていく。
「き、きもちイイ……ご奉仕してるのに、きもちよくなっちゃう……」
 由奈は、悩ましげに眉を寄せ、うわごとのようにつぶやいた。
「んんっ……」
 しばらくして、由奈は、ひどく辛そうな顔で腰を離した。これ以上続けては、後戻りできないほど没頭してしまうと考えたのだろう。
「こ……今度は、あおむけになって、ください……」
 遼が言葉どおりあおむけになると、背後からの刺激でさらに膨張率を増したペニスが、ひくひくと震えていた。
 まるで好物を目の前に出された子供のように、由奈はピンク色の舌で唇を舐めた。しかし、すぐにそれにむしゃぶりつくようなマネはせず、洗面器に残った糸を引くローションを、とろとろと遼の体にかけていく。そして、まるでマッサージでもするかのように、手の平でローションを伸ばす。
「ふぅン……」
 由奈は、可愛く鼻を鳴らしながら、再び、ぴったりと肌を重ねていった。
「あぁ……」
 遼は、自分が軟体動物にでもなったような錯覚を含む快感に、声をあげていた。由奈が嬉しげに微笑み、体を前にずらして、遼の唇に自分の唇を重ねる。
「んン……んぷ……んはっ……」
 そして、ひとしきり舌を絡めあった後、前後運動を開始した。
「あぁ……気持ちイイ……イイの……イイですぅ……」
 頬を上気させ、うっとりとそう囁きながら、由奈は全身を使って遼の性感を高めていく。
「あぁッ……はあぁ……あはっ、先っぽが、あそこに当たっちゃう……」
 由奈の動きがあまりに激しいため、反りかえった遼のペニスと由奈のアソコが、まるでキスを繰り返しているかのように、ちゅっ、ちゅっと触れ合う。
「んはぁ、あン、あはン、うぅン……」
 まるでそのきわどい遊びを楽しむかのように、由奈は大胆に体を前後させた。そうしながらも、時折、遼の胸に唇を当て、乳首にちろちろと舌を這わせる。
「あン!」
 由奈が短く嬌声をあげた。責められっぱなしだった遼が、下からすくいあげるように、由奈の巨乳をその手に収めたのだ。
「あぁン、ダメぇ、ごしゅじんさまァ……ご奉仕が、できなくなっちゃいますぅ」
 体を反りかえらせ、騎上位のような姿勢になりながら、由奈がそう訴える。しかし、遼は少しも構わず、由奈の、幼い容姿に不釣合いな豊かな胸をもみしだき、乳首を指でひねるようにくりくりと愛撫する。
「ンはああぁん! ダ、ダメ、ダメですぅ! そんなにされると、由奈、感じちゃって……」
 そんな抗議の声に構わず、遼は由奈の乳首を、きゅっ、とひねりあげた。
「あァ〜ん」
 由奈が、たまらない声で快感を訴える。
 遼は、ぬるぬるとしたローションの感触を楽しむように、たっぷりとした由奈の乳房に手を這わせ続けた。その白い双乳はイヤらしく濡れ光り、視覚的にも遼の興奮を高めていく。
「感じるか、由奈?」
「ハ……ハイ……感じる……感じます……おっぱい、きもちイイ……」
 かくかくと頭を頼りなげに揺らしながら、由奈が答える。
「じゃあ、こういうのはどうだ?」
 そう言いながら、遼は指先で由奈の固くしこった乳首をつまみ、しごくようにこすり上げる。
「あ、あアァッ! あはン! そ、それ、すごく感じちゃうッ!」
 由奈は、いやいやをするように首を左右に振り、ひときわ高い声をあげた。湯気で満たされた浴室の中に、その嬌声が反響する。
「イキそうなのか?」
「ハイ……っ。由奈、ち、乳首が、すごくきもちよくて……もう……ッ!」
「いいよ……イって、由奈……イクとこの顔、見せて……」
 言いながら、遼は乳首を指の間に挟み、激しく乳房を揉みしだいた。
「イヤぁっ、は、はずかしいィ……」
 悲鳴のようにそう言いながらも、由奈はひくんと体を震わせた。
「あ、イ、イク、由奈、おっぱいでイっちゃうーッ!」
 そう言いながら、自分の腰にまたがってひくひくと体を痙攣させる由奈を、遼は熱っぽい目で見つめていた。

「はァ、はァ、はァ、はァ……」
 遼の体の上に横たわり、由奈は荒い息をついていた。
「ゴメンなさい……こんどは……きちんと、ご奉仕、しますから……」
「気にすんなよ。……由奈の気持ちよさそうな顔見てたら、すごく興奮したよ」
「もう、ご主人様ったら」
 そう言いながら、由奈が遼の顔を軽く睨む。しかし、すぐにその顔はうっとりとした微笑みに変わった。
「今度は、ご主人様も気持ちよくなって下さい……」
 そう言いながら、体を後にずらし、遼の脚にまたがるようにして、そのペニスに両手の指を絡めた。それは、今までの愛撫に痛いほどにいきり立ち、グロテスクに静脈を浮かせ、脈打っている。
「スゴい、ご主人様の……なんだか怒ってるみたい……」
 目を丸く見開き、うるうると潤ませながら、由奈がつぶやく。
「あッ」
 由奈は、小さく悲鳴をあげた。遼が、由奈を脚に乗せたまま、上体を起こしたのだ。
 そのままあぐらをかき、由奈のしなやかな脚を、自分の腰に絡ませるような姿勢になる。このまま挿入すれば、対面座位の格好だ。
 自然、遼の熱いシャフトが、由奈のぷっくりとした恥丘に押し付けられるかたちになる。
「ご、ご主人様……」
「いいかい、由奈?」
 遼の言葉に、由奈はちょっと顔を曇らせた。
「ゴメンなさい……あたし、今日、ちょっと危ない日で……」
「あ……そうなんだ」
 遼は、少しうろたえた声を出してしまった。だからこそ、由奈は今まで「ご奉仕」にこだわっていたのだろう。しかし、遼としては、やはり全身で由奈のことを感じたくなっている。
「あの、ご主人様」
 遼のそんな気持ちに気付いたのかどうか、由奈は、恥ずかしげにうつむきながら、遼にそっとささやいた。
「お尻で、します?」
「え?」
 聞き返す遼に、しかし由奈は恥ずかしげに顔を伏せ、それ以上は答えない。やはり、自分でも相当はしたないと感じているのだろう。
(俺は、そんなことまでしてたのか……)
 複雑な気持ちになりながらも、遼は、そっと由奈のお尻の割れ目に手を這わせた。
「あンッ……」
 うろたえたような可愛い声を漏らしながらも、由奈は拒もうとはしなかった。ただ、その細い両手を遼の首に絡め、ぎゅっと抱きつく。
 遼は、右の中指を、由奈の菊座に当てた。そこは、ひくひくと小さく震え、怯えているようにも、期待しているようにも感じられる。
 遼は、その部分をマッサージするような感じで、ゆっくりとさすり始めた。
「んっ……ふゥッ……く……はぁッ……」
 ひそやかな、しかし明らかに快感による声を、由奈はあげていた。その息が、遼の耳をくすぐり、頭を痺れさせる。
 遼は、一度右手を離し、傍らに転がっていたローションの容器を手に取った。そして、中の液体で右手を濡らし、潤滑液にする。
 そして、つぷっ、と遼は中指の先端を菊門に埋めた。
「はァ……ん」
 由奈が、大きく口を空け、息を吐き出す。意識して括約筋から力を抜いているらしい。そのためか、ローションに濡れた遼の指は、意外とスムーズに由奈の中に入っていった。
 左手で由奈の可愛いヒップを抱え、ゆっくりと指を出し入れする。
「はぁッ、あッ、ああああァ、ああッ……」
 少しずつ、由奈の声が大きくなっていく。お尻の穴で感じているという羞恥心が、次第に快感に圧倒されていっているのだろう。
 遼は、まるでいつもやっていることのように、由奈の肛門を愛撫している自分自身に、驚きを感じていた。いわゆる、体が覚えている、という状態らしい。
(過去の自分のことは考えるな……今、由奈を抱いているのは、俺なんだ……)
 努めてそう考えながら、由奈のアヌスを刺激しつづける。
「あ、ダメぇ……由奈……由奈、おしり感じる……感じちゃう……」
 泣きそうな声で、由奈が遼の耳元でそう訴える。
 ひとしきり愛撫をした後で、遼はことさらゆっくりと、指を抜いていった。
「あああああぁぁぁぁぁ……っ」
 消え入りたげな顔をしながらも、由奈は、排泄感に似た快感に声をあげる。
 ぬるっ、といった感じで指が全部抜けると、それだけで、由奈はがっくりと頭を遼の肩に預けた。
「バスタブに手をついて、お尻をこっちに向けて」
 遼がそう言うと、由奈はぼぉっとした表情で素直に肯き、両足を軽く広げた姿勢でバスタブに両手をかけた。
「あッ。ダ、ダメですっ!」
 由奈は、うろたえた声をあげ、体をねじった。遼が、膝立ちの姿勢で、由奈の左右の尻たぶを広げ、じっと菊門を見つめたのだ。その視線の先で、由奈の細かいシワに囲まれたセピア色のアヌスが、どことなく慎ましやかな感じで、ひくひくと息づいている。
「お願いです……み、見ないで……そんなトコ、じっと見ないで下さい……」
 しっかりとお尻を固定されているため、逃げることもできず、由奈は目に涙を溜めながら、羞恥に染まった顔を両手の間に伏せた。
 しかし、そんなことには一向に構わず、遼はゆっくりと、そこに顔を寄せていった。
「きゃッ!」
 排泄器官に、想い人の唇を感じ、由奈が本格的に高い悲鳴を上げる。
「あ、ダ、ダメ! ダメです! そんな汚いトコ……!」
 遼は、そんな由奈の悲鳴をBGMに、肛門へのキスを繰り返し、固く尖らせた舌をねじ込むように差し入れる。
「ダメぇ……ダメダメ……んあああっ……あゥン……そこは、そこはァ……」
 またもや、由奈の羞恥は、奇妙な快感の前に次第に溶けるように消えてしまう。いつしか由奈は高々とヒップを上げ、おねだりするようにゆらゆらと揺らしていた。
 遼は、ちゅうっ、とわざと音を立てて唇を離した。由奈の菊門は半ば開き、濃いピンクの直腸粘膜を覗かせている。
「あぁ……あぁァ……はァ……」
 由奈は、羞恥心の名残と、かすかにおぞましさの混じった快感に、息も絶え絶えの様子だ。
「入れるよ……」
 遼は立ちあがり、自らのペニスと由奈の菊門にローションを塗りたくり、言った。由奈が、小さく肯く。
 遼は亀頭をアヌスに当て、ゆっくりと腰を進めていった。
「んはァ……アアア……あああァァァーッ!」
 一番太い雁首の部分を、由奈の菊門が飲み込んでいく。そこは痛々しいほどに引き伸ばされ、指で触れるだけでも弾けてしまいそうに見えた。強烈な締め付けが、遼のペニスを痛いほどに包んでいく。
 しかし、その最もきつい個所を抜けると、ペニスはスムーズに由奈の直腸の中に侵入していった。
「ふァあああああああああァーん」
 シャフトの側面がずるずると粘膜をこすっていく感覚に、由奈が高い声をあげる。
 とうとう、遼の陰茎の根元までが、由奈の中に埋められた。みっしりとした肉の感覚が、性器とは全く違った感覚でペニスを包み込む。
「す、すごい……ゆ、由奈のお尻……ご主人様ので、い、いっぱいですぅ……」
 圧迫感に口を開き、舌を覗かせながら、由奈が熱っぽい声で訴える。
 遼は、ゆっくりと抽送を開始した。
「あぁアッ……由奈、感じる……お尻が……お尻がきもちイイ……」
 次々と湧き起こる妖しい快感に、由奈は全身を震わせる。
 括約筋の強烈な締め付けを感じながら、遼は、少しずつ腰を大きく動かしていった。
「あはッ! ひッ! はひっ! す、すごい……すごいよォ……ッ!」
 由奈は快感に手と手の間のバスタブのへりに頭を横たえ、すすり泣くよう声をあげつづけた。その脚はかくかくと震え、とても自分では体重を支えきれない様子だ。
 遼は、由奈のそこを傷つけないように注意しながらも、ピストン運動をさらに大胆にした。
「ああッ! あッ! あッ! あッ! あッ! あアァーッ!」
 由奈のあそこから止めどもなく愛液がこぼれ、ローションにてらてらと光る太腿の内側をさらに濡らしていく。剛直にお尻が貫かれるたび、その体は揺れ、乳房がたぷたぷと震える。
「ゆ、由奈……」
 遼は後ろから由奈の小さな体に覆い被さり、手を回して乳房を揉みしだいた。
 そして、そのまま由奈の体を起こし、立ったまま背後から肛門を犯す姿勢になる。姿勢の変化によって、由奈のアヌスはさらに強く締まり、まるで遼のそれを食い千切ってしまいそうだった。
「あァン……そんな、そんなァ……」
 由奈もそれを感じているのか、舌足らずな声を震わせてる。
 しかし、遼はペニスを由奈の中に収めたまま方向転換し、洗い場の端まで歩かせ、タイル貼りの壁に手をつかせた。その小さな両手の間には、風呂場に置くにはいささか大きすぎるような鏡がある。
「あ……」
 由奈は、鏡の中に、口を半開きにし、うつろな瞳でこちらを見返している少女の顔を見た。頬や耳たぶは真っ赤に染まり、体はローションと汗でイヤらしく濡れ光ってる。
「ス、スゴい……あたし、スゴくエッチな顔してる……」
 由奈は、うわごとのように言った。
「イヤらしくて、可愛い顔だよ」
 遼はそう言って、斜め上に由奈の顔を向かせた。そして、開いた可憐な唇から突き出されたピンク色の舌を吸い、頬や目蓋、首筋に、キスの雨を降らす。
「ふゥううううン……」
 由奈が、たっぷりと媚を含んだ声を漏らす。遼はそんな由奈の体を後からしっかりと抱きしめ、ローションの感触を楽しむように、肌と肌をすり合わせた。
「ああ、ご主人様ァ……由奈、由奈うれしい……」
 うっとりとした口調で、由奈が言う。
 ひとしきり、由奈の全身を愛撫した後、遼は抽送を再開した。
「あァ、あァ、あアァ、あああッ……!」
 インターバルの間も体中で高められていた性感が、一気に擦れ合うペニスと直腸の粘膜の感覚に集中する。
「あひッ! イイぃっ! ひあッ! んああああああああああァン!」
 由奈はふるふると頭を振り、快感に半狂乱になっている様子だ。遼は、そんな由奈の股間に右手を伸ばし、熱く潤むアソコに触れた。そこは、アヌスへの抽送のリズムに合わせるように、どぷどぷと愛液を溢れさせている。
「由奈……」
 遼は由奈の耳元に囁きながら、右手の中指と薬指を、濡れる割れ目の奥へと挿入させた。そして、親指で、すでに勃起したクリトリスをこすりあげる。
「あああああァーッ!」
 由奈は、ひときわ高い嬌声をあげた。
「も、もうダメっ! ダメ、ダメ、ダメ、ダメぇええええっ!」
「イくのか、由奈?」
「ハ、ハイ……由奈、もう、もう……ッ!」
 かなり頼りない口調でそう言う由奈の前と後ろの門が、きゅううっ、と収縮する。それは、遼の指とペニスが痛みを感じるほど強烈だった。
「あ……由奈、お、俺も……」
 遼の声も、かなり切羽詰っている。
「ごしゅじんさま、来て……! いっしょに、いっしょにイって下さい……ッ!」
「ゆ、由奈、由奈っ!」
 括約筋の締め付けを押しのけるような勢いで、大量の精液が、遼の輸精管を走り抜ける。
「イク、イク、イっちゃう、イクうううううゥーッ!」
 由奈の絶頂の声が、浴室に響くのを聞きながら、遼は、自分のペニスが何度も何度もしゃくりあげ、その度に大量の精液を由奈の直腸の中に注ぐ感触を感じていた。そして、その度に、由奈は大きく体を痙攣させ、より強いアクメを感じている。
 しばらくして、ローションと、自分の放った精液にまみれたペニスが、由奈の肛門から押し出された。
「ふあァ……」
 まるで支えを失ったかのように、由奈ががっくりと膝をつき、そのまま横たわる。
 同様にバスマットの上に尻をついてしまった遼の視線の先で、めくれあがっていた由奈の肛門が、きゅっ、と可愛くすぼまった。



 しばらくして、体を洗い合った後、二人は並んで湯船の中に入った。
 さきほどの狂態が嘘であったように、二人とも無言だ。
「由奈……」
 その沈黙を、遼がおずおずといった感じで破った。
「な、なんですか、ご主人様」
「……いいや。何でもない」
 しばらく逡巡した後、結局、遼はそう言った。
「ヘンなご主人様」
 くすくすと、由奈が子供っぽく笑う。
(……由奈といれば……俺は、過去の俺を吹っ切れるかもしれない……)
 由奈の屈託ない笑い声を聞きながら、遼はちょっとだけ晴れた心でそう思っていた。



 その考えが間違いであることを、遼はすぐに知らされることになる。



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