awakening


第5章



 遼が、半分しか血のつながらない弟妹を、例の地下室に導いてから、半年が過ぎた。
 あのあと、遼は小夜歌に、地下室に通じる階段のドアの合鍵を渡していた。小夜歌は、顔を真っ赤にしながらも、ひったくるようにしてその合鍵を受け取った。
 両親の行為を盗み見たあと、二人がどのような行為に耽っているのか、遼は正確には知らない。それでも、だいたいの予想はついた。
 その弟妹の母親である美由紀が、洗濯物を庭で干している。
 美由紀は、明るい黄緑とオレンジを基調とした普段着に、淡いピンクのエプロンを身につけていた。若々しい笑顔で、ビートルズのナンバーをハミングしながら家事をしているその姿は、「若奥様」という言葉が一番ぴったりくる。遼と十歳以上も違うとは思えない。
 遼は、そんな美由紀を自室の窓から見るとはなしに見ていた。
 平日である。が、ここのところ、遼はきちんと学校に行っていない。小夜歌と円は学校に行っており、そして、三人の父親である秋水は出張に出かけていた。
「遼さぁん」
 遼の視線に気付いたのか、庭から、美由紀がそう呼びかけた。美由紀は、遼のことをいつもそう呼ぶのだ。
「ちょっとあとで、時間くれる?」
「いいですよ」
 必要以上に丁寧な口調で、遼は答えた。
 少しして、美由紀が来た。
 きちんとノックをした後、外の秋晴れの空そのままの明るい表情で、部屋の中に入ってくる。
「何ですか?」
 遼は丁寧に、しかし、いささか無愛想に言った。
「えっとね、肩揉んでくれるかな?」
 ちょっと照れたように笑いながら、美由紀は言った。
「……ええ、いいですよ」
 そう答えて、遼は、手近な椅子に座った美由紀の背後に立った。両手を細い肩の上に置き、指に力をこめる。
「……」
 美由紀の肩は、揉む必要もないくらいに柔らかかった。服の生地を通して、その体温が遼の手に伝わってくる。ゆるいウェーブのかかった、肩の上で切りそろえられた栗色の髪からは、控えめな香水と、かすかな汗の匂いがした。
「……遼さん」
 無言で肩を揉みつづける遼に、美由紀が言った。
「あの子達に、見せたでしょ?」
「え?」
 不覚にも、遼は絶句してしまった。美由紀の、いかにも何でもなさげな言葉に、不意をつかれたのだ。
「見せたって、何を……」
「地下室よ」
 歌うような口調で、美由紀が続ける。
「いけない人ね……いくらなんでも、あの子達には早すぎるんじゃない?」
「……」
「なんで、そんなことしたの?」
「……」
「もしかして……」
 美由紀は、肩越しに遼の顔に視線を投げかけた。目が、悪戯っぽく笑っている。
「お母様の代わりに、私たちに復讐をしたとか?」
「それは……!」
 思わず大きな声を出してしまい、そのことに恥じたように、遼はうつむいた。そして、ささやくような声で言う。
「それは、違いますよ。お袋は、関係ない」
「安心した」
 くすくすと、美由紀は明るく笑った。
 しかし、今の話の内容は、とても笑いながらできるようなものではない。つまるところ美由紀も、健全な常識人というわけではないのだろう。
「でも、それじゃどうして、あの子達を地下室に案内したの?」
 そう言いながら、美由紀は、まだ自分の肩に乗せられてる遼の両手に、自分の手を重ねて置いた。
「……好きでやったことです」
 遼が、ふてくされたような口調で、答えにもならない言葉を答える。
「そう……好きで、ね……」
 美由紀は、遼の両手をそろそろと自分の胸に導いた。
「み、美由紀さん?」
 遼はそう言いながらも、美由紀の行為に逆らえない。
 遼は、両肩から美由紀の胸に手を回す姿勢になっていた。
 しばらくためらった後、遼は指先に力をこめた。
「ンッ!」
 美由紀が声を漏らすのも構わず、服の上から激しく胸をこね回す。遼の手には少し余るくらいの、ほどよい大きさの乳房が、何枚かの布の下で形を変えているのが分かった。
「んんん……あン……ら、乱暴ね……」
 頬を上気させながらも、妖しい笑みを浮かべた美由紀は、肩越しに遼の顔を見つめた。遼は、何かに耐えるような顔で、美由紀の胸をもみしだいている。
 するり、と美由紀は遼の手から逃れるように立ち上がった。
 そして、不意をつかれたような表情の遼の目の前に立ち、その両手を遼の首に回す。
「そんな怖い顔しないで……リラックスして……」
 優しい声でそう言って、美由紀は柔らかくつややかな唇を、遼の唇に重ねた。
「んん……ん……」
 美由紀の舌が口内に侵入し、小刻みに動いて口腔と舌を刺激する。遼は、全身の力が抜けるような感覚に襲われた。
 ちゅっ、と最後に軽いキスをして、美由紀は唇を離した。
「遼さんは、初めて?」
 小首をかしげながらそう言う美由紀に、なぜか遼は素直に肯いていた。
「じゃ、続きはきちんとベッドでしましょ」
 そう言って、美由紀は遼にもう一度キスをした。



 ベッドの上で、トランクス一枚の遼の肌の上を、やはり下着姿の美由紀の唇が這いまわっている。
 美由紀は、健康的な普段着の下に着ているのが信じられないような、黒い揃いのブラジャーとショーツを身につけていた。それは、まだ少女の面影のある顔にはちょっとアンバランスだが、美由紀の肌の白さには良く映えて見える。
 そのしなやかな体には少しのたるみもなく、ボディラインは溜息が出るほど美しい。
 その体を、遼の上半身に覆いかぶせるようにして、美由紀は愛撫を続けていた。
 繊細な指が遼の体を撫で、唇が、肌を刺激する。
「ん……っ」
 思わず、遼は息を漏らした。美由紀が、遼の左の乳首を口に含んだのである。意外と逞しい遼の胸板が、わずかに跳ねる。
 その動きをやさしく押さえるように、両手で肩から脇にかけてを撫でまわし、美由紀は舌で遼の乳首を転がした。そして、舌を回転させるようにして、乳輪の部分を丸く刺激する。
 美由紀が唇を離したときには、遼の左の乳首ははっきりと立っていた。
「んふっ」
 美由紀は、とまどいを隠せない遼の顔をみてちょっと笑って、今度は右の乳首を同様に愛撫した。
 そして、今度は唇を離さず、ゆっくりと下にずらして行く。
「まずは、お口でしてあげるね」
 そう言いながら、トランクスの布地の上から、遼のペニスを両手で刺激する。そこは、美由紀が触れる前から、痛いほどに硬くこわばっていた。
 美由紀は、遼のトランクスをそっとずらした。
 たくましく反り返った陰茎が、その姿をあらわす。
「あはっ、こんなになっちゃって……」
 うれしそうに目を細め、頬を染めながら、美由紀はその先端にやさしくキスをした。
「あん……すごく熱い……」
 そして、白い両手の指を、ぴくぴくと脈打つシャフトに添えて、亀頭の部分に何度もキスを浴びせながら、そこを支点にゆっくりと体を回転させていく。
「失礼するわね、遼さん」
 そう言いながら、美由紀は膝で遼の顔をまたいだ。黒いシルクのショーツが、美由紀の動きでよじれながらも、どうにか彼女の大事な部分を隠している。恥丘の部分は黒いレースになっており、注意してみればヘアを透かして見ることができそうだ。
 美由紀はその姿勢で、遼のペニスに舌を這わせた。
 ピンク色の舌が突き出され、たっぷりと唾液を塗りつけるように、遼のその部分を舐めしゃぶっていく。
「あっ……」
 遼は、思わず頭をのけぞらせた。敏感な亀頭を、美由紀が舌の腹の部分で撫で回したのだ。
「ん……くッ……」
 こらえようとしても、どうしても声がもれ出てしまう。
 美由紀は、鈴口からにじみ出た、透明な先走りのしずくを丁寧に舐めとり、亀頭をくわえ込んだ。そして、舌で円を描くようにして、口内に収まった亀頭全体を刺激する。
「ぷはっ……どぉ? 感じるでしょ、遼さん」
 性感が高まったところで、焦らすように口を離し、美由紀が言った。その右手の指は、ぬるぬるになったペニス全体を優しくしごいている。
 遼は、返事をする代わりに、上体を起こして美由紀の股間に顔をうずめた。
 そして、夢中になって、ショーツの上から美由紀のその部分をしゃぶる。
「ああん……ダメよ、ショーツが、シミになっちゃう」
 そう言いながら、自らショーツのアソコにあたる部分を指でずらす。
 ぱっくりと開いた、鮮やかな赤色の肉襞が、姿をあらわした。そこは、遼のペニスを口にしたことで興奮していたのか、すでにきらきらと濡れ光っている。
「ね、お願い……じかに、して……」
 美由紀が、右手の中指と薬指で自らのその部分をぱっくりと開き、甘えた声で遼におねだりをした。
 遼は興奮に呼吸を早くしながら、再び美由紀の股間に唇をつける。
「んふっ……」
 美由紀が、声を漏らした。遼の舌が、容赦なく美由紀の靡肉をえぐったのである。
「あン、んんン……あはッ……。そう、上手よ、遼さん……。あぁン、感じちゃう……」
 美由紀はうっとりとした顔で遼の腰のところに頭を横たえた。
「はぅッ……あああああああッ! あン! そこ、そこォ!」
 そして、遼の舌と唇が、敏感な肉の突起に到達すると、あられもない声で快感を訴える。
「ああ、イイ……イイわ……きもちイイ……」
 夢見るような声でそう言いながら、美由紀はペニスへの愛撫を再開した。
 若さゆえの硬度と角度を保ってるシャフトに両手を添え、白魚のような繊細な指で支えながら、愛しくてたまらないといった表情で頬ずりをする。
 そして、小ぶりな口を限界まで空けて、ペニス全体をくわえ込んだ。
 頬の内側をサオに当て、顔を左右にねじるようにして、ピストン運動を繰り返す。その間も、舌は休みなく動き、亀頭と陰茎の上側を刺激する。
「んぁ……」
 美由紀の洗練されたテクニックは、的確に遼の感じる部分を刺激し、そのたびに遼は、クンニリングスを中断してベッドに頭を下ろしてしまう。
 しかし遼は、息を荒げながらもすぐに上体を起こし、美由紀のアソコにむしゃぶりついた。美由紀の分泌した愛液と、遼の唾液による、ぐちゅぐちゅといういやらしい湿った音が響く。
 一方、美由紀も、じゅぽじゅぽと音を立てながら、遼のペニスを咽の奥に届くほどのディープスロートによって責めたてていた。さらには、その指は遼の太腿を掃くように撫で、陰嚢を優しく刺激する。
 とうとう、遼は上体を支えきれなくなり、ベッドの上に仰臥したままとなった。歯を噛み締め、小さく呻き声を漏らしながら、快感に耐えるように身をよじらせる。
「どぉ、遼さん……もう、ガマンできないんじゃない?」
 ようやくペニスから口を離し、それでもまだシャフトを絶妙なタッチで右手でしごきあげながら、美由紀は遼の顔を振り返った。
 髪を乱し、普段は前髪に隠れている秀でた額と大きな目をのぞかせた遼の顔は、びっくりするほど小夜歌に似ていた。その顔が、快感に頬を上気させ、悩ましげに眉根を寄せている。
「可愛いわよ、遼さん……」
 そう言いながら、美由紀は大きく腰を前にずらし、遼の腰の上に座るような姿勢になった。そして、まるで男がマスターベーションをするような感じで、左手で遼のペニスをしごき、右手で亀頭の部分を撫でまわすようにこする。
 すでに、遼のペニスも、美由紀の両手も、ぬらぬらと体液に濡れていた。
「……あぁ……あぁっ……ぅあっ!」
 一方的に攻められ、声をあげながら、まるでそれだけが最後に残った矜持であるかのように、遼は射精すまいと耐えている。
「ふふっ……いいのよ、遼さん。あたしの手の中に、遼さんの精液、いっぱい……いっぱいちょうだい……」
 熱に浮かされたような口調でそう言いながら、美由紀は手の動きをさらに激しくする。
「あああああッ!」
 遼が、大きく体をのけぞらせる。
 それが、遼の限界だった。
 痛みさえともなうような強烈な射精によって、遼の白濁液は美由紀の両手の中ではじけ飛んだ。
「あぁ……。すごい……すごいわ、遼さん……」
 何度もしゃくりあげ、大量の精液を放つペニスの感触を両手に感じながら、美由紀はうっとりとした声でそう言った。

 遼は、ベッドに横たわり、荒い息をついていた。
「遼さん……」
 そう呼びかけられて、遼はのろのろと上体を起こした。その顔は、まだ夢の中にいるかのように頼りない。普段の彼からは想像できないような、無防備な表情だ。
「ママのおっぱい、吸ってみる?」
 横座りの姿勢で、美由紀は遼にそう問い掛けた。いつのまにか、下着をすべて脱ぎ、全裸になっている。
 そして、こっくりと肯いた遼の頭を、両手で自らの右の乳房に導く。
「あぁ……」
 遼は小さく声を上げながら、美由紀の胸に顔をうずめた。そして、目を閉じ、ひどく無心な表情で、美由紀の乳首を吸い上げる。
「可愛いわ、遼さん……」
 そう言いながら、美由紀は遼の頭を撫でた。そして、まるで母親が乳児に母乳を与えるような、どこか神聖な感じのする表情で、遼を優しく抱きしめる。
 しかし、時間がたつにつれて、そんな美由紀の表情も、少しずつ、淫らな色に侵食されていった。
 遼も、ただ乳首を吸うだけではなく、硬くなった乳首を舌で転がし、甘く噛むようにして刺激する。そして、右手を余っている左の乳房を当て、ゆっくりと円を描くようにもみ始めた。
「はぁ……ああぁ……あン……」
 舌と指が、乳首をいじくり、ひっぱり、はじく。そのたびに、美由紀はこらえられないように声を上げた。すでにその目元は赤く染まり、瞳はうるうると潤んでいる。
「あぅっ……!」
 美由紀が、大きく体をのけぞらせた。遼が、乳房をもんでいた右手を、いきなり股間に割り入れたのだ。
 繊細なヘアの下のクレヴァスは、すでに愛液に濡れていた。遼は、左右の乳首を交互に口に含みながら、その部分に指を這わせ、上下に動かした。
「あっ……ああァ……き、きもちイイ……」
 ぐちゅぐちゅという湿った音に、美由紀の声が重なる。
「は、遼さん……」
 濡れた声でそう言いながら、遼の頭を胸から離し、唇を重ねる。
「ん、んんぅ……」
 そして、アソコへの愛撫のお返しとばかりに、舌を遼の舌に絡め、何かを求めるように突き出された遼の舌を唇で挟み、まるでフェラチオするかのように吸い上げる。
 ちゅぽん、と音をたてて、遼の舌が解放された。
「遼さん、お願い……」
 遼のペニスに手を当てて、美由紀はおねだりした。
「お願い、遼さんのオチンチン、美由紀の中に入れて……」
 遼は肯き、太腿にまとわりついていたトランクスを脱ぎ捨てた。遼のペニスは、すでに勢いを取り戻している。
 遼は、美由紀を押し倒すようにして横にした。そして、大きく開かれた美由紀の形のいい脚の間に、体を割り込ませる。
 遼はその姿勢で、ちょっと困ったような顔で美由紀の顔を見つめた。美由紀は微笑んで、両手で遼のシャフトを優しく握り、自らのアソコに導いた。
 自らのペニスに先導されるように、遼は体を進め、美由紀の両脇のシーツに両手をついた。ペニスの先端は、すでに浅く美由紀の靡肉の中にもぐりこんでいる。
「いいわ、そのまま、腰を進めて……」
 美由紀の言葉どおり、遼は腰を前に動かした。
「あ、あああああぁ……」
 充分以上に分泌されている愛液を潤滑油にして、遼のペニスは滑らかに美由紀の中に侵入していった。
「ああァ、す、すごい……どんどん、どんどん入ってくるゥ……」
 亀頭と膣内の粘膜がこすれ、微妙なひだひだが遼のペニスに絡み付いてくる。
 その根元まで遼のペニスが美由紀のアソコに納まったとき、二人は動きを止め、互いの体を抱きしめた。
 そして、遼が、なぜか泣きそうな顔で、上から美由紀の顔を覗き込む。
「いいのよ、遼さん……このまま、動いて……」
 そう言われて、遼は、ぎこちなく腰を動かし始めた。
「ああっ、あァ……そうよ……ああ、すてき……すてきよ……」
 牡の本能によって、少しずつ遼の腰使いがスムーズになっていく。美由紀は、腰を浮かすようにして、遼の動きを受け止めた。
「はあぁ……あぁ……あぁン……あぅッ……あぁアッ!」
 いつしか遼は、上体を立て、美由紀の腰に両手を添えて、激しく腰を動かしていた。視線を下にやると、濡れて、まるで自分のものでないような光沢を持ったシャフトが、綺麗な赤色のクレヴァスの合間を出入りしている。遼のペニスの動きに合わせて、美由紀の肉襞も愛液を滴らせながら蠢いていた。
「ああ、遼さん……きもちイイ……きもちイイの……!」
 そう言いながら、美由紀は遼の体を求めるように、手を宙に伸ばす。
 遼は再び上体を倒し、美由紀の裸身にかぶさった。その姿勢で、腰を動かしたまま、唇を重ねる。互いの口唇を貪るような、激しいディープキス。
「美由紀さん……」
 まるで熱にうかされているような顔でそう言い、遼は美由紀の耳に口付けした。
「ああぁ〜ン」
 そこが性感帯なのか、美由紀が甘い媚声を放つ。
 遼は、耳朶をしゃぶり、首筋に舌を這わせ、顎といわず頬といわず、美由紀の顔中にキスの雨を降らせた。
「美由紀さん……美由紀さん……」
 その合間に漏れる遼の声は、まるで子供のように頼りなかった。そんな遼の頭を、美由紀は愛しげに撫でる。
「遼さん……もっと突いて……もっと、もっと激しくしてェ……」
 何度目かのディープキスの後、美由紀ははしたなく遼にそう言った。
 素直に無言で肯き、遼は一層腰の動きを速める。
「あぁッ! ひぃッ! すごい、すごいィ……ッ!」
 頭を左右に振って、美由紀がもだえた。その動きにつれ、髪が乱れ、形のいい乳房がゆれる。
「み……美由紀さん……俺、俺もう……」
 遼は、切羽詰ったように自らの終焉が近いことを訴えた。
「は……遼さん……おねがい、お母さんって……お母さんって呼んで……!」
「な、何を……んあぁあっ!」
 遼は悲鳴のような声を上げ、つっぷした。美由紀の膣内が、まるで別の生き物のように蠢動したのだ。ひだの一枚一枚がざわめき、すでに臨界に達している遼のペニスをさらに攻めたてる。
 それでも、遼の腰は止まらなかった。美由紀の胸に顔を横たえ、荒い息をついている本人の意思とは関係なく、自動機械のように激しいピストン運動を繰り返している。
「遼さん……遼さん……あたし、あたし、もう……ッ!」
 美由紀は、そう言って遼を抱きしめる腕に力を込めた。
 どっ、と熱い液体があふれる感触が、美由紀の下半身を満たす。
「イク、イクッ……イクぅー……ッ!」
 美由紀の膣が、まるで遼のペニスを絞り上げるように収縮した。ひときわ敏感になっている亀頭が肉の襞でこすられ、遼の視界は真っ白に染まる。
「母さん……母さん……ッ!」
 気がつくと、遼はそう言いながら、美由紀の体を抱きしめていた。

「美由紀さん……」
 二人で、無言でシャワーを浴びた後、ベッドに腰掛けた遼は、美由紀にそう呼びかけた。美由紀は、すでに下着を身に付け、スカートを履こうとしている。
「なぁに?」
 普段どおりの明るい笑顔で、美由紀は遼に向き直った。
「何で、こんなことしたんですか?」
 思いつめたような顔で、遼は訊いた。
「……何でかしらね」
 ふふ、と微笑みながら、美由紀は続ける。
「小夜歌や円にアレを見せた復讐……ってわけじゃないんだけどね」
「……」
「ま、好きでやったこと、かな?」
 そう言いながら、トレーナーの袖に腕を通す。
 遼は、そんないつもの姿に戻った美由紀をじっと見つめた。美由紀は、優しい笑みを浮かべながらその視線を受け止める。
 しばらくして、遼はようやく口を開いた。
「……美由紀さん……親父と、別れてくれませんか?」
「それは……ずいぶんと唐突ね」
 目を丸くして、美由紀が言う。
「俺、知ってるんですよ……美由紀さん、あんまり心臓が丈夫じゃないんでしょ……」
「……」
「親父とあんなことを続けてたら、いつか……」
「……それで、遼さんがあたしを養ってくれるの?」
「そうしろと言うなら、そうします」
 きっぱりとした口調で、遼は答える。美由紀は、小さくため息をついた。
「遼さんの気持ちは、すごく嬉しい……あたし、遼さんのこと、好きよ」
「……」
「でもね、あたしは秋水さんとは別れられない……あたし、あの人に身も心も縛られ、繋がれているのよ」
「美由紀さん……」
「勘違いしないで。あたしは、秋水さんのことを、愛しているの。あの人に縛られて、繋がれて、すごく幸せなのよ……」
「美由紀さん……」
 ぐっ、と遼は言葉を詰まらせた。両手を、白くなるくらいに握り締める。
「ごめんなさい、遼さん……」
 そう言って、美由紀は遼の部屋を出ていった。
 扉を閉める音が、遼にはひどく大きな音に聞こえた。



「それをね、あたしは見てたのよ」
 喫茶店での小夜歌の話は続いている。
「あの日は、体の調子が悪くて、早退してたの。で、ママがどこにいるのか探して、ベランダに出たら……あんたの部屋で、あんなことになってたわけね」
「……」
 遼は、無言である。何も、言う言葉が見つからない。小夜歌の話は、あまりにも常識や日常から逸脱している。
 それでいながら、遼は、小夜歌の話が全て真実であることを確信してしまっていた。それどころか、小夜歌の言葉がきっかけとなって、次々と断片的な記憶が蘇っていくような気さえする。
 一方、円は、その可愛い目を明らかに欲望に潤ませてながら、小夜歌の話を聞いていた。
「ママとあんたのことは、驚きはしたけど……何となく納得もしたわ。あの家に住んでいた人間で、マトモなのは一人もいなかった。あたしを、含めてね」
「……」
「で、そのすぐ後、あんたはいなくなったわ……。家出したわけね」
「家出?」
「そう。それで、東京でかなり危ない連中と付き合ってたみたい。詳しくは聞いてないし、聞きたいとも思わなかったけど」
 遼は、乾の顔を脳裏に思い浮かべた。
「で、あんたがこの街に戻ってきたのは、ちょうど一年くらい前……五年くらい、行方をくらませていたことになるわね」
 小夜歌は、すっかり冷めた紅茶で咽を潤し、そして話を続けた。



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