Lucky Lovers' Labo♪



「たまきちゃーん、このあと、あいてるっ?」
 そう、教室のドアから頭をのぞかせ、近衛環に声をかけてきたのは、井之頭梨花だった。
 ちょっとクセのある硬めの黒髪を二本の三つ編みにまとめ、その丸顔に大きなメガネをかけている。レンズの奥にある瞳はくるくるとよく動き、明るい光をたたえていた。
 その体は、中学二年生にしてはやや小柄だが、意外と胸の膨らみは豊かだ。そして、学校指定の制服の上に、なぜか白衣などをまとってる。
「あいてるよー?」
 環は、そろえたノートや教科書をカバンにしまいながら、のんびりした声で答えた。
 梨花とは対照的に、すらりとしたその肢体は、しかし、やや凹凸に乏しい。そんな、年相応にスレンダーな体に、さらさらのミディアムショートの髪型がよく似合っている。
 色白なその顔に浮かぶ表情は穏やかで、しっとりと落ち着いた雰囲気だ。そういう点でも、梨花とは好対照である。
「じゃ、ウチに来てよ! 実験の成果、見てほしいんだ!」
 そう言いながら、梨花は、教室の中に入ってきて、環の細い腕に、ぎゅっ、と抱きついた。
 環の教室にまだ残っていた生徒たちから、ざわめきが上がる。
 それは、梨花の露骨な愛情表現によるものではなく、彼女の“実験の成果”という不吉なフレーズに対する反応だった。
 井之頭梨花は、変人揃いと言われるここ私立竜凰学園中等部においても、一、二を争う危険人物とされている。その名は、入学早々に起こした“第三理科室の奇跡”事件によって、全校に知られるようになった。
 それは、梨花が理科室に常備してある何の変哲もない薬品を無造作に混ぜ合わせたことに起因する大爆発だった。いかなる化学反応によるものか、常識ではけしてありえないはずの轟音と衝撃によって第三理科室は吹き飛び、特別棟はその基礎部分に深刻なダメージを受けた。そんな大惨事の中、一人の死者も出なかったことから、この事件は未だ“奇跡”の名を以って呼ばれているのである。
 そして、家から持参した対爆白衣によって、髪の毛を焦がした以外はほとんど無傷だった梨花を見て、教員たちは、等しく戦慄を覚えた。
 ――こいつは、たしかに井之頭教授の孫だ。
 二つの顔を使い分け、その卓越した科学力によって、悪の秘密組織と正義の秘密戦隊の両方を同時に経営し、そのことが発覚していずこへともなく失踪した伝説のマッドサイエンティスト、井之頭比呂志教授。その孫が、この竜凰学園に入学してきたのである。
 そして梨花は、学校の内外において様々な騒動を起こしながら、この春、二年生に進級した。
 そんな梨花のほとんど唯一といっていい親友が、近衛環なのだ。
 母子家庭である、という以外は平凡すぎるほど平凡な、おっとりとしたおとなしい少女。そんな環と、歩くマイクロブラックホールにも喩えられる梨花が、なぜこんなに仲がいいのか。それは、昨年度版の竜凰学園七不思議の一つでもあった。
 それはさておき――
 梨花は、まるで恋人同士のように、穏やかな笑みを浮かべる環の腕を取って、歩き始めた。
 いや、二人はまさに、正真正銘の恋人同士だったのである。



 梨花の自宅は、街の郊外にある一軒家である。錆びた鉄柵に囲まれた広々とした敷地の中に、中途半端に年代物の鉄筋コンクリートの建物が鎮座している。
「おっきー庭だねえ」
 環は、二回に一回は、庭の広さに感心してそんな声をあげる。環の住む近代的なマンションには、庭と呼べるようなものはないのだ。
 が、梨花の家の庭は広いことは広いが、うっそうと雑草が茂り、手入れをされている様子はない。
「ただいまーっ♪」
 梨花は、玄関のドアを開け、元気よくそう挨拶をしながら、ぽーん、とカバンを家に放り込んだ。
「やあ、お帰り」
 たまたま廊下に出ていた梨花の父・岳が、娘の無作法を叱ろうともせず、穏やかな笑みを浮かべて言った。
「こんにちは。おじゃまします」
 梨花の背後で、環が、丁寧に頭を下げる。
「やあ、環ちゃんか、よく来たね。お茶でも、いれようか?」
 実践魔術研究家という、父親・比呂志に負けず劣らず怪しげな肩書きの岳が、和服の袖から出した手できゃしゃな顎をさすりながら訊いた。なお、梨花の母である友江は、形而上考古学なるやはり怪しい学問の権威で、超古代遺跡の発掘のために世界中を飛び回っているため、家に帰るのは年に数度という生活である。
「いらないいらない。研究室に入ってるから、ジャマしちゃだめだからね!」
「はいはい」
 祖父――岳にとっては父である比呂志が残した“研究室”は、今や梨花の聖域である。岳は鷹揚にうなずいた。
「じゃ、いこ、環ちゃん」
「あ、うん。じゃあ、おじさま、失礼します」
 また、ぺこりと頭を下げてから、環は、すでに小走りにこの場を去っている梨花を慌てて追いかけた。



 いずこへともなく遁走した比呂志が使っていた“研究室”は、この敷地の端にある。
 それは、コンクリートブロックで造られた、倉庫のような建物だった。
 中の広さは十二畳ほどだが、雑然と並べられた用途不明の実験器具や機械部品のために、実際よりも狭く見える。
 部屋の隅には、小さな冷蔵庫やミニキッチン、さらにはベッドまでがある。興が乗ると、梨花は、ここに何日も寝泊りしてしまうのだ。
「こんどは、何つくったのー?」
 棚に並んだ、何とも知れない壜詰めの標本を眺めながら、環が訊いた。この部屋のおどろおどろしい雰囲気に、環は、すでに慣れっこになっている。
「うーん、作ったって言うか、なんて言うか……」
 そんなことを、いつになくごにょごにょした口調で言う梨花の頬が、かすかに染まっている。
「?」
 怪訝そうな顔の環に見つめられ、ますます顔を赤くしながら、梨花は、自らのスカートをめくり、レモン色のショーツに手をかけた。
「え?」
 環が思わず声をあげるのを聞きながら、えいやっ、とばかりに飾り気のない下着を床に落とす。
「――見て」
 梨花は、そう言いながら、スカートのすそを大きく捲り上げた。
「ふわ……」
 環が、両のこぶしを口に当てながら、あらわになった梨花の股間を、食い入るように見つめた。
 そこからは、梨花や環の同い年の少年が備えているような、皮のむけきっていない成長途上のペニスがぶらさがっていたのである。
「そ、それ……どーしたの?」
 環は、梨花の恋人であり、その裸体を見たことも一度や二度ではない。しかし、その時の梨花には、無論、こんなモノは付いていなかった。
「うん……自分で作ったクスリ、ちょっと試してみたんだ」
「くすり?」
「そう。見てのとーり、実験は大成功ってワケ」
 そう言いながら、梨花は、にへへ、と複雑な顔で笑った。
 環は、まるで吸い寄せられるように梨花に近付き、その前で膝をついてしまう。
「これって……ホンモノ?」
「うん。機能も構造も、ほとんど同じようになってるはずだよ」
 環の質問に、梨花が、どこかずれた答えをする。
「もともと、ココって、男のモノとは基本的に相同器官だからね。実際、半陰陽のヒトの発生確率は総人口の2,000分の1だって統計もあるくらいだし……」
「はやー……」
 梨花の言葉がきちんと理解できているのかいないのか、環は、亀頭の先端部分だけを辛うじて露出させた牡器官を、まじまじと見つめている。
 睾丸は、ない。クレヴァスや、その奥の膣口なども、きちんと残っている。ただ、本来ならクリトリスのあった場所から、てろん、とペニスがぶら下がっているのだ。その先端にはきちんと尿道口があり、尿道がこの海綿体組織を貫いて走っていることが分かる。
「えと……」
 てっきり、環が叫び声でもあげてしまうのではないかと思っていた梨花は、ちょっと拍子抜けした気分だった。
 そして、環の、好奇心一杯の瞳で見つめられていると、それだけで、その部分がむずむずとしてくる。
「や、やっぱこういうの、ヘンだよね?」
 梨花が、息が感じられるくらいその器官の近くに顔を寄せている環に、そう訊く。
「そんなことないよォ」
 ちろっ、と上目遣いに梨花の顔を見ながら、環が言う。
「ただ、あたし、お父さんもお兄ちゃんもいなくなっちゃったから、こういうの、めずらしくて……」
「あ……」
 梨花は、ちくりと胸に罪悪感を覚えた。環の父は、環の母親と離婚した後に死亡し、その時に父親側に引き取られた兄とは、現在も別居中なのだ。
「これで、おしっこしてみた?」
 梨花の気持ちなど知らぬげに、環がそんなことを言い出した。
「し、したけど……」
「ね、ね、どんな感じだった?」
 目をきらきらさせながら、環が重ねて訊く。
「えっと……別に。ただ、なんだか普段より、ちょっとだけ長く体の中にある感じ、かな?」
「へえー。そのう、男の人って、立ったままするでしょ?」
「うん。でも、別にどうってことなかった」
「あ、そう? ま、女だってやろーと思えば立ったままできるもんねェ。あとがタイヘンだけど」
 環の、無邪気な表情に、梨花はますます拍子抜けしてしまう。
「ところで、なんでこんなふーにしちゃったの?」
 そして、続く環のこの言葉に、今度こそ梨花はずっこけてしまった。
「そ、そんなこと、決まってるでしょ!」
「ほえ?」
「言っておくけど、立ちションするためにこんなの生やしたわけじゃないんだからね!」
 環の鈍感さに、梨花は、いささか下品な言葉を口走ってしまう。
「ち、ちがうの?」
「もう、環ちゃんたら……」
 梨花は、ふ、と小さくため息をついた。
「コレには、おしっこするよりもっと大事なお仕事があるでしょ」
「そ、それって……」
「環ちゃんと、直接つながるコト」
 言われて、ようやくそのことに思い至ったのか、環はかーっとその顔を赤く染めた。
 ようやく見ることのできたその反応に、梨花は、満足げな微笑を浮かべる。
「ね、さわってみて、環ちゃん」
「う……うん……」
 環は、先程より顔を心持引きながら、そっと、右手を梨花の股間のモノに伸ばした。
 そして、指先で、ちょん、とまだ勃起していないそこを突つく。
 ひく、と梨花のペニスがそれに反応した。
「あ、うごく……」
 そんなことにさえ新鮮な感動を覚えながら、環は、ふに、とその器官を、親指、人差し指、中指の三本の指で軽くつまんでみた。
「あ……ん」
 梨花が、ぎゅっ、とスカートをつかむこぶしに力を込めた。
 どきどきと高鳴る心臓が送り出す血液が、その部分に集まっていくのが分かる。
 ゆっくりと、梨花のペニスに、力が漲ってきた。
「うわァ……」
 目の前で膨張し、立ちあがっていくその器官に、環はますます熱っぽい視線を注いでしまう。
「なんだか、どんどん固くなってくよ。それに、おっきくなって……」
「うん……きもちイイと、勃起、しちゃうんだ……」
「すごい……」
 環は、我知らず、制服のフレアスカートの中で、太ももをもじもじこすり合わせた。
「こ、これから、どうすればいいの?」
「えーっと……」
 環に訊かれ、梨花は、一瞬言葉に窮してしまった。
 ペニスというものに不慣れな二人の少女は、思わず考え込んでしまう。
「……舐めて、みようか?」
 と、環が、その幼い顔に似合わない大胆なことを言った。
「え?」
「だ、だって……でぃるどーとか入れるとき、舐めるでしょ……だから……」
 環が、その色白な顔を真っ赤に染めながら、言う。
「う、うん……」
 排尿器官でもあるその部分を舐めさせることに、梨花は、ほんの少し抵抗を覚えたが、よく考えれば、クンニリングスと同じなのだ。
 それに、環の申し出は、梨花にとってあまりにも魅力的すぎる。
「じゃあ、して、環ちゃん……」
 そう言われて、環は、こっくりと肯いた。
 そして、梨花の股間に、その幼い顔を寄せ、花びらを思わせる小さな口を開く。
 突き出されたピンク色の舌が、ちょろり、と包皮からのぞいた亀頭の先端部分を舐めた。
「はぅ……っ!」
 ひりつくような感覚に、梨花は、思わず声をあげてしまう。
「あ、い、いたかった?」
 環が、慌てて訊く。
「ううん、平気……もっとして……」
「うん……」
 再びこっくりと肯いて、環は、ゆらゆらと不安定に揺れるシャフトの根元に、そっと両手の指先を添える。
 そして、ペニスを固定しようとすると、にゅる、と包皮が剥けた。
「ふわ」
 ただそれだけのことで、環はびっくりしてしまう。
 梨花の亀頭部分は、当然のことながら全く使いこまれた様子が無く、色素の沈着も見られない。そのビロードを思わせる表面は、きれいなピンク色だ。
「なんか、ちょっと可愛い……」
「そ、そう?」
 環の意外な言葉に、梨花はメガネの奥の目を丸く見開いてしまう。
「だってさあ、なんだか、いっしょうけんめー、って感じがするんだもん」
「?」
 梨花には、環の言っていることがよく分からない。
「ここ、段になってるんだね」
 そう言いながら、環は、雁首のくびれのあたりを、指先でひっかくようにした。
「ひゃあン」
 かくん、と梨花の脚から力が抜ける。
「ど、どうしたの?」
「わかんないけど……気持ちよかった、かな?」
 未だ自分の感じた感覚を整理できない様子で、梨花が言う。
「じゃあ、ここのところ、舐めてあげるね」
 そう言って、環は、梨花のペニスに顔を寄せ、舌を伸ばした。
 そして、今発見したばかりの性感帯を、ちろちろと舌先で重点的に舐める。
「あ、あう……ン……ひあ……ああン……」
 梨花は、スカートを握り締めたまま、声をあげ続けた。
 対応する器官だけあって、クリトリスを舐められた時の快感に、似ていなくもない。ただ、それよりも感じる部分が広いためか、逆にどこか鋭さに欠けているような気がする。
 その一方で、立ったまま、隆々と反りかえるペニスに口唇愛撫を受けているということによる精神的な快楽が凄まじい。
 じゃれ合うことの延長だった今までの愛撫とは、何かが決定的に違うような気がするのだ。
 環の唾液に濡れていく先端部分から、先走りの汁が溢れる。
 その、苦いようなしょっぱいような、体液独特の味に眉を寄せながらも、環は、ちろちろと舌を動かすのをやめようとしない。
 責められている、という気持ちと、奉仕させている、という気持ちの入り混じったような、奇妙な気分。
 梨花は、そんな気持ちに陶然としながら、メガネの奥の瞳をうるうると潤ませ、環の舌の動きを見つめていた。
 環は“可愛い”などと言ったが、梨花には、静脈を浮かしたその器官が、ちょっとグロテスクに見える。それを、環の可憐な口元や舌が愛撫する様は、ひどく背徳的な快感を感じさせた。
 いけないと思いつつもやめることのできない、麻薬的な快楽だ。
「ね、環ちゃん……口に、くわえてみて……」
 やめるどころか、そんなおねだりさえしてしまう。
 環は、ペニスの先端に口付けしたまま、うん、と肯き、そして、あーんと口を開けた。
 ぱくん、とペニスをくわえられ、梨花はぞくぞくと全身を震わせた。
「き、きもちいい……」
 そして、思わずそう口走ってしまう。
 ペニスという、敏感な器官で感じる環の口内は、柔らかく、生温かく、そしてぬるぬるに濡れていた。
 その中で、環の舌が、どうしていいか分からない、といった感じで、もぞもぞと動いている。
 かーっと頭が熱くなり、この興奮だけで射精してしまいそうだ。薬品の力で無理矢理に形成したこの器官にも、それだけの機能はある。
 それでありながら、環の稚拙なフェラチオでは、そこに至るだけの快感が得られない。
 ぬるま湯のような快感にペニスをひたされ、梨花は、切なそうに眉を八の字にした。
 しかし、梨花にも詳しいフェラチオの知識などないので、どうしていいか分からない。
 ただ、はぁはぁと喘ぎ声を上げながら、崩れそうになる脚をふんばっているので精一杯だ。
 と、梨花は、思いついて、くい、と腰を動かしてみた。
「んぶぅ!」
 喉の奥をペニスの先端で突かれ、環がくぐもった悲鳴をあげる。
 が、唾液に濡れた舌の上にシャフトを滑らせる快感を発見した梨花は、その悲鳴に気を使う余裕すら忘れてしまっていた。
 自慰行為を覚えた猿の喩え話のように、夢中になって、浅ましく腰を使ってしまう。
「んう! う! んぐ! ンううううう!」
 環は、苦しさにぽろぽろと涙をこぼしながら、梨花の腰に手を当ててその行為を止めようとした。
「ンあっ! お、おねがい! させてえ!」
 梨花も、悲鳴のような声でそんなことを言いながら、スカートを持っていた手を離し、環の頭を押さえつけようとする。
「んううううううッ!」
 パニックになりかけた環は、その手を振り払うようにして、頭を引いた。
「ひああああ!」
 ずるん、と環の口から抜け出た刺激によって、臨界点が突破された。
 びゅうううっ! と凄まじい勢いで、ペニスの先端から白濁液が溢れ出る。
 それは、顔をそむけた環の頬を痛いくらいに叩いた。
 びゅうっ、びゅうっ、びゅうっ、びゅうっ、と、射精は、梨花自身がかすかに不安を覚えるくらいに、続いた。
 そのたびに、大量の熱い体液が、環の体に振りかかる。
 ようやく、射精が終わった。
 梨花にとっては、当たり前のことながら、初めての経験である。
 急激な勾配で一気に高みに持っていかれる独特の絶頂感に、梨花はしばし茫然としてしまっていた。
 が、ぐずぐずという環の泣き声に、はっと我に返る。
「ご、ごめん、環ちゃん……」
「――梨花ちゃん、ひどいよお!」
 髪と言わず、顔と言わず、服と言わず、スペルマでどろどろになった環が、傍らにひざまずく梨花に言う。
「すっごく苦しかったんだからア!」
「ごめんね……ごめん、なさい……」
 梨花自身も、泣きそうな顔になって、しゅんと、しおれた花のように肩を落とす。
 そんな梨花の様子を見て、環も、ようやく落ち着きを取り戻した。
「――おせんたく」
「え?」
 環の言葉に、梨花が顔を上げた。
「お洗濯、しないと、家に帰れないよ」
 そう言いながら、環は、立ちあがって制服のボタンを外し始めた。

 部屋の隅で、ごんごんと洗濯機が音を立てている。電子頭脳を搭載した、梨花お手製の全自動洗濯機である。
 環は、下着とソックスだけになって、ベッドに座ってた。控えめな胸の膨らみと、肉付きの薄い、清楚な恥丘を、純白のショーツとブラが包んでいる。ソックスも、白である。
 その体はひどくきゃしゃに見えるが、骨が細いせいか、固い感じはしない。むしろ、ボディラインは控えめながら少女らしいしなやか曲線を描いており、どこか物語の中の妖精を思わせる。
 そんな環の横で、梨花も、ちょこんと座っていた。
「梨花ちゃん……」
「な、なに?」
 梨花は、顔を上げた。環は、まだちょっと怒った顔をしている。
「あたしだけハダカなんて、ずるい」
「え?」
「梨花ちゃんも、ハダカになって」
「うん……」
 環の奇妙な理屈にあえて異をとなえることなく、梨花は、ベッドから立ちあがった。
 そして、まずはまだ着たままだった白衣を脱ぎ、スカートを脱いで、リボンタイを解いてから、ブラウスも脱ぐ。
 ショーツを脱いだままだった梨花は、ブラジャーだけを身につけた格好になった。
「それも、取って」
 確実にCカップ以上はあるそのブラを、ちょっと羨望の目で見つめてから、環はが言う。
「でも……」
「あたしも、脱ぐから」
 そう言って、環も、ベッドに座ったまま、ブラとショーツを脱ぎ捨てる。
 やむなく、梨花もソックスだけの格好になった。
 靴下だけ、というのは、なまじ全裸になるよりもどこか気恥ずかしい。しかし、だからと言ってソックスまで脱いでしまうのも、やはり恥ずかしかった。
 むく、と股間のペニスが、さっきあれだけ放出したと言うのに、また大きくなりかける。
 短い間隔を置いての勃起は、先ほどのような切羽詰った感じはなかったが、どこか痛いような生々しさがあった。
 梨花は、慌ててペニスを両手で隠そうとする。結果として、両腕で横から圧迫された乳房が、普段以上に強調された。
 それを見た環は、んく、と可愛い声を立てて、唾を飲み込んだ。
 そして、がまんできなくなったように立ちあがって、梨花の肩に両手を置く。
 環も、けして身長が高い方ではないのだが、梨花が小柄な分、頭半分だけ高い視線で見下ろす格好になる。
「環ちゃん……」
「ずるい」
 環の言葉に、梨花は、え? と言った顔になる。
「梨花ちゃんばっかり気持ちよくなって、あたしにぜんぜんしてくれないなんて、ずるい」
 環が、すねたような口調で、繰り返した。
 梨花は、きょとんとした顔をした後、くすっと笑い出した。
「梨花ちゃん、笑うなんて、ひどいよォ」
 ますますすねた口調になる環に、梨花はようやく本来のペースを取り戻した。
 そして、ぷっ、と頬を膨らませた環から、ちゅっ、とキスを奪う。
「ゴメンね、環ちゃん」
 そう言いながら、梨花は、股間を押さえていた右手で、環のスリットに触った。
 環の恥丘は、まだ、うっすらと細い陰毛がまばらに生えているだけである。目を凝らさなければ無毛に見えかねないそこを、梨花は、手の平で優しくさすった。
「環ちゃん、期待してたんだ」
「だ、だって……梨花ちゃん、つながるとか、言ったのに……」
 早くも敏感な体をぷるぷると震わせながら、環が言う。
「ごめんなさい♪」
 そう言って、梨花は、ちゅっ、ちゅっ、と環の首筋にキスを繰り返した。
 そして、くたっ、と力が抜けていく環のきゃしゃな体を、ベッドに横たえる。
 そんな環に覆い被さる梨花の胸が、ふるん、と揺れた。
「梨花ちゃんのおっぱい、いーなァ……」
 梨花の愛撫に目をとろんとさせながら、環が、言う。言いながら、環は、下から梨花の双乳をすくいあげるように手の中に収めた。
「おっきくて、やーらかくて、うらやましい」
 その言葉通り、梨花の乳房は、小さな環の手には余る感じだ。それを、環が、ふにふにと優しく揉みしだく。
「はぁん……環ちゃんの体だって、キレイだよォ」
 環の愛撫に、次第に乳首が固くなっていくのを感じながら、梨花が言う。
「細いのに、ぜんぜん骨とか出てなくて、すっごい可愛いんだ」
「でも、おっぱい小さいし……」
「それがまたいいんだけどなっ♪」
 そう言いながら、梨花は、お返しとばかりに、環のピンク色の乳首に吸いついた。
「あ、あン……あぁぅ……」
 ちゅうちゅうと吸い上げると、梨花の口の中で、小粒の乳首が、ぷくん、とけなげに勃起する。
 梨花は、環の両方の乳首を、唇と舌でしごくように刺激した。
 唾液に濡れた可憐な乳首が、ゆるやかな乳房の丘の頂点で固く尖っている。
「んふ……」
 梨花は、淡く微笑みながら、環を見下ろした。その顔が幼いため、妖艶という表現からは程遠い、小悪魔のような表情だ。
 そして、環の両手をシーツに押さえつけるようにして、自らの乳首を相手の乳首にこすりあわせるようにする。二人がお気に入りの、淫靡なじゃれあいだ。
「ひゃ、はァ、ああン」
 くすぐったいような、もどかしいような快感に、環が身をよじり、しなやかな体を反りかえらせた。
 くりん、くりん、と触れ合い、こすれ合う乳首が、じんじんと熱く痺れ、ますます固くしこっていく。
「あぁーん、梨花ちゃあん、きもちイイよぉ」
 環が、甘えるような声で言う。
「あたしも、きもちイイ……っ」
 そう言いながら、梨花は、環を組み敷くような姿勢で、ますます大きく体を動かす。
 と、二人が悩ましく身をよじった拍子に、もはや完全に勃起した梨花のシャフトが、環のスリットに触れた。
「あ……」
 ほころびかけた靡粘膜で感じる、その部分の意外な熱さに、環はその目を丸くする。
「……えっと」
 梨花はちょっと考えてから、ペニスの腹で、すりすりとスリットをこすりだした。
「あ、あァ、あン」
 性器で性器をこすられる感覚に、環が声をあげる。
「あ、なんか、イイ……」
「きもちイイんだ?」
 腰を動かしながら梨花が確認する。
「うん……指とか、お口とかとは、ちがうけど……すっごくエッチな感じだよォ……」
「ふうん……」
「ふつーのせっくすも、こういうコト、すんのかなあ?」
「わかんないよ、そんなこと」
 環の無邪気な疑問に、梨花がくすっと笑う。
「でも、いいじゃん、あたしたちがきもちよければ」
「そだねー……あ、ンあん……」
 自分が分泌した愛液によって、ますます滑りがよくなった梨花のペニスの感覚に、環は、ひくひくと体を震わせた。
 そんな環の反応が可愛くて、その白い体に梨花はキスを繰り返す。
 と、環は、下から梨花の体をぎゅうっと抱き締めた。
「た、環ちゃん? どうしたの?」
「わ、わかんないけど、こーしたくなっちゃったの」
 はぁ、はぁ、と切なげに喘ぎながら、環が言う。
「もっともっと、梨花ちゃんとくっつきたいよお」
「環ちゃん……」
 梨花は、ちろり、と舌で唇を舐めてから言った。
「じゃあ、もう、入れていい?」
「――うん」
 環が、肯く。
 梨花は、一度体を離してから、自分でも呆れるほど熱くたぎっているペニスに手を添えた。
 環の愛液と、自身の体液にまみれたそれは、我ながら何だか凶暴な小動物のように思える。
 それを、環は、ひどく熱っぽい目で見つめていた。
「い、いつも使ってるバイブとかよりは、小さいと思うから、ダイジョブだと思うよ」
 梨花は、訊かれもしないのに、そんなことを言う。環は、その言葉にこっくりと肯いた。
「じゃ、入れるね……」
 そう言って、梨花は、ぐっ、と腰を進ませた。
「ンうううううッ」
 体温を持ったモノに体を貫かれる初めての感覚に、環は、ぎゅっと眉を寄せた。
 熱く、逞しい肉の棒に、体の内側を支配されていく。
 膣肉とペニスがこすれ合う感覚が、最初、衝撃となって背中を駆け上り、そして、そのあとで、どばあっと快感が脳に届いた。
「ン……はぁアっ」
 挿入した梨花も、背筋を昇ってくる快感に、ぞくぞくと体を震わせている。
 環のその中を、舌や指で感じたことのあったが、やはり、ペニスで感じるのは全く違った。
 とろけるように熱く濡れた肉襞が、しかし、痛いくらいにシャフトを締めつけている。
 もし、さっき放出していなかったら、快感のやり過ごし方を知らない梨花は、そのまま射精してしまっていただろう。それくらいの快感だ。
 クレヴァス同士をこすり合わせたり、器具でつながったりするのとは、比べ物にならないくらいの一体感があった。
「りか、ちゃぁん……」
 環が、梨花に向かって腕を伸ばす。
 梨花は、環に再び覆い被さり、その細い体をぎゅっと抱き締めた。
 環も、梨花の体を抱き締める。
 二人の体の間で、豊かな梨花の胸が、むにゅ、とつぶれた。
「スゴおい……コレ、すごいよォ……」
 好きな相手を体の奥に導き入れることができた、という、感動すらともなった快感に、環が声をあげる。
「うん……こんなに、すごいんだね……」
 梨花も、呼吸を整えようとしながら、環の耳元にそうささやく。
「じゃ、動くね、環ちゃん……」
「うん、う、動いてェ……」
 梨花は、環の体を腕に抱いたまま、ゆるゆると腰を動かし始めた。
「あ、ひあん……ンいっ……!」
「あ、あア……あんんんンっ♪」
 一番敏感な部分をこすり合わせる快感に、二人の少女は、互いに声をあげる。
 そして、どちらからともなく、互いの柔らかな唇に唇を重ね、舌で舌をまさぐった。
 二つの接合部からぴちゃぴちゃと淫らに湿った音が響き、混ざり合った体液がこぼれて、シーツを濡らす。
 いつしか、梨花は、さらなる快楽を求めて大胆に腰を動かしていた。
 ずるん、ずるん、と愛液に濡れたシャフトの表面が膣内をこする感覚に、環は、身をのけぞらせる。
 しかし、梨花は、そんな環を逃すまいとするかのように、背中に回した腕に力を込め、キスをし続けた。
 ふうん、ふうん、という互いの鼻声が、なまめかしい。
 二人は、次々と湧き起こる未知の快楽への恐れもこめて、互いの体にすがるように抱き締め合った。
 このまま続けていては、どうなってしまうか分からない。
 だが、無論、梨花は、腰が動くのを止めることはできなかった。
 環も、その小さなヒップを浮かし、いわゆる迎え腰になって、梨花の動きを受け止め、積極的に快楽を貪っている。
 ペニスの動きにかき出されるように溢れ出る愛液は白く濁り、会陰を伝って、環の可憐なアヌスを濡らしながら、シーツにこぼれている。
 じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ……という、二人の粘膜が奏でる音は、とても中学生同士の交わりによるものとは思えないほどに淫らで、そして激しかった。
「ぷはぁあ……」
 とうとう、呼吸困難に陥りかけて、上になっている梨花が口を離した。
 二人の少女の唇から、とろとろと唾液がだらしなく溢れる。
「ひいっ、ス、スゴい……スゴいよお……ッ!」
 自分自身の腰の動きによって発生する快感に打ちのめされ、シーツにつっぷしたような格好になりながら、梨花が悲鳴をあげる。
「してるゥ……あたしたち、セックス、してるう……せっくす、せっくすなのォっ♪」
 快感に理性を灼き切られ、慎みも恥らいも忘れてしまったかのように、環が、あらぬことをわめきちらす。
 が、快感でとろけきった双方の脳には、その猥語の意味すら届かない。
 ただ、自らが感じる性感に、相手が悦楽によってあげる声が共振し、さらなる高みに昇っていくだけだ。
 もはや、自他の区別すらつかなくなり、接合部が融合し、ただ快感の坩堝と化して、熱い何かを溢れさせ続けているような感覚しかない。
 と、その熱い何かが、噴出するマグマのように、ぐばあっとせりあがった。
 そして、噴煙の中を走る火山雷のごとく、鋭い快感がばちばちと暴れ回る。
「す、するッ! あたし、シャセイしちゃうッ!」
 梨花は、我知らず、そんなことを叫んでいた。
 そして、その宣言が終わるや否や、大量のスペルマを、環の幼い子宮めがけ迸らせる。
「ひあああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアァァァァーっ♪」
 自身の未成熟な蜜壷の中で、ペニスが蠢き、しゃくりあげ、律動し、繰り返し射精をし続ける感覚が、環を絶頂にまで舞い上げる。
 二人は、そのあまりの快感の凄まじさに、怯える子供のように抱き合った。
 びくッ、びくッ、びくッ、びくッ、と、少女たちの体が痙攣を続ける。
「か、は……ひは……はぁ……」
 思うように呼吸ができず、梨花と環は、ぱくぱくと口を開閉させた。
 ぶるるるるっ、と最後の射精に合わせて、梨花の背中が震える。
 そして、二人は、ぐったりと体を弛緩させた。
 時折、ひくん、ひくん、と、思い出したように、体を痙攣させる。
 が、梨花も、環も、そんなことに気付かないまま、意識を優しく温かな闇の中に沈めてしまっていた。



「ふわぁ……」
 梨花が、意識を取り戻し、体を起こすと、環が、そんな声をあげた。
「あ、環ちゃん、起きた?」
「うん……すごかったよぉー……」
 まだ、体を起こすことができないのか、くてっと寝そべったまま、環が言う。
 すでに、洗濯機は環の服を洗い終わり、乾燥も終わっている。が、環は、服を着るということに意識が向かない様子だ。
「気に入っちゃったんだ?」
 梨花が、ずれてしまっていたメガネを直しながら訊くと、環は、真っ赤になって肯いた。
「そっか、よかった♪」
 そう言って、梨花は、環に並んでベッドに再び横になった。
「実はね……」
「うん?」
 すぐそばから語りかける梨花に、環が顔を向ける。
「実はね、元に戻るクスリのほうは、失敗だったんだ」
「え?」
 環は、目を見開いた。
「だからさ、そのー、体質とかなのかな? 動物実験とかだとOKだったんだけど、あたしには、元に戻す方が効かなかったんだよ」
 とんでもないことを、しれっとした口調で言う梨花に、環は、さすがに呆れたような顔をする。
「じゃ、じゃあさ、どーすんの? これから」
「とりあえずは、クスリ、作りなおしてみるけど」
 ひどく呑気に、梨花が言う。
「でもまあ、しばらくは、コイツとつきあってあげてよ」
 そう言いながら、梨花は、すでに萎えてしまっているペニスで、ちょん、と環の腰のあたりを突っついた。
「う、うん……」
 環が、ためらいがちに肯く。
「よかった。環ちゃんが、あたしの恋人で♪」
 梨花が、そう言って微笑む。
「あたしも――」
 環はそう言いかけて、さすがにはしたないと思ってやめる。
 そして、梨花が今の状態でい続けるということを嬉しく思っている自分に、耳まで真っ赤になってしまうのだった。
あとがき

BACK

MENU