第6話



「おかえりなさい、隆也さん」
 その日、急いで学校から帰ってきていた百合子は、主人である隆也が帰ってくると、玄関で正座をし、三つ指ついて出迎えていた。
 ドアを開けた隆也に、少しはにかみながら微笑んで頭を下げる。自慢の長い髪がサラサラと背中を滑って、ちょっとくすぐったかった。
 しかし、残念なことに隆也からは何の反応はなかった。いつもなら掛けてもらえる「ただいま」の言葉もないばかりか、百合子が頭を上げた時、隆也は何か引き攣るような顔をしていた。
 何か不味かったのだろうか……?
 不安になって、百合子は自分の姿を見下ろしてみた。
 落ち度は何もないはずだ。隆也の父である隆一に言われたとおり、下着さえ身につけず、ただ白いソックスと、やはり白で、フリルのついたエプロンだけをまとっている。エプロンは胸元や脇が開いているので、胸のふくらみが零れそうなくらいだ。
 そして首にはもちろん、隆也のものであることを示す首輪が巻かれている。
 隆一は、これで落ちない男はいないと断言してくれたのだが、隆也の反応を見る限り、どうも上手く行ってないように思われる。
 どこに落ち度があったのか懸命に考えた百合子は、隆一がサンプルとして見せた画像と自分との決定的な違いに気が付いた。
「あ、あの……やっぱりもう少し、胸のサイズがないと……いけませんか?」
 百合子も胸が小さいと言うわけではない。ただ、ブラをしていないとある程度は必然的に、谷間は緩くなってしまう。百合子は精一杯の努力として、両腕で左右から胸を挟むようにして、立ち尽くしている隆也を見上げた。
「ご、ごめんっ……ちょっと、ごめん!」
 ところが隆也は右手で口元を覆うと、逃げるように身を翻して出て行ってしまった。百合子は慌てて立ち上がり、締まりかけていたドアにしがみついた。
「隆也さんっ」
「ば、馬鹿っ、開けるなって!」
 主の姿を求めて、玄関のドアを押し開けようとすると、隆也がほとんど体当たりをするみたいにドアを閉めにかかった。
「きゃあっ!?」
 反動で、ドアノブを握っていた手首と、打ち付けてしまった頭とに衝撃が走る。痛みに顔をしかめ、手首を押さえながら膝を付いてしまう。
「ご、ごめんっ、大丈夫か!?」
 慌てたのは隆也だった。自分で叩き閉めたドアを大急ぎで開け、百合子の隣にしゃがみ込んできた。しかし百合子に触れることは憚られるのか、添えかけた手をビクッと跳ねさせると、オロオロと百合子の様子を窺ってくる。
「な、なあ百合子、どこだ? どこが痛い? 手か?」
「大丈夫ですよ、隆也さん。打ったのはちょっとだけで、驚いたのが大きかったですから」
 押さえていた手を放して、隆也に微笑みかける。隆也はホッと息を吐くと、そのまま廊下に腰を下ろしていた。
 手はまだ少し痛んでいたが、隆也のそんな姿が見れて、百合子は何だか得をした気分になっていた。クスッと小さく笑うと立ち上がり、半分開いたままのドアをそっと閉めた。
 振り返ると、隆也は思いっきり身体を捩って百合子を見ないようにしていた。
「あの……隆也さん? どうかなさいましたか?」
「どうかなさいましたって……いや、どうかしてるのはそっちじゃないか。何なんだよ、その格好は」
 廊下の向こうに呼びかけるような隆也。チラリと覗いたその頬は、かなり赤く染まっていた。百合子はクスッと小さく笑った。
「良かった。お気に召していただけたんですね。これ、お父様に教えていただいたんです」
 百合子の答えに、隆也はベシャッと潰れていた。廊下にうつ伏せになった隆也は、何やら身悶えるように手足をバタつかせる。
「隆也さん、大丈夫ですか?」
「いや、だからオレは大丈夫だってば。いや、え〜っと……うん、何で親父は、そんな格好をしろとか言ったわけ?」
 徹底して自分を見ようとしない隆也に、百合子は胸が切なく疼くのを感じていた。見て欲しくてこんな格好をしているのだから、見てもらえないのは残念だ。けれども、見ようとしない隆也の純な姿は、むしろ愛しくて堪らない。
「それはですね、隆也さん」
 できることなら、このまま隆也の背中にしがみついて添い寝をしたいくらいだった。胸の隆起を隆也の背中に押し付け、その耳元に甘く囁けば、隆也はどんな反応を返してくれるだろう。
 しかしそれは、あまりに奴隷の分を超えすぎている。
 百合子は膝を揃えて、うつ伏せで寝転がってしまった隆也の脇に正座をした。
「許される範囲で、隆也さんを誘惑しようと思ったんです」
「……誘惑?」
 隆也がジリジリと首を動かして、百合子の身体が視界に入るかは入らないかのところまで振り向いてきた。
 その体勢からだと見られていないのは百合子にも分かったが、何故だか堂々と見られるよりも恥ずかしい気がしてしまう。百合子は正座した足の親指を擦り合わせるようにしながら、隆也に「はい」と頷いていた。
「隆也さん、私がこの家に招かれてから、何日経つかご存知ですか?」
「……三日」
「その間、隆也さんが私を抱いてくださったのは?」
 追い詰めるように問いを重ねると、隆也がまたベシャッと床に潰れてしまった。そのまましばらく悶えるように頭をグリグリと床に押し付けていたが、やがて意を決したか、勢い良く顔を上げると、百合子のに正面から向かい合うように正座をした。
 その勢いのままに百合子の顔を睨み付けるようにしてきたが、しかしスグに顔を伏せてしまい、挙句に隠すように右手で顔を覆っていた。
「隆也さん?」
「あ〜……うん、ごめん、ちょっと待って」
「はい」
 隆也はうんうんと何事か自分に納得させるように頷くと、ようやく顔を上げ……そしてまた伏せてしまった。
「ごめん、いや、何と言うかだな……」
「クス、やっぱり、お父様ってすごいですね」
「え?」
「はい、どうぞ。隆也さん」
 百合子は、事前に隆也の父である隆一から、隆也が裸エプロンにも乗ってこなかったら渡すようにと預けられていた封筒と紙袋を、隆也に差し出した。
 床の上を滑らせた封筒を、隆也は警戒しながらも受け取った。



『Dear My SUN
 やあ、隆也君。DOUTEIを喪失したけれども、まだまだ未熟者な隆也君、今日も元気にオナニーしてるのかな?

 …………

 うん、いい返事だ。おにいさん、安心したよ』


 1枚目を見た時点で、隆也は破り捨てたくなっていた。
 わずか数行どころか出だしからツッコミどころ満載なこの手紙は、隆也に多大な精神的疲労を与えると容易に想像がついた。
 チラリと百合子を見ると、百合子は微笑ましそうにしている。隆也はため息をつきつつ手紙をめくった。


『さてさて。
 百合ちゃんに聞いたんだけれども、お前、何だよ。全然、百合ちゃんの相手してないんだって?
 百合ちゃんの締まりがあまりに良すぎて、初体験の時にチ○コをもぎ取られたのか?
 HAHAHAHAHA!』


 隆也の予感は的中しまくっていた。どこを突付いても彼の父親のノリが満載で、疲れてくることこの上ない。
 しかも父親だけあって、と言うべきか。ピンポイントで隆也の気に障る弄り方をしてくる。
 実際、隆也は既に「何がHAHAHAだ、お前は」と、かなり殺伐とした心情に追いやられていた。


『ていうかお前、心に病気でも抱えてんじゃないのか?
 お前くらいの年だと、それこそセンズリ覚えたサル並にヤリたがるもんなんじゃないのか?

 俺なんか実際、そうだったしな!』


 1行目で、グシャッと手紙を握りつぶしかけていた。
 しかし続く行で、ホッと胸を撫で下ろしたりもする。
 良かった、俺は同じじゃないや、と。


『まあね、まあね。
 あんまりからかってお前がキレると面倒だから、サクサクッと俺がアドバイスしてやるよ。

 要するにアレだろ? 百合ちゃんの方が圧倒的に経験豊富で、腰が引けてんだろ? 押し出さなきゃいけないってのに、まったく。
 俺、ちゃんとできてんだろうか、とか何とか、そんなことを考えちゃってるんだろ、ええ、このこのこの』


 相変わらずの軽いノリに腹は立ったが、隆也は言い返すことができなかった。隆一の言うことは、ほぼ図星だったからだ。
 百合子のことは好ましく思っているし、大事に思っている。その一方で、すべてを自分のものにしたいという衝動も湧き上がってくる。
 正直に言ってしまえば、ヤリたいわけだ。
 それにブレーキを掛けるのは理性ではなく、失敗を恐れる心だった。隆一の言うように、性奴隷として、牝犬として調教されてしまった百合子を相手に、その百合子が初体験であった隆也にしては、どのように責めていけばいいのか分からないのだ。
 いや、分かりはするが、そう、怖いのだ。過去の男たちと比べられて、物足りないと思われてしまうのが。
 改めて自分の心を思い知らされた隆也は憂鬱になりながらも、次の紙へ進んだ。




 馬鹿




 シンプルにデカデカと書かれた一言に、隆也は隆一への殺意を新たにしていた。
 ちょっとでも見直しかけた自分が馬鹿だった。
 しかし隆也は、父をまだ甘く見積もっていた。




 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿瑪瑙馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿河馬馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿




 続いて現れたのは、これでもかというくらいの『馬鹿』の羅列だった。
 しかもご丁寧に、途中で別の単語を紛れさせていたりする。
 手紙を持つ隆也の手が震えたのは、言うまでもない。


『お前は本当〜〜〜に馬鹿だね。
 ていうかお前、ホントに俺の息子かよ?

 俺が童貞捨てたのも、今のお前とそう大して変わらない年だったけど、俺は自分から経験豊富なお姉さまに頼み込んで行ったぞ?
 すいませんけど、俺の童貞切ってくださいってな』


 そんな隆一の姿は、ありありと想像できてしまう。
 昔から馬鹿だったのか……と、妙にシミジミ納得してしまう隆也であった。


『ちなみに相手は、俺の親父、つまりお前の祖父さんの愛人だったんだな、これが。
 幾つくらいだったっけなぁ、美咲さんは。20後半くらいだったか。30は行ってなかったと思う。
 親父の秘書だったんだけどさ。キツメだったけど美人だったぞ。クール・ビューティーって奴だな。

 もちろん、1回で終わるなんて事はなかったさ!
 筆おろししてもらった後も、何だかんだで付き合ってもらったなぁ……』


 何やら話の方向がズレ出しているように思える。
 とりあえず次を捲ってみたが、やはり路線はズレたままだった。


『ま、親父にバレてボッコボコにされたけどな!
 そりゃあもう、えげつなかったぞ? 何しろ俺、両手両足に肋骨もいわされて、入院したもんな。ミイラ男にされちまったい。


 ……しかし今にして考えてみれば、全身ズタボロにされたのに、チンチンが無傷だったのは、親父なりの優しさだったんだろうかな。
 なあ、隆也、お前、どう思う?』


 知るか、ボケ!
 内心で突っ込まずにいられない隆也であった。
 そもそも、どうしてこんな父親の間抜けな過去を今ここで披露されねばならないのだろうか。
 そんな隆也の憂鬱を知ってのことだろうが、父の回想はまだ続いていた。


『美咲さんはでも、優しかったなぁ。
 あの人も親父に相当言われたはずなんだけどさ、俺の病室にちゃんとお見舞いに来てくれてな。
 動けない俺の上で、キッチリ腰を振ってくれましたともさ。

 それを最後に、俺の前どころか親父の前からも姿を消したのは、ホント、いい女だったよ、うん』


 やれやれと、隆也はため息をついた。
 もう思い出話はいいから、サッサと本題に入ってくれ。
 切にそう願うのだが、隆一の思い出はもう少し続いていた。


『ちなみにさ、そうだ。
 二人目はそこの看護婦さんで、やっぱり年上だったな。

 三人目は、さらに年上で、近所に住んでた未亡人でな。お見舞いに来てくれて仲良くなったんだよ』


 話はまたしても、だからどうした、という方向に進みつつあった。
 隆也はサッサと読み飛ばすことにした。


『あ、でも誤解するなよ?
 別に俺、年上好みってわけじゃないぞ?
 4人目はそこの娘で、俺の1学年上なだけの人だった……いや、年上は年上かぁ。

 そうかぁ……考えてみれば俺、年上を相手にしてる方が何か多いぞ。
 発見だな、これは』


 そんなことを言われても、知ったことではない。
 いい加減本気で本題を忘れてやしないだろうか。
 隆也がそんな疑念を抱き始めた頃であった。




 あれ? 何の話をしてたんだっけ?




 それを言いたいのは隆也の方である。
 心底疲れる手紙であったが、まだ先は長そうだった。


『そうそう、思い出した。
 お前が、経験豊富なお姉さまを前に尻込みしてる、童貞ハートを捨てられないチキン野郎って話だったな、うん』


 イチイチ癪に触る物言いに、またしても苛つかされてしまう。
 隆也は必死に自分を宥めた。
 落ち着け、これがいつもの手じゃないか。そうやってペースを乱された挙句、相手の良いようにやられるんじゃないか、と。


『気持ちは分からんくはないけどなぁ、気にしないで当たって砕けた方が全然いいぞ?

 え? 何だ?
 そんなこと分かってるって?
 できてりゃ誰も苦労しないって?


 いや〜、若いっていいねぇ』


 父のニタニタ笑いが目に浮かんできて、隆也はついつい拳を固めてしまっていた。
 そうすると頭の中の父は、しょうがないなぁと笑いの質を変えていた。そして続く手紙も、微妙に路線を修正してきていた。


『さて、隆也くん。
 それでは、そんな君にとっておきのアイテムを授与しようじゃありませんか!
 
 あ、もちろん無料だから、心配するなよ?


 さあ、百合ちゃんから渡されてるであろう紙袋をオープンしてアイテムをゲットするのだ、Young Menよ!』


 隆也は胡乱な目で手提げ用の紙袋を見つめた。縦横がせいぜい30cmほどなので、そんなに大きな袋ではない。外から見た限り、嵩張った印象もない。持ってみても、案外軽かった。
 警戒しながら中を覗き込めば、何やらベルトらしきものが丁寧に巻かれたものと、鎖で繋がれた皮製の黒い手錠が見て取れた。
 隆也は判断に困り、チラリと百合子の様子を窺ったが、百合子は中身を知ってか知らずか、ただ静かに微笑んでいた。
 眉間を揉んだ隆也は、ひとまず百合子に背を向けると、百合子に見られないようにしながら紙袋から中身を取り出した。
 それはやはり、長くて柔らかな革のベルトと、明らかにそっち系のアイテムと思われる皮製の手錠だった。
 その意図が分からず、隆也はひとまず手紙に目を戻した。


『それが何か分かるか?
 分かんねぇだろうな〜。

 てか、その前にお前、ちゃんと袋から出す時、『チャララチャッチャチャ〜』ってドラえもんの秘密道具の効果音を言ったか?
 言ってなかったら、やり直せ』


 もちろん隆也は、このページは無視をした。


『さて、それでは解説してやろう。

 それはズバリ、目隠しと手錠です。
 目隠しとは読んで字の如く、目を隠すための道具です。
 手錠もそのまんま、手を拘束するための道具です』


 いや、そのまんまな解説をされても困る。
 隆也としては、何故こんな物が用意されているのか、その理由が知りたいのである。


『つまりな?
 お前の不安は『百合ちゃんに前の男たちと比べられてるのかも』っていうのに尽きると思うんだ。
 だったら、比べられなきゃいいわけだよな。

 そんな不可能を可能にするのが、その目隠しなんですよ、旦那!』


 何て胡散臭い売り文句なんだろう。
 隆也はかなりゲンナリしつつ、床に置いたベルトと手錠を見た。
 父親の言わんとするところは何となく分からなくもないのだが、いいように乗せられているのでは、という疑念が拭いきれない。


『使い方としてはだから、長いベルトで百合ちゃんの視界を奪いなさい。もちろん、それを手錠代わりにしたりもいろいろできるんだけど、今回は目隠しでいい。
 で、手錠ね。
 これは無難に、手を前で拘束すれば良いよ。後ろ手の拘束が束縛感はもちろん高いんだけれども、百合ちゃんはともかく、オマエが慣れてないから、体位を変えたりとかで手間取ると思うんだよな。
 んでまあ実際、手錠をした、されたって事実だけでも、けっこう変わってくるもんだからさ』


 つい何となく、頭の中にそういう百合子を想像してしまった。
 裸エプロンに、手錠に、目隠し。
 増えたパーツはわずかなのに、そのあまりの卑猥さに隆也は慌てて頭を振って、妄想を追い出した。危うく、股間が熱くなるところだった。
 隆也は何度か深呼吸をすると、残りの手紙をやっつけにかかった。


『とにかく、騙されたと思って試してみろよ。
 実際、百合ちゃんと目を合わさなくて済むってのは、お前にとってかなり精神的負担を軽減することになるはずだから。
 これはホント、マジだから』


 そう言われれば、一理あるような気がしてしまう。
 そう思って隆也が次の紙を捲ると……。




 まあ、世の中、信じる奴ほど騙されるんだけどさ。




 手紙を持つ隆也の手が、プルプルと震えていた。
 とっさに破り千切らなかったのは、行幸と言えよう。
 落ち着け、分かりきっていたじゃないか。自分の父親がこういう男だということは。それを今さら、何を怒る必要があろう。
 隆也は必死に自分を宥めながら、残り少なくなった紙を捲った。




 それじゃあ、我が息子よ、健闘を祈る。
 あでぃおす、あみ〜ご〜〜〜〜!




 隆也は冷め切った瞳で、最後の文言を追い終えた。
 息子って言ってんじゃねえかよ、テメエは!
 などというツッコミも、今さら浮かびさえしなかった。
 ただただ脱力しきって、ペタリと廊下に寝っ転がってしまっていた。


「隆也さん?」
「んー……」
「あの……大丈夫ですか?」
「ああ、うん……」
 百合子がもう一度声をかけると、隆也はノロノロと身体を起こした。しかしまだ迷いがあるのか、何やら腕を組んでしまい、やはり百合子と真っ直ぐ向き合おうとしてくれない。
 百合子は、隆一のアドバイスを思い出していた。
 アイツは経験の浅さを気にしてると思うから、その辺を上手くフォローしてやってくれないかな、と。
 確かに経験という面では、百合子が圧倒的に有利である。
 しかし百合子とて、いざ隆也に抱かれると思うと、嬉しい反面、相当な緊張を強いられているのだ。
 自分の身体に、どこかおかしなところはないだろうか。
 隆也が悦ぶように奉仕できているだろうか。
 何か気に触ることを言ったり、粗相をしたりしないだろうか。
 不安の種は尽きることがない。
 しかし、と百合子はそこで考え直した。
 隆也も同じような不安を抱いているのであれば、差し出がましくはあるが、やはり百合子が隆也を支えるべきなのではないか。主人を立てるのも、奴隷の務めなのではないか。
 それに何より、百合子には絶対の自信があった。
 隆也がどのような行為に出ようとも、自分は最高の悦びでもって、それを受け入れられる、と。
「隆也さん……一つ、よろしいですか?」
「ん……うん」
 百合子は意を決して、隆也に語りかけた。隆也は俯いたままだったが、小さく頷いてくれた。
「私も、隆也さんの前で……不安になるし、緊張もしてるんですよ?」
 隆也が、少し首を捻るような素振りを見せた。どうやら疑われているらしい。
 百合子は微笑むと、自分の胸の内を正直に話した。
「本当です。気に入ってもらえなかったらどうしよう、とか。もう要らないって言われたら、どうしよう、とか」
「そんなっ! ……い、要らない、なんて……」
 隆也はとっさに顔を上げていたが、その視界に百合子の開いた胸元を捉えると、迷うように言葉からも勢いが失われ、結局また視線を逸らせてしまっていた。
 百合子は、そんな隆也が、心の底から愛しくてならなかった。このまま隆也の頭を掻き抱き、強く強く強く強く強く、胸の中に抱き締めたいと切に思った。
 だが、それはやはり奴隷の分を超えてしまう。
 だから百合子はその思いを抑え込むように、自分の胸に手を当てた。そうして一つ息を吐くと、気まずげに視線を逸らせたままの隆也に柔らかく微笑みかけた。
「本当ですよ、隆也さん。私、さっきからもうドキドキしっぱなしなんですから」
「……あんまり、そうは見えないぞ」
「……確認、してみますか?」
 百合子はそっと手を伸ばして、隆也の手を取った。
 ビクッと隆也の肩が震え、腕を即座に引き抜かれてしまう。百合子は優しく微笑んで、身体を少しだけ前に傾ける。気まずそうに視線を逸らせる隆也の手を、百合子は再びそっと包み込んだ。
 今度は、隆也も逃げなかった。ただ、ゴクッと唾を飲む音が聞こえた。
「隆也さん……」
 大事に大事に、愛しい主人の名を呼んで、百合子は隆也の手を自分の胸元へ導いていく。
 その手が震えていたのは、隆也の手が震えるせいか、あるいは百合子自身が震えてしまっていたせいか。
「んっ……」
 呻いたのは、百合子だった。
 三日ぶりに触れる、隆也の手。それはまだ細い少年のものだったが、百合子の心を包み込むには十分だった。
 その手が今、自分の乳房に押し当てられている。それだけでもう嬉しくて、そして……感じてしまっていた。
「分かりますか……隆也さん」
「う、うん」
 躊躇いがちに、隆也が頷く。
 隆也の手に伝えられているのは、激しく高鳴る鼓動だけではない。その手の平には、痛いほど硬くしこった乳首の感触も伝わっているはずだ。
「はふっ……ぅ、んんっ……」
 隆也の指に、力が込められていた。柔らかなふくらみが、隆也の手の中で形を歪ませる。
 百合子の漏らした吐息は、自分でもそうと分かるほど、女のものになっていた。
 身体が、熱い。
 子宮が切なく疼き、乳首が痛いほどヒリついている。
 それを避けるようにして、隆也がゆっくりと指を動かしてくる。
 脳髄がジーンと痺れてきて、隆也以外の一切が、どうでも良くなっていく。
「隆也さん、こっちも……お願い、します……っ」
 自分の胸を揉む隆也の手を、百合子はすがるように握った。
 潤んだ瞳に、隆也の笑みが映った。
 瞬間、子宮がキュウッと搾られるように疼いていた。
 下腹が、秘唇が熱く火照りきり、愛液の零れ出す感触に、百合子は身震いしてしまう。
 百合子に手を握られた隆也は、胸を揉むのを止めてしまっていた。だからと言って、百合子の望むとおりに手を股間へ動かそうともしない。
 完全に、隆也のスイッチが入っているのが、百合子には分かった。
 愛しく、頼もしいご主人様。
 隆也に仕えることの出来る悦びが、百合子の心を満たしていく。
「隆也、さん……」
 微かに震える声で隆也の名を呼ぶと、百合子は隆也の手を自分の股間へと導いていった。軽く膝を開いて、エプロンのその奥へと隆也の指を誘う。
 クチッ……と、小さな水音が鳴った。
「んっ……ぁ、はあっ、隆也、さんっ……!」
 エプロンの奥で、隆也の指が動く。とっくに綻びきった秘唇の合間を、ゆっくりと撫で上げられる。思わず太ももが引き攣り、隆也の手を挟み込んでしまう。
 窘めるように百合子を睨んだ隆也が、愛液でベットリと濡れ、恥丘に張り付いた恥毛を摘み上げる。ツンツンと引っ張られる痛みに呻きながら、百合子はどうにかまた足を開いていく。恥毛を引かれる度に、新たな愛液を滲み出させながら。
「あうっ、ん、っ、んくぅっ……た、隆也、さんっ……んんっ」
「緊張してるのに、こんなに濡れるんだ」
「ご、ごめんなさい……でも、でもこれは、隆也さんだから……隆也さんだから、私……っ」
 隆也になじられて、羞恥の熱が全身を焦がす。身体が熱いのに、小刻みに震えだす。
 その震えが、自分が更に虐げられることを期待しているせいだと悟り、百合子は己の淫らさに改めて愕然としてしまう。調教された肉体は、どこまで貪欲になってしまったのだろう。
 このような汚れた肉体で、申し訳ないと思ってしまう。出来ることなら、隆也の手で淫らに堕として欲しかったと。
 けれども。
 恥辱と慙愧に瞳を濡らす百合子が見たのは、隆也の笑みだった。
 そして。
「っんぐぅぅぅぅっ!!」
 鋭い痛みが恥丘に生じ、百合子は大きく背中を仰け反らせていた。悲鳴を漏らすまいと口を押さえた手の隙間から、それでも呻きが漏れ出て行く。
 最早完全に涙目となった百合子の顔の前で、隆也が指を摺り合わせる。
 3〜4cmほどの縮れた毛が、パラパラと落ちていった。
 ブチブチッと、恥毛を引き千切られる音が百合子の耳に甦る。引き攣った肌がズキズキと痛むが、痛みは熱に変わり、百合子の肉体を燃え立たせる。
 被虐の悦びが、百合子の心を感動に震わせていた。
 一足飛びに、主人として成長していく隆也。その隆也に出会えた喜びは、言葉に言い表せなかった。
「隆也さん、私、私……」
「うん。百合子には、お仕置きが必要だな」
 隆也の手が、百合子の口元に差し出される。自分の愛液に濡れた、まだまだ細い少年の指。その指を清めるべく、百合子はそっと口を開いていった。



「さあ、百合子」
「はい……」
 隆也の指を舐め清め終えた百合子は、命じられるままに両手を揃えて前に差し出した。隆也の細い指が、百合子の白い手首を握る。それだけで、キュッと下腹が疼いてきてしまう。そればかりか胸の奥から切ないような、泣きたくなるような感触が込み上げてきて、百合子の顔を歪めさせる。
 どうかしたか、と目で問いかけてくる隆也に、何でもありませんと百合子は微笑で答えていた。
「あっ……」
 しかし次の瞬間、百合子は隆也に抱きかかえられていた。差し出した両手の上から身動きが取れなくなるほど強く、痛みを感じるほどにきつく抱きすくめられる。
「隆也、さん……」
 胸が潰れそうなほど、切なく痛んだ。堪えきれずに、涙が頬を伝って流れ落ちる。
「百合子……」
 熱い囁き声が、すぐ耳元でした。それだけで身体が芯からゾクリと震え、蕩けてしまう。そうしてふにゃりとなった身体を、より強く強く隆也に抱きしめられる。
「隆也さん……隆也さん……っ」
 愛しい主人の腕の中で、ついに百合子は涙を零してしまっていた。隆也の唇が、その涙をついばむように舐め取ってきた。その感触に、百合子の身体はいよいよ蕩け、心は忘我の境地に誘われる。
 そして気が付けば、百合子は背後から包み込むようにして隆也に抱きしめられていた。身長は百合子の方が若干高いのだが、その広げた足の間に座らされ、背中から抱きしめられれば、スッポリとくるまれるような安心感があった。
「隆也、さん……っ」
 百合子は肘を曲げて、二の腕から回されてくる隆也の腕にそっと触れた。そうすると隆也がまたギュゥッと腕に力を入れてくる。成長期の途上である隆也の腕は、男と言うにはまだまだ細く柔らかかった。それでも百合子を抱く力は強く、息苦しさに呻きを漏らしてしまうほどだった。
 もちろんその苦しさは、百合子にとっては好ましい、望むべき痛みであった。
 主人に与えられる痛みが、束縛されているという実感が、百合子に「自分は今、いるべき場所にいる」という安心感さえもたらすのだった。
「百合子」
「……はい……」
 腕の拘束を緩めた隆也が、百合子の手首を握る。微笑んだ百合子は、またさっきと同じように左右の手を重ねるようにして、かざすようにする。
 そうして少し不遜ではあったが、心持ち、隆也にもたれかかる。そうすると裸の腰に隆也の股間の昂ぶりが強く感じられた。ゾクゾクッと、身体の奥で“牝”が蠢くのがハッキリと分かった。
「……けっこう、細いよな。百合子の手って」
「そう……っ、でしょうか? 女は皆、こんなものだと思いますよ?」
 革製の手錠が、まずは右手に巻き付いてくる。抜けないようにと隆也がギュッと引き絞ってくれば、皮は確かにかなりの余りが出ていた。一番細くなる穴に留め具を刺しても、まだ少し余裕がある。
「キツクはない?」
「ええ、大丈夫ですよ」
 微笑んで答える百合子に頷いた隆也が、左手にも同じように皮の手錠を嵌めていく。そうして2つを繋ぐ鎖も、短くなるように調節をする。そうすれば百合子は、ほとんど手首を重ね合わせたような形のまま、腕を放せなくなっていた。
「……はぁ……ん、ふぅぅ……」
 思わず、吐息が漏れていた。
 今までに手錠どころか、全身を革製の拘束具で戒められたことも、麻縄で縛り上げられたことも何度となくあった。
 それでも、今のように「繋がれた」と思ったのは初めてだった。心に食い込んでくるほどの拘束は、経験したことがなかった。このような戒めがあるなど、想像だにしていなかった。
「はぁ、ぁぁ、はぁぁ……んっく……ん、んふぅ……っ」
 胸が、痛むほど熱く高鳴っていた。興奮しきった心臓が、のど元にまでせり上がってくるような気がした。
 息は自然と荒くなり、その合間に唾を飲み込んだ時、下腹がキュンッと強く疼いてきた。横座りになっていた百合子は、そのももを擦り合せた。ニチャッと、溢れ出た愛液が粘ついた音を立てるのが聞こえ、百合子は強く身をすくませていた。まさかココまで濡れているとは、思いもしなかったのだ。
「さあ、百合子」
「ぁ……」
 恐れ入る百合子の顔の前に、細長く黒い帯がかざされる。それが目隠しだと分かると、百合子の身体はまたブルッと期待に震え上がっていた。
「……お願い、します……」
 百合子は呟くようにそう言うと、震える睫毛を伏せたのだった。
 ゆっくりと、目隠しが近付いてくる。それは前髪を下から潜り、閉ざされた百合子の目蓋にそっと触れてきた。
 百合子の身体が震えたのは、革の冷たさのせいだった。それでも隆也は百合子が安心するようにと、耳元にそっと口付けてくれていた。幸せすぎて泣きそうと言うよりも、実際に涙が滲んでしまっていた。
 百合子は手錠を掛けられた手でそっと涙を拭うと、はにかむような笑みを肩越しに隆也へと向けた。そうして隆也が目隠しをしやすいようにと、少しアゴを引いて後頭部をさらす。
 隆也が目隠しの位置を少し整えると、左右に伸ばされた分が対称に頭を回ってきた。そうしてキュッと頭の後ろで最初の結び目が作られた時、百合子ははしたない声が漏れ掛かるのを唇を噛んで堪えていた。
 それでもしかし、秘唇の合間から蜜が吹き零れるのは、抑えようはなかった。
「あふっ……ん、はぁ……ぁぁ……っ」
「……けっこう、何て言うか……」
 微かにかすれたような声でそういった隆也が、目隠しの帯が噛んでしまった、耳に掛かる髪を整えてくれる。その指に髪を委ねるだけでも頭がジーンと痺れてくるのだが、今はその頭が、隆也の施した目隠しによってキツク縛られている。
 手錠で戒められた手を持ち上げ、指でそっと目隠しをなぞってみる。
 しなやかな革が指に触れた瞬間、百合子はクラリと身体が傾いで卒倒しそうになるほどの興奮に見舞われていた。
「隆也さん、私……私っ……っ!」
 身体を捩って、背後の隆也を振り返る。もちろん、目隠しをされているので、そこに隆也の姿は見えない。
 目隠しの下で百合子は、拭った涙をまた滲ませていた。
「綺麗だよ、百合子」
 隆也の手が、振り向いた百合子の頬を挟むようにしてくる。百合子は堪らず、目隠しの下から涙を零してしまう。
「どうして泣いてるんだ? 綺麗だって誉めてるのに」
「本当に……本当に私、綺麗……ですか?」
「ああ、もちろん」
 隆也が、半身になった百合子の身体をまた強く抱きしめてきていた。隆也の腕と手錠と目隠しと、三つもの戒めに押さえ付けられてなお、百合子の身体は小さく震えていた。
 抱きしめる手を解いた隆也が、百合子の手を取った。引かれるままに腕を伸ばした百合子は、その指先に柔らかく温かなモノを感じた。一瞬だけ驚いたものの、すぐにそれが隆也の頬だと分かった。
「隆也、さん……」
 両の手首を手錠で括り合わされている百合子は、両手を開いてこわごわと隆也の顔に触れた。震える指先でそっと輪郭をなぞれば、隆也が笑っているのが分かった。
 奴隷である百合子の姿に満足しているように、嬉しそうに、隆也は笑ってくれていた。
「隆也さん、隆也さんっ、隆也さんっ……っ!!」
 嬉しくて嬉しくて嬉しすぎて、それが胸を塞がれるほどに切なくて、百合子はただ愛しい主人の名を呼んで涙を流していた。そうすると目隠しをされていても、隆也が笑うのがハッキリと見えた。
「馬鹿だなぁ、泣くことなんて何もないだろう?」
 果たして隆也は、百合子の強張った心に染みいるような温かな笑い声を上げてくれていた。その飾らない気遣いが、やはり百合子には切なすぎた。
「隆也、さん……」
 泣き止むことも出来ないまま、百合子は触れることすら憚れるといった手つきで、それでも隆也にすがりついてしまっていた。ところが、その手が不意に強い力で握られてしまっていた。「え?」と思った時には、右手の人差し指がヌルリと熱い粘膜に覆われていた。
「ひあぁっ!? た、隆也さんっ……!」
 ゾクゾクッと、指先から注ぎ込まれた快感が全身へと駆け巡っていった。ギクンッと背中を反り返らせた百合子は、自分の奥から愛液が搾り出されていく感触を味わわされていた。
「やっ、あっ、あ、駄目っ……隆也、さんっ」
 ピチュジュルと、水音が自分の手の方から聞こえてくる。その音が鳴る度に、ゾクゾクした快感が指から全身へと流れ込んできてしまう。
 指を舐められていると悟った百合子だったが、口に含まれている以上、乱暴に手を引き抜いて隆也に痛い思いをさせるわけにはいかなかった。かといって、このまま舐められ続ければ、その快感に呑まれてしまうことは容易に想像が付いた。
「お願い、ですっ……た、隆也さん、お願いっ」
「お願いって、何が?」
「きゃふんっ……! や、あああっ……で、ですから、あのっ……!」
 百合子は何とか手を引こうとするが、隆也の手はビクともしない。年下の、どちらかと言えば線が細い方の少年なのに、捕まれた手をもぎ取ることがまるで出来ない。
 それどころか、口に含まれた人差し指以外も、隆也の手で伸ばされ、広げられていく。そうしてそれぞれの指が咥えられ、指の間を舌で舐められる。
「あっ、ああっ、んくぅっ……! 隆、也、隆也さん……ああああっ、お願い、お願いですっ」
 咥えられた薬指を、音を立てて吸い上げられた。ジュルルッと唾液と共に吸われれば、腰が抜け落ちるほどの快感にまたも背中が反り返る。
 その衝撃が抜けた百合子はガックリと項垂れ、ハァハァと荒い息を吐いていた。もちろん、その間も隆也は舌を休めたりはしない。今は舌先で手の甲を舐められている。それが手のひらに移ってきて、伸ばした舌腹を強くグリグリと押し付けられる。
 それらに百合子は、確かにくすぐったさを感じているのだが、それ以上に下腹が熱く疼いてしまうのだった。
「うはっ、はっ、あ、あああぁ……た、かや、さん……っ」
 隆也が、百合子に指を広げさせる。その小指の側面を、隆也の舌が上ってくる。うなじが逆立つほどの快感に、百合子は身をすくめる。しかし、それでもまだ指を放してもらえない。
「あうっ……! ぅ、ぁぁ、ぁぁぁぁ……隆也、さん……っ、お、お願い、本当にっ……わ、わたっ、私……っ」
 隆也が、小指を咥え込んできた。唇で強く挟まれ、指の腹を舌の上でなぶられる。それだけのことが気持ち良くて気持ち良くて、泣きたくなってきてしまう。
 股間はもう、とっくに愛液でベトベトになっている。今も舐められる度に、身体のうちで官能が沸々とその熱を上げていくのが分かる。
 本当にもう、限界だった。
「お願い、です、隆也さんっ……もう、もうどうか、許して、ください……っ」
「許すって、何だ?」
「ひあっ、ああっ……そ、それっ……指、舐めるの、もう、もうっ……お許し、くださいっ」
 チュッと軽く、小指を吸い上げられていた。ゾクゾクッとまた快感に身体が震え、座っていることさえ困難になる。それでも百合子は、両手を主人に預けたまま、その主人へ目隠し越しに恥を忍んで必死に訴えた。
「お願い、です……これ以上されたら、私、私……もう、イってしまいそう、なんです……!」
「イクって、指を舐められてるだけで?」
「は、はいっ……ずっと、ずっとアソコが……オマ○コが、疼い、て……んああああっ!」
 ジュリュルルッと派手な音を立てて、咥えられたままの小指が吸い上げられた。ギクンッと大きく身体を震わせた百合子は、そのままドサッと音を立てて隆也に倒れ込んでしまった。
 隆也が腕を回し、ギュゥッと強く掻き抱いてくる。思いの外に強い力で抱きしめられた百合子は、また身体の奥から、それこそ子宮を搾り込まれるような感触に身悶えてしまう。
 ドロリと粘度の濃い愛液が、滴っていくのが分かった。
「はぁ、はぁぁ、ん、ぁぁぁ……隆也、さん……」
「……イキそうなんだ、百合子は」
「は、はい……ん、はぁ、ん……申し訳、ありません……んくぅぅっ」
 ギュゥゥゥッと、より強く苦しいくらいに抱きしめられた。ドクドクと耳元で血の流れる音が聞こえ、頭がクラクラとしてくる。吐く息が熱く、どれほど喘いでも体温が下がる気配がない。
「百合子……」
「は、はい……」
 主人に名を呼ばれ、百合子は今にも達してしまいそうな身体に力を入れて、どうにか顔をもたげた。
 目隠しの向こうで、隆也が微笑むのを百合子は知った。
「いいよ、百合子。イっても」
「え……? んあっ、あぐっ……クうううぅうううううううううううっ!!」
 隆也の優しい言葉と共に、小指がカッと燃え上がった。
 それを噛まれたと悟るより先に、百合子は一気に絶頂へと押し上げられていったのだった。