エピローグ



 外のどよめきが、かすかに、地下牢にまで届いている。
 ノエルは、綺麗に整えられた寝台で、ぼんやりと目を覚ました。
 寝台に向かい合う形で置かれた大きな椅子に、レオンが座っている。
 レオンは、その華奢な体には大きすぎる、厚手のマントを羽織っていた。
「……なにか、あったの?」
 ノエルが、幼女のように小首をかしげながら、訊く。
「アルメキアの兵達が、僕達を迎えに来たんですよ」
 そう応えるレオンの声は、あいかわらず少女のようであったが、落ちついていて、どこか威厳すら感じさせた。
「じゃ、じゃあ……ネロさまは?」
 ノエルが、少し慌てたような声をあげる。アルメキアの兵達がここに来たとあっては、ネルドールの王がただで済むわけはない。
「まさか、あたしを、捨てて……それとも……それとも……」
 自らの支配者に関する最悪の想像に、ノエルが声を震わせる。
「……大丈夫」
 レオンは、目を閉じてふっと笑い、立ちあがった。
「大丈夫ですよ、ねえさま」
「え……?」
「彼は――魔王ヴァルド・ネロは、ここにいます」
 言いながら、そっとマントの前を開く。
 影になったマントの奥、レオンの股間の部分から、ぬらつく青黒い蛇のような触手が、のろりと鎌首をもたげた。
「あ……」
 ノエルが緑色の目を見開き、両手を口に当てる。
「ようやく、ねえさまを取り戻せたんですね、僕……」
 レオンは、ゆっくりと目を開けた。
 美しい紫色であったはずのその瞳が、禍々しい赤い光を放っている。
「あ、あなたは……あなた、が……?」
「ネロは、ネルドールを一つにまとめるために、魔道によって作り出した僕の分身です」
 レオンは、落ちついた口調で話し出した。
「父上の件は、残念でした。許しを乞うこともできないと思ってます。それに、ハリウスにも苦労をかけました……。でも、後悔はしていませんよ。ねえさまを奪い返すことができましたからね」
 レオンが寝台の上に上がり、座りこんだままの姉の目の前に立つ。
「それともねえさまは、まだダニルのことを想っているんですか?」
 ノエルは、ふるふるとかぶりを振った。
 そして、両手をシーツの上に付き、その顔をレオンの足に寄せる。
「わたしは……あなたのものです……陛下……」
 ノエルは、そう言って、レオンの足にそっと口付けた。



 指導者を失ったアルメキアとネルドールの間に休戦協定が結ばれ、レオンとノエルはアルメキアに帰国した。
 三ヶ月後、アルメキアは、新たに即位したレオンの指揮のもと、再びネルドールに出兵した。そして、ほとんど戦いらしい戦いをせずに、その全土を併合したのである。
 アルメキア・ネルドール両王国は、“聖魔王”レオンI世による、長い治世のもとに置かれることになった。



「あア、あア、あア、あア、あア……」
 ノエルは、月光の差し込む宮殿の一室で、レオンの腰にまたがり、嬌声をあげていた。
「き、きもちイイ……きもちイイです、陛下……」
 そう言うノエルの腹部が、丸く膨らんでいる。まだどこか幼さを残すその顔には、ひどくアンバランスな大きさだ。
「あんまり激しくすると、お腹の子に障りますよ」
 笑みを含んだ声で、レオンはノエルを下から貫きながら、言った。その白い手は、最近たっぷりとしてきたノエルの乳房に伸ばされている。
「で、でも、でもォ……ノエル、よすぎてガマンできないんですゥ……」
「ふふっ、しかたないなあ、ねえさまってば」
 そう言うレオンの股間から、ひゅるひゅると肉色の触手が現れ出る。
「ああ……陛下……早く、早くおねがいします……」
 姉のはしたないおねだりに応えるように、触手たちが、どこか優しくノエルの体をまさぐり出す。
「ああ、すてき……すてきです……」
 ノエルが、恍惚の表情を浮かべながら、身重の体をのけぞらせる。
 触手のうちの一本が、たっぷりと粘液を分泌しながら、ノエルのアヌスにその身を潜らせた。
「ンはうっ!」
 びくン、とノエルの体が跳ねる。
「あ、お尻……イイ……きもち、イイですぅ……」
「あはっ……ねえさまのココ、すごく締めつけてきましたよ」
「だ、だってえ……ンあっ、あーッ!」
 ノエルは、一際高い声をあげた。レオンが、残酷にノエルの乳首をひねりあげたのだ。
 白い母乳が、細い軌跡を描いてほとばしる。
「ス、スゴい……スゴい、ですう……ッ! なかで、なかでぐりぐりしてるゥ……!」
「ああ、ねえさま……ねえさまのココ、すごく熱くて、気持いい……」
 下から姉の体を激しく責めたてながらも、レオンが少女のような声をあげる。
「う、うれしい、もっと、感じてください……陛下……ンあああああああッ!」
「ねえさま、僕、僕……ッ!」
「わ、わたしも……あッ! あああぁアっ! あああああああーッ!」
 レオンの華奢な体に似合わない青黒い巨根と、そして無数の触手が律動し、いっせいに白濁液を放つ。
「イク、イク、イクう、イっちゃううううううううううううウーッ!」
 体の中と外に熱い精液を浴びせられ、ノエルは高い絶叫をあげた。

「ねえさま……」
 添い寝するノエルのお腹を優しく撫でながら、レオンは囁いた。
「さっき、感じましたよ……」
「え?」
「この中にいるの、僕らと同じ、双子です」
「ホント、ですか……?」
 嬉しげにそう言うノエルに、レオンはにっこりと微笑みかける。
 月が、そんな二人を、いつまでも照らし続けていた。





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