エピローグ
その日、彩乃は、知巳を例の地下室に呼び出していた。
あの、緑郎の部屋である。様々な秘密を共有することとなった四人は、交代でこの部屋を使うことにしたのだ。
五月も半ばをすぎた週末。そろそろ、一学期の中間テストの準備を始めなくてはならない時期である。
「だから……試験終わるまでは、お預けね」
そう言いながら、彩乃は、ちゅっ、とベッドに並んで座る知巳の唇を軽くついばんだ。
「そうですか……」
知巳が、ひどく寂しそうな声で、言う。
「そんな顔しないで。――だから今日は、うんと楽しんじゃお♪」
「は――はい」
そう返事をする知巳を、彩乃が、ベッドに押し倒した。
そして、その体に覆い被さり、濃厚なキスをする。
知巳は、負けじと、下から彩乃の胸のふくらみに手を重ねた。
ブラウスの上から乳房を揉むと、彩乃が、切なそうに眉をたわめる。
彩乃の胸の柔らかな量感を楽しんだ後、知巳は、ブラウスのボタンを一つ一つ外し始めた。
彩乃も、知巳のワイシャツを脱がせていく。
ほどなく、二人は全裸になった。
ちゅ、ちゅ、と互いの首筋にキスをしながら、相手の股間に手を伸ばす。
「あン……」
早くも潤み始めているその部分を指で触れられ、彩乃は甘い声をあげた。
そんな彩乃の体をくるりと裏返し、知巳が上になる。
知巳は、優しく彩乃の胸をもみしだきながら、その頂点の乳首を唇で交互に吸った。
そして、知巳の唾液に濡れ、固く尖った乳首を、舌で弾くように嬲る。
「あぁン……きもちイイ……」
うっとりとそう言いながら、彩乃は、知巳のペニスをゆるゆるとしごいた。
すでに知巳のペニスは痛いほどに勃起し、きりきりと反りかえっている。
彩乃は、その先端部分を、手の平ですりすりとイタズラし、溢れる先走りの汁を、指先で伸ばしていく。
二人は、互いの繊細な部分を丹念に愛撫しあった。
「ンうン……知巳くん、横になって……」
そう言われ、知巳は、素直にまたベッドに仰臥した。
そんな知巳の頭を両膝でまたぎながら、彩乃は、ペニスに顔を寄せる。シックスナインの体位だ。
「あぁ……」
ペニスの性臭にうっとりとした笑みを浮かべてから、彩乃は、ぱっくりとそれを口内に収めた。
「あく……っ!」
生温かい口腔粘膜がペニスを包み込む感覚に、知巳が声をあげる。
そして知巳は、彩乃の丸いヒップに手を添えて、魅惑的な肉の花びらに舌を伸ばした。
愛液の、どこか甘いような酸味を舌先に感じながら、ぴちゃぴちゃと音を立てて、ラビアを舌で攻める。
柔らかく開いた肉の割れ目からはとろとろと蜜が溢れ、それは、知巳の口元を濡らしていった。
知巳は、彩乃のお尻をすりすりと手で愛撫しながら、尖らせた舌先を膣口に刺し入れた。
「ふう〜ン」
そのままじゅぽじゅぽと舌を肉穴に出入りさせると、ペニスを口一杯にほおばった彩乃が、媚びるような声をあげる。
そして二人は、ひとしきり互いの性器を口で味わった。
相手の体が性感に震え、おののく様が、ますます興奮の火に油を注ぐ。
「ん……ン、んぐ……ふゥん……ぷはっ……」
そして、とうとう、彩乃はがまんできなくなったように顔を上げた。
「知巳くん……あたしの中に、コレ、頂戴……」
ぞくぞくするような艶っぽい流し目を、自分のお尻の下の知巳の顔に向けながら、彩乃がおねだりをする。
こく、と知巳が肯くと、彩乃は体の方向を変え、知巳の股間にまたがった。
そんな、淫らな姿勢をとる様子にも、どこか、たおやかさのようなものがあるように思える。
淫靡さと優雅さが奇妙に融合した、白い裸体――
それが、知巳の小柄ながら引き締まった体に覆い被さり、ためらいがちに口付けをする。
知巳は、彩乃の肩に手を添え、夢中でそのキスに応えた。
互いの体液で濡れた舌で、互いの口腔をまさぐる。
そして彩乃は、ゆらゆらとその白いヒップをゆらしながら、熱く濡れたその部分で、知巳のペニスの先端を捕らえた。
「ン……」
ペニスに軽く右手を添え、ぬぬぬっ、と自らの中に飲み込んでいく。
「ンぁ……」
「うっ……」
牡と牝の粘膜がこすれ合う生々しい快感に、二人は、声を漏らす。
知巳と彩乃の体が、ぴったりと重なった。
膣内を支配するペニスの感触を楽しむかのように、彩乃が、うっとりと目を閉じる。
同じように目を閉じていた知巳が、はっと表情を緊張させた。
そして、開いた目を、バスルームにつづくドアに向ける。
「どうしたの? 知巳くん」
「――風呂場に、人の気配が……」
さすがに硬い声で言って、身じろぎしようとする知巳の体を、彩乃は、白くしなやかな腕でそっと制した。そして、ドアに意味ありげな視線を寄越す。
「え?」
知巳が小さな驚きの声をあげたとき、ドアが、開いた。
「お兄ちゃん、ニブすぎだよお」
くすくす笑いながら、赤いボンデージファッションに身を包んだ朱美が、姿を現す。
ちょうど、ビスチェとショーツの形をした衣服だが、その妖しい光の反射具合から見ると、材質はエナメルだろう。そのショーツからは、ペニスに模して作られたシリコン製らしき淫具が生え出ている。
そんな倒錯的な格好をしている朱美の後ろには、奈々がいた。
黒い、やはりエナメル製らしきコルセットで胸から下を締めつけられ、そのたわわな乳房が、ますます強調されている。しかも、下には何も身につけていないため、無毛の恥丘が剥き出しだ。その上、両手は体の前で革手錠で戒められ、口はやはり革製らしきマスクで覆われていた。
さらには、奈々のマスクにも、ペニスの形をしたディルドーが付属している。ちょうど、双頭ディルドーの片方を、口内に収めた状態で、幅広の革のバンドで固定されている、といった形だ。
妹と従妹のあまりにビザールなそのコスチュームに、知巳は言葉もない。
「あ……知巳くんの、あたしの中でもっとおっきくなった……」
悪戯っぽい顔で彩乃が言うと、知巳は耳まで真っ赤になった。
「こ、これって、どういう……」
そして、どうにか、それだけを言う。
「この前、四人でしたとき、すっごく気持ちよかったでしょ?」
そう言いながら、朱美はベッドに近付いた。奈々が、従順にそれに付いてくる。
「だから、これからも、一緒にしようって話になったの。奈々も、和泉先輩も、ボクも……ここにいる人、みんなが、お互いを好きだから」
朱美が代表して話すその想いを、彩乃と奈々も共有しているのだろう。三人の少女は、それぞれ、恥ずかしそうに頬を染めながらも、濡れた瞳を知巳に向けている。
「お兄ちゃんだって、奈々や……ボクのこと、嫌いじゃないでしょ?」
「それは、そうだけど――」
根が生真面目な知巳は、この状況にしっかりと興奮しながらも、今更のように口篭もってる。
「別に、誰が一番好きかなんて、野暮なこと訊かないからさ♪」
そう言って、朱美は、奈々に目で合図した。
奈々が、こっくりと肯いて、ベッドの、知巳と彩乃の脚の方に、上がる。
その、鉄パイプ製の大きなベッドは、三人分の体重を受けても、まだ余裕があるようだった。
「和泉センパイ……お風呂で、奈々と、どうしようかって話したんですけど……」
ちょっととまどったような彩乃の顔に、小悪魔的な微笑を浮かべた顔を寄せ、朱美が言った。
「こういうのは、どうですか?」
「ひゃんっ!」
彩乃が、悲鳴をあげた。
奈々が、革手錠で戒められた手の指先で、くにくにと彩乃のアヌスを愛撫しだしたのだ。
「や、やめて、そんなトコ……あ、ああン……っ」
間違いない快楽の声をあげながら、彩乃が身悶える。
括約筋が収縮し、膣内のペニスを刺激しているのだろう。知巳も、彩乃の体の下で、予想外の快感に目を見開いている。
朱美も、奈々に加勢するように、彩乃のヒップの側に回った。
そして、隠し持っていた潤滑ゼリーを、彩乃のセピア色の肉のすぼまりに塗りこんでいく。
「んッ……ンああ……ダ、ダメ、そんな……」
はしたなくも肛門で感じてしまっているのを、知巳に見られるのが恥ずかしいのか、彩乃は、その白い顔を真っ赤に染めて、いやいやをする。
しかし、彩乃の排泄器官は、突き入れられた奈々の指を、易々と飲みこんでしまった。
ふーっ、ふーっ、と鼻で息をしながら、奈々が夢中になって彩乃のその部分を指で犯す。
彩乃のアヌスは、強烈に締めつけながらも、驚くほどの柔軟性を見せ、奈々の指の根元までの侵入を許してしまっていた。
奈々が、大胆に指をピストンさせる。
「あああああああッ!」
前と後ろの穴を同時に犯され、彩乃は、絶望の入り混じった歓喜の声をあげた。
知巳も、薄い肉の壁越しに、奈々の指の動きをペニスで感じている。
ぬるん、と奈々が、指を抜いた。
そして、ほっと一息つく彩乃のアヌスに、ペニスギャグのもう片方をあてがう。
「ひ……!」
彩乃が、息を飲んだ。
「してあげて、奈々」
朱美が、口元に笑みを浮かべながら、Goサインを出す。
「あ、ダメ! ゆるして……ンあああああああッ!」
指とは比べ物にならないペニスギャグを直腸に挿入され、彩乃が、その体をのけぞらせる。
奈々は、動物のように四つん這いになりながら、口にはめたその道具で、彩乃の体を犯していった。
「う、うわ……すごい……ううっ……」
かつてない強烈な締め付けと、すぐ向こう側のディルドーの感触に、知巳も思わず声をあげてしまっている。
「ふふ、和泉センパイ……お兄ちゃんも。ボクと奈々のアイデア、気に入った?」
そんな朱美の言葉にも、二人は、答えられるような状態ではない。ただ、変則的な快楽に喘ぎながら、互いの体を抱き締めるだけだ。
「訊くまでもなかったみたいね♪」
そう言いながら、朱美は、健気に頭を振りながら、二人の快楽に奉仕する奈々に目を向けた。
そして、ベッドに上がり、まだ辛うじてスペースの残っている奈々の後ろ側に、膝を付く。
「奈々にも、ご褒美あげなきゃね」
そう言って朱美は、ふりふりと可愛く踊っている奈々の丸いヒップに手をかけた。
そして、すでに充分に濡れているクレヴァスを、股間のディルドーで一気に貫く。
「ふぐううううう!」
ギャグの合間から唾液を溢れさせながら、奈々はくぐもった声をあげた。
が、切なげにたわめられた眉の下で、目許がぽおっと染まっているところを見ると、この状態で朱美に犯されることに、非常な快感を覚えていることだけは確かだ。
朱美は、かつて兄の肉体に宿っていたときと同じように、ぐいぐいと腰を使って、奈々を後ろから攻めたてた。
早くも白く濁った愛液を太ももの内側に垂らしながら、奈々も、ペニスギャグで彩乃のアヌスを犯す。
彩乃は、ぽろぽろと涙をこぼしながら、この倒錯的な、しかしどこか充足感をともなった快楽に身を任せていた。
そして知巳は、そんな彩乃の膣肉の動きに、必死で射精をこらえていた。
(――こんなことしたら、また、入れ替わっちゃうだろ!)
そんな朱美に言うべきセリフも、言葉にならない。
(そしたら、どうするんだよ……?)
が、そうなったときに自分達がどうするのか、知巳には、分かりすぎるほどに分かっていた。
朱美の体に宿り、彩乃や奈々と絡み合いながら、朱美が宿る自らの体に犯されるイメージ――
それを目蓋の裏に見ながら、知巳は、彩乃の中に、かつてないほど大量のスペルマを放出したのだった。