−第五章−
日が暮れてから、雲の流れが変わり、一転、雨になった。
冬の雨は冷たいが、春が近いしるしでもある。
「けっこう降るねえ」
さあさあと窓を叩く水滴をちらりと見て、ぽつん、とそう言いながら、モニターに目を戻す。
大型、小型、新式、旧式、タイプの違う幾つものディスプレイが、てんでばらばらに様々なデータを表示している。
「明日は晴れるかな?」
そう言いながら、緑郎は、キャプチャーボードを通して表示させているTV画面のチャンネルを変えた。夕食後の、ちょうど天気予報をやっているくらいの時刻である。
その時、ドアのチャイムが安っぽい音を立てた。
「……?」
1Kの、お世辞にも広いとは言えない部屋を、床に散乱している雑誌類を踏まないように横切り、ドアの魚眼レンズを覗く。
そうしてから、緑郎は、ドアを開いた。
長い髪を雨に濡らした少女が、眼鏡の奥の黒い瞳を、こちらに向けている。
「ランちゃん……」
その、ほっそりとした肢体が、いつになく弱々しく見える。
「えーと、早く入んなよ。風邪ひいちゃうよ」
そう言われて、ランは、無言でこくりとうなずき、たたきに上がった。
ぬれねずみになっているせいでよく分からなかったが、ランは、静かに泣いているようだった。
「……」
緑郎は、普段の軽薄なくらいにひょうきんな表情を引っ込め、少し考えこんだ。
緑郎が、狗堂と飄次郎が向かった埋立地の場所をキャッチしたのが、今日の昼過ぎだった。狗堂が盗んだ車の動きを、警察無線などから割り出したのである。
そしてランは、その場所に一人で行くと言い張ったのだ。
慌てて止める緑郎を、ランは、借りっぱなしだったスタンガンで脅しまでした。
結局緑郎は、根負けして、ランを一人で送り出したのだ。
その前に、万一のことを考えて、この場所の住所と連絡先だけは、教えておいた。
よほど後を尾行しようかと思ったのだが、ランの感覚――とくに嗅覚は異常に鋭い。緑郎は、断念せざるをえなかった。
そして、夕方、埋立地に行ってみると、警察が現場検証をしていた。
そこには、昏倒した大学生の男と、その男が所有してたらしいナイフと、そして、死体があったという。
だが、飄次郎とランの姿は、そこにはなかった。
そして緑郎は、未整理な気持ちを抱えたまま、とりあえずいくつかある隠れ家の一つに戻ってきたのである。
「……お風呂、入る?」
いろいろと訊きたい気持ちを抑えて、緑郎が、言う。
ランは、無言で肯き、あまり広くない脱衣場に入っていった。短い廊下に、濡れた足跡が残る。
「……覗かないでよォ」
ちら、とこちらを見てランがそう言った時、緑郎は、むしろ救われたような気持ちがした。
「はい、ホットミルク」
レンジで温めた牛乳を入れたマグカップを、緑郎はランに差し出した。
湯上りのランは、緑郎のトレーナーを着ている。さすがにぶかぶかで、裾が、膝上まで来ている。
「ありがと……」
そう言って、ランはマグカップを両手で受け取った。
「飲みやすいようにハチミツ入れといたからねん」
「子供扱いしないでよ」
むー、と唇を尖らせた後、ランはテーブルにつき、ホットミルクに口をつけた。
んく、んく、と、細い喉を小さく鳴らしながら、ランがホットミルクを飲み干していく。
「ふー……おいし♪」
「よかった」
思わず言ったランに、緑郎がにっこりと微笑みかける。
と、その緑郎の顔を、ランはじっと見つめた。
「……何?」
年甲斐もなく頬が赤くなるのを感じながら、緑郎が訊く。
「緑郎……あたしのこと、好き?」
「うん」
緑郎が、子供のように素直に、答える。
「なんだか、真剣みが足りないなア」
「んなこと言われても」
「えっと、じゃあさ……あたしのこと、抱きたい?」
「う……うん」
先程より少しだけ、緑郎の返事が遅れる。
「ホント?」
「本当だよ」
重ねて訊くランに、緑郎は、いつになく真摯な表情で言った。
「じゃあ……」
ちら、とランは、眼鏡の奥から、緑郎の顔を見つめた。
と、椅子に座ったままのランに、緑郎が近付く。
緑郎は、まるで壊れ物に触れるように優しく、ランの細い肩に両手を置いた。
「じゃあ、どうればいいの? お姫様」
ランの緊張をほぐすように、緑郎が、いつもの調子でそんなことを言う。
「えっと……まずは、キス、かな……」
「ん」
短く返事をして、緑郎は、ランに顔を寄せた。
その目を閉じると、緑郎は、意外なほど美形に見える。
そんな緑郎にちょっと驚いたランの唇に、緑郎は、唇を重ねた。
座ったままのランに緑郎が覆い被さるような、そんな姿勢のキス。
ランが飲んだばかりのホットミルクの味がする、ほのかに甘いキスだ。
と、緑郎の唇に、差し出されたランの舌が触れた。
ランが、そのあどけない顔に似合わない大胆な舌使いで、緑郎の唇をまさぐる。
しばし面食らった緑郎は、気を取り直したように、ランの舌に舌を絡めた。
「んン……んふ……ン……うン……」
緑郎の舌の動きを受け止めながら、ランが、小さな声を漏らす。
互いの口内を舌で探るような、濃厚なキス……。
そして、ようやく、二人は唇を離した。
「ランちゃん……こんなキス、どこで覚えたの?」
そう訊く緑郎に、ランは、かっと頬を染めた。
「どこでって……あたし、初めてのキスだよっ」
「あ、そう? にしては……」
「なによォ」
「エッチなキスだなあ……って、思った」
ランの顔が、ますます赤くなった。
無論のこと、緑郎は、ランが、兄に口唇奉仕を施すことによって、その身体に現れた変化を解消してきたことなど、知らない。
「……エッチな女は、嫌い?」
ランの幼い口元から“おんな”という単語が出てきたことに、緑郎は思わずくすっと笑ってしまった。
そして、そんな緑郎にランが抗議する前に、言う。
「そんなことないよ、ランちゃん」
そう言って、半ば強引にランを椅子から立たせ、きゅっ、と抱き締める。
「あ……」
ランは、かすかに身じろぎしたが、すぐに、緑郎の胸にその細い体を預けた。
「オレもけっこうエッチだから、ランちゃんもエッチだと嬉しいな♪」
「もう……」
そう言いながらも、ランは、緑郎の胴に腕を回した。
「緑郎、ホントにあたしのこと好き?」
そして、再び、そう訊く。しかしその声は、どこか甘えるような響きがあった。
「好きー♪」
緑郎が、そう言ってランの体を抱く腕に力を込める。
「緑郎って……ロリコンなの?」
ランが、緑郎の腕の中で顔を上げ、そんなことを訊いた。
「う、うーん。自分じゃあ、そういうつもりはないんだけどね〜」
一回りは年の違う少女を抱き締めながら、緑郎は、困ったような声で言った。
「たまたま好きになったコが、ちょっとばかり年が離れてた、ってだけなんだけど」
「そう……なんだ……」
「うん」
「なんだか……ちょっと悔しいくらいに、嬉しくなっちゃった」
そう言って、ランは、本当に嬉しそうな顔で微笑んだ。
照明を絞った部屋の中で、ランは、緑郎のトレーナーを脱ぎ捨て、全裸になった。
薄暗い闇の中で、白いランの体は、ほのかに光を放っているように見える。
その裸体を形作る曲線はなめらかで、少女らしい控え目な凹凸を描いていた。
薄い肉付きのほっそりとしたその体は、どこか妖精を思わせる。
「キレイだよ、ランちゃん……」
そう言って、すでに服を脱いでいた緑郎が、ランの体を抱き締めた。
そして、右手でランの頭を優しく撫で、その腰にまで届きそうな癖のない黒髪を、指ですくようにする。
「緑郎……」
ランが、顔を上げた。その顔には、未だ眼鏡をかけている。
「ランちゃん、メガネは、そのまま?」
「うん……。だって、外すと緑郎のこと、よく見えないもん」
「ん、分かった」
そう言って、緑郎は、ランの前髪をかきあげ、その額にちゅっ、とキスをした。
そして、左右の頬や耳たぶに、聞いている方が恥ずかしくなるような、ちゅっ、ちゅっ、という音をたてながら、キスの雨を降らす。
「あ……ン、うん……」
ランが、くすぐったそうに、その肩をすくめる。
そんなランの小さな唇に、緑郎は唇を重ねた。
再び、とろけるようなキス。
そんなキスをしながら、緑郎は、ランの左の胸に、右手を重ねた。
「んっ……!」
唇をキスで塞がれた状態で、ランが、小さく声をあげた。
しかし、ランはかすかに体をよじっただけで、本格的に抵抗する様子は見せない。
緑郎は、未だ発達途上のランの胸に当てた手をゆるゆると動かした。
乳房と呼ぶのがためらわれるような、ささやかな胸の頂点で、ピンク色の乳首が、徐々に固くなっていく。
緑郎は、唇を離し、ランの前で膝をついた。
そして、右の乳首を、口に含む。
「あン……」
乳首をちろちろと舌で愛撫され、ランは、ぶるっ、と体を震わせた。
そんなランの両方の乳首を、緑郎は、交互に口で責める。
「あ……はァン……」
「くすぐったい?」
「ん、ちょっと……でも……」
「でも、なに?」
「気持ちいい……」
そう告白するランに、緑郎は笑いかけ、ちゅばっ、ちゅばっ、と乳首を唇で軽く吸った。
緑郎の唾液に濡れたランの乳首が、ぷくん、と小生意気に勃起する。
緑郎は、その小粒の突起を口の中で転がし、桜色の乳輪をくるくると舌で舐め回した。
ランは、腰の両脇でぎゅっと小さな拳を握り、んっ、んっ、と喘ぎを噛み殺している。
「声、出してもだいじょぶだよ、ランちゃん」
「で、でも、お隣に聞かれちゃう……」
ランが、ぽおっと目元を染めながらも、そう言う。
「へーきへーき。実はこの部屋、大家さんに内緒で防音に改造してるんだ」
緑郎が、そんなことを言って、ランの乳首に、軽く歯を当てた。
「ひゃうッ!」
ランは、思わず声をあげ、そして、両手で口元を覆った。
「い、いじわるぅ……」
そして、潤んだ瞳で、緑郎の顔を見つめる。
緑郎は、そんなランの体を、ゆっくりと布団の上に横たえた。
「あぁ……」
溜息のような声を漏らすランの体を、緑郎が、横抱きにする。
そして、思春期を迎えたばかりの少女特有の細い脚の間に、そっと、右手を滑りこませた。
無毛の恥丘を、手の平で包むようにする。
「あっ……どうしよう……すっごいドキドキする……」
ランは、そう言いながら、強張らせた。
「だいじょうぶ、リラックスして……」
そう言いながら、緑郎が、ランの唇に、ついばむようなキスをする。
「う、うん……でも……」
「なに?」
「初めてって……痛いんでしょ?」
そう訊かれて、緑郎は、困ったような顔になった。
「らしいね。……女のコじゃないから、分からないけど」
「男の人って、最初から気持ちいいの?」
「うん」
「それって、なんか不公平……」
「ごめんね」
自分が悪いわけでもないのに、緑郎はそう謝って、ちゅっ、ちゅっ、とバードキスを繰り返した。
ランの体から、次第に、余計な力が抜けていく。
「あ、あのね、緑郎」
キスの合間に、ランが、口を開いて言った。
「なに?」
「あの……もし、あたしが、痛くて泣いたりしても……とちゅうでやめないでね」
そんなランの健気なセリフに、緑郎は、キスで応えた。
「うン……んむ……ふぅん……ンっ……」
緑郎の頭を、ランが、細い両腕で抱き締める。
緑郎が、ぷっくりとした恥丘からさらに奥へ、指を進ませた。
幼い、まだ縦線一本のシンプルなスリットに、緑郎の指先が触れる。
「んく……っ」
キスで塞がれた口で、ランが、くぐもった声をあげた。
緑郎が、触れるか触れないかという優しいタッチで、ランの割れ目をまさぐる。
愛液が、透明な珠となって、スリットからにじみ出た。
その愛液を塗りこむように、緑郎の指が、ぬるぬるとうごめく。
「んは……あ……あァ……あぁン……」
口を開け、抑えきれずに喘ぐランの首筋に、緑郎が唇を這わせる。
「やぁン……緑郎の指……すっごくエッチいよォ……」
「エッチにしないと、気持ちよくなれないの」
緑郎が、子供に教え諭すような口調で、言う。
「だから、うんとエッチなことしてあげるね」
そう言って、膨らみかけの胸に頬ずりをしてから、乳首を、口に含む。
ランのスリットからは、次々と愛液が溢れ、緑郎の指先を濡らしていった。
緑郎は、その部分をほぐすように、ますます熱心に指先を動かす。
ランのその部分は、次第にほころび、柔らかな内部を次第に露わにしていった。
その、ささやかな肉の谷間に、緑郎が、中指を滑りこませる。
「ひゃうん!」
ランの細い体が、軽くのけぞる。
その部分の、ぷにゅぷにゅとした感触を指先に感じながら、緑郎は、あくまで優しく愛撫を続けた。
そうしながらも、乳首や鎖骨のくぼみに舌を這わせ、幼い肉体に眠る性感帯を探っていく。
「あ……ンあぁ……あ……ああアっ……!」
することには慣れていても、されることには慣れていないランは、その太めの眉を切なげにたわめながら、恥ずかしそうに声を漏らしてしまう。
「気持ちいいでしょ? ランちゃん」
そう尋ねる緑郎に、ランは、こくこくと肯いた。
「もっともっと気持ちよくしてあげるね……」
そう言いながら、緑郎が、ゆっくりと頭を移動させた。
そして、おへそや恥丘にキスを繰り返しながら、最も秘めやかな部分に到達させる。
「ふあ……」
ランは、自分の股間に、ぼんやりと目をやった。
「や……そこ、きたな……ひあッ!」
抗議の声が、悲鳴で途切れる。
緑郎の舌が、残酷に、ランのクレヴァスをえぐったのだ。
「や……こ、こんなの……あひ……ひゃうぅン!」
その幼い体では受け止めきれない鋭い快感に、ランは、ぴくぴくと体を痙攣させる。
緑郎は、ランの小さなヒップを両手で捧げ持つようにして固定し、口唇愛撫を続けた。
溢れ出る愛液を舐め取るように、舌で靡粘膜の間を舐め上げ、膣口周辺を舐めまわす。
「ろ、緑郎……ヘンだよ……ヘンになるよォ……」
そう言いながら、ランは、緑郎の頭を両手で押さえた。
そのまま、押しのけることも、押しつけることもできず、ただいたずらに緑郎の柔らかな髪を乱す。
緑郎は、わずかに酸味のある独特の味を舌に感じながら、ますます熱心にクンニリングスを没頭した。
「ンわぁ!」
緑郎の舌が、包皮の上からクリトリスに触れたとき、ランは、一際高い声をあげてしまった。
緑郎の舌先が、くにくにとその部分を嬲り、莢の上から硬くした舌先で圧迫する。
「ンあ……あぁ……あああああッ!」
怖くなるくらいの快感に、ランは、そのしなやかな体をシーツの上でうねらせた。メガネが、その動きで大きくずれる。
緑郎が、舌と唇でその快楽のスイッチを愛撫しながら、指先で小さな膣口をまさぐった。
あまりにも小さなその肉の入り口を、これからの侵入が少しでも楽になるように、入念にほぐそうとする。
その部分をやさしくこじ開けられる感覚も、ランの中では、クリトリスへの刺激と混じり合い、けして不快なものではなくなっていた。
緑郎が、探るように、指を挿入した。きついが、思ったほどの抵抗は感じない。
緑郎は、ランのクレヴァスから口を離し、そして、上体を起こした。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
乱れた呼吸を整えようとしているランに、緑郎は、覆い被さるようにする。
「ランちゃん……ごめん、もうちょっと足、開いて……」
「う……うん……」
緑郎に言われるまま、ランは、まるで仰向けのカエルのような、屈辱的な姿勢になる。
腰を進めた緑郎のペニスの先端が、ランのクレヴァスに触れた。
「うわ……」
亀頭部の、意外なほどの熱さに、ランが怯えたような声をあげる。
緑郎は、ずっこけたままのランのメガネを、直してやった。
「あ……」
緑郎の顔を視界におさめたためか、ランが、安心したような顔になる。
「緑郎……や、やさしく、してね……」
「うん」
そう言って、緑郎は、ゆっくり、ゆっくり、腰を進めていった。
まだ未成熟な少女の膣口に、熱くたぎるペニスを挿入させていく。
「ん……うっ……」
息苦しさを感じているのか、ランが、小さくうめくような声をあげる。
「だいじょうぶ?」
「うん……へいき……べつに、いたくないよ……」
「じゃあ、もうちょっと入れるね」
そう言って、緑郎は、慎重に侵入を再開した。
探るようにのろのろと、剛直を差し入れていく。
それなりのサイズの緑郎のペニスを受け入れるのは、やはりきついのだろう。ランは、目をぎゅっと閉じ、眉をたわめている。
このまま一気に挿入し、無茶苦茶に腰を動かしたい衝動に必死に耐えながら、緑郎は、挿入を続けていった。
みっちりとした膣内の感触が、上下左右から緑郎の亀頭部分を包みこむ。
「あく……!」
とうとう緑郎のペニスが、純潔の証しに触れたとき、ランは小さく悲鳴をあげた。
「ラ、ランちゃん?」
「――や、やめちゃ、だめッ!」
思わず腰を引きそうになった緑郎に、ランは、思いきりしがみついた。
「あ、ああ、あ……っ!」
理性と欲望の葛藤に、思わず声をあげながらも、緑郎は、そのペニスで、ランの処女膜を貫いていく。
「……ッ!」
ランは、それ以上、悲鳴をあげなかった。
緑郎のペニスが、ランの一番奥にまで、到達した。
「はあぁ……」
ランが、どこか満足げな溜息をつく。
「ラ、ランちゃん……だいじょうぶ……?」
入れているだけでも感じる強烈な快感に声をやや上ずらせながらも、緑郎が訊く。
「んふ……へいき……ン……し、しんぱいして、ソンしちゃったよ……」
そう言って、ランは、健気にも微笑んだ。
その目尻には、しかし、涙がにじんでいる。
「緑郎は、気持ちいいの?」
「え? ……う、うん……すごく気持ちいいよ……」
緑郎は、思わず正直に答えてしまう。
「やっぱり、ふこうへいだなぁ……」
「ごめん……」
「でも、いいよ。緑郎が気持ちいいなら……嬉しいから……」
「ランちゃん……」
緑郎は、ランの体を、きゅっと抱き締めた。
「好きだよ、ランちゃん……」
この少女の体温を両腕に感じているだけで、そのまま射精してしまいそうだ。
「緑郎……」
耳元に、ランの声と、息遣いを感じる。
緑郎は、とうとうがまんができなくなって、腰を動かし始めていた。
「あ……あう……ン……くぅ……っ」
初めて感じる抽送の感覚に、ランが声をあげる。
緑郎は、できるだけランの負担を減らそうと、浅い場所で、小刻みにピストンを繰り返した。
雁首に、血と愛液で濡れた肉襞がぬるぬると絡みつく。
「ンあ……ろ、緑郎……っ」
ランが、緑郎の首にかじりつくように腕を回しながら、言った。
「ご、ごめん、ランちゃん……オレ、腰が止まんない……」
緑郎が、我ながら情け無いと思うような声で、そんなことを言う。
「ち、ちがうの……ンンッ……な、なんだか……それ……」
「ランちゃん?」
「なんか、あつくて……しびれて……ヘンなの……ヘンになるよお……」
頼りない声で、快感未満のその感覚を、ランが訴えてくる。
緑郎は、荒く息をつきながら、その右手を結合部に伸ばした。
「ンああああッ!」
そして、快感で痛みを和らげようとするように、クリトリスを指先でくにくにと愛撫する。
「ンあ……そこ、いじったら……あン……あ、ンあああああッ!」
フードの上から敏感な突起を嬲られ、ランの声が、次第に甘く濡れていった。
「それ……イイ……イイの……ろ、緑郎……緑郎……っ!」
「ランちゃん……ランちゃん……」
互いに互いを呼ぶ声が、ほの暗い部屋の中で、混じり合う。
左腕でランの体を抱き、右手でその肉の真珠を愛撫しながら、緑郎は抽送を続けた。
絡みつくような熱い膣肉の感触に、たぎるペニスの根元で、射精欲求が高まっていく。
と、緑郎の指が、偶然、クリトリスを保護していた包皮を剥いてしまった。
「ひ……ッ!」
敏感過ぎるほど敏感なその器官に、緑郎の体が触れる。
きゅううううん、と痛いほどにランの秘所が緑郎のペニスを締めつけた。
「うあ……ッ!」
その瞬間、緑郎は、自分でも驚くほど大量の精を、ランの体内に放っていた。
「あ、あ、あああああああああああああああああああああああッ!」
びゅるるるるッ! 自分の中で迸るスペルマの温度に、ランが悲鳴のような声をあげる。
緑郎の射精は、一度ではおさまらない。
びゅくん、びゅくん、と何度も律動しながら、熱いスペルマを、幼い少女の膣内へ注ぎ込んでいく。
二人の体が、しばらく、動きを止める。
そして、ほぼ同時に、ぐったりと弛緩した。
力を失った緑郎のペニスが、ぬるん、とランの膣圧に押し出される。
そして、血の混じったピンク色の精液が、こぽこぽと膣口から溢れ出て、シーツを汚していった。
「ひゃう……」
ウェットティッシュで股間をぬぐわれながて、ランは、ぴくん、と可愛く体を震わせた。
緑郎が、あぐらをかきつつ、足を伸ばして座るランを後から抱くような格好である。
「……もっかい、お風呂入った方がいいかな?」
ランの顔を後からのぞきこみながら、緑郎が言う。
「……もうちょっと、このままでいさせて」
そう言って、ランは、緑郎の体にもたれかかった。
「あのね、緑郎」
「なに?」
しばらくして、ぽつん、とつぶやくように言ったランに、緑郎が答える。
「あたしね……お兄ちゃんが好きだったの……」
「飄次郎ちゃんが?」
「うん」
伸ばした自分の足の先を見つめながら、ランが言う。
「お兄ちゃんを“なおす”のは、あたしの役目だったけど……そういうことを抜きにしても、あたし、お兄ちゃんが好きだった……」
“なおす”というのがどういう意味なのか分からぬまま、緑郎は、無言でランの言葉を聞き続けた。
「でも……お兄ちゃんは、あたしの知らないところで、相手を見つけてた……」
「飄次郎ちゃんが、ねえ……」
いかにも堅物そうな飄次郎の顔を思い浮かべながら、緑郎が言う。
「その人が、お兄ちゃんを“なおす”とこ、見ちゃったんだけど……その人、血族でもないくせに、すごく……すごく、お似合いだった」
「……」
「“なおす”ってことは、誰でもできることじゃないの……男衆の血を鎮めることができるには、特別な力なんだって、長が言ってたわ……男衆の血の声を聞けなきゃダメなんだって……なのに、あの人は……あたし、負けたなあ、って思っちゃった」
すでに、ランの話は、緑郎の理解の外に行ってしまっている。
しかし、緑郎は聞き返すことをせず、そっと、ランの体を抱き締めた。
話の意味は分からなくとも、その腕を通して、哀しみだけは、伝わってくる。
「あの人は……巫女なんだわ……自分で気付いてないんだろうけど……血とか、鬼とか、魂の声を聞くことができる……ね」
「……」
「でも、あたしが負けたって思ったのは、そのせいじゃないの。あの人のほうが、ずっとずっと、お兄ちゃんのことを好きで……その上、お兄ちゃんも、あのひとのこと好きで……」
ランの声が、涙で濡れていく。
「村もなくなっちゃって……お兄ちゃんにも好きな人ができて……あたし、どこにも行くとこがなくなっちゃって……」
言いながら、ランは、緑郎に振り返った。
「でも、緑郎なら、あたしに優しくしてくれると思って……だから、あたし……ごめんなさい……ごめんなさい……」
ランは、緑郎の胸にすがりつき、まるで小さな子供のようにぽろぽろと涙をこぼした。
「なんであやまるの?」
緑郎が、ランの長い髪を撫でながら、訊く。
「だ、だって……」
「オレは、代わりでも二番目でも緊急避難先でも、ぜんぜん構わないんだよ、お姫サマ」
そう言って、緑郎は、両手でランのメガネを外した。
「あ……」
とまどったような声をあげるランの顔に、緑郎が顔を寄せる。
「これだけ近付けば、メガネ無くても見えるでしょ?」
そう言う緑郎に、ランは、肯いた。
こつん、と額と額がぶつかる。
「……んふっ」
たまらず、ランは吹き出した。
緑郎も、にっこりと笑いかける。
そして二人は、互いの体に腕を回し、ゆっくりと口付けた。
翌日、昼になって、緑郎の携帯電話に飄次郎から連絡が入った。
そして三人は、都心の喫茶店で合流したのである。
「ほれ、落し物」
そう言って飄次郎は、ランに野球帽を手渡した。その顔は、どこかバツが悪そうだ。
「お楽しみだったみたいね、お兄ちゃん」
ランが、にやにや笑いを浮かべながら、言う。
「あたしに気がつかないくらいにさ」
「声をかけてくれれば……」
「そんなことできるわけないでしょ」
そう言って、ランは、涼しい顔で目の前のココアをすすった。
「で……あの人は、どうしたの?」
「あの人?」
ランの問いに、飄次郎が訊き返す。
「だからあの、ショートカットの人」
「別に……今は家にいる」
「ふーん。さらってくればよかったのに」
「無茶苦茶言うな」
飄次郎は、苦い顔で言った。
「でさあ、これから、飄次郎ちゃんはどーすんの?」
緑郎が、飄次郎に助け舟を出すように訊く。
「まずは、村に何が起こったのか、知る必要がある」
飄次郎が、コーヒーカップの中のエスプレッソを睨みながら、言った。
「全ては、それからだ」
「で、その調査については、引き続きオレに任せてくれるわけ?」
「他にあてが無い」
飄次郎の言葉に、緑郎は、ひょい、と肩をすくめた。
「ま、オレほど優秀な情報屋さんは、そうおいそれとは見つかんないだろーからねえ。でも……」
「何だ?」
「お金、あるの?」
飄次郎は、虚を突かれたような顔になった。
「無いんでしょ? 故郷からの送金がなくなっちゃうんだから」
「……」
「やれやれ、飄次郎ちゃんてば、お坊ちゃんだねえ」
言いながら、緑郎は、その陽気そうな顔に、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「でもね、お金が無ければ稼げばいいの。それが世間というもんだよん」
「それは……そうだな」
そう言いつつも、飄次郎は、話の成り行きにやや戸惑っている様子だ。
「でもまさか、ファミレス店員とかやるガラじゃないよねえ」
「大きなお世話だ」
「そんなこと言っていいのかなあ、飄次郎ちゃん」
緑郎は、ここで言葉を切って、焦らすように目の前のミルクティーを飲んだ。
ランは、すでにこれから緑郎が言うことを聞いているのか、笑いをこらえているような顔だ。
「何が言いたいんだ?」
根負けしたように言う飄次郎に、緑郎は、いつもの軽薄な顔を向ける。
「だからさ……オレが、仕事の世話してあげようか、ってことだよん」
そう言ってから、緑郎は、ランと意味ありげに視線を交わした。